説明

薄型表示装置の製造方法

【課題】基板にクラック等が発生することを抑制可能な薄型表示装置の製造方法。
【解決手段】電気光学パネル53の一方の面に平面形状が基板11よりも小さいスペーサーシート62を平面視で基板11内に収まるように配置する第1工程と、該一方の面に、基板11よりも大きい保護フィルム63を、平面視で基板11を収めるように貼付する第2工程と、電気光学パネル53を、該一方の面の反対側の面から薄型化する第3工程と、保護フィルム63に、平面視でスペーサーシート62の外周線から内側方向に所定の間隔を有し、深さがスペーサーシート62の一部に達する切り込み65を形成する第4工程と、を順に実施した後、切り込み65で囲まれた領域の保護フィルム63を取り除く第5工程と、スペーサーシート62及び切り込み65の外側の領域の保護フィルム63を取り除く第6工程と、を実施する薄型表示装置55の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネセンス)装置を始めとするFPD(フラットパネルディスプレイ)は、近年様々な電子機器等の表示部に用いられている。そしてかかる用途に用いられるFPDは、軽量化のために、あるいは可撓性(柔軟性)を発揮させるために、全体を薄型化して薄型表示装置とすることが望まれている。
ここで、一般的にFPDは、ガラス等からなる一対の基板と、該一対の基板間に形成された発光素子及び制御素子等と、からなる。そして、発光素子等は薄型化が困難である。したがって、薄型表示装置を製造するためには、上述の基板単体を、あるいは一対の基板を貼り合せてFPDとした後に薄型化する必要がある。かかる薄型化の手法としては、例えば特許文献1には、基板又はFPDの一方の面に保護フィルムを貼付して保護しつつ、もう一方の面からエッチングして薄型化した後、該保護フィルムを剥離・除去する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−182586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる手法は、薄型化された後の基板等から上述の保護フィルムを剥離することが困難であるという課題があった。エッチング中に一方の面を保護するためには、粘着力が充分に強いフィルムを用いる必要があるが、薄型化された基板等からかかるフィルムを剥離する場合、該基板にクラック等が発生する危険がある。また、薄型化後の接着力を弱めるために熱剥離タイプあるいはUV剥離の保護フィルムを用いた場合、生産性や設備面での負荷が増大することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる一対の基板と該一対の基板に挟持された電気光学素子を有する電気光学パネルを備える薄型表示装置の製造方法は、上記電気光学パネルの一方の面に平面形状が上記基板よりも一回り小さいスペーサーシートを平面視で上記基板内に収まるように配置する第1の工程と、上記一方の面に、上記基板よりも一回り大きい保護フィルムを、平面視で上記基板を収めるように貼付する第2の工程と、上記電気光学パネルを、上記一方の面の反対側の面から薄型化する第3の工程と、上記保護フィルムに、平面視で上記スペーサーシートの外周線から内側方向に所定の間隔を有し、深さが上記スペーサーシートの一部まで達する枠状の切り込みを形成する第4の工程と、を順に実施した後、上記切り込みで囲まれた領域の上記保護フィルムを取り除く第5の工程と、上記スペーサーシート及び上記切り込みの外側の領域の上記保護フィルムを取り除く第6の工程と、を順に実施することを特徴とする。
【0007】
このような製造方法であれば、電気光学パネルの薄型化後に、該電気光学パネルの片面を保護していた保護フィルムを容易に取り除くことができる。したがって、生産性や設備面で負荷をかけず、かつ歩留まり等を低下させることなく薄型表示装置を製造できる。
【0008】
[適用例2]上述の薄型表示装置の製造方法であって、上記スペーサーシートが微粘着シートであることを特徴とする薄型表示装置の製造方法。
【0009】
このような製造方法であれば、上述の切り込みの形成時にスペーサーシートがずれることを抑制でき、より一層歩留まり等の低下を抑制できる。
【0010】
[適用例3]上述の薄型表示装置の製造方法であって、上記第1〜6の工程を上記電気光学パネルの双方の面に対して実施することを特徴とする薄型表示装置の製造方法。
【0011】
このような製造方法であれば、電気光学パネルを構成する双方の基板を薄型化できるので、より一層薄型化された薄型表示装置を得ることができる。
【0012】
[適用例4]上述の薄型表示装置の製造方法であって、上記第4の工程は、深さが上記基板の少なくとも一部まで達する枠状の上記切り込みを形成する工程であることを特徴とする薄型表示装置の製造方法。
【0013】
このような製造方法であれば、上述の電気光学パネルが複数の該電気光学パネルが配置されたパネル集合体を分割して得られる場合において、個々の電気光学パネルに分割するための分割線を上述の切り込みと兼用できる。したがって、製造コスト等をより一層低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】有機ELパネルの模式断面図。
【図2】有機EL装置の模式断面図。
【図3】薄型化された有機ELパネルを得る工程を示す模式断面図。
【図4】有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図5】有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図6】有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる薄型表示装置としての有機EL装置の製造方法について、図面を参照しつつ述べる。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0016】
(実施形態)
図1は、本実施形態にかかる製造方法の対象となる薄型表示装置としての有機EL装置の主要な構成要素である電気光学パネルとしての有機ELパネル53の模式断面図である。図示するように、有機ELパネル53は、素子基板10と対向基板11、及びかかる一対の基板間に形成された各要素で構成されている。より具体的には、電気光学素子としての有機EL素子29等が形成された素子基板10とカラーフィルター層76が形成された対向基板11とが、シール材40及び接着層79を介して貼り合されて(対向配置されて)形成されている。
【0017】
有機ELパネル53はトップエミッション型であるため、上述の一対の基板のうち、少なくとも対向基板11は透明性が必要である。また、本実施形態の製造方法は、上述の一対の基板の材質が同一である場合の方が効率的に実施できる。したがって、有機ELパネル53では、上述の一対の基板として薄型化される前の厚さが略500μm(0.5mm)のガラス基板が用いられている。なお、以下の記載において素子基板10の接着層79側を「上」又は「上方」と表記する。
【0018】
図示するように、素子基板10上には駆動用TFT(以下、単に「TFT」と称する。)112が形成され、該TFTの上層には層間絶縁層71を介して、反射層13と電気光学素子としての有機EL素子29等が形成されている。TFT112と有機EL素子29、及び図示を省略したスイッチング用TFTと保持容量等により、有機EL画素(符合なし)が構成される。有機ELパネル53の表示面には、かかる有機EL画素が規則的に形成されている。有機EL装置は、かかる有機EL画素の各々に3原色光の何れかを任意の強度で射出させることで、上述の表示面にカラー画像を形成(表示)できる。
【0019】
TFT112は、半導体層21と、Ti(チタン)あるいはAlCu(アルミニウム・銅合金)等からなる導電体層をパターニングして形成されたゲート電極23、及び、半導体層21とゲート電極23との間に形成されたゲート絶縁層70等からなる。半導体層21のうちゲート電極23と平面視で重なる領域がチャネル領域22であり、該チャネル領域の両側にソース領域25とドレイン領域26とが形成されている。なお、素子基板10とTFT112との界面に保護層を別途形成してもよい。
【0020】
TFT112の上層には、窒化シリコン、又は酸化シリコン等の無機絶縁材料とアクリル樹脂等の有機系材料とを積層した層間絶縁層71が形成されている。ドレイン領域26には、層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール27を介して、画素電極35が電気的に接続されている。画素電極35の形成材料は後述する陰極19よりも仕事関数が高いことが必要であり、かつ、導電性が必要である。そのため、画素電極35は透明導電材料であるITO(酸化インジウム・錫合金)で形成されている。
【0021】
画素電極35は、上述のTFT112毎に1つずつ形成されている。したがって、画素電極35は、島状にパターニングされており、隣り合う該電極とは電気的に互いに独立している。そして、平面視で画素電極35が形成されていない領域には、隔壁74が形成されている。隔壁74はアクリル樹脂等の絶縁性材料層をパターニングして形成されており、隣り合う画素電極35間の絶縁を担保している。
【0022】
画素電極35と隔壁74とが形成された素子基板10の上層には、発光機能層15が全面的に形成されている。発光機能層15は総称であり、具体的には素子基板10側から順に正孔注入層と正孔輸送層と有機EL層と電子輸送層との計4層が積層されて形成されている。後述するように有機ELパネル53はカラーフィルターで上述の3原色光を得ているため、発光機能層15は通電により白色光を射出する白色発光機能層である。
【0023】
発光機能層15の上層には、共通電極としての陰極19が全面的に形成されている。陰極19は透明性(透光性)と導電性が必要である。そして、電子注入性を確保するために、発光機能層15との界面に画素電極35の形成材料よりも仕事係数が低い材料層を電子注入層として備えることが好ましい。そこで、有機ELパネル53においては、電子注入層としてAlを2nm、LiF(フッ化リチウム)を1nm積層した上に陰極19としてITOを積層して、透明性と電子注入性を確保している。陰極19と発光機能層15と画素電極35との積層体が有機EL素子29である。TFT112を介して画素電極35に電圧が印加されると該画素電極と陰極19との間に発光機能層15を介して電流が流れ、発光機能層15に含まれる有機EL層は電流量に応じて発光する。
【0024】
有機ELパネル53はトップエミッション型であり、対向基板11側に画像が形成される。そのため、素子基板10側へ向かった光を上方に反射する反射層13と該反射層を覆う保護層28とが画素電極35の下層に形成されている。反射層13の形成材料は、反射率が高く加工性(パターニング性)に優れた材料が好ましい。したがって、有機ELパネル53の反射層13は、Al(アルミニウム)等で形成されている。また、保護層28は、窒化シリコン等のITOのエッチャントに対して耐性(選択性)のある材料で形成されている。なお、画素電極35は透明性が必須ではないためAg(銀)等の反射性材料で形成することもできる。かかる場合、反射層13と保護層28は不要となる。
【0025】
素子基板10上に規則的に形成された有機EL素子29及び隔壁74の上層には、封止層78が形成されている。封止層78は単層であるように図示されているが、実際には陰極19の上層から順に形成された陰極保護層と有機緩衝層とガスバリア層との計3層を少なくとも含む積層体である。
【0026】
対向基板11の素子基板10側にはカラーフィルター層76が形成されている。カラーフィルター層76は、各々の有機EL素子29に対向する位置に形成されたカラーフィルター75(r,g,b)と該カラーフィルター間に形成された遮光性材料からなるブラックマトリクス75kとを備えている。カラーフィルター75(r,g,b)は所定の波長範囲の光を透過させ他の波長範囲の光を吸収することで、白色光から有色光を得ることができる。小文字のアルファベット(r,g,b)は透過させる波長範囲の光が該当する色を示している。有機EL素子29自体は、射出する光の色による構造の差異は無い。すなわち、上述の有機EL画素が射出する光は、カラーフィルター75(r,g,b)によって決定されている。
【0027】
本実施形態の説明において、かかる封止層78で覆われた有機EL素子29の集合体を、以下「素子層12」と表記する。素子層12の周囲は、均一な高さ(素子基板10上からの距離)を有する壁状構造のシール材40で囲まれている。そして該シール材に囲まれた領域内には接着層79が充填されている。
【0028】
素子基板10に、かかるシール材40と接着層79とを介して対向基板11を対向配置することで有機ELパネル53が得られる。シール材40は熱等により硬化する樹脂からなり、上述の対向配置後に硬化させることができる。硬化後のシール材40の高さは略15〜20μmである。したがって、上述の一対の基板は略15〜20μmの間隔をおいて対向配置されている。なお、有機ELパネルの平面視形状は特に限定はない。本実施形態の対象となる有機ELパネル53は矩形である。したがって、素子基板10及び対向基板11は共に矩形である。
【0029】
図2は、実施形態の製造方法の対象となる薄型表示装置としての有機EL装置55の模式断面図である。図示するように、有機EL装置55は有機ELパネル53を保護シートで被い、外部の駆動回路等と導通させるための回路基板等を加えたものである。図1では図示を省略したが、素子基板10の外縁部には接続端子46が形成されている。有機EL装置55は、該接続端子に配線基板47を装着し、さらに、対向基板11側を第2の保護シート9で被い、素子基板10側を第1の保護シート8で被っている。そして、上記双方の保護シート(8,9)間の隙間、及び、端部の合わせ目等には封止樹脂48を充填して気密性等を担保している。
【0030】
有機EL装置55は、携帯電話機等の表示画面等、あるいは電子ブック等に用いられる。そして、かかる用途に用いられる場合において、有機ELパネル53を構成する一対の基板(10,11)を薄くして薄型化することで有機EL装置55全体の重量を軽減でき、可撓性等も付与できる。
【0031】
図3は、薄型化された有機ELパネル53を得る工程の概略を示す模式断面図である。図3(a)に示すように、有機ELパネル53は、薄型化される前の一対の基板(10,11)を用いて、複数個が同時に形成される。かかる複数個の有機ELパネル53が形成された段階を、以降「パネル集合体51」と表記する。図示するように、パネル集合体51は、複数個の素子層12が規則的に形成された素子基板10と複数個のカラーフィルター層76が規則的に形成された対向基板11とを各々の素子層12を囲むように形成されたシール材40と外周シール材41とを介して貼り合せて形成されている。
【0032】
外周シール材41は、複数個の有機ELパネル53が形成された領域の全体を囲む平面視で環状のシール材であり、シール材40と同じ材料を用いて同時に形成されている。上述したように、シール材40は素子層12の周囲を囲むように、平面視で環状に形成されている。外周シール材41は、シール材40の外側に2重に形成されており、複数個のシール材40を一括して囲んでいる。なお、本実施形態における外周シール材41の形成位置は、基板(10,11)の外周線から3mm内側と5mm内側の2箇所である。また、本実施形態の外周シール材41は二重に形成されているが、一重、あるいは三重以上の態様も可能である。
【0033】
図3(b)は、上記の一対の基板(10,11)を薄型化して、パネル集合体51を薄型化した状態を示している。そして、図3(c)は、図3(b)に示す矢印の位置(線)でパネル集合体51を分割して有機ELパネル53とした状態を示している。後述するように、パネル集合体51の薄型化は、該パネル集合体全体をエッチング液に浸漬することにより行う。外周シール材41はかかる浸漬時にシール材40と基板(10,11)との界面からエッチング液が浸入することを抑制するために形成されている。したがって、有機ELパネル53の構成要素ではなく、パネル集合体51の分割時に不要な部分として除去される。
【0034】
また、かかる有機ELパネル53を形成後に薄型化する方法以外に、基板自体を薄型化した後に、該基板を用いて有機ELパネル53を形成する方法もある。どちらの方法を用いるにせよ、基板(素子基板10と対向基板11)は最初の段階では薄型化(薄板化)されていない。したがって、薄型化された有機ELパネル53を得るためには、何れかの段階で基板を薄くする必要がある。本実施形態の有機EL装置の製造方法は、かかる基板の薄型化(薄板化)時の作業性等を向上させるものである。
【0035】
なお、上述の分割工程は必須のものではない。有機ELパネルに対して基板が相対的に小さい場合、すなわち1枚の基板から大画面の有機ELパネルを1台製造する場合は、分割工程は不要である。
【0036】
図4(a)から図6(k)は本実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図である。以下、工程順に述べる。
まず、第1の工程として、図4(a)に示すように複数の有機ELパネル53が平面的に配置されてなるパネル集合体51の一方の面である対向基板11の裏面(カラーフィルター層76が形成されていない側の面)に、スペーサーシート62を配置する。スペーサーシート62は、若干の粘着性を有する微粘着シートであるか、若しくは粘着性を全く有しないシート状の部材である。紙を用いる場合は間紙とも表現できる。また、「微粘着シート」とは、1N/20mm程度の粘着力を有するシートを意味している。スペーサーシート62が若干の粘着性を有するシートであれば、後述する第2の工程において保護フィルム63を貼付する際に、スペーサーシート62が移動してしまうような現象を低減できる。
【0037】
スペーサーシート62は平面視形状が矩形であり、寸法は縦寸法及び横寸法共に対向基板11よりも30〜40mm小さい程度である。かかるスペーサーシート62を、中心が対向基板11の中心と一致して、かつ各辺が対向基板11の各辺と平行となるように配置する。その結果、対向基板11の外周(外周線)から15〜20mmの範囲はスペーサーシート62に被われず表面が露出する領域となる。
【0038】
次に、第2の工程として、図4(b)に示すように対向基板11よりも一回り大きく、一方の面が粘着面である保護フィルム63を対向基板11の裏面に平面視で該対向基板を収めるように貼付する。保護フィルム63は、PET(ポリエチレンテレフタラート)あるいはポリエチレン系材料のように、フッ酸を含む溶液に対して耐性を有する材料で構成されており、粘着面にはアクリル樹脂等からなる粘着層(不図示)が形成されている。
【0039】
上述したように、第1の工程を実施した段階において、該裏面の外縁部は15〜20mmの幅でスペーサーシート62に被われることなく露出している。したがって、第2の工程により、かかる露出していた領域に保護フィルム63の上記粘着層が接着される。一方、スペーサーシート62が配置されている領域では、上述の粘着層は該スペーサーシートを介して対向基板11と対向することとなり、対向基板11の裏面に直接粘着層が接することはない。
【0040】
次に、第3の工程として、図4(c)に示すように対向基板11の裏面がスペーサーシート62と保護フィルム63とで被われたパネル集合体51をエッチング液64に浸して、素子基板10の裏面をエッチングする。エッチング液としては、濃度10%のフッ酸水溶液が好ましい。フッ化アンモニウムを加えたバッファードフッ酸を用いてもよい。かかる工程において、上述したように外周シール材41により、シール材40がエッチング液64に直接触れることはない。したがって、シール材40の内側にエッチング液64が侵入することは抑制されている。
【0041】
図5(d)は、上述の第3の工程すなわち1回目のエッチング工程が終了した状態を示す図である。エッチングは、素子基板10の厚さが元の略500μmから略40μmとなるまで行う。対向基板11の裏面は保護フィルム63で被われているためエッチングされない。また、双方の基板(10,11)の側面は若干エッチングされるが、特に問題とはならない。
【0042】
次に、第4の工程として、図5(e)に示すように対向基板11側のスペーサーシート62と保護フィルム63とが積層された部分に、深さがスペーサーシート62の一部まで達する切り込み65を形成する。切り込み65の形成は特別な装置等を用いずに、カッターナイフ等の一般的な器具を用いて行うことができる。また、該切り込みがスペーサーシート62まで達するということは、(該切り込みにより)少なくとも保護フィルム63は完全に分断されるということである。切り込み65は、平面視でスペーサーシート62の外周線から略5mmほど内側の線上に形成する。上述したようにスペーサーシート62は矩形であるため、切り込み65は平面視において、スペーサーシート62よりも縦横共に略10mm小さい枠状となる。
【0043】
次に、第5の工程として、図5(f)に示すように切り込み65で囲まれた領域内における保護フィルム63を取り除く。かかる領域内おいて、保護フィルム63は対向基板11の裏面に直接貼付されていないため、容易にすなわちパネル集合体51に余計な力を加えることなく取り除くことができる。
【0044】
次に、第6の工程として、図5(g)に示すように切り込み65の外側の領域に残されていた保護フィルム63をスペーサーシート62と共に取り除く。保護フィルム63は対向基板11の外縁部において直接貼付されているが、かかる外縁部は幅が15〜20mmの狭い領域なので、パネル集合体51に余計な力を加えることなく取り除くことができる。また、スペーサーシート62は粘着力が殆んど、あるいは全く無いため、容易にパネル集合体51から取り除くことができる。以上の工程で、パネル集合体51を構成する一対の基板のうちの一方(本実施形態では素子基板10)を、余計な力を加えることによるクラック等の発生を抑制しつつ薄型化(薄板化)できる。
【0045】
次に、上述の第1から第6の工程と同様の工程を順に実施して、対向基板11を薄型化する。すなわちパネル集合体51を構成するもう一方の基板を薄型化する。
まず、図6(h)に示すように、薄型化された素子基板10の裏面に、スペーサーシート62と保護フィルム63とを貼付(配置)する。上記双方の部材の材質、大きさ、及び貼付(配置)の順序等は上記の第1の工程及び第2の工程に記載したものと同一である。
【0046】
次に、上述の第3の工程と同様の工程を実施して、対向基板11を薄型化する。すなわち、図6(i)に示すように、素子基板10側にスペーサーシート62と保護フィルム63とが貼付(配置)されたパネル集合体51をエッチング液64に浸して、対向基板11の裏面をエッチングする。エッチング液64は、上述の第3の工程で用いたものと同一でよい。ただし、対向基板11の材質が素子基板10の材質と異なる場合は、エッチング液64も異なる場合もあり得る。かかる対向基板11の薄型化の際にも、外周シール材41により、シール材40の内側にエッチング液64が侵入することが抑制されている。
【0047】
次に、図6(j)に示すように、切り込み65を形成する。該切り込みの形成位置は及び形成方法は上述の第4の工程と同様である。
【0048】
次に、図6(k)に示すように、上述の第5の工程及び第6の工程と同様の工程を連続的に実施して、素子基板10の裏面からスペーサーシート62と保護フィルム63とを取り除く。そして、図示する矢印の位置でパネル集合体51を分断して、個々の有機ELパネル53とする。隣り合う有機ELパネル53の間の領域、及び外周シール材41の形成領域は、不要な部分として除去される。
【0049】
以上、図4(a)〜図6(k)に示す工程を順に実施することで、薄型化した有機ELパネル53を得ることができる。対向基板11のエッチングも、上述の第3の工程と同様に該対向基板の厚さが略40μmとなるまで行う。上述したように素子層12の厚さは略15〜20μmであるため、かかる2回のエッチングで有機ELパネル53の厚さを100μm(0.1mm)以下にできる。したがって、かかる有機ELパネル53を組み込んだ有機EL装置55は、可撓性を得ることができる。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態の製造方法によれば、有機ELパネル53(本実施形態ではパネル集合体51)をエッチングして薄型化する場合において、一方の側の密封性と、該密封性を得るために用いた保護フィルム63を取り除く際の剥離性と、を両立できる。有機ELパネル53を薄型化するためには双方の基板を(10,11)を片方ずつエッチングする必要があり、その際他方の側、すなわちエッチングされない方の面は保護フィルム63で密封する必要がある。かかる場合において、保護フィルム63の粘着性が低いと密封性が不足し、粘着性が高いとエッチング後に該保護フィルムを取り除く際に下地である基板(10,11)を破損させてしまう可能性が生じる。
【0051】
本実施形態の製造方法であれば、保護フィルム63を基板(10,11)の外縁部にのみ密着させることができる。したがって、該外縁部を密封することで該外縁部の内側の領域を含む基板面の全面を密封できる。そして、該保護フィルムを取り除く際には、該外縁部を構成する幅の狭い帯状の領域のみ剥離すればよいため、全面的に密着させている場合に比べて容易に取り除くことができる。したがって、薄型化された有機ELパネル53及び該パネルを備える有機EL装置55を、製造コストの増加を抑制しつつ得ることができる。
【0052】
本発明の実施の形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えた変形例として実施することも可能である。変形例を以下に述べる。
【0053】
(変形例1)
上述の実施形態では有機ELパネル、すなわち電気光学パネルを薄型化している。しかし本発明は、基板単体にも適用できる。かかる製造方法であれば、仮に破損等が生じた場合に基板の段階で廃棄等できるため、製造コストを低減できる。
【0054】
(変形例2)
上述の実施形態では、電気光学パネルとして有機ELパネルを用いている。しかし、本発明の対象は有機ELパネルに限定されるものではなく、他の電気光学パネル、例えば液晶パネル等の薄型化工程にも適用可能である。また、複数の電気光学パネルを備えるパネル集合体の薄型化ではなく、パネル単体の薄型化にも適用可能である。
【0055】
(変形例3)
上述の実施形態では、保護フィルム63とスペーサーシート62とを積層することで、基板面の外縁部に相当する領域にのみ粘着力を有する部材を得ていた。しかし、上述の構成に変えて、1枚すなわち単層の部材の粘着力を、上述の外縁部とその内側の領域とで変化させることでも略同様の効果を得ることができる。かかる場合、上記部材を取り除く工程はやや困難になるが、切り込み65を形成する工程は省くことができる。
【0056】
(変形例4)
上述の実施形態では、切り込み65の深さをスペーサーシート62の一部に達するまで、すなわち基板(10,11)の裏面の手前までの深さとしている。しかし、切り込み65を基板(10,11)の一部まで達するように形成し、(該切り込みを)パネル集合体51を分割して個々の有機ELパネル53にするための分断線(分割線)と兼用させてもよい。かかる製造方法であれば、品質等を低下させることなく、製造コストをより一層低減できる。
【符号の説明】
【0057】
8…第1の保護シート、9…第2の保護シート、10…素子基板、11…対向基板、12…素子層、13…反射層、15…発光機能層、19…陰極、21…半導体層、22…チャネル領域、23…ゲート電極、25…ソース領域、26…ドレイン領域、27…コンタクトホール、28…保護層、29…有機EL素子、35…画素電極、40…シール材、41…外周シール材、46…接続端子、47…配線基板、48…封止樹脂、51…パネル集合体、53…電気光学パネルとしての有機ELパネル、55…薄型表示装置としての有機EL装置、62…スペーサーシート、63…保護フィルム、64…エッチング液、65…切り込み、70…ゲート絶縁層、71…層間絶縁層、74…隔壁、75…カラーフィルター、75k…ブラックマトリクス、76…カラーフィルター層、78…封止層、79…接着層、112…TFT。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と該一対の基板に挟持された電気光学素子を有する電気光学パネルを備える薄型表示装置の製造方法であって、
前記電気光学パネルの一方の面に平面形状が前記基板よりも一回り小さいスペーサーシートを平面視で前記基板内に収まるように配置する第1の工程と、
前記一方の面に、前記基板よりも一回り大きい保護フィルムを、平面視で前記基板を収めるように貼付する第2の工程と、
前記電気光学パネルを、前記一方の面の反対側の面から薄型化する第3の工程と、
前記保護フィルムに、平面視で前記スペーサーシートの外周線から内側方向に所定の間隔を有し、深さが前記スペーサーシートの一部まで達する枠状の切り込みを形成する第4の工程と、を順に実施した後、
前記切り込みで囲まれた領域の前記保護フィルムを取り除く第5の工程と、
前記スペーサーシート及び前記切り込みの外側の領域の前記保護フィルムを取り除く第6の工程と、を順に実施することを特徴とする薄型表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄型表示装置の製造方法であって、
前記スペーサーシートが微粘着シートであることを特徴とする薄型表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄型表示装置の製造方法であって、
前記第1〜6の工程を前記電気光学パネルの双方の面に対して実施することを特徴とする薄型表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄型表示装置の製造方法であって、
前記第4の工程は、深さが前記基板の少なくとも一部まで達する枠状の前記切り込みを形成する工程であることを特徴とする薄型表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112829(P2011−112829A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268447(P2009−268447)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】