説明

蓄熱式バーナー及び蓄熱式バーナーの制御方法、加熱炉及び均熱炉

【課題】蓄熱式バーナーを用いて低酸素燃焼を行う際に、低酸素燃焼に影響を与えずに燃料ノズルを冷却するとともに急激な燃焼の発生を回避することができ、更に、蓄熱体の過熱を抑えるとともに炉内の温度分布の均一化を図ることができる蓄熱式バーナーを提案する。
【解決手段】蓄熱体32A,32B,33A,33Bを具備する一対のバーナー30A,30B,31A,31Bを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を蓄熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーにおいて、バーナーに燃料ガスを供給するノズル54,55と、バーナーの非燃焼時にノズルに対して空気或いは窒素を供給して冷却するノズル冷却部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式バーナー及び蓄熱式バーナーを具備する均熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用炉の省エネルギー化のために考案された蓄熱式バーナー(リジェネレイティブバーナー)は、蓄熱体を具備した一対のバーナーを炉側壁等に設け、一方のバーナーで燃料ガス等を燃焼させているとき、他方のバーナーから排ガスを蓄熱体を通して排出させることによって蓄熱体を加熱する。そして、数十秒〜数分の間隔でその両バーナーの状態を頻繁に交代させることにより、燃焼と排ガスの排出とが交互に行われるようにし、排ガスにより加熱された蓄熱体を燃焼用空気が通過する際に予熱される。これにより、高い排熱回収効率が達成され、省エネルギー化を図るようにしている。
この蓄熱式バーナーは、圧延処理前の鋼塊を均一に加熱する均熱炉等に適用されており、特に、ステンレス、チタン等を均熱処理する際には、酸化膜の形成を避けるために低酸素状態(低空気比)で蓄熱式バーナーを稼働させる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2000−119741号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、低酸素状態で蓄熱式バーナーを稼働させる際に発生する以下のような問題を解決するには至っていない。まず、バーナーが蓄熱される際に、燃料ノズルが加熱されて酸化することを防止するために、燃料ノズルの周辺に冷却用空気を流して冷却しているが、この冷却用空気が低酸素燃焼に悪影響を与えてしまうという問題がある。また、バーナーが燃焼と蓄熱とを切り替える際に、燃焼空気と排ガスとが混合して急激に燃焼する可能性がある。
また、蓄熱式バーナーでは、空気比の大小に関わらず、以下のような問題が未だに解決されていない。まず、省エネルギー等の理由により、バーナーの運転を一時停止させて、数秒後に運転を再開する場合がある。この際、停止直前まで蓄熱されていたバーナーを運転再開後に再度蓄熱させると、蓄熱体が過熱されて損傷しまう可能性がある。また、2組以上のバーナーを備える均熱炉では、炉の温度が安定すると、一組のバーナー以外の運転を停止することにより、燃焼量を小さく抑えるとともに、燃焼の安定化を図っているが、炉内の温度分布が不均一になってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、蓄熱式バーナーを用いて低酸素燃焼を行う際に、低酸素燃焼に影響を与えずに燃料ノズルを冷却するとともに急激な燃焼等の発生を回避することができ、更に、蓄熱体の過熱を抑えるとともに炉内の温度分布の均一化を図ることができる蓄熱式バーナー及び均熱炉を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る蓄熱式バーナー等では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を加熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーにおいて、バーナーに燃料ガスを供給するノズルと、バーナーの非燃焼時にノズルに対して空気或いは窒素を供給して冷却するノズル冷却部とを備えるようにした。この発明によれば、ノズルが加熱された場合に、空気或いは窒素を条件に応じて選択して供給して冷却することができる。
【0006】
また、バーナーの燃焼が低酸素燃焼の場合には、窒素のみが供給されるものでは、低酸素燃焼時に空気を供給することにより、酸素と一酸化炭素の混合による急激な燃焼の発生を回避することができる。
また、バーナーの燃焼時にバーナーに燃焼空気を供給する燃焼空気管と、バーナーの非燃焼時にバーナーから排ガスを外部に排出する排ガス管と、燃焼空気と排ガスとの混合を防止する混合防止部とを備えるものでは、各バーナーにおいて、燃焼空気管から供給される燃焼空気と排ガス管に吸引される排ガスとが混合して急激な燃焼の発生を回避することができる。
また、防止部が、燃焼空気管に設けられる燃焼空気用流調弁と、排ガス管に設けられる排ガス用流調弁と、燃焼空気用流調弁及び排ガス用流調弁の開閉を制御するインターロック制御部からなり、インターロック制御部が、燃焼空気用流調弁或いは排ガス用流調弁の一方を開放させる際には、他方が完全に閉じていることを条件とするインターロックを行うものでは、燃焼空気用流調弁と排ガス用流調弁の開閉がインターロックされるので、各弁が同時に開放された状態となることを確実に回避することができる。
【0007】
第2の発明は、蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を加熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーの制御方法において、蓄熱式バーナーを一時停止させた後に再稼働させる際には、一時停止直前の各バーナーの燃焼状態を記憶し、記憶された情報に基づいて、各バーナーのいずれを燃焼或いは非燃焼とするかを選択して、再稼働させるようにした。この発明によれば、各バーナーの蓄熱体が、必要以上に過熱されることにより損傷する事態を回避することが可能となる。
また、蓄熱式バーナーの燃焼切り替え時間と、燃焼の切り替えから一時停止までの経過時間を更に記憶し、燃焼切り替え時間と経過時間との差に基づいて、再稼働させるものでは、各バーナーの蓄熱体が、所定時間以上に過熱されることにより損傷する事態を回避することが可能となる。
【0008】
第3の発明は、蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を加熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーを2組以上備える蓄熱式バーナーの制御方法において、2組以上の蓄熱式バーナーのうち、稼働させる蓄熱式バーナーと停止させる蓄熱式バーナーとを選択するとともに、定期或いは不定期に稼働と停止とを交互に切り替えて運転させるようにした。この発明によれば、燃料ガスの使用量を低減することができるとともに、炉内の温度分布を均一のままに維持することが可能となる。
【0009】
第4の発明は、少なくとも一組以上の蓄熱式バーナーを備える加熱炉において、蓄熱式バーナーとして、第1の発明に係る蓄熱式バーナーを備えるようにした。この発明によれば、低酸素燃焼の場合に酸素と一酸化炭素の混合による急激な燃焼の発生を回避でき、低酸素燃焼による熱処理を実現することができる。
【0010】
第5の発明は、少なくとも一組以上の蓄熱式バーナーを備える加熱炉において、蓄熱式バーナーの制御方法として、第2又は第3の発明に係る蓄熱式バーナーの制御方法が用いられるようにした。この発明によれば、蓄熱体の不具合の発生を抑え、また、炉内の温度分布を均一のままに維持しつつ、燃料ガスの使用量を低減させることができる。
【0011】
第6の発明は、鋼材を均一の温度に加熱する均熱処理を行う均熱炉において、第4又第5の発明に係る加熱炉が用いられるようにした。この発明によれば、低酸素燃焼による均熱処理が可能となり、また、均熱処理のランニングコストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。
第1の発明は、蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を加熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーにおいて、バーナーに燃料ガスを供給するノズルと、バーナーの非燃焼時にノズルに対して空気或いは窒素を供給して冷却するノズル冷却部とを備えるようにした。これにより、ノズルが加熱された場合に、空気或いは窒素を条件に応じて選択して供給して冷却することができる。
【0013】
また、バーナーの燃焼が低酸素燃焼の場合には、窒素のみが供給されるようにしたので、低酸素燃焼時に空気を供給することにより、酸素と一酸化炭素の混合による急激な燃焼の発生を回避することができる。
また、バーナーの燃焼時にバーナーに燃焼空気を供給する燃焼空気管と、バーナーの非燃焼時にバーナーから排ガスを外部に排出する排ガス管と、燃焼空気と排ガスとの混合を防止する混合防止部とを備えるようにしたので、各バーナーにおいて、燃焼空気管から供給される燃焼空気と排ガス管に吸引される排ガスとが混合して急激な燃焼の発生を回避することができる。
また、防止部が、燃焼空気管に設けられる燃焼空気用流調弁と、排ガス管に設けられる排ガス用流調弁と、燃焼空気用流調弁及び排ガス用流調弁の開閉を制御するインターロック制御部からなり、インターロック制御部が、燃焼空気用流調弁或いは排ガス用流調弁の一方を開放させる際には、他方が完全に閉じていることを条件とするインターロック制御を行うようにしたので、燃焼空気用流調弁と排ガス用流調弁の開閉がインターロックされるので、各弁が同時に開放された状態となることを確実に回避することができる。
【0014】
第2の発明は、蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を加熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーの制御方法において、蓄熱式バーナーを一時停止させた後に再稼働させる際には、一時停止直前の各バーナーの燃焼状態を記憶し、記憶された情報に基づいて、各バーナーのいずれを燃焼或いは非燃焼とするかを選択して、再稼働させるようにした。これにより、各バーナーの蓄熱体が、必要以上に過熱されることにより損傷する事態を回避することが可能となる。
また、蓄熱式バーナーの燃焼切り替え時間と、燃焼の切り替えから一時停止までの経過時間を更に記憶し、燃焼切り替え時間と経過時間との差に基づいて、再稼働させるようにしたので、各バーナーの蓄熱体が、所定時間以上に過熱されることにより損傷する事態を回避することが可能となる。
【0015】
第3の発明は、蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの蓄熱体を加熱して、蓄熱体を通過してバーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーを2組以上備える蓄熱式バーナーの制御方法において、2組以上の蓄熱式バーナーのうち、稼働させる蓄熱式バーナーと停止させる蓄熱式バーナーとを選択するとともに、定期或いは不定期に稼働と停止とを交互に切り替えて運転させるようにした。これにより、燃料ガスの使用量を低減することができるとともに、炉内の温度分布を均一のままに維持することが可能となる。
【0016】
第4の発明は、少なくとも一組以上の蓄熱式バーナーを備える加熱炉において、蓄熱式バーナーとして、第1の発明に係る蓄熱式バーナーを備えるようにした。これにより、低酸素燃焼の場合に酸素と一酸化炭素の混合による急激な燃焼の発生を回避でき、低酸素燃焼による熱処理を実現することができる。
【0017】
第5の発明は、少なくとも一組以上の蓄熱式バーナーを備える加熱炉において、蓄熱式バーナーの制御方法として、第2又は第3の発明に係る蓄熱式バーナーの制御方法が用いられるようにした。これにより、蓄熱体の不具合の発生を抑え、また、炉内の温度分布を均一のままに維持しつつ、燃料ガスの使用量を低減させることができる。
【0018】
第6の発明は、鋼材を均一の温度に加熱する均熱処理を行う均熱炉において、第4又第5の発明に係る加熱炉が用いられるようにした。これにより、低酸素燃焼による均熱処理が可能となり、また、均熱処理のランニングコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の均熱炉及び蓄熱式バーナーの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、均熱炉10のシステム構成を示す概念図である。
均熱炉10は、四側面及び床面を耐熱性コンクリート等の耐火物で形成された炉壁で囲まれた炉体12と、炉体12の上方に形成された開口を開閉する炉蓋20とを備える。
炉体12の側壁には、2組の蓄熱式バーナー(リジェネレイティブバーナー:regenerative burner)30,31が備えられる。蓄熱式バーナー30,31は、エアーとガスの廃熱を利用して加熱圧送するバーナーであって、それぞれ内部に蓄熱体32A,32B,33A,33Bを備える一対のバーナー(30A,30B及び31A,31B)から構成される。なお、蓄熱体32A,32B,33A,33Bは、ハニカム状に形成されたセラミックスから構成される。
そして、各バーナー30A,30B,31A,31Bには、燃料ガスを供給する燃料ガスライン50及び燃焼空気を供給する燃焼空気ライン60が連結される。なお、燃焼空気は、給気ファン64から蓄熱体32A,32B,33A,33Bを通過して各バーナー30A,30B,31A,31Bに供給されように配管される。これにより、各バーナー30A,30B,31A,31Bは、供給された燃料ガスと燃焼空気とを混合して燃焼させるとともに、燃料ガスライン50に設けられた燃料ガス用流調弁52A,52B,53A,53B及び燃焼空気ライン60に設けられた燃焼空気用流調弁62A,62B,63A,63Bの流量調整によって燃焼状態及び炉内温度を制御する。
また、各バーナー30A,30B,31A,31Bには、炉内で発生した排ガスを排気する排ガスライン70が連結され、炉内の排ガスが蓄熱体32A,32B,33A,33Bを通過して排気ファン74に吸引されて、外部に放出されるように配管される。なお、排ガスライン70には、排ガス用流調弁72A,72B,73A,73Bが設けられる。
なお、炉体12には、炉内の排ガスを各バーナー30A,30B,31A,31Bを通さずに、外部に排気する排気バイパス80が設けられ、排ガスを冷却する排ガスクーラー82及びバイパス流調弁84を介して、排気ファン74の直前で排ガスライン70に連結される。
また、炉内には、炉内の圧力を計測する炉圧センサ及び炉温センサ(ともに不図示)が設けられ、その計測情報は、制御部90に送られる。そして、制御部90は、各ファン64,74、各流調弁52,53,62,63,72,73,84、及び各バーナー30A,30B,31A,31Bに指令して、均熱炉10の運転を制御する。
【0020】
図2は、各バーナー30A,30B,31A,31Bの詳細構成を示す断面図である。
上述したように、各バーナー30A,30B,31A,31Bは、それぞれ炉体12の側壁に設置されるとともに、燃料ガスライン50、燃焼空気ライン60、排ガスライン70が連結される。図1では省略したが、燃料ガスライン50は、各バーナー30A,30B,31A,31Bに連結される直前で2つに分岐して、一方はバーナー30A,30B,31A,31Bに連結され、他方は更に分岐して炉体12に連結される。そして、連結部分には、それぞれ燃料ガスを噴射する噴射ノズル54,55が設けられる。各バーナー30A,30B,31A,31Bに連結される噴射ノズル54は、噴射した燃料ガスが燃焼空気と混合されるので、火炎温度が高く、窒素酸化物NOが多く発生するという特徴があり、主に炉内温度が低い場合に用いられる。一方、炉体12に連結される噴射ノズル55は、炉内に直接燃料ガスを噴射するので、燃焼空気と混合しづらく、しがたって、火炎温度が低く、窒素酸化物NOが少ないという特徴があり、主に炉内温度が高い場合に用いられる。なお、噴射ノズル54,55からの燃料ガスの噴射を切り替えるために、燃料ガスライン50の分岐先には、流調弁56,57が設けられる。
【0021】
また、噴射ノズル54,55には、噴射ノズル54,55自体を空冷する気体を供給するノズル冷却ライン40が連結される。噴射ノズル54,55は、ステンレス鋼等により形成されるが、約1300℃に加熱される炉内では、酸化されて損傷してしまう。そのため、ノズル冷却ライン40から噴射ノズル54,55に向けて気体を供給することにより、冷却して、酸化を防止するものである。なお、バーナー30A,30B,31A,31Bの燃焼時には、噴射ノズル54,55に供給される燃料ガスにより冷却されるので、非燃焼(蓄熱)時にのみ、ノズル冷却ライン40から気体を供給して、噴射ノズル54,55を冷却する。
そして、ノズル冷却ライン40には、冷却用空気を供給する冷却用空気ライン41と冷却用窒素を供給する冷却用窒素ライン42が連結され、各ライン41,42には、それぞれ流調弁43,44が設けられる。これにより、噴射ノズル54,55を冷却する気体として、空気或いは窒素を用いることができる。
【0022】
また、燃焼空気ライン60及び排ガスライン70は、それぞれ一端連結された後に、各バーナー30A,30B,31A,31Bの後端に連結されるように配管される。そして、燃焼空気ライン60及び排ガスライン70に設けられる流調弁62,63,72,73は、制御部90内のインターロック制御部94に連結され、弁の開閉が制御される。
【0023】
次に、均熱炉10及び蓄熱式バーナー30,31の作用について説明する。
まず、炉内にステンレス等の鋼材が搬入されると、制御部90からの指令に基づいて、燃料ガス用流調弁52A,53A及び燃焼空気用流調弁62A,63Aが開放されて、バーナー30A,31Aで燃焼させる。この際、燃料ガス用流調弁52B,53B及び燃焼空気用流調弁62B,63Bは、閉鎖される。
そして、バーナー30A,31Aを燃焼させることにより、炉内が加熱され、その排ガスは、バーナー30B,31Bに吸引されて、蓄熱体32B,33Bを加熱する。バーナー30B,31Bに吸引された排ガスは、蓄熱体32B,33Bにより熱を奪われて、約200℃程度まで冷やされて、外部に放出される。この際、排ガス用流調弁72B,73Bは開放され、一方、排ガス用流調弁72A,72A及びバイパス流調弁84は封鎖される。
そして、設定時間T(例えば、30秒)が経過すると、バーナー30A,31Aからバーナー30B,31Bに燃焼を切り替えられる。すなわち、燃料ガス用流調弁52A,53A及び燃焼空気用流調弁62A,63Aを封鎖し、一方、燃料ガス用流調弁52B,53B及び燃焼空気用流調弁62B,63Bを開放する。また、排ガス用流調弁72A,73Aを開放し、排ガス用流調弁72B,73Bを封鎖する。そして、バーナー30B,31Bに供給される燃焼用空気は、蓄熱体32B,33Bを通過する際に余熱されて、炉温に近い温度まで上昇させられる。一方、バーナー30A,31Aは、排ガスを吸引し、蓄熱体32A,33Aを過熱する。
このような燃焼サイクルを繰り返し継続することにより、炉内が加熱される。
【0024】
均熱炉10の炉内温度は、上述した燃焼サイクルを繰り返すうちに徐々に上昇し、設定温度である約1300℃まで加熱される。
この際、炉内温度が低いうちは、噴射ノズル54から噴射させる燃料ガスの量を噴射ノズル55に比べて多くし、炉内温度が上昇するに連れて、噴射ノズル55から噴射させる燃料ガスの量を増やしつつ、噴射ノズル54から噴射させる燃料ガスの量を減らしていく。これにより、窒素酸化物NOの発生量を抑えるようにしている。
また、炉内温度が低いうちは、空気比が約1.1程度の燃焼空気が炉内に供給される。空気比(空気過剰率ともいう)とは、燃焼に際して理論上必要な空気に対する、実際に燃焼に際して供給される空気の比(割合)である。なお、空気比の調整は、流調弁62,63の開放角を制御すること等により行われる。
そして、炉内温度が上昇するに連れて、空気比を徐々に下げ、最終的には、空気比を約0.7〜0.8程度にまで低下させる。空気比が1.0以下の場合は、炉内の燃焼は、いわゆる不完全燃焼(低空気比燃焼或いは低酸素燃焼)となるが、ステンレス等の鋼材の表面に形成される酸化層を最低限に抑えることができるので、製品のスケールロスが少なくなるという利点がある。
【0025】
さて、上述したように、燃焼サイクル中は、非燃焼(蓄熱)のバーナー30A,30B,31A,31Bの噴射ノズル54,55が加熱されて酸化しないように、ノズル冷却ライン40から噴射ノズル54,55に向けて気体が供給される。その気体としては、通常は、空気が用いられる。空気の組成(体積比)は、窒素78%、酸素21%のほか、アルゴン・二酸化炭素・ネオン・ヘリウム・クリプトン・キセノンなどを微量に含んでいる。
しかしながら、炉内の燃焼は、燃焼サイクルが進むにつれて、低空気比燃焼に移行していため、噴射ノズル54,55の周辺からノズル冷却用空気が炉内に流れ込むと、排ガス中の一酸化炭素COとノズル冷却用空気中の酸素Oとが混ざり、急激な燃焼が発生する可能性がある。
そのため、炉内の燃焼が低空気比燃焼(空気比1.0未満)に移行した際には、流調弁43,44を切り替えて、噴射ノズル54,55に向けて窒素Nを供給して、急激な燃焼の発生を回避する。なお、通常燃焼(空気比1.0以上)の場合であって、ノズル冷却用気体として、窒素を用いても問題ないが、窒素は、高価であるため、ランニングコストを考慮して、空気比1.0を境に、空気と窒素とを切り替えるようにすることが好ましい。
【0026】
同様に、炉内の燃焼が低空気比燃焼(空気比1.0未満)に移行した際には、各バーナー30A,30B,31A,31Bの後端においても、急激な燃焼が発生する可能性が生じる。すなわち、通常燃焼時には問題とならないが、燃焼空気ライン60に設けられた流調弁62,63と排ガスライン70の流調弁72,73との切り替え時に、各弁が同時に開放された瞬間に急激な燃焼が発生する可能性がある。
このため、流調弁62,63,72,73をインターロック制御部94に連結することにより、例えば、流調弁62,63が完全に閉っていないときは、流調弁72,73を動かないように制御する。これにより、低空気比燃焼時に、各バーナー30A,30B,31A,31Bにおいて急激な燃焼の発生を回避することができる。
【0027】
図3は、蓄熱式バーナー30,31の運転状態を示すタイムチャートである。
均熱炉10は、炉内温度が設定温度である約1300℃まで加熱された後も燃焼サイクルを繰り返して、設定温度を維持しつつ、鋼材を加熱し続ける。
このように、炉内温度を維持する運転に移行した後は、炉内の余熱を利用することができるので、各バーナー30A,30B,31A,31Bに供給される燃料ガスの供給量を減らし、燃焼(火炎)を小さくする。更には、各バーナー30A,30B,31A,31Bの燃焼を一時停止させて、数秒後(例えば、20秒)に再稼働させる(すなわち、途中に小休止を入れる)ことにより、燃料ガスの消費量を抑えている。
しかしながら、途中で小休止を入れながら運転を行うと、蓄熱体32,33を過熱させて損傷させてしまう可能性がある。すなわち、例えば、バーナー30A,31Aが燃焼中(バーナー30B,31Bは、蓄熱(非燃焼)中)に、燃焼運転を一時停止させて、数秒後にバーナー30A,31Aを再び燃焼させるように再稼働させた場合には、加熱された蓄熱体32B,33Bが更に加熱され、設定時間Tよりも長く加熱されてしまう可能性がある。このため、蓄熱体32,33が過熱して損傷する不具合が発生してしまう。
そのため、各バーナー30A,30B,31A,31Bの運転状態(燃焼あるいは非燃焼(蓄熱))を制御部90のメモリ92に記憶させ、燃焼運転を一時停止させた後に再稼働させる際には、メモリ92に記憶された情報に基づいて、一時停止直前に燃焼中であったバーナーは非燃焼とし、逆に蓄熱(非燃焼)中であったバーナーを燃焼させるようにして、燃焼運転を再稼働させようにする。これにより、蓄熱体32,33が設定時間T以上に加熱されて、損傷する不具合を回避することができる。
また、他の方法として、各バーナー30A,30B,31A,31Bの運転状態をメモリ92に記憶させるとともに、各バーナー30A,30B,31A,31Bの燃焼切り替える時間(上述した設定時間)Tと、燃焼の切り替えから一時停止までの経過時間Taを更に記憶させる。
そして、例えば、各バーナー30A,30B,31A,31Bの燃焼切り替え時間Tが30秒の場合(T=30秒)に、燃焼の切り替えから10秒経過後に各バーナーの燃焼を一時停止させた場合(Ta=10秒)には、各バーナー30A,30B,31A,31Bを再稼働させる時には、その直後の燃焼サイクルにおける燃焼切り替え時間を20秒(T−Ta=20秒)に変更させるようにする。そして、その後は、通常通り、30秒毎に燃焼を切り替えるように運転する。
このようにして、蓄熱体32,33が設定時間(燃焼切り替え時間)T以上に加熱されることを回避し、蓄熱体32,33の過熱に起因する不具合の発生を抑えることができる。
なお、上述した説明では、理解しやすいように、蓄熱式バーナー30,31の燃焼サイクルが同一のタイミングで行われているように説明したがが、実際には、図3示すように、各蓄熱式バーナー30,31の燃焼サイクルの位相をずらしている。これは、蓄熱式バーナー30,31の燃焼の切り替えが同じタイミングであると、炉内温度が低い場合には、燃焼の切り替えの際に炉内圧力が大きく変化してしまうため、燃焼サイクルの位相をずらすことにより、炉内圧力の変動を小さく抑えるようにしているものである。
【0028】
ところで、2組の蓄熱式バーナー30,31を備える均熱炉10では、上述したように、同時に2組の蓄熱式バーナー30,31を小休止させながら運転する場合に限らず、いずれか一方の蓄熱式バーナー30(或いは31)の運転を完全に停止させることにより、燃料ガスの消費量を抑えるとともに、燃焼の安定化を図ることが従来から行われている。すなわち、同時に2組の蓄熱式バーナー30,31に供給する燃料ガスの流量を減らすと、燃焼が不安定になりやすいため、例えば、蓄熱式バーナー31の運転を停止して、蓄熱式バーナー30のみを燃焼させるようにするものである。
しかしながら、蓄熱式バーナー30(或いは31)のみを燃焼させると、略均一であった炉内の温度分布が変化し、炉内に置かれたステンレス等の鋼材を均一に加熱することができなくなる場合がある。そのため、2組の蓄熱式バーナー30,31のうち、停止させる蓄熱式バーナー30(或いは31)を交互に切り替える、いわゆる間引き運転を行うようにする。
図4は、蓄熱式バーナー30,31を間引き運転する場合の運転状態を示すタイムチャートである。図4に示すように、まず、蓄熱式バーナー31を休止させ、蓄熱式バーナー30の各バーナー30A,30Bを交互に燃焼(蓄熱)させる。その後、蓄熱式バーナー30を休止させて、蓄熱式バーナー31の各バーナー31A,31Bを交互に燃焼(蓄熱)させるようにする。なお、図4は、各蓄熱式バーナー30,31のそれぞれが1回の燃焼サイクルを行う場合であるが、それぞれ複数回繰り返したり、蓄熱式バーナー30,31毎に繰り返す燃焼サイクルの回数を変えたりしてもよい。或いは、定期的ではなく、炉内温度の状態を監視しながら不定期に間引き運転を行うようにしてもよい。
このように、間引き運転を行うことにより、燃料ガスの消費量低減と燃焼の安定化を図るとともに、略均一となっている炉内の温度分布を維持し続けることが可能となる。
なお、蓄熱式バーナー30,31を交互に燃焼させる間引き運転を行う場合であっても、上述したような、途中に小休止を入れる運転(すなわち、蓄熱式バーナー30,31を同時に停止させる)を行うことも可能である。
【0029】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】均熱炉のシステム構成を示す概念図である。
【図2】蓄熱式バーナーを示す断面図である。
【図3】蓄熱式バーナーの運転状態を示すタイムチャートである。
【図4】蓄熱式バーナーを間引き運転させる場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10…均熱炉(加熱炉)
30,31…バーナー
30(30A,30B),31(31A,31B)…バーナー
32(32A,32B),33(33A,33B)…蓄熱体
40…冷却ライン(ノズル冷却部)
54,55…ノズル
60…燃焼空気ライン(燃焼空気管)
70…排ガスライン(排ガス管)
72,73…用流調弁(混合防止部)
94…制御部(混合防止部)
T…時間(燃焼切り替え時間)
Ta…経過時間




【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの前記蓄熱体を加熱して、該蓄熱体を通過して前記バーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーにおいて、
前記バーナーに燃料ガスを供給するノズルと、前記バーナーの非燃焼時に前記ノズルに対して空気或いは窒素を供給して冷却するノズル冷却部と、を備えることを特徴とする蓄熱式バーナー。
【請求項2】
前記バーナーの燃焼が低酸素燃焼の場合には、窒素のみが供給されることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱式バーナー。
【請求項3】
前記バーナーの燃焼時に該バーナーに前記燃焼空気を供給する燃焼空気管と、前記バーナーの非燃焼時に該バーナーから排ガスを外部に排出する排ガス管と、前記燃焼空気と前記排ガスとの混合を防止する混合防止部と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄熱式バーナー。
【請求項4】
前記防止部は、前記燃焼空気管に設けられる燃焼空気用流調弁と、前記排ガス管に設けられる排ガス用流調弁と、前記燃焼空気用流調弁及び前記排ガス用流調弁の開閉を制御するインターロック制御部からなり、
前記インターロック制御部は、前記燃焼空気用流調弁或いは前記排ガス用流調弁の一方を開放させる際には、他方が完全に閉じていることを条件とするインターロックを行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の蓄熱式バーナー。
【請求項5】
蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの前記蓄熱体を加熱して、該蓄熱体を通過して前記バーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーの制御方法において、
前記蓄熱式バーナーを一時停止させた後に再稼働させる際には、一時停止直前の前記各バーナーの燃焼状態を記憶し、記憶された情報に基づいて、前記各バーナーのいずれを燃焼或いは非燃焼とするかを選択して、再稼働させることを特徴とする蓄熱式バーナーの制御方法。
【請求項6】
前記蓄熱式バーナーの燃焼切り替え時間と、燃焼の切り替えから一時停止までの経過時間を更に記憶し、前記燃焼切り替え時間と前記経過時間との差に基づいて、再稼働させることを特徴とする請求項5に記載の蓄熱式バーナーの制御方法。
【請求項7】
蓄熱体を具備する一対のバーナーを交互に燃焼させつつ、非燃焼のバーナーの前記蓄熱体を加熱して、該蓄熱体を通過して前記バーナーに供給される燃焼空気を余熱する蓄熱式バーナーを2組以上備える蓄熱式バーナーの制御方法において、
前記2組以上の蓄熱式バーナーのうち、稼働させる前記蓄熱式バーナーと停止させる蓄熱式バーナーとを選択するとともに、定期或いは不定期に稼働と停止とを交互に切り替えて運転させることを特徴とする蓄熱式バーナー制御方法。
【請求項8】
少なくとも一組以上の蓄熱式バーナーを備える加熱炉において、
前記蓄熱式バーナーとして、請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の蓄熱式バーナーを備えることを特徴とする加熱炉。
【請求項9】
少なくとも一組以上の蓄熱式バーナーを備える加熱炉において、
前記蓄熱式バーナーの制御方法として、請求項5から請求項7のうちいずれか一項に記載の蓄熱式バーナーの制御方法が用いられることを特徴とする加熱炉。
【請求項10】
鋼材を均一の温度に加熱する均熱処理を行う均熱炉において、
請求項8又は請求項9に記載の加熱炉が用いられることを特徴とする均熱炉。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−263474(P2007−263474A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89672(P2006−89672)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】