説明

薄層被覆アルミニウム顔料、その製造方法、およびそのアルミニウム顔料の使用

本発明は、少なくとも部分的に滑剤で被覆されたアルミニウム顔料に関する。前記アルミニウム顔料は、a)水被覆率が40,000と130,000cm2/gの間、b)平均厚さhが100未満から30nm、平均厚さhは水被覆率と、走査型電子顕微鏡の厚さ計数の累積的破過曲線から決定されるh50値からの計算による、c)厚さ分布の相対的幅Δhが70%から140%の間、走査型電子顕微鏡の厚さ計数により決定され、また相対的頻度の対応する累積的破過曲線に基づいて式Δh=100×(h90−h10)/h50に従って計算される、d)アスペクト比d50/hが200を超える、e)粗さ値が0.30から0.9、粗さ値は、式BET値/(2×水被覆率)に従い、BET試験法により決定される比表面積と水被覆率から計算される、である。本発明は、更に前記アルミニウム顔料の製造方法、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に滑剤で被覆されたアルミニウム顔料、およびその生産方法に関する。本発明は、更に、前記アルミニウム顔料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム顔料はエフェクト顔料であり、また、それらの独特な金属的外観およびそれらの高い被覆力により特徴付けられている。これらエフェクト顔料の薄板状の構造のおかげで、これらは、塗布媒体中において、自身を基板に平行に配向させ、数多い個々の小さい鏡の組合せに起因する金属的効果をもたらしている。この金属的効果は、特に湿式ラッカーにおいて、非常に強く発現される。全階調ラッカーの場合、この結果は観測角および/または入射角に依存する明暗効果に起因し、「フロップ(Flop)」とも呼ばれる。良好なフロップは、顔料の様々な性質に影響される。即ち、それらの配向性、それらのサイズおよびサイズ分布、それらの表面の質感(粗さ)および端部の質感は、全て重要な役割を演じている。
【0003】
フレークとも呼ばれる顔料の、面に平行になる配向性の推進力は、アルミニウム顔料とバインダ系の表面化学の不適合性に加えて、特にアスペクト比である。アスペクト比は、顔料の長手方向の大きさdの厚さhに対する比を意味するものとして理解される。長手方向の大きさは、主にレーザ散乱法によって決定される。この場合、累積的破過曲線のd50値が通常用いられる。
【0004】
アルミニウム顔料の長手方向の大きさは、それぞれの意図された用途に強く依存するので、高アスペクト比、および、従って、起こりうる最良の配向性は、顔料の厚さによって特に達成できる。薄い顔料は、自身をより良く配向させ、それ故、より高いフロップを持つ。
【0005】
金属性被覆剤または印刷インクの更にいっそう重要な特性は、それらの高い光沢である。光沢は、とりわけ、生理的におよび心理的に関連した変数であるが、DIN67530に従えば、平らな表面の「光沢力」は、反射率計の値によって記録される。光沢角で表される反射は、ある標準(通例、黒い鏡面ガラス板)に対して相対的に測定される。この標準により、高度に光沢のある試料(反射率計の値>70)は20゜の入射角または反射で、また、中程度に光沢のある表面は60゜で、測定される。金属性被覆剤の良好な光沢に対する必須要件は、同様に、塗布媒体中における薄板状顔料の、最大の、面に平行な配向性である。
【0006】
最高の光沢およびフロップを伴う、最も高輝度のアルミニウム顔料は、現在、2つの組に分けられる。その一は「硬貨顔料」であり、アルミニウム弾の湿式研磨により製造される。もう一つは「PVD顔料」である。硬貨顔料は、粉砕研磨により得られる金属顔料からは、相対的に丸い形状および相対的に滑らかな表面によって区別される。
【0007】
湿式研磨により製造され、高度の反射と高い被覆率を伴うアルミニウム顔料が、例えば、欧州特許第0451785B2号明細書に記載されている。これらの顔料は、2.5から5.0m2/gの水被覆率(拡散値)、2.0以下の粗さ値、および90以上のd50/hのアスペクト比によって特徴付けられる。欧州特許第0451785B2号明細書の実施例には、最大140までのアスペクト比が開示されている。
【0008】
欧州特許第0451785B2号明細書は、アルミニウム顔料の被覆力は長手方向の大きさだけではなく、特に、厚さにも依存することにも注目している。この場合、より薄い顔料はより高い被覆力を示す。
【0009】
自動車ラッカー用のアルミニウム顔料は、典型的には、15から20μmのd50値を示す。欧州特許第0451785B2号明細書の教示に従い5.0m2/gの水被覆率および90のアスペクト比を伴って製造されたあるアルミニウム顔料は、80nmの平均厚さh、それ故7.2μmのd50値を持つであろう。この種の顔料は、例えば、自動車用ラッカーには、小さすぎるであろう。
【0010】
この市場層で慣習的である15から20μmのd50値と、90のアスペクト比を持つアルミニウム顔料は、167から222nmの範囲の平均厚さhを持つであろう。
【0011】
米国特許第4,318,747号明細書には、リーフィング(leafing)特徴を伴い平均サイズが5μm未満の微細なアルミニウム顔料が開示されている。これは、少なくとも50,000cm2/gの水被覆率、および、BET法に従って測定した、24m2/gから93m2/gの比表面積を持っている。これらのデータから、2.4から9.3の範囲の粗さ値が計算できる。
【0012】
これらの顔料の大きな表面粗さのため、PVD顔料の滑らかな表面と比べて、照射光の強度の散乱、および、結果的に光沢の減少が起きる。
【0013】
更に、欧州特許第0451785B2号明細書に開示されたアルミニウム顔料、または米国特許第4,318,747号明細書に開示されたアルミニウム顔料のいずれも、それらの微細さのため、例えば、自動車用ラッカーに使用するのには適さない。
【0014】
米国特許第4,318,747号明細書に記載された実施例では、常に、直径5mmの鋼球を使用して長い研磨時間、研磨する。この種の球の使用は、粉砕工程において典型的である。
【0015】
米国特許第3,776,473号明細書には、高い反射率、滑らかな表面および丸い形状を持つアルミニウム顔料が記載されている。この特許の代表的な実施態様で言及されている顔料は、高々15,600cm2/g以下の水被覆率を示す。
【0016】
PVD顔料では、極度に薄い(厚さ:20から50nm)Al顔料が製造される。これらの顔料の厚さ分布は、非常に小さい。この方法では、超高真空中で、剥離被覆を設けた担体ホイル上にアルミニウムを蒸着する。この剥離被覆は、一般にはポリマーである。次いで、蒸着されたアルミニウムを、可能な限り、溶媒中で担体ホイルから分離し、金属ホイルを機械的に、または超音波により細かく砕く。PVD顔料の製造は、例えば、ジェー・ソイバートおよびエー・フェッツ「PVDアルミニウム顔料:被覆剤およびグラフィックアート用の優れた輝き」コーティングズ・ジャーナル、84巻、A6 225−264、2001年7月、244−245頁(J. Seubert and A. Fetz, "PVD Aluminum Pigments: Superior Brilliance for Coatings and Graphic Arts", Coatings Journal, Vol. 84, A6 225-264, July 2001, pages 244-245)に記載されている。
【0017】
極度の薄さ故に、これらのPVD顔料は優れた被覆力を示す。薄い顔料は非常に可撓性が高いので、事実上、下塗りに「まとわりつく」。これらの光学的な可能性を誇示するためには、それ故、これらを滑らかな下塗りに適用しなければならない。
【0018】
しかしながら、製造工程における極端に高い製造コストは、これらPVD顔料の難点である。更に不利なのは、剥離被覆を顔料粒子から完全には除去し難いことである。この接着しているポリマーフィルムは、不利益をもたらし得る。斯くして、印刷インクの場合は、印刷インクに使用される溶媒との不適合が起こり得る。例えば、トルエンに適しているポリマーフィルムは、アルコールまたは水の様な溶媒中では不適合であり得る。これは、集塊体の形成において顕著になり、所望の装飾効果を完全に破壊する。
【0019】
特に、例えば独国特許19635085号明細書に記載されている様に、もしも、アルミニウム顔料の製造後に、耐腐食性を付与するためこれらに化学的な保護被覆物を設けるとすると、この種の高分子付着は有害な効果を持ち得る。
【0020】
同じことは、例えば独国特許10001437号明細書に記載されている様に、防食剤による安定化にも当てはまる。ここで、接着している剥離被覆の残留物は不規則な保護被覆をもたらし、また、再現可能に製造される保護層の被覆を妨げる。特に、不安定化されたアルミニウム顔料が水素の発生に起因する望ましからぬ気体を発生させる水性ラッカーで被覆されたこの種の基板の使用は、予め被覆されたこの種の基板に再現性良く達成することはできない。
【0021】
更に深刻な難点は、PVD顔料は、極度に強い集塊傾向を示すことである。この理由により、PVD顔料は、アルミニウム顔料の含有量が通常10重量%の高度に希釈された分散液でしか供給できない。取り扱いの容易性を達成するために、もっとアルミニウム顔料の含有量が高い調合液を得ることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的の一つは、接着しているポリマーフィルムの無い、また、優れた被覆力、高い光沢および、従来の湿式研磨により得られる従来のアルミニウム顔料と比べて、改良された金属的外観、「クロム効果」を伴う非常に薄いアルミニウム顔料を提供することである。
【0023】
本発明の更なる目的は、PVD顔料と比較して、集塊する傾向が顕著に低減された非常に薄いアルミニウム顔料を提供することである。
【0024】
更に、この種の顔料は、高価なPVD製造法と比較して、よりコスト効率の良い方法で製造可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、少なくとも部分的に滑剤で被覆され、かつ、以下であるアルミニウム顔料の提供により達成される:
a)水被覆率が40,000と130,000cm2/gの間、
b)前記水被覆率と、走査型電子顕微鏡の厚さ計数の累積的破過曲線から決定されるh50値から計算される平均厚さhが100未満から30nm、
c)走査型電子顕微鏡の厚さ計数により決定されるとき、式
Δh=100×(h90−h10)/h50
に従い、相対的発生頻度の対応する累積的破過曲線に基づいて計算したときに、厚さ分布の相対的幅Δhが70%から140%、
d)アスペクト比d50/hが200を超える、
e)式
BET値/(2×水被覆率)
に従い、BET試験法により決定される比表面積と水被覆率から計算される粗さ値が0.30から0.9。
【0026】
本発明のアルミニウム粒子の好ましい展開は、従属請求項において規定される。
【0027】
本発明の根底にある目的は、請求項1から15のいずれか一項に記載のアルミニウム顔料を製造する方法により、更に達成される。この方法は以下の段階を含む:
a)溶媒、滑剤および個々の重量が2から13mgである研磨媒体の存在下、15から72時間にわたって、研磨機を用いてアルミニウム粒子を研磨し、アルミニウム顔料を製造する段階。
【0028】
本方法の好ましい展開は、従属請求項において規定される。
【0029】
本発明の目的は、請求項23または24に規定される使用、および請求項25に規定されるマニキュア液、更には請求項26に規定される水性ラッカーにより更に達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、少なくとも部分的に滑剤で被覆され、水被覆率が40,000から130,000cm2/g、水被覆率と走査型電子顕微鏡の厚さ計数の累積的破過曲線から決定されるh50値から計算される平均厚さhが100未満から30nm、式Δh=100×(h90−h10)/h50に従い、累積的破過曲線を活用して計算される走査型電子顕微鏡の厚さ計数により決定される厚さ分布の幅が70%から140%であり、かつアスペクト比d50/hが200を超えるアルミニウム顔料に関する。
【0031】
本発明の好ましいアルミニウム顔料は、水被覆率が45,000から125,000cm2/g、前記水被覆率から計算され、かつ、走査型電子顕微鏡の厚さ計数(累積的破過曲線のh50値)から決定される平均厚さhが89未満から32nmである。本発明の別の好ましいアルミニウム顔料は、水被覆率が50,000から120,000cm2/g、好ましくは50,000から90,000cm2/g、および、前記水被覆率から計算され、かつ、走査型電子顕微鏡の厚さ計数(累積的破過曲線のh50値)から決定される平均厚さhが80未満から33nm、好ましくは80未満から44nmである。
【0032】
本発明のアルミニウム顔料は、厚さが薄いため、非常に高い被覆力を持つ。
【0033】
塗布媒体中における顔料の堆積が僅かだと、アルミニウム顔料の良好な配向性を得るために、特に不利である。塗布媒体中で、可能な限り均一な顔料の堆積を達成するには、薄い顔料は、狭い厚さ分布と低い色素沈着レベルを持つことが有利であるに違いない。
【0034】
従来の厚いアルミニウム顔料、および広い厚さ分布では、顔料の不均一な堆積が容易に起きる。斯くして、非常に厚い顔料は、特に「スペーサー」として働き、それ故、それを取り巻く顔料の配向性(光沢)および被覆力に悪影響を与え得る。
【0035】
本発明のアルミニウム顔料は、驚異的に非常に薄く、かつ、同時に厚さ分布が狭い。本発明のアルミニウム顔料は、光学的特性が驚異的にPVD顔料に類似し、しかし、高価なPVD法に比べ、製造が顕著に容易であり、また、取り扱い性が大幅に改良されており、これは、例えば、調合液において顕著により高い濃度を許容する。
【0036】
薄板状金属顔料の正確な平均厚さは、大きな困難を伴って初めて決定できる。DIN55923は、「リーフィングする」顔料の水被覆率(拡散)の測定手順を特定する。
【0037】
先ず、易揮発性有機溶媒中の規定重量のアルミニウム顔料を、ボウル中の水表面に置く。リーフィングする顔料としては、アルミニウム顔料は、例えば、ステアリン酸で被覆され、それにより、強度に疎水化される。この顔料は水表面に拡散し、銀色の金属フィルムを形成する。ガラス棒で撹拌すると、これらは分散して均一な「陰りの無い」金属フィルムができる。次いで、最初の皺が現れるまで、このフィルムを2本の定規で押し縮める。次に、皺が消えるまで、フィルムを再度引き伸ばす。この金属フィルムで覆われた面積を測定し、顔料の重量に基づいて、単位がcm2/g(または単位がm2/g)の水被覆率として定義する。
【0038】
この方法においては、少なくとも平均では、金属顔料が相互に隣り合わせて配列し、従って、顔料の一つの「単層」として存在すると仮定している。
【0039】
この水被覆率の助けにより、顔料のnm単位の平均厚さhは、以下の式に従って計算される:
h=107(nm/cm)/(ρ(g/cm3)×水被覆率(cm2/g))
ここで、ρはステアリン酸が吸着している顔料の物理的な絶対密度である。ここで、通常の測定値は約2.5g/cm3である。
【0040】
上記のDIN標準においては、リーフィングする顔料の考察のみが提供されている。従来の、リーフィングしない顔料も、もしそれらが拡散前にステアリン酸で被覆されていれば、この方法に従って測定できる。水被覆率の助けにより、顔料の平均厚さhのみが測定できる。しかし、この方法は、厚さ分布の幅に関する情報を与えることはできない。
【0041】
顔料の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)の助けにより、同様にして決定できる。ここで、代表的な平均値を提供する様に十分な数の粒子を測定すべきである。通例、およそ100個の粒子を測定する。この方法により、水拡散法とは異なり、顔料の厚さの分布に関する概観も得られる。
【0042】
厚さの累積的破過曲線のh50値は、それ自身平均値として現れる。分布の幅Δhの大きさは、以下の式により示される:
Δh(%)=100×(h90−h10)/h50
ここで、指標は累積的破過曲線のそれぞれの値に関連する。
【0043】
本発明の顔料の厚さの分布の相対的な幅Δhは70から140%である。
【0044】
好ましくは、本発明の顔料の厚さの分布の相対的な幅Δhは75から120%である。
【0045】
アスペクト比fは、アルミニウム顔料小板の長手方向の大きさの平均値の、平均厚さに対する比を意味するとして理解される。
【0046】
長手方向の大きさd(直径)は、フラウンホーファーおよび/またはミーの回折理論に基づくレーザ散乱実験において決定される。回折データの評価は、等価球体の直径を目指すモデルに基づいている。それ故、如何なる絶対値も得られない。けれども、測定される直径は、薄板状の金属顔料のサイズ特性を説明するための信頼性のある相対値として容認されている。
【0047】
無次元のアスペクト比fは、次いで、以下の様に定義される:
f=1000×d50(μm)/h(nm)
【0048】
ここでd50値は、等価球体の体積分布の形式で測定し評価した、累積的破過曲線の50%に対応する。
【0049】
顔料を特徴付けるためのもう一つの変数は、無次元の粗さ値Rである。これは、BET法(DIN66132)に従って測定した比表面積の、幾何的な顔料表面積に対する比を意味するとして理解される。後者は、顔料の端部を無視して、水被覆率の2倍として計算できる:
R=BET値(m2/g)×104/(2×水被覆率(cm2/g))。
【0050】
粗さ値は、同様に、相対値として考えるべきである。2つの表面決定法は正確な結果を生み出しはしないからである。理想的な滑なかな表面は、理論的に粗さ値1を持つべきである。実際には、しかしながら、1未満の値が時折見いだされる。
【0051】
長手方向の大きさにおいて、本発明のアルミニウム顔料は、従来から市場で見られる湿式研磨により製造されたアルミニウム顔料と、基本的な違いは無い。とりわけ、個々の場合において、サイズは意図される用途に依存する。長さ分布のd50値は、好ましくは6μmを超え、より好ましくは6μmから50μm、もっと好ましくは8μmから45μm、更により好ましくは12μmから40μm,非常に好ましくは15μmから30μm、そして最も好ましくは20μmから25μmの範囲である。
【0052】
本発明の顔料は、200を超えるアスペクト比fにより区別される。本発明の顔料のアスペクト比fは、好ましくは220を超え、より好ましくは240を超え、そして最も好ましくは300を超える。更に好ましい態様によると、本アルミニウム顔料の粗さ値Rは、好ましくは0.35から0.9、より好ましくは0.4から0.8を示す。
【0053】
これらの値は、これらが、比較的滑らかな表面を持つ非常に薄い顔料であることを示している。
【0054】
活性アルミニウムの比較的低い含量は、本発明の顔料の更なる特性である。
【0055】
この含量は、規定量のアルミニウム顔料をアルカリ溶液中に完全に溶かし、温度制御した条件下で、得られる水素を容量分析的に記録することにより決定できる。これらの顔料の場合、前記含量は、アルミニウム顔料の全重量に基づいて、85から93、好ましくは87から92%の範囲にある。これは、湿式研磨により得られるアルミニウム顔料の場合における、従来の顔料に対する値、93から97%と比較されるべきである。
【0056】
顔料中の残りの含量は、酸化アルミニウム、およびその表面に結合した脂肪酸に帰着させることができる。本発明のアルミニウム顔料は厚さが小さいので、相対的な酸化物含量は比較的高い。脂肪酸の含量も、比較的高い。後者は、元素分析により決定されるC含量から、おおまかに見積もることができる。本発明の顔料の場合、予めアセトンまたはこれに匹敵する溶媒で洗浄し、次いで乾燥したアルミニウム粉末について測定したとき、残りの含量は、典型的には0.7から1.5重量%、好ましくは0.8から1.4重量%である。
【0057】
本発明のアルミニウム顔料は、厚さ分布の狭い、非常に薄い顔料である。この種の顔料は高い被覆力を持つ。本発明のアルミニウム顔料は、d95値が200nm未満、好ましくは150nm未満の厚さ分布を示すのが好ましい。狭い厚さ分布は、塗布媒体、例えばラッカーまたは印刷インク中における、顔料の非常に良好な堆積をもたらすのに有利である。本発明の顔料により、例えば、非常に小さい層厚、例えば10μm未満の層厚で塗布して、非常に高い光沢、および非常に良好なフロップを伴う、良好な被覆効果を得ることが可能である。
【0058】
特に自動車のラッカー塗装においては、小さい層厚に対する要請がある。ここでの推進力は、特にコストの削減である。これまで、ベースラッカーの層厚は、典型的には、15μmの領域である。今日でもなお、ドアハンドルの様な非常に湾曲した形状の部品に関しては、日常的により小さい層厚が使用されている。もし、10μm未満まで落とした小さい層厚が実現できたら、望ましいことであろう。しかしながら、層厚は小さすぎてはいけない、さもないと、接着、被覆および/または色素沈着の問題が持ち上がるであろう。
【0059】
本発明の顔料は、非常に薄い層厚で塗布することが意図されている塗布組成物用に極めて適している。
【0060】
以下に、本発明のアルミニウム顔料の製造方法を説明する。これは、アルミニウム粒子の極めて穏やかな造形研磨により区別される。とりわけ、その方法は以下の段階から成る。
【0061】
アルミニウム粒子を、溶媒および研磨助剤として滑剤、並びに個々の重量が2から13mgの研磨媒体の存在下、研磨機、好ましくはボールミル、撹拌ボールミル、またはアトライターを用いて、およそ15時間からおよそ72時間にわたって研磨する。
【0062】
本発明の好ましい展開に従うと、研磨媒体は個々の重量が5.0から12.0mgである。研磨媒体としては、好ましくは球形媒体、より好ましくはボールを使用する。
【0063】
アルミニウム粒子を研磨した後、得られたアルミニウム顔料を研磨媒体、好ましくは研磨球体から分離する。更なる処理段階において、得られたアルミニウム顔料をサイズ分級することができる。引き続いて、アルミニウム顔料を、適切な供給形状に転換できる。例えば、分級された、または分級されていないアルミニウム顔料を、粉体形状、好ましくは非発塵性粉体形状に転換できる。アルミニウム顔料を、別法として、ペースト、小粒、あるいは圧縮してペレットに転換して良い。
【0064】
本発明の目的に対して、ペレットは、ブリケット、タブレット、または小さい円柱を包含するとみなされる。
【0065】
ペレット化は、従来のやり方で、ペレット化板上で実施できる。タブレット化は、タブレット化装置中で行うことができる。小さい円柱は、アルミニウムペーストまたは粉末の成形により、または押出成型機を通してアルミニウムペーストを押し出し、押し出されたペーストの連続体を回転ナイフ処理機で切り刻むことにより、調製できる。本発明のアルミニウム顔料の造粒は、例えば、スプレー造粒により実施できる。
【0066】
本発明のアルミニウム顔料は、極めて有利に、例えば、98重量%から50重量%、好ましくは95重量%から70重量%という、アルミニウム顔料を高い含量で持つ小粒またはペレットの形状で提供できる。前述の調合液は、例えば、ラッカー系または印刷インク中に、望ましくないアルミニウム顔料の集塊を起こすことなく、非常に容易に含有させることができる。
【0067】
研磨は、溶媒のアルミニウム粒子に対する重量比が2.8から10、研磨球体のアルミニウム粒子に対する重量比が20から70、かつ研磨助剤として滑剤を用いて、溶媒中で行うことができる。
【0068】
臨界回転速度ncritは、遠心力によりボールがミルの壁を押し始め、その時点で事実上、もはや研磨が行われないという時点を示す重要なパラメータである:
crit=√((g/2π2)×(1/D))
ここで、Dはドラムの直径、また、gは重力定数である。
【0069】
ボールミルの回転速度は、好ましくは臨界回転数ncritの25%から68%、より好ましくは50%から62%である。
【0070】
低い回転速度は、アルミニウム粒子のゆっくりとした転換を助長する。ゆっくりとした転換を引き起こすには、本発明の方法において、軽い研磨球体が好ましく用いられる。個々が13mgを超える研磨球体では、アルミニウム粒子の転換が急激になりすぎ、それらの早すぎる破損をもたらす。使用されるアルミニウム粒子は、好ましくはアルミニウム弾から成る。
【0071】
上で言及した条件は非常に穏和な研磨をもたらし、その場合において、アルミニウム粒子はゆっくりと整形され、高い運動エネルギーを伴うボールとの衝突に由来することがある破損が避けられる。極めて穏和な研磨手法のために、この種の研磨には比較的長時間かかる。研磨時間は15から72時間、好ましくは16から50時間である。
【0072】
研磨時間が長いので、顔料−ボールの衝突は多数回行われる。結果として、顔料は非常に均一に整形され、これは、非常に滑らかな表面と、狭い厚さ分布によって明示される。
【0073】
従来の研磨方法とは対照的に、本発明の方法におけるアルミニウム粒子は、大部分が磨りつぶされず、または粉砕されず、比較的長時間にわたって極めて穏和に転換される。
【0074】
使用されるアルミニウム研磨材料は、好ましくはアルミニウム弾である。このアルミニウム弾は、好ましくは、噴霧器中で液体アルミニウムを噴霧化して製造する。アルミニウムホイルおよび廃ホイル由来のホイル粉を使用できる。この弾は、丸い、または不規則な形状を持つことができる。針状のアルミニウム粒子は、本発明の方法における出発物質として用いられない。というのは、これらを研磨しても薄いエフェクト顔料を得ることができないからである。アルミニウム粒子は球形から楕円体形を持つことが好ましい。
【0075】
アルミニウム弾は、平均直径が100μm未満、好ましくは30μm未満、より好ましくは20μm未満、そして最も好ましくは10μm未満でなくてはならない。使用されるアルミニウムの純度は、好ましくは、99.0から99.5%より高い。
【0076】
滑剤としては、多数の化合物を使用できる。これに関しては、既に長年使用されている、10から24の炭素を持つアルキルラジカルを含有する脂肪酸に言及できよう。好ましくは、ステアリン酸、オレイン酸、またはこれらの混合物が使用される。ステアリン酸を滑剤として使用すると、リーフィングする顔料が形成される。他方、オレイン酸は、リーフィングしない顔料をもたらす。リーフィングする顔料は、ラッカーまたは印刷インクの様な塗布媒体中で浮揚性であるという特徴があり、即ち、これらは塗布媒体の表面に浮揚する。リーフィングするしない顔料は、他方、塗布媒体内で自身を配列させる。例えば、長鎖アミノ化合物を、更に脂肪酸に添加することができる。脂肪酸は、動物または植物起源のものであり得る。同様に、有機リン酸および/またはリン酸エステルを滑剤として使用できる。
【0077】
滑剤の使用量は少なすぎてはならない。さもないと、アルミニウム粒子の激しい転換により、吸着された滑剤により十分に飽和されてはいない表面積が非常に大きい薄板状のアルミニウム顔料が製造され得るからである。この場合、冷間溶接が生じる。それ故、典型的な量は、使用されるアルミニウムの重量を基準にして、滑剤が1から20重量%、好ましくは2から15重量%である。
【0078】
溶媒の選択は、そのこと自体非常に重要ではない。石油蒸留物(揮発油)、溶媒ナフサ等通例の溶媒の使用が可能である。例えばイソプロパノールの様なアルコール、エーテル、ケトン、エステル等の使用が可能である
【0079】
同様に、水(少なくとも主部分として)を溶媒として使用できる。しかしながら、この場合、使用する滑剤は著しい防食作用を持たねばならない。エトキシ化された側鎖を付帯しても良いホスホン酸および/またはリン酸エステルが好ましい。研磨工程の間の防食剤の添加も、有利である。
【0080】
好ましく用いられるボールは、好ましくは、個々の重量が2から13mgである。より好ましくは、好ましく用いられるボールは、個々の重量が5.0から12.0mgである。表面が滑らかな、可能な限り丸形の、かつサイズが均一なボールが好ましい。ボールの材料は、スチール、ガラス、または、例えば、酸化ジルコニウムやコランダムの様なセラミックスであって良い。
【0081】
研磨工程の間の温度は、10℃から70℃の範囲である。25℃から45℃の範囲の温度が好ましい。
【0082】
本発明の製造方法に起因して、本発明のアルミニウム顔料には接着しているポリマーホイルが無く、これは大きな利点である。それ故、本発明のアルミニウム顔料は、PVD法で製造されたアルミニウム顔料がなおも剥離被覆の残留物によってわずらわされているというような不利益により損害を受けることがない。更に、この製造手法は、高価なPVD製造法に比べてより安価である。得られるアルミニウム顔料の、研磨媒体、好ましくは研磨球体からの分離は、篩い分けにより、従来の手法で実施できる。
【0083】
研磨球体の分離に続いて、アルミニウム顔料は、好ましくはサイズの分級にかけられる。この分級は、薄いアルミニウム顔料を破壊しないために、穏やかに実施しなければならない。これは、例えば、湿式の篩い分け、デカンテーション、または、別法として沈澱による分離を包含して良い。湿式の篩い分けでは、通常粗い部分が取り除かれる。他の方法では、細かい部分を、特に、分離できる。引き続いて、懸濁液から過剰の溶媒を取り除く(例えば、圧搾式濾過器を用いて)。
【0084】
最後の段階で、更に処理をして所望の供給形状にする。これは、溶媒を補充してペーストを得る、あるいは乾燥して粉体を生じさせることを含み得る。
【0085】
乾燥された粉体は、非常に少量の溶媒(<10%)を添加し、適切なホモジナイザー中で更に処理して、非発塵性金属粉体を得ることができる。濾過ケーキは、先ず乾燥し、次いで別の溶媒で(優先的湿潤)再度ペーストにして良い。
【0086】
最後に、本発明の顔料は、濾過ケーキを適切な樹脂の適切な分散物で処理して更に加工し、ペレット、小粒またはタブレットにすることができる。これらの供給形状には、これらが汚れない、計量が容易である、および極めて分散性が良いという利点がある。
【0087】
本発明のアルミニウム顔料は比表面積が非常に大きいので、例えば、本発明のアルミニウム顔料をペレット化する工程では、比較的多量の分散樹脂を用いなければならない。
【0088】
ペレットの全処方に基づいて、樹脂を2から50重量%用いることが好ましく、より好ましくは5から30重量%である。
【0089】
ペレット化は、多数の分散樹脂を用いて実施して良い。これらの例は、天然に存在する、および合成の樹脂の両者である。例えば、これらは、アルキッド樹脂、カルボキシメチルおよびカルボキシエチルセルロース樹脂、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)およびセルロースアセテートブチレート(CAB)、クマロール−インデン樹脂、エポキシドエステル、エポキシド−メラミンおよびエポキシド−フェノール縮合物、エチルおよびメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケトンおよびマレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロース樹脂、フェノールおよび変性フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびビニル樹脂を包含する。
【0090】
これらのポリマー樹脂の内、特に、アクリレートコポリマーおよびアクリル酸エステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂およびアクリロニトリルコポリマー樹脂、ブタジエンと塩化ビニリデンのコポリマー、ブタジエン/スチレンコポリマー、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルコポリマー;およびポリブテン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂およびポリスチレン樹脂を挙げて良い。更なるコポリマーは、スチレン/無水マレイン酸樹脂およびスチレン/シェラック樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/ビニルエーテル樹脂および塩化ビニル/塩化ビニリデン樹脂を含む。
【0091】
アラビアガム、グッタペルカ、カゼイン、およびゼラチンの様な天然に存在する樹脂も、適切である。
【0092】
バスフ社・ルトヴィヒシャーフェン(BASF AG, Ludwigshafen)製のラロパル(Laropal)系の様なアルデヒド樹脂は好ましい。
【0093】
更に、ワックスは適切なバインダ材料を形成する。ここで、例として、蜜蝋、カンデリラワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、およびパラフィンワックスの様な天然のワックスが挙げられる。例えば、PEワックスの様な合成ワックスは、同様に適切である。
【0094】
驚くべきことに、本発明のアルミニウム顔料が集塊する傾向は、PVD顔料のそれより顕著に低いことが見いだされている。
【0095】
この効果は、顔料の厚さのみにではなく、本発明のアルミニウム顔料の厚さ分布および粗さにも起因すると推測される。70%から140%の範囲の厚さ分布により、集塊する傾向の強度の減少が起こる。更に、本発明のアルミニウム顔料は、その製造工程のため、ある程度の粗さあるいは波打ちを示し、これは、驚くべきことに、本発明のアルミニウム顔料の反射能力や光沢の様な光学的特性の、如何なる重大な損傷も伴わずに、面−平行接着、即ちアルミニウム顔料相互の集塊を防止する。
【0096】
PVD顔料と違い、重畳された本発明のアルミニウム顔料は、それらの粗さまたは波打ちにより、相互に点−様の接触表面のみを示す。結果的に、PVD顔料と違い、ファン・デル・ワールス力または水素結合の様な、短距離の引力の形成が最小化され、結果的に集塊あるいは凝集が妨げられる。
【0097】
本発明の更なる態様において、本発明のアルミニウム顔料は、引き続き不動態防止剤および/または防食層により覆われる、あるいは塗布される。この種の被覆によってのみ、本発明の顔料を水性ラッカーおよび/または外面用の塗装剤において安全に使用することが可能である。
【0098】
不動態層の作用機序は複雑である。防止剤の場合、通常、それは立体的な効果に基づく。それ故、防止剤の主な部分はリーフィングするかあるいはしない方向への方向付け作用、即ち、媒体中において浮揚性または非浮揚性であるという方向付け作用を持つ。
【0099】
防止剤は、とりわけ、使用するアルミニウム顔料の重量に基づき、0.5重量%から15重量%のオーダーの低濃度で添加される。
【0100】
防止のためには、以下が好適である。
【0101】
一般式がR−P(O)(OR1)(OR2)の有機的に変性したホスホン酸、ここで:R=アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、およびアルキルエーテル、特にエトキシ化アルキルエーテル、かつR1、R2=H、Cn2n+1、ここでn=1から6であり、アルキルは分岐でも非分岐でも良い。R1とR2は同じでも異なっても良い。
【0102】
一般式がR−O−P(OR1)(OR2)の有機的に変性したリン酸およびエステル、ここでR=アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、およびアルキルエーテル、特にエトキシ化アルキエーテル、かつ、R1、R2=H、Cn2n+1、ここでn=1から6であり、アルキルは分岐でも非分岐でも良い。
【0103】
純粋なホスホン酸またはそれらのエステル、リン酸またはそれらのエステル、あるいは所望の任意のこれらの混合物を使用できる。
【0104】
水が主である溶媒中でアルミニウム粒子を研磨する場合、この種の防止剤は、安全障害を構成するかもしれない、研磨工程中における水素の形成を妨げるために、研磨助剤として使用される。
【0105】
更に、不動態防止剤層は、腐食防止性有機機能化シラン、脂肪族または環式アミン、脂肪族または芳香族ニトロ化合物、酸素−、硫黄−および/または窒素−含有複素環、例えば、チオウレア誘導体、高級ケトン,アルデヒドおよびアルコール(脂肪族アルコール)の硫黄および/または窒素化合物、チオール、β−ケトエステル、β−ジケトン、またはこれらの混合物からなること、あるいはこれを包含することができる。しかしながら、不動態防止剤層は、上述の物質から成ることができる。有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルまたはこれらの混合物が好ましい。
【0106】
化学的および物理的保護作用を伴う防食バリアによる不動態化は、種々のやり方で実現できる。
【0107】
アルミニウム顔料の特に良好な腐食保護を保証する不動態防食層は、酸化シリコン、好ましくはクロメート処理法により付着される酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、高分子化合成樹脂、リン酸塩、亜リン酸塩、または硼酸塩、あるいはこれらの混合物を包含する、もしくはこれらから成る。
【0108】
酸化シリコン層および酸化クロム層(クロメーション)が好ましい。SiO2層は、好ましくは、有機溶媒中、ゾル−ゲル法で、20から150nmの層厚で製造される。
【0109】
本発明のアルミニウム顔料は、塗布物、ラッカー、印刷インク、粉体ラッカー、プラスチックおよび化粧品調合液に用いられる。好ましくは、本発明のアルミニウム顔料は、マニキュア調合液に用いられる。本発明のマニキュア液は、極度に金属的な外観を持つ。
【0110】
引き続く被覆により不動態化された本発明のアルミニウム顔料は、好ましくは水性ラッカーおよび外面用の塗装剤において用いられる。本発明の水性ラッカーは、不動態化された本発明のアルミニウム顔料に加えて、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンの様な通例の水−適合性バインダ等を含有する。
【0111】
以下の実施例は本発明を説明するために役立つが、如何なる意味においてもそれを限定しない。
【実施例】
【0112】
本発明の実施例1−3
【0113】
実施例1:
ガラス球体(直径:2mm)3.1kg、石油蒸留物310g、アルミニウム弾(平均直径<8μm)93g、およびオレイン酸9.3gをバレル・ミル(長さ:32cm、幅:19cm)中にセットする。次いで、この混合物を、57rpmで20時間研磨する。生成物を、石油蒸留物で濯いで研磨ボールから分離し、次いで、25μmの網目を用いて湿式法で篩い分ける。微細物は、吸引濾過により石油蒸留物が大部分取り除かれ、引き続いて実験室ミキサー中で、石油蒸留物を用いてペーストにかたち造られる(固形分約70%)。
【0114】
実施例2:
平均直径<6μmの弾を用い研磨時間を23時間として、実施例1と同様に研磨する。
【0115】
実施例3:
スチールボール(直径:1.1mm、重量5.5mg)5.0kg、石油蒸留物160g、アルミニウム弾(平均直径<8μm)150g、およびオレイン酸6gをバレル・ミル(長さ:32cm、幅:19cm)にセットする。続いて、この混合物を、16時間、60rpmで研磨する。生成物を、篩い分けの間に石油蒸留物で十分に濯いで研磨ボールから分離し、次いで、25μmの網目を用いて湿式法で篩い分ける。微細物からは、吸引濾過により石油蒸留物が実質的に取り除かれ、引き続いて実験室ミキサー中で、石油蒸留物を用いてペーストにかたち造られる(固形分約70%)。
【0116】
比較例4:Metalure L 55300(Eckart)
比較例5:MH 8801(Asahi)
比較例6:MH 9901(Asahi)
比較例7:VP 53534(Eckart)、硬貨顔料
比較例8:MEX 2192(Eckart)、硬貨顔料
【0117】
本発明の実施例の試料、および選択した比較例の試料は水被覆率によって特徴付けられ、また、それから平均厚さを計算した。
【0118】
水被覆率の決定は、DIN55923に沿って実施した。ここで、リーフィングする顔料にのみ適用されるこの標準に加えて、リーフィングしない顔料を、拡げる前に、以下の処理によりリーフィングする顔料に変換した:アルミニウム顔料200mgを、ペーストまたは濾過ケーキの形状で計量し、ステアリン酸3.15gと石油蒸留物63mlの溶液中に分散させ、超音波バス中で12分間処理した。次いで、ガラスフリットを用いて分散物を吸引濾過し、アセトンで3回洗浄し、吸引して乾燥して、真空デシケータ中で乾燥した。通常の場合、次に、ステアリン酸で滑らかにされたアルミニウム粉末約4mgを時計ガラスに載せ、数滴のn−ブタノールと共にガラス棒でペースト化し、そして、全体のペーストを拡散ボウルに添加する。
【0119】
しかしながら、非常に薄い本発明のアルミニウム顔料の場合、試料の調製において異常事態が発生した。ここで、水被覆率が非常に高かったので、DIN55923で特定された水ボウルに対して金属フィルムが大きすぎた。試料1mgの量を計量することにより、適切な寸法の金属鏡を達成することが初めて可能であった。この場合、しかしながら、測定において、著しい分散(>10%)が明らかにされた。これは結果的に生じた計量誤差に起因する。
【0120】
別法として、ステアリン酸で滑らかにされたアルミニウム粉末を含有する試料の場合、n−ブタノール中の分散液を調製した。濃度は、この分散液1mlが顔料約1mgを含有する様に合わせた。サンプリングとしては、顔料粒子の沈着行動を避けるために激しく撹拌しながら、目盛付きピペットにより分散液約1mlを採取し、そして、分散液を注意深く拡散ボウル上に分散させた。この方法を用いたときの水被覆率の相対的分散は10%未満であった。
【0121】
本発明の実施例1から3の試料、および選択した比較例の試料は、粒子厚をより正確に決定するため、電界イオン走査型電子顕微鏡を用いて特徴を描いた。
【0122】
SEM検査用の試料を下記の様に調製した。
【0123】
a)本発明のアルミニウム顔料および湿式研磨で得られる従来の顔料
【0124】
本発明のアルミニウム顔料または従来の湿式研磨で得た従来のアルミニウム顔料は、各場合ペーストまたは濾過ケーキの形状で存在し、また、各々先ずアセトンで洗浄し、次いで乾燥している。
【0125】
電子顕微鏡検査において通常使用される樹脂、例えばTEMPFIX(ゲルハルト・ノイバウエル・ケミカリーン(Gerhard Neubauer Chemikalien)、D−48031 ムンスター(Munster)、ドイツ)を、試料板に適用し、ホットプレートを用いて加熱して軟化させる。引き続いて、試料板をホットプレートから取り外し、それぞれのアルミニウム粉末を軟化した樹脂上にばらまく。冷却されると樹脂は再び固化し、接着と重力の間の相互作用に起因して、ばらまかれたアルミニウム顔料を、試料板に殆ど垂直に立ち上がらせ、また固定させて、調製することができる。結果として、電子顕微鏡で、顔料を横向きに容易に測定できる。厚さの測定において、顔料の方位角αは、表面に直角な面に対して評価され、式heff=hmes/cosαに従って厚さを評価する際に準備される。
【0126】
累積的破過曲線は、相対的発生頻度の助けを借りて、heff値からプロットした。少なくとも約100粒子を計数している。
【0127】
b)PVD顔料
【0128】
PVD顔料懸濁液を、それから剥離被覆の残留物を実質的に取り除くために、大過剰のアセトンで何回も洗浄した。引き続いて、PVD顔料をアセトン中に分散させ、分散液を一滴採って顕微鏡スライド上に置いた。溶媒の蒸発後、スライドを薄切りにした。個々の切片は、電子顕微鏡内で垂直に立てて設置できる。切断端が鋭利なので、十分なPVD顔料を測定できる。ここで、厚さ分布が狭いため、意味のある結果を得るには約50粒子で足りる。
【0129】
本発明の種々の試料および比較試料の厚さ分布の累積的破過曲線を、図1(a)と(b)に示す。(b)中の曲線は、(a)中の曲線の拡大セクションを示す。測定した粒子の数は50(PVD顔料)から192(従来の顔料)であった。統計解析は、本発明の顔料および湿式研磨で得られた従来の顔料について75から100粒子を計数すれば、累積的破過曲線が実質的に一定であることを示した。
【0130】
結果を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
一般的に、水被覆率法で決定された平均厚さhspreadと厚さ分布の累積的破過曲線の中央値h50の間には、良好な一致がある。顔料のBET表面積、サイズ分布のd50値、および計算された粗さ値Rとアスペクト比fも、同様に用いられる。恒例により、これらの値の計算には、水被覆率やそれから計算した平均厚さが用いられた。
【0133】
長手方向の大きさdは、レーザ粒度分布計(Cilas 1064、サイラス(Cilas)社、フランス)を用いて決定し、μm単位の累積的破過分布のd50値を、定法通り、平均の長手方向の大きさの指標として選んだ。
【0134】
本発明の顔料と従来の顔料を比較評価するため、顔料を、従来型のニトロセルロースラッカー(エルコ・ブロンツェミシュラック(Erco Bronzemischlack)2615e;入手先はローム・アンド・ハース ドイツ、ヴェルク・シュトルーレンドルフ、ラインハルト−ライヒナウ通り、4、D−96129 シュトルーレンドルフ(Rohm and Haas Germany, Werk Strullendorf, Reinhard-Reichnow-Str. 4, D-96129 Strullendorf)中に一連の濃度でドクターブレード(ドクターブレード間隙:36μm)を用いて黒/白コントラスト紙上で拡げ、室温で24時間乾燥した。
【0135】
これらの被覆物は、一方で、DIN67530に従ってそれぞれ20゜および60゜で測定した光沢により(装置:ミクロ−TRIグロス、BYK−ガルトナー製、D−82538 ゲレートシュリート(micro-TRI gloss, Byk-Gardner, D-82538 Geretsried)、ドイツ)、光学的に特徴付けた。この装置は、ここでは暗較正、および、値が、20゜に対して92および60゜に対して95の黒鏡ガラス板により較正した。他方、輝度値L*の比色分析決定は、一定の入射角45゜と、種々の観察角(光沢角に対して)により特徴付けた(装置:Multiflash M 45、オプトロニクス)。
【0136】
15゜、45゜および110゜における輝度値から、元はデュポンが提供した式に従って、フロップ指数を決定できる。これは、従来の金属性被覆剤の、角度依存性の輝度変化をうまく再現する(エー・ビー・ジェー ロドリゲス(A.B.J. Rodriguez)、JOCCA、(1992年(4))、150−153頁):
フロップ指数=2.69×(L*15゜−L*110゜1.11/(L*45゜0.86
【0137】
被覆剤の被覆力を評価するためには、黒対白の下塗り上の、観察角110゜における輝度L*の比を用いた。もしこの比が>0.98なら、その被覆剤は十分な被覆能力を持つと指定される。下塗りが十分には被覆されていない場合、測定は、事実上、主として面に平行に配向した金属顔料の「間」を記録するので、この様な低い観察角における測定は特に感度が良い。観察者の視覚的印象との一致は非常に良好である。文献では、他方、輝度差は、通常、拡散測定により評価する(例えば、欧州特許第0451785号明細書)。これは、けれども、かなり低い感度をもたらし、更に、視覚的印象と一致しない。
【0138】
被覆剤の被覆力は、アルミニウム顔料の濃度に決定的に依存する。この濃度の尺度としては、アルミニウム顔料の表面積濃度cAlを、mg/cm2単位で計算した。この変数は、以下の式に従い、ドクターブレードによって予め規定される湿式ラッカー層の厚さにより計算される:
Al=0.1×(mAl/mwet lacquer,Al)×ρwet lacquer,Al×RH [mg/cm2
ここで、
Al:アルミニウム顔料の重量、
wet lacquer,Al:湿式ラッカーの重量、およびペースト状のアルミニウム顔料のための溶媒を含有するアルミニウム顔料の重量(通例10.0g)
ρwet lacquer,Al:アルミニウム顔料が混合された湿式ラッカーの密度、
RH:単位μmのドクターブレードの間隙。
【0139】
図2に、選択した試料について、アルミニウム顔料の表面積濃度の計算値に対する光学的被覆力の基準値をプロットした。
【0140】
図2から、本発明のアルミニウム顔料は、従来のアルミニウム顔料より、顕著に高い被覆力を持つことが明らかに判る。これらのデータを使い、比L*110゜,black/L*110゜,whiteが0.98の処で内挿して、表面積濃度を決定した。
【0141】
本発明の実施例1から3は、表面積濃度が0.15mg/cm2未満において、優れた被覆力を示す。より高価なPVD法により製造したPVD顔料(比較例4)のみがより良い被覆力を示す。
【0142】
図3に、それぞれの場合、被覆物の入射/出射角の配列が60゜および20゜において測定した光沢値を、アルミニウム顔料の表面積濃度に対してプロットしてある。光沢は、表面積濃度の増加に伴い、ほぼ線形に減少する。この原因は、色素沈着レベルの増加に伴って金属顔料の配向性の乏しさが増加することにあるであろう。配向性がより乏しくなるのは、ここではラッカー層中における顔料の積重の誤りが増加することに起因する。この効果は、ここでは特に言明される。ラッカーの固形成分が少ない(不揮発性部分:約6%)ために、被覆物が大きなAl/バインダ比を示すからである。
【0143】
このように、図3から、PVD顔料Metalure(登録商標)(比較例4)はさておき、本発明のアルミニウム顔料(実施例1から3)は、全ての表面積濃度において、従来のアルミニウム顔料(比較例7および8)より著しく優れた光沢値を示すことが判る。
【0144】
図4に、デュポンに従ったフロップ値を、アルミニウム顔料の表面積濃度に対してプロットした。色素沈着が高い処において、本発明の顔料と従来の顔料のフロップ値は同程度である。しかし、約0.15mg/cm2より低いと歴然とした差が明白であり、それらの値においては、従来の顔料の被覆力は既に非常に乏しい。本発明のアルミニウム顔料は、それらの遙かに大きい被覆力により、従来の顔料が最早いかなる被覆能力も持たない低い色素沈着レベルにおいて、特に有利に用いることができる。この様に、非常に高い光沢、良好なフロップ、および極めて金属的な外観、即ち、非常に良好なクロム効果を示す被覆剤を利用する機会を持てる。
【0145】
図5に、通例の輝度の比色分析の尺度として、15゜におけるL*値を、アルミニウム顔料の表面積濃度に対してプロットした。高い色素沈着レベルにおいて、従来の顔料のこれらの値は初めは優位だが、被覆能力の損失の増加に伴って大幅に下がる。
【0146】
比色分析測定のこの結果は、しかしながら、視覚的印象と矛盾する。観察者は、本発明の顔料の被覆剤は、従来の顔料の被覆剤より著しく高い輝度を持つとしている。
【0147】
この食い違いは以下の様に説明できると考えられる。
【0148】
本発明の顔料は、厚さが薄いので、PVD顔料と同様に、極めて良好な配向性、およびそれにより、15゜の観察角においてすら、その光沢角付近の散乱光部分が既に低いというような、非常に高い直接反射、即ち高度の光沢を示す。それ故、比色分析評価においてはより低い輝度が示唆される。しかしながら、これは視覚的印象と食い違う。これに対して、従来の顔料の被覆剤(比較例7および8)は、著しく「もっと白い」あるいは「もっとミルク色の」輝きを示す。他方、本発明の顔料は、PVD顔料(比較例4)の様に、かなり大きい特徴的な金属的効果を示す。従って、本発明の顔料のフロップも、デュポンのフロップ指数の示唆により決定される値より若干高くランク付けされるに違いない。これも、被覆剤の視覚的印象に対応する。
【0149】
比色分析のデータが導くこの様な誤りは、おそらく、欧州特許第0451785号明細書の教示に従って主張されている、水被覆率の増加に伴う輝度の損失と、このような被覆力の増加に伴う輝度の損失との間の関係の根底にも存在する可能性がある。この特許明細書の図1において、水被覆率が3.2m2/gで輝度Lが最高であると主張し、特に5m2/gより高い水被覆率における著しい降下を示唆している。輝度は、しかしながら、測定角に関係付けられておらず、それどころか、拡散的に測定された様に思われる。この場合、より薄い顔料は、入射光の直接反射がより高いので、散乱光の含量が必然的により小さくなることが見落とされていた。
【0150】
表2は、図2から定めた臨界被覆力表面積濃度を列挙したものであり、この濃度において補間した比色分析データを示す。
【0151】
【表2】

【0152】
湿式ラッカー被覆剤において、本発明の顔料のより高い光沢も見られた。表3は、選択した例の湿式ラッカー被覆剤の比色分析データを示す。例外無しに、本発明の実施例1に従って製造した顔料は、従来の湿式研磨によって得た従来の顔料より高い光沢を持っている。しかしながら、この光沢はPVD顔料(比較例4を参照)程高くはない。
【0153】
表3中の被覆物は、「適用範囲に」スプレーして製造した。即ち、被覆色素沈着レベルは、一連の濃度により決定した。各場合に使用した色素沈着レベル(ラッカー調合液に基づく)および被覆物の測定した層厚が示されている。層厚は、Qua Nix 1500(ラウ社(Lau GmbH, D-58675 Hemer)、ドイツ)で測定した。ここでも、従来の顔料と比べて、本発明の顔料のより高い被覆力と関連するより薄い層厚が明らかである。しかしながら、ここでも、PVD顔料は更に優れた被覆力、およびより強度の金属的特性を持っている。
【0154】
【表3】

【0155】
本発明のアルミニウム顔料の不動態化例。
【0156】
実施例9:SiO2被覆アルミニウム
実施例1に従うアルミニウム顔料を含有するペースト55.1g(Alの38.5gに相当)を、イソプロパノール375ml中に分散させ、沸点に昇温する。テトラエトキシシラン13.35gを添加する。続いて、水9.3g中25%強度のNH35.4gの溶液を3時間かけて秤量添加する。更に3時間後、混合物を室温に冷却し、ブフナー漏斗を用い、吸引しながら懸濁液を濾過する。続いて、真空乾燥炉中100℃で生成物を終夜乾燥する。
【0157】
実施例10:クロメート化アルミニウム
水(脱塩した)13.5g中にCrO34.5gを溶解させ、クロム酸溶液18gを調製する。
【0158】
水(脱塩した)220gを容量1lの反応器中で90℃に加熱する。激しく撹拌しながら(撹拌装置:シュトーレンシャイベ(Stollensheibe))、先ず、ブチルグリコール21gを添加し、次いで実施例1で説明した、固形分含量70%の石油蒸留物ペースト形状のアルミニウム顔料125gを添加する。数分後、クロム酸溶液を反応温度80℃で添加する。混合物を激しく撹拌しながら、更に50分間反応させる。次いで、反応混合物を30分間冷却し、各回とも5%強度の脱塩H2O/ブチルグリコール溶液250mlを用い、上澄み溶液の黄色い着色が生じなくなるまで、ビーカー中でデカンテーションを何回も行う。引き続き、生成物を吸引濾過器で濾過し、大量の水(約3リットル)で洗浄する。
【0159】
気体発生試験:
Al8.6gを、ペースト形状で、無色の水混合ラッカー(ZW42−1100、バスフ、ヴュルツブルク(BASF Wurzburg))315gに含有させ、ジメタノール−エタノールアミンでpH8.2とする。このラッカー300gを気体洗浄瓶に充填し、これを二槽気泡計数器に密閉する。気体の量は、気泡計数器の下の槽中で置換された水の量によって読み出せる。気体洗浄瓶は水浴で40℃に温度制御し、試験を30日にわたって実施する。もし、水素の発生が7日後に4ml以下、そして30日後に20ml以下ならば、合格と認められる。
【0160】
【表4】

【0161】
表4から、本発明のアルミニウム顔料は、腐食に対して素晴らしく安定化されていることが判る。
【0162】
本発明の方法は、物理的特性においてPVD顔料に非常に近いアルミニウム顔料の製造を可能にし、しかしこれは著しく簡単な手法で製造できる。従来のアルミニウム顔料と比較して、本発明のアルミニウム顔料は、特に被覆力および光沢において、著しく改良された特性を示す。最後に、本発明のアルミニウム顔料は、PVD顔料の難点である集塊するいかなる傾向をも示さない。本発明のアルミニウム顔料は、それ故、例えば、ラッカー系、印刷インク、または化粧品に添加する調合液において、はるかに濃縮した形状で使用できる。これは、取り扱いを著しく容易にする。
【0163】
本発明のアルミニウム顔料は、それ故、従来のアルミニウム顔料の有利な特性、特に製造および取り扱い容易性と、PVD顔料のそれら、特に高い被覆力、高い光沢特性、および極度に金属的な外観を併せ持っている。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】(a)本発明の種々の試料および比較試料の厚さ分布の累積的破過曲線を示す。(b)(a)中の曲線の拡大セクションを示す
【図2】アルミニウム顔料の表面積濃度の計算値と光学的被覆力の基準値の関係を示す。
【図3】アルミニウム顔料の表面積濃度と被覆物の入射/出射角の配列が60゜および20゜において測定した光沢値との関係を示す。
【図4】アルミニウム顔料の表面積濃度とデュポンに従ったフロップ値の関係を示す。
【図5】アルミニウム顔料の表面積濃度と15゜におけるL*値との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑剤で少なくとも部分的に被覆されているアルミニウム顔料であって、
a)水被覆率が40,000と130,000cm2/gの間、
b)前記水被覆率と、走査型電子顕微鏡の厚さ計数の累積的破過曲線から決定されるh50値から計算される平均厚さhが100未満から30nm、
c)走査型電子顕微鏡の厚さ計数により決定されるとき、式
Δh=100×(h90−h10)/h50
に従い、相対的発生頻度の対応する累積的破過曲線に基づいて計算したときに、厚さ分布の相対的幅Δhが70%から140%、
d)アスペクト比d50/hが200を超える、
e)式
BET値/(2×水被覆率)
に従い、BET試験法により決定される比表面積と水被覆率から計算される粗さ値が0.30から0.9、
であることを特徴とするアルミニウム顔料。
【請求項2】
走査型電子顕微鏡の厚さ計数により決定されるとき、式
Δh=100×(h90−h10)/h50
に従い、相対的発生頻度の対応する累積的破過曲線に基づいて計算したときに、厚さ分布の相対的幅Δhが75%から120%、
であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム顔料。
【請求項3】
前記アルミニウム顔料が220を超えるアスペクト比d50/hを持つことを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム顔料。
【請求項4】
前記アルミニウム顔料が、BET試験法により決定される比表面積と水被覆率から、下記式
BET値/(2×水被覆率)
に従って計算される粗さ値、0.35から0.9を持つことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項5】
前記アルミニウム顔料が、滑剤としての脂肪酸によって、少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項6】
前記アルミニウム顔料が、滑剤としてのステアリン酸によって、少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項7】
前記アルミニウム顔料が、滑剤としてのオレイン酸によって、少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項8】
前記アルミニウム顔料が、滑剤としてのステアリン酸とオレイン酸の混合物によって、少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項9】
前記アルミニウム顔料が、滑剤としてのホスホン酸、リン酸エステルまたはそれらの混合物によって、少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項10】
前記アルミニウム顔料が、不動態防止剤層または防食剤層によって被覆されていることを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項11】
前記不動態防止剤層が防食性の有機ホスホン酸および/またはリン酸エステル、機能性有機シラン、脂肪族または環式アミン、脂肪族または芳香族ニトロ化合物、酸素−、硫黄−および/または窒素−含有複素環、硫黄−および/または窒素−含有高級ケトン,アルデヒドおよびアルコール、チオール、β−ケトエステル、β−ジケトン、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項10に記載のアルミニウム顔料。
【請求項12】
前記不動態防食剤層が、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、高分子化プラスチック樹脂、酸化バナジウム、酸化モリブデンおよび/または過酸化物、リン酸塩、亜リン酸塩、硼酸塩、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項10に記載のアルミニウム顔料。
【請求項13】
前記前記不動態防食剤層が二酸化シリコンを含み、前記二酸化シリコンの表面が好ましくはシランで被覆されていることを特徴とする請求項10に記載のアルミニウム顔料。
【請求項14】
前記アルミニウム顔料が水性化学的処理において水により酸化されており、かつ前記アルミニウム顔料が変性された色を持つことを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項15】
前記アルミニウム顔料が粉体、好ましくは非発塵性粉体、または圧縮された形状、好ましくはペースト、小粒またはペレットであることを特徴とする請求項1−14のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項16】
以下の段階:
a)溶媒、滑剤および個々の重量が2から13mgである研磨媒体の存在下、15から72時間にわたって研磨機中でアルミニウム粒子を研磨し、アルミニウム顔料とする段階、
を含む請求項1−15のいずれかに記載の顔料を製造する方法。
【請求項17】
前記研磨媒体の個々の重量が5.0から12mgであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルミニウム顔料を、追加の段階b)においてサイズの分級にかけることを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
段階a)またはb)で調製された前記アルミニウム顔料を圧縮された形状、好ましくはペースト、小粒またはペレットに転換することを特徴とする請求項16−18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
段階a)またはb)で調製された前記アルミニウム顔料を粉体化アルミニウム、好ましくは非発塵性アルミニウム粉体に転換することを特徴とする請求項16−18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
使用する溶媒が有機溶媒、好ましくは石油蒸留物、溶媒ナフサ、イソプロパノール、アルコール、ケトン、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項16−20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
使用する溶媒が水であり、使用する滑剤が有機ホスホン酸および/またはそのエステルおよび/またはリン酸および/またはそのエステルであることを特徴とする請求項16−21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項1−15のいずれかに記載のアルミニウム顔料の、被覆剤、ペイント、印刷インク、粉末被覆剤、プラスチック、セキュリティ印刷インク、セラミックス、及び化粧品調合液、好ましくはマニキユア液における使用。
【請求項24】
請求項10−12のいずれかに記載された被覆されたアルミニウム顔料の、水系ペイント及び外面塗装用被覆剤における使用。
【請求項25】
請求項1−15のいずれかに記載のアルミニウム顔料を含有することを特徴とするマニキュア液。
【請求項26】
請求項9−14のいずれかに記載のアルミニウム顔料を含有することを特徴とする水系ペイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−522192(P2006−522192A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504981(P2006−504981)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003553
【国際公開番号】WO2004/087816
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (48)
【Fターム(参考)】