説明

蒸留装置

【課題】低コスト化を図りながら、蒸留を安定して行うことができる蒸留装置を提供することを目的とする。
【解決手段】蒸留装置1は、貯水槽2と、蒸留装置本体3と、供給ポンプ4と、減圧ポンプ5と、超微細気泡発生装置6と、熱源7と、太陽光発電装置9とを具備し、太陽光発電装置9は、太陽電池パネル51と、この太陽電池パネル51の下面に接するように設けられる第一冷却パネル81とを有し、蒸留水を第一冷却パネル81と貯水槽2内に設けられた第一熱交換部材84の内部との間に流通させ、太陽電池パネル51の熱を当該原料水に回収させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料水を蒸留して蒸留水を製造する蒸留装置に関し、特に、太陽光発電装置を具備する蒸留装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体内空間部を減圧させ、原料水を蒸留させて蒸留水を取得する蒸留装置は公知となっている。例えば、本体内空間部を減圧状態に保つことのできる容器と、加熱・冷却する加熱・冷却手段を備えた容器と、水蒸気を凝縮させる凝縮手段を備えた容器とを具備する第一の蒸留装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、高密度化したフィルターに原料水を圧送して濾過し生成する第二の蒸留装置も公知となっている。
【0004】
また、蒸留装置内へ原料水を圧送する圧送手段や本体内空間部を減圧状態に保つための減圧手段等を駆動させるために使用する電力を、太陽光発電装置から供給する第三の蒸留装置も公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、近年、超微細気泡を使用する技術が注目されている。前記超微細気泡は、表面積が非常に大きい特性および自己加圧効果などの物理化学的な特性を有しており、その特性を生かして、排水浄化、洗浄、および、浴槽内での身体ケア等に使用する技術が開発されている。
【0006】
さらに、前記超微細気泡は、高い熱伝導性を有していることが分かっている。超微細気泡を含んだ液体は超微細気泡を含まない液体よりも温度変化が速いことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−239536号公報
【特許文献2】特開2006−181516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記第一の蒸留装置においては、原料水を加熱して沸騰させるための大きな熱量が必要となる。ここで、原料水の加熱方法として、化石エネルギーの燃焼による加熱を行った場合には、多量の二酸化炭素が発生することとなり環境に悪影響を及ぼすことがあるとともに、燃料コストの変動が蒸留装置の運転コストに大きな影響を及ぼすことがあった。
【0009】
前記第二の蒸留装置においては、原料水を加圧するために大きなエネルギーを使用する。また、蒸留装置の初期投資コストが多大となるとともに、使用済みのフィルターの詰まりを清掃するためにメンテナンスコストも多大となっていた。
【0010】
前記第三の蒸留装置においては、原料水の加熱による環境への悪影響を抑制することができるが、太陽電池パネルの温度が太陽光を受けて上昇すると、太陽光発電装置の発電効率が低下するため、この影響を受けて蒸留を安定して行うことができないおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、低コスト化を図りながら、蒸留を安定して行うことができる蒸留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1においては、原料水を貯溜するための貯水槽と、原料水の蒸留を行うための蒸留装置本体と、原料水を前記貯水槽から前記蒸留装置本体へ供給するための供給手段と、前記蒸留装置本体内を減圧するための減圧手段と、前記蒸留装置本体に供給された原料水に超微細気泡を発生させる超微細気泡発生手段と、前記蒸留装置本体に供給された原料水を加熱する加熱手段と、前記蒸留装置本体で得られた蒸留水を貯溜するための蒸留水容器と、前記供給手段、前記減圧手段、前記加熱手段、および前記超微細気泡発生手段に電力を供給するための太陽光発電装置とを具備し、前記太陽光発電装置は、太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの下面に接するように設けられる熱交換手段とを有し、蒸留水を前記熱交換手段と貯水槽内に設けられた貯水槽用熱交換手段との間に流通させ、前記太陽電池パネルの熱を当該原料水に回収させるものである。
【0014】
請求項2においては、原料水を貯溜するための貯水槽と、原料水の蒸留を行うための蒸留装置本体と、原料水を前記貯水槽から前記蒸留装置本体へ供給するための供給手段と、前記蒸留装置本体内を減圧するための減圧手段と、前記蒸留装置本体に供給された原料水に超微細気泡を発生させる超微細気泡発生手段と、前記蒸留装置本体に供給された原料水を加熱する加熱手段と、前記蒸留装置本体で得られた蒸留水を貯溜するための蒸留水容器と、冷媒と温媒との間で熱交換をするための補助熱交換手段と、前記供給手段、前記減圧手段、前記加熱手段、前記超微細気泡発生手段、および前記補助熱交換手段に電力を供給するための太陽光発電装置とを具備し、前記太陽光発電装置は、太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの下面に接するように設けられる熱交換手段とを有し、前記冷媒を前記熱交換手段に流通させ、前記補助熱交換手段は、前記太陽光発電装置の熱交換手段を通過した後の冷媒の熱を温媒に伝導し、前記温媒を前記貯水槽内に設けられた貯水槽用熱交換手段と補助熱交換手段との間に流通させ、前記太陽電池パネルの熱を当該原料水に回収させるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、太陽電池パネルの冷却によって奪った熱量を使用して、原料水を予め加熱することが可能となる。したがって、電力消費量を低減して、低コスト化を図ることができるとともに、太陽光発電装置の発電効率を維持して、蒸留を安定して行うことができる。
【0017】
請求項2においては、太陽電池パネルの冷却によって奪った熱量を使用して、原料水を予め加熱することが可能となる。また、熱交換手段の内部に熱交換効率の高い冷媒を流して効率よく太陽電池パネルの冷却を行うことが可能となる。したがって、電力消費量を低減して、低コスト化を図ることができるとともに、太陽光発電装置の発電効率を維持して、蒸留を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る蒸留装置の全体的な構成を示した概略図。
【図2】蒸留装置本体の空間部および蒸気冷却部を示した拡大一部断面図。
【図3】太陽光発電装置の一部断面斜視図。
【図4】原料水用超微細気泡発生装置および第一冷却パネルの構成を示した概略図。
【図5】本発明の第二実施形態に係る蒸留装置の全体的な構成を示した概略図。
【図6】太陽光発電装置の一部断面斜視図。
【図7】冷媒用超微細気泡発生装置および第二冷却パネルの構成を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0020】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係る蒸留装置1の構成について図1を用いて説明する。
【0021】
蒸留装置1は、蒸留装置本体3内を減圧して、原料水を蒸留することによって、蒸留水を製造するものである。
図1に示すように、蒸留装置1は、貯水槽2と、蒸留装置本体3と、供給ポンプ4と、減圧手段である減圧ポンプ5と、超微細気泡発生手段である超微細気泡発生装置6と、加熱手段である熱源7と、蒸留水容器8と、太陽光発電装置9と、を具備する。
【0022】
貯水槽2は、原料水を貯溜するための水槽である。貯溜された原料水は、貯水槽2から供給ポンプ4を介して蒸留装置本体3に設けられた原料水加熱部11内へと供給される。原料水を貯水槽2に一旦貯溜することにより、原料水に含まれる固形ゴミを沈殿させることができる。
【0023】
蒸留装置本体3は、原料水の蒸留が行われる容器である。蒸留装置本体3は、貯水槽2から供給ポンプ4を介して供給された原料水を加熱する原料水加熱部11と、この原料水加熱部11の上方に設けられた空間部12と、この空間部12の上方に設けられた蒸気冷却部13と、を有する。原料水加熱部11、空間部12、および蒸気冷却部13は上下に連通される。また、蒸気冷却部13には、原料水を加熱することにより発生した水蒸気を冷却し液化させるための蒸気凝集器14が設けられている。
【0024】
供給ポンプ4は、貯水槽2内の原料水を汲み上げ、蒸留装置本体3の原料水加熱部11へ供給可能に構成される。また、供給ポンプ4は、原料水加熱部11内の原料水を汲み上げ、再び原料水加熱部11へ供給可能に構成される。供給ポンプ4は、貯水槽2内の原料水と原料水加熱部11内の原料水とを同時に汲み上げ、原料水加熱部11へ供給可能に構成される。
【0025】
減圧ポンプ5は、蒸留装置本体3の原料水加熱部11、空間部12、および蒸気冷却部13の内部に存在する空気を外部へ排出可能に構成され、原料水加熱部11、空間部12、および蒸気冷却部13の内部の減圧を行うものである。減圧ポンプ5は蒸留装置本体3の蒸気冷却部13に接続されている。
この減圧ポンプ5を用いて原料水加熱部11、空間部12、および蒸気冷却部13の内部の減圧を行うことにより、蒸留装置本体3内の原料水の蒸発および沸騰する温度を下げることが可能となる。
【0026】
超微細気泡発生装置6は、気体供給ポンプ21と、活性酸素発生装置22と、気泡発生媒体23と、を具備する。気体供給ポンプ21および活性酸素発生装置22は蒸留装置本体3の外部に設けられ、気泡発生媒体23は蒸留装置本体3の内部に設けられる。
【0027】
気体供給ポンプ21は、活性酸素発生装置22と接続され、第一気体供給路24を介して外部の空気を活性酸素発生装置22へ供給可能に構成される。
活性酸素発生装置22は、気体供給ポンプ21により供給された外部の空気中の酸素からオゾン等の活性酸素を生成する装置である。活性酸素発生装置22によって生成されたオゾン等の活性酸素は、気体供給ポンプ21によって圧送された空気に押し出され、第二気体供給路25を介して気泡発生媒体23へと圧送される。
なお、本実施形態においては、気泡発生媒体23から発生させる超微細気泡200をオゾン等の活性酸素を用いて形成しているが、これに限定するものではなく、例えば、空気や酸素を用いて形成することも可能である。
【0028】
気泡発生媒体23は、図1に示すように、蒸留装置本体3の原料水加熱部11の水面下に配置されており、活性酸素発生装置22において生成された活性酸素を超微細気泡200として原料水内へ放出して、原料水中に超微細気泡200を発生させる。気泡発生媒体23は、固体組織がイオン結合による分子構造である高密度複合体で形成されている。高密度複合体は炭素系の素材などからなる導電体であり、気泡発生媒体23から発生する超微細気泡200は負の電荷を帯電する。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体23を通過する際に超微細気泡200に自由電子が付加されることにより、超微細気泡200は負の電荷を帯電する。この負の電荷により超微細気泡200同士が互いに反発するため、超微細気泡200が合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0029】
熱源7は、図1に示すように、蒸留装置本体3の原料水加熱部11に供給された原料水を加熱する。熱源7は、超微細気泡発生装置6の第二気体供給路25および気泡発生媒体23に接するように設けられている。熱源7は、例えば電気式のヒーターで構成されており、熱を発生させて、気泡発生媒体23および第二気体供給路25に伝導させる。これにより、熱が気泡発生媒体23の内部空間を通過する活性酸素、および第二気体供給路25を通過する活性酸素へ伝導する。また、熱源7は、原料水加熱部11内の原料水に直接熱を伝導させる構成とすることも可能である。
【0030】
蒸留水容器8は、蒸留装置本体3の外部に設けられている。蒸留水容器8は、蒸気冷却部13の蒸気凝集器14により冷却されて、この蒸気冷却部13から滴下する蒸留水を貯溜する。
なお、本実施形態においては、蒸留水容器8を蒸留装置本体3と別体で設けているが、これに限定するものではなく、蒸留装置本体3の内部に蒸留水容器8を形成することもできる。
【0031】
蒸気凝集器14は、蒸留装置本体3の蒸気冷却部13に設けられている。蒸気凝集器14は、高密度複合体で形成されている。また、蒸気凝集器14を構成する高密度複合体は、非常に熱交換効率の高い炭素系の複合セラミックで構成されている。また、図2に示すように、蒸気凝集器14はその内部に冷媒を通すための通路14aを有する。前記冷媒は図2に示す配管15を通じて通路14aと図示せぬ冷媒タンクとの間を循環させる。
【0032】
蒸気凝集器14は、図2に示すように、通路14aが設けられた平板部14bと、平板部14bより突出した複数の突出部14cとから形成されている。言い換えれば、蒸気凝集器14は正面視櫛型に形成されている。複数の突出部14cは、平板部14bから下方に突出される。蒸気凝集器14は、複数の突出部14cを設けることにより蒸気凝集器14全体の表面積を拡大させて、蒸気と接触する面積を拡大している。
なお、本実施形態においては、蒸気凝集器14は櫛型に形成されているがこれに限定されるものではなく、例えば、蒸気凝集器14は板状に形成し、蒸気凝集器14の内部に冷媒を通すための通路を複数設ける構成とすることも可能である。
【0033】
蒸気冷却部13の下部であって蒸気凝集器14の下方には、蒸気凝集器14に付着した蒸留水の水滴を集めるための蒸留水溜まり41が設けられている。蒸留水溜まり41に集められた蒸留水の水滴は、蒸気冷却部13の収蒸留水溜まり41の底部側に設けられた通路42を通って、蒸留水容器8に滴下する。
【0034】
太陽光発電装置9は、図1に示すように、供給ポンプ4、減圧ポンプ5、超微細気泡発生装置6の気体供給ポンプ21および活性酸素発生装置22、並びに熱源7に電力を供給する装置である。太陽光発電装置9は、太陽電池パネル51と、後述する熱交換手段とを具備する。
【0035】
太陽電池パネル51は、太陽電池(セル)を複数枚直並列接続してパネル状に構成しており、光起電力効果により太陽光を電力に変換して出力する。また、太陽電池パネル51の発電効率は高温になると低下する。
【0036】
このように構成した蒸留装置1を使用した蒸留水の製造方法について、図1および図2を用いて説明する。
【0037】
まず貯水槽2に原料水を投入する。ここで、原料水とは例えば河川の水や地下水、海水等である。貯水槽2に貯溜された原料水は、供給ポンプ4により蒸留装置本体3の原料水加熱部11へと供給される。一方、気体供給ポンプ21により活性酸素発生装置22へ空気が供給され、活性酸素発生装置22において空気中の酸素から活性酸素が生成される。この活性酸素は第二気体供給路25を介して気泡発生媒体23へと供給される。気泡発生媒体23へと供給された活性酸素は、第二気体供給路25および気泡発生媒体23を通過する際に熱源7によって温められ熱を帯びる。そして、熱を帯びた活性酸素は気泡発生媒体23の図示せぬ孔から原料水中に超微細気泡200として噴出し、多量の超微細気泡200が原料水内へ混入される。これにより、原料水は熱を帯びた超微細気泡200から熱量を与えられ、温められ沸騰することとなる。なお原料水加熱部11および空間部12内の気圧は減圧されているため、原料水が沸騰する温度は常圧での沸点である摂氏100度よりも低い。また、オゾン等の活性酸素により原料水内の細菌等を殺菌、洗浄することができる。
【0038】
次に、太陽光発電装置9において発生した熱を用いて原料水を予め加熱する方法について図1および図3を用いて説明する。
【0039】
太陽光発電装置9においては、太陽電池パネル51は高温になると発電効率が低下するため、太陽光を受けて高温になった太陽電池パネル51を冷却するための熱交換手段である第一冷却パネル81が設けられている。
【0040】
第一冷却パネル81は高密度複合体で構成されている。この第一冷却パネル81を構成する高密度複合体は、非常に熱交換効率の高い炭素系の複合セラミックで構成されている。第一冷却パネル81は、太陽電池パネル51と略同じ面積で所定の厚みを有する板状に構成されており、太陽電池パネル51の下面全面に接触するように設けられている。
【0041】
図3に示すように、第一冷却パネル81の内部には、蒸留水を流通させるための冷却水用通路82が設けられている。冷却水用通路82は第一冷却パネル81内を幾重にも往復している。冷却水用通路82の入水口82aおよび出水口82bは蒸留水容器8に接続されている。そして、蒸留水容器8内の蒸留水が、第一冷却パネル用圧送ポンプ83により圧送されて、冷却水用通路82と蒸留水容器8との間を循環する。
なお、本実施形態においては、原料水を蒸留した蒸留水を使用しているが、これに限定するものではなく、例えば、別途蒸留水を用意して冷却水用通路82に流通させることも可能である。
【0042】
また、冷却水用通路82において太陽電池パネル51から吸熱することで加熱された蒸留水は、貯水槽2内に設けられた貯水槽用熱交換手段である第一熱交換部材84の内部を通過する。この第一熱交換部材84を構成する高密度複合体は、非常に熱交換効率の高い炭素系の複合セラミックで構成されている。このように構成することにより、蒸留水は、第一熱交換部材84の内部を通過する際、太陽電池パネル51の冷却の際に発生する熱を、第一熱交換部材84を介して、貯水槽2内の原料水へ伝導する。
【0043】
したがって、原料水が貯水槽2で予め加熱されることとなるため、蒸留装置本体3内へ供給されたときに蒸留させるための熱量を低減させることができる。すなわち、太陽電池パネル51の冷却の際に発生する熱を利用して原料水を予め加熱することができるので、熱源7から供給される熱量が少なくても、蒸留を行うことが可能となる。また、太陽電池パネル51を冷却することが可能となる。
【0044】
以上のように、本発明の第一実施形態に係る蒸留装置1は、原料水を貯溜するための貯水槽2と、原料水の蒸留を行うための蒸留装置本体3と、原料水を貯水槽2から蒸留装置本体3へ供給するための供給ポンプ4と、蒸留装置本体3内を減圧するための減圧ポンプ5と、蒸留装置本体3に供給された原料水に超微細気泡200を発生させる超微細気泡発生装置6と、蒸留装置本体3に供給された原料水を加熱する熱源7と、蒸留装置本体3で得られた蒸留水を貯溜するための蒸留水容器8と、供給ポンプ4、減圧ポンプ5、熱源7、および超微細気泡発生装置6の気体供給ポンプ21および活性酸素発生装置22に電力を供給するための太陽光発電装置9とを具備し、太陽光発電装置9は、太陽電池パネル51と、この太陽電池パネル51の下面に接するように設けられる第一冷却パネル81とを有し、蒸留水を第一冷却パネル81と貯水槽2内に設けられた第一熱交換部材84の内部との間に流通させ、太陽電池パネル51の熱を当該原料水に回収させるものである。
このように構成することにより、太陽電池パネル51の冷却によって奪った熱量を使用して、原料水を予め加熱することが可能となる。したがって、電力消費量を低減して、低コスト化を図ることができるとともに、太陽光発電装置9の発電効率を維持して、蒸留を安定して行うことができる。
【0045】
また、図4に示すように、本発明の第一実施形態に係る蒸留装置1においては、熱交換用超微細気泡発生手段である蒸留水用超微細気泡発生装置90を第一冷却パネル81と第一冷却パネル用圧送ポンプ83との間に設けることもできる。
【0046】
蒸留水用超微細気泡発生装置90は、蒸留水用超微細気泡発生容器91と蒸留水用空気供給ポンプ92と、蒸留水用気泡発生媒体93と、を具備する。
蒸留水用超微細気泡発生容器91は、蒸留水を貯溜して、蒸留水用気泡発生媒体93を収容する容器である。
蒸留水用気体供給ポンプ92は、外部の空気を蒸留水用気泡発生媒体93へ供給する。また、蒸留水用気体供給ポンプ92には太陽光発電装置9から電力が供給される。
【0047】
蒸留水用気泡発生媒体93は蒸留水中に超微細気泡200を発生させる。蒸留水用気泡発生媒体93は、固体組織がイオン結合による分子構造である高密度複合体で形成されている。高密度複合体は炭素系の素材などからなる導電体であり、蒸留水用気泡発生媒体93から発生する超微細気泡200は負の電荷を帯電する。言い換えれば、導電体である蒸留水用気泡発生媒体93を通過する際に超微細気泡200に自由電子が付加されることにより、超微細気泡200は負の電荷を帯電する。この負の電荷により、超微細気泡200同士が互いに反発するため、超微細気泡200が合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。蒸留水用気泡発生媒体93は、直径数μm〜数十μmの図示せぬ細かな孔を多数有しており、蒸留水用気体供給ポンプ92から圧送された空気が孔から液体中へ放出される構造となっている。すなわち、蒸留水用気体供給ポンプ92から圧送された空気のガス圧で、超微細気泡200が孔から液体中へ放出されるものである。
【0048】
このように構成することにより、蒸留水中に超微細気泡200が多量に含まれることとなる。超微細気泡200を多量に含んだ蒸留水は、通常の蒸留水に比べて熱伝導効率が高いため、第一冷却パネル81内の冷却水用通路82を流通する間に、より効率よく太陽電池パネル51を冷却することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態においては、蒸留水を第一冷却パネル81と貯水槽2内に設けられた第一熱交換部材84の内部との間に流通させるが、原料水を直接第一冷却パネル81に流通させて、太陽電池パネル51の冷却を行うことも可能である。この場合、原料水は、第一冷却パネル用圧送ポンプ83によって貯水槽2から第一冷却パネル81の冷却水用通路82へと圧送され、冷却水用通路82において太陽電池パネル51から吸熱することで加熱される。冷却水用通路82を通過して加熱された原料水は貯水槽2へ再び戻される。このように原料水が太陽電池パネル51の熱を回収することによって、貯水槽2内の原料水の温度が向上する。
【0050】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る蒸留装置101の構成について図5および図6を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
太陽光発電装置9においては、太陽電池パネル51は高温になると発電効率が低下するため、太陽光を受けて高温になった太陽電池パネル51を冷却するための熱交換手段である第二冷却パネル111が設けられている。
第二冷却パネル111は高密度複合体で構成されている。この第二冷却パネル111を構成する高密度複合体は、非常に熱交換効率の高い炭素系の複合セラミックで構成されている。第二冷却パネル111は、太陽電池パネル51と略同じ面積で所定の厚みを有する板状に構成されており、太陽電池パネル51の下面全面に接触するように設けられている。
【0052】
第二冷却パネル111の内部には、冷媒を流通させるための冷媒用通路112が設けられている。冷媒は液体であり、例えば純水やシリコン油である。冷媒用通路112は第二冷却パネル111内を幾重にも往復している。冷媒用通路112の冷媒入口112aおよび冷媒出口112bは補助熱交換手段であるヒートポンプ113に接続されている。そして、冷媒が、冷媒用通路112とヒートポンプ113との間を循環する。
【0053】
また、貯水槽2内には、貯水槽用熱交換手段である第二熱交換部材114が設けられている。この第二熱交換部材114を構成する高密度複合体は、非常に熱交換効率の高い炭素系の複合セラミックで構成されている。第二熱交換部材114の内部には温媒を流通させる。温媒は液体であり、例えば純水やシリコン油である。そして、温媒は、第二熱交換部材114の内部とヒートポンプ113との間を循環する。
【0054】
ヒートポンプ113は冷媒の熱を温媒へ受け渡すための装置である。ヒートポンプ113は例えば、圧縮機、蒸発器、膨張器および膨張弁などにより構成されている。ヒートポンプ113には太陽光発電装置9から電力が供給される。
【0055】
このように構成することにより、冷媒が、ヒートポンプ113から第二冷却パネル111の冷媒用通路112へと流通し、冷媒用通路112において太陽電池パネル51から吸熱することで加熱される。冷媒用通路112を通過して加熱された冷媒はヒートポンプ113へ再び戻される。
【0056】
また、温媒は、ヒートポンプ113と第二熱交換部材114の内部との間を循環する。このように構成することによって、ヒートポンプ113において、冷媒と温媒との間で熱交換が行われる。すなわち、冷媒が冷媒用通路112内を流通して、太陽電池パネル51から吸熱し、太陽電池パネル51を冷却する。そして、ヒートポンプ113において、太陽電池パネル51の冷却を終えて加熱された冷媒から温媒へと熱が伝導される。熱せられた温媒は、第二熱交換部材114の内部を通過する際、伝導された熱を、第二熱交換部材114を介して、貯水槽2内の原料水へ伝導する。
【0057】
したがって、原料水が貯水槽2で予め加熱されることとなるため、蒸留装置本体3内へ供給されたときに原料水を蒸留させるために必要な熱量を低減させることができる。すなわち、太陽電池パネル51の冷却の際に発生する熱を利用して原料水を予め加熱することができるので、熱源7から供給される熱量が少なくても、蒸留を行うことが可能となる。また、冷媒用通路112には熱伝導効率の高い冷媒を流通させることができるため、効率よく太陽電池パネル51を冷却することができる。
【0058】
以上のように、本発明の第二実施形態に係る蒸留装置101は、原料水を貯溜するための貯水槽2と、原料水の蒸留を行うための蒸留装置本体3と、原料水を貯水槽2から蒸留装置本体3へ供給するための供給ポンプ4と、蒸留装置本体3内を減圧するための減圧ポンプ5と、蒸留装置本体3に供給された原料水に超微細気泡200を発生させる超微細気泡発生装置6と、蒸留装置本体3に供給された原料水を加熱する熱源7と、蒸留装置本体3で得られた蒸留水を貯溜するための蒸留水容器8と、冷媒と温媒との間で熱交換をするためのヒートポンプ113と、供給ポンプ4、減圧ポンプ5、熱源7、並びに超微細気泡発生装置6の気体供給ポンプ21および活性酸素発生装置22に電力を供給するための太陽光発電装置9とを具備し、太陽光発電装置9は、太陽電池パネル51と、この太陽電池パネル51の下面に接するように設けられる第二冷却パネル111とを有し、前記冷媒を第二冷却パネル111に流通させ、ヒートポンプ113は、太陽光発電装置9の第二冷却パネル111を通過した後の冷媒の熱を温媒に伝導し、温媒を貯水槽2内に設けられた第二熱伝導部材114とヒートポンプ113との間に流通させ、太陽電池パネル51の熱を原料水に回収させるものである。
このように構成することにより、太陽電池パネル51の冷却によって奪った熱量を使用して、原料水を予め加熱することが可能となる。また、第二冷却パネル111の内部に熱交換効率の高い冷媒を流して効率よく太陽電池パネル51の冷却を行うことが可能となる。したがって、電力消費量を低減して、低コスト化を図ることができるとともに、太陽光発電装置9の発電効率を維持して、蒸留を安定して行うことができる。
【0059】
また、図7に示すように、本発明の第二実施形態に係る蒸留装置101においては、熱交換用超微細気泡発生手段である冷媒用超微細気泡発生装置120を第二冷却パネル111とヒートポンプ113との間に設けることもできる。
【0060】
冷媒用超微細気泡発生装置120は、超微細気泡発生容器121と冷媒用空気供給ポンプ122と、冷媒用気泡発生媒体123と、を具備する。
超微細気泡発生容器121は、冷媒を貯溜して、冷媒用気泡発生媒体123を収容する容器である。
冷媒用気体供給ポンプ122は、外部の空気を冷媒用気泡発生媒体123へ供給する。また、冷媒用気体供給ポンプ122には太陽光発電装置9から電力が供給される。
【0061】
冷媒用気泡発生媒体123は冷媒中に超微細気泡200を発生させる。冷媒用気泡発生媒体123は、固体組織がイオン結合による分子構造である高密度複合体で形成されている。高密度複合体は炭素系の素材などからなる導電体であり、冷媒用気泡発生媒体123から発生する超微細気泡200は負の電荷を帯電する。言い換えれば、導電体である冷媒用気泡発生媒体123を通過する際に超微細気泡200に自由電子が付加されることにより、超微細気泡200は負の電荷を帯電する。この負の電荷により、超微細気泡200同士が互いに反発するため、超微細気泡200が合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。冷媒用気泡発生媒体123は、直径数μm〜数十μmの図示せぬ細かな孔を多数有しており、冷媒用気体供給ポンプ122から圧送された空気が孔から液体中へ放出される構造となっている。すなわち、冷媒用気体供給ポンプ122から圧送された空気のガス圧で、超微細気泡200が孔から液体中へ放出されるものである。
【0062】
このように構成することにより、冷媒中に超微細気泡200が多量に含まれることとなる。超微細気泡200を多量に含んだ冷媒は、通常の冷媒に比べて熱伝導効率が高いため、第二冷却パネル111内の冷媒用通路112を流通する間に、より効率よく太陽電池パネル51を冷却することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 蒸留装置
2 貯水槽
3 蒸留装置本体
4 供給ポンプ
5 減圧ポンプ
6 超微細気泡発生装置
7 熱源
8 蒸留水容器
9 太陽光発電装置
21 気体供給ポンプ
22 活性酸素発生装置
51 太陽電池パネル
81 第一冷却パネル
82 冷却水用通路
83 第一冷却パネル用圧送ポンプ
84 第一熱交換部材
90 原料水用超微細気泡発生装置
111 第二冷却パネル
112 冷媒用通路
113 ヒートポンプ
114 第二熱交換部材
120 冷媒用超微細気泡発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水を貯溜するための貯水槽と、
原料水の蒸留を行うための蒸留装置本体と、
原料水を前記貯水槽から前記蒸留装置本体へ供給するための供給手段と、
前記蒸留装置本体内を減圧するための減圧手段と、
前記蒸留装置本体に供給された原料水に超微細気泡を発生させる超微細気泡発生手段と、
前記蒸留装置本体に供給された原料水を加熱する加熱手段と、
前記蒸留装置本体で得られた蒸留水を貯溜するための蒸留水容器と、
前記供給手段、前記減圧手段、前記加熱手段、および前記超微細気泡発生手段に電力を供給するための太陽光発電装置とを具備し、
前記太陽光発電装置は、太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの下面に接するように設けられる熱交換手段とを有し、蒸留水を前記熱交換手段と貯水槽内に設けられた貯水槽用熱交換手段との間に流通させ、前記太陽電池パネルの熱を当該原料水に回収させることを特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
原料水を貯溜するための貯水槽と、
原料水の蒸留を行うための蒸留装置本体と、
原料水を前記貯水槽から前記蒸留装置本体へ供給するための供給手段と、
前記蒸留装置本体内を減圧するための減圧手段と、
前記蒸留装置本体に供給された原料水に超微細気泡を発生させる超微細気泡発生手段と、
前記蒸留装置本体に供給された原料水を加熱する加熱手段と、
前記蒸留装置本体で得られた蒸留水を貯溜するための蒸留水容器と、
冷媒と温媒との間で熱交換をするための補助熱交換手段と、
前記供給手段、前記減圧手段、前記加熱手段、前記超微細気泡発生手段、および前記補助熱交換手段に電力を供給するための太陽光発電装置とを具備し、
前記太陽光発電装置は、太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの下面に接するように設けられる熱交換手段とを有し、前記冷媒を前記熱交換手段に流通させ、
前記補助熱交換手段は、前記太陽光発電装置の熱交換手段を通過した後の冷媒の熱を温媒に伝導し、
前記温媒を前記貯水槽内に設けられた貯水槽用熱交換手段と補助熱交換手段との間に流通させ、前記太陽電池パネルの熱を当該原料水に回収させることを特徴とする蒸留装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−25175(P2011−25175A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174530(P2009−174530)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(508231256)株式会社西研デバイズ (8)
【出願人】(504077308)
【Fターム(参考)】