説明

蓄電池充電システム

【課題】 エネルギー効率の良い電気自動車用の蓄電池充電システムを提供する。
【解決手段】 電気自動車300のバッテリ301を充電する充電システムにおいて、受変電設備100内に混触防止板をB種接地とした電気自動車充電用のトランス102’を設け、高電圧(400V級)に変換し二次側を非接地出力する。従来、充電装置200内に存在した昇圧用トランス201を省くことが可能となり、これによる電力損失を無くすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受変電設備、充電装置及び充電システムに関し、特に乗用電気自動車またはフォークリフト用電気自動車に等に使用される蓄電池を充電するための受変電設備、充電装置及び充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車用の充電装置を配備する需要家では、大電力を使用するため、受変電設備に一般負荷向けのトランスとは別に、電気自動車充電用のトランスを配置し、3相交流210Vの電源を電気自動車用充電装置に供給して電気自動車の蓄電池を充電している(特許文献1参照)。即ち、その一例として図3に示すように、受変電設備100においては、一般負荷用トランス101の他に電気自動車充電用トランス102を配置し、この電気自動車充電用トランス102と電気自動車用の充電装置200とを電気的に接続し二次側を接地としている。この充電装置200には、絶縁トランス201,整流部202,及びコンバータ203が備えられ、これらは電気的に接続されている。この事例では、絶縁トランス201にて200V級から400V級へと昇圧される。電気自動車300のバッテリ(蓄電池)301を充電する際には、バッテリ300を充電装置200のコンバータ203に接続するとともに、充電装置200内の昇圧用絶縁トランス201と受変電設備100内の電気自動車用トランス102とを接続して充電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−301075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この蓄電池充電システムにおいては、受変電設備100内の電気自動車用トランス102では、高圧側と低圧側が混触した場合に低圧側の電路に高電圧が印可され、焼損や故障などの事故防止や安全性の観点から二次側を接地している。したがって、電気自動車用トランス102の二次側と充電装置200との接続部分において、充電装置200側での感電を防止するために、絶縁トランス201を設け、電気自動車用トランス102の二次側と絶縁する必要があった。
また、この絶縁トランス201を用いて電圧を昇圧する必要があり、上述の問題と併せて電力の損失が問題となっていた。例えば、受変電設備100において、3相6600Vから3相200V級に変換するためのトランス102が内蔵され、自動車用充電装置200には、3相200V級から3相400V級の昇圧用絶縁トランス201及びコンバータ(AC/DC+DC/DC)203が内蔵されており、一旦3相200Vに低下させた電圧を再び上昇させることで1〜3%程度の電力損失があった。
【0005】
本発明では、エネルギー効率の良い電気自動車用の蓄電池充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電池充電システムは、受変電設備(100)内に一般配電用トランスとは別に電気自動車充電専用のトランス(102’)を備え、この電気自動車充電専用のトランス(102’)は、一般配電用トランス(101)が給電する電圧と同等又はそれ以上の給電電圧、例えば200V級又は400V級で非接地にて出力する。ここで、この電気自動車充電専用のトランス(102’)は、混触防止板をB種接地とする。
【0007】
また、充電装置(200’)には、前記電気自動車充電専用のトランス(102)で出力された電力を整流する整流部(202)と、非絶縁にてDC/DC変換するためのコンバータ(203)を備える。
【0008】
以上の構成によれば、受変電設備100内に電気自動車充電用のトランス102’を設け、電圧変換(200V級又は400V級)し非接地出力としたので、従来、充電装置(200)内に存在した昇圧用トランス201を省くことが可能となり、これによる電力損失を無くすことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エネルギー効率の良い電気自動車用の蓄電池充電システム、即ち、省スペース、省エネルギー、省施工な電気自動車用の蓄電池充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に基づく第1の実施の形態の蓄電池充電システムの構成図である。
【図2】本発明に基づく別例の蓄電池充電システムの構成図である。
【図3】従来の実施形態の蓄電池充電システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
本発明に基づく第1の実施の形態の蓄電池充電システムについて、図を参照し詳細に説明する。図1は、本発明に基づく第1の実施の形態の蓄電池充電システムの構成図である。なお、従来例で示した図2と同等の構成要素には同一の符号を付している。
【0012】
図1に示すように、この充電システムは、受変電設備100において、電気自動車充電用トランスとして、3相AC400V級(例えば380V〜440V)の専用の絶縁トランス102’を設けている。ここで、絶縁トランス102’は、混触防止板をB種接地としている。なお、二次巻線側は非接地としている。
【0013】
充電装置200’には、整流部202,及びコンバータ203が備えられ、これらは電気的に接続されている。電気自動車300のバッテリ(蓄電池)301を充電する際には、
受変電設備100内の絶縁トランス102’と充電装置200’(内の整流部)を接続されるとともに、電気自動車300のバッテリ301を充電装置200’のコンバータ203’に接続する。そして、充電装置200’において、電気自動車300のバッテリに適した電圧・電流に制御され充電が行われる。
【0014】
即ち、本実施形態では、受変電設備100で受電した3相6600Vを受変電設備100の絶縁トランス102’にてAC3相400V級に変換し、電気自動車300用の専用電源として出力する。なお、このトランスは非接地にてこの出力が充電装置200’に供給される。したがって、充電器200’は、従来存在していた充電器200(図2参照)内のトランス201を省くことが可能となる。また、安全を考慮して、充電器の出力は片線を接地してもよい。
【0015】
(第1の実施の形態の作用・効果)
次に第1の実施形態によって把握される作用・効果を以下に列記する。
(1)受変電設備100内に電気自動車充電用のトランス102’を設け、高電圧(400V級)に変換し非接地出力したので、従来、充電装置200内に存在した昇圧用トランス201を省くことが可能となり、これによる電力損失を無くすことが可能となる。また、充電装置の小型化が可能となり、省スペースで設置が可能となる。
【0016】
(2)受変電設備100内の電気自動車充電用のトランス102’の配電電圧を400V級としたので、従来と比較して通電電流値が少なくなり、受変電設備100と充電装置200’とを接続する電気配線を細くすることができる。ひいては、施工性が向上するとともに、配線材料費を安価に抑えることができる。
【0017】
(3)受変電設備100と充電装置200’とを接続する電気配線を従来の配線を従来通り、太い配線を流用する場合には、配電線の電力損失を少なくできる。
【0018】
(別例等)
なお、本発明は、第1の実施形態に限定されるものではなく、様々な別形態の実施が可能である。
・ 前記実施形態においては、電気自動車用のトランス102’の配電電圧を400V級としたが、これに限定されるものではなく、200V級(例えば190V〜230V)としてもよいし、その中間的な電圧状態に保っても良い。日本国内では、一般配電用トランスが給電する電圧を200V級とすることが多いが、それと同等又はそれ以上の給電電圧を出力することにしてもよい。例えば、400V級以下の電圧とした場合(図2参照)には、充電装置200’のコンバータ203’’において電圧を昇降圧させる昇降圧手段を設ける(例えば昇降圧タイプのチョッパー方式を有する昇降圧型コンバータ203’’とする)ことも可能である。
・ 前記実施形態において、電気自動車用の蓄電池充電システムとしたが、これに限定する必要はなく、例えば、家庭や各施設における補助用バックアップ電源の充電に利用することも可能である。
【0019】
(付記)
前記実施形態から把握される技術的思想を以下に列挙する。
(ア) 受変電設備及び電気自動車用充電装置を備える充電システムにおいて、
前記受変電設備内に一般配電用トランスとは別に電気自動車充電専用のトランスを備え、
当該電気自動車充電専用のトランスは、混触防止板をB種接地とし、前記トランスの二次巻線側を非接地にして前記トランスの一次巻線側とを絶縁状態にするとともに、
一般配電用トランスが給電する電圧と同等又はそれ以上の給電電圧を出力し、この出力を前記電気自動車用充電装置に供給する、
ことを特徴とする蓄電池充電システム。
【0020】
(イ) 前記技術的思想(ア)であって、
前記電気自動車充電専用のトランスにて前記受変電設備で受電した電圧を200V級又は400V級電圧として出力する蓄電池充電システム。
【0021】
(ウ) 前記技術的思想(ア)または(イ)であって、
前記電気自動車用充電装置内には、前記電気自動車充電専用のトランスで出力された電力を非絶縁にてDC/DC変換するためのコンバータを備える蓄電池充電システム。
【0022】
(エ) 前記技術的思想(ア)〜(ウ)のいずれか1つてあって、
前記蓄電池充電システムにおいて、受変電設備と電気自動車用充電装置とを一体型で構成する蓄電池充電システム。
【符号の説明】
【0023】
100…受変電設備、102…電気自動車充電用専用トランス、200,200’…充電装置、201…整流部、203,203’,203’’…コンバータ、300…電気自動車、301…バッテリ(蓄電池)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受変電設備及び電気自動車用充電装置を備える充電システムにおいて、
前記受変電設備内に一般配電用トランスとは別に電気自動車充電専用のトランスを備え、
当該電気自動車充電専用のトランスは、混触防止板をB種接地とし、前記トランスの二次巻線側を非接地にして前記トランスの一次巻線側とを絶縁状態にするとともに、
一般配電用トランスが給電する電圧と同等又はそれ以上の給電電圧を出力し、この出力を前記電気自動車用充電装置に供給する、
ことを特徴とする蓄電池充電システム。
【請求項2】
前記電気自動車充電専用のトランスにて前記受変電設備で受電した電圧を200V級又は400V級電圧として出力することを特徴とする請求項1に記載の蓄電池充電システム。
【請求項3】
前記電気自動車用充電装置内には、前記電気自動車充電専用のトランスで出力された電力を非絶縁にてDC/DC変換するためのコンバータを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電池充電システム。
【請求項4】
前記蓄電池充電システムにおいて、受変電設備と電気自動車用充電装置とを一体型で構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蓄電池充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−177003(P2011−177003A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166620(P2010−166620)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000144544)レシップホールディングス株式会社 (179)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】