説明

蒸留水製造装置

【課題】 内部に蒸留水が滞留することを防止して、精製する蒸留水の清浄度を高く保つことができる蒸留水製造装置を提供すること。
【解決手段】
多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器を備えた蒸留水製造装置において、蒸留装置の蒸発器23は、水蒸気105が導入される水蒸気入口室23aと、導入された水蒸気105で原料水106を加熱する熱交換器23bと、該熱交換器23bで発生した蒸留水117が排出される蒸留水出口室23cを具備し、蒸発器23の水蒸気入口室23aの底部に、水蒸気入口室23aの滞留水116を排出する減圧装置28が設けられた滞留水排出口29を具備すると共に、該滞留水排出口29と次段の蒸発器の水蒸気入口室又は蒸留水出口室とを連通する滞留水排出流路45を設け、水蒸気入口室23aに滞留する滞留水116を排出することができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蒸発器を多段配列することで多重効用に接続して構成した蒸留装置を備えた蒸留水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、特許文献1等に記載された従来の蒸留水製造装置(真空蒸発式蒸留水製造装置)の構成例を示す図である。同図に示すように、この蒸留水製造装置は、脱気器10と、複数台(図では5台)の蒸発器21、22、23、26、30を多段配列することで多重効用に接続して構成した蒸留装置20と、凝縮器60とを備えて構成されている。
【0003】
脱気器10に導入された原料水100は、熱交換器10aにより熱源媒体101との間で熱交換が行なわれ加熱脱気される。熱源媒体101としては、ボイラ、ガスタービン、ガスエンジン、電気ヒーター、燃料電池、太陽熱、地熱等の熱源で作られた温水や蒸気などの熱源媒体を用いることができる。なお、熱源媒体101は液体に限られず、ボイラ、ガスタービン、ガスエンジン等燃焼機器からの排気ガス、その他の気体等の媒体でもよい。脱気器10で加熱脱気された原料水100は蒸留装置20に導かれる。
【0004】
蒸留装置20は、最上段の第1蒸発器21、次段の第2蒸発器22、第3蒸発器23、第4蒸発器26及び第5蒸発器(最終段蒸発器)30が多段配列に設けられて構成されている。第1蒸発器21は外部から熱源媒体101を導入して、熱交換器21aで原料水100との熱交換を行いこれを加熱する。熱源媒体101は、上記した脱気器10に用いる熱源媒体と同様に、ボイラ、ガスタービン、ガスエンジン、その他で作られた温水や蒸気などであり、一例として、85℃程度に加熱された温水を用いると好適である。
【0005】
原料水100が熱交換器21aで加熱されると、水蒸気102が発生すると共に、濃縮された濃縮原料水103となる。第1蒸発器21と第2蒸発器22とは、減圧機構41を備えた連通管27で接続され、第1蒸発器21内で濃縮された濃縮原料水103は連通管27を通って第2蒸発器22に導入される。一方、第1蒸発器21と第2蒸発器22の間には別の連通管44が接続されており、第1蒸発器21から出た水蒸気102は、連通管44を通って第2蒸発器22の水蒸気入口室22aへ導入され、そこから熱交換器22bに導かれる。
【0006】
次段の第2蒸発器22は、第1蒸発器21で発生した水蒸気102を導入する水蒸気入口室22aと、熱交換器22bと、熱交換器22bで水蒸気102が凝縮して発生した蒸留水104が排出される蒸留水出口室22cとを具備して構成される。第2蒸発器22では、熱交換器22bにより水蒸気102と濃縮原料水103との熱交換が行われ、水蒸気102が凝縮されて蒸留水104になると共に、濃縮原料水103が加熱されて水蒸気105を発生し、該濃縮原料水103は更に濃縮された濃縮原料水106となる。
【0007】
第2蒸発器22と第3蒸発器23とは減圧機構31を備えた連通管32で接続され、第2蒸発器22内で濃縮された濃縮原料水106は連通管32を通って第3蒸発器23に導入される。一方、第2蒸発器22と第3蒸発器23の間には別の連通管33が接続されており、第2蒸発器22から出た水蒸気105は、該連通管33を通って第3蒸発器23に導かれる。
【0008】
第3蒸発器23以降の各段の蒸発器23、26、30は、第2蒸発器22と同様の構成であり、第3蒸発器23は、第2蒸発器22で発生した水蒸気105を導入する水蒸気入口室23aと、熱交換器23bと、熱交換器23bで水蒸気105が凝縮して発生した蒸留水117が排出される蒸留水出口室23cとを具備して構成される。第3蒸発器23では、熱交換器23bにより水蒸気105と濃縮原料水106との熱交換が行われ、水蒸気105が凝縮されて蒸留水117になると共に、濃縮原料水106が加熱されて水蒸気107を発生し、該濃縮原料水106は更に濃縮された濃縮原料水121となる。
【0009】
一方、第2蒸発器22の熱交換器22bで水蒸気102が凝縮してできた蒸留水104は、次段の第3蒸発器23の熱源として用いられる。即ち、第2蒸発器22の蒸留水出口室22cに溜まった蒸留水104は、オリフィス等の減圧機構24aを設けた蒸留水排出口24から排出され、蒸留水排出管25を通って第3蒸発器23の水蒸気入口室23aに導かれ、熱交換器23bに導入される。同様に第3蒸発器23の蒸留水出口室23cに溜まった蒸留水117もオリフィス等の減圧機構37を設けた蒸留水排出口38から排出され、蒸留水排出管39を通って第4蒸発器26の水蒸気入口室26aに導かれ、熱交換器26bに導入される。
【0010】
上記構成の蒸発器21、22,23、26を経由して、原料水100は最終段蒸発器30まで水蒸気を発生させることで徐々に濃縮されながら流れてゆき、各段の蒸発器では水蒸気が凝縮して蒸留水が作られる。図1に示すように、最終段蒸発器30から排出された蒸留水113は蒸留水タンク46に貯留された後、外部へ排出される。
【0011】
最終段蒸発器30内の濃縮水110は、図示しないポンプ等の昇圧手段を介して外部に排出される。あるいは、最終段蒸発器30内の濃縮水110は、一度、図示しない濃縮水タンクに蓄えられてから外部に排出されるように構成してもよい。また、ポンプ等の昇圧手段を用いない場合は、最終段蒸発器30あるいは濃縮水タンクあるいは蒸留装置20の全体を大気圧程度まで加圧することで、濃縮水110を外部に排出するように構成することもできる。
【0012】
最終段蒸発器30は、凝縮器60と連通管40で連通されており、最終段蒸発器30で発生した水蒸気109は連通管40を通って凝縮器60に導入される。凝縮器60に導入された水蒸気109は、熱交換器60aによって図示しない外部冷熱源から導かれた冷却媒体111との間で熱交換が行われて冷却されて凝縮し、蒸留水112となる。凝縮器60に導入される冷却媒体111としては、冷却塔、その他の冷熱源で冷却された冷却水、冷却空気、その他の冷却媒体や、河川から導かれた水や、井戸水、海洋水などを用いることができる。なお、冷却媒体は液体に限られず、外気(自然通風、強制通風)等の気体でもよい。一例として冷却塔で冷却された32℃程度の冷却水を用いると好適である。
【0013】
なお、63は真空ポンプであり、該真空ポンプ63で、連通管61及び気液分離タンク62を介して凝縮器60内の水蒸気114を抽気して該水蒸気114内の不凝縮ガス115を回収している。
【0014】
第2蒸発器22で、水蒸気102と濃縮原料水103との熱交換が行なわれて凝縮した蒸留水104や、第3蒸発器23で、水蒸気105と濃縮原料水106との熱交換が行なわれて凝縮した蒸留水117等は、上記したように次段の蒸発器の熱源として用いる以外にも、各蒸発器23に個別に設けたポンプ等の昇圧装置を介して外部に排出するように構成することもできる。または、各蒸発器に個別に設けた貯留容器に貯留してから外部に排出するようにしてもよい。その際、各蒸発器の熱交換器、貯留装置、あるいは蒸留装置20の全体を大気圧程度まで加圧することで蒸留水を外部に排出することもできる。
【0015】
あるいは、各蒸発器で凝縮した蒸留水を、減圧機構を通過させることで減圧した後、一つまたは複数の蒸発器から排出された蒸留水を一つまたは複数の貯留装置に集めてから、ポンプ等の昇圧装置を介して外部に排出してもよい。この場合も、それぞれの熱交換器、貯留装置、あるいは蒸留装置20の全体を大気圧程度まで加圧することで蒸留水を外部に排出してもよい。
【特許文献1】特開2004−113949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上記の蒸留水製造装置では、蒸留装置20の第1蒸発器21、第2蒸発器22及びその下段の各蒸発器23、26、30で発生した水蒸気が、これら各蒸発器の熱交換器以外の場所でも放熱等によって凝縮して蒸留水となる。ところが、この熱交換器以外の場所で凝縮した蒸留水は外部に排出することができないので、各蒸発器内に滞留水として滞留することとなる。
【0017】
図2は、蒸留装置20の第3蒸発器23を示す概略拡大図である。同図に示すように、第3蒸発器23内では、水蒸気入口室23aに導入された水蒸気105が外部との熱交換によって凝縮して蒸留水となり、これが水蒸気入口室23aの底部、即ち、水蒸気入口室23aの底面42と熱交換器23bの伝熱管43の下端43aとの間に滞留水116として滞留する。このようなことは他の蒸発器でも同様に起こる。
【0018】
蒸留水製造装置の運転中は、蒸発器23が高温であることや蒸留水の流れがあることなどにより、滞留水116が存在してもその清浄度が大きく低下することはない。しかしながら、蒸留水製造装置の停止中に蒸発器23の内部に滞留水116が滞留すると次のような問題が生じる。即ち、滞留水116が蒸発器23の金属部分と長時間接触していることで滞留水116中に金属イオン(鉄イオン等)が溶出し、滞留水116の清浄度が低下する。また、蒸発器23内が真空であっても嫌気性細菌が繁殖することがあるため、低温の滞留水116に細菌の繁殖が起こる可能性があり、これによっても滞留水116の清浄度が低下する。この清浄度の低下した滞留水116が、次回の蒸留水製造装置の運転時に新たに蒸留された清浄な蒸留水に混入してしまい、作成される蒸留水の清浄度が低下する。
【0019】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、内部に蒸留水が滞留することを防止して、作成する蒸留水の清浄度を高く保つことができる蒸留水製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願の請求項1に記載の発明は、多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器を備え、蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最終段蒸発器まで繰り返し、凝縮器に最終段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮して蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置において、蒸留装置の各段の蒸発器は、水蒸気が導入される水蒸気入口室と、導入される該水蒸気で原料水を加熱する熱交換器と、該熱交換器で発生した蒸留水が排出される蒸留水出口室とを具備し、蒸発器の水蒸気入口室の底部に、水蒸気入口室の滞留水を排出する減圧機構が設けられた滞留水排出口を具備すると共に、該滞留水排出口と次段の蒸発器の水蒸気入口室又は蒸留水出口室とを連通する滞留水排出流路を具備することを特徴とする。
【0021】
本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蒸留水製造装置において、減圧機構はオリフィスであることを特徴とする。
【0022】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の蒸留水製造装置において、滞留水排出口の滞留水流入部に、該滞留水排出口への水蒸気の巻き込みを防止する水蒸気巻き込み防止板を設置したことを特徴とする。
【0023】
本願請求項4に記載の発明は、請求項1又は2又は3に記載の蒸留水製造装置において、滞留水排出口の滞留水流出部に、該滞留水排出口から流出した滞留水をガイドするガイド部材を設置したことを特徴とする。
【0024】
本願請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の蒸留水製造装置において、ガイド部材は、滞留水排出口の滞留水流出部の近傍から滞留水排出口の下方に向かって斜めに設置した平板であることを特徴とする。
【0025】
本願請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の蒸留水製造装置において、ガイド部材の滞留水排出口に対向する面に、親水処理が施されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本願請求項1、2に記載の発明によれば、蒸発器の水蒸気入口室の底部に、減圧機構が設けられた滞留水排出口を具備するので、蒸留水製造装置の停止中に、該滞留水排出口から水蒸気入口室の滞留水を排出することで、蒸発器内に滞留水が残留してその清浄度が落ちることを防止できる。したがって、蒸留水製造装置で作成される蒸留水の清浄度を高く保つことができる。また、滞留水排出口と次段の蒸発器の水蒸気入口室又は蒸留水出口室とを連通する滞留水排出流路を設けたので、蒸留水製造装置の運転中に、水蒸気入口室から排出された滞留水を次段の蒸発器に導くことができ、該滞留水を次段の蒸発器の熱源として用いることができる。さらに、滞留水を順次下段の蒸発器に導くことで、各蒸発器に滞留した滞留水を集めて最終段蒸発器から排出することができる。
【0027】
本願請求項3に記載の発明によれば、滞留水排出口の滞留水流入部に水蒸気の巻き込みを防止する水蒸気巻き込み防止板を設置したので、蒸発器の熱源となる水蒸気が滞留水排出口に巻き込まれて蒸発器の外部に排出されることを防止できる。
【0028】
本願請求項4に記載の発明によれば、滞留水排出口の滞留水流出部に該滞留水排出口から流出した滞留水をガイドするガイド部材を設置したので、滞留水とガイド部材との間に表面張力が働き、滞留水排出口からの滞留水の排出が促進され、水蒸気入口室から滞留水が排出され易くなる。
【0029】
本願請求項5に記載の発明によれば、ガイド部材は、滞留水排出口の滞留水流出部の近傍から滞留水排出口の下方に向かって斜めに設置した平板であるので、滞留水が平板を伝って流下することにより滞留水の排出が促進される。また、滞留水と平板との間に表面張力が働くことで、滞留水の排出が促進される。これにより、水蒸気入口室の滞留水が滞留水排出口から排出され易くなる。
【0030】
本願請求項6に記載の発明によれば、ガイド部材の滞留水排出口に対向する面に親水処理が施されたので、ガイド部材に接触した滞留水の表面張力が破断するため、滞留水排出口から滞留水が排出され易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図3は、本発明の実施形態にかかる蒸留水製造装置の概略構成例を示す図である。なお、同図において、図1に示す蒸留水製造装置と共通する部分には同一の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。図1に示す蒸留水製造装置のような複数の蒸発器を多段に配列し多重効用に構成した蒸留装置では、上記したように、蒸発器の水蒸気入口室の底部に凝縮水が滞留するという問題があった。そこで、図3に示す蒸留水製造装置は、第3蒸発器23の水蒸気入口室23aの底部に滞留水排出口29を設けると共に、次段の第4蒸発器26の蒸留水出口室26cと連通する滞留水排出管45を設置している。他の蒸発器も同様の構成を備えている。
【0033】
図4は蒸留装置20の第3蒸発器23の構成例を示す概略拡大図である。同図に示すように、第3蒸発器23は、前段の第2蒸発器22で発生した水蒸気105を導入する水蒸気入口室23aと、導入した水蒸気105で濃縮原料水106を加熱する熱交換器23bと、該熱交換器23bで熱交換が行なわれて凝縮した蒸留水117が排出される蒸留水出口室23cとを具備して構成されている。水蒸気入口室23aには、第2蒸発器22と連通された水蒸気105が導入される連通管33と、第2蒸発器22の蒸留水出口室22cと連通された蒸留水104が導入される蒸留水排出管25が取り付けられている。
【0034】
一方、水蒸気入口室23aの底部には、該水蒸気入口室23aに滞留した滞留水116を排出する滞留水排出口29が設けられている。滞留水排出口29には減圧機構28が取り付けられている。ここでは減圧機構28はオリフィスである。そして、この滞留水排出口29には、該滞留水排出口29と次段の第4蒸発器26の蒸留水出口室26c又は水蒸気入口室26aとを連通する滞留水排出管(滞留水排出流路)45が取り付けられている。
【0035】
ここで、蒸留水製造装置の定格運転時のオリフィス28前後の圧力差で水蒸気入口室23a内を流れる蒸留水の全量が該オリフィス28に流入するオリフィス径をαとすると、滞留水排出口29に設置したオリフィス28のオリフィス径は、このαよりも小さいオリフィス径とすることが好ましい。より詳細には、水蒸気入口室23aを流れる蒸留水のうちの30〜60%がオリフィス28に流れるようなオリフィス径とする。
【0036】
オリフィス径が大きすぎると、滞留水排出口29からの滞留水116の排出流量が多くなりすぎて滞留水116の持つ顕熱の回収量が減少してしまう。また、一方で、オリフィス径が小さすぎると、滞留水116の表面張力によって、蒸留水製造装置の停止中に、蒸発器23から滞留水116の排出を行なうことができなくなる。なお、蒸留水製造装置の運転中は、オリフィス28の前後の圧力差が大きいため滞留水116はオリフィス28を流れるが、蒸留水製造装置の停止時に滞留水116の排出が進んでその液面が低くなり、オリフィス28に十分な液圧が掛からなくなった場合に、それ以上の排出が困難となる。これらの条件を勘案すると、一例としてオリフィス径は2mm以上とすることが望ましい。
【0037】
次に、熱交換器23bには、第2蒸発器22の熱交換器22bと接続された濃縮原料水106が導入される連通管32が取り付けられている。また、濃縮原料水106が加熱されて発生した水蒸気107を排出して次段の第4蒸発器26へ導入する連通管36が取り付けられている。
【0038】
蒸留水出口室23cには、第2蒸発器22の滞留水排出口34と連通する滞留水排出管35が取り付けられており、第2蒸発器22内の滞留水122を導入するように構成されている。滞留水排出管35は図示したように蒸留水出口室23cに接続する以外にも、水蒸気入口室23aに接続して、滞留水122を水蒸気入口室23aに導入するように構成することもできる。一方、蒸留水出口室23cの底部には、蒸留水117を排出する減圧機構37が設置された蒸留水排出口38が設けられると共に、蒸留水排出口38と次段の蒸発器26の水蒸気入口室26aとを連通する蒸留水排出管39が取り付けられている。
【0039】
蒸留水製造装置の運転中に、第2蒸発器22から排出された蒸留水104を第3蒸発器23の熱源として蒸発器23の熱交換器23bに導入する場合は、蒸留水104を水蒸気入口室23aに導入することになるので、蒸留水製造装置の停止時には、導入された蒸留水104の一部が滞留水116として水蒸気入口室23aの底部に残ることになる。また、蒸留水製造装置の運転中は、装置内には水蒸気が充満しており、装置停止後に徐々に装置内の温度が低下して水蒸気が凝縮し、滞留水となって各所に滞留する。この滞留水は水蒸気入口室23aの底部にも滞留水116として滞留する。
【0040】
したがって、蒸留水製造装置の停止中に、蒸発器23の水蒸気入口室23aと次段の蒸発器26の蒸留水出口室26cとを連通する滞留水排出管45と、蒸発器23の蒸留水出口室23cと次段の蒸発器26の水蒸気入口室26aとを連通する蒸留水排出管39とを経由することで、上段の第1蒸発器、第2蒸発器22から排出されて蒸発器23内に滞留した滞留水116や蒸留水117を、順次下段の第4蒸発器26に送り、最終段蒸発器30の水蒸気入口室30a及び蒸留水出口室30cを経由して、そこから蒸留水113、滞留水119を外部に排出して蒸留水タンク46に貯留することができる。これにより、各段の蒸発器内の滞留水を集めて排出することで、これを蒸留装置20から除去することができるので、蒸留水製造装置の停止中に装置内に滞留水が残留してその清浄度が低下する恐れがなくなる。
【実施例2】
【0041】
図5は本発明にかかる他の蒸留水製造装置(実施例2)を示す図であり、蒸発器の滞留水排出口及びその周囲の部分拡大図である。この実施例2の蒸留水製造装置において、図示する以外の部分は実施例1の蒸留水製造装置と共通であり、ここではその詳細な説明は省略する。実施例2にかかる蒸留水製造装置は、同図に示すように、蒸発器23の水蒸気入口室23a内の、滞留水排出口29の上部であって滞留水116の液面116aと同程度の高さ位置(伝熱管43の下端43aと同程度の高さ位置)に、滞留水排出口29の上面を略覆うように平板状の部材である水蒸気巻き込み防止板47を設置している。この水蒸気巻き込み防止板47を設置することにより、蒸留水製造装置の運転中にオリフィス28の前後圧力差が大きい場合でも、水蒸気入口室23aに導入された水蒸気105が滞留水排出口29に巻き込まれて該滞留水排出口29から排出されることを防止でき、蒸発器23の熱源となる水蒸気105が次段蒸発器26に吹き抜けてしまうことを防止できる。
【0042】
また、本実施例では、滞留水排出口29のオリフィス28の上流側(滞留水116の流入口側)であって該オリフィス28を囲む位置に、ストレーナー48を設置している。該ストレーナー48により、滞留水116に含まれる異物などを除去することができ、オリフィス28が目詰まりすることを防止できる。
【実施例3】
【0043】
図6は本発明にかかる他の蒸留水製造装置(実施例3)を示す図であり、蒸発器の滞留水排出口及びその周囲の部分拡大図である。この実施例3の蒸留水製造装置において、図示する以外の部分の構成は実施例1の蒸留水製造装置と共通であり、その詳細な説明は省略する。この実施例3にかかる蒸留水製造装置では、同図に示すように、滞留水排出口29に取り付けたオリフィス28の下流側(滞留水116の流出口側)、即ち、オリフィス28の下側に、斜め下方に向かって傾斜した状態で設置された平板状の部材からなる滞留水ガイド板(滞留水ガイド部材)49を設置している。このように、オリフィス28の下部に滞留水ガイド板49を設置することで、オリフィス28から排出された滞留水116と滞留水ガイド板49との間に表面張力を働かせて、オリフィス28からの滞留水116の排出を促進させる。これにより、水蒸気入口室23a内に滞留する滞留水116が滞留水排出口29から排出し易くなるようにする。ここでは、滞留水ガイド板49を斜めに傾斜させて取り付けたことで、滞留水ガイド板49によって滞留水116がガイドされるため、滞留水の排出がさらに促進される。
【0044】
滞留水ガイド板49の滞留水116と接触する面49aに親水処理を施しておくと、滞留水ガイド板49に触れた滞留水116の表面張力が破断するため、滞留水排出口29から滞留水116がさらに排出され易くなる。この、親水処理として、例えば、金属(SUS)の容射処理等を施すことができる。
【0045】
上記した実施例2の蒸留水製造装置が備える水蒸気巻き込み防止板47と、実施例3の蒸留水製造装置が備える滞留水ガイド板49は、一つの蒸発器の水蒸気入口室にこれらの両方を設置してもよい。また、これら水蒸気巻き込み防止板47や滞留水ガイド板49の形状や設置位置等は上記説明や図面に記載されたものに限定されるのではなく、それらの機能を奏することができる形状等であれば、適宜設計変更することが可能である。
【0046】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、蒸留水製造装置は上記した構成に限定される訳ではなく、例えば蒸発器を設ける段数等は蒸留水製造装置に求められる性能に応じて変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の蒸留水製造装置の概略構成例を示す図である。
【図2】従来の蒸留水製造装置の蒸発器の構成例を示す概略拡大図である。
【図3】本発明にかかる蒸留水製造装置(実施例1)の概略構成例を示す図である。
【図4】本発明にかかる蒸留水製造装置(実施例1)の蒸発器の構成例を示す概略拡大図である。
【図5】本発明にかかる蒸留水製造装置(実施例2)の蒸発器の構成例を示す部分拡大図である。
【図6】本発明にかかる蒸留水製造装置(実施例3)の蒸発器の構成例を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0048】
10 脱気器
10a 熱交換器
20 蒸留装置
21 蒸発器
21a 熱交換器
22 蒸発器
22 蒸留水出口室
22a 水蒸気入口室
22b 熱交換器
23 蒸発器
23a 水蒸気入口室
23b 熱交換器
23c 蒸留水出口室
24 蒸留水排出口
24a 減圧機構
25 蒸留水排出管
26 蒸発器
26a 水蒸気入口室
26b 熱交換器
26c 蒸留水出口室
27 連通管
28 減圧機構(オリフィス)
29 滞留水排出口
30 最終段蒸発器
30a 水蒸気入口室
30c 蒸留水出口室
31 減圧機構
32 連通管
33 連通管
34 滞留水排出口
35 滞留水排出管
36 連通管
37 減圧機構
38 蒸留水排出口
39 蒸留水排出管
40 連通管
41 減圧機構
42 底面
43 伝熱管
43a 下端
44 連通管
45 滞留水排出管
46 蒸留水タンク
47 防止板
48 ストレーナー
49 滞留水ガイド板
49a 面
60 凝縮器
60a 熱交換器
61 連通管
62 気液分離タンク
63 真空ポンプ
100 原料水
101 熱源媒体
102 水蒸気
103 濃縮原料水
104 蒸留水
105 水蒸気
106 濃縮原料水
107 水蒸気
109 水蒸気
110 濃縮水
111 冷却媒体
112 蒸留水
113 蒸留水
114 水蒸気
115 不凝縮ガス
116 滞留水
116a 液面
117 蒸留水
119 滞留水
121 濃縮原料水
122 滞留水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器を備え、前記蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最終段蒸発器まで繰り返し、前記凝縮器に前記最終段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮して蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置において、
前記蒸留装置の各段の蒸発器は、水蒸気が導入される水蒸気入口室と、該導入される水蒸気で原料水を加熱する熱交換器と、該熱交換器で発生した蒸留水が排出される蒸留水出口室とを具備し、
前記蒸発器の前記水蒸気入口室の底部に、前記水蒸気入口室の滞留水を排出する減圧機構が設けられた滞留水排出口を具備すると共に、
該滞留水排出口と次段の蒸発器の水蒸気入口室又は蒸留水出口室とを連通する滞留水排出流路を具備することを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸留水製造装置において、
前記減圧機構はオリフィスであることを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸留水製造装置において、
前記滞留水排出口の滞留水流入部に、該滞留水排出口への水蒸気の巻き込みを防止する水蒸気巻き込み防止板を設置したことを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の蒸留水製造装置において、
前記滞留水排出口の滞留水流出部に、該滞留水排出口から流出した滞留水をガイドするガイド部材を設置したことを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸留水製造装置において、
前記ガイド部材は、前記滞留水排出口の滞留水流出部の近傍から前記滞留水排出口の下方に向かって斜めに設置した平板であることを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の蒸留水製造装置において、
前記ガイド部材の前記滞留水排出口に対向する面に親水処理が施されたことを特徴とする蒸留水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−130382(P2006−130382A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319602(P2004−319602)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】