説明

蓋材及び該蓋材を用いた包装材

【課題】アルミニウム箔を用いずに良好なデッドホールド性を備えた蓋材を提供する。
【解決手段】裏面側の剛度が1.00〜1.60N/mの紙層4の表面側に、密度が900kg/m3以上、GPCに基づくMw/Mnが4〜16のエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、延伸倍率が6〜21倍である延伸樹脂フィルム層3を積層し、該紙層4の裏面側にシーラント層5を積層した積層体を、延伸樹脂フィルム層3の延伸方向が蓋材の開封方向と略平行になるようにして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナック菓子や即席食品等を内容物とする容器の蓋材に関し、特に、アルミニウム箔を持たない蓋材と該蓋材を用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に即席食品容器を覆う蓋材としては、印刷等を施した紙層の内側にアルミニウム箔と容器の開口部に接着するシーラント層を備えた積層体が一般的である。このような蓋材において、アルミニウム箔は、光による内容物の変質を防止するための遮光性と、該蓋材を途中まで容器から剥がして捲り上げた状態で容器内に熱湯等を注ぎ易いように、該蓋材が塑性変形して捲り上げた状態を保持するデッドホールド性を当該蓋材に付与するための層である。
【0003】
しかしながら、アルミニウム箔を有する蓋材を用いた場合、金属製の夾雑物の混入を、蓋材を容器に接着して密封した後に金属探知器及びX線によって検査することが不可能であった。また、アルミニウム箔を含む蓋材を焼却処分した場合には、焼却炉を傷める恐れがあった。そのため、アルミニウム箔を持たない蓋材の開発が急務となっており、例えば特許文献1には紙層の内側に極薄のポリエステル系フィルムを積層した蓋材が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−104484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウム箔を持たない蓋材において、遮光性は紙層への印刷等によって従来と同レベルで実現するものの、デッドホールド性については、アルミニウム箔を有する蓋材に替わるものが未だ実現していないのが現状である。
【0006】
本発明の課題は、従来のアルミニウム箔を有する蓋材に匹敵するデッドホールド性を備えた蓋材を提供し、該蓋材を用いて金属夾雑物の探知及び使用後の焼却処分が可能な包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓋材は、容器の開口部に周縁部を接着して密封する蓋材であって、少なくとも、紙層と、該紙層の表面側に積層された延伸樹脂フィルム層と、該紙層の裏面側に積層されたシーラント層とを有する積層体からなり、
上記紙層の裏面側の剛度が1.00〜1.60N/mであり、
該延伸樹脂フィルム層が、密度が900kg/m3以上、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)に基づく重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が4〜16、炭素数3〜6のα−オレフィン含量が2重量%未満であるエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、延伸倍率が6〜21倍であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の包装材は、容器と、該容器の開口部に周縁部を接着して密封する蓋材とを備えた包装材であって、上記蓋材が上記本発明の蓋材であり、上記延伸樹脂フィルム層の延伸方向が、該蓋材の開封方向に略平行であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、アルミニウム箔を用いることなく、アルミニウム箔を用いた場合と同様の良好なデッドホールド性を示す蓋材が実現し、密封後においても金属探知器による金属製夾雑物の検査が可能となった。また、当該蓋材は金属を含まないため、焼却処分しても焼却炉を傷めることがない。よって、食品衛生上、環境上、望ましい蓋材及び該蓋材を用いた包装材が提供される。本発明の包装材は、菓子や即席食品の包装材として好ましく用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に本発明の蓋材の一例の平面図を、図2に断面模式図を示す。
【0011】
本発明の蓋材は、図2(a)に示すように、基本的には紙層4の表面側(包装材の外側となる蓋材1の表面側)に延伸樹脂フィルム層3を積層し、裏面側(容器に接着される側)にシーラント層5を設けてなる。
【0012】
本発明に用いられる紙層4としては、シーラント層5を積層する裏面側の剛度が1.00〜1.60N/mであれば、従来、蓋材に用いられていた紙材がそのまま用いられる。紙層4の裏面側の剛度が1.00N/m未満の場合には蓋材が柔らかく、開封した際に曲がりやす過ぎて曲げ癖が付きにくく、また、1.60N/mを超える場合には、蓋材の反発力が強くなり、開封した際に戻り易くなってしまうため、いずれも好ましくない。尚、係る剛度は、JIS P8125、テーバ型ステフネステスターによる剛度測定方法によって測定されるものとする。
【0013】
さらに、シーラント層5についても同様に、従来、蓋材に用いられていたシーラント樹脂がそのまま好ましく用いられる。
【0014】
本発明においては、形状記憶性の有る特定の延伸樹脂フィルム層3を用いることにより蓋材に良好なデッドホールド性が発現する。係る延伸樹脂フィルム層3は、該延伸樹脂フィルム層が、密度が950kg/m3以上、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)に基づく重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が4〜16、炭素数3〜6のα−オレフィン含量が2重量%未満であるエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、延伸倍率が6〜21倍である。好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が用いられ、また、α−オレフィンとしてはプロピレンが好ましく用いられる。このような高密度で適当な分子量分布を有するエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体は、中低圧法において、触媒、重合温度、分子量調節剤の使用量などの重合条件を適宜選択することによって1段階で製造するか、或いは条件を異にして各段で分子量の異なる重合体を多段階で製造することによって得ることができる。
【0015】
本発明においては、上記特定のエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体を延伸倍率が6〜21倍の一軸延伸フィルムとして用いるが、係る延伸樹脂フィルムとしては、三井化学(株)より「テクノロート」の商品名で市販されているものを用いることができ、フィルムを紙層4やシーラント層5とドライラミネート或いは押出ラミネートによって積層して所望の積層体とする。好ましい厚さは20〜80μmである。該フィルムの厚さが20μm未満では薄くて必要な剛度がでない。また、80μmを超えると剛度が強すぎてしならず、蓋材として不適である。尚、延伸樹脂フィルム層3は紙層4の表面側、即ちシーラント層5とは逆側に積層される。
【0016】
また、本発明において延伸樹脂フィルム層3を紙層4の表面側に設ける理由は、本発明の蓋材を部分的に開封した際、表面側の方が小さい曲率半径で曲がることになり、最も曲がる表面側に延伸樹脂フィルム層3を配置することで、良好なデッドホールド性が得られる。
【0017】
さらに、延伸樹脂フィルム層3に紙層4を隣接させることで、開封時に曲げ癖が良好につき、相乗効果で極めて良好なデッドホールド性が発現できる。従って、延伸樹脂フィルム層3及び紙層4のいずれが欠けても本発明の効果が得らなくなってしまう。尚、延伸樹脂フィルム層3と紙層4の間にPETフィルム等の一般的な樹脂フィルム層を介在させると、介在させたフィルムの元に戻ろうとする力によってデッドホールド性に劣るものとなってしまう。そのため、本発明においては、延伸樹脂フィルム3と紙層4とを直接接触させて積層し、且つ、前述した通り、紙層4を延伸樹脂フィルム3の裏面側へ位置させることが重要である。
【0018】
また、本発明の蓋材は、上記延伸樹脂フィルム層3の延伸方向が係る蓋材の開封方向と略平行になるように用いる。具体的には、本発明の蓋材は、周縁部を容器の開口部に接着して用いられるため、通常、周縁部の一部に図1に示すようにつまみ2を設け、該つまみ2を矢印A方向に引っ張ることで開封する。よって、本発明においては、蓋材1を構成する延伸樹脂フィルム層3の延伸方向が蓋材1の開封方向Aと平行になるように蓋材1が形成される。
【0019】
延伸樹脂フィルム層3の延伸方向を開封方向Aに平行に配置した本発明の蓋材1を容器に接着し、つまみ2をA方向に引っ張って開封すると、蓋材1は良好なデッドホールド性を示し、蓋材1の開封部分に曲げ癖がついて、捲れ上がった状態を維持する。よって、蓋材1の開封部分が邪魔にならず、内容物の取り出しや水や湯の注入を容易に行うことができる。
【0020】
本発明の蓋材は、上記した紙層4、延伸樹脂フィルム層3、シーラント層5以外にも、図2(b)に示すようにポリエチレン(PE)などからなる中間層6を延伸樹脂フィルム層3とシーラント層5との間に設けても良い。さらに、図2(c)に示すように、ガスバリヤー性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)層7を設けても良い。かかるPET層7は、蓋材に酸素バリア性、水蒸気バリア性を付与することができ、また、蓋材の開封時に意図しない層間剥離が発生するのを防止するための補強層としても作用する。PET層7は、図2(a)に示した紙層4とシーラント層5の間に設けても良い。
【0021】
また本発明の蓋材に遮光性を持たせるためには、図2(c)のPET層7の裏面(シーラント層5側)に遮光印刷等を施し、遮光層を形成するのが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の蓋材を容器の開口部に熱シールする際の、蓋材の表面側の耐熱性を向上させるために、蓋材の表面側、即ち図2(a)〜(c)の延伸樹脂フィルム層3の外側に保護層を設けても良い。係る保護層は、紙やPETフィルムの積層、或いは、耐熱剤の塗布などによって設けることができるが、本発明の蓋材のデッドホールド性を損なわないように、薄く設けることが好ましい。
【実施例】
【0023】
(実施例1〜5,比較例1〜4)
図2(c)に断面構造を示した延伸樹脂フィルム層/紙層/PET層/中間層/シーラント層の積層構成を有する蓋材を作製し、デッドホールド性を評価した。尚、蓋材の大きさは一般的に市場に出回っているφ96mmの容器に用いる大きさに形成して評価した。また、下記紙層4のマット面を裏面側としてPET層7を積層し、片艶晒クラフト紙は艶面を、片アート紙はコート面をそれぞれ表面側として延伸樹脂フィルム3を積層した。
紙層4:マット面の剛度が0.74〜1.83N/mの片艶晒クラフト紙
マット面の剛度が0.57〜1.60N/mの片アート紙
延伸樹脂フィルム層3:三井化学(株)製 商品名「テクノロート」(エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン含量:0.15重量%、Mw/Mn:9、密度:964kg/m3、延伸倍率:13倍、厚さ30μm、)
PET層7:厚さ12μm
中間層6:ポリエチレン 厚さ15μm
シーラント層5:エチレン系ポリマー樹脂フィルム(厚さ25μm以下)
三井・デュポンケミカル(株)製 商品名「CMPS」
【0024】
デッドホールド性の評価方法:図1に示す蓋材1をつまみ2から矢印A方向に70mm分容器の開口部から剥がし、手を離した状態でめくった部分が反り上がる角度を測定した。
【0025】
結果を表1に示す。尚、アルミニウム箔を備えた蓋材の現行品は、同様の評価方法で開口角度が70°であり、デッドホールド性の判定には、該現行品と比較して同等もしくは優れるものは○、劣るものは×とした。
【0026】
【表1】

【0027】
(比較例5〜8)
積層構成を下記の積層構成に変更する以外は実施例4と同様にして蓋材を作製し、同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例5:延伸樹脂フィルム層/PET層/中間層/シーラント層
比較例6:紙層/延伸樹脂フィルム層/PET層/中間層/シーラント層
比較例7:紙層/PET層/延伸樹脂フィルム層/中間層/シーラント層
比較例8:紙層/PET層/中間層/延伸樹脂フィルム層/シーラント層
【0028】
(実施例6,7)
実施例4の蓋材の延伸樹脂フィルム層3の表面に坪量30gの紙層を積層する(実施例6)、或いは、厚さ8μmのPET層を積層する(実施例7)以外は実施例4と同様にして蓋材を作製し、同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の蓋材の平面図である。
【図2】本発明の蓋材の断面模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1 蓋材
2 つまみ
3 延伸樹脂フィルム層
4 紙層
5 シーラント層
6 中間層
7 PET層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部に周縁部を接着して密封する蓋材であって、少なくとも、紙層と、該紙層の表面側に積層された延伸樹脂フィルム層と、該紙層の裏面側に積層されたシーラント層とを有する積層体からなり、
上記紙層の裏面側の剛度が1.00〜1.60N/mであり、
上記延伸樹脂フィルム層が、密度が900kg/m3以上、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)に基づく重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が4〜16、炭素数3〜6のα−オレフィン含量が2重量%未満であるエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、延伸倍率が6〜21倍であることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
容器と、該容器の開口部に周縁部を接着して密封する蓋材とを備えた包装材であって、上記蓋材が請求項1に記載の蓋材であり、上記延伸樹脂フィルム層の延伸方向が、該蓋材の開封方向に略平行であることを特徴とする包装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−179417(P2008−179417A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331521(P2007−331521)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】