蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置
【課題】供給量制御モードでのレール圧制御の実行時にレール圧を低下させる際に、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じないようにしつつ減圧応答性を向上させることが可能な蓄圧式燃料噴射装置、及びそのような制御を実行可能な蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を提供する。
【解決手段】前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行する。
【解決手段】前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関への燃料噴射制御を行うための蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する。特に、高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁とコモンレールから低圧側へ燃料を戻すことでコモンレールの圧力を調節する圧力制御弁とを備えた蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関への燃料噴射制御に用いられる装置として、コモンレール(蓄圧器)を備えた蓄圧式燃料噴射装置が広く知られている。この蓄圧式燃料噴射装置は、燃料タンク内の燃料を高圧ポンプに供給する低圧フィードポンプと、低圧フィードポンプにより供給された燃料を加圧して圧送する高圧ポンプと、高圧ポンプにより圧送される燃料を蓄積するコモンレールと、コモンレールから供給される燃料を内燃機関の気筒へ噴射供給する複数の燃料噴射弁と、電子制御部品の制御を実行する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とを備えている。
【0003】
このような蓄圧式燃料噴射装置において、コモンレールの圧力(以下、「レール圧」と称する。)は燃料噴射圧力に直接的に関連する要素であるために、内燃機関での燃焼性を良好なものとするためにはレール圧を精度よく制御することが重要である。レール圧制御は、高圧ポンプの吐出流量を調節することでレール圧を制御するモード(以下、この制御モードを「供給量制御モード」と称する。)や、コモンレールから低圧側に燃料を戻すことでレール圧を制御するモード(以下、この制御モードを「排出量制御モード」と称する。)、さらにはこれらの制御を併用するモード(以下、「供給排出同時制御モード」と称する。)のいずれかによって行われることが一般的となっている。
【0004】
高圧ポンプの吐出流量の制御は、高圧ポンプに設けられた流量制御弁を用いて行われる。また、コモンレールから低圧側へ燃料を戻す制御は、コモンレールに接続された圧力制御弁を用いて行われる。これらの流量制御弁及び圧力制御弁としては、供給する電流値に応じてピストンの位置が変化することにより燃料の通過面積が比例的に変化する構造を有する電磁式比例制御弁が用いられている。
【0005】
ここで、供給量制御モードでレール圧制御を行う場合において、流量制御弁は、コモンレールの目標圧力(以下、「目標レール圧」と称する。)と実際のレール圧(以下、「実レール圧」と称する。)との圧力偏差に基づいて閉ループでの制御が行われる。具体的には、目標レール圧と実レール圧との圧力偏差に基づいて得られる目標流量に応じて、流量制御弁の指示電流値が決定されるようになっている。すなわち、供給量制御モードは、必要な燃料を高圧ポンプからコモンレールに供給する制御モードである。そのため、効率が良いといった利点や、駆動トルクを抑えられるといった利点があり、内燃機関の運転中の多くの期間において供給量制御モードでのレール圧制御が実行される。
【0006】
この供給量制御モードでレール圧制御を行う期間中、圧力制御弁に供給する電流値は固定されているわけではない。例えば、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中において、実レール圧が目標レール圧よりも著しく高くなる異常状態を避けるために、圧力制御弁が目標レール圧に応じて開ループで制御される場合がある。具体的には、圧力制御弁によって保持可能な圧力(以下、「開弁圧力」と称する。)が目標レール圧よりも所定のオフセット量分大きくなるように、圧力制御弁の制御指示値が決定される場合がある。これにより、実レール圧が目標レール圧よりもオフセット量分以上大きくなるときには、圧力制御弁が開弁して、レール圧の異常上昇が防止されるようになる。
【0007】
ここで、圧力制御弁の開弁圧力の目標値(以下、「目標開弁圧力」と称する。)に対応する圧力制御弁の制御指示値は、ECUにあらかじめ記憶された基本特性マップを参照して求められるようになっている。この基本特性マップは、例えば、量産される圧力制御弁のうちの、電流−圧力特性が全体分布の中央値を示す圧力制御弁(以下、このような電流−圧力特性を有する圧力制御弁を「中央品」と称する場合がある。)を用いたときの、指示電流値とそのとき開弁圧力との関係をデータ化したものである。
【0008】
しかしながら、圧力制御弁の電気的特性を均一にすることの困難性や、ピストンに設けるスリットの位置のばらつき、スリット形状の違いに起因して、圧力制御弁の電流−圧力特性はばらつきを有している。また、圧力制御弁の電流−圧力特性は、経時劣化によっても変化する場合がある。そのため、実際に用いられる圧力制御弁の電流−圧力特性は、ECUに記憶される基本特性マップに必ずしも一致していない。
【0009】
そのため、圧力制御弁の電流−圧力特性のばらつきを考慮して、基本特性マップによって決定される指示電流値を修正するようにした蓄圧式燃料噴射装置が開示されている。具体的には、上記の排出量制御モードでのレール圧制御の実行時の場合ではあるが、レール圧が所定値を上回る状態となった場合に、実レール圧と、当該実レール圧における圧力制御弁に供給される電流値とから、基本特性マップによって決定される指示電流値を修正するようにした蓄圧式燃料噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−339830号公報 (全文、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時においては、排出量制御モードでのレール圧制御とは異なり、流量制御弁に供給する電流値を変更してから、これに対応して実レール圧が変動するまでに遅れが生じることが知られている。すなわち、圧力制御弁はコモンレール内の燃料を直接的に排出する一方、流量制御弁は高圧ポンプの加圧室の上流側で燃料の流量を調節することによってコモンレールへの燃料の圧送量を変えるものであるために、制御の応答性が低下しやすい傾向にある。そのために、アクセル操作量が急激にゼロにされた場合等、レール圧を急激に低下させる際には目標レール圧と実レール圧との圧力偏差が大きくなりやすい。
【0012】
上述したように、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時に、圧力制御弁の目標開弁圧力を目標レール圧に応じて変化させる場合があるとしても、この目標開弁圧力はあくまでもレール圧の異常上昇を防ぐことを目的とするものであって、減圧応答性を向上させるものではない。
【0013】
アクセル操作量が急激にゼロにされるなどしてレール圧を低下させようとする場合において減圧に遅れを生じると、その後の再加速時においても実レール圧が目標レール圧よりも高い状態のままとなって、燃焼音が大きくなったり、排気エミッションが悪化したりするおそれがある。また、アクセル操作量がゼロとなってレール圧が安定している状態においては、蓄圧式燃料噴射装置の各種診断制御が実施される場合があることから、減圧に遅れを生じることによって、診断頻度が減少したり診断精度が低下したりするおそれもある。
【0014】
このような問題に対して、レール圧を急激に低下させる場合において、圧力制御弁の開弁圧力を一旦小さくすることが考えられる。しかしながら、単に開弁圧力を小さくして圧力制御弁を開弁しやすい状態にするだけでは、実レール圧が低下しすぎるおそれがある。特に、ある電流値での開弁圧力が中央品の場合よりも低い圧力制御弁(以下、このような電流−圧力特性を有する圧力制御弁を「下限品」と称する場合がある。)が使用されている場合には、実レール圧が低下後の目標圧力よりもさらに小さくなるアンダーシュートを生じやすい。
【0015】
逆に、下限品の圧力制御弁によるアンダーシュートを防ぐために、圧力制御弁の開弁圧力を小さくする度合いを抑えた場合には、今度は、ある電流値での開弁圧力が中央品の場合よりも高い圧力制御弁(以下、このような電流−圧力特性を有する圧力制御弁を「上限品」と称する場合がある。)が使用されている場合に、レール圧を低下させるに十分な燃料を排出することができずに、減圧応答性が改善されないおそれがある。
【0016】
図15及び図16は、このような問題について詳細に説明するために示す図である。図15及び図16は、供給量制御モードでのレール圧制御実行時の減圧時における目標レール圧Ptgt、圧力制御弁の目標開弁圧力Pset及び実レール圧Pactの推移を示している。このうち、図15は、実レール圧Pactを速やかに低下させることを優先して、減圧時の目標開弁圧力PsetAが目標レール圧Ptgtよりも小さくなるようにした場合の各値の推移を示している。また、図16は、下限品の圧力制御弁であってもアンダーシュートを生じないように、減圧時の目標開弁圧力PsetBが図15の目標開弁圧力PsetAよりも大きくなるようにした場合の各値の推移を示している。
【0017】
これらの図15及び図16において、それぞれ実線で示された目標開弁圧力Pset0及び実レール圧Pact0は、目標開弁圧力Psetを、目標レール圧Ptgtにオフセット量分加算した値Pset0とした場合の各値の推移を示している。この場合には、上限品、中央品、下限品にかかわらず圧力制御弁は全閉状態で保持されて、供給量制御モード特有の応答遅れの影響により実レール圧Pact0と目標レール圧Ptgtとの圧力偏差が大きくなる。
【0018】
これに対して、図15に示すように、実レール圧Pactを低下させることを優先して、目標開弁圧力Psetを、目標レール圧Ptgtよりも小さい値PsetAに設定した場合には、実レール圧Pact1,Pact2,Pact3が実際の開弁圧力を上回ったときに圧力制御弁が開弁して、実レール圧Pact1,Pact2,Pact3が低下し始める。このとき、上限品(一点鎖線)及び中央品(破線)の圧力制御弁においては、供給量制御モード特有の応答遅れの影響もあって、実レール圧Pact1,Pact2が目標レール圧Ptgtを下回ることなく低下後の目標レール圧Ptgtまで速やかに低下する。しかしながら、下限品(二点鎖線)の圧力制御弁においては、実際の開弁圧力が目標開弁圧力PsetAよりも小さいために、必要以上の燃料が排出されて、実レール圧Pact3が低下後の目標レール圧Ptgtを下回るアンダーシュートを生じている。
【0019】
また、図16に示すように、下限品の圧力制御弁であってもアンダーシュートを生じないように、減圧時の目標開弁圧力Psetを目標レール圧Ptgtと同等の値PsetBに設定した場合には、中央品(破線)及び下限品(二点鎖線)の圧力制御弁においては、実レール圧Pact2,Pact3が目標レール圧Ptgtを下回ることなく低下後の目標レール圧Ptgtまで速やかに低下する。しかしながら、上限品(一点鎖線)の圧力制御弁においては、実際の開弁圧力が目標開弁圧力PsetBよりも大きいために、実レール圧Pact1を十分に低下させることができず、減圧応答性が改善されていない。
【0020】
このように、レール圧を急激に低下させる際に、圧力制御弁の開弁圧力を通常時よりも一律に小さくすると、圧力制御弁の電流−圧力特性のばらつきによって、アンダーシュートを生じたり、減圧応答性が改善されなかったりするという問題がある。
【0021】
本発明の発明者らは、このような問題にかんがみて、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時にレール圧を低下させる際に圧力制御弁の開弁圧力を通常の目標開弁圧力よりも小さくし、その後においても圧力偏差が小さくならない場合には圧力制御弁の開弁圧力をさらに小さくすることによりこのような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時にレール圧を低下させる際に、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じないようにしつつ減圧応答性を向上させることが可能な蓄圧式燃料噴射装置、及びそのような制御を実行可能な蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁の制御を行う制御装置と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0023】
すなわち、本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁の開弁圧力を一旦小さくする第1低下制御を実行し、その後においても圧力偏差が所定の解除閾値以上である場合には圧力制御弁の開弁圧力をさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。そのため、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなくレール圧を速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によってレール圧を速やかに低下させることができる。したがって、本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0024】
なお、本明細書において、圧力制御弁の開弁圧力を低下する制御を「開弁圧力低下制御」と称する。
【0025】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第1低下制御の実行を開始してから所定時間経過後においても、前記圧力偏差が前記解除閾値以上である場合に前記第2低下制御を実行することが好ましい。
【0026】
このように判定を行うことにより、レール圧を低下させる際に供給量制御モード中の応答遅れに起因して一時的に圧力偏差が大きくなる場合であっても、圧力制御弁の電流−圧力特性を正確に判断して第2低下制御の実行の可否を決定することができる。したがって、下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合において第2低下制御が実行されることを防ぎ、アンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0027】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記コモンレールの目標圧力が、低下後の目標圧力で保持された後に、前記圧力偏差が前記解除閾値以上であるか否かを判定することが好ましい。
【0028】
このように判定を行うことにより、供給量制御モード中の応答遅れを考慮して、上限品に近い特性を有する圧力制御弁を見極めることができる。したがって、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合においてのみ第2低下制御が実行されるようになり、下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合に第2低下制御が実行されることによるアンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0029】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御を、前記コモンレールの圧力を低下させる際に前記コモンレールの目標圧力と前記実際の圧力との圧力偏差が所定の開始閾値以上になったときに開始することが好ましい。
【0030】
このように第1低下制御を開始することにより、圧力偏差が大きくなった場合に第1低下制御が実行されるようになり、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0031】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御を、前記コモンレールの目標圧力の低下速度が所定の開始閾値以上になったときに開始することが好ましい。
【0032】
このように第1低下制御を開始することによって、目標レール圧が急激に低下する場合に第1低下制御が実行されるようになるとともに、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0033】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御を、前記内燃機関の燃料噴射量がゼロになったときに開始することが好ましい。
【0034】
このように第1低下制御を開始することによっても、目標レール圧が急激に低下する場合に第1低下制御が実行されるようになるとともに、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0035】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第1低下制御又は前記第2低下制御の実行時に、前記圧力偏差が前記解除閾値未満になったときには、前記第1低下制御又は前記第2低下制御を終了することが好ましい。
【0036】
このように第1低下制御及び第2低下制御を終了することにより、実レール圧が目標レール圧に近づいたときに圧力制御弁の開弁圧力が通常の設定に復帰するようになるため、第1低下制御又は第2低下制御が継続されることによるアンダーシュートの発生を防ぐことができる。
【0037】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、前記コモンレールの圧力を低下させる場合に、前記第1低下制御を実行することなく前記第2低下制御を実行することが好ましい。
【0038】
このような制御を行うことにより、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合であっても一段階目の開弁圧力低下制御によって速やかに実レール圧を低下させることができるようになり、減圧応答性を向上することが可能となる。
【0039】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力となるように前記制御指示値を決定するとともに、前記第2低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力よりも小さい値となるように前記制御指示値を決定することが好ましい。
【0040】
このように第1低下制御及び第2低下制御を実行することにより、下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合にあってはアンダーシュートを生じることなく、また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合にあっては確実な減圧を可能にして、減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第2低下制御実行時の前記制御指示値を、前記目標開弁圧力に応じて決定される制御指示値から所定量減算した値とすることが好ましい。
【0042】
このように第2低下制御を実行することにより、圧力制御弁の開弁圧力が著しく低下することを防ぐことができるため、第2低下制御を実行することによってアンダーシュートが生じるおそれを低減することが可能となる。
【0043】
また、本発明の別の態様は、複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置に備えられ、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁のうちの少なくとも一方を制御することで前記コモンレールの圧力制御を実行する蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置である。
【0044】
すなわち、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁の開弁圧力を一旦小さくする第1低下制御を実行し、その後においても圧力偏差が所定の解除閾値以上である場合には圧力制御弁の開弁圧力をさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。したがって、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなくレール圧を速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によってレール圧を速やかに低下させることができる。このように、本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置の全体的構成を概略的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置に備えられた圧力制御弁の電流−圧力特性を説明するために示す図である。
【図3】ECUの構成のうちのレール圧制御に関連する部分を機能的なブロック図である。
【図4】中央品の圧力制御弁が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示す図である。
【図5】下限品の圧力制御弁が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示す図である。
【図6】上限品の圧力制御弁が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示す図である。
【図7】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図8】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定について説明するために示すフローチャート図である。
【図9】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち第1低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図10】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち第2低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図11】第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図12】変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定について説明するために示すフローチャート図である。
【図13】変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定について説明するために示すフローチャート図である。
【図14】変形例3に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される指示電流値Ipcv_currの演算方法について説明するためのブロック図である。
【図15】下限品の圧力制御弁においてアンダーシュートを生じる様子を示す図である。
【図16】上限品の圧力制御弁において減圧応答性が改善されない様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する実施の形態について、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、それぞれの図中において同じ符号が付されているものは、特に説明がない限り同一の構成要素を示しており、適宜説明が省略されている。
【0047】
[第1の実施の形態]
1.蓄圧式燃料噴射装置の全体的構成
図1は、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置10の全体的構成を概略的に示す図である。この蓄圧式燃料噴射装置10は、燃料タンク1内の燃料を高圧ポンプ13へ供給する低圧フィードポンプ11と、低圧フィードポンプ11により供給された燃料を加圧して圧送する高圧ポンプ13と、高圧ポンプ13により圧送された燃料を蓄積するコモンレール15と、それぞれ図示しない内燃機関の気筒に対応して設けられてコモンレール15から供給された燃料を噴射する複数の燃料噴射弁17と、レール圧制御や噴射制御等を実行するECU50とを備えている。
【0048】
このうち高圧ポンプ13は、内燃機関の駆動力によって駆動されるものであって、カム14が固定されたカムシャフトは内燃機関のクランクシャフトに連結されている。この高圧ポンプ13は、プランジャ29の下降時に、燃料吸入弁27を介して低圧の燃料が加圧室13aに供給される一方、カム14の回転によってプランジャ29が押し上げられたときに、加圧室13a内の燃料が加圧され、燃料吐出弁28を介して高圧の燃料がコモンレール15へと圧送されるように構成されている。
【0049】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた高圧ポンプ13は、二組のプランジャ29及び加圧室13aを備えて構成されているが、プランジャ29及び加圧室13aの組の数は特に限定されない。
【0050】
また、高圧ポンプ13には、流量制御弁19が備えられている。流量制御弁19は、低圧フィードポンプ11と高圧ポンプ13の加圧室13aとを接続する燃料通路31の途中に配置されており、加圧室13aに供給する低圧の燃料の流量を調節するために備えられている。この流量制御弁19は、ECU50によって通電制御が行われ、電流値に応じて燃料通過面積が比例的に変化する電磁比例制御弁が用いられている。すなわち、流量制御弁19に供給する電流値を制御することにより、加圧室13aに供給する燃料の流量が調節されるようになっている。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、流量制御弁19は、いわゆるノーマルオープン型の構造を有している。
【0051】
また、流量制御弁19よりもさらに上流側の燃料通路31にはリターン通路37が接続されており、このリターン通路37にはオーバーフローバルブ21が備えられている。このオーバーフローバルブ21によって、流量制御弁19よりも上流側の燃料通路31から余剰の燃料が排出され、燃料タンク1へと戻されるようになっている。
【0052】
コモンレール15には圧力センサ25及び圧力制御弁23が備えられている。このうち、圧力制御弁23は、コモンレール15内の高圧の燃料を低圧側に排出するためのものであり、排出される燃料はリターン通路38を介して燃料タンク1へと戻されるようになっている。この圧力制御弁23は、ECU50によって通電制御が行われ、電流値に応じて開弁圧力が比例的に変化する電磁比例制御弁が用いられている。すなわち、圧力制御弁23に供給する電流値を制御することにより、保持可能なレール圧の最大値が調節されるようになっている。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、圧力制御弁23は、いわゆるノーマルオープン型の構造を有している。
【0053】
燃料噴射弁17は、電磁ソレノイド又はピエゾアクチュエータを備えて構成された公知の燃料噴射弁を用いることができる。この燃料噴射弁17は、ECU50の通電制御により、開弁時期や開弁時間等が制御されるようになっている。この燃料噴射弁17において、噴射制御に利用された背圧燃料はリターン通路39を介して燃料タンク1へと戻される。
【0054】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10においては、流量制御弁19又は圧力制御弁23を用いて、あるいはこれらの二つの弁を併用して、圧力センサ25によって検出される実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtとなるようにレール圧制御が行われる。流量制御弁19を閉ループ制御する供給量制御モードでレール圧制御を行うか、圧力制御弁23を閉ループ制御する排出量制御モードでレール圧制御を行うか、あるいはこれらの二つの弁をともに閉ループ制御する供給排出同時制御モードでレール圧制御を行うかは、内燃機関の運転状態や燃料温度等に応じてあらかじめ設定されている。
【0055】
2.圧力制御弁の電流−圧力特性
図2は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた圧力制御弁23の電流−圧力特性を説明するために示す図であり、上限品、中央品、下限品それぞれにおける電流値Ipcvと開弁圧力Ppcvとの関係を示している。電流−圧力特性Lhighが上限品の電流−圧力特性を示し、電流−圧力特性L0が中央品の電流−圧力特性を示し、電流−圧力特性Llowが下限品の電流−圧力特性を示している。ノーマルオープン型の圧力制御弁23が用いられているため、電流値Ipcvが大きくなるほど開弁圧力Ppcvが大きくなる。
【0056】
図2に示すように、上限品は、同じ電流値Ipcvであれば、開弁圧力Ppcvが中央品の開弁圧力Ppcvよりも高くなるという特性を有している。逆に、下限品は、同じ電流値Ipcvであれば、開弁圧力Ppcvが中央品の開弁圧力Ppcvよりも低くなるという特性を有している。
【0057】
図2に示す三つの電流−圧力特性Lhigh,L0,Llowは代表的な例にすぎず、量産される圧力制御弁は、個体差に応じた様々な電流−圧力特性を有している。また、図2においては、上限品及び下限品の電流−圧力特性Lhigh,Llowが、中央品の電流−圧力特性L0に対して同じ傾きを示しながらオフセットした状態となっているが、電流−圧力特性のばらつきはこのような例に限られるものではない。すなわち、上限品の電流−圧力特性ラインの傾きが中央品の電流−圧力特性ラインの傾きよりも大きくなるとともに、下限品の電流−圧力特性ラインの傾きが中央品の電流−圧力特性ラインの傾きよりも小さくなる場合もある。
【0058】
量産される圧力制御弁においては中央品の占める割合が多いことから、通常、中央品の電流−圧力特性に基づいて基本特性マップが作製され、ECU50に記憶される。量産される圧力制御弁には上記のような電流−圧力特性のばらつきがあるにもかかわらず、ECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時に、基本特性マップを参照して目標開弁圧力Psetに応じた指示電流値Ipcv_currを決定するようになっている。そのために、目標開弁圧力Psetと実際の開弁圧力Ppcvとが一致しない状態が生じることになる。
【0059】
3.ECU(電子制御装置)
図3は、ECU50の構成のうちのレール圧制御に関連する部分を機能的なブロックで表したものである。このECU50は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、目標レール圧演算部51と、制御モード選択部53と、流量制御弁制御部55と、圧力制御弁制御部57とを主たる要素として備えている。具体的に、これらの各部は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0060】
また、ECU50には、RAMやROM等の記憶素子からなる図示しない記憶部、及び、流量制御弁19又は圧力制御弁23への通電を行うための図示しない駆動回路等が備えられている。さらに、ECU50には、圧力センサ25のセンサ信号が入力される他、機関回転数Nやアクセル開度Acc、燃料温度Tfなどの各種の情報が入力されるようになっている。
【0061】
記憶部には、制御プログラム及び種々の演算マップがあらかじめ記憶されるとともに、上記した各部による演算結果等が書き込まれるようになっている。特に、記憶部には、供給量制御モードでのレール圧制御実行時の圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currの算出に用いられる基本特性マップM1があらかじめ記憶されている。この基本特性マップM1は、上述したように、中央品の圧力制御弁の電流−圧力特性をデータ化したものである。
【0062】
目標レール圧演算部51は、機関回転数Nと目標燃料噴射量Qとに基づき、図示しないレール圧マップを参照して目標レール圧Ptgtを算出する。目標燃料噴射量Qは、機関回転数N及びアクセル開度Acc等の内燃機関の運転状態に関連する情報に基づき、図示しない噴射量マップを参照して求めることができる。レール圧マップや噴射量マップは従来公知のものであるために、詳細な説明は省略する。
【0063】
制御モード選択部53は、例えば、図示しない制御モードマップに基づいて、供給量制御モード、排出量制御モード、供給排出同時制御モードの中からレール圧制御を実行するための制御モードを選択する。制御モードマップは、機関回転数N及びアクセル操作量Acc等に例示される内燃機関の運転状態や、燃料温度Tf等に応じて、内燃機関の運転領域を制御モードごとに区分したものである。ただし、制御モードマップは、供給排出同時制御モードの領域を有しないものであってもよい。
【0064】
流量制御弁制御部55は、流量制御弁19の指示電流値Ifmu_currを演算によって求めるとともに、求められた指示電流値Ifmu_currにしたがって流量制御弁19の駆動回路に対して通電の指示を出力する。レール圧制御を供給量制御モード又は供給排出同時制御モードで実行する場合、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を閉ループ制御する一方、レール圧制御を排出量制御モードで実行する場合、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を開ループ制御する。指示電流値Ifmu_currの演算方法は、制御モードによって異なっている。
【0065】
具体的に、流量制御弁制御部55は、流量制御弁19を閉ループ制御する場合、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて目標吐出流量Fpump_tgtを算出するとともに、図示しない制御マップを参照して、流量制御弁19の指示電流値Ifmu_currを求める。
【0066】
また、流量制御弁制御部55は、流量制御弁19を開ループ制御する場合、機関回転数Nに応じて指示電流値Ifmu_currを決定する。あるいは、流量制御弁19を開ループ制御する場合、流量制御弁19が全開で保持されるように指示電流値Ifmu_currを決定するようにしてもよい。すなわち、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10ではノーマルオープン型の流量制御弁19を用いているために、流量制御弁19を全開で保持する場合、指示電流値Ifmu_currはゼロになる。
【0067】
圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを演算によって求めるとともに、求められた指示電流値Ipcv_currにしたがって圧力制御弁23の駆動回路に対して通電の指示を出力する。レール圧制御を排出量制御モード又は供給排出同時制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を閉ループ制御する一方、レール圧制御を供給量制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を開ループ制御する。指示電流値Ipcv_currの演算方法は、制御モードによって異なっている。
【0068】
具体的に、圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23を閉ループ制御する場合、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づき、図示しない制御マップを参照して、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを求める。
【0069】
また、圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23を開ループ制御する場合、基本的に、目標レール圧Ptgtに応じて目標開弁圧力Psetを決定し、基本特性マップM1を参照して、目標開弁圧力Psetに応じた指示電流値Ipcv_currを求める。このときの目標開弁圧力Psetは、基本的に、目標レール圧Ptgtに所定のオフセット量を加算した基本目標開弁圧力Pset0が用いられる。そのため、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtよりも著しく高くなる場合には圧力制御弁23が開弁し、異常上昇を生じないようになっている。
【0070】
制御モードごとに説明するならば、レール圧制御を供給量制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を開ループ制御する一方、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を閉ループ制御する。供給量制御モードにおいては、基本的に圧力制御弁23は全閉状態とされてコモンレール15から燃料が排出されない一方、高圧ポンプ15の吐出流量Fpumpが目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて調節され、レール圧が調節される。ただし、目標レール圧Ptgtが急激に低下する場合等においては、圧力制御弁23を開弁しやすくして実レール圧Pactを速やかに低下させる開弁圧力低下制御が実行されるように構成されている。
【0071】
また、レール圧制御を排出量制御モードで実行する場合、流量制御弁19が開ループ制御される一方、圧力制御弁23が閉ループ制御される。排出量制御モードにおいては、高圧ポンプ15の吐出流量Fpumpが、目標レール圧Ptgtを達成するために必要な流量以上となる状態で定量化される一方、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいてコモンレール15からの燃料排出流量Fpcvが調節されて、レール圧が調節される。
【0072】
また、レール圧制御を供給排出同時制御モードで実行する場合、流量制御弁19及び圧力制御弁23がともに閉ループ制御される。供給排出同時制御モードにおいては、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて、高圧ポンプ15の吐出流量Fpump及びコモンレール15からの燃料排出流量Fpcvがともに調節されて、レール圧が調節される。
【0073】
4.開弁圧力低下制御
ECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中に開弁圧力低下制御を実行可能に構成されている。開弁圧力低下制御は、レール圧を急激に低下させる場合に、減圧応答性を高めるために実行される制御である。
【0074】
具体的には、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時において、ECU50は、基本的に圧力制御弁23を全閉状態で保持するが、レール圧を急激に低下させる必要があるときには、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくすることによって、コモンレール15内の燃料の一部を排出し、レール圧を速やかに低下させるようになっている。
【0075】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが所定の開始閾値Thre_on以上になったときに、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(pset0)よりも小さくする第1低下制御を開始する。また、その後においても当該圧力偏差ΔPが所定の解除閾値Thre_off以上となっている場合には、ECU50は、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを、第1低下制御実行時の指示電流値よりもさらに小さくする第2低下制御を開始する。
【0076】
以下、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50によって実行される開弁圧力低下制御について、図4〜図6に示すタイムチャート図と、図7〜図10に示すフローチャート図とに基づいて説明する。
【0077】
(1)タイムチャート
図4〜図6は、ECU50によって実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すタイムチャート図である。
図4は、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。図5は、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。図6は、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。
【0078】
まず、図4に基づいて、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
上述の通り、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中において、圧力制御弁23の目標開弁圧力Psetは、基本的に目標レール圧Ptgtに所定のオフセット量を加算した基本目標開弁圧力Pset0に設定される。また、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に基づき、基本特性マップM1を参照して求められる指示電流値Ipcv(Pset0)に設定される。
【0079】
t1の時点で、アクセル操作量Accが急激にゼロに戻されるなどして目標レール圧Ptgtが急激に低下し始めると、目標レール圧Ptgtの変化に伴って基本目標開弁圧力Pset0及び指示電流値Ipcv_currも低下し始める。ただし、供給量制御モード特有の応答遅れの影響により、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが徐々に拡大する(t1〜t2の期間)。
【0080】
その後、t2の時点において、圧力偏差ΔPが所定の開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントが開始される。
【0081】
図4の例では、指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されるようになっている。所定量αは、基本目標開弁圧力Pset0と目標レール圧Ptgtとの差分であるオフセット量がキャンセルされる値となっている。すなわち、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、第1低下制御実行中の圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、目標レール圧Ptgtに相当する。そのため、t2の時点以降、第1低下制御が実行されることにより、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁する。その結果、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
【0082】
その後、タイマ値が待機時間T0に到達する前のt3の時点において、圧力偏差ΔPが所定の解除閾値Thre_off未満になると、第1低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。この場合、タイマ値が待機時間T0に到達する前に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっていることから、第2低下制御は実行されない。
【0083】
以上のように、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、ECU50が第1低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
【0084】
次に、図5に基づいて、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達するt2の時点までは、実レール圧Pact及び指示電流値Ipcv_currは、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合と同じように推移する。ただし、下限品の圧力制御弁23であるため、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、基本目標開弁圧力Pset0よりも小さい値となっている。
【0085】
t2の時点において、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントを開始する。このときの指示電流値Ipcv_currは、図4の場合と同様に、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されている。その結果、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁し、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
【0086】
その後、タイマ値が待機時間T0に到達する前のt4の時点において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になると、第1低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。このとき、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが小さくなることから、実レール圧Pactの低下速度が、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて速くなる。したがって、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になる時期が、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて速くなる。この場合においても、タイマ値が待機時間T0に到達する前に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっていることから、第2低下制御は実行されない。
【0087】
以上のように、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合においても、ECU50が第1低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
【0088】
次に、図6に基づいて、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達するt2の時点までは、実レール圧Pact及び指示電流値Ipcv_currは、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合と同じように推移する。ただし、上限品の圧力制御弁23であるため、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、基本目標開弁圧力Pset0よりも大きい値となっている。
【0089】
t2の時点において、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントが開始される。このときの指示電流値Ipcv_currは、図4の場合と同様に、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されている。その結果、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁し、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
【0090】
ただし、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合には、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが基本目標開弁圧力Pset0よりも大きいことから、タイマ値が待機時間T0に到達するt5の時点よりも前に、実レール圧Pactが圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvと同等の値にまで低下して、圧力制御弁23が閉じられる。そのために、t5の時点においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_offよりも大きくなっている。
【0091】
第1低下制御の実行開始から待機時間T0を経過しても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上となっている場合には、第2低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、第1低下制御時の指示電流値よりもさらに小さくされる。
【0092】
図6の例では、指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量β小さい値に設定されるようになっている。所定量βは、第1低下制御実行時の所定量αよりも大きい値であるため、第2低下制御実行時の指示電流値Ipcv_currは第1低下制御時の指示電流値よりも小さくなる。所定量βは、例えば所定量αの1.3倍〜1.8倍とすることができるが、この例に限定されるものではない。その結果、t5の時点以降、第2低下制御が実行されることにより、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Ppcvを下回り、圧力制御弁23が開弁するため、実レール圧Pactが再び低下し始める。
【0093】
その後、t6の時点において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になると、第2低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。
【0094】
以上のように、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、第1低下制御のみでは実レール圧Pactを速やかに低下させることができない一方、ECU50がさらに第2低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
【0095】
開始閾値Thre_on及び解除閾値Thre_offの値は、蓄圧式燃料噴射装置10の特性や圧力偏差ΔPの許容範囲等を考慮して最適な値に設定することができる。また、待機時間T0は、第1低下制御による減圧効果が発現するような時間を考慮して最適な値に設定することができるが、目標レール圧Ptgtが低下後の目標レール圧で保持される時期に到達するように待機時間T0を設定することが好ましい。このように待機時間T0を設定することにより、供給量制御モード特有の応答遅れを考慮して圧力制御弁23の電流−圧力特性を見極めることができる。
【0096】
(2)開弁圧力低下制御の具体例フロー
図7〜図10は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。以下に説明するように、開弁圧力低下制御は、供給量制御モードにおいて所定の条件が成立したときに割り込みにより実行されるようになっている。
【0097】
図7のフローチャート図において、ステップS1において、ECU50は、レール圧の制御モードが供給量制御モードであるか否かを判別する。供給量制御モードではなくNoと判定した場合には、開弁圧力低下制御を実行するモードではないためにそのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。
【0098】
供給量制御モードでありYesと判定した場合には、ステップS2に進み、ECU50は、開弁圧力低下制御の実行条件が成立しているか否かを判別する。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図8に示すフローチャート図に沿って、開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定を行う。すなわち、ECU50は、ステップS21で目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込んだ後、ステップS22で実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上であるか否かを判別することにより、開弁圧力低下制御の実行条件の成立を判定する。
【0099】
そして、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上である場合には速やかに減圧させる必要があるために、ECU50はYesと判定してステップS23に進み、条件成立のフラグをオンにする。一方、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_off未満である場合には、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに追従しているために、ECU50はNoと判定してステップS24に進み、条件成立のフラグをオフにする。
【0100】
図7に戻り、ステップS2でNoと判定した場合には、現段階では開弁圧力低下制御を実行する必要がないためにそのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。一方、ステップS2でYesと判定した場合には、ECU50は、ステップS3に進んで第1低下制御を開始するとともに、ステップS4においてタイマカウントを開始する。
【0101】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図9に示すフローチャート図に沿って、第1低下制御を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS31において目標レール圧Ptgtを読み込んだ後、ステップS32において、目標レール圧Ptgtに基づき、圧力制御弁23の基本目標開弁圧力Pset0を求める。次いで、ECU50は、ステップS33において、基本特性マップを参照して、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)を求めた後、ステップS34において、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)から所定量αを減算して指示電流値Ipcv_currを求める。
【0102】
次いで、ECU50は、ステップS35において、ステップS34で求められた指示電流値Ipcv_currに従って圧力制御弁23の駆動制御を実行する。これにより、圧力制御弁23の開弁圧力Pactが小さくなり、コモンレール15から燃料が排出されて実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づき始める。
【0103】
図7に戻り、第1低下制御が実行されている間、ECU50は、ステップS5において、目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込むとともに、ステップS6において圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上であるか否かを判別する。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている場合には、ECU50はNoと判定してステップS11に進む。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている状態で第1低下制御を継続すると、アンダーシュートを生じるおそれがあることから、ECU50はステップS11において開弁圧力低下制御を終了してスタートに戻る。
【0104】
一方、ステップS6において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には、ECU50はYesと判定してステップS7に進み、タイマ値が待機時間T0を経過したか否かを判別する。タイマ値が待機時間T0に到達していなければ、ECU50は、ステップS5に戻って第1低下制御を継続する一方、タイマ値が待機時間T0に到達している場合にはステップS8に進んで第2低下制御を開始する。
【0105】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図10に示すフローチャート図に沿って、第2低下制御を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS41において目標レール圧Ptgtを読み込んだ後、ステップS42において、目標レール圧Ptgtに基づき、圧力制御弁23の基本目標開弁圧力Pset0を求める。次いで、ECU50は、ステップS43において、基本特性マップを参照して、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)を求めた後、ステップS44において、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)から所定量βを減算して指示電流値Ipcv_currを求める。上述のとおり、所定量βは第1低下制御実行時の所定量αよりも大きな値となっている。
【0106】
次いで、ECU50は、ステップS45において、ステップS44で求められた指示電流値Ipcv_currに従って圧力制御弁23の駆動制御を実行する。これにより、圧力制御弁23の開弁圧力Pactが第1低下制御実行時よりもさらに小さくなり、コモンレール15から燃料が排出されて実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づき始める。
【0107】
図7に戻り、第2低下制御が実行されている間、ECU50は、ステップS9において、目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込むとともに、ステップS10において圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上であるか否かを判別する。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には、ECU50はYesと判定してステップS9に戻り、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になるまで第2低下制御を継続する。
【0108】
一方、ステップS10において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている場合には、ECU50はNoと判定してステップS11に進む。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている状態で第2低下制御を継続すると、アンダーシュートを生じるおそれがあることから、ECU50はステップS11において開弁圧力低下制御を終了してスタートに戻る。
【0109】
以上説明したように、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvを一旦小さくする第1低下制御を実行するとともに、その後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvをさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。そのため、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなく実レール圧Pactを速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によって実レール圧Pactを速やかに低下させることができる。このように、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、圧力制御弁23の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0110】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御の実行開始後、所定の待機時間T0を経過した後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合にのみ第2低下制御を実行開始するように構成されているため、実レール圧Pactを低下させる際に供給量制御モード特有の応答遅れに起因して一時的に圧力偏差ΔPが大きくなる場合であっても、圧力制御弁23の電流−圧力特性を正確に判断して第2低下制御の実行の可否を決定することができる。したがって、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合において第2低下制御が実行されることを防ぎ、アンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0111】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上になったときに第1低下制御を実行開始するため、開弁圧力低下制御の実行が必要な場合にのみ第1低下制御が実行されるようになり、第1低下制御の実行時に、実レール圧Pactが低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0112】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御又は第2低下制御の実行中に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になったときに開弁圧力低下制御が終了するため、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づいたときには圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが通常の設定に復帰するようになり、開弁圧力低下制御が継続されることによるアンダーシュートの発生を防ぐことができる。
【0113】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御実行中においては、指示電流値Ipcv_currが目標レール圧Ptgtと基本目標開弁圧力Pset0との差分であるオフセット量をキャンセルするようにされるとともに、第2低下制御実行中においては、指示電流値Ipcv_currがさらに小さい値にされるため、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合にあってはアンダーシュートを生じることなく、また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合にあっては確実な減圧を可能にして、減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0114】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御の実行開始後、目標レール圧Ptgtが低下後の目標レール圧で保持される時期に到達するような待機時間T0の経過後に第2低下制御を実行するか否かを判定するため、供給量制御モード中の応答遅れを考慮して、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23を見極めることができる。したがって、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合においてのみ第2低下制御が実行されるようになり、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合に第2低下制御が実行されることによるアンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0115】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置は、基本的に第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置と同様の構成を有しているが、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置は、第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、第1低下制御を実行することなく一段階目から第2低下制御を実行するように構成されている点で、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置とは異なる。
【0116】
以下、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御について、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御と異なる点を中心に説明する。
【0117】
図11は、本実施形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUによって実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
図11に示すステップS1〜ステップS13のうち、ステップS1〜ステップS11は、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置の場合と同様に行うことができる。
【0118】
一方、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置においては、ECUは、ステップS7においてタイマ値が待機時間T0を経過したと判定したときに、ステップS13においてカウンタAの値を進めた上でステップS8に進み、第2低下制御の実行を開始するようになっている。カウンタAは、第2低下制御の実行回数をカウントするためのものであり、蓄圧式燃料噴射装置が製品として使用されはじめたときから計測が開始される。
【0119】
ECUは、ステップS2において、開弁圧力低下制御の実行条件が成立していると判定したときには、ステップS12において、カウンタAの値が所定の基準回数Na0未満であるか否かを判定する。カウンタAの値が基準回数Na0未満であればYesと判定し、ECU50はそのままステップS3に進んで第1低下制御を開始する。一方、カウンタAの値が基準回数Na0以上となっていればNoと判定し、ECU50はステップS8に進んで第2低下制御を開始する。
【0120】
すなわち、第2低下制御の実行回数が所定回数に到達したときには、用いられている圧力制御弁23が上限品に近い電流−圧力特性を有していると判断することができるため、この場合には、第1低下制御を実行しないで、一段階目から第2低下制御が実行されるようになっている。
【0121】
基準回数Na0は、開弁圧力低下制御の信頼性や、許容範囲を考慮して、最適な値に設定することができる。
【0122】
第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUによれば、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvを一旦小さくする第1低下制御を実行するとともに、その後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvをさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されているため、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUの場合と同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUは、第2低下制御の実行回数が所定の基準回数N0以上となった後においては、第1低下制御を実行することなく一段階目から第2低下制御を実行するように構成されているために、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合であっても、一段階目の開弁圧力低下制御によって速やかに実レール圧Pactを低下させることができるようになり、減圧応答性を向上することが可能となる。
【0124】
[他の実施の形態]
以上説明した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUは、本発明の一態様を示すものであってこの発明を限定するものではなく、それぞれの実施の形態は本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。本発明の蓄圧式燃料噴射装置及びECUに係る実施の形態は、例えば、以下のように変更することができる。
【0125】
(1)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいて説明した各構成要素や、設定値、設定条件はあくまでも一例であって、任意に変更することが可能である。
【0126】
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、ノーマルオープン型の圧力制御弁を用いているが、いわゆるノーマルクローズ型の圧力制御弁を用いた場合であっても、本発明を適用することが可能である。この場合、圧力制御弁の開弁圧力を小さくするには、指示電流値を大きくするように制御が行われる。
【0127】
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、基本特性マップを中央品の圧力制御弁の電流−圧力特性に基づいて作製しているが、中央品に限定されるものではなく、特定の基準品であればよい。
【0128】
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、レール圧の制御モードとして、供給量制御モード、排出量制御モード及び供給排出制御モードのうちのいずれかを選択する例、あるいは、供給量制御モード及び排出量制御モードのうちのいずれかを選択する例を述べているが、少なくとも供給量制御モードが実行されるように構成されているものであれば、本発明を適用することが可能である。
【0129】
(2)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいては、開弁圧力低下制御の実行条件として、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上になっていることを判定しているが、実行条件はこのような例に限定されない。図12は、変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される実行条件成立判定のフローチャート図を示している。また、図13は、変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される実行条件成立判定のフローチャート図を示している。
【0130】
図12に示すように、変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUは、ステップS51で目標レール圧Ptgt(n)を読み込むとともに、ステップS52において前回読み込んだ目標レール圧Ptgt(n-1)から今回読み込んだ目標レール圧Ptgt(n)を減算した変化量が所定の開始閾値ThreV_on以上であるか否かを判定する。変化量が開始閾値ThreV_on未満でありNoと判定した場合には、目標レール圧Ptgtの低下速度が緩やかであり、開弁圧力低下制御を実行する必要がないために、ECUは、ステップS56に進んで、条件成立フラグをオフにする。
【0131】
一方、変化量が開始閾値ThreV_on以上でありYesと判定した場合には、ECUは、ステップS53に進んで、カウンタBの値を進めた後、ステップS54において、カウンタBの値が所定の閾値Nb0に到達しているか否かを判別する。カウンタBの値が閾値Nb0未満であればNoと判定してステップS51に戻る一方、カウンタBの値が閾値Nb0に到達している場合には、目標レール圧Ptgtの低下速度が速く、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる可能性が極めて高いために、ECUは、ステップS55に進んで、条件成立フラグをオンにする。
【0132】
また、図13に示すように、変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUは、ステップS61で目標燃料噴射量Q(n)を読み込むとともに、ステップS62において、目標燃料噴射量Q(n)=0、かつ、前回読み込んだ目標燃料噴射量Q(n-1)から今回読み込んだ目標燃料噴射量Q(n)を減算した変化量が所定の開始閾値ThreQ_on以上となっているか否かを判定する。これらの条件を満たしていない場合には、目標レール圧Ptgtが急激に低下するおそれが低く、開弁圧力低下制御を実行する必要がないために、ECUは、ステップS64に進んで、条件成立フラグをオフにする。
【0133】
一方、これらの条件を満たしている場合には、目標レール圧Ptgtが急激に低下するおそれが高く、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる可能性が極めて高いために、ECUは、ステップS63に進んで、条件成立フラグをオンにする。
【0134】
変形例1及び2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御によれば、推定により実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる状況を選んで、開弁圧力低下制御を開始することが可能になる。また、変形例1及び2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御によれば、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することが可能になる。変形例1及び2に例示した方法以外にも、例えば、所定の単位時間当たりの目標レール圧Ptgtの低下量が開始閾値以上となったときや、アクセル操作量Accが急激にゼロに戻されたときに開弁圧力低下制御を開始するようにしてもよい。
【0135】
(3)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいては、開弁圧力低下制御実行時に、基本目標開弁圧力Pset0に基づき、基本特性マップM1を参照して得られる指示電流値Ipcv(Pset0)を基準として、第1低下制御時及び第2低下制御時の指示電流値Ipcv_currをそれぞれ算出するようにしているが、開弁圧力低下制御実行時の指示電流値Ipcv_currの演算方法はそのような例に限定されない。
【0136】
図14は、変形例3に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される指示電流値Ipcv_currの演算方法について説明するためのブロック図を示している。変形例3にかかる蓄圧式燃料噴射装置においては、開弁圧力低下制御を実行しない期間と、第1低下制御実行中と、第2低下制御実行中とによってそれぞれ異なるオフセット分が目標レール圧Ptgtに加算されて、圧力制御弁の目標開弁圧力Psetが設定される。指示電流値Ipcv_currは、設定された目標開弁圧力Psetに基づき、基本特性マップM1を参照して決定される。このように指示電流値Ipcv_currを決定することによっても、第1低下制御実行時の圧力制御弁の開弁圧力Ppcvを通常制御時よりも小さくすることができるとともに、第2低下制御実行時の開弁圧力Ppcvを第1低下制御実行時の開弁圧力Ppcvよりも小さくすることができる。
【符号の説明】
【0137】
1:燃料タンク、10:蓄圧式燃料噴射装置、11:低圧フィードポンプ、13:高圧ポンプ、13a:加圧室、14:カム、15:コモンレール、17:燃料噴射弁、19:流量制御弁、21:オーバーフローバルブ、23:圧力制御弁、25:圧力センサ、27:燃料吸入弁、28:燃料吐出弁、29:プランジャ、31:燃料通路、37,38,39:リターン通路、50:ECU(電子制御装置)、51:目標レール圧演算部、53:制御モード選択部、55:流量制御弁制御部、57:圧力制御弁制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関への燃料噴射制御を行うための蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する。特に、高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁とコモンレールから低圧側へ燃料を戻すことでコモンレールの圧力を調節する圧力制御弁とを備えた蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関への燃料噴射制御に用いられる装置として、コモンレール(蓄圧器)を備えた蓄圧式燃料噴射装置が広く知られている。この蓄圧式燃料噴射装置は、燃料タンク内の燃料を高圧ポンプに供給する低圧フィードポンプと、低圧フィードポンプにより供給された燃料を加圧して圧送する高圧ポンプと、高圧ポンプにより圧送される燃料を蓄積するコモンレールと、コモンレールから供給される燃料を内燃機関の気筒へ噴射供給する複数の燃料噴射弁と、電子制御部品の制御を実行する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とを備えている。
【0003】
このような蓄圧式燃料噴射装置において、コモンレールの圧力(以下、「レール圧」と称する。)は燃料噴射圧力に直接的に関連する要素であるために、内燃機関での燃焼性を良好なものとするためにはレール圧を精度よく制御することが重要である。レール圧制御は、高圧ポンプの吐出流量を調節することでレール圧を制御するモード(以下、この制御モードを「供給量制御モード」と称する。)や、コモンレールから低圧側に燃料を戻すことでレール圧を制御するモード(以下、この制御モードを「排出量制御モード」と称する。)、さらにはこれらの制御を併用するモード(以下、「供給排出同時制御モード」と称する。)のいずれかによって行われることが一般的となっている。
【0004】
高圧ポンプの吐出流量の制御は、高圧ポンプに設けられた流量制御弁を用いて行われる。また、コモンレールから低圧側へ燃料を戻す制御は、コモンレールに接続された圧力制御弁を用いて行われる。これらの流量制御弁及び圧力制御弁としては、供給する電流値に応じてピストンの位置が変化することにより燃料の通過面積が比例的に変化する構造を有する電磁式比例制御弁が用いられている。
【0005】
ここで、供給量制御モードでレール圧制御を行う場合において、流量制御弁は、コモンレールの目標圧力(以下、「目標レール圧」と称する。)と実際のレール圧(以下、「実レール圧」と称する。)との圧力偏差に基づいて閉ループでの制御が行われる。具体的には、目標レール圧と実レール圧との圧力偏差に基づいて得られる目標流量に応じて、流量制御弁の指示電流値が決定されるようになっている。すなわち、供給量制御モードは、必要な燃料を高圧ポンプからコモンレールに供給する制御モードである。そのため、効率が良いといった利点や、駆動トルクを抑えられるといった利点があり、内燃機関の運転中の多くの期間において供給量制御モードでのレール圧制御が実行される。
【0006】
この供給量制御モードでレール圧制御を行う期間中、圧力制御弁に供給する電流値は固定されているわけではない。例えば、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中において、実レール圧が目標レール圧よりも著しく高くなる異常状態を避けるために、圧力制御弁が目標レール圧に応じて開ループで制御される場合がある。具体的には、圧力制御弁によって保持可能な圧力(以下、「開弁圧力」と称する。)が目標レール圧よりも所定のオフセット量分大きくなるように、圧力制御弁の制御指示値が決定される場合がある。これにより、実レール圧が目標レール圧よりもオフセット量分以上大きくなるときには、圧力制御弁が開弁して、レール圧の異常上昇が防止されるようになる。
【0007】
ここで、圧力制御弁の開弁圧力の目標値(以下、「目標開弁圧力」と称する。)に対応する圧力制御弁の制御指示値は、ECUにあらかじめ記憶された基本特性マップを参照して求められるようになっている。この基本特性マップは、例えば、量産される圧力制御弁のうちの、電流−圧力特性が全体分布の中央値を示す圧力制御弁(以下、このような電流−圧力特性を有する圧力制御弁を「中央品」と称する場合がある。)を用いたときの、指示電流値とそのとき開弁圧力との関係をデータ化したものである。
【0008】
しかしながら、圧力制御弁の電気的特性を均一にすることの困難性や、ピストンに設けるスリットの位置のばらつき、スリット形状の違いに起因して、圧力制御弁の電流−圧力特性はばらつきを有している。また、圧力制御弁の電流−圧力特性は、経時劣化によっても変化する場合がある。そのため、実際に用いられる圧力制御弁の電流−圧力特性は、ECUに記憶される基本特性マップに必ずしも一致していない。
【0009】
そのため、圧力制御弁の電流−圧力特性のばらつきを考慮して、基本特性マップによって決定される指示電流値を修正するようにした蓄圧式燃料噴射装置が開示されている。具体的には、上記の排出量制御モードでのレール圧制御の実行時の場合ではあるが、レール圧が所定値を上回る状態となった場合に、実レール圧と、当該実レール圧における圧力制御弁に供給される電流値とから、基本特性マップによって決定される指示電流値を修正するようにした蓄圧式燃料噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−339830号公報 (全文、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時においては、排出量制御モードでのレール圧制御とは異なり、流量制御弁に供給する電流値を変更してから、これに対応して実レール圧が変動するまでに遅れが生じることが知られている。すなわち、圧力制御弁はコモンレール内の燃料を直接的に排出する一方、流量制御弁は高圧ポンプの加圧室の上流側で燃料の流量を調節することによってコモンレールへの燃料の圧送量を変えるものであるために、制御の応答性が低下しやすい傾向にある。そのために、アクセル操作量が急激にゼロにされた場合等、レール圧を急激に低下させる際には目標レール圧と実レール圧との圧力偏差が大きくなりやすい。
【0012】
上述したように、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時に、圧力制御弁の目標開弁圧力を目標レール圧に応じて変化させる場合があるとしても、この目標開弁圧力はあくまでもレール圧の異常上昇を防ぐことを目的とするものであって、減圧応答性を向上させるものではない。
【0013】
アクセル操作量が急激にゼロにされるなどしてレール圧を低下させようとする場合において減圧に遅れを生じると、その後の再加速時においても実レール圧が目標レール圧よりも高い状態のままとなって、燃焼音が大きくなったり、排気エミッションが悪化したりするおそれがある。また、アクセル操作量がゼロとなってレール圧が安定している状態においては、蓄圧式燃料噴射装置の各種診断制御が実施される場合があることから、減圧に遅れを生じることによって、診断頻度が減少したり診断精度が低下したりするおそれもある。
【0014】
このような問題に対して、レール圧を急激に低下させる場合において、圧力制御弁の開弁圧力を一旦小さくすることが考えられる。しかしながら、単に開弁圧力を小さくして圧力制御弁を開弁しやすい状態にするだけでは、実レール圧が低下しすぎるおそれがある。特に、ある電流値での開弁圧力が中央品の場合よりも低い圧力制御弁(以下、このような電流−圧力特性を有する圧力制御弁を「下限品」と称する場合がある。)が使用されている場合には、実レール圧が低下後の目標圧力よりもさらに小さくなるアンダーシュートを生じやすい。
【0015】
逆に、下限品の圧力制御弁によるアンダーシュートを防ぐために、圧力制御弁の開弁圧力を小さくする度合いを抑えた場合には、今度は、ある電流値での開弁圧力が中央品の場合よりも高い圧力制御弁(以下、このような電流−圧力特性を有する圧力制御弁を「上限品」と称する場合がある。)が使用されている場合に、レール圧を低下させるに十分な燃料を排出することができずに、減圧応答性が改善されないおそれがある。
【0016】
図15及び図16は、このような問題について詳細に説明するために示す図である。図15及び図16は、供給量制御モードでのレール圧制御実行時の減圧時における目標レール圧Ptgt、圧力制御弁の目標開弁圧力Pset及び実レール圧Pactの推移を示している。このうち、図15は、実レール圧Pactを速やかに低下させることを優先して、減圧時の目標開弁圧力PsetAが目標レール圧Ptgtよりも小さくなるようにした場合の各値の推移を示している。また、図16は、下限品の圧力制御弁であってもアンダーシュートを生じないように、減圧時の目標開弁圧力PsetBが図15の目標開弁圧力PsetAよりも大きくなるようにした場合の各値の推移を示している。
【0017】
これらの図15及び図16において、それぞれ実線で示された目標開弁圧力Pset0及び実レール圧Pact0は、目標開弁圧力Psetを、目標レール圧Ptgtにオフセット量分加算した値Pset0とした場合の各値の推移を示している。この場合には、上限品、中央品、下限品にかかわらず圧力制御弁は全閉状態で保持されて、供給量制御モード特有の応答遅れの影響により実レール圧Pact0と目標レール圧Ptgtとの圧力偏差が大きくなる。
【0018】
これに対して、図15に示すように、実レール圧Pactを低下させることを優先して、目標開弁圧力Psetを、目標レール圧Ptgtよりも小さい値PsetAに設定した場合には、実レール圧Pact1,Pact2,Pact3が実際の開弁圧力を上回ったときに圧力制御弁が開弁して、実レール圧Pact1,Pact2,Pact3が低下し始める。このとき、上限品(一点鎖線)及び中央品(破線)の圧力制御弁においては、供給量制御モード特有の応答遅れの影響もあって、実レール圧Pact1,Pact2が目標レール圧Ptgtを下回ることなく低下後の目標レール圧Ptgtまで速やかに低下する。しかしながら、下限品(二点鎖線)の圧力制御弁においては、実際の開弁圧力が目標開弁圧力PsetAよりも小さいために、必要以上の燃料が排出されて、実レール圧Pact3が低下後の目標レール圧Ptgtを下回るアンダーシュートを生じている。
【0019】
また、図16に示すように、下限品の圧力制御弁であってもアンダーシュートを生じないように、減圧時の目標開弁圧力Psetを目標レール圧Ptgtと同等の値PsetBに設定した場合には、中央品(破線)及び下限品(二点鎖線)の圧力制御弁においては、実レール圧Pact2,Pact3が目標レール圧Ptgtを下回ることなく低下後の目標レール圧Ptgtまで速やかに低下する。しかしながら、上限品(一点鎖線)の圧力制御弁においては、実際の開弁圧力が目標開弁圧力PsetBよりも大きいために、実レール圧Pact1を十分に低下させることができず、減圧応答性が改善されていない。
【0020】
このように、レール圧を急激に低下させる際に、圧力制御弁の開弁圧力を通常時よりも一律に小さくすると、圧力制御弁の電流−圧力特性のばらつきによって、アンダーシュートを生じたり、減圧応答性が改善されなかったりするという問題がある。
【0021】
本発明の発明者らは、このような問題にかんがみて、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時にレール圧を低下させる際に圧力制御弁の開弁圧力を通常の目標開弁圧力よりも小さくし、その後においても圧力偏差が小さくならない場合には圧力制御弁の開弁圧力をさらに小さくすることによりこのような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時にレール圧を低下させる際に、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じないようにしつつ減圧応答性を向上させることが可能な蓄圧式燃料噴射装置、及びそのような制御を実行可能な蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁の制御を行う制御装置と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0023】
すなわち、本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁の開弁圧力を一旦小さくする第1低下制御を実行し、その後においても圧力偏差が所定の解除閾値以上である場合には圧力制御弁の開弁圧力をさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。そのため、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなくレール圧を速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によってレール圧を速やかに低下させることができる。したがって、本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0024】
なお、本明細書において、圧力制御弁の開弁圧力を低下する制御を「開弁圧力低下制御」と称する。
【0025】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第1低下制御の実行を開始してから所定時間経過後においても、前記圧力偏差が前記解除閾値以上である場合に前記第2低下制御を実行することが好ましい。
【0026】
このように判定を行うことにより、レール圧を低下させる際に供給量制御モード中の応答遅れに起因して一時的に圧力偏差が大きくなる場合であっても、圧力制御弁の電流−圧力特性を正確に判断して第2低下制御の実行の可否を決定することができる。したがって、下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合において第2低下制御が実行されることを防ぎ、アンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0027】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記コモンレールの目標圧力が、低下後の目標圧力で保持された後に、前記圧力偏差が前記解除閾値以上であるか否かを判定することが好ましい。
【0028】
このように判定を行うことにより、供給量制御モード中の応答遅れを考慮して、上限品に近い特性を有する圧力制御弁を見極めることができる。したがって、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合においてのみ第2低下制御が実行されるようになり、下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合に第2低下制御が実行されることによるアンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0029】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御を、前記コモンレールの圧力を低下させる際に前記コモンレールの目標圧力と前記実際の圧力との圧力偏差が所定の開始閾値以上になったときに開始することが好ましい。
【0030】
このように第1低下制御を開始することにより、圧力偏差が大きくなった場合に第1低下制御が実行されるようになり、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0031】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御を、前記コモンレールの目標圧力の低下速度が所定の開始閾値以上になったときに開始することが好ましい。
【0032】
このように第1低下制御を開始することによって、目標レール圧が急激に低下する場合に第1低下制御が実行されるようになるとともに、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0033】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御を、前記内燃機関の燃料噴射量がゼロになったときに開始することが好ましい。
【0034】
このように第1低下制御を開始することによっても、目標レール圧が急激に低下する場合に第1低下制御が実行されるようになるとともに、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0035】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第1低下制御又は前記第2低下制御の実行時に、前記圧力偏差が前記解除閾値未満になったときには、前記第1低下制御又は前記第2低下制御を終了することが好ましい。
【0036】
このように第1低下制御及び第2低下制御を終了することにより、実レール圧が目標レール圧に近づいたときに圧力制御弁の開弁圧力が通常の設定に復帰するようになるため、第1低下制御又は第2低下制御が継続されることによるアンダーシュートの発生を防ぐことができる。
【0037】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、前記コモンレールの圧力を低下させる場合に、前記第1低下制御を実行することなく前記第2低下制御を実行することが好ましい。
【0038】
このような制御を行うことにより、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合であっても一段階目の開弁圧力低下制御によって速やかに実レール圧を低下させることができるようになり、減圧応答性を向上することが可能となる。
【0039】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記第1低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力となるように前記制御指示値を決定するとともに、前記第2低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力よりも小さい値となるように前記制御指示値を決定することが好ましい。
【0040】
このように第1低下制御及び第2低下制御を実行することにより、下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合にあってはアンダーシュートを生じることなく、また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合にあっては確実な減圧を可能にして、減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記第2低下制御実行時の前記制御指示値を、前記目標開弁圧力に応じて決定される制御指示値から所定量減算した値とすることが好ましい。
【0042】
このように第2低下制御を実行することにより、圧力制御弁の開弁圧力が著しく低下することを防ぐことができるため、第2低下制御を実行することによってアンダーシュートが生じるおそれを低減することが可能となる。
【0043】
また、本発明の別の態様は、複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置に備えられ、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁のうちの少なくとも一方を制御することで前記コモンレールの圧力制御を実行する蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置である。
【0044】
すなわち、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁の開弁圧力を一旦小さくする第1低下制御を実行し、その後においても圧力偏差が所定の解除閾値以上である場合には圧力制御弁の開弁圧力をさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。したがって、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなくレール圧を速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によってレール圧を速やかに低下させることができる。このように、本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、圧力制御弁の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置の全体的構成を概略的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置に備えられた圧力制御弁の電流−圧力特性を説明するために示す図である。
【図3】ECUの構成のうちのレール圧制御に関連する部分を機能的なブロック図である。
【図4】中央品の圧力制御弁が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示す図である。
【図5】下限品の圧力制御弁が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示す図である。
【図6】上限品の圧力制御弁が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示す図である。
【図7】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図8】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定について説明するために示すフローチャート図である。
【図9】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち第1低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図10】第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち第2低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図11】第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
【図12】変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定について説明するために示すフローチャート図である。
【図13】変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される開弁圧力低下制御のうち開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定について説明するために示すフローチャート図である。
【図14】変形例3に係る蓄圧式燃料噴射装置で実行される指示電流値Ipcv_currの演算方法について説明するためのブロック図である。
【図15】下限品の圧力制御弁においてアンダーシュートを生じる様子を示す図である。
【図16】上限品の圧力制御弁において減圧応答性が改善されない様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する実施の形態について、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、それぞれの図中において同じ符号が付されているものは、特に説明がない限り同一の構成要素を示しており、適宜説明が省略されている。
【0047】
[第1の実施の形態]
1.蓄圧式燃料噴射装置の全体的構成
図1は、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置10の全体的構成を概略的に示す図である。この蓄圧式燃料噴射装置10は、燃料タンク1内の燃料を高圧ポンプ13へ供給する低圧フィードポンプ11と、低圧フィードポンプ11により供給された燃料を加圧して圧送する高圧ポンプ13と、高圧ポンプ13により圧送された燃料を蓄積するコモンレール15と、それぞれ図示しない内燃機関の気筒に対応して設けられてコモンレール15から供給された燃料を噴射する複数の燃料噴射弁17と、レール圧制御や噴射制御等を実行するECU50とを備えている。
【0048】
このうち高圧ポンプ13は、内燃機関の駆動力によって駆動されるものであって、カム14が固定されたカムシャフトは内燃機関のクランクシャフトに連結されている。この高圧ポンプ13は、プランジャ29の下降時に、燃料吸入弁27を介して低圧の燃料が加圧室13aに供給される一方、カム14の回転によってプランジャ29が押し上げられたときに、加圧室13a内の燃料が加圧され、燃料吐出弁28を介して高圧の燃料がコモンレール15へと圧送されるように構成されている。
【0049】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた高圧ポンプ13は、二組のプランジャ29及び加圧室13aを備えて構成されているが、プランジャ29及び加圧室13aの組の数は特に限定されない。
【0050】
また、高圧ポンプ13には、流量制御弁19が備えられている。流量制御弁19は、低圧フィードポンプ11と高圧ポンプ13の加圧室13aとを接続する燃料通路31の途中に配置されており、加圧室13aに供給する低圧の燃料の流量を調節するために備えられている。この流量制御弁19は、ECU50によって通電制御が行われ、電流値に応じて燃料通過面積が比例的に変化する電磁比例制御弁が用いられている。すなわち、流量制御弁19に供給する電流値を制御することにより、加圧室13aに供給する燃料の流量が調節されるようになっている。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、流量制御弁19は、いわゆるノーマルオープン型の構造を有している。
【0051】
また、流量制御弁19よりもさらに上流側の燃料通路31にはリターン通路37が接続されており、このリターン通路37にはオーバーフローバルブ21が備えられている。このオーバーフローバルブ21によって、流量制御弁19よりも上流側の燃料通路31から余剰の燃料が排出され、燃料タンク1へと戻されるようになっている。
【0052】
コモンレール15には圧力センサ25及び圧力制御弁23が備えられている。このうち、圧力制御弁23は、コモンレール15内の高圧の燃料を低圧側に排出するためのものであり、排出される燃料はリターン通路38を介して燃料タンク1へと戻されるようになっている。この圧力制御弁23は、ECU50によって通電制御が行われ、電流値に応じて開弁圧力が比例的に変化する電磁比例制御弁が用いられている。すなわち、圧力制御弁23に供給する電流値を制御することにより、保持可能なレール圧の最大値が調節されるようになっている。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、圧力制御弁23は、いわゆるノーマルオープン型の構造を有している。
【0053】
燃料噴射弁17は、電磁ソレノイド又はピエゾアクチュエータを備えて構成された公知の燃料噴射弁を用いることができる。この燃料噴射弁17は、ECU50の通電制御により、開弁時期や開弁時間等が制御されるようになっている。この燃料噴射弁17において、噴射制御に利用された背圧燃料はリターン通路39を介して燃料タンク1へと戻される。
【0054】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10においては、流量制御弁19又は圧力制御弁23を用いて、あるいはこれらの二つの弁を併用して、圧力センサ25によって検出される実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtとなるようにレール圧制御が行われる。流量制御弁19を閉ループ制御する供給量制御モードでレール圧制御を行うか、圧力制御弁23を閉ループ制御する排出量制御モードでレール圧制御を行うか、あるいはこれらの二つの弁をともに閉ループ制御する供給排出同時制御モードでレール圧制御を行うかは、内燃機関の運転状態や燃料温度等に応じてあらかじめ設定されている。
【0055】
2.圧力制御弁の電流−圧力特性
図2は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた圧力制御弁23の電流−圧力特性を説明するために示す図であり、上限品、中央品、下限品それぞれにおける電流値Ipcvと開弁圧力Ppcvとの関係を示している。電流−圧力特性Lhighが上限品の電流−圧力特性を示し、電流−圧力特性L0が中央品の電流−圧力特性を示し、電流−圧力特性Llowが下限品の電流−圧力特性を示している。ノーマルオープン型の圧力制御弁23が用いられているため、電流値Ipcvが大きくなるほど開弁圧力Ppcvが大きくなる。
【0056】
図2に示すように、上限品は、同じ電流値Ipcvであれば、開弁圧力Ppcvが中央品の開弁圧力Ppcvよりも高くなるという特性を有している。逆に、下限品は、同じ電流値Ipcvであれば、開弁圧力Ppcvが中央品の開弁圧力Ppcvよりも低くなるという特性を有している。
【0057】
図2に示す三つの電流−圧力特性Lhigh,L0,Llowは代表的な例にすぎず、量産される圧力制御弁は、個体差に応じた様々な電流−圧力特性を有している。また、図2においては、上限品及び下限品の電流−圧力特性Lhigh,Llowが、中央品の電流−圧力特性L0に対して同じ傾きを示しながらオフセットした状態となっているが、電流−圧力特性のばらつきはこのような例に限られるものではない。すなわち、上限品の電流−圧力特性ラインの傾きが中央品の電流−圧力特性ラインの傾きよりも大きくなるとともに、下限品の電流−圧力特性ラインの傾きが中央品の電流−圧力特性ラインの傾きよりも小さくなる場合もある。
【0058】
量産される圧力制御弁においては中央品の占める割合が多いことから、通常、中央品の電流−圧力特性に基づいて基本特性マップが作製され、ECU50に記憶される。量産される圧力制御弁には上記のような電流−圧力特性のばらつきがあるにもかかわらず、ECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時に、基本特性マップを参照して目標開弁圧力Psetに応じた指示電流値Ipcv_currを決定するようになっている。そのために、目標開弁圧力Psetと実際の開弁圧力Ppcvとが一致しない状態が生じることになる。
【0059】
3.ECU(電子制御装置)
図3は、ECU50の構成のうちのレール圧制御に関連する部分を機能的なブロックで表したものである。このECU50は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、目標レール圧演算部51と、制御モード選択部53と、流量制御弁制御部55と、圧力制御弁制御部57とを主たる要素として備えている。具体的に、これらの各部は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0060】
また、ECU50には、RAMやROM等の記憶素子からなる図示しない記憶部、及び、流量制御弁19又は圧力制御弁23への通電を行うための図示しない駆動回路等が備えられている。さらに、ECU50には、圧力センサ25のセンサ信号が入力される他、機関回転数Nやアクセル開度Acc、燃料温度Tfなどの各種の情報が入力されるようになっている。
【0061】
記憶部には、制御プログラム及び種々の演算マップがあらかじめ記憶されるとともに、上記した各部による演算結果等が書き込まれるようになっている。特に、記憶部には、供給量制御モードでのレール圧制御実行時の圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currの算出に用いられる基本特性マップM1があらかじめ記憶されている。この基本特性マップM1は、上述したように、中央品の圧力制御弁の電流−圧力特性をデータ化したものである。
【0062】
目標レール圧演算部51は、機関回転数Nと目標燃料噴射量Qとに基づき、図示しないレール圧マップを参照して目標レール圧Ptgtを算出する。目標燃料噴射量Qは、機関回転数N及びアクセル開度Acc等の内燃機関の運転状態に関連する情報に基づき、図示しない噴射量マップを参照して求めることができる。レール圧マップや噴射量マップは従来公知のものであるために、詳細な説明は省略する。
【0063】
制御モード選択部53は、例えば、図示しない制御モードマップに基づいて、供給量制御モード、排出量制御モード、供給排出同時制御モードの中からレール圧制御を実行するための制御モードを選択する。制御モードマップは、機関回転数N及びアクセル操作量Acc等に例示される内燃機関の運転状態や、燃料温度Tf等に応じて、内燃機関の運転領域を制御モードごとに区分したものである。ただし、制御モードマップは、供給排出同時制御モードの領域を有しないものであってもよい。
【0064】
流量制御弁制御部55は、流量制御弁19の指示電流値Ifmu_currを演算によって求めるとともに、求められた指示電流値Ifmu_currにしたがって流量制御弁19の駆動回路に対して通電の指示を出力する。レール圧制御を供給量制御モード又は供給排出同時制御モードで実行する場合、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を閉ループ制御する一方、レール圧制御を排出量制御モードで実行する場合、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を開ループ制御する。指示電流値Ifmu_currの演算方法は、制御モードによって異なっている。
【0065】
具体的に、流量制御弁制御部55は、流量制御弁19を閉ループ制御する場合、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて目標吐出流量Fpump_tgtを算出するとともに、図示しない制御マップを参照して、流量制御弁19の指示電流値Ifmu_currを求める。
【0066】
また、流量制御弁制御部55は、流量制御弁19を開ループ制御する場合、機関回転数Nに応じて指示電流値Ifmu_currを決定する。あるいは、流量制御弁19を開ループ制御する場合、流量制御弁19が全開で保持されるように指示電流値Ifmu_currを決定するようにしてもよい。すなわち、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10ではノーマルオープン型の流量制御弁19を用いているために、流量制御弁19を全開で保持する場合、指示電流値Ifmu_currはゼロになる。
【0067】
圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを演算によって求めるとともに、求められた指示電流値Ipcv_currにしたがって圧力制御弁23の駆動回路に対して通電の指示を出力する。レール圧制御を排出量制御モード又は供給排出同時制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を閉ループ制御する一方、レール圧制御を供給量制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を開ループ制御する。指示電流値Ipcv_currの演算方法は、制御モードによって異なっている。
【0068】
具体的に、圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23を閉ループ制御する場合、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づき、図示しない制御マップを参照して、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを求める。
【0069】
また、圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23を開ループ制御する場合、基本的に、目標レール圧Ptgtに応じて目標開弁圧力Psetを決定し、基本特性マップM1を参照して、目標開弁圧力Psetに応じた指示電流値Ipcv_currを求める。このときの目標開弁圧力Psetは、基本的に、目標レール圧Ptgtに所定のオフセット量を加算した基本目標開弁圧力Pset0が用いられる。そのため、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtよりも著しく高くなる場合には圧力制御弁23が開弁し、異常上昇を生じないようになっている。
【0070】
制御モードごとに説明するならば、レール圧制御を供給量制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を開ループ制御する一方、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を閉ループ制御する。供給量制御モードにおいては、基本的に圧力制御弁23は全閉状態とされてコモンレール15から燃料が排出されない一方、高圧ポンプ15の吐出流量Fpumpが目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて調節され、レール圧が調節される。ただし、目標レール圧Ptgtが急激に低下する場合等においては、圧力制御弁23を開弁しやすくして実レール圧Pactを速やかに低下させる開弁圧力低下制御が実行されるように構成されている。
【0071】
また、レール圧制御を排出量制御モードで実行する場合、流量制御弁19が開ループ制御される一方、圧力制御弁23が閉ループ制御される。排出量制御モードにおいては、高圧ポンプ15の吐出流量Fpumpが、目標レール圧Ptgtを達成するために必要な流量以上となる状態で定量化される一方、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいてコモンレール15からの燃料排出流量Fpcvが調節されて、レール圧が調節される。
【0072】
また、レール圧制御を供給排出同時制御モードで実行する場合、流量制御弁19及び圧力制御弁23がともに閉ループ制御される。供給排出同時制御モードにおいては、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて、高圧ポンプ15の吐出流量Fpump及びコモンレール15からの燃料排出流量Fpcvがともに調節されて、レール圧が調節される。
【0073】
4.開弁圧力低下制御
ECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中に開弁圧力低下制御を実行可能に構成されている。開弁圧力低下制御は、レール圧を急激に低下させる場合に、減圧応答性を高めるために実行される制御である。
【0074】
具体的には、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時において、ECU50は、基本的に圧力制御弁23を全閉状態で保持するが、レール圧を急激に低下させる必要があるときには、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくすることによって、コモンレール15内の燃料の一部を排出し、レール圧を速やかに低下させるようになっている。
【0075】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが所定の開始閾値Thre_on以上になったときに、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(pset0)よりも小さくする第1低下制御を開始する。また、その後においても当該圧力偏差ΔPが所定の解除閾値Thre_off以上となっている場合には、ECU50は、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを、第1低下制御実行時の指示電流値よりもさらに小さくする第2低下制御を開始する。
【0076】
以下、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50によって実行される開弁圧力低下制御について、図4〜図6に示すタイムチャート図と、図7〜図10に示すフローチャート図とに基づいて説明する。
【0077】
(1)タイムチャート
図4〜図6は、ECU50によって実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すタイムチャート図である。
図4は、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。図5は、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。図6は、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。
【0078】
まず、図4に基づいて、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
上述の通り、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中において、圧力制御弁23の目標開弁圧力Psetは、基本的に目標レール圧Ptgtに所定のオフセット量を加算した基本目標開弁圧力Pset0に設定される。また、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に基づき、基本特性マップM1を参照して求められる指示電流値Ipcv(Pset0)に設定される。
【0079】
t1の時点で、アクセル操作量Accが急激にゼロに戻されるなどして目標レール圧Ptgtが急激に低下し始めると、目標レール圧Ptgtの変化に伴って基本目標開弁圧力Pset0及び指示電流値Ipcv_currも低下し始める。ただし、供給量制御モード特有の応答遅れの影響により、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが徐々に拡大する(t1〜t2の期間)。
【0080】
その後、t2の時点において、圧力偏差ΔPが所定の開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントが開始される。
【0081】
図4の例では、指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されるようになっている。所定量αは、基本目標開弁圧力Pset0と目標レール圧Ptgtとの差分であるオフセット量がキャンセルされる値となっている。すなわち、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、第1低下制御実行中の圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、目標レール圧Ptgtに相当する。そのため、t2の時点以降、第1低下制御が実行されることにより、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁する。その結果、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
【0082】
その後、タイマ値が待機時間T0に到達する前のt3の時点において、圧力偏差ΔPが所定の解除閾値Thre_off未満になると、第1低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。この場合、タイマ値が待機時間T0に到達する前に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっていることから、第2低下制御は実行されない。
【0083】
以上のように、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、ECU50が第1低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
【0084】
次に、図5に基づいて、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達するt2の時点までは、実レール圧Pact及び指示電流値Ipcv_currは、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合と同じように推移する。ただし、下限品の圧力制御弁23であるため、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、基本目標開弁圧力Pset0よりも小さい値となっている。
【0085】
t2の時点において、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントを開始する。このときの指示電流値Ipcv_currは、図4の場合と同様に、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されている。その結果、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁し、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
【0086】
その後、タイマ値が待機時間T0に到達する前のt4の時点において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になると、第1低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。このとき、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが小さくなることから、実レール圧Pactの低下速度が、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて速くなる。したがって、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になる時期が、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて速くなる。この場合においても、タイマ値が待機時間T0に到達する前に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっていることから、第2低下制御は実行されない。
【0087】
以上のように、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合においても、ECU50が第1低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
【0088】
次に、図6に基づいて、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達するt2の時点までは、実レール圧Pact及び指示電流値Ipcv_currは、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合と同じように推移する。ただし、上限品の圧力制御弁23であるため、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、基本目標開弁圧力Pset0よりも大きい値となっている。
【0089】
t2の時点において、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントが開始される。このときの指示電流値Ipcv_currは、図4の場合と同様に、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されている。その結果、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁し、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
【0090】
ただし、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合には、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが基本目標開弁圧力Pset0よりも大きいことから、タイマ値が待機時間T0に到達するt5の時点よりも前に、実レール圧Pactが圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvと同等の値にまで低下して、圧力制御弁23が閉じられる。そのために、t5の時点においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_offよりも大きくなっている。
【0091】
第1低下制御の実行開始から待機時間T0を経過しても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上となっている場合には、第2低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、第1低下制御時の指示電流値よりもさらに小さくされる。
【0092】
図6の例では、指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量β小さい値に設定されるようになっている。所定量βは、第1低下制御実行時の所定量αよりも大きい値であるため、第2低下制御実行時の指示電流値Ipcv_currは第1低下制御時の指示電流値よりも小さくなる。所定量βは、例えば所定量αの1.3倍〜1.8倍とすることができるが、この例に限定されるものではない。その結果、t5の時点以降、第2低下制御が実行されることにより、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Ppcvを下回り、圧力制御弁23が開弁するため、実レール圧Pactが再び低下し始める。
【0093】
その後、t6の時点において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になると、第2低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。
【0094】
以上のように、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、第1低下制御のみでは実レール圧Pactを速やかに低下させることができない一方、ECU50がさらに第2低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
【0095】
開始閾値Thre_on及び解除閾値Thre_offの値は、蓄圧式燃料噴射装置10の特性や圧力偏差ΔPの許容範囲等を考慮して最適な値に設定することができる。また、待機時間T0は、第1低下制御による減圧効果が発現するような時間を考慮して最適な値に設定することができるが、目標レール圧Ptgtが低下後の目標レール圧で保持される時期に到達するように待機時間T0を設定することが好ましい。このように待機時間T0を設定することにより、供給量制御モード特有の応答遅れを考慮して圧力制御弁23の電流−圧力特性を見極めることができる。
【0096】
(2)開弁圧力低下制御の具体例フロー
図7〜図10は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。以下に説明するように、開弁圧力低下制御は、供給量制御モードにおいて所定の条件が成立したときに割り込みにより実行されるようになっている。
【0097】
図7のフローチャート図において、ステップS1において、ECU50は、レール圧の制御モードが供給量制御モードであるか否かを判別する。供給量制御モードではなくNoと判定した場合には、開弁圧力低下制御を実行するモードではないためにそのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。
【0098】
供給量制御モードでありYesと判定した場合には、ステップS2に進み、ECU50は、開弁圧力低下制御の実行条件が成立しているか否かを判別する。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図8に示すフローチャート図に沿って、開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定を行う。すなわち、ECU50は、ステップS21で目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込んだ後、ステップS22で実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上であるか否かを判別することにより、開弁圧力低下制御の実行条件の成立を判定する。
【0099】
そして、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上である場合には速やかに減圧させる必要があるために、ECU50はYesと判定してステップS23に進み、条件成立のフラグをオンにする。一方、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_off未満である場合には、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに追従しているために、ECU50はNoと判定してステップS24に進み、条件成立のフラグをオフにする。
【0100】
図7に戻り、ステップS2でNoと判定した場合には、現段階では開弁圧力低下制御を実行する必要がないためにそのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。一方、ステップS2でYesと判定した場合には、ECU50は、ステップS3に進んで第1低下制御を開始するとともに、ステップS4においてタイマカウントを開始する。
【0101】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図9に示すフローチャート図に沿って、第1低下制御を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS31において目標レール圧Ptgtを読み込んだ後、ステップS32において、目標レール圧Ptgtに基づき、圧力制御弁23の基本目標開弁圧力Pset0を求める。次いで、ECU50は、ステップS33において、基本特性マップを参照して、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)を求めた後、ステップS34において、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)から所定量αを減算して指示電流値Ipcv_currを求める。
【0102】
次いで、ECU50は、ステップS35において、ステップS34で求められた指示電流値Ipcv_currに従って圧力制御弁23の駆動制御を実行する。これにより、圧力制御弁23の開弁圧力Pactが小さくなり、コモンレール15から燃料が排出されて実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づき始める。
【0103】
図7に戻り、第1低下制御が実行されている間、ECU50は、ステップS5において、目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込むとともに、ステップS6において圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上であるか否かを判別する。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている場合には、ECU50はNoと判定してステップS11に進む。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている状態で第1低下制御を継続すると、アンダーシュートを生じるおそれがあることから、ECU50はステップS11において開弁圧力低下制御を終了してスタートに戻る。
【0104】
一方、ステップS6において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には、ECU50はYesと判定してステップS7に進み、タイマ値が待機時間T0を経過したか否かを判別する。タイマ値が待機時間T0に到達していなければ、ECU50は、ステップS5に戻って第1低下制御を継続する一方、タイマ値が待機時間T0に到達している場合にはステップS8に進んで第2低下制御を開始する。
【0105】
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図10に示すフローチャート図に沿って、第2低下制御を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS41において目標レール圧Ptgtを読み込んだ後、ステップS42において、目標レール圧Ptgtに基づき、圧力制御弁23の基本目標開弁圧力Pset0を求める。次いで、ECU50は、ステップS43において、基本特性マップを参照して、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)を求めた後、ステップS44において、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)から所定量βを減算して指示電流値Ipcv_currを求める。上述のとおり、所定量βは第1低下制御実行時の所定量αよりも大きな値となっている。
【0106】
次いで、ECU50は、ステップS45において、ステップS44で求められた指示電流値Ipcv_currに従って圧力制御弁23の駆動制御を実行する。これにより、圧力制御弁23の開弁圧力Pactが第1低下制御実行時よりもさらに小さくなり、コモンレール15から燃料が排出されて実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づき始める。
【0107】
図7に戻り、第2低下制御が実行されている間、ECU50は、ステップS9において、目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込むとともに、ステップS10において圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上であるか否かを判別する。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には、ECU50はYesと判定してステップS9に戻り、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になるまで第2低下制御を継続する。
【0108】
一方、ステップS10において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている場合には、ECU50はNoと判定してステップS11に進む。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている状態で第2低下制御を継続すると、アンダーシュートを生じるおそれがあることから、ECU50はステップS11において開弁圧力低下制御を終了してスタートに戻る。
【0109】
以上説明したように、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvを一旦小さくする第1低下制御を実行するとともに、その後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvをさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。そのため、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなく実レール圧Pactを速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によって実レール圧Pactを速やかに低下させることができる。このように、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、圧力制御弁23の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0110】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御の実行開始後、所定の待機時間T0を経過した後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合にのみ第2低下制御を実行開始するように構成されているため、実レール圧Pactを低下させる際に供給量制御モード特有の応答遅れに起因して一時的に圧力偏差ΔPが大きくなる場合であっても、圧力制御弁23の電流−圧力特性を正確に判断して第2低下制御の実行の可否を決定することができる。したがって、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合において第2低下制御が実行されることを防ぎ、アンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0111】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上になったときに第1低下制御を実行開始するため、開弁圧力低下制御の実行が必要な場合にのみ第1低下制御が実行されるようになり、第1低下制御の実行時に、実レール圧Pactが低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
【0112】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御又は第2低下制御の実行中に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になったときに開弁圧力低下制御が終了するため、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づいたときには圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが通常の設定に復帰するようになり、開弁圧力低下制御が継続されることによるアンダーシュートの発生を防ぐことができる。
【0113】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御実行中においては、指示電流値Ipcv_currが目標レール圧Ptgtと基本目標開弁圧力Pset0との差分であるオフセット量をキャンセルするようにされるとともに、第2低下制御実行中においては、指示電流値Ipcv_currがさらに小さい値にされるため、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合にあってはアンダーシュートを生じることなく、また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合にあっては確実な減圧を可能にして、減圧応答性を向上させることが可能となる。
【0114】
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御の実行開始後、目標レール圧Ptgtが低下後の目標レール圧で保持される時期に到達するような待機時間T0の経過後に第2低下制御を実行するか否かを判定するため、供給量制御モード中の応答遅れを考慮して、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23を見極めることができる。したがって、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合においてのみ第2低下制御が実行されるようになり、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合に第2低下制御が実行されることによるアンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
【0115】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置は、基本的に第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置と同様の構成を有しているが、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置は、第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、第1低下制御を実行することなく一段階目から第2低下制御を実行するように構成されている点で、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置とは異なる。
【0116】
以下、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御について、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御と異なる点を中心に説明する。
【0117】
図11は、本実施形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUによって実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
図11に示すステップS1〜ステップS13のうち、ステップS1〜ステップS11は、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置の場合と同様に行うことができる。
【0118】
一方、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置においては、ECUは、ステップS7においてタイマ値が待機時間T0を経過したと判定したときに、ステップS13においてカウンタAの値を進めた上でステップS8に進み、第2低下制御の実行を開始するようになっている。カウンタAは、第2低下制御の実行回数をカウントするためのものであり、蓄圧式燃料噴射装置が製品として使用されはじめたときから計測が開始される。
【0119】
ECUは、ステップS2において、開弁圧力低下制御の実行条件が成立していると判定したときには、ステップS12において、カウンタAの値が所定の基準回数Na0未満であるか否かを判定する。カウンタAの値が基準回数Na0未満であればYesと判定し、ECU50はそのままステップS3に進んで第1低下制御を開始する。一方、カウンタAの値が基準回数Na0以上となっていればNoと判定し、ECU50はステップS8に進んで第2低下制御を開始する。
【0120】
すなわち、第2低下制御の実行回数が所定回数に到達したときには、用いられている圧力制御弁23が上限品に近い電流−圧力特性を有していると判断することができるため、この場合には、第1低下制御を実行しないで、一段階目から第2低下制御が実行されるようになっている。
【0121】
基準回数Na0は、開弁圧力低下制御の信頼性や、許容範囲を考慮して、最適な値に設定することができる。
【0122】
第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUによれば、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvを一旦小さくする第1低下制御を実行するとともに、その後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvをさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されているため、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUの場合と同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUは、第2低下制御の実行回数が所定の基準回数N0以上となった後においては、第1低下制御を実行することなく一段階目から第2低下制御を実行するように構成されているために、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合であっても、一段階目の開弁圧力低下制御によって速やかに実レール圧Pactを低下させることができるようになり、減圧応答性を向上することが可能となる。
【0124】
[他の実施の形態]
以上説明した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUは、本発明の一態様を示すものであってこの発明を限定するものではなく、それぞれの実施の形態は本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。本発明の蓄圧式燃料噴射装置及びECUに係る実施の形態は、例えば、以下のように変更することができる。
【0125】
(1)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいて説明した各構成要素や、設定値、設定条件はあくまでも一例であって、任意に変更することが可能である。
【0126】
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、ノーマルオープン型の圧力制御弁を用いているが、いわゆるノーマルクローズ型の圧力制御弁を用いた場合であっても、本発明を適用することが可能である。この場合、圧力制御弁の開弁圧力を小さくするには、指示電流値を大きくするように制御が行われる。
【0127】
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、基本特性マップを中央品の圧力制御弁の電流−圧力特性に基づいて作製しているが、中央品に限定されるものではなく、特定の基準品であればよい。
【0128】
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、レール圧の制御モードとして、供給量制御モード、排出量制御モード及び供給排出制御モードのうちのいずれかを選択する例、あるいは、供給量制御モード及び排出量制御モードのうちのいずれかを選択する例を述べているが、少なくとも供給量制御モードが実行されるように構成されているものであれば、本発明を適用することが可能である。
【0129】
(2)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいては、開弁圧力低下制御の実行条件として、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上になっていることを判定しているが、実行条件はこのような例に限定されない。図12は、変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される実行条件成立判定のフローチャート図を示している。また、図13は、変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される実行条件成立判定のフローチャート図を示している。
【0130】
図12に示すように、変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUは、ステップS51で目標レール圧Ptgt(n)を読み込むとともに、ステップS52において前回読み込んだ目標レール圧Ptgt(n-1)から今回読み込んだ目標レール圧Ptgt(n)を減算した変化量が所定の開始閾値ThreV_on以上であるか否かを判定する。変化量が開始閾値ThreV_on未満でありNoと判定した場合には、目標レール圧Ptgtの低下速度が緩やかであり、開弁圧力低下制御を実行する必要がないために、ECUは、ステップS56に進んで、条件成立フラグをオフにする。
【0131】
一方、変化量が開始閾値ThreV_on以上でありYesと判定した場合には、ECUは、ステップS53に進んで、カウンタBの値を進めた後、ステップS54において、カウンタBの値が所定の閾値Nb0に到達しているか否かを判別する。カウンタBの値が閾値Nb0未満であればNoと判定してステップS51に戻る一方、カウンタBの値が閾値Nb0に到達している場合には、目標レール圧Ptgtの低下速度が速く、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる可能性が極めて高いために、ECUは、ステップS55に進んで、条件成立フラグをオンにする。
【0132】
また、図13に示すように、変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUは、ステップS61で目標燃料噴射量Q(n)を読み込むとともに、ステップS62において、目標燃料噴射量Q(n)=0、かつ、前回読み込んだ目標燃料噴射量Q(n-1)から今回読み込んだ目標燃料噴射量Q(n)を減算した変化量が所定の開始閾値ThreQ_on以上となっているか否かを判定する。これらの条件を満たしていない場合には、目標レール圧Ptgtが急激に低下するおそれが低く、開弁圧力低下制御を実行する必要がないために、ECUは、ステップS64に進んで、条件成立フラグをオフにする。
【0133】
一方、これらの条件を満たしている場合には、目標レール圧Ptgtが急激に低下するおそれが高く、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる可能性が極めて高いために、ECUは、ステップS63に進んで、条件成立フラグをオンにする。
【0134】
変形例1及び2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御によれば、推定により実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる状況を選んで、開弁圧力低下制御を開始することが可能になる。また、変形例1及び2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御によれば、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することが可能になる。変形例1及び2に例示した方法以外にも、例えば、所定の単位時間当たりの目標レール圧Ptgtの低下量が開始閾値以上となったときや、アクセル操作量Accが急激にゼロに戻されたときに開弁圧力低下制御を開始するようにしてもよい。
【0135】
(3)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいては、開弁圧力低下制御実行時に、基本目標開弁圧力Pset0に基づき、基本特性マップM1を参照して得られる指示電流値Ipcv(Pset0)を基準として、第1低下制御時及び第2低下制御時の指示電流値Ipcv_currをそれぞれ算出するようにしているが、開弁圧力低下制御実行時の指示電流値Ipcv_currの演算方法はそのような例に限定されない。
【0136】
図14は、変形例3に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される指示電流値Ipcv_currの演算方法について説明するためのブロック図を示している。変形例3にかかる蓄圧式燃料噴射装置においては、開弁圧力低下制御を実行しない期間と、第1低下制御実行中と、第2低下制御実行中とによってそれぞれ異なるオフセット分が目標レール圧Ptgtに加算されて、圧力制御弁の目標開弁圧力Psetが設定される。指示電流値Ipcv_currは、設定された目標開弁圧力Psetに基づき、基本特性マップM1を参照して決定される。このように指示電流値Ipcv_currを決定することによっても、第1低下制御実行時の圧力制御弁の開弁圧力Ppcvを通常制御時よりも小さくすることができるとともに、第2低下制御実行時の開弁圧力Ppcvを第1低下制御実行時の開弁圧力Ppcvよりも小さくすることができる。
【符号の説明】
【0137】
1:燃料タンク、10:蓄圧式燃料噴射装置、11:低圧フィードポンプ、13:高圧ポンプ、13a:加圧室、14:カム、15:コモンレール、17:燃料噴射弁、19:流量制御弁、21:オーバーフローバルブ、23:圧力制御弁、25:圧力センサ、27:燃料吸入弁、28:燃料吐出弁、29:プランジャ、31:燃料通路、37,38,39:リターン通路、50:ECU(電子制御装置)、51:目標レール圧演算部、53:制御モード選択部、55:流量制御弁制御部、57:圧力制御弁制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁の制御を行う制御装置と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置において、
前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、
前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1低下制御の実行を開始してから所定時間経過後においても、前記圧力偏差が前記解除閾値以上である場合に前記第2低下制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記コモンレールの目標圧力が、低下後の目標圧力で保持された後に、前記圧力偏差が前記解除閾値以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項4】
前記第1低下制御を、前記コモンレールの圧力を低下させる際に前記コモンレールの目標圧力と前記実際の圧力との圧力偏差が所定の開始閾値以上になったときに開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項5】
前記第1低下制御を、前記コモンレールの目標圧力の低下速度が所定の開始閾値以上になったときに開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項6】
前記第1低下制御を、前記内燃機関の燃料噴射量がゼロになったときに開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1低下制御又は前記第2低下制御の実行時に、前記圧力偏差が前記解除閾値未満になったときには、前記第1低下制御又は前記第2低下制御を終了することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、前記コモンレールの圧力を低下させる場合に、前記第1低下制御を実行することなく前記第2低下制御を実行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項9】
前記第1低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力となるように前記制御指示値を決定するとともに、前記第2低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力よりも小さい値となるように前記制御指示値を決定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第2低下制御実行時の前記制御指示値を、前記基本目標開弁圧力に応じて決定される制御指示値から所定量減算した値とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項11】
複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置に備えられ、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁のうちの少なくとも一方を制御することで前記コモンレールの圧力制御を実行する蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、
前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、
前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
【請求項1】
複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁の制御を行う制御装置と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置において、
前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、
前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1低下制御の実行を開始してから所定時間経過後においても、前記圧力偏差が前記解除閾値以上である場合に前記第2低下制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記コモンレールの目標圧力が、低下後の目標圧力で保持された後に、前記圧力偏差が前記解除閾値以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項4】
前記第1低下制御を、前記コモンレールの圧力を低下させる際に前記コモンレールの目標圧力と前記実際の圧力との圧力偏差が所定の開始閾値以上になったときに開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項5】
前記第1低下制御を、前記コモンレールの目標圧力の低下速度が所定の開始閾値以上になったときに開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項6】
前記第1低下制御を、前記内燃機関の燃料噴射量がゼロになったときに開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1低下制御又は前記第2低下制御の実行時に、前記圧力偏差が前記解除閾値未満になったときには、前記第1低下制御又は前記第2低下制御を終了することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、前記コモンレールの圧力を低下させる場合に、前記第1低下制御を実行することなく前記第2低下制御を実行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項9】
前記第1低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力となるように前記制御指示値を決定するとともに、前記第2低下制御実行時においては前記開弁圧力が前記コモンレールの目標圧力よりも小さい値となるように前記制御指示値を決定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第2低下制御実行時の前記制御指示値を、前記基本目標開弁圧力に応じて決定される制御指示値から所定量減算した値とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項11】
複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、前記コモンレールに対して燃料を圧送する高圧ポンプと、前記高圧ポンプの吐出流量を調節するための流量制御弁と、前記コモンレールから低圧側へ前記燃料を戻すことで前記コモンレールの圧力を調節する圧力制御弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置に備えられ、前記流量制御弁及び前記圧力制御弁のうちの少なくとも一方を制御することで前記コモンレールの圧力制御を実行する蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、
前記制御装置は、前記流量制御弁を前記コモンレールの目標圧力と実際の圧力との圧力偏差に基づいて閉ループ制御するとともに前記圧力制御弁を前記目標圧力に基づいて開ループ制御する供給量制御モードでの圧力制御を実行可能に構成されており、
前記供給量制御モードでの圧力制御の実行中には、前記目標圧力に所定量加算した基本目標開弁圧力に応じて前記圧力制御弁の制御指示値を決定するとともに、前記コモンレールの圧力を低下させる場合には、前記圧力制御弁の開弁圧力が前記基本目標開弁圧力よりも小さくなるように前記制御指示値を変更する第1低下制御を実行し、さらに、その後の前記圧力偏差が所定の解除閾値以上となっている場合には、前記開弁圧力が前記第1低下制御時の開弁圧力よりもさらに小さくなるように前記制御指示値を変更する第2低下制御を実行することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−197682(P2012−197682A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60819(P2011−60819)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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