説明

蓄電池端子用接続かんの傾き矯正部材

【課題】複数の蓄電池の高さや位置のずれた蓄電池の端子同士を接続する際に、その高さや位置を調節することなく接触抵抗の低い接続を可能とする部材を提供する。
【解決手段】蓄電池の端子と接続かんのボルトによる接続に用いる二個の部材で、一方にはその下面に凹部を設けて上面は平面とし、他方はその上面に凸部を設けて下面は平面とした円盤状に形成し、その凹凸面で対向させて端子と接続かんの間に挿入する。ボルトによる端子への締め付けの際に、端子の高さの差による接続かんの傾斜に応じて上部の部材が凹凸面で摺動により傾いて接続かんとの接触面が矯正されて平行となるため、接触面積が均一に広くとれて接触抵抗が低減されるとともに、その長期安定性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する蓄電池の端子間を接続する接続かんの傾きに対する接触部位の矯正部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電池、例えば非常用電源として用いられる据置用鉛蓄電池は、多数の鉛蓄電池を直列または並列に接続して使用される。蓄電池の接続には、通常は両端に開口穴を有する導電性の金属による板状の接続かんが用いられ、これを互いに隣接する蓄電池の端子の頂面間に差し渡し、それぞれの端子に開口穴を貫通するボルトをナットで締結することで接続される。
【0003】
この場合、隣接する蓄電池に、蓄電池の端子自体の高さのばらつきや、蓄電池を据え付ける架台あるいは据え付け時の高さや位置のずれなどが発生すると、図3(イ)(ロ)に示す通り、差し渡した接続かん4に傾きが発生する。図3(イ)は、蓄電池3の端子6の頂面に接続かん4を当接して接続する場合の図で、蓄電池の高さがずれた場合、この状態でボルト5を蓄電池3の端子6の頂面に掘り込み形成されたナット(図示せず)に螺合して接続かん4を端子6に締結すると、蓄電池3の端子6の頂面と接続かん4との接触面が平行とならず、接触が局部的となって接触面積が減少し、接触抵抗が増大する、あるいは長期的には接続かんの変形が生じて、接触抵抗の経時的な増大が起きるため好ましくない。
【0004】
図3(ロ)は、蓄電池3の端子6の側面に接続かん4を当接して接続する場合の図で、蓄電池の位置がずれた場合(紙面上では、上下にずれている)、同様の状態が発生し、同様の問題が生じる。なお、図3(ロ)において、符号7はナットである。また、1個の蓄電池に端子6が2個あるは、正負極端子で、蓄電池を直列に接続する場合は、一方の蓄電池の端子が正極端子である場合、これに接続かんで接続される他方の蓄電池の端子は負極端子である。図3(イ)においても同様に1個の蓄電池に端子は2個あるも、図面上省略されているものである。
【0005】
この問題を解消するため、特許文献1には蓄電池の端子とこれに接続される接続かんの間に編組線を介在させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-197173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、編組線を介在させた場合には、次のような問題がある。すなわち、編組線を接続部に用いると、その内部組織が均一であったとしても、変形時に組織が不均一となり、ボルトなどの締め付け力により編組線が押しつぶされて導電性に大きく寄与する部分と、力を受けずに変形しないで導電性に余り寄与しない部分が発生し、接触抵抗の減少に限度がある
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたもので、上面を平面に形成し、下面を球状凹面に形成した第一の部材と、上面を球状凸面に形成し、下面を平面に形成した第二の部材とを作成し、これら二つの部材をその凹凸面で対向させて嵌合し、蓄電池端子と接続かんを締結する際に、これら嵌合された二つの部材を間に介在するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
このように、凹凸面を嵌合した部材を介在させることで、蓄電池端子の高さや位置に差異が生じ、接続かんが傾斜して締結されるような場合においても、その傾きに応じて嵌合した凹凸面が円弧状に摺動するため、第一の部材はその上面を傾斜した接続かんの下面と平行に接触しながら傾いて接触し、同時に第二の部材の下面は蓄電池端子の上面と平行に保持して接触させることができる。その結果、傾斜した接続かんにおいても接続かんと端子間の良好な接触が確保、維持できる矯正部材を構成するものである。これにより、接続かんの傾斜により接続かんと端子の接触が局部的になって接触抵抗が大きくなる、あるいは長期的に締結力が不均一、不安定となって接触抵抗が増大するなどの問題を防止することができる。
【0010】
なお、接続かんの傾きや接触状態の差は、蓄電池や端子部の設計公差、据え付け位置或いは据え付け架台の傾きによって生じる場合もありうるが、第一の部材と第二の部材による上記の摺動による矯正効果は全く同様に得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高さの異なる蓄電池端子間に接続かんを渡しても端子と接続かんとの間に十分な接触面積を確保することが出来ると共に、均一に締結できるので、接続部における接触抵抗を低くできるとともに、その増加を防止する効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の傾き矯正部材を示す図。
【図2】本発明の傾き強制部材を用いた蓄電池端子の接続状態を示す正面部分図。
【図3】従来の蓄電池端子の接続部を示す図で、(イ)は端子の頂面に接続かんを接続する場合の接続状態を示す正面部分図、(ロ)は端子の側面に接続かんを接続する場合の接続状態を示す上面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図により説明する。 図1は本発明の実施形態の図である。図1(イ)は、第一の部材1の平面図であり、図示される如く、第一の部材1は円盤形状をしている。図1(ロ)は、第一の部材の正面図で、図示される如く、この第一の部材1の相対する上下面において、上面11は平面で、下面は切削により球状の凹面12に形成されている。図1(ハ)は、第二の部材2の正面図で、図示される如く、この第二の部材2の相対する上下面において、上面21は切削により球状の凸面に形成され、下面は平面である。図1(ニ)は、第二の部材2の平面図で、第一の部材1と同様に円盤形状である。そして、この第一の部材1の下面12の球状凹面と、第二の部材2の上面21の球状凸面は同一の曲率半径とし、相互の接触面では隙間なく嵌合し摺接する。
【0014】
第一の部材1および第二の部材2の外径は通常は同じとし、接触抵抗の点からできるだけ大きくするが、蓄電池のサイズにより適宜選定できる。しかし、部材の径が通常より小さい場合や、接続かんの傾斜が大きい場合は、いずれか片方の部材外径を他の部材より大きくして摺動による部材の位置ずれで起きる接触面積の減少を防ぐことが望ましい。
【0015】
また、第一の部材1には、締結ボルト用の挿通口13がボルト径より大きな円形、長円形もしくは楕円形状に形成され、第二の部材2には、ボルト径とほぼ同じ大きさの円形の挿通口23が形成される。これにより接続かんと当接する第一の部材1のみを摺動して移動する部材とすることが可能となるので、ボルトによる垂直方向の締結が容易となり、また第二の部材2が端子からずれることを防止できる。
【0016】
図2はその使用形態を示す図である。それぞれ隣接して配置された鉛蓄電池3、3は、極板群や電解液が収納された電槽と電槽の蓋からなり、蓋の上面には通常そうであるように、頂面が水平な端子6が突出して形成されている。鉛蓄電池3には、端子は正負極それぞれの端子が形成されるが、1方のみを図示し、他方は省略した。端子6の頂面に本発明による対向した状態の第一、第二の部材1、2および接続かん4を乗せ、締結用ボルト5を上から接続かん4の開口穴および第一、第二の部材1、2の挿通口に通し、端子6の頂面に掘り込み形成したナットとしての雌ねじ孔7に螺合し締めつけて接続かん4が接続される。隣接する鉛蓄電池3の端子6には接続かん4の他端を同様に取り付けて鉛蓄電池3同士を接続する。
【0017】
この際に、いずれの端子6においても、端子6頂面に第二の部材2の平面な下面を接触させ、接続かん4の下面には第一の部材1の平面な上面を接触させると共に、第一の部材1の下面の球状凹面と第二の部材の上面の球状凸面を互いに嵌合させた。これにより鉛蓄電池3、3間に設計公差等により水平方向に高さの差が生じ、接続かん4の傾斜が発生しても、嵌合された球状凹面と球状凸面により第一の部材1と第二の部材2が互いに摺動接触し、接続かん4と第一の部材1、第一の部材1と第二に部材2および第二の部材2と端子6の間が均一に面密着した接触状態となる。そして、締結用ボルト5を締めつけることにより蓄電池端子間の均一な接続が達成できる。
【0018】
上記各部材の外径寸法は、第一の部材1は、直径30mm、周側部の厚さ5mmの円盤状とし、その下面に曲率半径170mmの球状凹面を形成したもの、第二の部材2は、直径30mm、周側部の厚さ2mmの円盤状とし、その上面に曲率半径170mmの球状凸面を形成したものである。また、蓄電池の端子の直径は28mmである。これら曲率半径の寸法は、同一外径であれば、対向する凹凸面の形状は、その曲率半径(R)が小さい場合は蓄電池端子高さの差を吸収しやすいが摺動距離は小さくなる。反対にRが大きい場合は高さの差は吸収しにくいが摺動距離はとりやすい。
【0019】
上記使用形態では、端子に締結される締結用ボルトの径は10mmであり、第一の部材1の挿通口は直径13mm、第二の部材2のそれは直径11mmである。なお、接続かん4の開口穴は直径13mmである。
【0020】
また、上記第一、第二の各部材は、真鍮、または鉛めっきした銅あるいは銅合金などの導電性を有する材料で構成し、該凹凸面は切削、プレス、鋳造法などにより作成できる。
【0021】
なお、接続かん4は、真鍮、または鉛めっきを施された銅あるいは銅合金からなり、その両端に開口穴のある短冊状に形成される。
【0022】
以上により、図2に示したごとく、蓄電池の設計公差あるいは蓄電池の据え付け用架台の寸法や組み立てなどにより蓄電池端子の高さの差、あるいは角度差が発生している場合に、第一の部材1が第二の部材2に対して、その嵌合する接触面で摺動して円弧状に位置ずれを起こし、第一の部材1の上面平面は接続かんと平行な接触面となり、また第二の部材2はその下面平面で端子と平行な接触面が得られることになる。
【0023】
従って、端子および接続かんへの締結力が、部材および接続かんの変形を来たすことなく均一に分布するため、広い面積で均等な接続が可能となり、引用文献1に記載された編組線を用いた場合に起きる締結力の不均一さが回避できるので、接触抵抗を低くできるとともに、長期に使用した場合の抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0024】
なお、上記では、端子内部にボルトの雌ねじ孔を形成し、これにボルトをねじ止めして接続かんを固定する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、端子にボルトを植立して、これに部材や接続かんを挿通してナットにより固定する方法でも良い。
【0025】
また、上記したように各部材の凹凸部の表面状態はできるだけ平滑とし、摺動部の接触抵抗を低減するが、さらにその電気的安定性を確保するために導電性、耐食性のある潤滑剤や防錆剤の少量塗布を適用することもできる。
【0026】
さらに、本実施形態では、各部材を円盤形状として説明したが、その外部形状はこれに限定されず、矩形でも多角形などでもよく、また部材の厚みも締め付け力で変形しない範囲であれば適宜選定することができる。
【0027】
また、上記使用形態とは反対に、第一の部材を端子側に、第二の部材を接続かん側に配置するようにしても良いが、その場合でも、前記した理由により、各部材のサイズ、挿通口などの相互関係は同様とすることが必要である。
【0028】
また、上記使用形態では、第一部材と第二部材を共に直径30mmとして、端子の直径より大きくして、部材の摺動による部材間の接触面積が減少しても、端子との接触面積分は確保しようとする例を示したが、第一部材の直径を例えば32mmと第二部材のそれより大きくすれば、部材の摺動による部材間の接触面積が多少でも減少しないようにすることが出来る。
【0029】
さらに、本発明の第一の部材と第二の部材からなる傾き矯正部材は、図3(ロ)に示すような、平板状の端子を有する蓄電池の側面に接続かんを当接して接続する場合にも、その端子と接続かんの間に同様に配置し、用いることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の使用により、隣接する蓄電池の端子の高さが異なる場合にも、その段差を吸収して接続かんを取り付けられるので、接触抵抗の低い接続方法が実現できる。
【符号の説明】
【0031】
1 第一の部材
2 第二の部材
3 蓄電池(鉛蓄電池)
4 接続かん
5 ボルト(締結用ボルト)
6 端子
7 ナット(雌ねじ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池間を接続する接続かんと蓄電池端子との間に配置して用いられる蓄電池端子用接続かんの傾き矯正部材において、該傾き矯正部材は、上面を平面に形成し下面を球状凹面に形成した第一の部材と、上面を球状凸面に形成し下面を平面に形成した第二の部材とを、該凹凸面を対向嵌合させて配置されることを特徴とする蓄電池端子用接続かんの傾き矯正部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−43670(P2012−43670A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184636(P2010−184636)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】