説明

蓄熱組成物

【課題】優れた蓄熱性、透明性を示し、潜熱蓄熱材の漏洩がない皮膜を形成できる蓄熱組成物を提供する。
【解決手段】本発明の蓄熱組成物は、(A)(b)潜熱蓄熱材が内包された蓄熱カプセル、(X)結合材を含む蓄熱組成物であって、(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体から形成されたものであり、(X)結合材が、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境における快適性が問われる中、建築材料や車輌等の内装材、空調システム、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等には、外気温等の温度変化に対して温度調節機能を有する潜熱蓄熱材を含有する材料が提案されている。
【0003】
潜熱蓄熱材は、物質が固体から液体に相変化する時に熱を蓄え(蓄熱)、液体から固体に相変化する時に熱を放出(放熱)するという性質を利用し、蓄熱・放熱させるものである。このような潜熱蓄熱材を各種材料に適用する場合、潜熱蓄熱材は融解時に液状化し漏れ出してしまうため、潜熱蓄熱材をそのまま用いることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題の解決策として、潜熱蓄熱材をカプセル化、該カプセルをバインダー等で固定化する方法等が挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献1では、蓄熱材を内包するマイクロカプセルを樹脂内に含有し、該マイクロカプセルの皮膜が熱硬化性の尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂皮膜であることを特徴とする蓄熱性樹脂組成物が開示されている。
しかし、マイクロカプセルの皮膜に用いられているメラミンホルマリン樹脂は、硬い性質を有する反面、脆いという性質を有する。したがって、マイクロカプセルを樹脂と混練・攪拌した場合、カプセルが破砕しやすく、蓄熱材が漏洩しやすいという問題がある。
さらに、蓄熱材とメラミンホルマリン樹脂との相溶性は好ましいとはいえず、該マイクロカプセルを樹脂内に含有した蓄熱性樹脂組成物から形成される皮膜は、蓄熱材が漏洩しやすいおそれがあり、優れた蓄熱性を得ることは困難な場合がある。また、前記蓄熱性樹脂組成物から形成される皮膜は、透明性に欠けるものとなってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開2005−023229号公報
【0007】
最近では、建築材料や車輌等の内装材をはじめ、蓄熱材料の使用用途・分野が多岐に亘っている。そのため、蓄熱性、漏洩性等の性能はもちろんのこと、いかなる材料にでも適用できるよう、透明性を有する蓄熱材料への要望も高まってきている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体から形成された潜熱蓄熱材が内包された蓄熱カプセルと、(X)(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有する結合材、を含む蓄熱組成物が、優れた蓄熱性、優れた透明性を示し、潜熱蓄熱材の漏洩がない皮膜を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.(A)(b)潜熱蓄熱材が内包された蓄熱カプセル、
(X)結合材、
を含む蓄熱組成物であって、
(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体から形成されたものであり、
(X)結合材が、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有することを特徴とする蓄熱組成物。
2.(A)蓄熱カプセルが、
(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体
(b)潜熱蓄熱材、
(c)油溶性重合開始剤、
(d)界面活性剤、
(e)水、を混合して懸濁液を作製し、
該懸濁液中の液滴の平均粒子径が0.01μm〜10μmとなるように分散させ、
(a−1)成分の結晶化温度よりも高い温度で懸濁重合し、重合後、該結晶化温度よりも低い温度まで冷却して得られたものであることを特徴とする1.に記載の蓄熱組成物。
3.(A)(b)潜熱蓄熱材が内包された蓄熱カプセル、
(X)結合材、
からなる蓄熱組成物であって、
(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−3)架橋性単量体を含む単量体群の重合体から形成されたものであり、
(X)結合材が、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有することを特徴とする蓄熱組成物。
4.(A)蓄熱カプセルが、
(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(a−3)架橋性単量体、
(b)潜熱蓄熱材、
(c)油溶性重合開始剤、
(d)界面活性剤、
(e)水、を混合して懸濁液を作製し、
該懸濁液中の液滴の平均粒子径が0.01μm〜10μmとなるように分散させ、
(a−1)成分の結晶化温度よりも高い温度で懸濁重合し、重合後、該結晶化温度よりも低い温度まで冷却して得られたものであることを特徴とする3.に記載の蓄熱組成物。
5.カプセル壁を構成する重合体を形成する単量体において、(a−1)成分の含有量が、単量体全量の20〜60重量%であることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
6.カプセル壁を構成する重合体を形成する単量体において、(a−2)成分の含有量が、単量体全量の40重量%以上であることを特徴とする1.から5.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
7.結合材(X)を構成する重合体を形成する単量体において、(a−2)成分の含有量が、単量体全量の10重量%以上であることを特徴とする1.から6.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
8.(a−1)成分の結晶化温度が40℃以上であることを特徴とする1.から7.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
9.(A)蓄熱カプセル中に、潜熱蓄熱材が40〜70重量%内包されていることを特徴とする1.から8.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
10.(A)蓄熱カプセルの平均粒子径が0.01μm〜10μmであることを特徴とする1.から9.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
11.(b)潜熱蓄熱材が、n−パラフィンであることを特徴とする1.から10.のいずれかに記載の蓄熱組成物。
12.1.から11.のいずれかに記載の蓄熱組成物によって形成された皮膜を含む建材。
13.1.から11.のいずれかに記載の蓄熱組成物によって形成された皮膜を含む保温シート。
14.1.から11.のいずれかに記載の蓄熱組成物によって形成された皮膜を含む結露防止シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓄熱組成物は、優れた蓄熱性、優れた透明性を有するとともに、蓄熱カプセルから潜熱蓄熱材が漏れることなく、潜熱蓄熱材の保持機能に優れた蓄熱体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の蓄熱組成物は、(A)(b)潜熱蓄熱材(以下「(b)成分」ともいう。)が内包された蓄熱カプセル(以下「(A)成分」ともいう。)、(X)結合材(以下「(X)成分」ともいう。)、を含む蓄熱組成物であって、
(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体(以下「(a−1)成分」ともいう。)、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(以下「(a−2)成分」ともいう。)を含む単量体群の重合体から形成されたものであり、
(X)結合材が、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明では、特に、(A)成分のカプセル壁として、(a−1)成分を含むことによって、(A)成分から潜熱蓄熱材の漏洩を防止し、(A)成分のカプセル壁及び(X)成分の両方に(a−2)成分が含まれることにより、蓄熱体の透明性を付与できるものである。
【0014】
<(A)成分>
(A)成分のカプセル壁は、(a−1)炭素数が12以上(好ましくは炭素数が16以上30以下、さらに好ましくは炭素数が18以上22以下)のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満(好ましくは炭素数が5以上10以下)のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体から形成されたものである。
【0015】
(a−1)成分としては、例えば、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち1種または2種以上を用いることができる。(a−1)成分は、潜熱蓄熱材によってカプセル壁が可塑化されることを防止し、カプセル同士の凝集を防止する成分として作用する。
炭素数が12未満であれば、潜熱蓄熱材によるカプセル壁の可塑化が防止できず、カプセル同士の凝集が起こってしまう。
【0016】
(a−1)成分の含有量は、特に限定されないが、カプセル壁を構成する重合体を形成する単量体全量の20重量%〜60重量%、さらには30重量%〜50重量%であることが好ましい。(a−1)成分が少なすぎると、潜熱蓄熱材の漏洩を防止することが困難である。(a−1)成分が多すぎると、カプセル壁を構成する単量体のうち、(a−2)成分の含有量が少なくなるため、透明性を付与することが困難となる。
【0017】
(a−1)成分を重合して得られる重合体の結晶化温度は、40℃以上、さらには40℃〜90℃、さらには45℃〜70℃であることが好ましい。このような結晶化温度であれば、実用レベルで本発明の効果が得られるため好ましい。結晶化温度が低すぎると、常温で軟化し、カプセル同士が凝集する場合がある。
なお、結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC220CU:セイコーインスツルメンツ株式会社製)にて、昇温速度10℃/分で測定した値である。
【0018】
(a−2)成分としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち1種または2種以上を用いることができる。(a−2)成分は、後述する(X)成分中の(a−2)成分との組み合わせにより、蓄熱体に透明性を付与することができる成分である。さらに、蓄熱組成物中においては、蓄熱カプセルの優れた分散性、貯蔵安定性に寄与することができる成分である。炭素数が4未満である場合、たとえ(a−1)成分を組み合わせたとしても、透明性を付与することが困難であり、潜熱蓄熱材の漏洩を防止することが困難である。炭素数が12以上である場合、透明性を付与することが困難である。
【0019】
(a−2)成分の含有量は、特に限定されないが、カプセル壁を構成する重合体を形成する単量体全量の40重量%以上、さらには55重量%〜85重量%であることが好ましい。(a−2)成分が少なすぎると、透明性を付与することが困難となる。(a−2)成分が多すぎると、カプセル壁を構成する単量体のうち、(a−1)成分の含有量が少なくなるため、潜熱蓄熱材の漏洩を防止することが困難な場合がある。
【0020】
さらに(A)成分のカプセル壁としては、(a−3)架橋性単量体(以下「(a−3)成分」ともいう。)を含むことが好ましい。
(a−3)成分を用いることにより、カプセル壁に架橋ネットワークが形成され、カプセル壁がより強靭となり、混練・攪拌による安定性に優れ、カプセル同士が凝集され難くなる。さらにカプセル壁の結晶化温度以上の領域における安定性を向上させることができる。
【0021】
(a−3)成分としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有するモノマーが挙げられ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラブロモピスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
(a−3)成分としては、特に、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレートから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、このなかでも特に、ポリエチレングリコールジメタクリレートのエチレンオキサイド付加数が4以上のものが好ましい。
このような(a−3)成分は、親水性が高く、カプセル粒子表面で効率良く架橋するため、得られたカプセルは優れた貯蔵安定性を示すことができる。疎水性が高い架橋性単量体を用いた場合、架橋性単量体がカプセル粒子内部に取りこまれた状態で架橋するため、貯蔵安定性を有するカプセルを得ることは、難しい場合がある。
【0023】
(a−3)成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されず、カプセル壁を構成する単量体全量に対し、0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、さらには0.3重量%以上20重量%以下、さらには0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
【0024】
さらに本発明では、(a−1)成分、(a−2)成分、(a−3)成分の他に、本発明の効果を損なわない程度で必要に応じ、他の単量体を共重合することもできる。
このようなモノマーとしては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの低級アルキル基含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー;
アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、N−tブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等などのアミン含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリルモノマー;
アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリルモノマー;
グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー;
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、及びブタンジオールアクリレートアセチルアセテートなどのカルボニル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル等が挙げられる。
【0025】
本発明では、特に、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが含まれていることが好ましい。カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーの含有量としては、カプセル壁を構成する単量体全量に対し、0.1重量%以上10重量%以下、さらには0.2重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明で用いる(b)潜熱蓄熱材((b)成分)としては、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等特に限定されないが、本発明では特に、有機潜熱蓄熱材を用いることが好ましい。
【0027】
有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらの蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
本発明では、特に脂肪族炭化水素がカプセル壁を形成する単量体との相溶性に優れるため、カプセル内に高含有量の潜熱蓄熱材を内包することができ、また、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。
【0029】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−デカン(融点−30℃)、n−ウンデカン(融点−25℃)、n−ドデカン(融点−8℃)、n−トリデカン(融点−5℃)、n−テトラデカン(融点8℃)、n−ペンタデカン(融点10℃)、n−ヘキサデカン(融点18℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるパラフィン等が挙げられる。
【0030】
本発明では特に、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン等のn−パラフィンを用いることが好ましい。
【0031】
本発明の蓄熱カプセルの製造は、特に限定されず、公知の方法で製造すればよい。本発明では、(a−1)成分、(a−2)成分(必要に応じ、(a−3)成分、他の単量体)と(b)成分等を混合し、重合を行うことによって、潜熱蓄熱材を内包した蓄熱カプセルを、簡便に製造することができる。
重合方法としては、特に限定されないが、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法等の一般的な重合方法を用いることができ、必要に応じ、公知の開始剤、乳化剤、高分子分散剤、溶媒、重合抑制剤、pH調整剤等を混合して得ることができる。
【0032】
開始剤としては、油溶性重合開始剤、水溶性重合開始剤等が挙げられ、特に限定されることなく、使用することができる。
例えば、油溶性重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2、2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
また、水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤等が挙げられる。
また、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
【0033】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイソデシル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
高分子分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等、また、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖を含有する化合物等が挙げられる。
アルキレンオキサイド鎖を含有する化合物としては、上述した単量体の重合体や、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等に、アルキレンオキサイド鎖を公知の方法で導入することにより得ることができ、例えば、特願2005−262361号公報、特開2006−21191号公報、特表2005−510600号公報、特開2005−118684号公報、特開2004−290839号公報、特開2004−175861号公報、特開2004−168937号公報、特開2003−313251号公報、特開2003−236360号公報、特開2003−236361号公報、特開2001−72703号公報、特開2001−72702号公報、特開2000−154227号公報、特開平9−132648号公報等の開示の高分子分散剤等が挙げられる。
本発明では、特に、ウレタン樹脂にアルキレンオキサイド鎖を導入した高分子分散剤が好ましい。
高分子分散剤としては、具体的には、SNシックナー612等のSNシックナーシリーズ(サンノプコ株式会社製)、アデカノールUH−540、アデカノールUH−752等のアデカノールUHシリーズ(旭電化工業株式会社製)、DSX3290(コグニクスジャパン株式会社製)、プライマルRM−2020NPR(ローム・アンド・ハース・カンパニー製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の蓄熱カプセルは、特に、懸濁重合法により製造することが好ましい。
例えば、(a−1)成分、(a−2)成分(必要に応じ、(a−3)成分、他の単量体)、(b)成分、(c)油溶性重合開始剤(以下、「(c)成分」ともいう。)、(d)界面活性剤(以下、「(d)成分」ともいう。)、(e)水、を混合して懸濁液を作製し、該懸濁液中の液滴の平均粒子径が0.01μm〜10μm(好ましくは、0.1〜1μm)となるように分散させ、(a−1)成分を重合して得られる重合体の結晶化温度よりも高い温度で懸濁重合し、重合後、該結晶化温度よりも低い温度まで冷却して製造することが好ましい。
なお、液滴の粒子径は、光学顕微鏡で測定した値である。
【0036】
本発明では、(a−1)成分が(b)成分との相溶性に優れているため、(a−1)成分と(b)成分が均一に混合でき、懸濁重合後に得られるカプセル内に効果的に潜熱蓄熱材を内包することができ、優れた蓄熱性を有する蓄熱カプセルを製造することができる。
また、このような製造法で得られた蓄熱カプセルの水分散体は、蓄熱カプセルの平均粒子径が0.01〜10μm(好ましくは0.1〜1μm、さらに好ましくは0.3〜0.8μm)となり、長期的な貯蔵安定性にも優れる。
【0037】
また、懸濁重合の際、(a−1)成分を重合して得られる重合体の結晶化温度よりも高い温度で、懸濁重合することが好ましい。このような温度で懸濁重合することにより、重合時には非晶性の重合体(カプセル壁)を形成し、潜熱蓄熱材がカプセルに内包され易い。さらに、重合後は、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却することにより、重合体が相変化して結晶化し、均一なカプセル壁を形成し、内包された潜熱蓄熱材が漏れ出すことのない蓄熱カプセルを得ることができる。このような相変化機構により、高含有量の潜熱蓄熱材がカプセルに内包されているにも関わらず、潜熱蓄熱材がカプセルから漏れ出すことのなく、安定性に優れる蓄熱カプセルを得ることができる。
【0038】
このような状態で懸濁重合することにより、カプセルの平均粒子径が0.01μm〜10μm(好ましくは、0.1〜1μm)の水分散安定性に優れた蓄熱カプセルを形成することができる。平均粒子径が10μmより大きくなると、蓄熱カプセルの水分散安定性が劣ってくる。
なお、蓄熱カプセルの粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック粒度分析計UPA150)を用いて測定した値である。
【0039】
具体的には、懸濁液全量に対し、単量体成分2〜60重量%(好ましくは5〜50重量%)、(b)成分10〜40重量%(好ましくは20〜30重量%)、(c)成分0.1〜5重量%(好ましくは0.2〜1重量%)、(d)成分1〜10重量%(好ましくは2〜5重量%)、(e)成分20〜80重量%(好ましくは40〜60重量%)を混合して懸濁液を作製し、該懸濁液中の液滴の平均粒子径が0.01μm〜10μm(好ましくは、0.1〜1μm)となるように分散させる。分散させる方法としては、特に限定されないが、公知の高せん断力を付与する装置等を用いて分散させればよい。
【0040】
なお、単量体成分としては、(a−1)成分20〜60重量%(好ましくは30〜50重量%)、(a−2)成分10重量%(好ましくは15〜80重量%)であることが好ましく、必要に応じ、(a−3)成分0.1〜30重量%以下や、その他の単量体が含まれていてもよい。
【0041】
また、製造の際には、(f)高分子分散剤(以下、「(f)成分」ともいう。)を混合することが好ましい。(f)成分を混合して、蓄熱カプセルを製造することにより、製造時には蓄熱カプセルどうしの合一、凝集をより抑えることができるとともに、製造後には、長期的な貯蔵安定性を高める効果がある。
【0042】
(f)成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されず、懸濁液全量に対して、0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、さらには0.3重量%以上20重量%以下、さらには0.5重量%以上重量10%以下であることが好ましい。
【0043】
さらに重合後、(a−1)成分を重合して得られる重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却する。このような温度まで冷却することにより、カプセル壁を形成する重合体が相変化して結晶化するため、混練・攪拌時の安定性に優れた蓄熱カプセルの水分散液体を得ることができる。
蓄熱カプセルの水分散液体の固形分としては、20重量%以上80重量%以下、さらには30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
【0044】
このようにして得られた蓄熱カプセルの水分散液体は、乾燥工程を経て、固形の微粉末カプセルとして用いることもできる。この場合は、(a−1)成分を重合して得られる重合体の結晶化温度よりも低い温度で、回収することが好ましい。本発明の回収工程とは、分離工程、乾燥工程、分級工程等を含むもので、このような回収工程により固形の微粉末の蓄熱カプセルが得られるものである。本発明では、(a−1)成分を重合して得られる重合体の結晶化温度よりも低い温度で回収することにより、重合体が結晶性を維持したまま回収でき、潜熱蓄熱材がカプセルから漏れ出すことがない上に、カプセル壁が破粋することがない。回収工程としては、重合体の結晶化温度よりも低い温度であれば、公知の方法を採用すればよい。
【0045】
このようにして得られる蓄熱カプセルの平均粒子径は、0.01〜10μm(好ましくは、0.1〜1μm)である。このような範囲であることにより、特に水等の溶媒に分散して用いる場合、蓄熱カプセルの分散安定性に優れ、かつ、長期的な貯蔵安定性に優れ、取り扱いが容易である。
【0046】
本発明の蓄熱カプセルは、潜熱蓄熱材を40〜70重量%(好ましくは50〜65重量%)内包することが可能である。このような含有量であることにより、優れた蓄熱性を示すとともに、カプセル壁の高い結晶性を保持することができ、カプセル同士の凝集を防止することもできる。
潜熱蓄熱材の内包量が40重量%以下の場合では、十分な蓄熱性を有する蓄熱カプセルが得れらず、また、70重量%以上では、カプセル壁の結晶性が低下し、静置時および攪拌時にカプセル同士の凝集が見られ、長期的な貯蔵安定性が得られない。
【0047】
本発明の(X)成分は、上述した(a−2)成分を含む重合体からなる合成樹脂を含有するものである。本発明では、蓄熱カプセルのカプセル壁に(a−2)成分を含み、(X)成分として(a−2)成分を含むことによって、蓄熱組成物中におけるカプセルの分散性、貯蔵安定性に優れ、蓄熱組成物の皮膜の透明性を付与することができる。
炭素数が4未満である場合、蓄熱組成物中における分散性、貯蔵安定性を付与することが困難である。炭素数が12以上である場合、透明性を付与することが困難である。
【0048】
(a−2)成分としては、上述したもの等が挙げられる。
【0049】
(X)成分としては、(a−2)成分のほかに、(a−1)成分、(a−3)成分、その他の単量体を含む重合体からなる合成樹脂を使用してもよいし、その他、本発明の効果を損なわない程度に、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等を含む有機樹脂、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等を含む無機樹脂等を含んでいてもよい。
また、樹脂形態としては、水分散型、水可溶型、溶剤型、NAD型、無溶剤型、粉体型等特に限定されないが、(A)成分の形態が水分散型である場合は、(X)成分は、水分散型および/または水可溶型の形態であることが好ましい。
【0050】
(X)成分は、公知の方法で製造すればよい。例えば、(a−2)成分等を含む単量体を混合し、重合を行うことによって、製造することができる。
重合方法としては、特に限定されないが、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法、溶液重合法等の一般的な重合方法を用いることができ、必要に応じ、公知の開始剤、乳化剤、高分子分散剤、溶媒、重合抑制剤、pH調整剤等を混合して得ることができる。
【0051】
(X)成分における(a−2)成分の含有量は、特に限定されないが、(X)成分の固形分全量に対し、10重量%以上(好ましくは10重量%以上70重量%以下)であることが好ましい。
【0052】
(A)成分と(X)成分の混合比率は、結合剤(X)の固形分100重量部に対し、(A)成分が10重量部〜1000重量部(好ましくは、30重量部〜500重量部、さらに好ましくは50重量部〜200重量部)程度である。
【0053】
また、本発明蓄熱組成物は、(A)成分、(X)成分の他に、溶剤、着色顔料、骨材、粘性調整剤、造膜助剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、難燃剤、発泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体等の各種添加剤を混合することもできる。
【0054】
本発明の蓄熱組成物は、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材用の建材、車輌等の内装材、空調システム、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、熱搬送媒体、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に適用することができる。
【0055】
例えば、(A)成分、(X)成分等を含有する蓄熱組成物を基材に塗付積層する方法、また、蓄熱組成物を型枠に流し込み蓄熱体を得る型枠工法等によって各種用途に適用することができる。
【0056】
(A)成分、(X)成分等を含有する蓄熱組成物を基材に塗付積層する方法では、まず、(A)成分、(X)成分等を、公知の方法で混練・攪拌を行い、蓄熱カプセルを分散させる。この際、蓄熱カプセルをより均一に分散させるため、せん断速度等を上昇させることができる。本発明の蓄熱カプセルは、ある程度せん断速度等を上昇させたとしても、カプセル壁が破砕し難くいため、安定して分散を行うことができる。
得られた蓄熱組成物は、刷毛、ローラー、こて、スプレー等で基材に塗付積層すればよい。この際にも、蓄熱カプセルには、せん断応力等の力が加えられるが、カプセル壁が破砕し難く、潜熱蓄熱材の漏れを防止することができる。
【0057】
基材としては、例えば、コンクリート、石膏ボード、モルタル、サイディング板、ガラス、焼成タイル、磁器タイル、スレート板、珪酸カルシウム板、ALC板、押出成型板、スレート瓦、セメント瓦、新生瓦等の無機材料、
アルミニウム、銅、クロム、タングステン、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銀、金等からなる金属板、金属箔等の金属材料、
アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、
ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、
松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー、あるいはこれらの複合材料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0058】
具体的に、下記のような例を挙げることができる。
(1)壁材、天井材、床材等の内・外装材用の建材として使用する場合は、上述した無機材料や金属材料の基材表面に、蓄熱組成物によって形成された皮膜を積層し、さらにその上に表面材を積層して使用することができる。表面材としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、上塗塗料、建材シート、建材ボード、タイル、マット、床材等広範に使用することができる。また、必要に応じ断熱材や難燃・不燃材、さらには床暖房システムで使用する発熱体等を積層してもよい。
(2)保温シートとして用いる場合は、上述した金属材料、有機材料、繊維材料等の基材表面に、蓄熱組成物によって形成された皮膜を積層し、さらにその上に上述した金属材料、有機材料、繊維材料等の基材を積層して使用することができる。
またこのような保温シートは、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、衣類等に応用することができ、様々な分野で使用することができる。
(3)結露防止シートとして用いる場合は、有機材料のフィルム・シート等の基材表面に、蓄熱組成物によって形成された皮膜を積層したり、さらにその上に有機材料フィルム・シート等を積層して使用することができる。特に結露防止シートとして用いる場合は、有機材料のフィルム・シート及び蓄熱層が透明性を有することが好ましく、このような透明性結露防止シートは、窓やドア、車輌等で使用されるガラス、ミラー等へ好適に使用することができる。
【0059】
本発明の蓄熱組成物は、使用する用途に合わせて、潜熱蓄熱材を適宜設定することができる。例えば、建築物の内・外装材として使用する場合は、潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを使用すればよい。
また、車輌等の内装材として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを使用すればよい。また、冷蔵庫に用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−10℃〜5℃付近のものを使用すればよい。また、冷凍庫に用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−30℃〜−10℃付近のものを使用すればよい。また、保温シートとして用いる場合は保温する温度に合わせて潜熱蓄熱材の融点を適宜選定するものを使用すればよい。また、結露防止シートに用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が5℃〜20℃付近のものを使用すればよい。
【0060】
また、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱カプセルと、該潜熱蓄熱材と異なる融点を有する潜熱蓄熱材を含有する蓄熱カプセルとを組み合わせて使用することもできる。
通常2種以上の潜熱蓄熱材を混合すると、見かけ上融点は一つとなってしまい、より幅広い温度域での蓄熱性能を発揮することが、困難な場合がある。
本発明では、潜熱蓄熱材の融点が異なる2種以上の蓄熱カプセルを混合することで、見かけ上融点が2つ以上の材料を簡便に得ることができる。
例えば、融点が5℃〜15℃付近の潜熱蓄熱材を含有する蓄熱カプセルと、融点が16℃〜28℃付近の潜熱蓄熱材を含有する蓄熱カプセルとを組み合わせることにより、見かけ上2つの融点を有し、一年を通してその蓄熱性能(夏期は冷熱蓄熱性能、冬期は温熱蓄熱性能)を発揮することができ、また、昼と夜の温度差に対しても、前記冷熱蓄熱性能、温熱蓄熱性能を発揮することができる。例えば、建材、保温シート、結露防止シート等、また、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に適用することができる。
また、融点が−15〜0℃付近の潜熱蓄熱材を含有する蓄熱カプセルと、融点が0℃〜5℃付近の潜熱蓄熱材を含有する蓄熱カプセルとを組み合わせることにより、冷蔵庫やクーラーボックス等に適用することができる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0062】
(蓄熱カプセルの製造)
<蓄熱カプセル1>
表1に示すように、シクロヘキシルメタクリレート100重量部、メタクリル酸1重量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート5重量部、n−ヘキサデカン(融点:18℃)150重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を均一に混合し、さらに、ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウム塩4重量部、ポリオキシエチレンステアリルエーテル2重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部、イオン交換水250重量部を加え、ホモジナイザー(Heidoph製:ホモジナイザーDIAX900)を用いて攪拌速度15000rpmで攪拌を行い、懸濁液を作製した。
この懸濁液の平均粒子径を、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック粒度分析計UPA150)により観察した結果、平均粒子径は0.30μmであった。
作製した懸濁液を、脱気、窒素雰囲気下にした重合槽に投入し、80℃で3時間懸濁重合を行い、蓄熱カプセル1の水分散体(平均粒子径:0.32μm、固形分50重量%)を得た。
得られた蓄熱カプセル1の水分散体について、次の評価を行った。
【0063】
〔平均粒子径〕
蓄熱カプセル1の水分散体を、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック粒度分析計UPA150)を用いて平均粒子径を測定した。結果は表1に示す。
【0064】
〔貯蔵安定性〕
蓄熱カプセル1の水分散体0.8リットルを、1リットル容器に入れ、温度23℃、相対湿度50%下(以下、「標準状態」ともいう。)において1ヶ月間静置させた。分離した蓄熱カプセル1の体積(リットル)を測定し、下記の式により、分離率を算出することにより評価した。評価は下記に示す。結果は表1に示す。
分離率(%)=分離した蓄熱カプセル1の体積(リットル)×100/0.8(リットル)
◎:分離率0.5%未満
○:分離率0.5%以上1%未満
△:分離率1%以上5%未満
×:分離率5%以上
【0065】
〔攪拌安定性〕
蓄熱カプセル1の水分散体を卓上攪拌機(IKA社製:RW20.n)を用いて、標準状態下において、攪拌速度2400rpmで30分間攪拌を行い、
攪拌前後の粘度より、以下の基準より評価を行った。結果は表1に示す。
◎:攪拌前後の粘度変化が、5%未満
○:攪拌前後の粘度変化が、10%未満
△:攪拌前後の粘度変化が、50%未満
×:攪拌前後の粘度変化が、50%以上
【0066】
〔低温安定性〕
蓄熱カプセル1の水分散体を雰囲気温度5℃下に設定した恒温槽内に24時間静置させ、静置前後の粘度より、以下の基準より評価を行った。結果は表1に示す。
◎:静置前後の粘度変化が、5%未満
○:静置前後の粘度変化が、10%未満
△:静置前後の粘度変化が、50%未満
×:静置前後の粘度変化が、50%以上
【0067】
〔蓄熱カプセル1の潜熱量測定〕
DSC220CU(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、示差走査熱量測定(DSC測定)により、得られた蓄熱カプセル1の物性値(潜熱量)を測定した。測定条件としては、アルミニウムをリファレンスとし、昇温温度10℃/min、−20〜60℃の温度領域で測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
<蓄熱カプセル2〜12>
表1に示す原料、配合比率にて、蓄熱カプセル1と同様の方法で蓄熱カプセルの水分散体を作製した。得られた蓄熱カプセルの水分散体(固形分50重量%)について、蓄熱カプセル1と同様の評価を行った。結果は表1に示す。
【0071】
(結合材1〜3)
結合材1:合成樹脂エマルション(固形分50重量%、組成:シクロヘキシルメタクリレート60重量%、メチルメタクリレート20重量%、メタクリル酸10重量%、ポリエチレングリコールジメタクリレート10重量%)
結合材2:合成樹脂エマルション(固形分50重量%、組成:シクロヘキシルメタクリレート5重量%、メチルメタクリレート45重量%、スチレン30重量%、メタクリル酸10重量%、ポリエチレングリコールジメタクリレート10重量%)
結合材3:合成樹脂エマルション(固形分50重量%、組成:スチレン50重量%、メチルメタクリレート30重量%、メタクリル酸10重量%、ポリエチレングリコールジメタクリレート10重量%)
【0072】
(実験例1)
表2に示す配合にて、結合材1を50重量部、蓄熱カプセル1を50重量部、添加剤(2,2,4,−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)1重量部を混合攪拌し、蓄熱組成物1を得た。
得られた蓄熱組成物1について、次の試験を行った。
【0073】
〔蓄熱材の漏洩性〕
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(210mm×297mm×45μm)の上に、標準状態にて、蓄熱組成物1を刷毛にて、乾燥膜厚が0.1mmとなるように塗付し、24時間養生させた。その後、PETフィルムから、蓄熱フィルムを剥がし、試験体を得た。
得られた蓄熱フィルムを、標準状態で、7日間静置させ、蓄熱材の漏洩を目視にて、評価した。評価基準は以下に示す。結果は表2に示す。
◎:蓄熱材の漏洩がみられなかった
○:蓄熱材の漏洩がほとんどみられなかった
×:蓄熱材の漏洩がみられた
【0074】
〔蓄熱性〕
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(210mm×297mm×45μm)の上に、標準状態にて、蓄熱組成物1を刷毛にて、乾燥膜厚が0.1mmとなるように塗付し、24時間養生させた。その後、PETフィルムから、蓄熱フィルムを剥がし、試験体を得た。
得られた蓄熱フィルムを、標準状態で、50日間静置させ、DSC220CU(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、示差走査熱量測定(DSC測定)により、潜熱量を測定した。評価基準は以下に示す。結果は表2に示す。
◎:潜熱量が、100(kJ/kg)以上
○:潜熱量が、80(kJ/kg)以上100(kJ/kg)未満
×:潜熱量が、80(kJ/kg)未満
【0075】
〔透明性〕
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(210mm×297mm×45μm)の上に、標準状態にて、蓄熱組成物1を刷毛にて、乾燥膜厚が0.1mmとなるように塗付し、24時間養生させた。その後、PETフィルムから、蓄熱フィルムを剥がし、試験体を得た。
得られた蓄熱フィルムを、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所社製:SHIMAZU UV−220 UV−VIS RECORDING SPECTRO PHOTO METER)を用いて、可視光(550nm)における透過率を算出する事により、透明性を評価した。評価は以下に示す。結果は表2に示す。
◎:透過率80%以上
○:透過率60%以上80%未満
×:透過率60%未満
【0076】
(蓄熱組成物2〜19)
表2に示す配合にて、実験例1と同様の方法にて蓄熱組成物2〜19を得た。
得られた蓄熱組成物2〜19について、それぞれ実験例1と同様の実験を行った。結果は表2に示す。
【0077】
また、蓄熱組成物2、蓄熱組成物18、蓄熱組成物19については、次の結露評価試験を行った。
【0078】
〔結露評価試験〕
得られた蓄熱組成物2、蓄熱組成物18、蓄熱組成物19を、それぞれPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(210mm×297mm×30μm)の上に、標準状態で刷毛にて、乾燥膜厚が0.1mmとなるように塗付し、24時間養生させ、試験シートをそれぞれ得た。
外気温度が5℃の雰囲気下に、一箇所に窓ガラス(900mm×900mm)が設置された試験棟(1850mm×1850mm×1850mm)(壁面:石膏ボード)を設置した。次に、試験棟内の温度・湿度を表3(試験1〜6)に示すように保ち、試験棟内部から窓ガラス全面に試験シートをそれぞれ貼り付けた。
結露評価試験では、試験シート貼り付け後1時間経過後の窓ガラスの様子を目視にて観察した。評価は次のとおりである。結果は表3に示す。
なお、ブランクとして、試験シートを貼り付けない場合の窓ガラスの様子も目視にて評価した。
◎:結露の発生なし
○:ほとんど結露の発生なし
△:水滴が発生
×:流れ落ちる量の水滴が発生
【0079】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の蓄熱組成物は、主として、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材用の建材として好適に使用することができる。さらに、本発明の蓄熱組成物は、車輌等の内装材、空調システム、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、熱搬送媒体、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に用いる材料としても適用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(b)潜熱蓄熱材が内包された蓄熱カプセル、
(X)結合材、
を含む蓄熱組成物であって、
(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体から形成されたものであり、
(X)結合材が、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有することを特徴とする蓄熱組成物。
【請求項2】
(A)蓄熱カプセルが、
(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体
(b)潜熱蓄熱材、
(c)油溶性重合開始剤、
(d)界面活性剤、
(e)水、を混合して懸濁液を作製し、
該懸濁液中の液滴の平均粒子径が0.01μm〜10μmとなるように分散させ、
(a−1)成分の結晶化温度よりも高い温度で懸濁重合し、重合後、該結晶化温度よりも低い温度まで冷却して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱組成物。
【請求項3】
(A)(b)潜熱蓄熱材が内包された蓄熱カプセル、
(X)結合材、
からなる蓄熱組成物であって、
(A)蓄熱カプセルのカプセル壁が、(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、(a−3)架橋性単量体を含む単量体群の重合体から形成されたものであり、
(X)結合材が、(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群の重合体からなる合成樹脂を含有することを特徴とする蓄熱組成物。
【請求項4】
(A)蓄熱カプセルが、
(a−1)炭素数が12以上のアルキル基を有する結晶性(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(a−2)炭素数が4以上12未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(a−3)架橋性単量体、
(b)潜熱蓄熱材、
(c)油溶性重合開始剤、
(d)界面活性剤、
(e)水、を混合して懸濁液を作製し、
該懸濁液中の液滴の平均粒子径が0.01μm〜10μmとなるように分散させ、
(a−1)成分の結晶化温度よりも高い温度で懸濁重合し、重合後、該結晶化温度よりも低い温度まで冷却して得られたものであることを特徴とする請求項3に記載の蓄熱組成物。
【請求項5】
カプセル壁を構成する重合体を形成する単量体において、(a−1)成分の含有量が、単量体全量の20〜60重量%であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項6】
カプセル壁を構成する重合体を形成する単量体において、(a−2)成分の含有量が、単量体全量の40重量%以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項7】
結合材(X)を構成する重合体を形成する単量体において、(a−2)成分の含有量が、単量体全量の10重量%以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項8】
(a−1)成分の結晶化温度が40℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項9】
(A)蓄熱カプセル中に、潜熱蓄熱材が40〜70重量%内包されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項10】
(A)蓄熱カプセルの平均粒子径が0.01μm〜10μmであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項11】
(b)潜熱蓄熱材が、n−パラフィンであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の蓄熱組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の蓄熱組成物によって形成された皮膜を含む建材。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の蓄熱組成物によって形成された皮膜を含む保温シート。
【請求項14】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の蓄熱組成物によって形成された皮膜を含む結露防止シート。


【公開番号】特開2008−163286(P2008−163286A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68349(P2007−68349)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】