説明

蓄熱タンク

【課題】熱を供給可能な熱源温水、熱を受熱可能な低温水、或いは、これらの混合水と、蓄熱材hcとが高効率且つ迅速に熱交換可能で、さらに、所定の熱負荷需要にも、蓄熱状態にある蓄熱材hc側から高効率且つ迅速に対応できる蓄熱タンクを得る。
【解決手段】内筒と外筒との間に形成される中間筒部を、蓄熱材hcが収納される有底筒状の蓄熱材収納空間とし、熱源温水、前記熱源温水より低温の低温水が内部を流れ、内部水とコイル外部に存する前記蓄熱材hcとの間で熱交換を行う第一コイル熱交換器180と、熱負荷温水が内部を流れ、内部水とコイル外部に存する前記蓄熱材hcとの間で熱交換を行う第二コイル熱交換器181とを備え、蓄熱材hc収納空間に熱移動を促進する伝熱フィン100bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材を内部に収納した蓄熱部を備え、前記蓄熱部に熱を供給するとともに、前記蓄熱部から熱を払い出し可能な蓄熱タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蓄熱タンクを使用するシステムとして、例えば、熱需要家である各家庭に給湯を行うシステムで、所定の地域内にある複数の家庭に対して、その地域を対象とする共通のコジェネレーション設備を利用し、トータルとしてエネルギ効率の高い給湯を行うことができるシステムがある。
【0003】
この種のシステムは温水熱源供給システムと呼ばれるが、このシステムには、共通施設側で発生される熱源温水(温水温度60〜90℃)が循環する熱源温水循環ラインが備えられるとともに、各家庭に引き込まれている上水といった前記熱源温水より低温の低温水を各家庭に供給する低温水供給ラインが備えられる。この低温水供給ラインを介して供給される低温水としては、例えば前記共通のコジェネレーション設備から廃棄される排ガスが有する排熱により予熱された予熱水も利用可能とされる。この種の低温水の温度は、ほぼ5〜25℃程度となる。
【0004】
さて、発明者らは、特許文献1において、この種の温水熱源供給システムとして、「温水熱源給湯装置およびエネルギ供給システム」を提案している。
このシステムの概略構成を示すのが、当該明細書で図1に示される「エネルギ供給システム」と呼ぶシステムである。このシステムでは、燃料電池、マイクロガスエンジン(MGE)或いはマイクロガスタービン(MGT)がコジェネレーション設備であり、この設備から高温水(90℃)が払い出されるとともに、50℃の温水として設備に戻ることが示されている。即ち、熱源温水循環ラインが地域内にある家庭を対象として設けられている。
【0005】
一方、各家庭内に備えられる温水熱源給湯装置の構成を示したのが、当該明細書の図2であり、熱源温水供給ライン2から、そのラインを循環する熱源温水の一部を取り出して、温水熱源給湯装置4において、熱源温水からの蓄熱、給湯水への放熱等を行っている。
【0006】
この構成にあっては、熱交換ユニット22は、需要側の循環温水が流れる循環路は、循環温水の戻り部において、熱源温水若しくは水道水と熱交換可能とされるとともに、その下流側で蓄熱セル22a内に導かれて蓄熱セル内に蓄えられた熱をも利用して、需要目的に応じた温水を生成可能とされている。
【0007】
一方、発明者は、特許文献2において、発明者が「滲み出し方式」と呼ぶ方式を提案している。
この方式では、熱源温水循環ラインから各家庭内に熱源温水を取り込み、熱源温水循環ラインの下流側に戻す戸別温水循環手段Lを設けるのであるが、その戸別温水循環手段に、水道水と言った低温水を混合可能な混合部22を設けるとともに、温水の払い出し部23を設け、この払い出し部23から所定の温度に調整された温水を給湯水として払い出し可能としている。
この方式を採用すると、蓄熱貯湯タンク内の蓄熱を全て消費した状況において、熱需要を賄うことが可能な戸数(家庭の数)を格段に増加させることが可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−134014号公報
【特許文献2】特願2005−36362号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方式では、上記構成の熱交換ユニットでは、例えば、熱源温水が有する熱が直接蓄熱セルに蓄えられることがない(熱移動は、熱源温水→循環温水→蓄熱材とされている)ため、循環温水の温度を適切な温度に制御するという目的は達成できるものの、蓄熱材に貯めることが可能な熱を有効且つ迅速に利用するという目的に対しては限界がある。
【0010】
特許文献2に記載の方式では、給湯需要に対して良好に対応できるが、その他の風呂追い炊き機能、暖房機能等に対して別個の熱交換を行える機能部を備える必要がある。そして、可能な限り蓄熱部への蓄熱及び、蓄熱部からの給熱を高い熱効率で実現できるとともに、熱交換が迅速に行われる構造を得る必要があるが、好適な構造は未だ提案されていない。
【0011】
本発明の目的は、熱を供給可能な熱源温水、熱を受熱可能な低温水、或いは、これらの混合水と、蓄熱材とが高効率且つ迅速に熱交換可能で、さらに、所定の熱負荷需要にも、蓄熱状態にある蓄熱材側から高効率且つ迅速に対応できる蓄熱タンクを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための、本願に係る蓄熱タンクの特徴構成は、以下の通りである。
内筒と外筒とを備え、前記内筒と外筒との間に形成される中間筒部を、蓄熱材が収納される有底筒状の蓄熱材収納空間として備えるとともに、
熱源温水、前記熱源温水より低温の低温水、若しくはこれらの混合水が内部を流れ、内部水とコイル外部に存する前記蓄熱材との間で熱交換を行う第一コイル熱交換器と、
熱負荷温水が内部を流れ、内部水とコイル外部に存する前記蓄熱材との間で熱交換を行う第二コイル熱交換器とを前記蓄熱材収納空間に備え、
前記第一コイル熱交換器、第二コイル熱交換器を成すコイルの外部に位置する前記蓄熱材収納空間に、空間内に収納された前記蓄熱材間における熱移動を促進する伝熱フィンを多数備える。
【0013】
この蓄熱タンクは、二重筒構造が採用され、内筒と外筒との間に設けられる中間筒部が有底とされ、その空間内に蓄熱材が収納される。即ち、この空間が、蓄熱タンクにおいて熱の授受を行う蓄熱材収納空間とされる。
そして、この蓄熱材収納空間内には、第一コイル熱交換器及び第二コイル熱交換器が配設される。コイル熱交換器は、コイルを螺旋状に巻いて構成されるものであり、コイル内外における熱交換を可能とする。従って、本願に示す構造では、各コイル内を流れる内部水とコイル外に存する蓄熱材とが熱交換を行うこととなる。
【0014】
この構成では、第一コイル熱交換器内を熱源温水が流れる状態では蓄熱材への蓄熱が可能であり、蓄熱材の温度より内部水の温度が低い状態(第一コイル熱交換器内を混合水若しくは低温水が流れる状態)では、蓄熱材から内部水への給熱が可能となる。
さらに、第二コイル熱交換器を備えることで、この熱交換器内を流れる温水(本願においては熱負荷温水となる)への蓄熱材からの給熱を高効率且つ迅速に行うことができる。
【0015】
そして、蓄熱材収納空間内に伝熱フィンを多数備えることにより、蓄熱材と内部水間との授熱・給熱をさらに高効率且つ迅速なものとできる。
【0016】
さて、上記の構成において、前記第一コイル熱交換器及び第二コイル熱交換器を成す前記コイルが前記蓄熱材収納空間内の径方向中間部位に配設され、当該径方向において、前記コイルの内径側及び外径側の両側部位に前記蓄熱材が位置されることが好ましい。
【0017】
本願にあっては、蓄熱タンクが二重筒構造となり、蓄熱材収納空間内においてコイル熱交換器内を流れる内部水と蓄熱材との熱交換を行うが、内部筒内の空間は、後にも示すように、貯湯の用に供したり、給熱の用に供することができる。本願にあっては、蓄熱或いは給熱に関して、蓄熱材に対する蓄熱或いは蓄熱材からの給熱を先ず行い、蓄熱材の蓄熱が消費された後、所定の給湯・熱負荷需要に対応することが好ましい動作形態であるが、例えば、コイル熱交換器が、内筒或いは外筒に密着される状態では、内部水と貯湯或いは配管との間での熱交換が発生してしまい、好適な動作状態を実現できない。
よって、第一コイル熱交換器及び第二コイル熱交換器を成すコイルが蓄熱材収納空間内の径方向中間部位に配設され、当該径方向において、コイルの内径側及び外径側の両側部位に蓄熱材が位置される構成を採用することで、蓄熱或いは給熱に関して、蓄熱材に対する蓄熱或いは蓄熱材からの給熱を先ず行い、蓄熱材の蓄熱が消費された後、所定の給湯・熱負荷需要に対応することができる。
【0018】
さて、前記コイルの内径側及び外径側の両側部位に前記伝熱フィンが配設されていることが好ましい。
このようにすることで、コイルの両側及び蓄熱材収納空間内の熱移動を良好なものとして、蓄熱・給熱に高効率且つ迅速に対応できる。
【0019】
さて、前記コイルを上下方向に巻重ねて形成されるコイル群の径方向端面に、アルミニウム若しくは銅製の薄板を配設し、前記薄板に前記フィンが径方向に伸びる横行状態で配設されていることが好ましい。
このように巻重ね構造とすることで、コイル-コイル間の伝熱性を良化できるとともに、伝熱性の良好な薄板を介して、伝熱フィンを巻重ねられたコイル群と熱的に接続することができた。
例えば、このような伝熱フィンのフィン間ピッチを1〜3mm、フィンの高さ(薄板からフィン先端までの長さ)を10〜25mm、周方向におけるフィンの厚みを0.1〜0.2mmとすることで、充分な伝熱性能を実現することができる。
【0020】
このフィンで構成される1層の伝熱フィンブロックの幅は、前記コイルの外周又は内周に相当する長さとして規定される。また、その上下方向の高さは200〜400mmがコイルを縛り付けるには好適である。
さらに、薄板付きの伝熱フィンブロックをさらにフィンブロックの上から重ねて、蓄熱材の容量を増やすこともできる。
伝熱フィンとして薄板を取り付けた伝熱フィンブロックを採用することで、コイル間に関しても、極力均等に蓄熱及び給熱を行える。
【0021】
また、前記第一コイル熱交換器を成すコイル内を流れる内部水と、前記第二コイル熱交換器を成すコイル内を流れる内部水との流れ方向が、蓄熱タンクの上下方向において対向していることが好ましい。
第二コイル熱交換器が働く熱需要のある状態(風呂追い炊き運転或いは暖房運転状態等)においては、蓄熱材に蓄積される熱が利用される外、その蓄熱が消費された後は、第一コイル熱交換器に熱源温水を流して熱需要に対応する必要が発生するが、この状態にあっても、対向状態で熱交換を行なわせることで、高効率且つ迅速に熱需要に対応できる。
【0022】
さて、前記第二コイル熱交換器を複数備え、異なった前記第二コイル熱交換器内を異なった熱負荷温水が流れる構成で、
前記第一コイル熱交換器と前記第二コイル熱交換器とを対として、当該対を成すコイル熱交換器のコイルが上下方向で交互に配設される温水路層を、蓄熱タンクの径方向に複数備え、前記複数の温水路層間に前記伝熱フィンが配設されるフィン層を備えることが好ましい。
【0023】
このように、複数の第二コイル熱交換器を備えることで、複数種の熱需要に個別且つ適切に対応できる。また、夫々の第二コイル熱交換器に対して、対となる第一コイル熱交換器を備えることで、この構成からも異なった熱需要に好適に対応できる。
【0024】
また、温水路層間にフィン層を備えることで、これら層間に配設される蓄熱材に関する蓄熱・給熱挙動を、本願の趣旨に沿った、蓄熱材優先の挙動とできる。
【0025】
さらに、前記内筒の内部に貯湯タンクを備え、第一コイル熱交換器のコイル終端が、前記貯湯タンクの入口に接続され、蓄熱タンクの上下方向において、前記貯湯タンクの出口が、前記貯湯タンクの入口とは反対側に設けられていることが好ましい。
【0026】
この構成を採用することで、内筒内の空間を貯湯タンクとして利用することが可能となり、貯湯量を確保し、例えば、夜間の貯湯量を確保できる。
貯湯タンクの入口及び出口を、貯湯タンクの上下位置に確保することで、貯湯タンクを備えた蓄熱タンクの構造をシンプル且つコンパクトなものとできる。
【0027】
さて、この構成において、前記貯湯タンクの上部空間に前記蓄熱材が収納され、
前記第一熱交換器を成すコイルが、前記貯湯タンクの上部空間に配策され、当該上部空間内に収納される前記蓄熱材とコイル内を流れる内部水との間で、熱交換可能に構成されていることが好ましい。
【0028】
本願で使用する蓄熱材としては、相変化を伴うものが好ましいが、この種の蓄熱材は固相と液相間での変化に伴って容積が変化する。さらに、二重筒構造の蓄熱タンクで貯湯タンクを内筒内に備えたものでは、貯湯タンクの上部空間も蓄熱材を配設する蓄熱材収納空間として利用できるが、この部位に、第一コイルを配設しないと熱の授受が中間筒内の授受状態から乖離することとなりやすい。そこで、本願にいう貯湯タンクの上部空間にコイルを配設することで、中間筒部における挙動と、貯湯タンク上部における挙動を合わせることができる。さらに、貯湯タンク上から蓄熱材を、その溶解により迅速かつ充分に、中間筒内に供給できる。
【0029】
さて、前記内筒内に、前記第一コイル熱交換器、第二コイル熱交換器を成すコイル内に導入される温水を、蓄熱タンクの底部から天部に導く上昇管を設け、
前記熱源温水、前記低温水、前記混合水及び前記熱負荷温水から選択される一種以上の温水の蓄熱タンクへの導入及び蓄熱タンクからの導出が、前記底部において行われることが好ましい。
【0030】
この構成を採用することで、内筒内の空間を利用して、所要の配管を当該部位に配策することで、蓄熱タンクをコンパクトなものとできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面に基づいて、本願に係る蓄熱タンクを採用した温水熱源給湯システム1に関して説明する。
図1は、システム全体の概略構成を示す図面であり、図2は、熱需要家である各戸2に備えられる温水熱源給湯装置300の構成及び熱源温水循環ライン4及び低温水供給ライン5との接続構成を示したものである。
【0032】
図1に示すように、このシステム1は複数の給湯対象である各戸2を対象とする設備であり、図1は100戸を対象とする例を示している。後に詳細に図2に基づいて説明するように、各戸2においては、例えば40〜60℃といった温度の給湯が可能とされるとともに、各戸2に備えられる風呂追い焚き回路6a、暖房温水回路6b等の循環型の熱循環回路6内を流れる熱負荷用温水を加温可能に構成されている。
このシステム1にあっては、その熱源は、上記複数の各戸(熱需要家)2を対象として設けられる熱源装置としてのコジェネレーション設備7である。この種の設備7は、分散型エネルギー供給機器としての、燃料電池、マイクロガスエンジン、マイクロガスタービンを挙げることができる。
【0033】
1 温水熱源給湯システムの全体構成
図1に示す例は、100戸の家庭に対して単一の熱源装置を設備したものであり、この熱源装置7が発生する熱により発生される熱源温水を貯湯する熱源温水貯湯タンク8を備えている。この熱源温水貯湯タンク8は、50戸毎に2群に分割された戸群に対して夫々設けられる熱源温水循環ライン4と接続されている。
【0034】
それぞれの熱源温水循環ライン4には、熱源温水循環ポンプ9が、その循環基端部4aに備えられ、各戸2側を一巡した後、戻り部4bを介して熱源温水貯湯タンク8に戻るように構成されている。ここで、熱源温水の送り出し温度は75〜85℃程度であり、戻り温度は60℃程度である。
同図に示すように、熱源温水循環ライン4と各戸2内(具体的には、本願にいう温水熱源給湯装置300)では、熱源温水若しくは、これに低温水が混合された混合水が、温水熱源給湯装置300に備えられる蓄熱貯湯タンク100(図2参照)を介して、逆流することなく流れる往路11a及び復路11bで接続されている。
【0035】
上記熱源温水循環ポンプ9の運転制御に関して述べると、図1に示すように、熱源温水循環ライン4を経て熱源温水貯湯タンク8に戻ってくる戻り温水の温水温度及び量に応じて、熱源温水貯湯タンク8から熱源温水循環ライン4へ送り出す送出量を、熱源温水循環ポンプ9の回転数で制御するように構成されている。図1に各熱源温水循環ライン4の戻り側から熱源温水循環ポンプ9への温水温度及び量の取り込みラインを一点鎖線で示した。熱源温水循環ライン4を流れる熱源温水の圧力は、200〜800kPaに設定されている。
【0036】
さて、本願にあっては、後述するように、各戸2に備えられる温水熱源給湯装置300の構成上、熱源温水の一部が給湯用に使用されるため、熱源温水循環ライン4内に水を補給する必要が生じる。そこで、図1に示すように、低温水供給ライン5と熱源温水貯湯タンク8の下部とを接続する接続管12が備えられている。
この接続管12により、温水熱源貯湯タンク8の温水が給湯需要に応じて減少しても自動的に補給することが可能である。
【0037】
熱源装置7に導入される温水13は、熱源温水循環ライン4の戻り温水(60℃前後)であり、給湯に利用されて流量が減る。そこで、熱源温水貯湯タンク8の底部より20〜25℃の予熱水が補給され、熱源装置7に導入される。
この導入される温水13は、流量制御弁13bで、導入温水温度に応じて水量が制御され、熱源装置7から75〜85℃の温水を回収できる。
【0038】
図1に示すように、前記熱源装置7に対して、補助機14として、その排ガス及び外気から熱回収を行うヒートポンプが備えられている。このヒートポンプ14によって回収される熱により、前記熱源温水に加温することが可能になっているとともに、熱源温水貯湯タンク8に対して備えられる予熱水タンク15内の予熱水を予熱可能に構成されている。
この予熱水タンク15には、5〜25℃の上水が補給されるように構成されており、予熱水タンク15の下手側に設けられる低温水供給ライン5より各戸2に20〜25℃の予熱水を供給可能に構成されている。この予熱水の供給は予熱水供給ポンプ16の作動によるものとされ、同図に示されるように、この予熱水の供給圧は熱源温水の圧力より低い、150〜200kPaの範囲に選択されている。図1に示されるように、この低圧水供給ライン5は下流側で各戸2に分岐されており、給湯等の用に供される構成が採用されている。
【0039】
第一実施の形態
以下、図2、3,4を使用して、この例における各戸2内の構成をさらに詳細に説明する。
図2は、各戸2内の構成を示したものであり、図3は、蓄熱部100a内の構成を詳細に示す図であり、図4は、熱源温水循環ライン4と各戸2との接続部位(取り込み部19と戻り部20)の詳細構造を示した図面である。
【0040】
2 各戸内の構成
図2には、左側から低温水供給ライン5、熱源温水循環ライン4を示しており、各戸2内の温水熱源給湯装置300を示している。同図右側には各戸2内のユーティリティである、給湯水の出口17、熱負荷温水の循環回路(風呂追い焚き回路6a、暖房温水回路6b)を示している。
【0041】
温水熱源給湯装置300は、その主要機器として蓄熱部100aを備えた蓄熱貯湯タンク100を備えて構成されている。このタンク100は、本願にいう、蓄熱タンクの一種である。
図2に示すように、蓄熱貯湯タンク100は、2重筒構造が採用されており、内筒1001内には貯湯槽として働く貯湯タンク100cが収納されている。そして、内筒1001と外筒1002との間の空間は有底に構成されており、蓄熱材hcが収納される蓄熱部100aとされている。この蓄熱部100a(蓄熱材収納空間)内には、3種の螺旋管であるコイル熱交換器181,181,180が配設されるとともに、蓄熱材hc間及び蓄熱材hcとコイル熱交換器181,181,180内を流れる流体との間に於ける熱循環を良好なものとすべく、コイルに当接して設けられる薄板100pに植設された多数のアルミ製フィン100b(図3)が配設されている。このフィンを伝熱フィンと称する。
このような伝熱フィンとしては、フィン間ピッチを1〜3mm、フィンの高さ(薄板100pからフィン先端までの長さ)を10〜25mm、周方向におけるフィンの厚みを0.1〜0.2mmとすることで、充分な伝熱性能を実現することができる。
【0042】
図示するように、コイル熱交換器181,181,180は、蓄熱貯湯タンク100の径方向で、蓄熱部100aのほぼ中央部位に上下方向に配設されており、蓄熱材hcはコイル熱交換器181,181,180の径方向両側に位置するように構成されている。この構造を採用することにより、コイル熱交換器181,181,180と前記貯湯タンク100cとの間にも、蓄熱材hcの層が介装される構造が採用されている。コイル熱交換器181、181、180は、内部を流体が流れる可撓性の管材をコイル状に巻き重ねて形成したものであり、本願の場合、銅製の管材を採用している。
【0043】
さて、これら3つのコイル熱交換器181、181、180に関して、前記貯湯タンク100cに接続される第一コイル熱交換器180(このコイル熱交換器には、熱源温水、低温水或いはこれらの混合水が流れるが、残り2つのコイル熱交換器181と区別するため熱源温水熱交換器と呼ぶ)は、蓄熱貯湯タンク100の上下方向、底部から天部まで全上下方向領域に亘って螺旋を成して配設されている。
一方、残り2つの第二コイル熱交換器181、181(このコイル熱交換器を熱負荷水熱交換器と呼ぶ)は、前記熱源温水熱交換器180のコイル間に上下方向で熱負荷水熱交換器181のコイルが挟まれるように、配設されている。
また、蓄熱貯湯タンク100の外側には断熱保温材層hsが備えられており、外界との断熱が図られている。
【0044】
熱源温水熱交換器180にあっては、その内部水は蓄熱部100a内を鉛直方向下から上に温水が流れるように配設されており、貯湯タンク100cの天面に設けられた貯湯タンク入口100eから内部へ内部水が流入するように構成されている。貯湯タンク100c内にあっては、その天面側から底面に向けて貯湯水が流れる。
【0045】
さらに、図2からも判明するように、熱源温水熱交換器180は、先ず、貯湯タンク100cの底面下側部位で中心側から外側に遷移しながら螺旋を成す底部180aと、前記蓄熱部100a内を上方向に螺旋を成しながら上昇する上昇部180bと、貯湯タンク100cの天面外部位置で外側から中心側に遷移しながら螺旋を成す天部180cとを有して構成されている。
【0046】
図示するように、この熱源温水熱交換器180内を流れてきた流体は、貯湯タンク100cの天面中心部位100eで、貯湯タンク100c内に流入する構成が採用されている。結果、この貯湯タンク100cは、蓄熱部100aの蓄熱をも利用することで熱源温水熱交換器180において生成される所定温度の温水を貯湯タンク100cに溜め込むことが可能となっている。そして、貯湯タンク100cの下部から温水を取り出すことができる。
【0047】
図3に示すように、蓄熱部100aには、概略、コイルを包むように、ほぼ横方向に多数のアルミ製の熱交換用フィン100bが設けられており、多数のフィン100bを設けることによりこの部内における熱移動は良好に維持される。このフィン100bは、コイルに当接する薄板100pに植設された構成とされており、薄板100pを介して熱的にコイルに接続される。結果、この蓄熱部100a内に鉛直方向に配設されている全てのコイル熱交換器181,181,180内を流れる流体と、内部に収納されている蓄熱材hcとの間において、熱交換が迅速且つ十分に行われるように構成されている。
【0048】
さらに、先にも示したように、この例における蓄熱部100aは有底の蓄熱材収容空間とされており、その使用状態にあっては、図2に示すように、貯湯タンク100cの上部にも蓄熱材hcを充填した状態で使用する。この部位には、熱源温水熱交換器180の天部180cが配設されていることから、この熱源温水熱交換器180内を流れる流体と蓄熱材hcとの間における熱交換を良好に実行し、例えば、固化状態にある蓄熱材hcを熱源温水の有する熱で迅速に溶解させることができ、蓄熱材hcの固化・溶解に伴う体積変化を良好に吸収できる。
【0049】
図2に、濃度を変えて示すように、蓄熱部100a内には3つのコイル熱交換器181,181,180が配設されているが、先に説明した熱源温水熱交換器180を成す熱源温水コイル(最濃色の丸で示す)と、熱負荷水熱交換器181を成す熱負荷水コイル(白丸及び淡い灰丸で示す)は、上下方向で交互に配設されている。
この構成から熱源温水の有する熱は、熱源温水熱交換器180と熱負荷水熱交換器181が接触して伝導するとともに、フィンブロックに取り付けられた薄板100pを介して、回路66a,6b内を流れる温水を加温することが可能となる。さらに、この加温過程で、熱源温水の温度が蓄熱材hcの温度より下がる場合は、蓄熱材hcからも熱が回路6a,6b内を流れる温水に供給される。図示する例にあっては、白丸で示す熱負荷水コイル181が風呂追い炊き用であり、淡い灰丸で示す熱負荷水コイル181が暖房用である。
【0050】
2つの熱負荷水熱交換器181の配置に関して説明すると、蓄熱部100aの下側から順に、暖房温水回路6bを構成する熱負荷水熱交換器181と、風呂追い焚き回路6aを構成する熱負荷水熱交換器181が備えられている。この構成から、熱源温水の有する熱を利用して、蓄熱材hcを介してこれら回路6a,6b内を流れる温水を加温することが可能となる。
【0051】
熱源温水熱交換器180の流入部は、熱源温水循環ライン4に接続されている。この接続路が先に説明した往路11aであり、往路11aの基端部を取り込み部19と呼んでいる。
前記貯湯タンク100cの下端である貯湯タンク出口100fも、熱源温水循環ライン4に接続されている。この接続路が先に説明して復路11bであり、復路11bの先端部を戻り部20と呼んでいる。
【0052】
これら取り込み部19と戻り部20との位置関係は、前者19が後者20に対して熱源温水の流れ方向で上流側とされている。
【0053】
取り込み部19、戻り部20の詳細構造を示したのが図4である。同図は、両部位19、20を単一のT型配管部材200で実現していることを示している。
このT型配管部材200は、熱源温水循環ライン4に、それぞれ接続される一対の循環ライン側接続部201,201(図4の上下方向で対を成している)と、この接続部201,201間に熱源温水循環ライン4からの熱源温水の取り込みを行う取り込み配管202と、戻しを行う戻り配管203とが一体形成されている。
【0054】
取り込み配管202は直管とされており、戻り配管203は直管部203aに、この直管203aとは直交する方向に延出する分岐管部203bを備えて構成されている。一体化状態の取り込み配管202と戻り配管203とは、図4に示すように、一対の接続部201をつなぐ直線流路内に一部進入した構成とされており、その流路において、絞りとしての役割も果たせるように構成されている。従って、この進入の程度を調整することで、熱源温水循環ライン4内を流れる熱源温水に与える抵抗を調整することができる。
【0055】
同図からも明らかなように、図4において、前記取り込み配管202の循環ライン側端部202eは、循環ライン4を流れる熱源温水を良好に取り込めるように、流れ下手側程、ライン内に進入する端面構成が採用されている。即ち、図4において右下がりの端面を有している。
一方、前記戻り配管203の循環ライン側端部203eは、この配管203に戻ってくる温水を良好に循環ライン4に合流させるように、流れ上手側ほど、ライン内に進入する構成が採用されている。即ち、図4において右上がりの端面を有している。
従って、この例では、単一のT型配管部材200を熱源温水循環ライン4に装着することで、熱源温水の取り込み及び戻しが可能となる。
【0056】
取り込み部19から戻り部20までの温水の移流に関しては、熱源温水循環ポンプ9と、温水熱源給湯装置3個々に備えられる温水ポンプ10gがこれを受持つ。この温水ポンプ10gは、貯湯タンク100cの下側に設けられている。
熱源温水循環ライン4より熱源温水を蓄熱貯湯タンク100に取り込み、熱源温水の取り込み部19より循環ライン下流側の戻り部20に、蓄熱貯湯タンク100から貯湯水の一部又は全部を戻す戸別温水循環手段Lが形成される。
【0057】
図2に示すように、往路11aには、低温水供給ライン5から供給される低温水を混合可能な混合部22が設けられるとともに、復路11bの貯湯タンク出口100fと戻り部20との間に給湯水を払い出すための払い出し部23が設けられている。
【0058】
図2に示すように、混合部22には、給湯時において前記低温水供給ライン5から逆止弁36、流量調整弁MV2を介して低温水が流入する構造が採用されている。給湯の初期においては貯湯水や蓄熱材hcは十分に低温水より温度が高いため、流量調整弁MV3からの低温水で給湯温度T6となるように、流量調整弁MV2とMV3の開度が調整される。往路11aに設けられる流量調整弁MV1は、給湯時において常に全閉状態となる。流量調整弁MV2からの低温水の貯湯タンク100cへの導入を続けると、時間の経過とともに貯湯タンク100cの温度も下がるので、流量調整弁MV3を閉じるとともに、流量調整弁MV4の開度を調整して、給湯温度T6を制御する。本発明によれば、貯湯水や蓄熱材hcをほぼ熱源温水循環ライン4を流れる温水温度から低温温水供給ライン5を流れる低温温水温度の温度差に応じた蓄熱量を有効に利用することができる。
【0059】
さらに、熱負荷温水の循環回路(風呂追い炊き回路6a、暖房温水回路6b)には、ポンプP3,P2が設けられているが、これらポンプP3,P2は、それぞれ、各回路6a,6bの戻り温水の温度に従って、その循環量を設定するように構成されており、回路に求められる温度を維持するように構成されている。
【0060】
以下に上記温水熱源給湯装置300の作動状態を、蓄熱運転状態、放熱運転状態、給湯運転状態、熱負荷運転状態の順に説明する。
1 蓄熱運転状態
この状態は、例えば深夜時間帯等の、給湯、熱負荷需要が無い時間帯に、蓄熱部100aに備えられる蓄熱材hcへの蓄熱を目的として行う運転状態である。
この運転状態にあっては、往路11aに設けられる流量調整弁MV1と流量調整弁MV4を全開又は全開に近い状態とし、温水ポンプ10gを可動状態とする。この時、流量調整弁MV2,MV3は閉状態とする。
この動作状態では、蓄熱貯湯タンク100の熱源温水熱交換器180内を熱源温水が流れ、蓄熱部100aでの蓄熱を完了することができる。
【0061】
2 放熱運転状態
この状態は、基本的に所望の温度の給水を得るために実行される運転状態であり、蓄熱状態にある蓄熱部100aから熱を熱源温水熱交換器180内に流れる温水に与え、蓄熱を有効利用する運転状態である。
この運転状態にあっては、往路11aに設けられる流量調整弁MV1は、得たい暖房水6aや風呂追い炊き水6aの温度等に従って開度調整又は閉状態とされる。
【0062】
2−1 給湯運転状態
給湯に際しては、給湯温は別途指定により特定されている。そして、止水栓30を開栓することで、給湯水の払い出しが可能となる。
この時、出湯流量を検知して、基本的に流量調整弁MV1を閉、蓄熱中なら温水ポンプ10gを停止する。そして、流量調整弁MV4、MV2を給湯温度に応じて開とし指定により特定された給湯温度より高い温水を得る。そして、この貯湯水を払い出し部23から給湯出口17側へ払い出す。細かな出湯温度制御を低温水の混合を行える流量調整弁MV3の開度調整で行う。時間の経過とともに、貯湯タンク出口100fの温度が下がるので、流量調整弁MV3を閉じるとともに、流量調整弁MV4の開度を調整して給湯温度T6を制御する。さらに、貯湯タンク出口100fにおける温度が過度に低下した場合(蓄熱を使い果たした状況)には、流量調整弁MV1の開度調整により、熱源温水と低温水との混合比を調整し、所定の給湯を続行する。
結果、所望の温度の給湯水を給湯に供することができる。
【0063】
この例に示すような潜熱蓄熱材(例えば、融点約70℃のパラフィン)を50リットル備えた蓄熱タンクの温度変化に対する蓄熱量特性を、図7に示した。この図は、蓄熱タンクの温度(℃)を横軸に、蓄熱量(kWh)を縦軸に取ったものである。仮に、低温水の温度を5℃とし、蓄熱タンクが84℃の状態にある場合は、約5.7kWhの低温水への放熱が可能である。温度の低下に従って、蓄熱量は低下するが、潜熱状態での蓄熱量が比較的大きな割合を占めていることが判る。
【0064】
2−2 風呂追い炊き運転状態
この運転状態にあっては、風呂追い炊き回路6a内に備えられる循環ポンプP3を運転するとともに、風呂追い炊き回路6aの戻り温水温度の昇温速度が所定値以下であることを条件として、温水ポンプ10gを運転する。このようにすることで、蓄熱部100aに蓄熱された熱を有効に利用できる。蓄熱を消費した後(この状況が発生する確率はかなり低い)は、熱源温水との熱交換により、風呂追い炊きを行える。
2−3 暖房運転状態
この運転状態にあっては、暖房温水回路6b内に備えられる循環ポンプP2を運転するとともに、温水ポンプ10gを運転する。そして、暖房温水回路6bの戻り温水温度が所定値になるように、温水ポンプ10gの運転・運転停止を制御することで、良好な暖房運転状態を実現できる。蓄熱を消費した後(この状況が発生する確率はかなり低い)は、熱源温水との熱交換により、風呂追い炊きを行える。
【0065】
第二実施の形態
上記の第一実施の形態を踏襲しながら、蓄熱タンクの更なるコンパクト化を図ったのが、第二実施の形態である。図5、図6は、この例の構成を示すものであり、図5は図2に相当する縦断面図を、図6は、この例における蓄熱貯湯タンク330の天部330bに設けられている分配管群301の構成(実線で示す)、さらに、蓄熱貯湯タンク330の底部330aに設けられている分配管群302の構成(破線で示す)を示したものである。
【0066】
この実施の形態においても、基本的には2重筒構造の蓄熱貯湯タンク330を有する構成が採用されており、内筒1001と外筒1002との間に設けられる有底の空間が、蓄熱材hcが配設される蓄熱部100a(蓄熱材収納空間)とされている。そして、この蓄熱部100a内に3種のコイル熱交換器181,181,180が配設されている。
【0067】
但し、この例にあっては、先の例に示すような貯湯タンクは設けられておらず、蓄熱部100aと、蓄熱部100a内に収納されているコイル熱交換器181,181,180が、実質的な貯湯機能を果たすとともに、所望の温度の温水を得る構成となっている。従って、基本的に蓄熱材hcに蓄熱される熱を最大限、有効に利用して、給湯及び熱負荷需要に対応できる構成となっている。
【0068】
図5に示すように、この例にあっても、蓄熱貯湯タンク330の動作制御に係る流体制御機器(流量制御弁MV1、MV2,MV3,MV4,逆止弁36、ポンプ10g、P2,P3、温度T5、T6の検出器、圧力Pの検出器、給湯量F1の検出器)は、蓄熱貯湯タンク330の下側に纏めて配設されている。
【0069】
これら流体制御機器に繋がる配管系等は、内筒1001内の空間を利用して、蓄熱貯湯タンク330の底部330aから天部330bに先ず配策される。そして、3種のコイル熱交換器のコイルに対する分配管群302、301が、蓄熱貯湯タンク330の天部330b及び底部330aに設けられている。
【0070】
また、この例では、先の例で、貯湯タンク100c(図2)の下手側(戻り側)に設けられていた温水ポンプ10gは、流量調整弁MV1の下手側近傍(実質的な貯湯タンクである熱源温水熱交換器180の上手側)に設けられている。
【0071】
図5に示すように、内筒1001、外筒1002間に設けられる蓄熱部100aは、径方向に4層のフィン層500を備えて構成されており、内筒1001側から第1フィン層500a、熱源温水熱交換器180と暖房温水回路6bに接続される熱負荷水熱交換器181が備えられる内側温水路層600a、第2フィン層500b、熱源温水熱交換器180と風呂追い炊き回路6aに接続される熱負荷水熱交換器181が備えられる外側温水路層600b、第3フィン層500c、第4フィン層500dを備えて構成されている。
【0072】
以下、熱源温水、低温水若しくはこれらの混合水が流れる熱源温水熱交換器180に繋がる流路、暖房温水回路6bに接続される熱負荷水熱交換器181に繋がる流路、風呂追い炊き回路6aに接続される熱負荷水熱交換器181に繋がる流路に関して順に説明する。
【0073】
熱源温水、若しくは熱源温水と低温水との混合水が流れる流路
図5に示すように、この流路は、内筒1001内に設けられた上昇管LUを介して、タンクの底部330aから天部330bに上昇してきた流れが、天部330bにおいてT字型とされる分配配管LS1を介して内側温水路層600a及び外側温水路層600bに導かれる。これら両流路層600a,600bには、それぞれ、熱源温水熱交換器180が備えられており、そのコイルを、天部330b側から底部330a側に内部水が流下する。この構成を採用することにより、内部水と、蓄熱材hc及び熱負荷水熱交換器181内を流れる内部水との間で、熱交換が可能な構成が採用されている。
【0074】
さて、蓄熱貯湯タンク330の底部330aにおいて、流路は、径方向外側に導かれる構成が採用されており、第4フィン層500dに対応する底部330a部位に導かれる。この部位には、第4フィン層500dを上下方向鉛直に貫く一対の上昇管LUが設けられており、この上昇管LUを介して、天部330bまで導かれる。そして、天部330bにおいてT時型とされる出口側の合流管LM1を介して、内筒1001内に導かれ、内筒1001内に設けられた下降管LDにより、蓄熱貯湯タンク330の底部330aに導かれる構成とされている。
【0075】
暖房温水回路に接続される熱負荷水熱交換器に繋がる流路
図6に示すように、内筒1001内を上昇してきた流れは、蓄熱貯湯タンク330の天部330bにおいて、径方向に設けられた案内管LG1を介して内筒1001内部位から第4フィン層500dまで導かれる。この第4フィン層500d部位には、鉛直方向に配設される下降管LDが設けられており、流れは、天部330bから底部330aに一旦導かれる。そして、破線で示すように、底部330aに設けられた案内管LG2により第4フィン層500dから内側温水路層600aに導かれる。
【0076】
この内側温水路層600aには、暖房温水回路6bを成す熱負荷水熱交換器181が備えられ、この熱交換器181を介して、底部330aから天部330bに螺旋状に流れが移流される。先にも示したように、内側温水路層600aには、熱源温水熱交換器180も設けられているため、対向流状態で、両者間181,180及び蓄熱材hcとの間で熱交換が可能となっている。
図6に示すように、天部330bに到達した流れは、内側温水路層600aから内筒1001内に到る案内管LG3によりタンク中央側に案内され、以降、下降して蓄熱貯湯タンク330外へ内部水が供給されることとなる。
【0077】
風呂追い炊き回路に接続される熱負荷水熱交換器に繋がる流路
この流路の構成は、先に示した暖房温水の構成と基本的には同様であるが、暖房温水が内側温水流路600aを介して上昇されたのに対して、この場合は、外側温水流路600bを介して上昇される。
さらに詳細に説明すると、図6に示すように、内筒1001内を上昇してきた流れは、蓄熱貯湯タンク330の天部330bにおいて、径方向に設けられた案内管LG4を介して内筒1001内部位から第4フィン層500dまで導かれる。この第4フィン層500d部位には、鉛直方向に配設される下降管LDが設けられており、流れは、天部330bから底部330aに一旦導かれる。そして、底部330aに設けられた案内管LG5により第4フィン層500dから外側温水路層600bに導かれる。この外側温水路層600bには、風呂追い炊き回路6aを成す熱負荷水熱交換器181が備えられ、この熱交換器181を介して、底部330aから天部330bに螺旋状に流れが移流される。先にも示したように、外側温水路層600bにも、熱源温水熱交換器180も設けられているため、対向流状態で、両者181,180間及び蓄熱材hcとの間で熱交換が可能となっている。そして、図6に示すように、天部330bに到達した流れは、外側温水路層600bから内筒1001内に到る案内管LG6によりタンク中央側に案内され、以降、下降して蓄熱貯湯タンク330外へ内部水が供給される。
【0078】
この第二実施の形態にあっても、蓄熱貯湯タンク330の底部330aに設けられる流体制御機器及び配管の接続系統は、第一実施の形態と同様である。また、蓄熱、給湯、風呂追い炊き時及び暖房運転時の運転制御も第一実施形態と同様である。
【0079】
第一、第二の実施形態における各戸別の課金方法に関して説明すると、熱源温水の取り込み、戻しを各戸毎に検出するのは、困難が伴うため、給湯量を検出する給湯量F1の検出結果と、熱負荷水の循環に使用される熱負荷水循環ポンプP2,P3の運転時間とに基づいて、各戸別の課金量を決定することができる。
【0080】
〔別実施の形態〕
以下、本願の別実施の形態に関して説明する。
1 上記の実施の形態にあっては、低温水供給ラインを介して各熱需要家に供給される低温水を予熱水としたが、予熱を行うことなく5〜25℃程度の温度域にある上水をそのまま低温水として供給するものとしてもよい。
2 上記の実施の形態にあっては、補助機として再生式炭酸ガスヒートポンプを使用する例を示したが、この補助機は熱源装置から発生する排ガス等が有する排ガスが有する熱を回収できる機器であれば如何なる機器であってもよい。
3 熱源温水ラインに補給する水に関しては、本願のように予熱水とするほか、低温水供給ラインとは別系統で得られる水としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
熱を供給可能な熱源温水、熱を受熱可能な低温水、或いは、これらの混合水と、蓄熱材とが高効率且つ迅速に熱交換可能で、さらに、所定の熱負荷需要にも、蓄熱状態にある蓄熱材側から高効率且つ迅速に対応できる蓄熱タンクを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本願に係る温水熱源給湯システムの全体構成を示す図
【図2】各戸に備えられる温水熱源給湯装置の構成を示す図
【図3】蓄熱部の詳細構成を示す図
【図4】熱源温水の取り込み及び戻しが可能な配管部材の断面構成を示す図
【図5】温水熱源給湯装置の別構成を示す図
【図6】図5に示す別構成例の配管構造を示す平面図
【図7】蓄熱タンクの温度と蓄熱量との関係を示す図
【符号の説明】
【0083】
1 温水熱源給湯システム
4 熱源温水循環ライン
5 低温水供給ライン
6 熱循環回路
6a 風呂追い焚き回路
6b 暖房温水回路
7 コジェネレーション設備(熱源装置)
100 蓄熱貯湯タンク
100a 蓄熱部(蓄熱材収納空間)
100c 貯湯タンク
10g 温水ポンプ
19 取り込み部
20 戻り部
22 混合部
23 払い出し部
180 コイル熱交換器(熱源温水熱交換器)
181 コイル熱交換器(熱負荷水熱交換器)
300 温水熱源給湯装置
600a 内側温水路層
600b 外側温水路層
1001 内筒
1002 外筒
L 戸別温水循環手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と外筒とを備え、前記内筒と外筒との間に形成される中間筒部を、蓄熱材が収納される有底筒状の蓄熱材収納空間として備えるとともに、
熱源温水、前記熱源温水より低温の低温水若しくは前記熱源温水と低温水との混合水が内部を流れ、内部水とコイル外部に存する前記蓄熱材との間で熱交換を行う第一コイル熱交換器と、
熱負荷温水が内部を流れ、内部水とコイル外部に存する前記蓄熱材との間で熱交換を行う第二コイル熱交換器とを前記蓄熱材収納空間に備え、
前記第一コイル熱交換器、第二コイル熱交換器を成すコイルの外部に位置する前記蓄熱材収納空間に、空間内に収納された前記蓄熱材間における熱移動を促進する伝熱フィンを多数備えた蓄熱タンク。
【請求項2】
前記第一コイル熱交換器及び第二コイル熱交換器を成す前記コイルが前記蓄熱材収納空間内の径方向中間部位に配設され、当該径方向において、前記コイルの内径側及び外径側の両側部位に前記蓄熱材が位置される請求項1記載の蓄熱タンク。
【請求項3】
前記コイルの内径側及び外径側の両側部位に前記伝熱フィンが配設されている請求項2記載の蓄熱タンク。
【請求項4】
前記コイルを上下方向に巻重ねて形成されるコイル群の径方向端面に、アルミニウム若しくは銅製の薄板を配設し、前記薄板に前記伝熱フィンが径方向に伸びる横行状態で配設されている請求項1から3のいずれか一項記載の蓄熱タンク。
【請求項5】
前記第一コイル熱交換器を成すコイル内を流れる内部水と、前記第二コイル熱交換器を成すコイル内を流れる内部水との流れ方向が、蓄熱タンクの上下方向において対向している請求項1から4のいずれか一項記載の蓄熱タンク。
【請求項6】
前記第二コイル熱交換器を複数備え、異なった前記第二コイル熱交換器内を異なった熱負荷温水が流れる構成で、
前記第一コイル熱交換器と前記第二コイル熱交換器とを対として、当該対を成すコイル熱交換器のコイルが上下方向で交互に配設される温水路層を、蓄熱タンクの径方向に複数備え、前記複数の温水路層間に前記伝熱フィンが配設されるフィン層を備えた請求項1から5のいずれか一項記載の蓄熱タンク。
【請求項7】
前記内筒の内部に貯湯タンクを備え、第一コイル熱交換器のコイル終端が、前記貯湯タンクの入口に接続され、蓄熱タンクの上下方向において、前記貯湯タンクの出口が、前記貯湯タンクの入口とは反対側に設けられている請求項1から6のいずれか一項記載の蓄熱タンク。
【請求項8】
前記貯湯タンクの上部空間に前記蓄熱材が収納され、
前記第一コイル熱交換器を成すコイルが、前記貯湯タンクの上部空間に配策され、当該上部空間に収納される前記蓄熱材とコイル内を流れる内部水との間で、熱交換可能に構成されている請求項7記載の蓄熱タンク。
【請求項9】
前記内筒内に、前記第一コイル熱交換器、前記第二コイル熱交換器を成すコイル内に導入される温水を、蓄熱タンクの底部から天部に導く上昇管を設け、
前記熱源温水、前記低温水、前記混合水及び前記熱負荷温水から選択される一種以上の温水の蓄熱タンクへの導入及び蓄熱タンクからの導出が、前記底部において行われる請求項1〜6のいずれか一項記載の蓄熱タンク。
【請求項10】
前記蓄熱材が、前記熱源温水の温度と前記低温水の温度との間の温度で相変化を伴って蓄熱若しくは放熱可能な蓄熱材である請求項1〜9のいずれか一項記載の蓄熱タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−192451(P2007−192451A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10664(P2006−10664)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】