説明

蓋開閉システム及び当該システムを用いた透明基板の処理方法

【課題】FIMSシステムにおいて透明基板のポッドからの飛び出しを精度よく検知可能な構成を提供する。
【解決手段】FIMSシステムにおける開口部を閉鎖するドアの表面に対して、飛び出し検出用の光センサの投光部から受光部に該センサのセンサ光が到達可能となるようなセンサ光通過経路となる溝部を設ける。当該飛び出し検出用センサは、実際のウエハの飛び出しを監視する直前に、当該センサ光通過経路を利用して監視時の飛び出しの有無を判定するオンオフ閾値の校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれるポッド、及び当該ポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うFIMSシステムにおいて、蓋が取り外された状態にあるポッドに対して該蓋を固定してポッド開口を閉鎖する蓋開閉システム及び当該システムを用いた基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前、半導体製造プロセスは、半導体ウエハを取り扱う部屋内部を高清浄化した所謂クリーンルーム内において行われていた。しかしウエハサイズの大型化への対処とクリーンルームの管理に要するコスト削減の観点から、近年では処理装置内部、ポッド(ウエハの収容容器)、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保つ手法が採用されるに至っている。
【0003】
ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、外面を構成する面の一つにウエハ出し入れに用いられる開口とを有する略立方体形状を有する本体と、その開口を閉鎖する蓋とから構成される。この開口が形成されている面がポッドの底面ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に位置するポッドは、FOUP(front-opening unified pod)と総称され、本発明はこのFOUPを用いる構成を主たる対象としている。
【0004】
上述した微小空間は、ポッドの開口と向かい合う第一の開口部と、該第一の開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた処理装置側の第二の開口部と、第一の開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に該処理装置側の第二の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。微小空間を形成する構成は、同時にドア正面にポッド開口が正対するようポッドを支持する載置台を有している。
【0005】
載置台上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットとが配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口部からその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、FIMS(front-opening interface mechanical standard)システムと総称される。
【0006】
ここで、ポッドの蓋の開閉操作を行う際に、その前提として該ポッドに収容されるウエハは、全てが常に所定の位置に収容されていることを要する。しかし、何等かの要因によってポッド内の棚に正確に載置されず、例えば一枚のウエハがポッド開口から一部はみ出すようにして存在する場合も考えられる。このような状況において通常の蓋の閉鎖操作を行えば、ウエハの破損等、工程上大きな支障を生じさせる恐れがある。このため、通常はポッドからのウエハの飛び出しを検出するセンサを配置し、このような状況の検知を行って飛び出したウエハをそのままにして工程を続行して支障を生じさせることを防止している。このようなセンサを用いたFIMSシステムとして、例えば特許文献1〜4に開示する構成が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−128152号公報
【特許文献2】特開2003−273197号公報
【特許文献3】特開平04−075362号公報
【特許文献4】特開2003−197705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、半導体の製造工程において、石英等からなる透明な所謂ガラスウエハを用いる機会が増加している。上述した特許文献1〜3に示されるウエハの飛び出しの検出装置は、ウエハによって検出光が遮られるか否かによって得られる信号の変化に基づいてウエハの飛び出しの有無を判定するために、所謂透過型の光センサを用いている。しかし、ポッドに収容される基板がガラスウエハ等透明な基板の場合、検出光はウエハを透過して大部分はセンサの受光素子に至り、結果として検出光の光量の僅かな変化によって検出光の光路中のウエハの有無を判定せねばならない。このため、昨今は例えば特許文献4に示されるように、所謂反射型の光センサを用いてウエハの飛び出しの有無を判定する構成が多く用いられている。
【0009】
ここで、反射型及び透過型の光センサについては、使用に伴う所謂経年変化等により、発光素子側から発せられる検出光の光量が低下するという現象が存在する。また、例えば基板上に形成された配線層による所謂迷光の発生、基板毎の透過率或いは透過率の波長依存性の差等によって、受光時に得られる光の強度が所定の範囲以上或いはそれに満たない変化を生じる可能性もある。これら検出光の光量変化は、ウエハの存在の誤検出を招きかねない。この誤検出の防止のためには、通常は一定のレベルに保っておくだけで良いウエハの存在を判定する際の閾値を微妙に変動させる必要性がある。しかし、通常の操作時においてこれらの光量変化をフィードバックさせることは困難であり、また、閾値変化のための工程を通常のプロセスの間に組み入れるとしても、適当な組み入れたタイミングの確保事態が困難でもあった。
【0010】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、密閉容器たるポッドに対して蓋の取付け及び取外しをなる蓋開閉装置について、被収容物たる基板が所謂透明な基板であっても、飛び出し等の状態に際して光センサを用いて安定的に検知信号を得ることを可能とするとする密閉容器に対応する蓋開閉システム及び当該蓋開閉システムを用いた透明基板の処理方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓋開閉システムは、略平板形状を有する蓋と該蓋により閉鎖される開口を一側面に有すると共に内部に透明基板を収容可能な本体とからなる密閉容器に対して該蓋を開閉して密閉容器内部への透明基板の挿脱を可能とする蓋開閉システムであって、開口部を有する微小空間と、開口部を略閉鎖する位置と開放する位置との間で移動可能であって、蓋を保持するドアと、本体の開口を開放した状態において密閉容器内の外にはみ出した透明基板がセンサ光の光軸と交錯するように開口部近傍に配置される飛び出し検出用光センサと、飛び出し検出用光センサから信号を得、センサ光が透明基板と交錯した際に飛び出し検出用光センサから発せられる信号に基づいて密閉容器からの透明基板の飛び出しを判定する制御装置と、を有し、飛び出し検出用光センサはセンサ光を投光する投光部とセンサ光を受光する受光部とを有し、ドアは、該ドアが開口部を閉鎖した状態においてセンサ光が投光部から受光部に至る際のセンサ光の通過経路を確保するセンサ光通過経路を有することを特徴としている。
【0012】
なお、上述した蓋開閉システムにあって、制御装置は、センサ光通過経路を経たセンサ光により得られる飛び出し検出用光センサからの信号に基づいて、飛び出し検出用光センサのオンオフ閾値を校正する校正機能を有することが好ましい。また、更に、飛び出し検出用光センサは反射型の光センサの場合、センサ光通過経路に配置された、所定の反射率にてセンサ光を反射してセンサ光を投光部から受光部に送る校正用反射部材を更に有することが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る透明基板の処理方法は、略平板形状を有する蓋と該蓋により閉鎖される開口を一側面に有すると共に内部に透明基板を収容可能な本体とからなる密閉容器に対して該蓋を開閉して密閉容器内部への透明基板の挿脱を可能とする蓋開閉システムを用い、密閉容器の蓋を開放して透明基板の挿脱を実施して透明基板に対して所定の処理を施す透明基板の処理方法であって、蓋開閉システムは、開口部を有する微小空間と、開口部を略閉鎖する位置と開放する位置との間で移動可能であって、蓋を保持するするドアと、本体の開口を開放した状態において密閉容器内の外にはみ出した透明基板がセンサ光の光軸と交錯するように開口部近傍に配置される、センサ光を投光する投光部とセンサ光を受光する受光部とを有する飛び出し検出用光センサと、飛び出し検出用光センサから信号を得、センサ光が透明基板と交錯した際に飛び出し検出用光センサから発せられる信号に基づいて密閉容器からの透明基板の飛び出しを判定する制御装置と、を有し、密閉容器の蓋がドアに保持された状態において、センサ光が投光部から受光部に至るセンサ光通過経路が確保され、センサ光通過経路を経たセンサ光を受光部が得ることによって制御装置に送られる信号に基づいて、センサ光の光軸と透明基板とが交錯した際の信号のオンオフ閾値を制御装置が設定し、ドアが蓋を密閉容器より離脱させて開口を開放し、飛び出し検知センサによる密閉容器からの透明基板の飛び出しの有無の判定を実施しながら、密閉容器からの透明基板の挿脱を実施する、工程を有することを特徴としている。
【0014】
なお、上述した透明基板の処理方法において、蓋開閉システムにおける飛び出し検出用光センサが反射型の光センサの場合には、センサ光通過経路に配置された、所定の反射率にてセンサ光を反射してセンサ光を投光部から受光部に送る校正用反射部材を更に蓋開閉システムが有し、とオンオフ閾値は校正用反射部材を経たセンサ光より得られる信号に基づいて設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一のポッドに収容されたウエハの飛び出し等の状態検出について、常にポッドの蓋を開放する検出操作の直前にセンサに受光される光の強度の校正を行うことが可能となる。従って、光センサの校正を最も効果的且つ確実に行うことが可能となる。更に、校正時に得られる強度データを参照することによって、所謂飛び出しセンサの劣化状態等をモニタリングすることが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、ポッドがドア或いは開口部に接近した、蓋の開放時と同じように諸構成が配置された状態で光センサの校正を行うことが可能となる。また、先述した光通過領域を構成する複数の壁により略囲まれた状態で外乱の影響を排除しつつ光センサの校正を行うことが可能となる。即ち、検出時において通常存在する所謂迷光をある程度以上除去した状態にて前述した校正を行うことが可能となり、当該光センサにおいてこれまで成されていた校正操作の場合と比較して、校正の精度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムにおける特徴部分であるドアと光センサの概略構成を模式的に示す図であり、図1Bは図1Aに示す構成を側方から見た状態を示す。同図に示すように、ドア11にはポッドの蓋を吸着保持するための吸着パッド13、及び蓋に設けられるラッチ機構を操作するためのラッチキー15が配置される。当該ドア11は、通常前述した微小空間の開口部を略閉鎖する位置にて停止している。ここで、例えば図1A及び図1Bに示し実施形態では所謂透過型の光センサを飛び出し検知用センサとして用いている。当該センサの投光部21及び受光部23は、ポッド開口が微小空間の開口部と連通した状態においてポッドの開口を形成する平面に対し、光軸が平行且つ隣接し、更にポッド内のウエハの並置方向に一致するように配置される。即ち、従来の装置では、微小空間開口部をドア11が閉鎖した状態にあるとき、これら光センサの光軸20aはドア11により遮られた状態となる。本発明では、ドア11の表面(外部空間側に露出し且つポッドの蓋を保持する面)に、ポッド内のウエハの並置方向(上下方向)に延在して、前述した光軸20a上の遮蔽物を無くすための溝部11aが形成される。当該溝部11aはセンサ光を投光部21から受光部23に伝達可能なセンサ光通過経路として作用する。
【0018】
当該構成によれば、ドア11を動作させる直前においても光センサの校正を実施することが可能となる。また、光軸を略囲むように存在する溝の内壁により、通常ドア11が存在しない状態であればセンサに対して至る可能性のある光軸の周囲の所謂迷光のセンサへの到達を大幅に抑制することが可能となる。従って、従来行われていた光センサの校正の場合と比較して、校正精度を高めることも可能となる。なお、このような迷光の除去の効果をより高めるために、内壁に対して光吸収性、或いは特定の散乱性を付与するような表面処理を施しても良い。また、当該実施形態においては、このセンサ光の通過経路の一例として溝を示しているが、センサ光の光軸の経路を確保可能であればドアを貫通する所謂貫通穴の様式のものであっても良い。
【0019】
本実施形態で用いた透過型センサは、受光部に至る光の強度の僅かな変化を正しく検知することを要する。通常この変化が微小であり、上述したように投光部の所謂経時劣化によるセンサ光の強度変化等或いは所謂外乱の影響の排除が困難である。このため、透明基板に対しては所謂オンオフ状態の判定が容易な所謂反射型の光センサが昨今用いられている。しかし、本発明の用途の場合、例えばポッド内の棚からはみ出したウエハが傾き、反射型センサの受光部に光が至らない場合も可能性とし存在する。本発明によれば、透過型の光センサにおけるセンサ光の基準値を正確に定めることが可能であることから、上述したセンサ光の強度における微小変化にも正確に対処することが可能となる。従って、透過型センサにおけるメリットとしての基板の傾きに対しても対応することが可能となる。
【0020】
次に、光センサとして所謂反射型のセンサを用いた場合の実施形態について、図1A及び1Bと同様の様式にてドア等を示し図2A及び2Bを参照して以下に述べる。なお、図1A等に示した構成と同一の構成については、同一の参照符号を用いてここでの説明は省略する。当該実施形態では、ドア11の上方に反射型センサの投光部22及び受光部24が配置される。また、ドア11の表面には、不図示のウエハの飛び出しを検知する際の光軸に対応して、溝部11aが設けられている。当該溝部11aはセンサ光を投光部22から受光部24に伝達可能なセンサ光通過経路として作用する。更に、本実施形態では、溝部11aの所定位置に対して、校正用反射板25が配置されている。当該校正用反射板25は、投光部22から照射されたセンサ光を所定の条件にて受光部24に対して反射する。なお、本実施形態において当該校正用反射板25は単にセンサ光を全反射する所謂鏡をもちいている。しかし、実際の透明基板に対する反射光の強度に好適に対処可能とするために、校正用反射板25の反射率を所定の値とし、実際の検知対応に即した校正値が得られることとしても良い。また、ドア11の下端、即ち溝11aの下方開口部に校正用反射板25を配置しても良い。この場合、例えば校正用反射板25の反射率を対象とする透明基板と同一とすることにより、実際の飛び出し基板の検知時における溝11aの開口下方に存在する構成に依存した迷光の影響についても予め排除することが可能となる。また、同一の理由により、校正用反射板25をドア11の外部であって、溝11aをドア11外部にまで延在させたと仮定した場合の溝内部に対応する位置に配置することとしても良い。更にこれらの場合に、該校正用反射板25の下方の構成に対してセンサ光の反射をも防止する処理を施しておくとなお好ましい。
【0021】
当該構成によれば、ドア11を動作させる直前においても光センサの校正を実施することが可能となる。また、光軸を略囲むように存在する溝の内壁により、通常ドア11が存在しない状態であればセンサに対して至る可能性のある光軸の周囲の所謂迷光のセンサへの到達を大幅に抑制することが可能となる。また、反射型センサの場合には例えばこれら投光部受光部と対向する位置に存在する壁等の構成によっても影響される。しかし、校正用反射板25をこれら構成物に緩衝されない位置に配置することが可能であることから、従来行われていた光センサの校正の場合と比較して、校正精度を高めることも可能となる。なお、このような迷光の除去の効果をより高めるために、前述した透過型センサの場合と同様に、内壁に対して光吸収性、或いは特定の散乱性を付与するような表面処理を施しても良い。また、当該実施形態においては、このセンサ光の通過経路の一例として溝を示しているが、センサ光の光軸の経路を確保可能であればドアを貫通する所謂貫通穴の様式のものであっても良い。
【0022】
なお、上述した実施形態における飛び出し検出用センサは、単に投光部よりセンサ光を対象物に向けて投光し、受光部により該対象物を経たセンサ光を受光して、受光したセンサ光に応じた信号を発する構成である。後述した実施形態にて述べるように、得られた信号は蓋開閉システムたるFIMSの動作等を全般に制御する制御装置に送られる。当該制御装置は、得られた信号に基づいて、実際の基板の飛び出し状態を検出、判定等する際のセンサ光の受光強度の閾値に対応するオンオフ閾値の設定或いは校正する機能を有する。また、当該制御装置は、このような校正用の信号を得る操作をどのようなタイミングにて実施するかについても該飛び出し検出用センサに指示を行う。更に、当該制御装置は、常時該飛び出し検出用センサから送られる信号とオンオフ閾値と比較し、実際に透明基板がポッドからはみ出しているか否かについての判定を行う。
【0023】
なお、上述した実施形態において、例えば透過型センサにおける投光部受光部は開口部前面であって、鉛直方向にこれらが整列するように該開口部を構成する壁に対して固定されている。また、ドア11に設けられた溝部からなる、或いはドア11が蓋3を保持した状態において構成される、センサ光通過経路は、当該投光部及び受光部の間に構成されるセンサ光の光軸を通過させるように配置される。このように飛び出し検出用センサを配置することにより、透明基板の僅かな飛び出しに対してもこれを検知することが可能となる。また、実際の使用状態に近似する環境にて前述したオンオフ閾値の構成を行うことが可能となることから、より精度の高い基板飛び出しの検出を為すことが可能となる。しかしながら、前述した反射型センサの場合を含め、本発明におけるセンサの投光部、受光部、及びセンサ光通過経路の配置は当該実施形態に限定されない。換言すれば、本発明は、密閉容器たるポッドからはみ出した透明基板、より正確には透明基板の表面に対してセンサ光の光軸が交錯するように投光部及び受光部が配置され、且つセンサ光通過経路が該センサ光の光路を確保可能となるように形成されていれば良い。
【0024】
次に、以上述べた基板飛び出しセンサを用いた本発明に係るに密閉容器の蓋開閉システムたるFIMSシステムの実施形態について以下に述べる。図3は、概略構成を示す該システムの側断面図である。FIMSシステム101は、微小空間103を構成する筐体105及び筐体105に隣接して配置されるポッド載置部121を有する。筐体105は、更にファン107、ロボット109、第一の開口部111、第二の開口部113、ドア11、及び当該ドア11を駆動するドア駆動系115を有する。ファン107は筐体105によって微小空間103の上部に配置され、筐体105の外部空間に存在する気体を微小空間内部に導入する。筐体105の下部には気流が流出可能となるような構造が配置されており、微小空間103内部で発生する粉塵等は当該気流に運ばれて筐体105の下部から外部空間に排出される。ロボット109におけるロボットアーム109aは、第一の開口部111及び第二の開口部113を介して微小空間の外部に突出可能となっている。第一の開口部111は、筐体105において隔壁として定義される壁に設けられる。また、第一の開口部111は、ドアシステム115におけるドア11により一見閉鎖状態とされるが、ドア11の外周と第一の開口部111の内周面との間には隙間が形成されることから、当該ドア11は第一の開口部111を略閉鎖可能となっていると述べる。第二の開口部113は、ウエハ処理装置117の内部と接続されているが、当該ウエハ処理装置117の詳細に関しては本発明と直接の関係を有さないために本明細書における説明は省略する。
【0025】
ポッド載置部121は、ドッキングプレート123、ポッド固定システム125、及びドッキングプレート駆動システム127を有する。ドッキングプレート123の上面は略平面とされており、該上面にはポッド固定システム125の一部が配置される。ポッド1は、ドッキングプレート123の上面に載置され、ポッド固定システム125の当該一部、具体的にはピンがポッド1の下面に配置された不図示の被係合部と係合することによりドッキングプレート123上の所定位置に固定される。なお、ドッキングプレート123は、ポッド1を上面に載置した際に、ポッド1における本体開口2aが前述した第一の開口部111と正対するよう配置されている。ドッキングプレート駆動システム127は、ガイドレール127a及び駆動シリンダ127bを用いて、ドッキングプレート123と共に該所定位置に固定されたポッド1を該第一の開口部111に向かう方向及び離間する方向に駆動する。
【0026】
駆動用シリンダ127bは載置台121本体に一端部が固定されており、他端部となる伸縮するシリンダ端部がドッキングプレート123に固定されている。ドッキングプレート123はガイドレール127aに対して摺動可能に支持されており、駆動シリンダ127bのシリンダ端部の伸縮に応じてガイドレール127a上を摺動する。ここで、ドッキングプレート123は、ポッド1を当該ドッキングプレート123上に外部から搭載する(ロードする)或いは取り除く(アンロードする)位置が微小空間103から最も離れた位置に存在することとなり、ポッドの蓋3を取り外す位置が微小空間103に対して最も接近する位置となる。
【0027】
なお、図3に示す実施形態では図1A及び1Bに示した透過型センサの投光部21と受光部23とを用いている。これらセンサは、第一の開口部111の垂直方向に伸びる中心線を光軸として、当該第一の開口部111の上辺及び下辺に近接するように、筐体105の外壁に固定されている。また、ドア11には、該透過型センサのセンサ光が通過可能となるように同図において不図示の溝部11aが形成されている。ドア11が第一の開口部111を略閉鎖した状態、及び蓋3がドア111に当接し保持された状態、の何れにおいても、本発明におけるセンサ光通過経路は確保される。
【0028】
図4に当該FIMSシステム101の構成をブロック図として示す。上述したファン107、ロボット109、ドア駆動系115、ポッド固定システム125、及びドッキングプレート駆動システム127は、制御装置102によって各々制御される。ドア駆動系115は、ラッチキー駆動機構115f、ドア開閉用アクチュエータ115c、及びドア上下機構115dを各々独立して制御可能であるが、実際上はこれら各々の構成が一連のタイムチャートに応じて動作するようにこれら構成を制御する。なお、吸着パッド115kに対する負圧供給源108からの負圧の供給及び供給停止(負圧の破壊)の動作は、制御装置102によって行われる。ここで、ラッチキー駆動機構115fは蓋3をポッド本体2に固定する不図示のラッチ機構を操作するものであり、吸着パッド115kはドア11が蓋3を吸着保持するために用いられる。ドッキングプレート駆動システム127は、駆動シリンダ127bの駆動のオンオフを行うが、当該駆動シリンダ127の動作によってドッキングプレート123が確実に所定の二位置、即ちポッド1のロード位置に存在する場合とポッド1がウエハ挿脱可能な位置であるドック位置に存在する場合とを検知する必要がある。このため、ポッド1がドッキングプレート123上の載置されたこと、及びドッキングプレート123に対してポッド1をロード・アンロードすべき位置に該ドッキングプレート123が存在することを検知するロードセンサ127dが、ドッキングプレート駆動システム127に接続されている。また、ドッキングプレート123が上述したドック位置に存在するか否かを検知するドックセンサ127cも該ドッキングプレート駆動システム127に接続されている。
【0029】
また、本発明においては、ポッド本体2より蓋3を取り外して開口2aを開放した状態においてウエハの飛び出しを検知する、飛び出し検出用センサ20を有する。当該飛び出し検出用センサ20は、上述した投光部21及び受光部23を主要構成として含む。制御装置102は、外部操作による任意のタイミング、或いは前述した種々のセンサが発する信号、或いは種々の公正の動作を示す信号等に対応した所定のタイミングにて、当該飛び出し検出用センサ20を動作させる。また、制御装置102は、所定のタイミングにて受光素子23が受光した校正用のセンサ光より得られるデータを参照し、実際のウエハの飛び出し検知時におけるセンサの所謂オン・オフの閾値を設定する。ポッド本体2より蓋が取り外された後は、ポッド内部にウエハが戻されて蓋3による開口2aの閉鎖が為されるまで、飛び出し検知用センサ20によるポッド本体2からのウエハの飛び出しの有無のチェックが行われる。
【0030】
ここで、実際にウエハ処理作業を行う際の当該FIMSシステム101の動作について説明する。ウエハ処理作業において、所定枚数のウエハを収容し内部が清浄気体によって満たされたポッド1がドッキングプレート123上に載置される。ドッキングプレート123を載置する際に、ポッド固定システム125が動作してドッキングプレート123に対するポッド1の載置位置を所定のものとする。続いてドッキングプレート駆動システム127が動作し、ポッド1を第一の開口部111に向けて駆動する。具体的には、ポッド固定システム125によってドッキングプレート123と一体化されたポッド1を、ドッキングプレート123を介する様式にて駆動シリンダ127bが移動させる。その際、ドア11は第一の開口部111を略閉鎖する位置で停止している。当該駆動動作は、ポッド1の蓋3がドア11の当接面と当接し、ドッキングプレート123と第一の開口部111と所定の位置関係となった段階にて終了する。この時、ラッチキー駆動機構115fにおけるラッチキー115eが蓋3表面の露出するキー受容孔15bに挿貫され円板15を回転することによって蓋3をポッド本体2に対して着脱可能な状態とすると同時に、吸着パッド115kが蓋3を吸着し、蓋3がドア115aによって保持された状態となる。
【0031】
当該状態において、前述した溝部11aは開口部をポッドの蓋3によって閉鎖された状態となり、センサ光通過経路は所謂外光が遮光された状態にある貫通穴状態となる。即ち、センサ光通過経路は、該通過経路の上下の開口部、即ち投光部21のセンサ光投光端と該通過経路の開口との間、及び受光部23のセンサ光受光端と該通過経路の開口との間以外では、外光からの影響を完全に排除した状態となる。この状態にて、これら投光部21及び受光部23の間にてセンサ光の授受を行い、投光部21から受光部23に至るセンサ光の現在での強度を測定する。当該測定結果は制御装置102に送られ、実際にセンサ光の光軸中に透明基板等が存在した場合のセンサ光の減衰度を確認する際のオンオフ閾値が、得られたセンサ光の実際強度に基づいて設定される。なお、図2A及び2Bを参照して上述した反射型センサを用いた構成の場合であっても、同様の操作によってオンオフ閾値が決定される。以上の操作を経てオンオフ閾値が設定される、或いは該閾値決定のためのデータの獲得が終了したことが制御装置102によって検知された後、当該制御装置102は更なる操作の実施を行う。
【0032】
即ち、当該状態からドア開閉アクチュエータ115cが動作を開始し、ドアアーム115bが回動して蓋3を保持するドア11を第一の開口部111から微小空間103の内部方向に運ぶ。ドアアーム115bが所定角度で回動を停止した後、ドア上下機構115dが動作を開始し、ドア開閉アクチュエータ115cと共にドア11を下方に移動させる。当該動作によって第一の開口部111は全開状態となり、微小空間103は第一の開口部111を介してポッド本体2の内部と連通した状態となる。この状態においてロボット109が動作を開始し、ロボットアーム109aによってウエハ4をポッド1の内部から第二の開口部113を介してウエハ処理装置117に搬送する。搬送されたウエハは当該ウエハ処理装置117内部にて所定の処理が施される。また、この状態を維持して、当該ロボット109は、更にウエハ処理装置117内部において所定の処理が施されたウエハをポッド1内部へも搬送する。飛び出し検出用センサ20はこれらウエハのポッド1に対する挿脱操作の実行中、ポッド本体2内の所定の棚からのウエハの飛び出しの有無をチェックし続ける。
【0033】
以上述べたように、本発明によれば、ドア11を動作させる直前においても光センサの校正を実施することが可能となると同時に、実際に検出を行う条件において光センサの構成を行うことが可能となる。また、光軸を略囲むように存在する溝の内壁により、通常ドア11が存在しない状態であればセンサに対して至る可能性のある光軸の周囲の所謂迷光のセンサへの到達を大幅に抑制することが可能となる。従って、従来行われていた光センサの校正の場合と比較して、校正精度を高い状態を維持しつつウエハの処理を実施することが可能となる。なお、上述した動作例においては、センサ光通過経路がポッドの蓋とドアとによって囲まれた状態において制御装置におけるオンオフ閾値の校正が為されることとしている。しかし、例えばポッド毎の製造上の寸法公差、ゆがみ等、更には異なるポッドを使用した場合等、当該状態においてセンサ光通過経路が好適に構成されない場合も考えられる。このような場合、センサ光が受光部に至らないという信号に基づいて、或いは外部からの操作に基づいて、当該手順を変更し、ポッドの蓋がドアと当接する以前の段階にてオンオフ閾値の校正操作を行うこととしても良い。この場合、当該センサ光通過経路が上述した溝形状の場合には迷光等の影響が懸念される。しかし、設計上十分な大きさを有するものを得ることが困難ではあるが、センサ光通過経路を貫通穴様式とすることで、対応することも可能である。
【0034】
以上述べた実施形態では、本発明は所謂ガラスウエハ等の透明基板を対象とするFIMSシステムに関して主として述べている。しかしながら、本発明の適用対象は該システムに限定されず、例えばディスプレイ用のパネル、光ディスク等を収容する密閉容器等に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明の一実施形態におけるFIMSシステムにおけるドア及び飛び出し検出用センサを正面から見た状態を示す概略図である。
【図1B】図1Aに示す構成を側方から見た状態を示す概略構成図である。
【図2A】本発明の他の実施形態におけるFIMSシステムにおけるドア及び飛び出し検出用センサを正面から見た状態を示す概略図である。
【図2B】図2Aに示す構成を側方から見た状態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムの概略構成を示す部分断面を含む側面図である
【図4】本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムの概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1:ポッド、 2:ポッド本体、 3:蓋、 4:ウエハ、 20:飛び出し検出用センサ、 21:透過型センサ投光部、 22:反射型センサ投光部、 23:透過型センサ受光部、 24:反射型センサ受光部、 25:校正用反射板、 101:ロードポート装置、 102:制御装置、 103:微小空間、 105:筐体、 107:ファン、 108:負圧供給源 109:ロボット、 111:第一の開口部、 113:第二の開口部、 115:ドアシステム、 117:ウエハ処理装置、 121:ポッド載置部、 123:ドッキングプレート、 125:ポッド固定システム、 127:ドッキングプレート駆動システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板形状を有する蓋と前記蓋により閉鎖される開口を一側面に有すると共に内部に透明基板を収容可能な本体とからなる密閉容器に対して前記蓋を開閉して前記密閉容器内部への前記透明基板の挿脱を可能とする蓋開閉システムであって、
開口部を有する微小空間と、
前記開口部を略閉鎖する位置と開放する位置との間で移動可能であって、前記蓋を保持するドアと、
前記本体の開口を開放した状態において密閉容器内の外にはみ出した前記透明基板がセンサ光の光軸と交錯するように前記開口部近傍に配置される飛び出し検出用光センサと、
前記飛び出し検出用光センサから信号を得、前記センサ光が前記透明基板と交錯した際に前記飛び出し検出用光センサから発せられる前記信号に基づいて前記密閉容器からの前記透明基板の飛び出しを判定する制御装置と、を有し、
前記飛び出し検出用光センサは前記センサ光を投光する投光部と前記センサ光を受光する受光部とを有し、前記ドアは、前記ドアが前記開口部を閉鎖した状態において前記センサ光が前記投光部から前記受光部に至る際の前記センサ光の通過経路を確保するセンサ光通過経路を有することを特徴とする蓋開閉システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記センサ光通過経路を経た前記センサ光により得られる前記飛び出し検出用光センサからの信号に基づいて、前記飛び出し検出用光センサのオンオフ閾値を校正する校正機能を有することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉システム。
【請求項3】
前記飛び出し検出用光センサは反射型の光センサであって、前記センサ光通過経路に配置された、所定の反射率にて前記センサ光を反射して前記センサ光を前記投光部から前記受光部に送る校正用反射部材を、更に有することを特徴とする請求項1或いは2何れか1に記載の蓋開閉システム。
【請求項4】
略平板形状を有する蓋と前記蓋により閉鎖される開口を一側面に有すると共に内部に透明基板を収容可能な本体とからなる密閉容器に対して前記蓋を開閉して前記密閉容器内部への前記透明基板の挿脱を可能とする蓋開閉システムを用い、前記密閉容器の蓋を開放して前記透明基板の挿脱を実施して前記透明基板に対して所定の処理を施す透明基板の処理方法であって、
前記蓋開閉システムは、
開口部を有する微小空間と、
前記開口部を略閉鎖する位置と開放する位置との間で移動可能であって、前記蓋を保持するするドアと、
前記本体の開口を開放した状態において密閉容器内の外にはみ出した前記透明基板がセンサ光の光軸と交錯するように前記開口部近傍に配置される、前記センサ光を投光する投光部と前記センサ光を受光する受光部とを有する飛び出し検出用光センサと、
前記飛び出し検出用光センサから信号を得、前記センサ光が前記透明基板と交錯した際に前記飛び出し検出用光センサから発せられる前記信号に基づいて前記密閉容器からの前記透明基板の飛び出しを判定する制御装置と、を有し、
前記密閉容器の蓋が前記ドアに保持された状態において、前記センサ光が前記投光部から前記受光部に至るセンサ光通過経路が確保され、
前記センサ光通過経路を経た前記センサ光を前記受光部が得ることによって前記制御装置に送られる信号に基づいて、前記センサ光の前記光軸と前記透明基板とが交錯した際の信号のオンオフ閾値を前記制御装置が設定し、
前記ドアが前記蓋を前記密閉容器より離脱させて前記開口を開放し、
前記飛び出し検知センサによる前記密閉容器からの前記透明基板の飛び出しの有無の判定を実施しながら、前記密閉容器からの前記透明基板の挿脱を実施する、工程を有することを特徴とする透明基板の処理方法。
【請求項5】
前記蓋開閉システムにおける前記飛び出し検出用光センサは反射型の光センサであって、前記センサ光通過経路に配置された、所定の反射率にて前記センサ光を反射して前記センサ光を前記投光部から前記受光部に送る校正用反射部材を前記蓋開閉システムは更に有し、前記とオンオフ閾値は前記校正用反射部材を経たセンサ光より得られる信号に基づいて設定されることを特徴とする請求項4に記載の透明基板の処理方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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