説明

蓋材

【課題】 積層体からなる蓋材に形状保持部材を取り付けて、デッドホールド性を付与し、タブ部に対する開封予定線まで開封したときにその形状を保持でき、蓋材を元に戻して開口部を閉じた状態にできる機能を付与した蓋材を提供することである。
【解決手段】 最内層に易剥離性の熱接着樹脂層を有する積層体からなり、外周から外方に延びるタブ部が設けられている蓋材において、少なくとも前記タブ部に形状保持部材が取り付けられていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最内層に易剥離性の熱接着樹脂層を有する蓋材に関する。さらに詳しくは、形状保持性に優れ、蓋を開封予定線まで開封した状態を保持でき、しかも、蓋材を元に戻して開口部を閉じた状態にできる蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カップ型や角型の形状をもつ容器に内容物を充填後、蓋材をヒートシールして密封包装し、使用に際しては、消費者が、蓋材のタブ部を摘んで上に引張り容易に開封できるイージーピール容器が、利便性、意匠性に優れるために、固形あるいは液状の各種の食品、例えば、ヨーグルト、プリン、ゼリーなどのデザート食品や果汁、コーヒー、ココア、乳飲料などの液状物の飲料容器、あるいは即席麺、スナック食品などの固形食品などの食器を兼ねる包装容器として広く利用されている。また、消費者が、一度で食べきれない商品や、熱湯を注いで調理する即席食品、例えば、スナック食品、即席麺などの商品は、蓋材を一部開封した状態で、内容物を取出したり、お湯を注いだりして使用され、さらには、蓋材を元に戻して開口部を閉じた状態にするために、蓋材にはイージーピール性や開封予定線まで開封した状態及び元の状態に戻して開口部分が閉じた状態に形状保持できるデッドホールド性などの機能が要求される。そして、カップ容器と蓋材との組合せや材質構成は充填機適性と、内容物が保存・流通時に要求する物理的、化学的特性の他に末端で商品を消費する顧客が取扱い易いように利便性を配慮したものとなっている。また、内容物の形状保持にすぐれたカップ容器などの成形容器は、内容物の油の酸化や、風味の低下などの化学変化を防いで保存期間を長くするための、防湿、酸素、光、香味などの各種バリア性を考慮した材料で構成されている。
【0003】
従来より上記の各種バリア性を得るために、容器やその蓋材にアルミニウム箔を積層した構成が多く使われていた。また、アルミニウム箔が多く使われる理由は、前記バリア性以外に蓋材のカール防止、開封状態及び閉止状態の形状が保持できるデッドホールド性の機能を付与することなどが挙げられ、容器特に蓋材の基本的な構成は、例えば、紙基材と、アルミニウム箔、及び熱接着樹脂層とからなる積層体であった。しかしながら、アルミニウム箔を含む蓋材で密封された包装体では、内容物を充填する工程中に容器内に誤って混入された金属片を探知するための金属検知器を使用することができないという問題点があった。また、アルミニウム箔は、分別回収することが困難であるばかりでなく、蓋材をごみとして焼却処理をしても灰分が比較的多いため、その廃棄処理が大変であるという環境上の課題があり、最近は、アルミニウム箔を使用しない構成が増加している。さらに、デッドホールド性が要求される用途にもアルミニウム箔を除いた構成の蓋材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されているような蓋材は、形状保持が要求される用途には、形状保持機能が十分でなく、例えば、即席麺の用途には、タブ部に対する開封予定線まで蓋材を開封し、蓋材が元に戻らないように手等で蓋材を押えながら、お湯を注ぎ、その後、蓋材を元に戻し開口部を閉じた状態を維持するために、蓋材の上に錘を置いて調理するなどの手間がかかるという煩わしさがある。
【特許文献1】特開2000−118546号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、積層体からなる蓋材に形状保持部材を取り付けて、デッドホールド性を付与し、タブ部に対する開封予定線まで開封したときにその形状を保持でき、蓋材を元に戻して開口部を閉じた状態にできる機能を付与した蓋材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、請求項1記載の本発明は、最内層に易剥離性の熱接着樹脂層を有する積層体からなり、外周から外方に延びるタブ部が設けられている蓋材において、少なくとも前記タブ部に形状保持部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の蓋材において、前記タブ部に対する開封予定線に前記形状保持部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蓋材は、タブ部に形状保持部材が取り付けられているために、蓋材のタブ部を手で摘み、容器から剥し、開口部の1/2以上開口し、タブ部に設けられた形状保持部材をタブ部に対向する容器のフランジ部に折り曲げて引っ掛けることにより開封した状態を保持でき、さらに引っ掛けたタブ部を容器のフランジ部からはずして元の状態に戻してタブ部に設けられた形状保持部材を元の位置の容器のフランジ部に折り曲げて引っ掛けることにより開口部分が閉じた状態に形状保持できるという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明の蓋材は、タブ部に対する開封予定線にも形状保持部材を取り付けることにより開口部を開封した状態及び再び開口部を閉じた状態に安定して保持できるという効果がある。
【0010】
また、積層体の各層を非金属性の材料で構成することにより、内容物を充填する工程中に金属検知器を使用することができ、金属片の混入を防止できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。図1は本発明にかかる蓋材の一実施形態を示す斜視図である。図2は図1の蓋材を開封した状態及び閉じた状態を示す説明図である。図3は本発明にかかる蓋材の他の実施形態を示す斜視図である。図4は図3の蓋材の開封した状態及び閉じた状態を示す説明図である。
【0012】
まず、本発明にかかる蓋材の一実施形態について、図1、図2を参照しながら説明する。図1に示すように、蓋材1は少なくとも最内層に易剥離性の熱接着樹脂層を有する積層体からなり、外周から外方に延びるタブ部2が設けられ、タブ部2の表面には、熱可塑性樹脂によって形成された帯状の形状保持部材3が接着されて構成され、さらにタブ部2に対向し、タブ部2から容器の開口部直径の1/2以上離れた位置にタブ部2からの開封方向に直交して開封予定線4が設けられている。蓋材1は、カップ状の容器5の上方開口縁に設けられたフランジ部6に、蓋材1を構成する積層体の最内層の熱接着性樹脂層面を重ね合わせてフランジ部6で熱接着されている。
【0013】
容器5は、プラスチックフィルムを積層した積層材や例えば、ポリプロピレンやエチレンビニルアルコール共重合体などを共押し出ししたシートや、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなど単体もしくはブレンド物からなるシート及び発泡シートを真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形によりカップ状に成形したものである。あるいはポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を射出成形によりカップ状に成形したり、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレンなどの樹脂を射出成形してカップ状の断熱容器に成形したものである。あるいは紙層を含む積層体を紙カップ成形機でカップ状に成形したものである。形状保持部材3は、圧延倍率5〜16倍、延伸倍率1.3〜2.5倍及び総延伸倍率10〜40倍の延伸ポリオレフィン系樹脂からなる帯状物で構成され、蓋材1の表面に熱接着されている。接着方法は、熱接着やホットメルトなどの接着剤を使用する方法が使用される。食品用途には熱接着による接着方法が好ましい。接着面は蓋材1の表面あるいは裏面の熱接着樹脂層面のどちらでもよく、用途などにより任意に選択できる。
【0014】
つぎに、蓋材1の積層体について説明する。本発明にかかる蓋材1に用いられる積層体は、内容物に対して要求される化学的保護機能(ガスバリア性、透湿度等)や物理的保護機能(引張強度、衝撃強度、ヒートシール強度等)を考慮し、表面層/中間層/熱接着樹脂層を基本構成とする積層体で設計される。さらに蓋材1の内容物の充填包装機適性(例えば、蓋材が巻取供給方式か、枚葉供給方式か)により積層体に要求される性能が変わるために積層体の構成も変わるが、例えば、枚葉供給方式の場合の代表的な構成例として、以下のような構成が挙げられる。尚、積層方法はドライラミネーション、ウェットラミネーション、エクストルージョンラミネーションなどいずれも使用でき、表示を省略する。
【0015】
(1)紙/EP
(2)紙/VMPET/EP
(3)紙/PET/EP
(4)紙/AL/EP
(5)PET/紙/EP
(6)PET/紙/VMPET/EP
(7)PET/紙/PET/EP
(8)PET/紙/AL/EP
(9)PET/EP
(10)PET/VMPET/EP
(11)PET/ON/EP
(12)OPP/PET/EP
(13)OPP/VMPET/EP
(14)PET/AL/EP
(15)PET/AL/PET/EP
などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、要求性能により様々のフィルムを組み合わせ積層体として使用できる。尚、前記構成例の記載に用いた略記号は次の通りである。EP:易剥離性の熱接着樹脂フィルム、VMPET:シリカ、アルミナ又はアルミ蒸着した二軸延伸ポリエステルフィルム、PET:二軸延伸ポリエステルフィルム、AL:アルミニウム箔、ON:二軸延伸ナイロンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルムを示す。尚、EPは蓋材1を構成する最内層の易剥離性の熱接着樹脂層を示し、易剥離機構が、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂の酢酸ビニルの混合比率を変えて容器5のフランジ部6と熱接着樹脂層の界面で剥離させる界面剥離タイプ、支持体層と熱接着層を2層または3層で共押出ししたフイルムで支持体層と熱接着層の接着強度を低くしておき、容器5のフランジ部6と熱接着して開封する際に、熱接着樹脂層の支持体層と熱接着層から剥離するようにしている層間剥離タイプ、ランダムポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどを所定の比率で混合した凝集剥離タイプの3つの機構に大別されるが、いずれも含むものである。さらに、易剥離性の熱接着樹脂層にはホットメルトタイプも用いることができる。
【0016】
上記構成例において、蓋材1のタブ部2に形状保持部材3を取り付けると、形状保持効果が得られ、特に、アルミニウム箔を含まない構成の積層体はデッドホールド性が乏しく、形状保持が難しいが、形状保持部材3を取り付けることにより、著しい形状保持効果が得られ、このような構成の蓋材は内容物の充填工程中に金属検知器が使え、金属片の混入を防止できると共に使用後は焼却廃棄が容易となるものである。また、上記構成例(4)、(8)、(14)、(15)に示したアルミニウム箔を含む積層体においては、さらに大きな形状保持効果があり、アルミニウム箔の厚みを薄くすることが可能となり、コストダウンや、廃棄時の利便性に有効となるものである。
【0017】
つぎに、図2を用いて、本発明にかかる蓋材1の使用方法について説明する。図2に示すように容器5に内容物が充填され、蓋材1で密封されたカップ入り商品を購入した消費者は、タブ部2を手で摘み、上に引張りながら蓋材1を開封し、容器開口部が1/2以上開封したら、タブ部2に対向する容器5のフランジ部6に形状保持部材3を当接し折り曲げることにより形状が保持されフランジ部6にタブ部2が引っ掛かり、開封した状態を保持できる。さらに、蓋材1で開口部を閉じたい場合には、フランジ部6に引っ掛けたタブ部2の形状保持部材3をフランジ部6から外し、蓋材1を元に戻して開口部を閉じて、タブ部2が接していたフランジ部の元の位置にタブ部2を当接し折り曲げることにより、形状保持部材3により閉じた状態を保持できるものである。このような使い方は、即席麺の調理や、食べ切れなかったスナック食品の一時保存用に好適である。
【0018】
つぎに図3を用いて他の実施形態について説明する。図3に示すように蓋材21は少なくとも最内層に易剥離性の熱接着樹脂層を有する積層体からなり、外周から外方に延びるタブ部2が設けられ、さらにタブ部2に対向し、タブ部2から容器の開口部直径の1/2以上離れた位置にタブ部2からの開封方向に直交して開封予定線4が設けられ、蓋材21の表面には、タブ部2から開封予定線4を跨ぐ位置に至るまで熱可塑性樹脂によって形成された帯状の形状保持部材23が接着されて構成されている。蓋材21は、カップ状の容器5の上方開口縁に設けられたフランジ部6に、蓋材21を構成する積層体の最内層の熱接着性樹脂層面を重ね合わせてフランジ部6で熱接着されている。その他は前記本発明の一実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0019】
つぎに、図4を用いて、本発明にかかる蓋材21の使用方法について説明する。図4に示すように容器5に内容物が充填され、蓋材21で密封されたカップ入り商品を購入した消費者は、タブ部2を手で摘み、上に引張りながら蓋材21を開封予定線4の位置まで開封する。形状保持部材23は開封予定線4を跨ぐように形成されているために蓋材21は元に戻ることなく開封した状態で蓋材21の形状が保持される。さらに、蓋材21を閉じたい場合には、蓋材21のタブ部2を摘み、蓋材21を元に戻して開口部を閉じて、タブ部2が接していたフランジ部の元の位置にタブ部2を当接し折り曲げることにより、形状保持部材23により閉じた状態を保持できるものである。
【実施例1】
【0020】
つぎに、実施例をあげて本発明にかかる蓋材について説明する。
片面コート紙(坪量79.1g/m2)と、片面に酸化アルミニウムを蒸着した厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの酸化アルミニウム蒸着面とをウレタン系樹脂からなる接着剤を用いてドライラミネーションし積層した。さらに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面にイソシアネート系樹脂からなるアンカー剤層を設けながら低密度ポリエチレンを厚さ20μm熱溶融押出しし、さらに厚さ20μmの易剥離性の熱接着樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名CMPS)をエクストルージョンラミネーションして積層体を作製した。その後、積層体を断才、打ち抜き加工を施し、さらに片面コート紙のタブ部2に厚み0.4mmの形状保持部材(積水化学工業株式会社製、商品名フォルテ)を大きさ5mm×10mmとして長手方向が開封方向になるようにホットメルト接着剤で接着しタブ部2を有する外径110mmの蓋材1を作製した。その後、射出成形された開口外径105mmの発泡ポリスチレン容器のフランジ部6と蓋材1の熱接着樹脂面を重ねて熱接着しサンプル容器を作製した。
【実施例2】
【0021】
実施例1と同じ積層体を用いて、蓋材21を作製した。形状保持部材は大きさ5mm×70mmとしタブ部2から開封予定線4を跨ぐように接着した。その他は実施例1と同様に作製した。
【0022】
上記で作製した蓋材のサンプルについて蓋材の開封した状態及び閉じた状態を評価した。実施例1及び実施例2の蓋材とも、蓋材を開封した状態及び蓋材を閉じた状態を保持でき良好な結果を得られ、形状保持効果は十分なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる蓋材の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の蓋材を開封した状態及び閉じた状態を示す説明図である。
【図3】本発明にかかる蓋材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の蓋材の開封した状態及び閉じた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1、21 蓋材
2 タブ部
3、23 形状保持部材
4 開封予定線
5 容器
6 フランジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層に易剥離性の熱接着樹脂層を有する積層体からなり、外周から外方に延びるタブ部が設けられている蓋材において、少なくとも前記タブ部に形状保持部材が取り付けられていることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記タブ部に対する開封予定線に前記形状保持部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の蓋材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−91311(P2007−91311A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286011(P2005−286011)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】