蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材の製造方法
【課題】極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを製造する蒸着マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着マスクの製造方法において、エッチングにより金属製シート34に孔25が形成される。エッチングされる金属製シートは、樹脂製シート32上に支持された積層体30として供給される。エッチング後に、積層体の樹脂製シートが除去される。
【解決手段】蒸着マスクの製造方法において、エッチングにより金属製シート34に孔25が形成される。エッチングされる金属製シートは、樹脂製シート32上に支持された積層体30として供給される。エッチング後に、積層体の樹脂製シートが除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクに係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクに関する。
【0002】
また、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを製造する方法に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクの製造方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置を製造する方法に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置の製造方法に関する。
【0005】
さらに、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する方法に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスク用のシート状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0006】
従来、所望のパターンで配列された孔を含む蒸着用マスクを用い、所望のパターンで薄膜を形成する方法が知られている。そして、昨今においては、例えば有機EL表示装置の製造時において有機材料を基板上に蒸着する場合等、蒸着によって極めて高精細なパターニングを行うことが強く要望されている。
【0007】
なお、このような蒸着用マスクは、一般的に、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に孔を形成することにより、製造され得る(例えば、特許文献1)。また、エッチングによって金属板に孔を形成する場合、金属板の両方の側の面からエッチングする方法と、金属板の一方の側の面からのみエッチングする方法とがある。
【特許文献1】特開2004−39319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エッチングによって作製された蒸着マスクを用いた場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができないという不具合がある。この不具合の原因について調査研究を行ったところ、以下のことが確認された。
【0009】
フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングにおいては、金属板のうちのレジスト膜で覆われていない領域から浸食が開始される。その後、浸食は、金属板の厚さ方向のみに進むのではなく、金属板の板面に沿った方向にも進む。したがって、エッチングによって先細りした孔が形成されていく。このため、金属板2の両方の側の面からエッチングを行った場合、図11に示すように、金属板2の厚さ方向の端部以外において孔2a内に最も断面積(開孔面積)が小さくなる張り出し部3が形成されるようになる。そして、このような蒸着マスク1を用いて蒸着を行った場合、基板4のうちの張り出し部3の裏側に対応する領域に成膜される蒸着膜5の膜厚は安定しない。この結果、蒸着パターンの縁部がぼやけてしまう(蒸着パターンの輪郭がはっきりしない)。またそもそも、孔内に形成される張り出し部の位置や断面形状を制御すること自体が困難である。以上のことから、金属板を両方の側の面からエッチングした場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができない。
【0010】
一方、金属板を上方側の面のみからエッチング処理した場合、浸食によって形成された先細り孔に、既に浸食に用いられ浸食能力が低くなったエッチング液が残留する。その後、金属板の孔が下方側の面に達した時、それまで孔内に残留していたエッチング液が下方の面から流れ出て、浸食能力の高いフレッシュなエッチング液が形成された孔内に流れ込む。このとき、断面積(開孔面積)が小さくなる孔内の下方側の領域において液圧が高くなり、孔内の下方側の領域がフレッシュなエッチング液により激しく浸食される。この結果、金属板の両側からエッチングした場合と同様に、孔内に張り出し部が形成されてしまう。
【0011】
また、レジスト膜7を介して金属板6を下方側の面のみからエッチングした場合、図12に示すように、浸食によって形成された先細り孔6aが金属板6を貫通すると、上側面の孔周囲に、エッチング液8が残留することがある。結果として、残留したエッチング液によって金属板が上方側の面からも浸食が進み、金属板の両側からエッチングした場合と同様に、孔内に張り出し部が形成されてしまう。
【0012】
これらのことから、金属板を一方側の面のみからエッチングした場合も、蒸着パターンの縁部がぼやけてしまう(蒸着パターンの輪郭がはっきりしない)。またそもそも、金属板を一方の面側からエッチングする場合、孔が貫通されてエッチング液が流れ込みはじめる際に発生する圧力により、孔の断面形状がだれてしまうことがある。そして、この場合、孔を所望の形状で精度良く形成すること自体が困難となる。この現象は、上述した高精細なパターニングを行うための蒸着マスクにおいて、より顕著となる。以上のことから、金属板を一方側の面のみからエッチングした場合も、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができない。
【0013】
そして、本発明は、これらの知見に基づくものであって、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを製造する蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置を製造する蒸着マスク装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
さらに、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する蒸着マスク用シート状部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による蒸着マスクの製造方法は、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスクの製造方法の前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていくようにしてもよい。また、このような蒸着マスクの製造方法において、前記積層体は、前記他方向に沿って供給されるようにしてもよい。
【0020】
また、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクが製造されるようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、前記樹脂製シートを除去する工程において、前記樹脂製シートにUV光を照射して、前記金属製シートと前記樹脂製シートとを分離させるようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給するようにしてもよい。
【0023】
本発明による蒸着マスクは、上述したいずれかの製造方法によって製造された蒸着マスクであって、前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていくことを特徴とする。
【0024】
本発明による蒸着マスクにおいて、蒸着マスクのシート面に直交する断面において、前記孔の前記一方の面側の端部および前記他方の面側の端部を結ぶ直線と、前記他方の面と、によってなされる角度が、60°以下であるようにしてもよい。
【0025】
本発明による蒸着マスク装置は、上述したいずれかの製造方法によって製造された蒸着マスクと、前記蒸着マスクと固定されたフレームと、を備え、前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていくことを特徴とする。
【0026】
本発明による蒸着マスク装置において、蒸着マスクのシート面に直交する断面において、前記孔の前記一方の面側の端部および前記他方の面側の端部を結ぶ直線と、前記他方の面と、によってなされる角度が、60°以下であるようにしてもよい。
【0027】
本発明による第1の蒸着マスク装置の製造方法は、蒸着マスクと蒸着マスクに固定されたフレームとを備えた蒸着マスク装置の製造方法であって、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体の前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、前記フレームを取り付けられた前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
本発明による第2の蒸着マスク装置の製造方法は、蒸着マスクと蒸着マスクに固定されたフレームとを備えた蒸着マスク装置の製造方法であって、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、前記樹脂製シートを除去した後に、前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスク装置の製造方法の前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていくようにしてもよい。また、このような蒸着マスク装置の製造方法において、前記積層体は、前記他方向に沿って供給されるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスク配置が製造されるようにしてもよい。
【0031】
さらに、本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させるようにしてもよい。
【0032】
さらに、本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給するようにしてもよい。
【0033】
本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法は、多数の孔を形成された蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する蒸着マスク用シート状部材の製造方法であって、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0034】
本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていくようにしてもよい。また、このような蒸着マスク用シート状部材の製造方法において、前記積層体は、前記他方向に沿って供給されるようにしてもよい。
【0035】
また、本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクに用いられるシート状部材が製造されるようにしてもよい。
【0036】
さらに、本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させるようにしてもよい。
【0037】
さらに、本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、一方の面から他方の面に向けて断面積がしだい小さくなっていくとともに他方の面における形状が高精度に形成された蒸着マスクが得られる。したがって、この蒸着マスクによれば、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図1乃至図10を参照して本発明による蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材の製造方法の一実施の形態について説明する。ここで図1乃至図10は本発明の一実施の形態を説明するための図である。なお、以下の実施の形態では、有機ELディスプレイ装置を製造する際に有機発光材料を所望のパターンでガラス基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材に対し、本発明を適用することができる。
【0040】
まず最初に、本発明による蒸着マスクの製造方法および蒸着マスク装置の製造方法により製造され得る蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一例について、主に図1乃至図5を参照して説明する。ここで図1は蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一例を示す斜視図であり、図2は蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の使用方法を説明するための図である。
【0041】
図1乃至図4に示すように、本実施の形態における蒸着マスク装置10は、矩形状の金属製シートからなる蒸着マスク20と、蒸着マスク20の周縁部の取り付けられたフレーム15と、を備えている。蒸着マスク20は、多数の孔25(図4参照)を形成された金属製のシート状部材からなっている。この蒸着マスク装置10は、図2に示すように、蒸着マスク20がガラス基板42に対面するようにして、蒸着装置40内に支持される。蒸着装置40内には、この蒸着マスク装置10を挟んだガラス基板42の下方に、蒸着材料(一例として、有機発光材料)48を収容するるつぼ44と、るつぼ44を加熱するヒータ46とが配置されている。るつぼ44内の蒸着材料48は、ヒータ46からの加熱により、気化または昇華してガラス基板42の表面に付着するようになる。上述したように、蒸着マスク20には多数の孔25が形成されており、蒸着材料48はこの孔25を介してガラス基板42に付着する。この結果、蒸着マスク20の孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料48がガラス基板42の表面に成膜される。
【0042】
図1に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20は、孔25が形成された有孔領域22と、孔25が形成されておらず、有孔領域22の周囲を取り囲む領域を占める無孔領域23と、を有している。図1に示すように、各有孔領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。
【0043】
本実施の形態において、複数の有孔領域22は、蒸着マスク20の一辺と平行な一方向に沿って所定の間隔を空けて配置されるとともに、前記一方向と直交する他方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。本実施の形態において、一つの有孔領域22が一つの有機ELディスプレイ装置に対応するようになっている。すなわち、図1に示された蒸着マスク装置10(蒸着マスク20)によれば、多面付蒸着が可能となっている。
【0044】
また、図1および図3に示すように、各有孔領域22に設けられた複数の孔25は、当該有孔領域22において、一方向に沿って等間隔をあけて並べて配置されている。また、各孔25は、前記一方向に直交する他方向と平行に、有孔領域22の一端から他端まで細長く延びている。また、図4に示すように、シート状からなる蒸着マスク20の一方の面20aから他方の面20bに向け、金属製シート34のシート面に沿った断面における各孔25の断面積がしだい小さくなっていく。ここで、図3は、蒸着マスク20を一方の面20a側から示す部分平面図であり、図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【0045】
ところで、図5に示すように、蒸着マスク装置10は蒸着装置40に収容された場合、蒸着マスク20の一方の面20aが蒸着材料48を保持したるつぼ44に対面し、蒸着マスク20の他方の面20bがガラス基板42に対面する。すなわち、図5に示すように、蒸着材料48は次第に断面積が小さくなっていく孔25を通過してガラス基板42に付着する。図5に示すように、蒸着材料48はるつぼ44からガラス基板42に向けて直線的に移動せず、ガラス基板42の板面に対して斜めに移動することもある。このとき、孔25の断面形状が図5の点線で示す輪郭を有していたとすると、斜めに移動する蒸着材料48は、蒸着マスク20に付着してガラス基板42まで到達しない。
【0046】
すなわち、蒸着材料の利用効率(成膜効率:ガラス基板42に付着する割合)を高めて高価な蒸着材料を節約するためには、蒸着マスク20のシート面に直交する断面(図5の断面)において、一方の面20a側の孔25の端部および他方の面20b側の孔25の端部を結ぶ直線Lと、他方の面20bと、によってなされる角度θが小さい方がよい。ただし、ガラス基板42への垂線に対して大きな角度をなすようにしてガラス基板42に向けて移動する蒸着材料の割合は少ない。そして、前述の直線Lが他方の面20bに対してなす角度θが60°以下となっていれば、蒸着材料の利用効率は十分な値となる。
【0047】
なお、角度θを小さくしていくと、図5に二点鎖線で示すように、隣り合う孔25の壁面同士が接続されるようになる。しかしながら、蒸着マスク20の強度を考慮すると、隣り合う孔25の壁面同士は接続されていないことが好ましく、一方の面20aにおいて隣り合う孔25の間に5μm以上の平坦な面が形成されていることがさらに好ましい。
【0048】
すなわち、直線Lが他方の面20bに対してなす角度θは、一方の面20aにおいて孔25の間に5μm以上の平坦な面が形成されるようになる角度以上であって、60℃以下であることが好ましい。
【0049】
上述したように、本実施の形態では、孔25が各有孔領域22において等間隔に配置されている。一例として、蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)が携帯電話やデジタルカメラ等のディスプレイ(2〜3インチ程度)を作製するために用いられる場合、孔25の配列ピッチP(図4参照)は、84μm(300ppi)以上254μm(100ppi)以下程度とすることができる。なお、カラー表示を行いたい場合には、孔25の配列方向(前述の一方向)に沿って蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)とガラス基板42とを少しずつ相対移動させ、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に蒸着させていってもよい。また、蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)が携帯電話のディスプレイを作製するために用いられる場合、各孔25の配列方向(上述の一方向)に沿った幅(スリット幅)Wは、28μm以上84μm以下程度とすることができる。
【0050】
一方、蒸着マスク装置10のフレーム15は、矩形状の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられている。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように蒸着マスクを張った状態に保持する。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定されている。
【0051】
蒸着マスク装置10は、高温雰囲気となる蒸着装置40の内部に保持される。したがって、蒸着マスク20およびフレーム15は、蒸着フレームの撓みや熱応力の発生を防止するため、熱膨張率が低い同一の材料によって作製されていることが好ましい。このような材料として、例えば、36%Niインバー材を用いることができる。
【0052】
次に、このような蒸着マスク20および蒸着マスク装置10の製造方法について、主に図6乃至図9を用いて説明する。このうち図6は、蒸着マスクの製造方法を説明するための図である。
【0053】
図6に示すように、本実施の形態における蒸着マスクの製造方法は、樹脂製シート32と樹脂製シート32上に積層された金属製シート34とを有する積層体30を供給する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを積層体30の金属製シート34に施して、金属製シート34に多数の孔25を形成する工程と、エッチング工程の後に、積層体30から樹脂製シート32を除去する工程と、を含んでいる。
【0054】
図6に示すように、本実施の形態においては、積層体30を供給コア31に巻き取った積層体の巻体29が準備される。そして、この供給コア31が回転して巻体29が巻き戻されることにより、図6に示すように帯状に延びる積層体30が供給される。ここで、積層体30は、金属製シート34が下方に位置するとともに樹脂製シート32が上方に位置するようにして、供給される。
【0055】
なお、積層体30の金属製シート34は、以下に説明するように孔25を形成されて蒸着マスク20をなすようになる。したがって、上述したように、金属製シート34は、例えば36%Niインバー材からなる。ただし、これに限られず、ステンレス、銅、鉄、アルミニウムからなるシートを金属製シート34として用いることも可能である。
【0056】
一方、樹脂製シート32としては、例えば、50μm〜150μm程度の厚さを有するポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンからなるシートを用いることができる。本実施の形態においては、UV光を照射されると金属製シート34に対する接合力が低下するようになされた樹脂製シート32が用いられている。具体的には、樹脂製シート32が、ポリエチレンテレフタレートからなる基材シート32aと、基材シート32a上に積層されるとともに金属製シート34と対面するUV剥離層32bと、を有するようにすることができる(図7および図8参照)。
【0057】
ここでUV剥離層32bとは、当初は粘着力を有し、基材シート32aと金属製シート34とを接着するものの、UV光を照射されると照射された部分の粘着力が低下するようになっている層である。例えば、UV光が照射されると、照射された部分が硬化して金属製シート34に対する接合力が低下するようになっている。このようなUV剥離層32bは、例えば、アクリル系UV再剥離型接着剤から形成することができる。
【0058】
供給された積層体30はエッチング装置(エッチング手段)50によってエッチング処理を施される。具体的には、まず、積層体30の金属製シート34の面上(図7の紙面における下側の面上)に感光性レジスト材料を塗布し、金属製シート34上にレジスト膜36を形成する。次に、レジスト膜36のうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板37を準備し、ガラス乾板37をレジスト膜36上に配置する。
【0059】
その後、図7に示すように、レジスト膜36をガラス乾板37越しに露光し、さらにレジスト膜36を現像する。以上のようにして、積層体30の金属製シート34上にレジストパターン36aが形成される。
【0060】
なお、ガラス乾板37のうちの除去すべきレジスト膜36に対面する領域を黒色にしておき、露光光として可視光を用いるようにしてもよい。この場合、黒色部分で可視光が吸収されることにより、レジスト膜36の除去すべき領域には光が入射せず、レジスト膜36が金属製シート34上に定着しない。一方、レジスト膜36の除去すべきでない領域には光が入射して、当該領域におけるレジスト膜36が金属製シート34上に定着する。定着していないレジスト膜36は、例えば湯洗によって除去される。
【0061】
次に、図8に示すように、金属製シート34上に形成されたレジストパターン36aをマスクとして、積層体30をエッチング液(例えば塩化第二鉄溶液)38でエッチングする。本実施の形態において、エッチング液38は、搬送される積層体30の下方に配置されたエッチング装置50のノズル51から、レジストパターン36a越しに金属製シート34の一方の面34aに向けて噴射される。このとき、図8に点線で示すように、金属製シート34のうちのレジストパターン36aによって覆われていない領域で、エッチング液による浸食が始まる。その後、浸食は、金属製シート34の厚み方向だけでなく、金属製シート34のシート面に沿った方向にも進んでいく。以上のようにして、エッチング液による浸食が金属製シート34の一方の面34aから他方の面34bまで進み、金属製シート34を貫通する孔25が形成される。
【0062】
その後、積層体30上のレジストパターン36aを除去し、さらに積層体30を水洗いする。このようにして、樹脂製シート32上に、多数の孔25が形成された金属製シート34からなる蒸着マスク用シート状部材18が得られる。
【0063】
ところで、樹脂製シート32が設けられていなかったとすると、上述したように、金属製シート34が貫通されて孔25が形成された後に、金属製シート34の他方の面34b側にエッチング液が滞留してしまい、孔25の形状および大きさが安定しないといった不具合が生じ得る。しかしながら、本実施の形態によれば、金属製シート34を貫通する孔25が形成されたとしても、この孔25は上方側を樹脂製シート32によって覆われている。したがって、従来の方法において生じていた不具合を確実に回避することができる。この結果、金属製シート34は一方の面34a側のみから浸食が進み、金属製シート34に形成された孔25の断面積は、一方の面34a,20aから他方の面34b,20bに向けて徐々に小さくなっていくようになる。また、所望の開孔面積(平面視における孔25の面積)を有した孔25を精度良く形成することができる。
【0064】
その後、このようにエッチングされた積層体30は、当該積層体30を狭持した状態で回転する一対の搬送ローラ57,57により、除去装置(除去手段)54内に搬送される。なお、この搬送ローラ57,57の回転によって積層体30に作用するテンション(引っ張り力)を介し、上述した供給コア31が回転させられ、巻体29から積層体30が供給されるようになっている。
【0065】
また、本実施の形態においては、金属製シート34が樹脂製シート32によって支持および補強されている。したがって、積層体30の搬送時に、孔25と孔25との間に作用する応力によって、金属製シート34の孔25と孔25との間が切断されてしまったり、孔25と孔25との間を線状に延びる部分がからまったりするといった不具合を格段に抑制することができる。この結果、エッチング工程において金属製シート34に形成された微細な孔25の形状をその後に損なってしまうといった不具合を回避することができる。
【0066】
なお、上述したように配列方向と直交する方向に沿って細長く延びる孔25を形成する場合、孔25が延びる方向(上述した他方向)と、積層体30が供給される方向(積層体が搬送される方向)とが略平行となっていることが好ましい。この場合、金属製シート34の孔25と孔25との間が切断されてしまったり、孔25と孔25との間を線状に延びる部分がからまったりすることを効果的に防止することができる。
【0067】
図9に示すように、本実施の形態における除去装置54は、搬送ローラ57の下流側に設けられたUV光照射手段55を有している。UV光照射手段55は、積層体30の移動経路に沿って設けられ、積層体30を樹脂製シート32側から覆うシェード55aと、シェード55a内に配置されたUV光源55bと、を有している。そして、搬送される積層体30は樹脂製シート32側からUV光を照射され、樹脂製シート32の基材シート32aを透過するUV光によって、基材シート32aと蒸着マスク20(金属製シート34)とを接着するUV剥離層32bの接着力が大幅に弱められる。この結果、積層体30をなす樹脂製シート32と金属製シート34(蒸着マスク20)とが分離可能となり、図9に示すように、樹脂製シート32が、金属製シート34から剥がされ、巻取コア58に巻き取られていく。
【0068】
なお、樹脂製シート32を金属製シート34から引き剥がす方向が、金属製シート34に形成された孔25が延びる方向(上述した他方向)と平行であることが好ましい。このような方向に沿って樹脂製シート32を金属製シート34から分離させる場合、金属製シート34の孔25と孔25との間が切断されてしまったり、孔25と孔25との間を線状に延びる部分がからまったりすることを効果的に防止することができる。
【0069】
このようにして、多数の孔25が形成された金属製シート34が得られ、切断装置(切断手段)59によって所定の長さに切断していくことにより、枚葉状の蒸着マスク20が得られる。そして、各蒸着マスク20に対してフレーム15を取り付けることにより、蒸着マスク装置10が得られる。なお、フレーム15は、蒸着マスク20の一方の面20aに取り付けられてもよいし、蒸着マスク20の他方の面20bに取り付けられてもよい。
【0070】
以上のように本実施の形態によれば、樹脂製シート32上に積層された金属製シート34に対して処理がなされていく。したがって、金属製シート34を一方の面34a側からのみエッチングして、金属製シート34を貫通する孔25を形成することができる。この場合、孔25は金属製シート34を貫通するものの、金属製シート34の他方の面34b側に位置する孔25の端部は、樹脂製シート32によって覆われている。すなわち、孔25は積層体30を貫通していないので、上述した従来の不具合を回避することができ、これにより、一方の面20aから他方の面20bに向けてしだいに断面積が小さくなっていく孔25が形成された蒸着マスク20を得ることができる。また、高精細なパターンで開孔した蒸着マスク20を精度良く作製することもできる。このような蒸着マスク20によれば、高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。
【0071】
したがって、このようにして得られた蒸着マスク20は、有機ELディスプレイ装置を製造する際に例えば有機発光材料を所望のパターンでガラス基板42上にパターニングするために用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)に非常に適している。
【0072】
また、本実施の形態によれば、孔25を形成した後の搬送時に、積層体30のうちの金属製シート34に作用するテンション(引っ張り力)を著しく低下させ、金属製シート34の孔25と孔25との間を切断するように作用する応力、および、金属製シート34の孔25と孔25との間を線状に延びる部分をからまらせるように作用する応力の発生を著しく低減させることができる。したがって、蒸着マスク20に精度良く形成された孔を、その後の工程において破損させてしまうことを防止することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態によれば、積層体30を供給する工程において、積層体30を巻き取った巻体29を巻き戻して、帯状に延びる積層体30を供給する。このような巻体29は安価に入手可能であり、しかも取り扱い上の都合が非常に良い。
【0074】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について説明する。
【0075】
上述した実施の形態においては、樹脂製シート32にUV光を照射して、樹脂製シート32を積層体30から除去する例を示したが、樹脂製シート32の除去方法はこれに限られない。例えば、積層体30を加熱炉(除去手段)に送り込み、積層体30の樹脂製シート32を燃焼させて、積層体30から樹脂製シート32を除去するようにしてもよい。樹脂製シート32を燃焼させて除去する場合、簡易な装置を用いた簡易な方法により、金属製シート34(蒸着マスク20)に形成された孔25に影響を及ぼすことなく、金属製シート34から樹脂製シート32を分離させることができる。なお、樹脂製シート32を燃焼させて除去する場合、UV光を照射されることによって金属製シート34に対する接合力が低下するようになされた樹脂製シート32を用いる必要はない。
【0076】
また、上述した実施の形態においては、樹脂製シート32と金属製シート34とが予め積層された積層体30を準備して供給する例を示したが、これに限られない。例えば、帯状に延びる金属製シート34を供給するとともに帯状に延びる樹脂製シート32を供給し、供給される金属製シート34と樹脂製シート32とを接合して積層体30を作製し、順次作製されていく積層体30に対して上述した処理を施していくようにしてもよい。あるいは、帯状に延びる金属製シート34を供給するとともに供給される金属製シート34上に枚葉状の樹脂製シート32を積層していき、金属製シート34のうちの枚葉状の樹脂製シート32を積層された部分(積層体30)に対して上述した処理を順次施していくようにしてもよい。あるいは、帯状に延びる樹脂製シート32を供給するとともに供給される樹脂製シート32上に枚葉状の金属製シート34を積層していき、樹脂製シート34上に積層された枚葉状の金属製シート34を積層された部分(積層体30)に対して上述した処理を順次施していくようにしてもよい。
【0077】
さらに、上述した実施の形態において、金属製シート34に孔25を形成し、さらに、樹脂製シート32を金属製シート34から分離させた後に、金属製シート34を切断装置59によって所定の長さに切断する例を示したが、これに限られない。例えば、金属製シート34を切断する工程を、金属製シート34に孔25を形成する前に行ってもよいし、さらには、金属製シート34に孔25を形成した後であって樹脂製シート32を金属製シート34から分離させる前に行ってもよい。樹脂製シート32を金属製シート34から分離させる前に、金属製シート34を所定の長さに切断する場合、樹脂製シート32を切断しきらない程度に積層体30をハーフカットして金属製シート34のみを切断するようにしてもよいし、あるいは、金属製シート34を含む積層体30全体を所定の長さに切断するようにしてもよい。さらに、エッチングによって孔25を形成する工程中に、金属製シート34を所定の長さに縁切りするようにエッチングしてもよい。すなわち、エッチングによって孔25を形成する際に、エッチングにより金属製シート34を所定の長さに分離させるようにしてもよい。この場合、別途に金属製シート34を所定の長さに切断する手間を省くことができ、蒸着マスク20を高い生産効率で安価に製造することができる。
【0078】
さらに、上述した実施の形態において、蒸着マスク20を所定の長さに切断する例を示したが、これに限られない。多数の孔25が形成された金属製シート34を切断せずに蒸着マスク用シート状部材18として取り扱うようにしてもよい。例えば、図10に示すように、多数の孔25が形成された金属製シート34からなる蒸着マスク用シート状部材18を、切断することなく、巻取コア19に巻き取り、蒸着マスク用シート状部材18の巻体18aとして取り扱う(出荷等)ようにしてもよい。なお、蒸着マスク用シート状部材18も本件の保護対象である。
【0079】
さらに、上述した実施の形態においては、所定の長さに切断された蒸着マスク20に対してフレーム15を取り付ける例を示したが、これに限られない。例えば、樹脂製シート34を除去した後であって所定の長さに切断される前の金属製シート34に対してフレーム15を取り付けるようにしてもよい。あるいは、孔25を形成した後であって樹脂製シート34を除去する前の金属製シート34に対してフレーム15を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明による蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一実施の形態を示す図である。
【図2】図2は、図1に示された蒸着マスクおよび蒸着マスク装置を用いて蒸着する方法を説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示された蒸着マスクを示す部分平面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面における断面図である。
【図5】図5は、蒸着マスクの作用を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明による蒸着マスクの製造方法および蒸着マスク装置の製造方法の一実施の形態を説明するための図である。
【図7】図7は、積層体(金属製シート)にレジストパターンを形成する方法を説明するための図である。
【図8】図8は、積層体(金属製シート)をエッチングする方法を説明するための図である。
【図9】図9は、積層体から樹脂製シートを除去する方法を説明するための図である。
【図10】図10は、図6に対応する図であって、蒸着マスク用シート状部材の製造方法を説明するための図である。
【図11】図11は、図5に対応する図であって、両側からエッチングされた金属板からなる蒸着マスクを用いて蒸着する方法を説明するための図である。
【図12】図12は、図8に対応する図であって、下方側の面から金属板をエッチングして蒸着マスクを製造する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0081】
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
18 蒸着マスク用シート状部材
20 蒸着マスク
20a 一方の面
20b 他方の面
22 有孔領域
23 無孔領域
25 孔
29 巻体
30 積層体
32 樹脂製シート
34 金属製シート
L 直線
θ 角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクに係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクに関する。
【0002】
また、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを製造する方法に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクの製造方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置を製造する方法に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置の製造方法に関する。
【0005】
さらに、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する方法に係り、とりわけ、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる蒸着マスク用のシート状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0006】
従来、所望のパターンで配列された孔を含む蒸着用マスクを用い、所望のパターンで薄膜を形成する方法が知られている。そして、昨今においては、例えば有機EL表示装置の製造時において有機材料を基板上に蒸着する場合等、蒸着によって極めて高精細なパターニングを行うことが強く要望されている。
【0007】
なお、このような蒸着用マスクは、一般的に、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に孔を形成することにより、製造され得る(例えば、特許文献1)。また、エッチングによって金属板に孔を形成する場合、金属板の両方の側の面からエッチングする方法と、金属板の一方の側の面からのみエッチングする方法とがある。
【特許文献1】特開2004−39319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エッチングによって作製された蒸着マスクを用いた場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができないという不具合がある。この不具合の原因について調査研究を行ったところ、以下のことが確認された。
【0009】
フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングにおいては、金属板のうちのレジスト膜で覆われていない領域から浸食が開始される。その後、浸食は、金属板の厚さ方向のみに進むのではなく、金属板の板面に沿った方向にも進む。したがって、エッチングによって先細りした孔が形成されていく。このため、金属板2の両方の側の面からエッチングを行った場合、図11に示すように、金属板2の厚さ方向の端部以外において孔2a内に最も断面積(開孔面積)が小さくなる張り出し部3が形成されるようになる。そして、このような蒸着マスク1を用いて蒸着を行った場合、基板4のうちの張り出し部3の裏側に対応する領域に成膜される蒸着膜5の膜厚は安定しない。この結果、蒸着パターンの縁部がぼやけてしまう(蒸着パターンの輪郭がはっきりしない)。またそもそも、孔内に形成される張り出し部の位置や断面形状を制御すること自体が困難である。以上のことから、金属板を両方の側の面からエッチングした場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができない。
【0010】
一方、金属板を上方側の面のみからエッチング処理した場合、浸食によって形成された先細り孔に、既に浸食に用いられ浸食能力が低くなったエッチング液が残留する。その後、金属板の孔が下方側の面に達した時、それまで孔内に残留していたエッチング液が下方の面から流れ出て、浸食能力の高いフレッシュなエッチング液が形成された孔内に流れ込む。このとき、断面積(開孔面積)が小さくなる孔内の下方側の領域において液圧が高くなり、孔内の下方側の領域がフレッシュなエッチング液により激しく浸食される。この結果、金属板の両側からエッチングした場合と同様に、孔内に張り出し部が形成されてしまう。
【0011】
また、レジスト膜7を介して金属板6を下方側の面のみからエッチングした場合、図12に示すように、浸食によって形成された先細り孔6aが金属板6を貫通すると、上側面の孔周囲に、エッチング液8が残留することがある。結果として、残留したエッチング液によって金属板が上方側の面からも浸食が進み、金属板の両側からエッチングした場合と同様に、孔内に張り出し部が形成されてしまう。
【0012】
これらのことから、金属板を一方側の面のみからエッチングした場合も、蒸着パターンの縁部がぼやけてしまう(蒸着パターンの輪郭がはっきりしない)。またそもそも、金属板を一方の面側からエッチングする場合、孔が貫通されてエッチング液が流れ込みはじめる際に発生する圧力により、孔の断面形状がだれてしまうことがある。そして、この場合、孔を所望の形状で精度良く形成すること自体が困難となる。この現象は、上述した高精細なパターニングを行うための蒸着マスクにおいて、より顕著となる。以上のことから、金属板を一方側の面のみからエッチングした場合も、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができない。
【0013】
そして、本発明は、これらの知見に基づくものであって、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを製造する蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置を製造する蒸着マスク装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
さらに、本発明は、極めて高精細なパターニングを行うことを可能とする蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する蒸着マスク用シート状部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による蒸着マスクの製造方法は、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスクの製造方法の前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていくようにしてもよい。また、このような蒸着マスクの製造方法において、前記積層体は、前記他方向に沿って供給されるようにしてもよい。
【0020】
また、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクが製造されるようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、前記樹脂製シートを除去する工程において、前記樹脂製シートにUV光を照射して、前記金属製シートと前記樹脂製シートとを分離させるようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給するようにしてもよい。
【0023】
本発明による蒸着マスクは、上述したいずれかの製造方法によって製造された蒸着マスクであって、前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていくことを特徴とする。
【0024】
本発明による蒸着マスクにおいて、蒸着マスクのシート面に直交する断面において、前記孔の前記一方の面側の端部および前記他方の面側の端部を結ぶ直線と、前記他方の面と、によってなされる角度が、60°以下であるようにしてもよい。
【0025】
本発明による蒸着マスク装置は、上述したいずれかの製造方法によって製造された蒸着マスクと、前記蒸着マスクと固定されたフレームと、を備え、前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていくことを特徴とする。
【0026】
本発明による蒸着マスク装置において、蒸着マスクのシート面に直交する断面において、前記孔の前記一方の面側の端部および前記他方の面側の端部を結ぶ直線と、前記他方の面と、によってなされる角度が、60°以下であるようにしてもよい。
【0027】
本発明による第1の蒸着マスク装置の製造方法は、蒸着マスクと蒸着マスクに固定されたフレームとを備えた蒸着マスク装置の製造方法であって、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体の前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、前記フレームを取り付けられた前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
本発明による第2の蒸着マスク装置の製造方法は、蒸着マスクと蒸着マスクに固定されたフレームとを備えた蒸着マスク装置の製造方法であって、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、前記樹脂製シートを除去した後に、前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスク装置の製造方法の前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていくようにしてもよい。また、このような蒸着マスク装置の製造方法において、前記積層体は、前記他方向に沿って供給されるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスク配置が製造されるようにしてもよい。
【0031】
さらに、本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させるようにしてもよい。
【0032】
さらに、本発明による第1または第2の蒸着マスク装置の製造方法の前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給するようにしてもよい。
【0033】
本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法は、多数の孔を形成された蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する蒸着マスク用シート状部材の製造方法であって、樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0034】
本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていくようにしてもよい。また、このような蒸着マスク用シート状部材の製造方法において、前記積層体は、前記他方向に沿って供給されるようにしてもよい。
【0035】
また、本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクに用いられるシート状部材が製造されるようにしてもよい。
【0036】
さらに、本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させるようにしてもよい。
【0037】
さらに、本発明による蒸着マスク用シート状部材の製造方法の前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、一方の面から他方の面に向けて断面積がしだい小さくなっていくとともに他方の面における形状が高精度に形成された蒸着マスクが得られる。したがって、この蒸着マスクによれば、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図1乃至図10を参照して本発明による蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材の製造方法の一実施の形態について説明する。ここで図1乃至図10は本発明の一実施の形態を説明するための図である。なお、以下の実施の形態では、有機ELディスプレイ装置を製造する際に有機発光材料を所望のパターンでガラス基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)、蒸着マスク装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスク装置の製造方法、および、蒸着マスク用シート状部材に対し、本発明を適用することができる。
【0040】
まず最初に、本発明による蒸着マスクの製造方法および蒸着マスク装置の製造方法により製造され得る蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一例について、主に図1乃至図5を参照して説明する。ここで図1は蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一例を示す斜視図であり、図2は蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の使用方法を説明するための図である。
【0041】
図1乃至図4に示すように、本実施の形態における蒸着マスク装置10は、矩形状の金属製シートからなる蒸着マスク20と、蒸着マスク20の周縁部の取り付けられたフレーム15と、を備えている。蒸着マスク20は、多数の孔25(図4参照)を形成された金属製のシート状部材からなっている。この蒸着マスク装置10は、図2に示すように、蒸着マスク20がガラス基板42に対面するようにして、蒸着装置40内に支持される。蒸着装置40内には、この蒸着マスク装置10を挟んだガラス基板42の下方に、蒸着材料(一例として、有機発光材料)48を収容するるつぼ44と、るつぼ44を加熱するヒータ46とが配置されている。るつぼ44内の蒸着材料48は、ヒータ46からの加熱により、気化または昇華してガラス基板42の表面に付着するようになる。上述したように、蒸着マスク20には多数の孔25が形成されており、蒸着材料48はこの孔25を介してガラス基板42に付着する。この結果、蒸着マスク20の孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料48がガラス基板42の表面に成膜される。
【0042】
図1に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20は、孔25が形成された有孔領域22と、孔25が形成されておらず、有孔領域22の周囲を取り囲む領域を占める無孔領域23と、を有している。図1に示すように、各有孔領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。
【0043】
本実施の形態において、複数の有孔領域22は、蒸着マスク20の一辺と平行な一方向に沿って所定の間隔を空けて配置されるとともに、前記一方向と直交する他方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。本実施の形態において、一つの有孔領域22が一つの有機ELディスプレイ装置に対応するようになっている。すなわち、図1に示された蒸着マスク装置10(蒸着マスク20)によれば、多面付蒸着が可能となっている。
【0044】
また、図1および図3に示すように、各有孔領域22に設けられた複数の孔25は、当該有孔領域22において、一方向に沿って等間隔をあけて並べて配置されている。また、各孔25は、前記一方向に直交する他方向と平行に、有孔領域22の一端から他端まで細長く延びている。また、図4に示すように、シート状からなる蒸着マスク20の一方の面20aから他方の面20bに向け、金属製シート34のシート面に沿った断面における各孔25の断面積がしだい小さくなっていく。ここで、図3は、蒸着マスク20を一方の面20a側から示す部分平面図であり、図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【0045】
ところで、図5に示すように、蒸着マスク装置10は蒸着装置40に収容された場合、蒸着マスク20の一方の面20aが蒸着材料48を保持したるつぼ44に対面し、蒸着マスク20の他方の面20bがガラス基板42に対面する。すなわち、図5に示すように、蒸着材料48は次第に断面積が小さくなっていく孔25を通過してガラス基板42に付着する。図5に示すように、蒸着材料48はるつぼ44からガラス基板42に向けて直線的に移動せず、ガラス基板42の板面に対して斜めに移動することもある。このとき、孔25の断面形状が図5の点線で示す輪郭を有していたとすると、斜めに移動する蒸着材料48は、蒸着マスク20に付着してガラス基板42まで到達しない。
【0046】
すなわち、蒸着材料の利用効率(成膜効率:ガラス基板42に付着する割合)を高めて高価な蒸着材料を節約するためには、蒸着マスク20のシート面に直交する断面(図5の断面)において、一方の面20a側の孔25の端部および他方の面20b側の孔25の端部を結ぶ直線Lと、他方の面20bと、によってなされる角度θが小さい方がよい。ただし、ガラス基板42への垂線に対して大きな角度をなすようにしてガラス基板42に向けて移動する蒸着材料の割合は少ない。そして、前述の直線Lが他方の面20bに対してなす角度θが60°以下となっていれば、蒸着材料の利用効率は十分な値となる。
【0047】
なお、角度θを小さくしていくと、図5に二点鎖線で示すように、隣り合う孔25の壁面同士が接続されるようになる。しかしながら、蒸着マスク20の強度を考慮すると、隣り合う孔25の壁面同士は接続されていないことが好ましく、一方の面20aにおいて隣り合う孔25の間に5μm以上の平坦な面が形成されていることがさらに好ましい。
【0048】
すなわち、直線Lが他方の面20bに対してなす角度θは、一方の面20aにおいて孔25の間に5μm以上の平坦な面が形成されるようになる角度以上であって、60℃以下であることが好ましい。
【0049】
上述したように、本実施の形態では、孔25が各有孔領域22において等間隔に配置されている。一例として、蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)が携帯電話やデジタルカメラ等のディスプレイ(2〜3インチ程度)を作製するために用いられる場合、孔25の配列ピッチP(図4参照)は、84μm(300ppi)以上254μm(100ppi)以下程度とすることができる。なお、カラー表示を行いたい場合には、孔25の配列方向(前述の一方向)に沿って蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)とガラス基板42とを少しずつ相対移動させ、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に蒸着させていってもよい。また、蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)が携帯電話のディスプレイを作製するために用いられる場合、各孔25の配列方向(上述の一方向)に沿った幅(スリット幅)Wは、28μm以上84μm以下程度とすることができる。
【0050】
一方、蒸着マスク装置10のフレーム15は、矩形状の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられている。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように蒸着マスクを張った状態に保持する。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定されている。
【0051】
蒸着マスク装置10は、高温雰囲気となる蒸着装置40の内部に保持される。したがって、蒸着マスク20およびフレーム15は、蒸着フレームの撓みや熱応力の発生を防止するため、熱膨張率が低い同一の材料によって作製されていることが好ましい。このような材料として、例えば、36%Niインバー材を用いることができる。
【0052】
次に、このような蒸着マスク20および蒸着マスク装置10の製造方法について、主に図6乃至図9を用いて説明する。このうち図6は、蒸着マスクの製造方法を説明するための図である。
【0053】
図6に示すように、本実施の形態における蒸着マスクの製造方法は、樹脂製シート32と樹脂製シート32上に積層された金属製シート34とを有する積層体30を供給する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを積層体30の金属製シート34に施して、金属製シート34に多数の孔25を形成する工程と、エッチング工程の後に、積層体30から樹脂製シート32を除去する工程と、を含んでいる。
【0054】
図6に示すように、本実施の形態においては、積層体30を供給コア31に巻き取った積層体の巻体29が準備される。そして、この供給コア31が回転して巻体29が巻き戻されることにより、図6に示すように帯状に延びる積層体30が供給される。ここで、積層体30は、金属製シート34が下方に位置するとともに樹脂製シート32が上方に位置するようにして、供給される。
【0055】
なお、積層体30の金属製シート34は、以下に説明するように孔25を形成されて蒸着マスク20をなすようになる。したがって、上述したように、金属製シート34は、例えば36%Niインバー材からなる。ただし、これに限られず、ステンレス、銅、鉄、アルミニウムからなるシートを金属製シート34として用いることも可能である。
【0056】
一方、樹脂製シート32としては、例えば、50μm〜150μm程度の厚さを有するポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンからなるシートを用いることができる。本実施の形態においては、UV光を照射されると金属製シート34に対する接合力が低下するようになされた樹脂製シート32が用いられている。具体的には、樹脂製シート32が、ポリエチレンテレフタレートからなる基材シート32aと、基材シート32a上に積層されるとともに金属製シート34と対面するUV剥離層32bと、を有するようにすることができる(図7および図8参照)。
【0057】
ここでUV剥離層32bとは、当初は粘着力を有し、基材シート32aと金属製シート34とを接着するものの、UV光を照射されると照射された部分の粘着力が低下するようになっている層である。例えば、UV光が照射されると、照射された部分が硬化して金属製シート34に対する接合力が低下するようになっている。このようなUV剥離層32bは、例えば、アクリル系UV再剥離型接着剤から形成することができる。
【0058】
供給された積層体30はエッチング装置(エッチング手段)50によってエッチング処理を施される。具体的には、まず、積層体30の金属製シート34の面上(図7の紙面における下側の面上)に感光性レジスト材料を塗布し、金属製シート34上にレジスト膜36を形成する。次に、レジスト膜36のうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板37を準備し、ガラス乾板37をレジスト膜36上に配置する。
【0059】
その後、図7に示すように、レジスト膜36をガラス乾板37越しに露光し、さらにレジスト膜36を現像する。以上のようにして、積層体30の金属製シート34上にレジストパターン36aが形成される。
【0060】
なお、ガラス乾板37のうちの除去すべきレジスト膜36に対面する領域を黒色にしておき、露光光として可視光を用いるようにしてもよい。この場合、黒色部分で可視光が吸収されることにより、レジスト膜36の除去すべき領域には光が入射せず、レジスト膜36が金属製シート34上に定着しない。一方、レジスト膜36の除去すべきでない領域には光が入射して、当該領域におけるレジスト膜36が金属製シート34上に定着する。定着していないレジスト膜36は、例えば湯洗によって除去される。
【0061】
次に、図8に示すように、金属製シート34上に形成されたレジストパターン36aをマスクとして、積層体30をエッチング液(例えば塩化第二鉄溶液)38でエッチングする。本実施の形態において、エッチング液38は、搬送される積層体30の下方に配置されたエッチング装置50のノズル51から、レジストパターン36a越しに金属製シート34の一方の面34aに向けて噴射される。このとき、図8に点線で示すように、金属製シート34のうちのレジストパターン36aによって覆われていない領域で、エッチング液による浸食が始まる。その後、浸食は、金属製シート34の厚み方向だけでなく、金属製シート34のシート面に沿った方向にも進んでいく。以上のようにして、エッチング液による浸食が金属製シート34の一方の面34aから他方の面34bまで進み、金属製シート34を貫通する孔25が形成される。
【0062】
その後、積層体30上のレジストパターン36aを除去し、さらに積層体30を水洗いする。このようにして、樹脂製シート32上に、多数の孔25が形成された金属製シート34からなる蒸着マスク用シート状部材18が得られる。
【0063】
ところで、樹脂製シート32が設けられていなかったとすると、上述したように、金属製シート34が貫通されて孔25が形成された後に、金属製シート34の他方の面34b側にエッチング液が滞留してしまい、孔25の形状および大きさが安定しないといった不具合が生じ得る。しかしながら、本実施の形態によれば、金属製シート34を貫通する孔25が形成されたとしても、この孔25は上方側を樹脂製シート32によって覆われている。したがって、従来の方法において生じていた不具合を確実に回避することができる。この結果、金属製シート34は一方の面34a側のみから浸食が進み、金属製シート34に形成された孔25の断面積は、一方の面34a,20aから他方の面34b,20bに向けて徐々に小さくなっていくようになる。また、所望の開孔面積(平面視における孔25の面積)を有した孔25を精度良く形成することができる。
【0064】
その後、このようにエッチングされた積層体30は、当該積層体30を狭持した状態で回転する一対の搬送ローラ57,57により、除去装置(除去手段)54内に搬送される。なお、この搬送ローラ57,57の回転によって積層体30に作用するテンション(引っ張り力)を介し、上述した供給コア31が回転させられ、巻体29から積層体30が供給されるようになっている。
【0065】
また、本実施の形態においては、金属製シート34が樹脂製シート32によって支持および補強されている。したがって、積層体30の搬送時に、孔25と孔25との間に作用する応力によって、金属製シート34の孔25と孔25との間が切断されてしまったり、孔25と孔25との間を線状に延びる部分がからまったりするといった不具合を格段に抑制することができる。この結果、エッチング工程において金属製シート34に形成された微細な孔25の形状をその後に損なってしまうといった不具合を回避することができる。
【0066】
なお、上述したように配列方向と直交する方向に沿って細長く延びる孔25を形成する場合、孔25が延びる方向(上述した他方向)と、積層体30が供給される方向(積層体が搬送される方向)とが略平行となっていることが好ましい。この場合、金属製シート34の孔25と孔25との間が切断されてしまったり、孔25と孔25との間を線状に延びる部分がからまったりすることを効果的に防止することができる。
【0067】
図9に示すように、本実施の形態における除去装置54は、搬送ローラ57の下流側に設けられたUV光照射手段55を有している。UV光照射手段55は、積層体30の移動経路に沿って設けられ、積層体30を樹脂製シート32側から覆うシェード55aと、シェード55a内に配置されたUV光源55bと、を有している。そして、搬送される積層体30は樹脂製シート32側からUV光を照射され、樹脂製シート32の基材シート32aを透過するUV光によって、基材シート32aと蒸着マスク20(金属製シート34)とを接着するUV剥離層32bの接着力が大幅に弱められる。この結果、積層体30をなす樹脂製シート32と金属製シート34(蒸着マスク20)とが分離可能となり、図9に示すように、樹脂製シート32が、金属製シート34から剥がされ、巻取コア58に巻き取られていく。
【0068】
なお、樹脂製シート32を金属製シート34から引き剥がす方向が、金属製シート34に形成された孔25が延びる方向(上述した他方向)と平行であることが好ましい。このような方向に沿って樹脂製シート32を金属製シート34から分離させる場合、金属製シート34の孔25と孔25との間が切断されてしまったり、孔25と孔25との間を線状に延びる部分がからまったりすることを効果的に防止することができる。
【0069】
このようにして、多数の孔25が形成された金属製シート34が得られ、切断装置(切断手段)59によって所定の長さに切断していくことにより、枚葉状の蒸着マスク20が得られる。そして、各蒸着マスク20に対してフレーム15を取り付けることにより、蒸着マスク装置10が得られる。なお、フレーム15は、蒸着マスク20の一方の面20aに取り付けられてもよいし、蒸着マスク20の他方の面20bに取り付けられてもよい。
【0070】
以上のように本実施の形態によれば、樹脂製シート32上に積層された金属製シート34に対して処理がなされていく。したがって、金属製シート34を一方の面34a側からのみエッチングして、金属製シート34を貫通する孔25を形成することができる。この場合、孔25は金属製シート34を貫通するものの、金属製シート34の他方の面34b側に位置する孔25の端部は、樹脂製シート32によって覆われている。すなわち、孔25は積層体30を貫通していないので、上述した従来の不具合を回避することができ、これにより、一方の面20aから他方の面20bに向けてしだいに断面積が小さくなっていく孔25が形成された蒸着マスク20を得ることができる。また、高精細なパターンで開孔した蒸着マスク20を精度良く作製することもできる。このような蒸着マスク20によれば、高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。
【0071】
したがって、このようにして得られた蒸着マスク20は、有機ELディスプレイ装置を製造する際に例えば有機発光材料を所望のパターンでガラス基板42上にパターニングするために用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)に非常に適している。
【0072】
また、本実施の形態によれば、孔25を形成した後の搬送時に、積層体30のうちの金属製シート34に作用するテンション(引っ張り力)を著しく低下させ、金属製シート34の孔25と孔25との間を切断するように作用する応力、および、金属製シート34の孔25と孔25との間を線状に延びる部分をからまらせるように作用する応力の発生を著しく低減させることができる。したがって、蒸着マスク20に精度良く形成された孔を、その後の工程において破損させてしまうことを防止することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態によれば、積層体30を供給する工程において、積層体30を巻き取った巻体29を巻き戻して、帯状に延びる積層体30を供給する。このような巻体29は安価に入手可能であり、しかも取り扱い上の都合が非常に良い。
【0074】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について説明する。
【0075】
上述した実施の形態においては、樹脂製シート32にUV光を照射して、樹脂製シート32を積層体30から除去する例を示したが、樹脂製シート32の除去方法はこれに限られない。例えば、積層体30を加熱炉(除去手段)に送り込み、積層体30の樹脂製シート32を燃焼させて、積層体30から樹脂製シート32を除去するようにしてもよい。樹脂製シート32を燃焼させて除去する場合、簡易な装置を用いた簡易な方法により、金属製シート34(蒸着マスク20)に形成された孔25に影響を及ぼすことなく、金属製シート34から樹脂製シート32を分離させることができる。なお、樹脂製シート32を燃焼させて除去する場合、UV光を照射されることによって金属製シート34に対する接合力が低下するようになされた樹脂製シート32を用いる必要はない。
【0076】
また、上述した実施の形態においては、樹脂製シート32と金属製シート34とが予め積層された積層体30を準備して供給する例を示したが、これに限られない。例えば、帯状に延びる金属製シート34を供給するとともに帯状に延びる樹脂製シート32を供給し、供給される金属製シート34と樹脂製シート32とを接合して積層体30を作製し、順次作製されていく積層体30に対して上述した処理を施していくようにしてもよい。あるいは、帯状に延びる金属製シート34を供給するとともに供給される金属製シート34上に枚葉状の樹脂製シート32を積層していき、金属製シート34のうちの枚葉状の樹脂製シート32を積層された部分(積層体30)に対して上述した処理を順次施していくようにしてもよい。あるいは、帯状に延びる樹脂製シート32を供給するとともに供給される樹脂製シート32上に枚葉状の金属製シート34を積層していき、樹脂製シート34上に積層された枚葉状の金属製シート34を積層された部分(積層体30)に対して上述した処理を順次施していくようにしてもよい。
【0077】
さらに、上述した実施の形態において、金属製シート34に孔25を形成し、さらに、樹脂製シート32を金属製シート34から分離させた後に、金属製シート34を切断装置59によって所定の長さに切断する例を示したが、これに限られない。例えば、金属製シート34を切断する工程を、金属製シート34に孔25を形成する前に行ってもよいし、さらには、金属製シート34に孔25を形成した後であって樹脂製シート32を金属製シート34から分離させる前に行ってもよい。樹脂製シート32を金属製シート34から分離させる前に、金属製シート34を所定の長さに切断する場合、樹脂製シート32を切断しきらない程度に積層体30をハーフカットして金属製シート34のみを切断するようにしてもよいし、あるいは、金属製シート34を含む積層体30全体を所定の長さに切断するようにしてもよい。さらに、エッチングによって孔25を形成する工程中に、金属製シート34を所定の長さに縁切りするようにエッチングしてもよい。すなわち、エッチングによって孔25を形成する際に、エッチングにより金属製シート34を所定の長さに分離させるようにしてもよい。この場合、別途に金属製シート34を所定の長さに切断する手間を省くことができ、蒸着マスク20を高い生産効率で安価に製造することができる。
【0078】
さらに、上述した実施の形態において、蒸着マスク20を所定の長さに切断する例を示したが、これに限られない。多数の孔25が形成された金属製シート34を切断せずに蒸着マスク用シート状部材18として取り扱うようにしてもよい。例えば、図10に示すように、多数の孔25が形成された金属製シート34からなる蒸着マスク用シート状部材18を、切断することなく、巻取コア19に巻き取り、蒸着マスク用シート状部材18の巻体18aとして取り扱う(出荷等)ようにしてもよい。なお、蒸着マスク用シート状部材18も本件の保護対象である。
【0079】
さらに、上述した実施の形態においては、所定の長さに切断された蒸着マスク20に対してフレーム15を取り付ける例を示したが、これに限られない。例えば、樹脂製シート34を除去した後であって所定の長さに切断される前の金属製シート34に対してフレーム15を取り付けるようにしてもよい。あるいは、孔25を形成した後であって樹脂製シート34を除去する前の金属製シート34に対してフレーム15を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明による蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一実施の形態を示す図である。
【図2】図2は、図1に示された蒸着マスクおよび蒸着マスク装置を用いて蒸着する方法を説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示された蒸着マスクを示す部分平面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面における断面図である。
【図5】図5は、蒸着マスクの作用を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明による蒸着マスクの製造方法および蒸着マスク装置の製造方法の一実施の形態を説明するための図である。
【図7】図7は、積層体(金属製シート)にレジストパターンを形成する方法を説明するための図である。
【図8】図8は、積層体(金属製シート)をエッチングする方法を説明するための図である。
【図9】図9は、積層体から樹脂製シートを除去する方法を説明するための図である。
【図10】図10は、図6に対応する図であって、蒸着マスク用シート状部材の製造方法を説明するための図である。
【図11】図11は、図5に対応する図であって、両側からエッチングされた金属板からなる蒸着マスクを用いて蒸着する方法を説明するための図である。
【図12】図12は、図8に対応する図であって、下方側の面から金属板をエッチングして蒸着マスクを製造する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0081】
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
18 蒸着マスク用シート状部材
20 蒸着マスク
20a 一方の面
20b 他方の面
22 有孔領域
23 無孔領域
25 孔
29 巻体
30 積層体
32 樹脂製シート
34 金属製シート
L 直線
θ 角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスクの製造方法。
【請求項2】
前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていく
ことを特徴とする請求項2に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項4】
前記積層体は、前記他方向に沿って供給される
ことを特徴とする請求項2または3に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項5】
前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクが製造される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項6】
前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記樹脂製シートにUV光を照射して、前記金属製シートと前記樹脂製シートとを分離させる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項7】
前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された蒸着マスクであって、
前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていく
ことを特徴とする蒸着マスク。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された蒸着マスクと、
前記蒸着マスクと固定されたフレームと、を備え、
前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていく
ことを特徴とする蒸着マスク装置。
【請求項10】
蒸着マスクのシート面に直交する断面において、前記孔の前記一方の面側の端部および前記他方の面側の端部を結ぶ直線と、前記他方の面と、によってなされる角度が、60°以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の蒸着マスク装置。
【請求項11】
蒸着マスクと、蒸着マスクと固定されたフレームと、を備えた蒸着マスク装置の製造方法において、
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体の前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、
前記フレームを取り付けられた前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項12】
蒸着マスクと、蒸着マスクと固定されたフレームと、を備えた蒸着マスク装置の製造方法において、
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、
前記樹脂製シートを除去した後に、前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項13】
前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成される
ことを特徴とする請求項11または12に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていく
ことを特徴とする請求項13に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項15】
前記積層体は、前記他方向に沿って供給される
ことを特徴とする請求項13または14に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項16】
前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスク配置が製造される
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項17】
前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、
前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させる
ことを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項18】
前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給する
ことを特徴とする請求項11乃至17のいずれか一項に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項19】
多数の孔を形成された蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する蒸着マスク用シート状部材の製造方法において、
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項20】
前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成される
ことを特徴とする請求項19に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項21】
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていく
ことを特徴とする請求項20に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項22】
前記積層体は、前記他方向に沿って供給される
ことを特徴とする請求項20または21に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項23】
前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクに用いられるシート状部材が製造される
ことを特徴とする請求項19乃至22のいずれか一項に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項24】
前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、
前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させる
ことを特徴とする請求項19乃至23のいずれか一項に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項25】
前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給する
ことを特徴とする請求項19乃至24のいずれか一項に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項1】
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスクの製造方法。
【請求項2】
前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていく
ことを特徴とする請求項2に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項4】
前記積層体は、前記他方向に沿って供給される
ことを特徴とする請求項2または3に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項5】
前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクが製造される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項6】
前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記樹脂製シートにUV光を照射して、前記金属製シートと前記樹脂製シートとを分離させる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項7】
前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された蒸着マスクであって、
前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていく
ことを特徴とする蒸着マスク。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された蒸着マスクと、
前記蒸着マスクと固定されたフレームと、を備え、
前記蒸着マスクの一方の面から他方の面に向け、前記蒸着マスクに形成された孔の断面積がしだい小さくなっていく
ことを特徴とする蒸着マスク装置。
【請求項10】
蒸着マスクのシート面に直交する断面において、前記孔の前記一方の面側の端部および前記他方の面側の端部を結ぶ直線と、前記他方の面と、によってなされる角度が、60°以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の蒸着マスク装置。
【請求項11】
蒸着マスクと、蒸着マスクと固定されたフレームと、を備えた蒸着マスク装置の製造方法において、
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体の前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、
前記フレームを取り付けられた前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項12】
蒸着マスクと、蒸着マスクと固定されたフレームと、を備えた蒸着マスク装置の製造方法において、
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、
前記樹脂製シートを除去した後に、前記金属製シートに前記フレームを取り付ける工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項13】
前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成される
ことを特徴とする請求項11または12に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていく
ことを特徴とする請求項13に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項15】
前記積層体は、前記他方向に沿って供給される
ことを特徴とする請求項13または14に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項16】
前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスク配置が製造される
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項17】
前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、
前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させる
ことを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項18】
前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給する
ことを特徴とする請求項11乃至17のいずれか一項に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項19】
多数の孔を形成された蒸着マスクに用いられるシート状部材を製造する蒸着マスク用シート状部材の製造方法において、
樹脂製シートと、前記樹脂製シート上に積層された金属製シートと、を有する積層体を供給する工程と、
供給される積層体をエッチングして、金属製シートに多数の孔を形成する工程と、
エッチング工程の後に、前記積層体から前記樹脂製シートを除去する工程と、を備えた
ことを特徴とする蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項20】
前記積層体をエッチングする工程において、一方向に沿って並べて配列された多数の孔であって、各々が前記一方向に直交する他方向に沿って延びる多数の孔が形成される
ことを特徴とする請求項19に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項21】
前記樹脂製シートを除去する工程において、前記他方向に沿って、前記金属製シートと前記樹脂シートが分離されていく
ことを特徴とする請求項20に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項22】
前記積層体は、前記他方向に沿って供給される
ことを特徴とする請求項20または21に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項23】
前記積層体をエッチングする工程において、所定のパターンで複数の孔が配置された有孔領域が金属製シートに複数形成され、これにより、多面付可能な蒸着マスクに用いられるシート状部材が製造される
ことを特徴とする請求項19乃至22のいずれか一項に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項24】
前記積層体を供給する工程において、UV光を照射されると前記金属製シートに対する接合力が低下するようになされた樹脂製シートを含む積層体が供給され、
前記樹脂製シートを除去する工程において、接着層にUV光を照射して、金属製シートと樹脂製シートとを分離させる
ことを特徴とする請求項19乃至23のいずれか一項に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【請求項25】
前記積層体を供給する工程において、前記積層体を巻き取った巻体を巻き戻して、帯状に延びる積層体を供給する
ことを特徴とする請求項19乃至24のいずれか一項に記載の蒸着マスク用シート状部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−52072(P2009−52072A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218578(P2007−218578)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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