説明

蒸留酒類

【課題】綿菓子様の甘い香りが増強された高品質の蒸留酒類を提供する。
【解決手段】原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、マルトール含量が1.0mg/L以上、かつ5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上(いずれもアルコール濃度25v/v%換算)である蒸留酒類が提供される。さらに、フルフラール含量が2.0mg/L以上(アルコール濃度25v/v%換算)であることが好ましい。イモ類がサツマイモである構成、イモ類が焼成されたものである構成が推奨される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留酒類に関する。さらに詳細には、本発明は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、マルトール、5−メチルフルフラール、フルフラールを特定量以上含有する蒸留酒類に関する。本発明の蒸留酒類は、綿菓子様の甘い香りが増強された高品質のものである。
【背景技術】
【0002】
焼きイモの特徴香としてマルトールが知られている。マルトールは、香料や食品添加物として用いられ、常温では白色結晶で、熱水や極性溶媒に溶解する。マルトールは、糖類を熱分解したとき、カラメル、パン、焼き菓子などに生成し、これらの甘い香りの原因の一つであると言われている。
【0003】
焼きイモ風味のイモ焼酎の製造方法としては、特許文献1に開示がある。特許文献1では、高温高圧処理されたサツマイモを原料に用いて焼酎を得ている。
【0004】
市場での動向を見ると、イモ焼酎では、焼きイモ焼酎を謳った市販のイモ焼酎がいくつか市場に出ている。しかしながら、いずれも焦げ臭が強く重い酒質であり、甘さが感じられないものとなっている。このように、イモ焼酎で、例えば焼きイモ焼酎であれば焼きイモそのものを口に含んだような香味良好な風味を有する酒質とするための技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−81899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記した従来技術が抱える問題点を踏まえ、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、綿菓子様の甘い香りが増強された高品質の蒸留酒類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、まず焼きイモの特徴香として知られているマルトールに着目し、イモ焼酎にマルトールを増強することによって綿菓子様の甘い香りが増強されたイモ焼酎ができるのではないかと考えた。そして本発明者らは、マルトールだけでなく5−メチルフルフラールを共存させることにより、さらにはフルフラールも共存させることにより、さらに綿菓子様の甘い香りが増強された酒質となることを見出し、本発明を完成した。上記した課題を解決するために提供される本発明は、以下のとおりである。
【0008】
請求項1に記載の発明は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、アルコール濃度25v/v%換算で、マルトール含量が1.0mg/L以上、かつ5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上であることを特徴とする蒸留酒類である。
【0009】
本発明の蒸留酒類は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、マルトール含量、5−メチルフルフラール含量が特定量以上であることを特徴としている。本発明の蒸留酒類は、マルトールと5−メチルフルフラールを特定量以上含有しているので、綿菓子様の甘い香りが増強された酒質を備えたものとなる。
【0010】
ここで「蒸留酒類」とは酒税法上の蒸留酒類であり、焼酎、スピリッツ等が例として挙げられる。焼酎、スピリッツの原料に特に限定はなく、また、発酵方法、蒸留方法にも特に限定は無い。焼酎には、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎の両方が含まれる。
【0011】
本発明の蒸留酒類は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いるものである。したがって、例えばイモ焼酎では、麹原料に米を用いた「米麹使用イモ焼酎」、掛原料と麹原料がイモ類(例えば、サツマイモ)である「全量イモ焼酎」は、いずれも本発明の蒸留酒類に含まれうる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、アルコール濃度25v/v%換算で、フルフラール含量が2.0mg/L以上であることを特徴とする請求項1に記載の蒸留酒類である。
【0013】
本発明の蒸留酒類は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、マルトール含量、5−メチルフルフラール含量が特定量以上であり、さらにフルフラール含量が特定量以上であることを特徴としている。本発明の蒸留酒類は、マルトールと5−メチルフルフラールに加えてさらにフルフラールを特定量以上含有しているので、さらに綿菓子様の甘い香りが増強された酒質を備えたものとなる。
【0014】
イモ類がサツマイモである構成が好ましい(請求項3)。
【0015】
請求項4に記載の発明は、イモ類が焼成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蒸留酒類である。
【0016】
本発明の蒸留酒類において、例えば原料であるイモ類が「焼成されたサツマイモ」であると、綿菓子様の甘い香りが増強された焼きイモ焼酎となり、焼きイモそのものを感じさせる非常に濃厚な味わいとなり、焼きイモそのものを口に含んだような香味良好な風味を有する酒質を備えたものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蒸留酒類は、不快な焦げ臭がなく、綿菓子様の甘い香りが増強された香味良好な風味を有する。掛原料に焼成されたサツマイモを用いて製造すると、綿菓子様の甘い香りが増強された焼きイモ焼酎となり、焼きイモそのものを感じさせる非常に濃厚な味わいとなり、焼きイモそのものを口に含んだような香味良好な風味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、マルトール含量、5−メチルフルフラール含量、フルフラール含量の値は全てアルコール濃度25v/v%換算での値である。ここで「アルコール濃度」とはエチルアルコール(エタノール)の濃度をいう。すなわち、本明細書において「アルコール」と記載した場合は、特に断らない限りエチルアルコール(エタノール)を指す。
【0019】
本発明の蒸留酒類は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、マルトール含量が1.0mg/L以上、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上(いずれもアルコール濃度25v/v%換算)である蒸留酒類である。すなわち、本発明の蒸留酒類では、マルトール含量が1.0mg/L以上、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上である。なお、マルトール含量が1.0mg/L未満であると、甘い香りに欠ける酒質となる。また、マルトール含量が1.0mg/L以上のときに、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L未満であると、綿菓子様の甘い香りが感じられない酒質となる。すなわち、マルトール含量が1.0mg/L以上であり、かつ、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上であることにより、はじめて綿菓子様の甘い香りが増強された酒質を達成できる。マルトール含量の上限は特になく、マルトール含量が多くなっても品質を大きく損なうことはない。ただし、官能的に好ましい上限値は50mg/Lである。また、5−メチルフルフラールについては、酒質のバランスの観点より官能的に好ましい上限値は5mg/Lである。
【0020】
好ましい実施形態では、フルフラール含量が2.0mg/L以上(アルコール濃度25v/v%換算)である。すなわち、この好ましい実施形態に係る蒸留酒類は、原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、マルトール含量が1.0mg/L以上、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上、さらにフルフラール含量が2.0mg/L以上である蒸留酒類である。上述のように、マルトール含量が1.0mg/L以上でかつ5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上であれば、フルフラール含量が2.0mg/L未満であっても十分に綿菓子様の甘い香りが感じられる酒質となるが、さらにフルフラール含量が2.0mg/L以上であるとさらに綿菓子様の甘い香りが増強される。すなわち、マルトール含量が1.0mg/L以上であり、かつ、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上であり、さらにフルフラール含量が2.0mg/L以上であることにより、さらに綿菓子様の甘い香りが増強された酒質を達成できる。マルトール、5−メチルフルフラールの官能的に好ましい上限値は前述の通りであるが、フルフラールについては、酒質のバランスの観点より官能的に好ましい上限値は50mg/Lである。
【0021】
上述したように、本発明でいう「蒸留酒類」とは、酒税法上の蒸留酒類であり、焼酎、スピリッツ等が例として挙げられる。焼酎、スピリッツの原料に特に限定はなく、また、発酵方法、蒸留方法にも特に限定は無い。焼酎には、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎の両方が含まれる。
【0022】
好ましい実施形態では、原料に用いるイモ類をサツマイモとする。これにより、例えばイモ焼酎では、不快な焦げ臭がなく、綿菓子様の甘い香りが増強された香味良好な風味を有するイモ焼酎が得られる。
【0023】
本発明でいう「イモ類」とは、植物の地下茎又は根部の発達したものを総称したイモ類であり、サツマイモ(甘藷)、ジャガイモ、キャッサバ、ヤマノイモ、サトイモ、コンニャク、カシュウイモ、チョロギイモ、ハスイモ、ガガイモ等が例として挙げられる。また、イモ類には多くの品種も知られているが、本発明で品種は特に限定されない。さらに、イモ類の剥皮の有無は問わない。また本発明では、作業性と省エネルギーの面から、生イモ類が好適に採用される。生イモ類は水分含量が多く、長期保存に耐えないので、収穫直後のものを用いることが好ましいが、凍結保存等をしたものを用いてもよい。また、生イモ類は、必要に応じて、適宜の処理をして水分を減少させたものや、処理加工(浸漬、温水浸漬等)したものであってもよい。
【0024】
イモ類としてサツマイモを採用する場合のサツマイモの品種に限定はないが、イモ焼酎の原料として通常用いられている黄金千貫、ベニサツマ、ベニアズマ、ベニハヤト、ジョイホワイト、シロユタカ、金時イモ、ムラサキイモ等が例として挙げられる。ベニサツマ、ベニアズマ、金時イモが特に好適である。なお、麹原料にもサツマイモを用いる場合には、前記した掛原料と同様、サツマイモの品種に限定はなく、得られるイモ焼酎は「全量イモ焼酎」となる。同様に、麹原料に米を用いる場合には、得られるイモ焼酎は「米麹使用イモ焼酎」となる。
【0025】
本発明に用いる掛原料としてのイモ類の形態は特に限定されず、例えば、そのままの形態でもよいし、粉状等でもよい。
【0026】
さらに好ましい実施形態では、原料に用いるイモ類が焼成されたものとする。これにより、例えばイモ類が焼成されたサツマイモであると、綿菓子様の甘い香りが増強された焼きイモ焼酎となり、焼きイモそのものを感じさせる非常に濃厚な味わいとなり、焼きイモそのものを口に含んだような香味良好な風味を有する焼きイモ焼酎が得られる。
【0027】
イモ類の焼成は、市販の石焼きイモ機、対流式オーブンであるスチームコンベクションオーブンを用いて行うことができる。乾き飽和水蒸気を更に加熱して飽和蒸気温度を超える温度に上昇させた状態の水蒸気である過熱蒸気を用いる過熱蒸気処理によって焼成してもよい。焼成条件は、被処理物の種類、形態及び焼成処理方法により適宜選択されるが、温度は150〜250℃の範囲から、時間は20分〜10時間の範囲から、湿度は70〜95%の範囲から適宜選択すればよい。温度が150℃未満では、焼き感が足りないことになりマルトールも生成しにくい。温度が250℃超では、焦げ臭が気になることになる。時間が20分未満では、焼成処理が不十分となり、10時間超では、焦げが強くなり酒質に悪影響を与えることになる。イモ類は、丸ごと焼成処理するのが好ましい。例えば市販の石焼きイモ機では、小石を並べバーナーで石を加熱した後、イモ類を並べて40分程度焼成すればよい。比較的低温でじっくり焼成することにより、不快な焦げ臭がなくマルトール、5−メチルフルフラール、フルフラールが多く生成することになる。
【0028】
次に、本発明の蒸留酒類を製造する方法について説明する。掛原料にイモ類を使用するイモ焼酎で例示する。イモ焼酎を製造する方法については特に限定はなく、イモ焼酎の一般的な製法を基礎として行うことができる。一般に、焼酎の製造工程は、原料処理、仕込、発酵(糖化・発酵)、蒸留工程及び精製工程よりなる。なお、原料処理には、製麹工程、原料液化、液化・糖化工程も含むものとする。通常、焼酎の製造において、一次醪は麹を水と混合して仕込み、酵母を添加して増殖させて得ることができる。次に、得られた一次醪に、例えば蒸きょうした掛原料を添加して二次醪とする。次に得られた二次醪を蒸留することによって焼酎を得ることができる。醪の性状に特に限定はなく、液体状、半固体状、固体状のいずれでもよい。遠心分離により得られる液体部、固体部のいずれかを二次醪として蒸留してもよい。
【0029】
二次醪の段階でイモ類を添加する。ここで添加するイモ類は、焼成されたものであることが好ましい。イモ類の添加時期は、二次醪の段階であれば特に限定はない。
【0030】
蒸留工程における蒸留法についても特に限定はなく、通常の焼酎の製造で採用されている方法をそのまま適用することができる。例えば、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)を得るための連続蒸留法、乙類焼酎(単式蒸留焼酎)を得るための単式蒸留法のいずれもが採用可能である。蒸篭式での固体蒸留法でもよい。また、醪を通常の大気圧下で蒸留する常圧蒸留法、真空ポンプで醪を大気圧より低くして蒸留する減圧蒸留法のいずれもが採用可能である。
【0031】
しかしながら、本発明者らが詳細に検討した結果、蒸留工程において、焦げつきが少なくなるような蒸留を行うと、本発明の蒸留酒類を効率的に製造することができることがわかった。不快な焦げ臭がないようにするためには、減圧蒸留法を採用し、醪の焦げつきを抑える条件を選択することが好ましい。例えば、大気圧760Torrであるのに対し30Torr以下の圧力、換言すれば大気圧に対して−730mmHg以下で行えばよい。これにより、不快な焦げ臭がなくまた着色もない、マルトール、5−メチルフルフラール、さらにはフルフラールを特定量以上含有する蒸留酒類を得ることができ、さらに綿菓子様の甘い香りが増強された酒質を達成できる。掛原料に焼成されたサツマイモを用いて製造すると、綿菓子様の甘い香りが増強された焼きイモ焼酎となり、焼きイモそのものを感じさせる、非常に濃厚な味わいを有する酒質を達成できる。
【0032】
蒸留工程における加熱温度としては、焦げつきが少なくなるような温度を採用し、好ましくは60℃以上である。これにより、マルトール、5−メチルフルフラール、さらにはフルフラールを十分に回収することができ、不快な焦げ臭がなく、さらに綿菓子様の甘い香りが増強された蒸留酒類を効率よく得ることができる。なお、還流操作を行う蒸留により、マルトール含量として50mg/Lまで濃縮可能であることは確認済みである。
【0033】
以下に、綿菓子様の甘い香りを付与するための条件検討の結果を示す。
【0034】
(検討例1)
市販されている全量イモ焼酎を用意し、アルコール濃度が25v/v%のエタノール水溶液に溶解したマルトール、5−メチルフルフラール、フルフラール〔すべて東京化成工業(株)製〕を添加することにより、綿菓子様の甘い香りが付与されるかの検討を行った。マルトールについては、マルトール含量0.5mg/Lとなるように調製したものから順に0.1mg/L刻みでマルトール含量を増加させ、官能評価試験を行った。
【0035】
まず、マルトール含量が1.0mg/L以上となると、甘い香りを感じるが焼きイモを思わせるほどではなかった。
【0036】
次に、マルトール含量を3.0mg/Lとし、5−メチルフルフラールを添加した。その結果、5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上となると、重厚さが付与され焼きイモ感が出て、綿菓子様の甘い香りが増強された香味良好な風味を有する酒質となった。
【0037】
さらに、マルトール含量を3.0mg/L、5−メチルフルフラール含量を1.5mg/Lとし、フルフラールを添加した。その結果、フルフラール含量が2.0mg/L以上となると、さらに綿菓子様の甘い香りが増強された香味良好な風味を有する酒質となった。
【0038】
以下に、実施例をもって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
生サツマイモ(金時イモ)を市販の石焼きイモ機を用いて焼き、石焼きイモを調製した。得られた石焼きイモ10kgに水30kgを混合し、アルコール濃度が5v/v%となるようにエタノールを添加したものを醪とした。蒸留は、単式蒸留機を用い、間接加熱による76Torrでの減圧蒸留法とした。得られた蒸留液(本発明でいうスピリッツに相当する)は15.0kgであった。なお、マルトール、5−メチルフルフラール、フルフラールの測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【実施例2】
【0041】
掛原料として蒸しサツマイモ、麹原料として蒸し米を用いてイモ焼酎の製造を行った。仕込配合を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
一次仕込みは、精米歩合70%の白米を常法により水浸漬、水切り、蒸きょう及び放冷して、市販の焼酎用白麹菌を接種し、米麹を調製し、この米麹に汲水及び酵母を加え、25℃で7日間培養を行い、一次醪とした。
【0044】
二次仕込みは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、50分間蒸きょうしたものを、掛原料として用いて行った(麹歩合20%、汲水歩合50%)。一次醪に蒸しサツマイモ及び汲水を加え二次仕込みを行い、25℃で14日間発酵させた。
【0045】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて常圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水して、米麹を用いたイモ焼酎(米麹使用イモ焼酎)を得た。得られた米麹使用イモ焼酎に、実施例1で得られた蒸留液をマルトール含量1.0mg/Lとなるように添加し、綿菓子様の甘い香りが増強されたイモ焼酎を得た。なお、5−メチルフルフラール含量は0.25mg/L、フルフラール含量は2.5mg/Lであった。
【実施例3】
【0046】
実施例2と同様の方法により焼きイモ焼酎を製造した。蒸しサツマイモに代えて、生サツマイモ(金時イモ)を市販の石焼きイモ機を用いて焼いた石焼きイモを用いた。
【0047】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて60Torrでの減圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水して、米麹を用いた石焼きイモ焼酎を得た。得られた石焼きイモ焼酎のマルトール含量は2.0mg/L、5−メチルフルフラール含量は0.1mg/L、フルフラール含量は3.0mg/Lであった。焼きイモそのものを感じさせる非常に濃厚な味わいとなり、焼きイモそのものを口に含んだような香味良好な風味を有する酒質であった。
【0048】
(参考例)
市販されているイモ焼酎3種について、マルトール含量、5−メチルフルフラール含量、フルフラール含量を測定した。2種は焼きイモを謳った焼酎、1種は石焼きイモを謳った焼酎であった。その結果、いずれの焼酎でもマルトール、5−メチルフルフラールは、痕跡程度しか検出されなかった。フルフラール含量は2.0〜4.0mg/Lであった。HPLCによるマルトールの検出限界が0.5mg/Lであることから、これらの市販イモ焼酎のマルトール含量はいずれも0.5mg/L未満と考えられた。なお、これらの市販イモ焼酎は、いずれも焦げ臭が強く重い酒質であり、甘さが感じられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の少なくとも一部にイモ類を用いて製造され、アルコール濃度25v/v%換算で、マルトール含量が1.0mg/L以上、かつ5−メチルフルフラール含量が0.1mg/L以上であることを特徴とする蒸留酒類。
【請求項2】
アルコール濃度25v/v%換算で、フルフラール含量が2.0mg/L以上であることを特徴とする請求項1に記載の蒸留酒類。
【請求項3】
イモ類がサツマイモであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸留酒類。
【請求項4】
イモ類が焼成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蒸留酒類。