説明

蓄電システム

【課題】各バッテリ要素において充放電が頻繁に切替えられることを、抑制することが容易となる蓄電システムを提供する。
【解決手段】充放電可能であるバッテリ要素を複数有するバッテリ部を備え、バッテリ部を充電する充電動作と放電させる放電動作を行うものであり、動作形態を、第1モードおよび第2モードの何れかに切替可能に設定する動作形態設定部を備え、第1モードは、複数のバッテリ要素の全体または一部が充電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は放電動作には用いられない形態、または、複数のバッテリ要素の全体または一部が放電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は充電動作には用いられない形態であり、第2モードは、複数のバッテリ要素が充電用要素と放電用要素に分別され、充電動作に充電用要素が用いられ、放電動作に放電用要素が用いられる形態である蓄電システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電を行う蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池等の発電電力を蓄電池に蓄えておき、この蓄えられた電力を需要家に供給する蓄電システムが提案されている。一般的に蓄電システムでは、発電電力が電力需要を上回る状況では、余剰電力を蓄電するために蓄電池の充電が行われ、逆の状況では、需要家へ電力を供給するために蓄電池の放電が行われる。
【0003】
これにより、例えば日中に太陽電池の発電電力を蓄電しておき、蓄えておいた電力を夜間に供給するといったことが可能となる。なお一般的に蓄電池は、充放電の容量増大等のため、充放電可能であるバッテリの要素(例えばバッテリセルや、複数のバッテリセルが連結したバッテリであり、本願では便宜的に「バッテリ要素」と称する)が複数設けられる。バッテリ要素の各々は一体的に用いられるようになっており、蓄電池の充電時には、バッテリ要素の全体が充電に用いられ、蓄電池の放電時には、バッテリ要素の全体が放電に用いられる。
【0004】
また特許文献1には、蓄電システムに関する従来例が開示されている。この従来例は、充放電素子の充電/放電動作の切り換えを、太陽電池等の直流電力源の出力とその目標値との比較に基づいて行うものとなっている。これにより、日射の変動等による直流電力源の発電電力変動を吸収して、系統への逆潮流電力の変動を抑制することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−5543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄電システムが利用されるにあたって、例えば発電電力と電力需要が拮抗している状況下では、蓄電池の充放電が頻繁に切替ることとなり、各バッテリ要素において充放電が頻繁に切替えられることとなる。このことは、蓄電池の寿命低下や、充放電の切替に伴う制御の煩雑化および電力ロスなどを招くおそれがある。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑み、各バッテリ要素において充放電が頻繁に切替えられることを、抑制することが容易となる蓄電システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る蓄電システムは、充放電可能であるバッテリ要素を複数有するバッテリ部を備え、入力される電力を前記バッテリ部に充電させて蓄える充電動作、および、前記バッテリ部に蓄えられている電力を放電させて出力する放電動作、を行う蓄電システムであって、前記蓄電システムの動作形態を、第1モードおよび第2モードの何れかに切替可能に設定する動作形態設定部を備え、第1モードは、前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記充電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記放電動作には用いられない形態、または、前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記放電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記充電動作には用いられない形態であり、第2モードは、前記複数のバッテリ要素が充電用要素と放電用要素に分別され、前記充電動作に充電用要素が用いられ、前記放電動作に放電用要素が用いられる形態である構成とする。
【0009】
本構成によれば、例えばバッテリ部の充放電が頻繁に切替ると想定される期間(一例としては、本実施形態の説明にて言及する拮抗期間)において動作形態が第2モードに設定されるようにして、各バッテリ要素において充放電が頻繁に切替えられることを、抑制することが可能となる。
【0010】
また上記構成において、前記動作形態設定部は、前記入力される電力の大きさに応じて、前記動作形態を切替える構成としてもよい。また当該構成としてより具体的には、分散電源による発電電力のうちの余剰電力が入力されるものであり、前記動作形態設定部は、前記余剰電力の大きさに応じて、前記動作形態を切替える構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、前記動作形態設定部は、現在時刻に応じて、前記動作形態を切替える構成としてもよい。
【0011】
また上記構成としてより具体的には、前記動作形態が第2モードである状況において、放電用要素に分別されているバッテリ要素に蓄えられている電力を用いて、充電用要素に分別されているバッテリ要素の充電電流の増量を行う構成としてもよい。
【0012】
また上記構成としてより具体的には、前記動作形態が第1モードである状況において、次に第2モードとなったときに充電用要素に分別されるバッテリ要素に蓄えられている電力を、次に第2モードとなったときに放電用要素に分別されるバッテリ要素へ、移動させておく構成としてもよい。
【0013】
また上記構成としてより具体的には、第1モードとして、前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記充電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記放電動作には用いられない充電モード、および、前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記放電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記充電動作には用いられない放電モードの両方が設けられ、前記動作形態設定部は、前記蓄電システムの動作形態を、充電モード、放電モード、および第2モードの何れかに切替可能に設定する構成としてもよい。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、充電モードから第2モードへ切替った場合と、放電モードから第2モードへ切替った場合との間で、充電用要素に分別するバッテリ要素と放電用要素に分別するバッテリ要素を、逆転させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した通り、本発明に係る蓄電システムによれば、各バッテリ要素において充放電が頻繁に切替えられることを、抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蓄電システムを有する、電力システムの構成図である。
【図2】充放電兼用モードにおける動作に関するフローチャートである。
【図3】充電モードにおける動作に関するフローチャートである。
【図4】放電モードにおける動作に関するフローチャートである。
【図5】当該蓄電システムの動作形態に関する説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る蓄電システムを有する、電力システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る蓄電システムについて、第1実施形態および第2実施形態を例に挙げ、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0018】
1.第1実施形態
[蓄電システムを備えた電力システムの構成等]
先ず第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る蓄電システムを備えた電力システムの構成例を表している。本図に示すように当該電力システム9は、本実施形態に係る蓄電システム1、太陽電池(PV)2、パワコン(パワーコンディショナ)3、分電盤4、需要家における負荷5、および電力系統6などを有する。
【0019】
蓄電システム1は、外部からの供給電力(太陽電池2の発電電力のうちの余剰電力)をバッテリ部11に蓄えておき、この蓄えられた電力を外部へ(パワコン3等を介して負荷5へ)放電するように形成されたシステムである。蓄電システム1の構成や動作については、改めて詳細に説明する。
【0020】
太陽電池2は、太陽電池パネルなどから形成されており、受光した太陽光を光電変換することにより発電を行う装置である。太陽電池2は、蓄電システム1およびパワコン3に接続されており、これらに発電電力(直流電力)を送出することが可能となっている。太陽電池2は、分散電源の一形態であると言える。
【0021】
パワコン3は、太陽電池2および分電盤4に接続されており、太陽電池2から受取った直流電力を交流に変換して、分電盤4へ送出する機能を有している。またパワコン3は、蓄電システム1にも接続されており、蓄電システム1から受取った直流電力を交流に変換して、分電盤4へ送出する機能をも有している。また分電盤4には負荷5および電力系統6が接続されており、パワコン3や電力系統6から得られる電力を負荷5に供給することが可能となっている。なお負荷5は、電力を消費する各種の電気機器(照明機器など)が該当する。また図1に示すように、分電盤4は商用電源のコンセントに繋がっており、このコンセントに接続された電気機器も負荷5に含まれる。
【0022】
電力システム9は、主にパワコン3によって行われる制御に従って、概ね次のように動作する。太陽電池2の発電電力の量(以下、「発電量」と称する)が、負荷5の消費電力の量(以下、「需要量」と称する)を超えていない状況では、太陽電池2の発電電力のほぼ全ては、負荷5へ送出される。
【0023】
このとき、負荷5における電力の不足分(需要量と発電量の差)は、蓄電システム1に蓄えられている電力が、パワコン3を介して負荷5へ送出されることで補われる。このとき、蓄電システム1は、バッテリ部11に蓄えられている電力を放電させ、パワコン3へ出力することになる。なお、それでも不足が解消されない場合には、電力系統6からの電力供給により不足の解消が図られる。
【0024】
一方、発電量が需要量を越えている状況では、需要量に応じた分の発電電力が負荷5へ送出されつつ、太陽電池2の発電電力のうちの余剰電力(発電量と需要量の差に相当し、以下、単に「余剰電力」と称することがある)が蓄電システム1へ送出される。このとき蓄電システム1は、入力された余剰電力をバッテリ部11に充電させて蓄える。なお、例えばバッテリ部11が満充電となった場合には、余剰電力が電力系統6へ逆潮流される(売電が行われる)ようになっていても良い。
【0025】
[蓄電システムの詳細構成]
次に、蓄電システム1の詳細な構成について、引き続き図1を参照しながら説明する。本図に示すように蓄電システム1は、バッテリ部11、DC−DCコンバータ12、制御部13、電流計測部(15a、15b)および各スイッチ(SW1〜SW4)を有する。
【0026】
バッテリ部11は、第1バッテリBAT1、第2バッテリBAT2、およびバッテリ用コンバータ(DC−DCコンバータの機能を有する)11aを備えている。各バッテリ(BAT1、BAT2)は、複数のバッテリセルBSが直列に連結された形態となっており、充放電が可能となっている。
【0027】
バッテリ用コンバータ11aは、各バッテリ(BAT1、BAT2)に接続されており、一方のバッテリに蓄えられている電力を、他方のバッテリへ移動させることが可能となっている。またバッテリ用コンバータ11aは、各バッテリ(BAT1、BAT2)におけるバッテリセルBSごとに接続ラインを有しており、バッテリセルBSごとの蓄電量を制御することが可能となっている。これによりバッテリ用コンバータ11aは、後述するイニシャル動作を行うことが可能となっている。
【0028】
DC−DCコンバータ12は、入力側が、太陽電池2とパワコン3を繋ぐラインに接続されており、出力側が、第1バッテリBAT1および第2バッテリBAT2に配線接続されている。DC−DCコンバータ12と第1バッテリBAT1を結ぶ配線は、第1バッテリBAT1に対応した充電用配線であり、DC−DCコンバータ12と第2バッテリBAT2を結ぶ配線は、第2バッテリBAT2に対応した充電用配線である。DC−DCコンバータ12には余剰電力が入力され、この余剰電力は各充電用配線を介して、各バッテリ(BAT1、BAT2)へ充電用の電力として送出されるようになっている。
【0029】
なお第1バッテリBAT1および第2バッテリBAT2は、パワコン3にも配線接続されている。第1バッテリBAT1とパワコン3を結ぶ配線は、第1バッテリBAT1に対応した放電用配線であり、第2バッテリBAT2とパワコン3を結ぶ配線は、第2バッテリBAT2に対応した放電用配線である。各バッテリ(BAT1、BAT2)が放電する電力は、各放電用配線を介して、パワコン3に出力されるようになっている。
【0030】
ここで図1に示すDC−DCコンバータ12は、第1バッテリBAT1に接続する端子と第2バッテリBAT2に接続する端子を別個に有しているが、これらの端子は共通化されて同一となっていても良い。また同様に、図1に示すパワコン3は、第1バッテリBAT1に接続する端子と第2バッテリBAT2に接続する端子を別個に有しているが、これらの端子は共通化されて同一となっていても良い。
【0031】
各スイッチ(SW1〜SW4)は、充電用配線或いは放電用配線の導通(ON)と非導通(OFF)を切替える役割を果す。より具体的には、スイッチSW1は、第1バッテリBAT1に対応した充電用配線のON/OFFを切替える。またスイッチSW2は、第1バッテリBAT1に対応した放電用配線のON/OFFを切替える。またスイッチSW3は、第2バッテリBAT2に対応した充電用配線のON/OFFを切替える。またスイッチSW4は、第2バッテリBAT2に対応した放電用配線のON/OFFを切替える。
【0032】
スイッチSW1がONであって、かつ、スイッチSW2がOFFであるとき、第1バッテリBAT1は、余剰電力の充電には用いられるが、パワコン3への放電には用いられない状態となる。一方、スイッチSW1がOFFであって、かつ、スイッチSW2がONであるとき、第1バッテリBAT1は、パワコン3への放電には用いられるが、余剰電力の充電には用いられない状態となる。
【0033】
またスイッチSW3がONであって、かつ、スイッチSW4がOFFであるとき、第2バッテリBAT2は、余剰電力の充電には用いられるが、パワコン3への放電には用いられない状態となる。一方、スイッチSW3がOFFであって、かつ、スイッチSW4がONであるとき、第2バッテリBAT2は、パワコン3への放電には用いられるが、余剰電力の充電には用いられない状態となる。
【0034】
制御部13は、現時点が「発電量優位期間」、「需要量優位期間」、および「拮抗期間」のうちの、何れの期間に属しているかを判別する機能を有している。なお「発電量優位期間」は、発電量が需要量を安定して上回り、発電量と需要量の大小関係が殆ど変化しないと見込まれる期間である。また「需要量優位期間」は、需要量が発電量を比較的安定して上回り、発電量と需要量の大小関係が殆ど変化しないと見込まれる期間である。
【0035】
また「拮抗期間」は、需要量と発電量が比較的拮抗しており、発電量と需要量の大小関係が頻繁に変化し易いと見込まれる期間である。つまり「拮抗期間」は、「発電量優位期間」に比べれば発電量が需要量を下回り易く、「需要量優位期間」に比べれば需要量が発電量を下回り易いと見込まれる期間である。
【0036】
なお蓄電システム1から見れば、「発電量優位期間」は、バッテリ部11の充電に利用可能な電力が安定的に入力され、かつ、バッテリ部11の放電による電力の出力は殆ど不要である期間であると言える。また同様に「需要量優位期間」は、バッテリ部11の充電に利用可能な電力は殆ど入力されず、かつ、バッテリ部11の放電による電力の出力が特に求められる期間であると言える。また同様に「拮抗期間」は、バッテリ部11の充電に利用可能な電力が比較的僅かに入力される状況と、バッテリ部11の放電による電力の出力が比較的僅かに求められる状況とが、短い間隔で入れ替わる期間であると言える。
【0037】
また、現時点が「発電量優位期間」、「需要量優位期間」、および「拮抗期間」のうちの何れの期間に属しているかを判別するための手順については、各種の形態を採用することが可能である。当該形態の具体例としては、次の第1および第2の例などが挙げられる。
【0038】
第1の例は、余剰電力の大きさの情報を利用する例である。この例が採用されている場合、制御部13は、太陽電池2から入力される余剰電力の大きさを監視する。そして余剰電力が所定の閾値を超えているときは、現時点は「発電量優位期間」に属していると判別される。一方、余剰電力がゼロである状態が所定時間以上続いたときは、現時点は「需要量優位期間」に属していると判別される。なおこれらの何れにも該当しないときは、現時点は「拮抗期間」に属していると判別される。
【0039】
第2の例は、現在時刻の情報を利用する例である。この例が採用されている場合、制御部13は、「発電量優位期間」、「需要量優位期間」、および「拮抗期間」の各々がどの時間帯に相当するかを表す、時間帯対応情報を有している。時間帯対応情報は、例えば、「発電量優位期間」は「午前9時から午後3時までの時間帯」であり、「需要量優位期間」は「午後6時から午前6時までの時間帯」であり、「拮抗期間」はこれらの何れにも該当しない時間帯である、といった内容となっている。一般的に発電量や需要量については、1日の中でどのように変化するかの傾向が経験的に判っているため、このような時間帯対応情報を予め設けておくことは可能である。
【0040】
そして制御部13は、時計機能を用いて現在時刻を監視し、現在時刻と上述した時間帯対応情報に基づいて、現時点が何れの期間に属しているかを判別する。なお発電量などは、季節や天気などによって変化することがある。例えば、夏に近い日ほど日射量が増えるために発電量は大きくなり、雲の多い日ほど日射量が減るために発電量は小さくなる。そのため時間帯対応情報は、そのときの季節や天気などの情報に応じて、適宜補正されるようになっていることが望ましい。
【0041】
また制御部13は、現時点が何れの期間に属しているかの判別の結果を、バッテリ用コンバータ11aに伝送する。これによりバッテリ用コンバータ11aは、当該判別の結果に応じた動作を行うことが可能となっている。また制御部13は、当該判別の結果に応じて、各スイッチ(SW1〜SW4)のON/OFFの切替を制御する。各スイッチ(SW1〜SW4)がどのように切替えられるかについては、後述の説明で明らかとなる。
【0042】
電流計測部15aは、第1バッテリBAT1に対応した充電用配線と放電用配線の共通部分に設けられ、第1バッテリBAT1の充放電電流を計測する。また電流計測部15bは、第2バッテリBAT2に対応した充電用配線と放電用配線の共通部分に設けられ、第2バッテリBAT2の充放電電流を計測する。各電流計測部(15a、15b)の計測結果の情報は、バッテリ用コンバータ11aへ伝送される。なお各電流計測部(15a、15b)は、例えばシャント抵抗或いはホールセンサを用いて形成されている。
【0043】
またバッテリ用コンバータ11aは、バッテリ部11の過充電および過放電を防止するため、バッテリ部11における蓄電量に応じて、バッテリ部11の充放電を制限する機能を有している。より具体的には、バッテリ用コンバータ11aは、各電流計測部(15a、15b)の計測結果に基づいて(例えばこれまでの充放電電流の積分値を用いて)、バッテリ部11の最新のSOC[State Of Charge:電池残量]を継続的に推定する。
【0044】
そしてこのSOCが所定の上限値Emaxに達したときは、バッテリ用コンバータ11aは、バッテリ部11の充電がそれ以上行われないように、制御部13を介して、DC−DCコンバータ12にその旨を通知する。その結果、DC−DCコンバータ12は、バッテリ部11へ充電電流を流さないように動作する。またこのSOCが所定の下限値Eminに達したときは、バッテリ用コンバータ11aは、バッテリ部11の放電がそれ以上行われないように、制御部13を介して、パワコン3にその旨を通知する。その結果、パワコン3は、バッテリ部11から放電電流が流れ込まないように動作する。これにより、バッテリ部11の過充電および過放電が防止される。なお本実施形態では、上述したように、バッテリ用コンバータ11aが過充電や過放電を防止する機能を兼ね備えているが、他の装置が当該機能を有するようにしても構わない。
【0045】
なおバッテリ用コンバータ11aは、セルバランス動作を行う機能を有している。セルバランス動作は、各バッテリセルBSごとの電力を移動させ、同一バッテリ内のバッテリセルBSの蓄電量の均等化を図る動作である。セルバランス動作が行われることにより、各バッテリ(BAT1、BAT2)の充電状態が適正化され、各バッテリの機能をより十分に発揮させることが可能である。
【0046】
[蓄電システムの動作]
次に、蓄電システム1の動作について説明する。蓄電システム1は基本動作として、余剰電力をバッテリ部11に充電させて蓄える充電動作、および、バッテリ部11に蓄えられている電力を放電させてパワコン3の側へ出力する放電動作、を行う。
【0047】
また蓄電システム1の動作形態としては、「充電モード」、「放電モード」、および「充放電兼用モード」が用意されており、これらのうちの何れかが切替可能に設定されるようになっている。蓄電システム1は、現在設定されている動作形態に応じて動作する。これらの動作形態ごとの主な動作の流れについて、以下に説明する。
【0048】
まず充放電兼用モードにおける動作の流れについて、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。動作形態が充電モードから充放電兼用モードへ切替った場合には(ステップS11の「充電モード」)、制御部13は、スイッチSW2およびSW3をONとし、スイッチSW1およびSW4をOFFとする(ステップS12)。
【0049】
スイッチSW2がONとなることにより、第1バッテリBAT1は、パワコン3に配線接続される。その結果、パワコン3に向けた放電を、第1バッテリBAT1を用いて行うことが可能となる。またスイッチSW3がONとなることにより、第2バッテリBAT2は、DC−DCコンバータ12に配線接続される。その結果、余剰電力の充電を、第2バッテリBAT2を用いて行うことが可能となる。
【0050】
なお、スイッチSW1がOFFとなることにより、第1バッテリBAT1を用いて余剰電力の充電が行われることは、回避される。つまり第1バッテリBAT1は、専ら放電に用いられる「放電用バッテリ」として用いられることになる。またスイッチSW4がOFFとなることにより、第2バッテリBAT2を用いてパワコン3に向けた放電が行われることは、回避される。つまり第2バッテリBAT2は、専ら充電に用いられる「充電用バッテリ」として用いられることになる。
【0051】
一方、動作形態が放電モードから充放電兼用モードへ切替った場合には(ステップS11の「放電モード」)、制御部13は、スイッチSW1およびSW4をONとし、スイッチSW2およびSW3をOFFとする(ステップS13)。
【0052】
スイッチSW1がONとなることにより、第1バッテリBAT1は、DC−DCコンバータ12に配線接続される。その結果、余剰電力の充電を、第1バッテリBAT1を用いて行うことが可能となる。またスイッチSW4がONとなることにより、第2バッテリBAT2は、パワコン3に配線接続される。その結果、パワコン3に向けた放電を、第2バッテリBAT2を用いて行うことが可能となる。
【0053】
なお、スイッチSW2がOFFとなることにより、第1バッテリBAT1を用いてパワコン3に向けた放電が行われることは、回避される。つまり第1バッテリBAT1は、専ら充電に用いられる「充電用バッテリ」として用いられることになる。またスイッチSW3がOFFとなることにより、第2バッテリBAT2を用いて余剰電力の充電が行われることは、回避される。つまり第2バッテリBAT2は、専ら放電に用いられる「放電用バッテリ」として用いられることになる。
【0054】
ステップS12またはS13の動作により、第1バッテリBAT1および第2バッテリBAT2が、充電用バッテリと放電用バッテリに分別されることになる。そして余剰電力をバッテリ部11に充電する動作(充電動作)に、充電用バッテリが用いられ、バッテリ部11に蓄えられている電力をパワコン3側へ放電させる動作(放電動作)に、放電用バッテリが用いられることになる。
【0055】
そのため、発電量と需要量の大小関係が頻繁に変化したとしても、その度に各バッテリにおいて充放電が切替えられる(充電用と放電用に交互に用いられる)といった事態は回避される。このように充放電兼用モードは、発電量と需要量の大小関係が頻繁に変化し易い拮抗期間に対して、特に適した動作形態となっている。
【0056】
また制御部13は、ステップS12またはS13の動作を行った後、発電量優位期間が到来したか否か(ステップS14)、および、需要量優位期間が到来したか(ステップS15)を監視する。そして発電量優位期間が到来した場合には(ステップS14のY)、蓄電システム1の動作形態は充電モードに切替えられ、需要量優位期間が到来した場合には(ステップS15のY)、蓄電システム1の動作形態は放電モードに切替えられる。
【0057】
次に充電モードにおける動作の流れについて、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。動作形態が充放電兼用モードから充電モードへ切替えられると、制御部13は、スイッチSW1およびSW3の少なくとも一方をONとし、スイッチSW2およびSW4をOFFとする(ステップS21)。
【0058】
スイッチSW1およびSW3の少なくとも一方がONとなることにより、第1バッテリBAT1と第2バッテリBAT2の少なくとも一方が、DC−DCコンバータ12に配線接続される。その結果、余剰電力の充電に、第1バッテリBAT1と第2バッテリBAT2の少なくとも一方が用いられることになる。つまり充電モードは、充電動作に、バッテリ部11が有する複数のバッテリ(BAT1、BAT2)の全体または一部が用いられる動作形態となっている。
【0059】
制御部13は、例えば、各バッテリの充電状態を調整すべき状況では、スイッチSW1およびSW3のどちらかをON(一方のバッテリだけが充電動作に用いられる)とし、その他の状況では、スイッチSW1およびSW3の両方をON(両方のバッテリが充電動作に用いられる)とする。充電状態の調整の形態としては、供給電力ピーク時に向けて、両方のバッテリ(BAT1、BAT2)を同時に充電に使用できる状態に調整する(供給電力ピーク時に一方が満充電とならない様に、充電量を調整する)形態や、次の充放電兼用モードに向けて、放電側のバッテリの充電量を調整する(充放電兼用モードの期間に一方が放電を維持できる様に、充電量を調整する)形態などが挙げられる。
【0060】
なお両方のバッテリが用いられる場合は、何れか一方のバッテリだけを用いる場合に比べて、より効率の良い大電力の充電が可能となっている。このように両方のバッテリが用いられる動作形態は、バッテリ部11に出来るだけ効率良く大電力を充電させるべき状況(例えば、供給電力ピーク時)に対して、特に適した動作形態となっている。なお、スイッチSW2およびSW4がOFFとなることにより、余剰電力がパワコン3の方へ流れてしまうこと等は回避される。これにより、充電の効率低下が抑えられるとともに、パワコン3においてのバッテリ電力を負荷に供給する機能を完全に停止させることで、不要な電力消費は抑えられるようになっている。
【0061】
また制御部13は、ステップS21の動作を行った後、先述した拮抗期間が到来したか否かを監視する(ステップS22)。拮抗期間が到来した場合には、バッテリ用コンバータ11aによってイニシャル動作が実行された後(ステップS23)、蓄電システム1の動作形態は、充放電兼用モードに切替えられることになる。
【0062】
なおイニシャル動作は、次に充放電兼用モードとなったときに充電用バッテリに分別されるバッテリ(第1バッテリBAT1と第2バッテリBAT2のうちの一方)に蓄えられている電力を、次に充放電兼用モードとなったときに放電用バッテリに分別されるバッテリ(第1バッテリBAT1と第2バッテリBAT2のうちの他方)へ、移動させておく動作である。ステップS23におけるイニシャル動作では、次に第2バッテリBAT2が充電用バッテリに分別されることになるため(ステップS11、S12を参照)、第2バッテリBAT2に蓄えられている電力が、第1バッテリBAT1へ移動されることになる。
【0063】
イニシャル動作によれば、バッテリ部11内の電力を放電用バッテリの側に偏らせて、放電用バッテリの蓄電量をより十分な状態にしておき、次回の充放電兼用モードにおける放電動作をより安定させることが可能となる。なおイニシャル動作における電力の移動量および、バッテリ部11の充電状態(SOC)などは、予め適切に設定しておくことができる。
【0064】
次に放電モードにおける動作の流れについて、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。動作形態が充放電兼用モードから放電モードへ切替えられると、制御部13は、スイッチSW2およびSW4の少なくとも一方をONとし、スイッチSW1およびSW3をOFFとする(ステップS31)。
【0065】
スイッチSW2およびSW4の少なくとも一方がONとなることにより、第1バッテリBAT1と第2バッテリBAT2の少なくとも一方が、パワコン3に配線接続される。その結果、パワコン3に向けた放電に、第1バッテリBAT1と第2バッテリBAT2の少なくとも一方が用いられることになる。つまり放電モードは、放電動作に、バッテリ部11が有する複数のバッテリ(BAT1、BAT2)の全体または一部が用いられる動作形態となっている。
【0066】
制御部13は、例えば、各バッテリの充電状態を調整すべき状況では、スイッチSW2およびSW4のどちらかをON(一方のバッテリだけが放電動作に用いられる)とし、その他の状況では、スイッチSW2およびSW4の両方をON(両方のバッテリが放電動作に用いられる)とする。充電状態の調整の形態としては、次の充放電兼用モードに向けて、放電側のバッテリの充電量を調整する(充放電兼用モードの期間に一方が放電を維持できる様に、充電量を調整する)形態や、大電力の放電電力ピーク発生時に、両方のバッテリ(BAT1、BAT2)を同時に放電できる状態を保つため充電量を調整する形態などが挙げられる。
【0067】
なお両方のバッテリが用いられる場合は、何れか一方のバッテリだけを用いる場合に比べて、より効率の良い大電力の放電が可能となっている。このように両方のバッテリが用いられる動作形態は、バッテリ部11に出来るだけ効率良く大電力を放電させるべき状況(例えば、放電電力ピーク時)に対して、特に適した動作形態となっている。なお、スイッチSW1およびSW3がOFFとなることにより、放電電力がDC−DCコンバータ12の方へ流れてしまうこと等は回避される。これにより、放電の効率低下が抑えられるとともに、DC−DCコンバータ12を完全に動作停止させることで、不要な電力消費は抑えられるようになっている。
【0068】
また制御部13は、ステップS31の動作を行った後、先述した拮抗期間が到来したか否かを監視する(ステップS32)。拮抗期間が到来した場合には、バッテリ用コンバータ11aによって先述したイニシャル動作が実行された後(ステップS33)、蓄電システム1の動作形態は、充放電兼用モードに切替えられることになる。
【0069】
なおステップS33におけるイニシャル動作では、次に第1バッテリBAT1が充電用バッテリに分別されることになるため(ステップS11、S13を参照)、第1バッテリBAT1に蓄えられている電力が、第2バッテリBAT2へ移動されることになる。
【0070】
また本実施形態では、イニシャル動作は、充電モードと放電モードの双方で実行されるようになっているが、何れか一方においてのみ実行されるようにしても良い。またイニシャル動作が行われるタイミングは、充放電兼用モードに切替えられる直前に限らず、充電モード或いは放電モードにおける任意の時点とすることが可能である。
【0071】
上述した一連の動作(ステップS11〜S33)が行われることにより、蓄電システム1の動作形態が1日の中でどう変化するかについて、図5を参照しながら説明する。なお図5の上側は、1日の中での発電量(実線で示す)および需要量(破線で示す)の推移を表すグラフの一例を示しており、図5の下側は、この推移に対応して蓄電システム1の動作形態が変化する様子を示している。また図5の上側において破線で囲まれた部分は、当該グラフの一部のより詳細な状態を表している。
【0072】
図5の上側に示すように、日が出ていない夜間においては、発電量はほぼゼロであり、需要量優位期間となっている。そして日が昇り出し、発電量が徐々に増えると、やがて拮抗期間となる。その後、発電量が需要量を追い抜き、更に発電量が増えると、やがて発電量優位期間となる。そして正午を過ぎて、発電量が徐々に減ると、やがて拮抗期間となる。その後、発電量が需要量を下回り、更に発電量が減ると、やがて需要量優位期間となる。
【0073】
このように1日の中で「(需要量優位期間)→拮抗期間→発電量優位期間→拮抗期間→需要量優位期間」と推移するに伴い、図5の下側に示す通り、蓄電システム1の動作形態は、「(放電モード)→充放電兼用モード→充電モード→充放電兼用モード→放電モード」と変化する。すなわち蓄電システム1は、現時点がどの期間に属しているかに応じて、適切な動作形態を採るようになっている。
【0074】
また蓄電システム1は、充電モードから充放電兼用モードへ切替った場合には、第1バッテリBAT1を放電用バッテリに、第2バッテリBAT2を充電用バッテリに、それぞれ分別する。また蓄電システム1は、放電モードから充放電兼用モードへ切替った場合には、第1バッテリBAT1を充電用バッテリに、第2バッテリBAT2を放電用バッテリに、それぞれ分別する。
【0075】
すなわち蓄電システム1は、充電モードから充放電兼用モードへ切替った場合と、放電モードから充放電兼用モードへ切替った場合との間で、充電用バッテリに分別するバッテリと放電用バッテリに分別するバッテリを、逆転させるようになっている。これにより、バッテリ部11内の電力を放電用バッテリの側に偏らせて、放電動作を安定させること等が容易となる。また蓄電システム1においては、充放電兼用モード時での、各バッテリ(BAT1、BAT2)への充電電力や放電電力の電力配分を調整することで、各スイッチ(SW1〜SW4)のON/OFF制御を容易とすることが実現される。
【0076】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、バッテリ部11の過充電や過放電を防止して充放電制御を行うための、バッテリ部11の充電状態(SOC)の推定における誤差を少なくする機能が設けられた点、およびこれに関する点を除いて、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点を置き、第1実施形態と同じ部分については説明を省略することがある。
【0077】
図6は、本実施形態に係る蓄電システムを備えた電力システムの構成例を表している。本図に示すように蓄電システム1は、バッテリ部11、DC−DCコンバータ12、制御部13、電流計測部(15a、15b)、および各スイッチ(SW1〜SW4)を備えている。またバッテリ用コンバータ11aには、電流調整部17が設けられている。
【0078】
ここで各電流計測部(15a、15b)の計測結果の誤差割合は、計測対象の電流が小さいほど大きくなる。そのため計測対象の電流が微小である状態が続けば、SOCの推定の誤差が増大し、SOCの推定値と実際値との間に大きなズレが生じることがある。
【0079】
このようなズレの発生を防ぐことが出来ない場合は、SOCに応じた適正な充放電(過充電や過放電の回避)を保証するために、制御マージンを過度に大きくしておく必要がある。その結果、SOCの許容範囲が狭くなってしまい、バッテリの性能を十分に活かすことが難しくなる。
【0080】
なお特に拮抗期間においては、発電量と需要量が拮抗しているために余剰電力が小さくなり、充電用バッテリの充電電流(充電用バッテリ側における電流計測部の計測対象とも言える)は微小となり易い。そこで本実施形態では、電流調整部17を設けておき、拮抗期間において充電用バッテリの充電電流が増量されるようにして、SOCの推定の誤差が極力抑えられるようにする。
【0081】
電流調整部17は、一端が第1バッテリBAT1に対応した充電用配線の途中部分(図6に示すA点)に、他端が第2バッテリBAT2に対応した充電用配線上の途中部分(図6に示すB点)に、それぞれ接続されている。なおA点は、電流計測部15aよりもDC−DCコンバータ12に近い側に設定されている。またB点は、電流計測部15bよりもDC−DCコンバータ12に近い側に設定されている。
【0082】
そして電流調整部17は、現時点が拮抗期間に属している場合、放電用バッテリ側の配線(A点とB点のうちの一方)から充電用バッテリ側の配線(A点とB点のうちの他方)へ、所定量の電流を流すようにする。例えば、第2バッテリBAT2が放電用バッテリに分別されており、第1バッテリBAT1が充電用バッテリに分別されている場合には、B点からA点に向かって所定量の電流が流されることになる。
【0083】
これにより、充電用バッテリを充電する充電電流(余剰電力の電流)には、放電用バッテリの放電電流の一部或いは全部が加えられることになる。すなわち、放電用バッテリに蓄えられている電力を用いて、充電用バッテリの充電電流の増量が行われることになる。その結果、充電電流が微小である状態が続くことは回避され、先述したSOCの推定の誤差が極力抑えられる。
【0084】
また拮抗期間においては、放電用バッテリの放電電流(放電用バッテリ側における電流計測部の計測対象とも言える)も微小となり易い。そこで電流調整部17は、充電電流が微小であるときには、上述したように充電電流の増量を行う一方、放電電流が微小であるときには、放電用バッテリの放電電流の増量(増やした分は、放電用バッテリ側における電流計測部を通った後、放電用バッテリ側の配線から充電用バッテリ側の配線へ流れ、充電用バッテリに充電される)を行うようになっていても良い。
【0085】
なお拮抗期間以外においても、充電電流や放電電流が小さいとき(単に、発電量が小さい、もしくは需用電力が小さいようなとき)には、先述したものと同様の仕組みで直接バッテリ(BAT1、BAT2)間での電力移動が行われ、SOC推定誤差が軽減されるようになっていても良い。
【0086】
また蓄電システム1においては、過充電や過放電防止の保護回路を極力働かせることのないように充放電を行うことが安定動作に必要であり、そのためには、SOCを正しく推定することが必要である。上述したように第2実施形態では、充電電流或いは放電電流を増量することでSOC推定の誤差が極力抑えられるようにし、過充電や過放電防止の保護回路を極力働かせることのないように充放電を行うことが可能となっている。
【0087】
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお第3実施形態の説明においても、第1実施形態と異なる部分の説明に重点を置き、第1実施形態と同じ部分については説明を省略することがある。
【0088】
本実施形態に係る蓄電システム1は、第1実施形態(図1を参照)の場合と同様に、バッテリ部11、DC−DCコンバータ12、制御部13、電流計測部(15a、15b)、および各スイッチ(SW1〜SW4)を備えている。
【0089】
そして本実施形態においては、先述したイニシャル動作(バッテリ間の電力移動を伴う)が効率的になされるように、セルバランス動作が行われるようになっている。すなわち本実施形態では、次に示す形態のセルバランス動作が行われるようになっている。
【0090】
一方のバッテリは、各セル別の放電により、そのバッテリでのセルバランスがなされるようにする。そしてこのセルバランスでの放電電力は、他方のバッテリへの電力移動分の電力に加えられ、当該他方のバッテリの充電に用いられる。その際、充電されるバッテリ(当該他方のバッテリ)では各セル別の充電が行われ、これにより、充電されるバッテリでのセルバランスも同時に行われる。
【0091】
このようにすれば、イニシャル動作であるバッテリ間の電力移動に合致するセルバランス動作を、実現させることが可能である。そのため、充電と放電のセルバランス電力を、充放電モードの充電状態に有効利用することが可能となる。
【0092】
4.その他
これまでに説明した通り、本実施形態に係る蓄電システム1は、充放電可能である第1バッテリBAT1および第2バッテリBAT2(複数のバッテリ要素の一形態)を有するバッテリ部11を備え、余剰電力(入力される電力の一形態)をバッテリ部11に充電させて蓄える充電動作、および、バッテリ部11に蓄えられている電力を放電させて出力する放電動作、を行う。そして蓄電システム1は、その動作形態を、第1モード(充電モードと放電モードを合わせたもの)、および、第2モード(充放電兼用モード)、の何れかに切替可能に設定する機能部(動作形態設定部)を備えている。
【0093】
そして第1モードは、バッテリ(BAT1、BAT2)の全体または一部が充電動作に用いられ、その他のバッテリは放電動作には用いられない動作形態(充電モード)、または、バッテリ(BAT1、BAT2)の全体または一部が放電動作に用いられ、その他のバッテリは充電動作には用いられない動作形態(放電モード)となっている。また第2モードは、複数のバッテリ(BAT1、BAT2)が充電用バッテリ(充電用要素)と放電用バッテリ(放電用要素)に分別され、充電動作に充電用バッテリが用いられ、放電動作に放電用バッテリが用いられる動作形態となっている。そのため各バッテリ(BAT1、BAT2)において充放電が頻繁に切替えられることを、抑制することが可能となっている。
【0094】
なお本実施形態のより具体的な構成としては、第1モードとして、充電モードと放電モードの両方が設けられており、蓄電システム1の動作形態は、充電モード、放電モード、および第2モードの何れかに切替可能に設定されるようになっている。また本実施形態の一変形例として、充電モードでは、スイッチSW1およびSW3の何れもOFFにはされず、放電モードでは、スイッチSW2およびSW4の何れもOFFにはされないようにしても良い。この場合、充電モードは、充電動作にバッテリ(BAT1、BAT2)の全体が用いられる動作形態であり、放電モードは、放電動作にバッテリ(BAT1、BAT2)の全体が用いられる動作形態である。
【0095】
また蓄電システムの充電あるいは放電に関する動作形態(動作モード)としては、上述した第1モードや第2モード以外の動作モードがあっても良い。一例を挙げれば、緊急停止モード(不測の事態に備えて、充放電をすべて停止する動作モード)や、セルバランス動作モード(バッテリセルBSをすべて充電するか放電するかの何れかによって、セルバランス(同一バッテリ内のバッテリセルBSの蓄電量の均等化)を行う動作モード)が、蓄電システムの動作モードとして設けられていても良い。
【0096】
これらの動作モードは、例えば第1モードや第2モードが設定されているときに、緊急的に(或いは必要に応じて、若しくは予め定められたシーケンスに従って)、第1モードや第2モードを中断して(或いは動作モードの切替をして)、設定される。
【0097】
なお現時点が「発電量優位期間」、「需要量優位期間」、および「拮抗期間」のうちの何れの期間に属しているかを判別するための手順として、先述した第1の例が採用されている場合、蓄電システム1の動作形態は、余剰電力の大きさ(入力される電力の大きさ)に応じて切替えられることになる。また先述した第2の例が採用されている場合、蓄電システム1の動作形態は、現在時刻に応じて切替えられることになる。なお「拮抗期間」は、バッテリ部の充放電が比較的頻繁に切替ると見込まれる期間であり、「発電量優位期間」および「需要量優位期間」は、「拮抗期間」に比べて、バッテリ部の充放電が頻繁には切替らないと見込まれる期間であると言える。
【0098】
また本実施形態の蓄電システム1は、蓄えておいた余剰電力を需要に応じて負荷5へ出力する用途に利用されるが、本発明に係る蓄電システムは、その他の様々な用途に利用され得る。当該蓄電システムは、バッテリ部の充放電が比較的頻繁に切替ると見込まれる期間が発生し得る様々な環境下において、特に顕著な効果を発揮する。
【0099】
また、充放電可能であるバッテリ要素は、バッテリ(BAT1、BAT2)のようなものに限られることはなく、例えばバッテリセルであっても構わない。またバッテリ要素の個数は、2個に限られることはなく3個以上であっても構わない。また蓄電システム1は、例えば需要量優位期間(特に夜間)において、電力系統6から供給される電力をバッテリ部11へ充電させるようになっていても良い。
【0100】
また本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、余剰電力を蓄電する蓄電システムなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 蓄電システム
2 太陽電池(分散電源)
3 パワコン
4 分電盤
5 負荷
6 電力系統
9 電力システム
11 バッテリ部
11a バッテリ用コンバータ
12 DC−DCコンバータ
13 制御部
15a、15b 電流計測部
17 電流調整部
BAT1 第1バッテリ(バッテリ要素の一つ)
BAT2 第2バッテリ(バッテリ要素の一つ)
BS バッテリセル
SW1〜SW4 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能であるバッテリ要素を複数有するバッテリ部を備え、
入力される電力を前記バッテリ部に充電させて蓄える充電動作、および、前記バッテリ部に蓄えられている電力を放電させて出力する放電動作、を行う蓄電システムであって、
前記蓄電システムの動作形態を、第1モードおよび第2モードの何れかに切替可能に設定する動作形態設定部を備え、
第1モードは、
前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記充電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記放電動作には用いられない形態、または、前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記放電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記充電動作には用いられない形態であり、
第2モードは、
前記複数のバッテリ要素が充電用要素と放電用要素に分別され、前記充電動作に充電用要素が用いられ、前記放電動作に放電用要素が用いられる形態であることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記動作形態設定部は、
前記入力される電力の大きさに応じて、前記動作形態を切替えることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
分散電源による発電電力のうちの余剰電力が入力される請求項2に記載の蓄電システムであって、
前記動作形態設定部は、
前記余剰電力の大きさに応じて、前記動作形態を切替えることを特徴とする蓄電システム。
【請求項4】
前記動作形態設定部は、
現在時刻に応じて、前記動作形態を切替えることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記動作形態が第2モードである状況において、
放電用要素に分別されているバッテリ要素に蓄えられている電力を用いて、充電用要素に分別されているバッテリ要素の充電電流の増量を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記動作形態が第1モードである状況において、
次に第2モードとなったときに充電用要素に分別されるバッテリ要素に蓄えられている電力を、次に第2モードとなったときに放電用要素に分別されるバッテリ要素へ、移動させておくことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の蓄電システム。
【請求項7】
第1モードとして、
前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記充電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記放電動作には用いられない充電モード、および、前記複数のバッテリ要素の全体または一部が前記放電動作に用いられ、その他のバッテリ要素は前記充電動作には用いられない放電モードの両方が設けられ、
前記動作形態設定部は、
前記蓄電システムの動作形態を、充電モード、放電モード、および第2モードの何れかに切替可能に設定することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の蓄電システム。
【請求項8】
充電モードから第2モードへ切替った場合と、放電モードから第2モードへ切替った場合との間で、
充電用要素に分別するバッテリ要素と放電用要素に分別するバッテリ要素を、逆転させることを特徴とする請求項7に記載の蓄電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−253849(P2012−253849A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122625(P2011−122625)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】