説明

蒸留装置

【課題】本体内空間部を減圧させ、原料水を蒸留させて蒸留水を取得する蒸留装置であって、少ないエネルギーで効率よく原料水を蒸留させることができる蒸留装置を提供する。
【解決手段】蒸留装置1は、前記原料水容器3の下方から内部へと突出させた超微細気泡発生装置6を具備し、前記超微細気泡発生装置6の周囲に熱源45を設け、前記超微細気泡発生装置6は、気体を圧送するためのコンプレッサ41と、圧送された気体を超微細気泡として原料水内へ放出するための気泡発生媒体42とを具備し、前記気泡発生媒体42は、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体内空間部を減圧させ、原料水を蒸留させて蒸留水を取得する蒸留装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体内空間部を減圧させ、原料水を蒸留させて蒸留水を取得する蒸留装置は公知となっている。例えば、本体内空間部を減圧状態に保つことのできる容器と、加熱・冷却する加熱・冷却手段を備えた容器と、水蒸気を凝縮させる凝縮手段を備えた容器とを具備する装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。また、高密度化したフィルターに原料水を圧送して濾過し生成する方法も公知となっている。
【0003】
一方、近年、超微細気泡を使用する技術が注目されている。前記超微細気泡は、表面積が非常に大きい特性及び自己加圧効果などの物理化学的な特性を有しており、その特性を生かして、排水浄化、洗浄、及び、浴槽内での身体ケア等に使用する技術が開発されている。
また、前記超微細気泡は、高い熱伝導性を有していることが分かっている。超微細気泡を含んだ液体は超微細気泡を含まない液体よりも温度変化が早いことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−239536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記蒸留装置においては、原料水を加熱して沸騰させるための大きな熱エネルギーが必要となる。ここで、原料水の加熱方法として、化石エネルギーの燃焼による加熱を行った場合には、多量の二酸化炭素が発生することとなり環境に悪影響を及ぼすことがあった。また、フィルターを使用した方法では、原料水を加圧するために大きなエネルギーを使用する。また、使用済みのフィルターの詰まりを清掃するために多大な費用がかかっていた。
【0006】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、本体内空間部を減圧させ、原料水を蒸留させて蒸留水を取得する蒸留装置であって、少ないエネルギーで効率よく原料水を蒸留させることができる蒸留装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、本体内空間部を減圧することができる蒸留装置本体と、該蒸留装置本体内に設けられた原料水を貯めるための原料水容器と、前記蒸留装置本体内に設けられた蒸留水容器と、前記原料水容器の上方に設けられた蒸気凝集器と、からなる蒸留装置において、前記蒸留装置は、前記原料水容器の下方から内部へと突出させた超微細気泡発生装置を具備し、前記超微細気泡発生装置の周囲に超微細気泡となる気体を熱するための熱源を設け、前記超微細気泡発生装置は、気体を圧送するための圧縮機と、前記熱源により熱せられた気体を超微細気泡として原料水内へ放出するための気泡発生媒体と、を具備し、前記気泡発生媒体は、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であるものである。
【0009】
請求項2においては、前記蒸気凝集器は、高密度複合体で形成されたものである。
【0010】
請求項3においては、前記気泡発生媒体の表面部に略直交する方向に向けて、前記原料水と同種の液体を噴射する液体噴射装置を設けたものである。
【0011】
請求項4においては、前記超微細気泡発生装置は、空気中の酸素より活性酸素を生成する活性酸素生成装置を具備し、前記超微細気泡発生装置から原料水内へ放出する気体を活性酸素としたものである。
【0012】
請求項5においては、前記熱源は、電磁誘導装置によって構成したものである。
【0013】
請求項6においては、前記熱源は、太陽光を集光する集光レンズと、該集光レンズによって集めた太陽光を前記超微細気泡発生装置へ導光する光ファイバーと、を具備したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、蒸留装置本体内の空間部が減圧されることで、原料水が低温度で沸騰することとなるため消費熱エネルギーを小さくすることができ、蒸留にかかるコストを減少させることができる。また、フィルターを使用する方法と比較して維持コストを減少させることができる。また、超微細気泡発生装置より発生した熱を帯びた超微細気泡が原料水の温度上昇に作用することにより、原料水を少ない熱エネルギーで蒸発させることが可能となる。また、熱を帯びた超微細気泡が原料水内に含まれることにより、原料水の蒸発する速度が増大する。また、超微細気泡は原料水中を上方へ移動する間に原料水に熱を伝えることにより冷やされて体積が減少し続けるため、新たな超微細気泡が発生するスペースが生まれ、より多くの超微細気泡を発生させることが可能となる。また、超微細気泡は体積が小さければ小さいほど液中に存在する時間が長くなり、液体中に存在する超微細気泡の数を増加させることが可能となる。また、超微細気泡が原料水の水面から空気中へ放出されるときには破裂するが、その際に表面積が大きくなるためより多くの原料水を蒸発させることが可能となる。
【0016】
請求項2においては、高密度複合体は熱伝導が速いので、前記原料水容器から上方へ蒸発した水蒸気を多量に結露させて、蒸留水容器へと導くことが可能となる。
【0017】
請求項3においては、超微細気泡が発生した瞬間に水流によって気泡発生媒体から離間することにより、合体して大きな気泡になることを防ぐことができるため、簡易な方法で超微細気泡を発生させることができる。また、超微細気泡が前記液体噴射装置の噴射流で拡散することにより、素早く原料水の温度を上昇させることが可能となる。
【0018】
請求項4においては、蒸留装置本体内の空間部が減圧されることで、原料水が低温度で沸騰することとなるため消費熱エネルギーを小さくすることができ、蒸留にかかるコストを減少させることができる。また、オゾン等の活性酸素により原料水内の細菌等を殺菌することができる。
【0019】
請求項5においては、気泡発生媒体の加熱を速くして、効率よく超微細気泡を発生させることができる。
【0020】
請求項6においては、自然のエネルギーである太陽光を使用することは化石燃料を全く使用せずに原料水を蒸留することが可能となるので、二酸化炭素を排出することなく環境に負荷をかけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】蒸留装置の全体的な構成を示す正面一部断面図。
【図2】原料水容器及び気泡発生媒体の構成を示す正面一部断面図。
【図3】蒸留装置による蒸留過程を示す正面一部断面図。
【図4】蒸留装置による蒸留過程を示す正面一部断面図。
【図5】蒸留装置及び活性酸素生成装置を示す正面一部断面図。
【図6】集光レンズ及び光ファイバーを具備する熱源を示す正面一部断面図。
【図7】蒸留装置及び熱交換器を示す正面一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0023】
まず、蒸留装置1の構成について図1及び図2を用いて説明する。
前記蒸留装置1は、本体内空間部を減圧させ、原料水を蒸留させて蒸留水を取得する蒸留装置である。
前記蒸留装置1は、図1に示すように、本体内空間部を減圧することができる蒸留装置本体2と、該蒸留装置本体2内に設けられた原料水を貯めるための原料水容器3と、前記蒸留装置本体2内に設けられた蒸留水容器4と、前記原料水容器3の上方に設けられた蒸気凝集器5と、前記原料水容器3の下方から原料水容器3内部へと突出させた超微細気泡発生装置6を具備する。
【0024】
前記蒸留装置本体2は、前記原料水容器3と、蒸留水容器4と、蒸気凝集器5と、超微細気泡発生装置6とを収納することができる容器であり、原料水容器3、蒸留水容器4、及び蒸気凝集器5を配置した本体内空間部としての空間部2aは等気圧になるように密閉されている。前記蒸留装置本体2の空間部2aの周囲を囲む壁面には吸気孔11が設けられており、該吸気孔11から空間部2a内部の空気を吸引することにより、空間部2a内の気圧を減圧することが可能となっている。前記吸気孔11は、逆止弁構造となっており吸気孔11から空気が流入するのを防止している。なお、前記吸気孔11は、本実施例では、原料水容器3の上方であって、蒸気凝集器5の下方に設けられているが、これに限定するものではなく、空間部2aに接している壁面であれば変更することも可能である。
【0025】
前記原料水容器3は、前記蒸留装置本体2の空間部2aに設けられている。前記原料水容器3の下面中央部より超微細気泡発生装置6を構成する気泡発生媒体42が上方に突出している。また、前記原料水容器3の周囲には断熱材15が配置されており、蒸留装置本体2内の他の部分と熱交換を行わないように構成している。
【0026】
前記蒸留水容器4は、前記蒸留装置本体2の空間部2aに設けられており、前記蒸気凝集器5よりも下方に設けられている。該蒸留水容器4の下面は四角錘台と直方体とを組み合わせた形状に構成されており、溜まった蒸留水は四角錘台の傾斜面を伝って直方体部分に貯められ、直方体部分側面下端部に設けられた取水路25を通って取水口26より取り出せる構成となっている。
【0027】
前記蒸気凝集器5は、前記蒸留装置本体2の空間部2aであって前記原料水容器3の上方に設けられている。前記蒸気凝集器5は、高密度複合体で形成されており、該蒸気凝集器5の内部には冷媒を通すための通路5aが設けられている。前記蒸気凝集器5を構成する高密度複合体は、非常に熱交換効率の高い複合セラミックで構成されている。また、前記蒸気凝集器5は、前記通路5aが設けられた平板部5bと、該平板部5bより下方に突出した複数の突出部5cとから形成されている。言い換えれば、前記蒸気凝集器5は正面視櫛型に形成されている。前記複数の突出部5cを設けることにより蒸気凝集器5全体の表面積を拡大させて、上昇する蒸気と接触する面積を大きくすることができる。
なお、本実施例においては蒸気凝集器5は櫛型に形成されているがこれに限定されるものではなく、例えば、蒸気凝集器5は板状に形成し、該蒸気凝集器5の内部に冷媒を通すための通路を複数設ける構成とすることも可能である。
【0028】
前記蒸気凝集器5の下方には前記蒸気凝集器5に付着した蒸留水の水滴を集めるための収集容器30が設けられている。前記収集容器30に集められた蒸留水の水滴は前記収集容器30の底部に連結された蒸留水用配管31を通って、蒸留水容器4へと送られる。
【0029】
前記超微細気泡発生装置6は、気体を圧送するための圧縮機であるコンプレッサ41と、圧送された気体を超微細気泡として原料水内へ放出するための気泡発生媒体42とを具備する。
前記コンプレッサ41は、図示せぬ気体供給路を介して気体を気泡発生媒体42の内部空間42aへと圧送する装置である。前記コンプレッサ41は前記蒸留装置本体2の外部に設けている。
また、前記コンプレッサ41は、前記蒸留装置本体2に設けた吸気孔11と接続している。これにより、前記コンプレッサ41は、前記蒸留装置本体2内の空気を吸入することにより減圧する減圧機としての役割も兼ねることとなる。
【0030】
前記気泡発生媒体42は、その上部が一部前記原料水容器3に突出している構成となっている。また、前記気泡発生媒体42は、固体組織がイオン結合による分子構造である高密度複合体で形成されている。また、前記高密度複合体は導電体であり、前記気泡発生媒体42から発生する気泡は負の電荷を帯電する。言い換えれば、導電体である前記気泡発生媒体42を通過する際に超微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷を帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。例えば、前記導電体は炭素系の素材で構成している。
【0031】
また、前記気泡発生媒体42には複数の長手方向に延伸した内部空間42a・42a・42aが設けられている。前記内部空間42aは、コンプレッサ41から圧送されてきた空気を気泡発生媒体42へ導くための通路であり、その形状は限定するものではなく、例えば、長手方向へ延伸した一つの大きな空洞で構成することも可能である。また、図2に示すように、前記気泡発生媒体42は、直径数μm〜数十μmの細かな孔42b・42b・・・を多数有しており、前記コンプレッサ41から圧送された気体が前記孔42bから液体中へ放出される構造となっている。すなわち、前記コンプレッサ41から圧送された気体のガス圧で、超微細気泡が前記孔42bから液体中へ放出されるものである。また、前記空間部2aの減圧を行う減圧機を別に設けた場合には、減圧機により空間部2aの気圧を減圧することで、気泡発生媒体42の内部空間42aに存在する気体が前記孔42bを通過して放出される。すなわち、前記減圧機の吸引圧により、超微細気泡が前記孔42bから液体中へ放出されるものである。
【0032】
また、前記気泡発生媒体42の原料水容器3に突出していない部分の周囲には熱源45が配置されており、前記気泡発生媒体42の熱源45と接触する部分はコーティング材によって覆われている。前記コーティング材は、無機質で硬度と活性を具備し熱を伝達する素材であり、例えば、シリカガラスで構成されている。また、前記気泡発生媒体42の下面は開放されている。
また、前記気泡発生媒体42自体も熱媒体として熱源45からの熱を受け、原料水容器3内に突出した部分より熱を放出する。これにより、原料水容器3内の原料水の温度が上昇することとなる。
【0033】
前記熱源45は、前記気泡発生媒体42の下部であって、原料水容器3に突出していない部分の周囲に設けられている。前記熱源45は、例えば、電気式のヒーターで構成されており、熱源45から熱を発生させて前記気泡発生媒体42に熱を伝導して該気泡発生媒体42の内部空間42a・42a・・を通過する気体へ熱を伝えるものである。前記熱源45の外周には断熱材15が設けられており熱交換を防止している。
【0034】
また、前記熱源45は、電磁誘導装置によって構成することも可能である。この場合、前記熱源45に電流を流すことで電磁誘導を発生させ、気泡発生媒体42を高周波加熱するものである。このように構成することにより、前記気泡発生媒体42の加熱を速くして、効率よく超微細気泡を発生させることができる。
【0035】
このように構成した蒸留装置1を使用した蒸留水の製造方法について、図1、図2、図3及び図4を用いて説明する。
前記原料水容器3に原料水を投入する。ここで、原料水とは例えば河川の水や地下水、海水等である。次に前記コンプレッサ41により蒸留装置本体2内の空間部2aの気圧を減圧しつつ、前記超微細気泡発生装置6を構成する気泡発生媒体42へ空気を圧送する。なお、前記蒸留装置本体2内の空間部2aの気圧を減圧する減圧機を別に設けることも可能である。前記コンプレッサ41により気泡発生媒体42へと圧送された空気は気泡発生媒体42を通過する際に熱源45によって温められ、熱を帯びる。そして、熱を帯びた空気は前記気泡発生媒体42の原料水容器3に突出している部分の孔42bから超微細気泡として噴出し原料水内へ混入される。これにより、原料水は熱を帯びた超微細気泡から熱エネルギーを受け渡されて温められ沸騰することとなる。なお空間部2a内の気圧は減圧されているため、原料水が沸騰する温度は常圧での沸点である摂氏100度よりも低い。
蒸発した水蒸気は、図3に示すように、蒸気凝集器5によって冷やされて結露し、突出部5cを伝って収集容器30内へと落下する。収集容器30内へ落下した蒸留水の水滴は、収集容器30の底部に連結された蒸留水用配管31を通って蒸留水容器4へと滴下する。ここで、前記蒸気凝集器5は、通路5a内に冷媒を流すことによって冷やされるものである。このようにして、蒸留水容器4内にある程度溜まった蒸留水は取水口26から取り出すことが可能となる。
【0036】
また、図4に示すように、前記気泡発生媒体42の原料水容器3に突出している部分の孔42bから噴出した超微細気泡は原料水の温度よりも高い温度である。このため、超微細気泡は原料水に熱を伝えることにより冷やされて体積が減少する。すなわち、超微細気泡は原料水中を上方へ移動する間に原料水に熱を伝えることにより冷やされて体積が減少し続けるため、新たな超微細気泡が発生するスペースが生まれ、より多くの超微細気泡を発生することが可能となる。また、超微細気泡は体積が小さければ小さいほど液中に存在する時間が長くなり、液体中に存在する超微細気泡の数を増加させることが可能となる。
また、超微細気泡は原料水の水面から空気中へ放出されるときには破裂するが、その際に表面積が大きくなるため、より多くの原料水を蒸発させることが可能となる。
【0037】
次に、前記原料水容器3に設けられた超微細気泡発生装置6から発生する超微細気泡を超微細気泡発生装置6の表面から分離する手段について説明する。
【0038】
超微細気泡を超微細気泡発生装置6の表面から分離する手段の一例である、超微細気泡発生装置6を構成する気泡発生媒体42の上方から気泡発生媒体42の上面に対して垂直に液流を発射させるための液体噴射装置51による手段について説明する。
前記液体噴射装置51は、図1及び図2に示すように、前記気泡発生媒体42の表面部42cに発生した超微細気泡を液流によって離間させるための装置である。前記液体噴射装置51では、前記超微細気泡が放出される液体と同種の液体を噴射するものである。すなわち、前記原料水容器3の側面に開けた原料水吸入孔52からポンプ53によって原料水を吸い上げ、噴射管54を通して原料水を噴射するものである。このように構成することにより、別種の液体が混入されることも無く、液体の成分に影響を及ぼさずに、超微細気泡を液流によって離間させることができる。
【0039】
前記液体噴射装置51によって圧送された液体は、前記超微細気泡が気泡発生媒体42の孔42bから発生する瞬間に、前記気泡発生媒体42の表面部42cを高速で通過することによって、前記気泡発生媒体42の表面部42cから超微細気泡を離間させるものである。これにより、表面部42cの超微細気泡は、後から発生する超微細気泡や周辺の孔42bから発生する超微細気泡と合体することなく単独で液中へ移動することとなる。このように構成することにより、簡易な方法で超微細気泡を発生させることができる。また、超微細気泡発生装置6の設置方法の自由度を向上させて、設置場所や機能要求に合った設計を可能とすることができる。
【0040】
また、図5に示すように、前記気泡発生媒体42から放出される気体をオゾン等の活性酸素とすることも可能である。
前記蒸留装置本体2内の空間部2aの気圧を減圧する減圧コンプレッサ61が設けられている。前記減圧コンプレッサ61とは別に空気の圧送手段である圧送コンプレッサ62が設けられている。前記圧送コンプレッサ62から圧送された空気からオゾン等の活性酸素を生成する活性酸素生成装置63が設けられている。
前記活性酸素生成装置63は、空気中の酸素からオゾン等の活性酸素を生成する装置である。前記活性酸素生成装置63によって生成されたオゾン等の活性酸素は、前記気泡発生媒体42へと圧送される。
前記圧送コンプレッサ62により気泡発生媒体42へと圧送されたオゾン等の活性酸素は気泡発生媒体42を通過する際に熱源45によって温められ、熱を帯びる。そして、熱を帯びたオゾン等の活性酸素は前記気泡発生媒体42の原料水容器3に突出している部分の孔42bから超微細気泡として噴出し原料水内へ混入される。これにより、原料水は熱を帯びた超微細気泡から熱エネルギーを受け渡されて温められ蒸発することとなる。
【0041】
また、オゾン等の活性酸素により原料水内の細菌等を殺菌、洗浄することができる。前記蒸留装置1は原料水に超微細気泡を混入するため、従来の蒸留装置よりも低い温度で原料水が蒸発する。そのため、熱により殺菌していた細菌等が完全には殺菌できない場合があるが、このような場合においても、オゾン等の活性酸素により原料水内の細菌等を殺菌することができる。これにより、蒸留のために必要な熱量を低減することが可能となる。
【0042】
また、図6に示すように、前記熱源45は、太陽光を集光する集光レンズ71と、該集光レンズ71によって集めた太陽光を前記超微細気泡発生装置6の周囲へ導光する光ファイバー72とを具備する構成とすることもできる。
前記集光レンズ71は、凸レンズであり太陽光などの自然光を集光するものである。前記集光レンズ71は集光レンズ台73にレンズ面の角度を変更できるように固定されており、太陽光を集光する場合、太陽の移動に合わせて集光レンズ71のレンズ面の角度を変更することが可能となっている。なお、太陽の時間ごとの位置を制御装置に記憶させておくことにより、該制御装置が現在時刻から太陽と正対するレンズ面の角度を演算し、アクチュエータを作動させて集光レンズ71のレンズ面の角度を変更させることで、前記集光レンズ71が太陽の移動を追尾することも可能となっている。また、前記集光レンズ71の焦点に光ファイバー72の入射端72aを配置している。該光ファイバー72は、例えば、石英グラスファイバーなどで構成されており、入射端より入射した太陽光は光ファイバー72内で全反射を繰り返しながら、出射端72bより出射する。前記出射端72bは、熱媒体74内に設けられており、該熱媒体74は前記出射端72bより出射された太陽光によって温められることとなる。
【0043】
また、図7に示すように、蒸気凝集器5の冷却に使用した冷媒の熱量を利用して、原料水を予熱することもできる。
原料水は、原料水容器3に投入される前に貯水槽81に一旦貯められる。原料水は貯水槽81から供給ポンプ82によって汲みあげられ原料水容器3へと投入される。貯水槽81の内部には原料水を温めるためのヒーター83が設けられている。前記ヒーター83は中空になっており温媒を通すことで熱伝導により原料水を温める。
前記ヒーター83に通す温媒は原料水へ熱を伝えた後、熱交換器84に入り、前記蒸気凝集器5の冷却に使用した冷媒と熱交換を行う。これにより、温媒は温められ再びヒーター83に通されることにより原料水を温めることができる。そして温められた原料水は貯水槽81から供給ポンプ82によって汲みあげられ原料水容器3へと投入される。
このように、原料水を予熱することにより、原料水を効率よく蒸発させることが可能となり、原料水容器3内の原料水を昇温させるために必要なエネルギーを少なくすることができる。
【0044】
以上のように、前記蒸留装置1は、空間部2aを減圧することができる蒸留装置本体2と、該蒸留装置本体2内に設けられた原料水を貯めるための原料水容器3と、前記蒸留装置本体2内に設けられた蒸留水容器4と、前記原料水容器3の上方に設けられ、蒸留水容器4側へ向けて下方へ傾斜させた一つまたは複数の蒸気凝集器5と、からなる蒸留装置1において、前記蒸留装置1は、前記原料水容器3の下方から内部へと突出させた超微細気泡発生装置6を具備し、前記超微細気泡発生装置6の周囲に超微細気泡となる気体を熱するための熱源45を設け、前記超微細気泡発生装置6は、気体を圧送するための圧縮機であるコンプレッサ41と、前記熱源45により熱せられた気体を超微細気泡として原料水内へ放出するための気泡発生媒体42と、を具備し、前記気泡発生媒体42は、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であるものである。このように構成することにより、蒸留装置本体2内の空間部2aが減圧されることで、原料水が低温度で沸騰することとなるため消費熱エネルギーを小さくすることができ、蒸留にかかるコストを減少させることができる。また、フィルターを使用する方法と比較して維持コストを減少させることができる。また、超微細気泡発生装置6より発生した熱を帯びた超微細気泡が原料水の温度上昇に作用することにより、原料水を少ない熱エネルギーで蒸発させることが可能となる。また、熱を帯びた超微細気泡が原料水内に含まれることにより、原料水の蒸発する速度が増大する。また、超微細気泡は原料水中を上方へ移動する間に原料水に熱を伝えることにより冷やされて体積が減少し続けるため、新たな超微細気泡が発生するスペースが生まれ、より多くの超微細気泡を発生させることが可能となる。また、超微細気泡は体積が小さければ小さいほど液中に存在する時間が長くなり、液体中に存在する超微細気泡の数を増加させることが可能となる。また、超微細気泡が原料水の水面から空気中へ放出されるときには破裂するが、その際に表面積が大きくなるためより多くの原料水を蒸発させることが可能となる。
【0045】
また、前記蒸気凝集器5は、高密度複合体で形成されているものである。このように構成することにより、高密度複合体は熱伝導が速いので前記原料水容器3から上方へ蒸発した水蒸気を多量に結露させて、蒸留水容器4へと導くことが可能となる。
【0046】
前記気泡発生媒体42の表面部42cに略直交する方向に向けて、前記原料水と同種の液体を噴射する液体噴射装置51を設けたものである。このように構成することにより、超微細気泡が発生した瞬間に水流によって気泡発生媒体42から離間することにより、合体して大きな気泡になることを防ぐことができるため、簡易な方法で超微細気泡を発生させることができる。また、超微細気泡が前記液体噴射装置51の噴射流で拡散することにより、素早く原料水の温度を上昇させることが可能となる。
【0047】
また、前記超微細気泡発生装置6は、空気中の酸素より活性酸素を生成する活性酸素生成装置を具備し、前記超微細気泡発生装置6から原料水へ放出する気体を活性酸素としたものである。蒸留装置本体2内の空間部が減圧されることで、原料水が低温度で沸騰することとなるため消費熱エネルギーを小さくすることができ、蒸留にかかるコストを減少させることができる。また、オゾン等の活性酸素により原料水内の細菌等を殺菌することができる。
【0048】
また、前記熱源45は、電磁誘導装置によって構成したものである。このように構成することにより、前記気泡発生媒体42の加熱を速くして、効率よく超微細気泡を発生させることができる。
【0049】
また、前記熱源45は、太陽光を集光する集光レンズ71と、該集光レンズ71によって集めた太陽光を前記超微細気泡発生装置6へ導光する光ファイバー72とを具備することもできる。このように構成することにより、自然のエネルギーである太陽光を使用することは化石燃料を全く使用せずに原料水を蒸留することが可能となるので、二酸化炭素を排出することなく環境に負荷をかけることがない。
【符号の説明】
【0050】
1 蒸留装置
2 蒸留装置本体
3 原料水容器
4 蒸留水容器
5 蒸気凝集器
6 微細気泡発生装置
41 コンプレッサ
42 気泡発生媒体
45 熱源
51 液体噴射装置
63 活性酸素生成装置
71 集光レンズ
72 光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内空間部を減圧することができる蒸留装置本体と、該蒸留装置本体内に設けられた原料水を貯めるための原料水容器と、前記蒸留装置本体内に設けられた蒸留水容器と、前記原料水容器の上方に設けられた蒸気凝集器と、からなる蒸留装置において、
前記蒸留装置は、前記原料水容器の下方から内部へと突出させた超微細気泡発生装置を具備し、前記超微細気泡発生装置の周囲に超微細気泡となる気体を熱するための熱源を設け、
前記超微細気泡発生装置は、気体を圧送するための圧縮機と、前記熱源により熱せられた気体を超微細気泡として原料水内へ放出するための気泡発生媒体と、を具備し、
前記気泡発生媒体は、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であることを特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
前記蒸気凝集器は、高密度複合体で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記気泡発生媒体の表面部に略直交する方向に向けて、前記原料水と同種の液体を噴射する液体噴射装置を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記超微細気泡発生装置は、空気中の酸素より活性酸素を生成する活性酸素生成装置を具備し、前記超微細気泡発生装置から原料水内へ放出する気体を活性酸素としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記熱源は、電磁誘導装置によって構成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記熱源は、太陽光を集光する集光レンズと、該集光レンズによって集めた太陽光を前記超微細気泡発生装置へ導光する光ファイバーと、を具備したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−167403(P2010−167403A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162260(P2009−162260)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(508231256)株式会社西研デバイズ (8)
【出願人】(504077308)
【Fターム(参考)】