蒸発源およびこれを用いた蒸着装置ならびに蒸着方法
【課題】簡易な方法で均一な膜厚および膜質の蒸着膜を成膜可能な蒸発源およびこれを備えた蒸着装置ならびに蒸着方法を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置1の有機層16を真空蒸着法によって形成する。底部が平坦な加熱用容器21に、溶媒に溶解または均一に分散させた有機材料を流し込む。加熱用容器21を加熱することにより溶媒を除去し、加熱用容器21の底部に均質に分散した有機膜22を形成する。この有機膜22を蒸発源2とすることより、基板11の大きさにかかわらず、均一な膜厚および膜質の有機層16を容易に形成することが可能となる。
【解決手段】有機EL表示装置1の有機層16を真空蒸着法によって形成する。底部が平坦な加熱用容器21に、溶媒に溶解または均一に分散させた有機材料を流し込む。加熱用容器21を加熱することにより溶媒を除去し、加熱用容器21の底部に均質に分散した有機膜22を形成する。この有機膜22を蒸発源2とすることより、基板11の大きさにかかわらず、均一な膜厚および膜質の有機層16を容易に形成することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(Electro Luminescence)表示装置等を構成する有機層を形成する際に用いられる蒸発源およびこれを用いた蒸着装置ならびに蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信産業の発達が加速するにつれて、高度な性能を有する表示素子が要求されている。その中で有機EL素子は自発発光型表示素子として視野角が広くてコントラストが優秀なだけでなく応答時間が速いという長所がある。
【0003】
有機EL素子は、一対の電極(アノード電極およびカソード電極)の間に発光層を含む有機層が設けられ、電圧を印加することによりカソード電極から注入された電子と、アノード電極から注入された正孔とが発光層内で再結合することで発光する。
【0004】
上述した有機層は、例えば正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層および電子注入層等の積層膜である。各層は、湿式法(塗付法)または乾式法(蒸着法)等により成膜されている。
【0005】
湿式法としては、例えばRTR(Roll To Roll)による生産性を向上させるためにレーザ転写や塗付等による成膜が検討されている。例えば、レーザ転写ではドナー基板上に有機層を形成したのち直接転写するため、ドナーに形成した有機層の状態が最終的な素子特性に大きな影響を及ぼす。湿式法では一般的に有機材料を溶媒に溶解させて成膜するが、有機材料は汎用溶媒には溶解しづらい。このため湿式法で形成された有機層の膜質は不均一となる。従って、湿式法で有機膜を形成するためには、有機材料が完全に溶解する特殊な溶媒の探索や使用が必要であるため、製造コストがかかるといった問題があった。
【0006】
これに対して、真空蒸着法等の乾式法では有機材料を溶媒に溶解させる必要がなく、更に成膜後に溶媒を除去する工程が不要であるため、塗付法等の湿式法に代わる成膜手段として注目されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−293961号公報
【特許文献2】特開2008−208443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、有機EL素子を構成する有機層に高機能を付加する場合には、複数の有機材料あるいは無機材料を組み合わせて用いることがある。例えば、発光層の発光効率を改善し長寿命化することを目的として、ホスト−ゲスト型のドーピング発光層を形成したり、キャリア輸送性を改善するためにpドープ型ホール輸送層やnドープ型電子輸送層を形成する。このように、高機能の有機層を形成する際には、ホスト材料とゲスト材料、または各層を構成する材料とp型あるいはn型ドープ材料等のように2種類あるいはそれ以上の材料が用いられる。このように複数の材料を含む有機層を真空蒸着法によって成膜する場合には、使用する材料数に応じた蒸発源を用意する必要がある。また、蒸着時には、これらの蒸発源はそれぞれが加熱蒸発して被蒸着部材に蒸着されるため、成膜される有機層には各材料の分布のばらつきが生じると共に、膜厚も不均一となる。
【0009】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1では、第1の基板上に複数の蒸着材料からなる有機層を形成し、これを蒸発源として第2の基板に蒸着することによって蒸着温度の異なる複数の有機材料を成膜する方法が提案されている。また、特許文献2では、ライン状のるつぼを用い、るつぼ内に仕切りを設けることによって均一な膜厚の有機膜を成膜する方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、真空蒸着法では塗り分けを行うことは難しく、大型のパネルの作製における設備製造コストは高い。このため大画面基板への真空蒸着法の適用は難しく、量産にも難があるなどの欠点を有していた。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な方法で均一な膜厚および膜質の蒸着膜を成膜可能な蒸発源およびこれを備えた蒸着装置ならびに蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の蒸発源は、加熱用容器と、加熱用容器の底面に形成された有機膜とを有するものである。ここで、「有機膜」とは、蒸着材料である有機材料が加熱用容器内で流動しない程度に溶媒を除去した平板状のものである。
【0013】
本発明の蒸着装置は、上記蒸発源と、蒸発源に対向する位置に被蒸着部材を保持する保持部とを備えたものである。
【0014】
本発明の蒸着方法は、有機材料を溶媒に溶解または分散させる工程と、溶媒を除去することにより加熱用容器の底面に有機膜を形成する工程と、有機膜を加熱によって蒸発させ被蒸着部材に付着させる工程とを含むものである。
【0015】
本発明の蒸発源および蒸着装置ならびにこれを用いた蒸着方法では、加熱用容器と、加熱用容器の底面に形成された有機膜とを蒸発源として蒸着を行うことにより、有機膜から有機材料が面上に蒸発し、被蒸着部材に対して略垂直に付着する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸発源および蒸着装置ならびにこれを用いた蒸着方法によれば、加熱用容器の底面に有機膜を形成し、これを蒸発源として被蒸着部材に有機膜を成膜するようにしたので、有機材料が面上に蒸発し被蒸着部材に対して略垂直に付着する。これにより均一な膜厚および膜質の蒸着膜を容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機EL表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る蒸発源の断面図および平面図である。
【図5】図4に示した蒸発源を備えた蒸着膜を形成するための蒸着装置を表す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る蒸発源の断面図である。
【図7】変形例1に係る蒸発源の断面図である。
【図8】変形例2に係る蒸発源の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、以下の順に図面を参照しつつ説明する。
(加熱容器の底面が平坦な蒸発源)
[第1の実施の形態]
(1)有機EL表示装置の構成
(2)蒸着装置
(3)有機EL表示装置の製造方法
(加熱容器の底面が加工された蒸発源)
[第2の実施の形態]
[変形例1]
[変形例2]
【0019】
[第1の実施の形態]
(1)有機EL表示装置の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る蒸発源2(図4)を用いて製造される有機EL表示装置1の構成を表すものである。この有機EL表示装置1は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、後述する複数の赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0020】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極14の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された赤色有機EL素子10R(または緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0021】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0022】
また、表示領域110には、それぞれ赤色,緑色,青色の発光色となる有機EL素子10Rと、緑色有機EL素子10Gと、青色有機EL素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に配置されている。なお、隣り合う赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0023】
図3は図1に示した表示領域110の断面構成を表したものである。赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1および平坦化絶縁膜(図示せず)を間にして、陽極としての下部電極14、隔壁15、後述する発光層16Cを含む有機層16および陰極としての上部電極17がこの順に積層された構成を有している。
【0024】
このような赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは、保護層18により被覆され、更にこの保護層18上に熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などの接着層(図示せず)を間にしてガラスなどよりなる封止用基板19が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0025】
基板11は、その一主面側に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bが配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。この中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造とし、表面処理を行うことが必要である。
【0026】
下部電極14は、基板11上に、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。下部電極14は、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が10nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。また、下部電極14は、これらの金属元素の単体または合金よりなる金属膜と、インジウムとスズの酸化物(ITO)、インジウム亜鉛オキシド(InZnO)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金などの透明導電膜との積層構造を有していてもよい。なお、下部電極14が陽極として使われる場合には、下部電極14は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。但し、Al合金のように、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が小さいことによる正孔注入障壁が問題となる材料においても、適切な正孔注入層16Aを設けることによって下部電極14として使用することが可能である。
【0027】
隔壁15は、下部電極14と上部電極17との絶縁性を確保すると共に発光領域を所望の形状にするためのものである。更に、後述する製造工程においてインクジェットまたはノズルコート方式による塗布を行う際の隔壁としての機能も有している。隔壁15は、例えば、SiO2等の無機絶縁材料よりなる下部隔壁15Aの上に、ポジ型感光性ポリベン
ゾオキサゾール,ポジ型感光性ポリイミドなどの感光性樹脂よりなる上部隔壁15Bを有している。隔壁15には、発光領域に対応して開口が設けられている。なお、有機層16ないし上部電極17は、開口だけでなく隔壁15の上にも設けられていてもよいが、発光が生じるのは隔壁15の開口だけである。
【0028】
赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C,電子輸送層16Dおよび電子注入層16Eを積層した構成を有する。有機層16は、詳細は後述するが、例えば真空蒸着法により形成される。この有機層16は後述する上部電極18によって被覆されている。
【0029】
正孔注入層16Aは、発光層16Cへの正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層であり、下部電極14の上に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。
【0030】
正孔注入層16Aの厚みは例えば5nm〜100nmであることが好ましく、より好ましくは8nm〜50nmである。正孔注入層16Aの構成材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(例えば、銅フタロシアニン等)、カーボンなどが挙げられる。導電性高分子の具体例としてはオリゴアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。
【0031】
正孔輸送層16Bは、発光層16Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔輸送層16Bは、正孔注入層16Aの上に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの各々ごとに設けられている。
【0032】
正孔輸送層16Bの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm〜150nmである。正孔輸送層16Bを構成する材料(有機材料)としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン、ポリアニリン、ポリシランまたはそれらの誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールまたはAlq3などを用いることができる。
【0033】
発光層16Cでは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり発光する。発光層16Cの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm〜150nmである。
【0034】
発光層16Cを構成する材料はそれぞれの発光色に応じた材料を用いればよく、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6等を用いることができる。なお、発光層を構成する材料は、上記材料を2種類以上混合して用いてもよい。また、上記高分子量の材料に限らず、低分子量の材料を組み合わせて用いてもよい。低分子材料の例としては、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる。
【0035】
また、発光層16Cを構成する材料としては、上記材料の他に発光性ゲスト材料として、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光材料、りん光色素あるいは金属錯体等の有機発光材料を用いることができる。
【0036】
電子輸送層16Dは、発光層16Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子輸送層16Dの厚みは素子の全体構成にもよるが、例えば5nm〜300nmであることが好ましく、さらに好ましくは10nm〜170nmである。
【0037】
電子輸送層16Dの材料としては、優れた電子輸送能を有する有機材料を用いることが好ましい。発光層16Cの輸送効率を高めることにより、後述する電界強度による発光色の変化が抑制される。
【0038】
電子注入層16Eは、発光層16Cへの電子注入効率を高めるためのものである。電子注入層16Eの材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(LiO2)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、電子注入層16Eは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属元素、リチウム、セシウム等のアルカリ金属元素、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属元素、さらにはこれらの金属元素の酸化物、複合酸化物およびフッ化物等を単体、混合物あるいは合金として安定性を高めて使用してもよい。
【0039】
上部電極17は、例えば、厚みが2nm以上15nm以下であり、金属導電膜により構成されている。具体的には、Al,Mg,CaまたはNaの合金が挙げられる。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、薄膜での導電性と吸収の小ささとを兼ね備えているので好ましい。Mg−Ag合金におけるMgとAgとの比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが望ましい。また、上部電極17の材料は、AlとLiとの合金(Al−Li合金)でもよい。
【0040】
更に、上部電極17は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層でもよい。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。なお、上部電極17は、アクティブマトリックス駆動方式の場合、有機層16と隔壁15とによって、下部電極14と絶縁された状態で基板11上にベタ膜状に形成され、各有機EL素子10R,10G,10Bの共通電極として用いられる。
【0041】
保護層18は、例えば厚みが2〜3μmであり、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)、アモルファスカーボン(α−C)などが好ましい。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護膜となる。
【0042】
封止用基板19は、各有機EL素子10R,10G,10Bの上部電極17の側に位置しており、接着層(図示せず)と共に各有機EL素子10R,10G,10Bを封止するものである。封止用基板19は、各有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板19には、例えば、カラーフィルタおよびブラックマトリクスとしての遮光膜(いずれも図示せず)が設けられており、各有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、各有機EL素子10R,10G,10Bならびにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0043】
カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、各色の有機EL素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0044】
更に、カラーフィルタにおける透過率の高い波長範囲と、共振器構造MCから取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止用基板19から入射する外光のうち、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタを透過し、その他の波長の外光が各色の有機EL素子10R,10G,10Bに侵入することが防止される。
【0045】
遮光膜は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、Crと酸化クロム(III)(Cr2O3)とを交互に積層したものが挙げられる。
【0046】
(2)蒸着装置
図4(A),(B)は本実施の形態における蒸発源2の断面構成および平面構成を表したものである。蒸発源2は、加熱用容器21の底部に平板状の有機膜22を有し、この有機膜22を加熱することにより基板11(被蒸着部材)に有機層16を形成するものである。
【0047】
加熱用容器21は、蒸着材料(ここでは有機材料)を収容するための収容凹部を有する耐熱性の容器であり、導電性および加工性のよい材料が用いられる。加熱用容器21の形状は特に問わないが、従来の蒸着装置の蒸発源として用いられている加熱用容器(るつぼ)よりも広く平坦な底面を有している。なお、加熱用容器21は、図4(B)に示した矩形状に限らず、円形あるいは多角形であってもよく、少なくとも一辺が基板11の一辺よりも大きいことが好ましい。より好ましくは、基板11の形状に則した形状の加熱用容器21を用いることにより、効率よく基板11に有機層16が形成される。
【0048】
有機膜22は、例えば上記有機層16を構成する正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C等に挙げた有機材料を、下記に示す溶媒に溶解または分散させ、その溶液を加熱用容器21内に流し込んだのち溶媒を除去することによって形成される。2種類以上の有機材料を用いる場合には、予め所望の配合比で混合した有機材料を溶媒に溶解または分散、あるいは各有機材料を順に溶媒に溶解または分散させて複数の有機材料を均質に混合した有機膜22を形成してもよい。また、有機膜22は必ずしも上述したように混合して単層とする必要はなく、各有機材料からなる有機膜を順に積層してもよい。その際には、蒸発温度の低い有機材料から順に積層することが好ましい。また、複数の有機材料を用いる場合には、蒸発温度の差が50℃以内であることが好ましい。
【0049】
ここで用いられる溶媒は、必ずしも溶解させる必要はなく、少なくとも溶媒内において蒸着材料を均質に分散する溶媒であればよい。具体的には、例えばトルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ブサイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、ジハイドロベンゾフラン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、p−アニシルアルコール、ジメチルナフタレン、3−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、3−イソプロピルビフェニル、モノイソプロピルナフタレンが挙げられる。なお、溶媒の除去時の加熱および蒸着材料の分散効率から、沸点120℃以下、粘度10cP以下の溶媒を用いることが好ましい。
【0050】
図5(A)はこの蒸発源2を備えた蒸着装置20の構成を表したものである。蒸着装置20は、真空チャンバ(蒸着室)23内に蒸発源2と、基板11(被蒸着部材)を保持するための保持具24と、蒸発源2を加熱する熱源(ヒータ)25と、真空ポンプ(真空排気手段)26と、ガス導入ノズル27とを備えている。なお、蒸着装置20はこの他に公知の真空蒸着装置が有する各種の部材を有していてもよい。例えば、被蒸着部材の洗浄を行うマッチングボックスや真空チャンバ23内の真空度を測定する真空計等を有していてもよい。この他、図5(B)に示したようにゲートバルブ28を介して真空チャンバ23に隣接した真空度の調整が可能なロードロック室を設けてもよい。加熱用容器21Bに次に蒸着する有機材料からなる有機膜22Bを作製し、このロードロック室29に設置して予め真空度を上げておくことによって、蒸発源2Aの蒸着終了後、蒸発源2をロボットやベルト(いずれも図示せず)等を用いてロードロック室29に回収し、蒸発源2Bと交換することによって真空を破ることなく簡便に材料交換を行うことが可能となる。これにより、複数の層が積層された有機層16(例えば正孔注入層16A,正孔輸送層16B等)を効率よく成膜することができる。また、大気に暴露されることなく同一の蒸着装置内において連続して行うことが可能となるため、大気中の水分による有機層16の劣化が防止される。
【0051】
次に、上記蒸着源2および蒸着装置20を用いた蒸着方法の一例を説明する。
【0052】
(有機EL表示装置の製造方法)
まず、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成し、例えば感光性樹脂よりなる平坦化絶縁膜(図示せず)を設ける。
【0053】
次いで、基板11の全面に例えばITOよりなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、下部電極14を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに形成する。その際、下部電極14を、平坦化絶縁膜(図示せず)のコンタクトホール(図示せず)を介して駆動トランジスタTr1のドレイン電極と導通させる。
【0054】
続いて、下部電極14上および平坦化絶縁膜(図示せず)上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により、SiO2等の無機絶縁材料を成膜し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、下部隔壁15Aを形成する。
【0055】
そののち、下部隔壁15Aの所定位置、詳しくは画素の発光領域を囲む位置に、上述した感光性樹脂よりなる上部隔壁15Bを形成する。これにより、上部隔壁15Aおよび下部隔壁15Bよりなる隔壁15が形成される。
【0056】
隔壁15を形成したのち、基板11の下部電極14および隔壁15を形成した側の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。具体的には、基板11を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0057】
プラズマ処理を行ったのち、撥水化処理(撥液化処理)を行うことにより、特に上部隔壁15Bの上面及び側面の濡れ性を低下させる。具体的には、大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基板11を室温まで冷却することで、上部隔壁15Bの上面及び側面を撥液化し、その濡れ性を低下させる。
【0058】
なお、このCF4プラズマ処理においては、下部電極14の露出面および下部隔壁15Aについても多少の影響を受けるが、下部電極14の材料であるITOおよび下部隔壁15Aの構成材料であるSiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、酸素プラズマ処理で濡れ性が向上した面は濡れ性がそのままに保持される。
【0059】
次に、有機層16を形成するために、まず有機材料を溶解した溶液を加熱用容器21に流し込んだのち、ヒータ等により溶媒を除去し加熱用容器21の底面に有機膜22を形成する。
【0060】
続いて、真空チャンバ23内の保持具24に基板11を蒸着面が下方となるように設置したのち、底面に有機膜22が形成された加熱用容器21を設置する。次に、シャッタを閉塞し、更に真空チャンバ23を閉塞する。
【0061】
続いて、真空ポンプ26を駆動して真空チャンバ23内が例えば1×10-4Paとなるまで排気したのち、排気を継続しつつガス導入ノズル27によって例えばアルゴン(Ar)ガスを導入し、真空チャンバ23内の圧力を例えば0.1Pa〜10Paになるように調整する。
【0062】
次に、電源(図示せず)を駆動して加熱用容器21に通電して有機膜22を例えば250〜300℃で加熱する。加熱を開始した後、加熱用容器21の底部に配置した熱電対(図示せず)によって有機膜22の温度を測定し、蒸発温度に達していることを確認したのち、シャッタを開放して蒸着を開始する。これにより、有機膜22から有機材料が面上に蒸発し、基板11に対して略垂直に付着する。
【0063】
設定した有機層16の膜厚等に応じて所定時間の蒸着を行ったのちシャッタを閉塞し、電源による加熱用容器21への通電を停止して蒸着を終了する。最後に、基板11が十分に冷却されたのち真空チャンバ23内を大気に開放して有機層16が形成された基板11を取り出す。なお、保持具24はここでは固定されているが、加熱用容器21の形状に合わせて、一般的な蒸着装置の保持具のように蒸着時に基板11を回転させながら蒸着を行ってもよい。あるいは基板11を一方向に移動させること蒸着を行ってもよい。
【0064】
有機層16を形成した後は、同様に蒸着により上部電極17を形成する。上部電極17を形成したのち、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、保護層18を形成する。例えば、アモルファス窒化シリコンからなる保護層18を形成する場合には、CVD法によって2〜3μmの膜厚に形成する。この際、有機層16の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、保護層18の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0065】
なお、下部電極14と同一工程で補助電極(図示せず)を形成した場合、補助電極の上部にベタ膜で形成された有機層16を、上部電極17を形成する前にレーザアブレーションなどの手法によって除去してもよい。これにより上部電極17を補助電極に直接接続させることが可能となり、接触性が向上する。
【0066】
保護層18を形成したのち、例えば、上述した材料よりなる封止用基板19に、上述した材料よりなる遮光膜を形成する。続いて、封止用基板19に赤色フィルタ(図示せず)の材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタ(図示せず)と同様にして、青色フィルタ(図示せず)および緑色フィルタ(図示せず)を順次形成する。
【0067】
そののち、保護層18の上に、接着層(図示せず)を形成し、この接着層を間にして封止用基板19を貼り合わせる。以上により図1ないし図3に示した有機EL表示装置1が完成する。
【0068】
以上のように本実施の形態では、底部が平坦な加熱用容器21の底面に有機材料が均質に分散した有機膜22を形成し、これを蒸発源2として基板11に有機層16を成膜するようにした。これにより、基板11の大きさにかかわらず、均一な膜厚の有機層16を容易に形成することが可能となる。また、複数の有機材料からなる有機層16を形成する場合にも、予め複数の有機材料を混合または積層して形成した有機膜22を形成し蒸着源2とすることで均一な膜厚および膜質の有機層16を形成することが可能となる。更に、本実施の形態の蒸発源2を用いることにより、従来の蒸着装置で均一な膜厚の蒸着膜を形成するために必要な蒸発源と被蒸着部材との間に設けられる分散版等の遮蔽物が不要となる。このため、有機材料への熱負荷を最小限に抑えることが可能となると共に、有機材料の利用効率が向上する。
【0069】
以下に、図6〜8を参照して第2の実施の形態およびその変形例について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付してその説明は省略する。
【0070】
[第2の実施の形態]
図6は第2の実施の形態に係る蒸発源3の断面構成を表したものである。本実施の形態における蒸発源3は、加熱用容器31の底面にサインカーブ状の曲面が形成されている点が第1の実施の形態とは異なる。このサインカーブ状の曲面は、加熱時における加熱用容器31の温度分布に応じて加工される。具体的には、熱源25として加熱用容器31の底部に電熱線等を用いた場合には、加熱用容器31の底部の電熱線に直接接している領域とその周辺領域とでは温度分布が生じる。従って比較的高温となる電熱線に直接接している領域の底部は厚く、その周辺領域の底部は薄く加工することが好ましい。
【0071】
本実施の形態の蒸発源3では、加熱用容器31の底部にサインカーブ状の厚みの分布を持たせるようにした。これにより、有機膜22を加熱蒸発させる熱源25(図5)として加熱用容器31の底部に例えば電熱線を用いた際に生じる温度分布のばらつきが抑制される。即ち、有機膜22の蒸発速度を均一にすることが可能となる。これにより、均一な膜厚の有機層16を形成することが可能となる。
【0072】
[変形例1]
図7は第2の実施の形態の変形例1に係る蒸発源4の断面構成を表したものである。本変形例における蒸発源4は、加熱用容器41の底面に微小な凹凸41Aを設けたものである。この凹凸41Aの凹部と凸部との高低差は、例えば0.3mm以上1mm以下である。このように加熱用容器41の底面に凹凸41Aを設けることにより、加熱用容器41に傾きが生じた際に、加熱によって液状化した有機膜22の流動を防止し、均一な膜厚の有機層16を形成することが可能となる。
【0073】
[変形例2]
図8は変形例2に係る蒸発源5の断面構成を表したものである。本変形例における蒸発源5は、加熱用容器51の底面に複数の仕切り51a1〜51anを設けたものである。2種類以上の有機材料を用いる場合には、この仕切り51a1〜51anそれぞれに混合比を変えた複数の有機材料からなる有機膜22a1〜22anを形成する。これにより、蒸着時に加熱用容器51の底部に温度分布が生じた場合において、この温度分布による有機材料の蒸発速度のばらつきが抑えられ、均質な膜質の有機層16を成膜することが可能となる。なお、この仕切りの形状は特に問わず、ストライプ状あるいは格子状でも構わない。
【0074】
以上、第1の実施の形態、第2の実施の形態および変形例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記第1および第2の実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形することが可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態等では、蒸着材料として有機材料を用い、有機EL表示装置1の有機層16の形成について説明したが、有機EL表示装置以外に蒸着によって成膜することが可能な層を有するデバイス(例えば、照明)等に適用してもよい。また、蒸着材料も有機材料のみに限らず有機材料に無機材料を添加してもかまわない。
【0076】
更に、上記実施の形態等で説明した有機EL表示装置1は、発光層16Cを単層したが、複数の発光層を積層しても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1…有機EL表示装置、2,3,4,5…蒸発源、10R,10G,10B…有機EL素子、11…基板、14…下部電極、15…隔壁、15A…上部隔壁、15B…下部隔壁、16…有機層、16A…正孔注入層、16B…正孔輸送層、16C…発光層、16D…電子輸送層、16E…電子注入層、17…上部電極、18…保護層、19…封止基板、20…蒸着装置、21,31,41,51…加熱用容器、22…有機膜、23…真空チャンバ、24…保持具、25…熱源(ヒータ)、26…真空ポンプ、27…ガス導入ノズル、28…ゲートバルブ、29…ロードロック室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(Electro Luminescence)表示装置等を構成する有機層を形成する際に用いられる蒸発源およびこれを用いた蒸着装置ならびに蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信産業の発達が加速するにつれて、高度な性能を有する表示素子が要求されている。その中で有機EL素子は自発発光型表示素子として視野角が広くてコントラストが優秀なだけでなく応答時間が速いという長所がある。
【0003】
有機EL素子は、一対の電極(アノード電極およびカソード電極)の間に発光層を含む有機層が設けられ、電圧を印加することによりカソード電極から注入された電子と、アノード電極から注入された正孔とが発光層内で再結合することで発光する。
【0004】
上述した有機層は、例えば正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層および電子注入層等の積層膜である。各層は、湿式法(塗付法)または乾式法(蒸着法)等により成膜されている。
【0005】
湿式法としては、例えばRTR(Roll To Roll)による生産性を向上させるためにレーザ転写や塗付等による成膜が検討されている。例えば、レーザ転写ではドナー基板上に有機層を形成したのち直接転写するため、ドナーに形成した有機層の状態が最終的な素子特性に大きな影響を及ぼす。湿式法では一般的に有機材料を溶媒に溶解させて成膜するが、有機材料は汎用溶媒には溶解しづらい。このため湿式法で形成された有機層の膜質は不均一となる。従って、湿式法で有機膜を形成するためには、有機材料が完全に溶解する特殊な溶媒の探索や使用が必要であるため、製造コストがかかるといった問題があった。
【0006】
これに対して、真空蒸着法等の乾式法では有機材料を溶媒に溶解させる必要がなく、更に成膜後に溶媒を除去する工程が不要であるため、塗付法等の湿式法に代わる成膜手段として注目されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−293961号公報
【特許文献2】特開2008−208443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、有機EL素子を構成する有機層に高機能を付加する場合には、複数の有機材料あるいは無機材料を組み合わせて用いることがある。例えば、発光層の発光効率を改善し長寿命化することを目的として、ホスト−ゲスト型のドーピング発光層を形成したり、キャリア輸送性を改善するためにpドープ型ホール輸送層やnドープ型電子輸送層を形成する。このように、高機能の有機層を形成する際には、ホスト材料とゲスト材料、または各層を構成する材料とp型あるいはn型ドープ材料等のように2種類あるいはそれ以上の材料が用いられる。このように複数の材料を含む有機層を真空蒸着法によって成膜する場合には、使用する材料数に応じた蒸発源を用意する必要がある。また、蒸着時には、これらの蒸発源はそれぞれが加熱蒸発して被蒸着部材に蒸着されるため、成膜される有機層には各材料の分布のばらつきが生じると共に、膜厚も不均一となる。
【0009】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1では、第1の基板上に複数の蒸着材料からなる有機層を形成し、これを蒸発源として第2の基板に蒸着することによって蒸着温度の異なる複数の有機材料を成膜する方法が提案されている。また、特許文献2では、ライン状のるつぼを用い、るつぼ内に仕切りを設けることによって均一な膜厚の有機膜を成膜する方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、真空蒸着法では塗り分けを行うことは難しく、大型のパネルの作製における設備製造コストは高い。このため大画面基板への真空蒸着法の適用は難しく、量産にも難があるなどの欠点を有していた。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な方法で均一な膜厚および膜質の蒸着膜を成膜可能な蒸発源およびこれを備えた蒸着装置ならびに蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の蒸発源は、加熱用容器と、加熱用容器の底面に形成された有機膜とを有するものである。ここで、「有機膜」とは、蒸着材料である有機材料が加熱用容器内で流動しない程度に溶媒を除去した平板状のものである。
【0013】
本発明の蒸着装置は、上記蒸発源と、蒸発源に対向する位置に被蒸着部材を保持する保持部とを備えたものである。
【0014】
本発明の蒸着方法は、有機材料を溶媒に溶解または分散させる工程と、溶媒を除去することにより加熱用容器の底面に有機膜を形成する工程と、有機膜を加熱によって蒸発させ被蒸着部材に付着させる工程とを含むものである。
【0015】
本発明の蒸発源および蒸着装置ならびにこれを用いた蒸着方法では、加熱用容器と、加熱用容器の底面に形成された有機膜とを蒸発源として蒸着を行うことにより、有機膜から有機材料が面上に蒸発し、被蒸着部材に対して略垂直に付着する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸発源および蒸着装置ならびにこれを用いた蒸着方法によれば、加熱用容器の底面に有機膜を形成し、これを蒸発源として被蒸着部材に有機膜を成膜するようにしたので、有機材料が面上に蒸発し被蒸着部材に対して略垂直に付着する。これにより均一な膜厚および膜質の蒸着膜を容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機EL表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る蒸発源の断面図および平面図である。
【図5】図4に示した蒸発源を備えた蒸着膜を形成するための蒸着装置を表す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る蒸発源の断面図である。
【図7】変形例1に係る蒸発源の断面図である。
【図8】変形例2に係る蒸発源の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、以下の順に図面を参照しつつ説明する。
(加熱容器の底面が平坦な蒸発源)
[第1の実施の形態]
(1)有機EL表示装置の構成
(2)蒸着装置
(3)有機EL表示装置の製造方法
(加熱容器の底面が加工された蒸発源)
[第2の実施の形態]
[変形例1]
[変形例2]
【0019】
[第1の実施の形態]
(1)有機EL表示装置の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る蒸発源2(図4)を用いて製造される有機EL表示装置1の構成を表すものである。この有機EL表示装置1は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、後述する複数の赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0020】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極14の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された赤色有機EL素子10R(または緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0021】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0022】
また、表示領域110には、それぞれ赤色,緑色,青色の発光色となる有機EL素子10Rと、緑色有機EL素子10Gと、青色有機EL素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に配置されている。なお、隣り合う赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0023】
図3は図1に示した表示領域110の断面構成を表したものである。赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1および平坦化絶縁膜(図示せず)を間にして、陽極としての下部電極14、隔壁15、後述する発光層16Cを含む有機層16および陰極としての上部電極17がこの順に積層された構成を有している。
【0024】
このような赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは、保護層18により被覆され、更にこの保護層18上に熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などの接着層(図示せず)を間にしてガラスなどよりなる封止用基板19が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0025】
基板11は、その一主面側に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bが配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。この中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造とし、表面処理を行うことが必要である。
【0026】
下部電極14は、基板11上に、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。下部電極14は、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が10nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。また、下部電極14は、これらの金属元素の単体または合金よりなる金属膜と、インジウムとスズの酸化物(ITO)、インジウム亜鉛オキシド(InZnO)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金などの透明導電膜との積層構造を有していてもよい。なお、下部電極14が陽極として使われる場合には、下部電極14は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。但し、Al合金のように、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が小さいことによる正孔注入障壁が問題となる材料においても、適切な正孔注入層16Aを設けることによって下部電極14として使用することが可能である。
【0027】
隔壁15は、下部電極14と上部電極17との絶縁性を確保すると共に発光領域を所望の形状にするためのものである。更に、後述する製造工程においてインクジェットまたはノズルコート方式による塗布を行う際の隔壁としての機能も有している。隔壁15は、例えば、SiO2等の無機絶縁材料よりなる下部隔壁15Aの上に、ポジ型感光性ポリベン
ゾオキサゾール,ポジ型感光性ポリイミドなどの感光性樹脂よりなる上部隔壁15Bを有している。隔壁15には、発光領域に対応して開口が設けられている。なお、有機層16ないし上部電極17は、開口だけでなく隔壁15の上にも設けられていてもよいが、発光が生じるのは隔壁15の開口だけである。
【0028】
赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C,電子輸送層16Dおよび電子注入層16Eを積層した構成を有する。有機層16は、詳細は後述するが、例えば真空蒸着法により形成される。この有機層16は後述する上部電極18によって被覆されている。
【0029】
正孔注入層16Aは、発光層16Cへの正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層であり、下部電極14の上に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。
【0030】
正孔注入層16Aの厚みは例えば5nm〜100nmであることが好ましく、より好ましくは8nm〜50nmである。正孔注入層16Aの構成材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(例えば、銅フタロシアニン等)、カーボンなどが挙げられる。導電性高分子の具体例としてはオリゴアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。
【0031】
正孔輸送層16Bは、発光層16Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔輸送層16Bは、正孔注入層16Aの上に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの各々ごとに設けられている。
【0032】
正孔輸送層16Bの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm〜150nmである。正孔輸送層16Bを構成する材料(有機材料)としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン、ポリアニリン、ポリシランまたはそれらの誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールまたはAlq3などを用いることができる。
【0033】
発光層16Cでは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり発光する。発光層16Cの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm〜150nmである。
【0034】
発光層16Cを構成する材料はそれぞれの発光色に応じた材料を用いればよく、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6等を用いることができる。なお、発光層を構成する材料は、上記材料を2種類以上混合して用いてもよい。また、上記高分子量の材料に限らず、低分子量の材料を組み合わせて用いてもよい。低分子材料の例としては、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる。
【0035】
また、発光層16Cを構成する材料としては、上記材料の他に発光性ゲスト材料として、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光材料、りん光色素あるいは金属錯体等の有機発光材料を用いることができる。
【0036】
電子輸送層16Dは、発光層16Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子輸送層16Dの厚みは素子の全体構成にもよるが、例えば5nm〜300nmであることが好ましく、さらに好ましくは10nm〜170nmである。
【0037】
電子輸送層16Dの材料としては、優れた電子輸送能を有する有機材料を用いることが好ましい。発光層16Cの輸送効率を高めることにより、後述する電界強度による発光色の変化が抑制される。
【0038】
電子注入層16Eは、発光層16Cへの電子注入効率を高めるためのものである。電子注入層16Eの材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(LiO2)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、電子注入層16Eは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属元素、リチウム、セシウム等のアルカリ金属元素、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属元素、さらにはこれらの金属元素の酸化物、複合酸化物およびフッ化物等を単体、混合物あるいは合金として安定性を高めて使用してもよい。
【0039】
上部電極17は、例えば、厚みが2nm以上15nm以下であり、金属導電膜により構成されている。具体的には、Al,Mg,CaまたはNaの合金が挙げられる。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、薄膜での導電性と吸収の小ささとを兼ね備えているので好ましい。Mg−Ag合金におけるMgとAgとの比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが望ましい。また、上部電極17の材料は、AlとLiとの合金(Al−Li合金)でもよい。
【0040】
更に、上部電極17は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層でもよい。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。なお、上部電極17は、アクティブマトリックス駆動方式の場合、有機層16と隔壁15とによって、下部電極14と絶縁された状態で基板11上にベタ膜状に形成され、各有機EL素子10R,10G,10Bの共通電極として用いられる。
【0041】
保護層18は、例えば厚みが2〜3μmであり、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)、アモルファスカーボン(α−C)などが好ましい。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護膜となる。
【0042】
封止用基板19は、各有機EL素子10R,10G,10Bの上部電極17の側に位置しており、接着層(図示せず)と共に各有機EL素子10R,10G,10Bを封止するものである。封止用基板19は、各有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板19には、例えば、カラーフィルタおよびブラックマトリクスとしての遮光膜(いずれも図示せず)が設けられており、各有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、各有機EL素子10R,10G,10Bならびにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0043】
カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、各色の有機EL素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0044】
更に、カラーフィルタにおける透過率の高い波長範囲と、共振器構造MCから取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止用基板19から入射する外光のうち、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタを透過し、その他の波長の外光が各色の有機EL素子10R,10G,10Bに侵入することが防止される。
【0045】
遮光膜は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、Crと酸化クロム(III)(Cr2O3)とを交互に積層したものが挙げられる。
【0046】
(2)蒸着装置
図4(A),(B)は本実施の形態における蒸発源2の断面構成および平面構成を表したものである。蒸発源2は、加熱用容器21の底部に平板状の有機膜22を有し、この有機膜22を加熱することにより基板11(被蒸着部材)に有機層16を形成するものである。
【0047】
加熱用容器21は、蒸着材料(ここでは有機材料)を収容するための収容凹部を有する耐熱性の容器であり、導電性および加工性のよい材料が用いられる。加熱用容器21の形状は特に問わないが、従来の蒸着装置の蒸発源として用いられている加熱用容器(るつぼ)よりも広く平坦な底面を有している。なお、加熱用容器21は、図4(B)に示した矩形状に限らず、円形あるいは多角形であってもよく、少なくとも一辺が基板11の一辺よりも大きいことが好ましい。より好ましくは、基板11の形状に則した形状の加熱用容器21を用いることにより、効率よく基板11に有機層16が形成される。
【0048】
有機膜22は、例えば上記有機層16を構成する正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C等に挙げた有機材料を、下記に示す溶媒に溶解または分散させ、その溶液を加熱用容器21内に流し込んだのち溶媒を除去することによって形成される。2種類以上の有機材料を用いる場合には、予め所望の配合比で混合した有機材料を溶媒に溶解または分散、あるいは各有機材料を順に溶媒に溶解または分散させて複数の有機材料を均質に混合した有機膜22を形成してもよい。また、有機膜22は必ずしも上述したように混合して単層とする必要はなく、各有機材料からなる有機膜を順に積層してもよい。その際には、蒸発温度の低い有機材料から順に積層することが好ましい。また、複数の有機材料を用いる場合には、蒸発温度の差が50℃以内であることが好ましい。
【0049】
ここで用いられる溶媒は、必ずしも溶解させる必要はなく、少なくとも溶媒内において蒸着材料を均質に分散する溶媒であればよい。具体的には、例えばトルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ブサイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、ジハイドロベンゾフラン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、p−アニシルアルコール、ジメチルナフタレン、3−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、3−イソプロピルビフェニル、モノイソプロピルナフタレンが挙げられる。なお、溶媒の除去時の加熱および蒸着材料の分散効率から、沸点120℃以下、粘度10cP以下の溶媒を用いることが好ましい。
【0050】
図5(A)はこの蒸発源2を備えた蒸着装置20の構成を表したものである。蒸着装置20は、真空チャンバ(蒸着室)23内に蒸発源2と、基板11(被蒸着部材)を保持するための保持具24と、蒸発源2を加熱する熱源(ヒータ)25と、真空ポンプ(真空排気手段)26と、ガス導入ノズル27とを備えている。なお、蒸着装置20はこの他に公知の真空蒸着装置が有する各種の部材を有していてもよい。例えば、被蒸着部材の洗浄を行うマッチングボックスや真空チャンバ23内の真空度を測定する真空計等を有していてもよい。この他、図5(B)に示したようにゲートバルブ28を介して真空チャンバ23に隣接した真空度の調整が可能なロードロック室を設けてもよい。加熱用容器21Bに次に蒸着する有機材料からなる有機膜22Bを作製し、このロードロック室29に設置して予め真空度を上げておくことによって、蒸発源2Aの蒸着終了後、蒸発源2をロボットやベルト(いずれも図示せず)等を用いてロードロック室29に回収し、蒸発源2Bと交換することによって真空を破ることなく簡便に材料交換を行うことが可能となる。これにより、複数の層が積層された有機層16(例えば正孔注入層16A,正孔輸送層16B等)を効率よく成膜することができる。また、大気に暴露されることなく同一の蒸着装置内において連続して行うことが可能となるため、大気中の水分による有機層16の劣化が防止される。
【0051】
次に、上記蒸着源2および蒸着装置20を用いた蒸着方法の一例を説明する。
【0052】
(有機EL表示装置の製造方法)
まず、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成し、例えば感光性樹脂よりなる平坦化絶縁膜(図示せず)を設ける。
【0053】
次いで、基板11の全面に例えばITOよりなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、下部電極14を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに形成する。その際、下部電極14を、平坦化絶縁膜(図示せず)のコンタクトホール(図示せず)を介して駆動トランジスタTr1のドレイン電極と導通させる。
【0054】
続いて、下部電極14上および平坦化絶縁膜(図示せず)上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により、SiO2等の無機絶縁材料を成膜し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、下部隔壁15Aを形成する。
【0055】
そののち、下部隔壁15Aの所定位置、詳しくは画素の発光領域を囲む位置に、上述した感光性樹脂よりなる上部隔壁15Bを形成する。これにより、上部隔壁15Aおよび下部隔壁15Bよりなる隔壁15が形成される。
【0056】
隔壁15を形成したのち、基板11の下部電極14および隔壁15を形成した側の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。具体的には、基板11を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0057】
プラズマ処理を行ったのち、撥水化処理(撥液化処理)を行うことにより、特に上部隔壁15Bの上面及び側面の濡れ性を低下させる。具体的には、大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基板11を室温まで冷却することで、上部隔壁15Bの上面及び側面を撥液化し、その濡れ性を低下させる。
【0058】
なお、このCF4プラズマ処理においては、下部電極14の露出面および下部隔壁15Aについても多少の影響を受けるが、下部電極14の材料であるITOおよび下部隔壁15Aの構成材料であるSiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、酸素プラズマ処理で濡れ性が向上した面は濡れ性がそのままに保持される。
【0059】
次に、有機層16を形成するために、まず有機材料を溶解した溶液を加熱用容器21に流し込んだのち、ヒータ等により溶媒を除去し加熱用容器21の底面に有機膜22を形成する。
【0060】
続いて、真空チャンバ23内の保持具24に基板11を蒸着面が下方となるように設置したのち、底面に有機膜22が形成された加熱用容器21を設置する。次に、シャッタを閉塞し、更に真空チャンバ23を閉塞する。
【0061】
続いて、真空ポンプ26を駆動して真空チャンバ23内が例えば1×10-4Paとなるまで排気したのち、排気を継続しつつガス導入ノズル27によって例えばアルゴン(Ar)ガスを導入し、真空チャンバ23内の圧力を例えば0.1Pa〜10Paになるように調整する。
【0062】
次に、電源(図示せず)を駆動して加熱用容器21に通電して有機膜22を例えば250〜300℃で加熱する。加熱を開始した後、加熱用容器21の底部に配置した熱電対(図示せず)によって有機膜22の温度を測定し、蒸発温度に達していることを確認したのち、シャッタを開放して蒸着を開始する。これにより、有機膜22から有機材料が面上に蒸発し、基板11に対して略垂直に付着する。
【0063】
設定した有機層16の膜厚等に応じて所定時間の蒸着を行ったのちシャッタを閉塞し、電源による加熱用容器21への通電を停止して蒸着を終了する。最後に、基板11が十分に冷却されたのち真空チャンバ23内を大気に開放して有機層16が形成された基板11を取り出す。なお、保持具24はここでは固定されているが、加熱用容器21の形状に合わせて、一般的な蒸着装置の保持具のように蒸着時に基板11を回転させながら蒸着を行ってもよい。あるいは基板11を一方向に移動させること蒸着を行ってもよい。
【0064】
有機層16を形成した後は、同様に蒸着により上部電極17を形成する。上部電極17を形成したのち、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、保護層18を形成する。例えば、アモルファス窒化シリコンからなる保護層18を形成する場合には、CVD法によって2〜3μmの膜厚に形成する。この際、有機層16の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、保護層18の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0065】
なお、下部電極14と同一工程で補助電極(図示せず)を形成した場合、補助電極の上部にベタ膜で形成された有機層16を、上部電極17を形成する前にレーザアブレーションなどの手法によって除去してもよい。これにより上部電極17を補助電極に直接接続させることが可能となり、接触性が向上する。
【0066】
保護層18を形成したのち、例えば、上述した材料よりなる封止用基板19に、上述した材料よりなる遮光膜を形成する。続いて、封止用基板19に赤色フィルタ(図示せず)の材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタ(図示せず)と同様にして、青色フィルタ(図示せず)および緑色フィルタ(図示せず)を順次形成する。
【0067】
そののち、保護層18の上に、接着層(図示せず)を形成し、この接着層を間にして封止用基板19を貼り合わせる。以上により図1ないし図3に示した有機EL表示装置1が完成する。
【0068】
以上のように本実施の形態では、底部が平坦な加熱用容器21の底面に有機材料が均質に分散した有機膜22を形成し、これを蒸発源2として基板11に有機層16を成膜するようにした。これにより、基板11の大きさにかかわらず、均一な膜厚の有機層16を容易に形成することが可能となる。また、複数の有機材料からなる有機層16を形成する場合にも、予め複数の有機材料を混合または積層して形成した有機膜22を形成し蒸着源2とすることで均一な膜厚および膜質の有機層16を形成することが可能となる。更に、本実施の形態の蒸発源2を用いることにより、従来の蒸着装置で均一な膜厚の蒸着膜を形成するために必要な蒸発源と被蒸着部材との間に設けられる分散版等の遮蔽物が不要となる。このため、有機材料への熱負荷を最小限に抑えることが可能となると共に、有機材料の利用効率が向上する。
【0069】
以下に、図6〜8を参照して第2の実施の形態およびその変形例について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付してその説明は省略する。
【0070】
[第2の実施の形態]
図6は第2の実施の形態に係る蒸発源3の断面構成を表したものである。本実施の形態における蒸発源3は、加熱用容器31の底面にサインカーブ状の曲面が形成されている点が第1の実施の形態とは異なる。このサインカーブ状の曲面は、加熱時における加熱用容器31の温度分布に応じて加工される。具体的には、熱源25として加熱用容器31の底部に電熱線等を用いた場合には、加熱用容器31の底部の電熱線に直接接している領域とその周辺領域とでは温度分布が生じる。従って比較的高温となる電熱線に直接接している領域の底部は厚く、その周辺領域の底部は薄く加工することが好ましい。
【0071】
本実施の形態の蒸発源3では、加熱用容器31の底部にサインカーブ状の厚みの分布を持たせるようにした。これにより、有機膜22を加熱蒸発させる熱源25(図5)として加熱用容器31の底部に例えば電熱線を用いた際に生じる温度分布のばらつきが抑制される。即ち、有機膜22の蒸発速度を均一にすることが可能となる。これにより、均一な膜厚の有機層16を形成することが可能となる。
【0072】
[変形例1]
図7は第2の実施の形態の変形例1に係る蒸発源4の断面構成を表したものである。本変形例における蒸発源4は、加熱用容器41の底面に微小な凹凸41Aを設けたものである。この凹凸41Aの凹部と凸部との高低差は、例えば0.3mm以上1mm以下である。このように加熱用容器41の底面に凹凸41Aを設けることにより、加熱用容器41に傾きが生じた際に、加熱によって液状化した有機膜22の流動を防止し、均一な膜厚の有機層16を形成することが可能となる。
【0073】
[変形例2]
図8は変形例2に係る蒸発源5の断面構成を表したものである。本変形例における蒸発源5は、加熱用容器51の底面に複数の仕切り51a1〜51anを設けたものである。2種類以上の有機材料を用いる場合には、この仕切り51a1〜51anそれぞれに混合比を変えた複数の有機材料からなる有機膜22a1〜22anを形成する。これにより、蒸着時に加熱用容器51の底部に温度分布が生じた場合において、この温度分布による有機材料の蒸発速度のばらつきが抑えられ、均質な膜質の有機層16を成膜することが可能となる。なお、この仕切りの形状は特に問わず、ストライプ状あるいは格子状でも構わない。
【0074】
以上、第1の実施の形態、第2の実施の形態および変形例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記第1および第2の実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形することが可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態等では、蒸着材料として有機材料を用い、有機EL表示装置1の有機層16の形成について説明したが、有機EL表示装置以外に蒸着によって成膜することが可能な層を有するデバイス(例えば、照明)等に適用してもよい。また、蒸着材料も有機材料のみに限らず有機材料に無機材料を添加してもかまわない。
【0076】
更に、上記実施の形態等で説明した有機EL表示装置1は、発光層16Cを単層したが、複数の発光層を積層しても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1…有機EL表示装置、2,3,4,5…蒸発源、10R,10G,10B…有機EL素子、11…基板、14…下部電極、15…隔壁、15A…上部隔壁、15B…下部隔壁、16…有機層、16A…正孔注入層、16B…正孔輸送層、16C…発光層、16D…電子輸送層、16E…電子注入層、17…上部電極、18…保護層、19…封止基板、20…蒸着装置、21,31,41,51…加熱用容器、22…有機膜、23…真空チャンバ、24…保持具、25…熱源(ヒータ)、26…真空ポンプ、27…ガス導入ノズル、28…ゲートバルブ、29…ロードロック室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用容器と、
前記加熱用容器の底面に形成された有機膜と
を有する蒸発源。
【請求項2】
前記有機膜は1種または2種類以上の有機材料により形成されている、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項3】
前記有機膜は前記2種以上の有機材料の積層膜である、請求項2に記載の蒸発源。
【請求項4】
前記有機膜は前記2種以上の有機材料の混合膜である、請求項2に記載の蒸発源。
【請求項5】
前記2種以上の有機材料は、最適な蒸着温度差が互いに50℃以内である、請求項2に記載の蒸発源。
【請求項6】
前記加熱用容器の底面は、少なくとも一辺が被蒸着部材の1辺よりも大きい四角形状をなす、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項7】
前記加熱用容器の底面は縦横面にサインカーブ状の曲面を有する、請求項1または6に記載の蒸発源。
【請求項8】
前記加熱用容器の底面は縦横面に凹凸を有している、請求項1または6に記載の蒸発源。
【請求項9】
前記加熱用容器の底面に複数の仕切りを有する、請求項1または6に記載の蒸発源。
【請求項10】
1種または複数種類の有機材料を加熱により蒸発させる蒸発源と、
前記蒸発源に対向する位置に被蒸着部材を保持する保持部とを備え、
前記蒸発源は、
加熱用容器と、
前記加熱用容器に収容されると共に、前記加熱用容器の底面に形成された有機膜と
を有する蒸着装置。
【請求項11】
有機材料を溶媒に溶解または分散させる工程と、
前記溶媒を除去することにより加熱用容器の底面に有機膜を形成する工程と、
前記有機膜を加熱によって蒸発させ被蒸着部材に付着させる工程と、
を含む蒸着方法。
【請求項1】
加熱用容器と、
前記加熱用容器の底面に形成された有機膜と
を有する蒸発源。
【請求項2】
前記有機膜は1種または2種類以上の有機材料により形成されている、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項3】
前記有機膜は前記2種以上の有機材料の積層膜である、請求項2に記載の蒸発源。
【請求項4】
前記有機膜は前記2種以上の有機材料の混合膜である、請求項2に記載の蒸発源。
【請求項5】
前記2種以上の有機材料は、最適な蒸着温度差が互いに50℃以内である、請求項2に記載の蒸発源。
【請求項6】
前記加熱用容器の底面は、少なくとも一辺が被蒸着部材の1辺よりも大きい四角形状をなす、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項7】
前記加熱用容器の底面は縦横面にサインカーブ状の曲面を有する、請求項1または6に記載の蒸発源。
【請求項8】
前記加熱用容器の底面は縦横面に凹凸を有している、請求項1または6に記載の蒸発源。
【請求項9】
前記加熱用容器の底面に複数の仕切りを有する、請求項1または6に記載の蒸発源。
【請求項10】
1種または複数種類の有機材料を加熱により蒸発させる蒸発源と、
前記蒸発源に対向する位置に被蒸着部材を保持する保持部とを備え、
前記蒸発源は、
加熱用容器と、
前記加熱用容器に収容されると共に、前記加熱用容器の底面に形成された有機膜と
を有する蒸着装置。
【請求項11】
有機材料を溶媒に溶解または分散させる工程と、
前記溶媒を除去することにより加熱用容器の底面に有機膜を形成する工程と、
前記有機膜を加熱によって蒸発させ被蒸着部材に付着させる工程と、
を含む蒸着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−153970(P2012−153970A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16669(P2011−16669)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]