薄膜共振子
【課題】所定の周波数において、縦波の励振を抑制しつつ横波を励振する薄膜共振子を提供する。
【解決手段】薄膜共振子10は、第1電極121と第2電極122の間にn層(nは3以上の自然数)の圧電体層(第1圧電体層111、第2圧電体層112、第3圧電体層...)が設けられたものである。各圧電体層における分極ベクトルPは前記薄膜共振子に平行な面αの法線13に対して傾斜するように配向している。各圧電体層における分極ベクトルPの法線13への射影は同方向であり、第1電極121側から数えて奇数番目の圧電体層における分極ベクトルPの面αへの射影は第1電極121側から数えて偶数番目の圧電体層における分極ベクトルPの面αへの射影と逆方向である。このような構成により、最大強度の横波の励振は、最大強度の縦波の励振とは異なる周波数で生じるため、横波の励振時に縦波の励振を抑制することができる。
【解決手段】薄膜共振子10は、第1電極121と第2電極122の間にn層(nは3以上の自然数)の圧電体層(第1圧電体層111、第2圧電体層112、第3圧電体層...)が設けられたものである。各圧電体層における分極ベクトルPは前記薄膜共振子に平行な面αの法線13に対して傾斜するように配向している。各圧電体層における分極ベクトルPの法線13への射影は同方向であり、第1電極121側から数えて奇数番目の圧電体層における分極ベクトルPの面αへの射影は第1電極121側から数えて偶数番目の圧電体層における分極ベクトルPの面αへの射影と逆方向である。このような構成により、最大強度の横波の励振は、最大強度の縦波の励振とは異なる周波数で生じるため、横波の励振時に縦波の励振を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横波の機械的振動を交流電圧に変換し、あるいは交流電圧を横波の機械的振動に変換するすべりモード型の薄膜共振子に関する。
【背景技術】
【0002】
すべりモード薄膜共振子は横波の音波を発信・受信する素子として用いられる。このような素子を用いて、例えば、液体試料から析出する固体の量の時間変化を測定することができる。この測定では、液体試料が入った容器の壁に横波の音波を発信し、それにより生じる壁の横波振動を受信してその振動周波数を求める。ここで、横波は固体中のみを伝播し、液体中(及び気体中)では伝播しないため、壁(固体)の振動のみを捉えることができる。そして、容器の壁に析出する固体の量の変化に対応して、受信した横波振動の周波数が(わずかに)変化するため、その周波数の変化が固体の析出量の変化を反映した値となる。
【0003】
特許文献1には、横波を発信・受信する薄膜共振子の例として、図1に示した薄膜共振子(トランスデューサ)90が記載されている。この薄膜共振子90は、第1電極921と第2電極922の間に第1圧電体層911と第2圧電体層912の2層を有する。第1圧電体層911の第1分極ベクトルP1と第2圧電体層912の第2分極ベクトルP2はそれぞれトランスデューサ面(第1圧電体層911及び第2圧電体層912に平行な面)αの法線93に対して傾斜するように配向している。そして、第1分極ベクトルP1と第2分極ベクトルP2のトランスデューサ面αへの射影P1SとP2Sは逆方向であり、第1分極ベクトルと第2分極ベクトルの法線93への射影P1LとP2Lは同方向である。第1圧電体層911及び第2圧電体層912には、機械的振動と交流電圧の間の変換効率が高いウルツ鉱型構造(「ウルツ鉱構造」、「ウルツ鉱型結晶構造」とも呼ばれる)を有する圧電体を好適に用いることができる。ウルツ鉱型構造を有する圧電体では、分極ベクトルの方向は結晶軸のc軸方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-182515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の薄膜共振子では、所定の共振周波数を持つ横波の音波が励振されるのと同時に、その横波と同じ共振周波数を持つ縦波が励振される。このような特性は、例えば被測定物内部で様々な方向に走る亀裂等を検出する非破壊検査の振動源のように、同じ周波数の縦波と横波を同時に利用する場合には有益である。しかし、上述の固体析出量の測定のように横波のみを用いたい場合には、横波と同じ振動数を持つ縦波がノイズの原因となるため好ましくない。固体析出量測定の例では、薄膜共振子が、容器の壁の横波振動に加えて、その横波と同じ周波数で容器内の液体及び容器の壁を伝播する縦波振動を受信することから、受信信号はそれら2つの振動が重畳されたものになり、固体に関する情報だけを抽出することが困難になる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、所定の周波数において、縦波の励振を抑制しつつ横波を励振する薄膜共振子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る薄膜共振子は、
第1電極と第2電極の間にn層(nは3以上の自然数)の圧電体層が設けられた薄膜共振子であって、
各圧電体層における分極ベクトルが前記薄膜共振子に平行な面の法線に対して傾斜するように配向しており、
各圧電体層における分極ベクトルの前記法線への射影が同方向であり、
第1電極側から数えて奇数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影が、第1電極側から数えて偶数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影と逆方向である、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る薄膜共振子によれば、横波の強度が最大になる共振周波数Fpが、縦波の強度が最大になる共振周波数Fsと異なる値をとるため、周波数Fpにおいて、縦波の励振を抑制しつつ横波を励振することができる。以下、その理由を説明する。
【0009】
本発明に係る薄膜共振子では、各圧電体層における分極ベクトルの前記法線への射影が同方向であるため、第1電極と第2電極の間に交流電圧が印加された時、又は外部から縦波の振動が与えられた時に、法線方向には、全ての圧電体層が同位相で振動する。そのため、縦波はn層の圧電体層の積層体全体(全膜厚dtotal)に亘って1/2波長の振動が形成される、即ち波長λLが2dtotalである1次モードの強度が最大になる。
【0010】
一方、奇数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面(トランスデューサ面)への射影と偶数番目の圧電体層における分極ベクトルのトランスデューサ面への射影が逆方向であるため、第1電極と第2電極の間に交流電圧が印加された時、又は外部から横波の振動が与えられた時に、トランスデューサ面に平行な方向には、奇数番目の圧電体層と偶数番目の圧電体層が逆方向に振動する。そのため、横波は積層体全体に亘ってn/2波長の振動が形成される、即ち波長λSが(2/n)dtotalであるn次モードの強度が最大になる。
【0011】
圧電体層内での縦波の音速VLは圧電体層内での横波の音速VSのおよそ2倍である。そのため、最大強度の縦波の周波数fL及び最大強度の横波の周波数fSを音速VSで表すと、
fL=VL/λL≒2VS/(2dtotal)=VS/dtotal …(1)
fS=VS/λS≒VS/((2/n)dtotal)=(n/2)VS/dtotal …(2)
fS≒(n/2)fL …(3)
となる。即ち、n=2の場合にはfLとfSがほぼ等しくなるのに対して、nが3以上の自然数である場合にはfLとfSが異なる値をとる。従って、本発明のように3層以上の圧電体層を用いることにより、最大強度の励振が生じる周波数が異なることとなる。言い換えれば、本発明に係る薄膜共振子では、所定の周波数fSにおいて、該薄膜共振子における最大強度の縦波が生じることなく、最大強度の横波が励振される。
【0012】
上記のように、縦波の共振周波数と横波の共振周波数は共に全膜厚dtotal及び圧電体層内での音速により定まる。すなわち、縦波と横波の周波数は、個々の圧電体層の厚さdk(kは1〜nの自然数)や分極ベクトルと法線の成す角度θkにはほとんど依存しない。そのため、最大強度の縦波が生じることなく最大強度の横波を励振するという目的を達する限りにおいては、圧電体層毎に厚さdkや角度θkが異なってもよい。しかし、厚さdkや角度θkが圧電体層毎に異なると、縦波及び横波において、最大強度の振動モード以外の振動モードも生じてしまう。そのため、厚さdkや角度θkは全ての層において同一であることが望ましい。
【0013】
各圧電体層の材料は、圧電体であれば特に限定されないが、機械的振動と交流電圧の間の変換効率が高いウルツ鉱型構造を有する圧電体であることが望ましい。ウルツ鉱型構造を有する圧電体には、酸化亜鉛(ZnO)や窒化アルミニウム(AlN)等がある。
【0014】
本発明に係る薄膜共振子を製造する際には通常、基板(第1電極若しくは第2電極、又はそれらとは別の基板)の上に1層目の圧電体層を作製し、その上に2層目以降の圧電体層を順に作製する。この場合、k番目(kは2〜n)の圧電体層は、その直下にある(k-1)番目の圧電体層における結晶成長の方向の影響を受けて、結晶軸の方向が所定の方向からずれる場合がある。このように結晶軸の方向がずれると、それにより分極ベクトルも所定の方向からずれてしまう。そこで、本発明に係る薄膜共振子には、隣接する2つの圧電体層の間に、一方の圧電体層の結晶軸の向きが他方の圧電体層の結晶の向きに影響を及ぼすことを防ぐ緩衝層を設けることができる。例えば、各圧電体層の材料に酸化亜鉛を用いた場合には、緩衝層の材料には二酸化珪素(SiO2)を用いることができる。また、緩衝層の材料が結晶性を有すると、その結晶軸の方向が圧電体層の結晶軸の方向に影響を与えたり、薄膜共振子の使用時に不要な振動を発生させたりする可能性があるため、緩衝層にはアモルファスを用いることが望ましい。アモルファスの緩衝層の材料には、例えば、アルミナ、二酸化チタン、酸化ホウ素、カーボン、その他のガラス材料やアモルファス合金を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る薄膜共振子によれば、所定の周波数において、該薄膜共振子における最大強度の縦波が生じることを防いで縦波の励振を抑制しつつ、最大強度の横波を励振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の薄膜共振子90を示す縦断面図。
【図2】本発明の一実施例である薄膜共振子10を示す縦断面図。
【図3】本実施例の薄膜共振子10内に生じる縦波及び横波を模式的に示す図。
【図4】ウルツ鉱型構造を持つ物質の結晶構造を示す模式図。
【図5】(a)ZnO、(b)AlN、(c)LiNbO3における分極ベクトルの傾斜角ψと電気機械結合定数k15'の関係を示すグラフ(参考のために、傾斜角ψと縦波の振動に寄与する電気機械結合定数k33'の関係を併せて示した)。
【図6】隣接する2つの圧電体層の間に緩衝層を設ける例(薄膜共振子10A)を示す縦断面図。
【図7】圧電体層の作製に用いるRFマグネトロンスパッタ装置30を示す概略図。
【図8】本実施例の薄膜共振子10Aの製造方法を示す縦断面図。
【図9】本実施例で作製された薄膜共振子10Aにおける第1圧電体層111及び第2圧電体層112に対して行われたX線回折測定の結果を示す極点図。
【図10】本実施例で作製された薄膜共振子10Aの横波及び縦波に対する変換損失の測定結果を示すグラフ。
【図11】本発明の他の実施例を示す縦断面図。
【図12】n=6である薄膜共振子50の横波及び縦波に対する変換損失の測定結果を示すグラフ。
【図13】n=4及び20並びに比較例であるn=1及び2の場合における薄膜共振子の横波及び縦波に対する変換損失の計算結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る薄膜共振子の一実施例を、図2〜図11を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
本実施例の薄膜共振子10は、図2に示すように、第1電極121と第2電極122の間に4層の圧電体層(第1電極121側から順に第1圧電体層111、第2圧電体層112、第3圧電体層113、第4圧電体層114)が設けられたものである。第1圧電体層111〜第4圧電体層114の分極ベクトルP1〜P4はいずれも、圧電体層に平行な面αの法線13に対して傾斜する(法線13に対して平行でも垂直でもない)ように配向している。また、分極ベクトルP1〜P4の法線13への射影P1L〜P4Lは全て同方向になっている。一方、分極ベクトルP1〜P4の面αへの射影P1s〜P4sは、第1電極121側から数えて奇数番目の圧電体層(即ち第1圧電体層111及び第3圧電体層113)におけるもの(P1s, P3s)と、偶数番目の圧電体層(第2圧電体層112及び第4圧電体層114)におけるもの(P2s, P4s)が逆方向になっている。本実施例では、第1圧電体層111〜第4圧電体層114の厚みをd1〜d4とし、それら4層の厚みの合計をdtotalとする。
【0019】
薄膜共振子10の動作を、図3を用いて説明する。第1電極121と第2電極122の間に交流電圧が印加されると、第1圧電体層111及び第2圧電体層112には、縦波の生成に寄与する法線方向の圧縮振動(縦波振動)と、横波の生成に寄与するトランスデューサ面に平行な方向のすべり振動(横波振動)の両方の振動が生じる。
【0020】
縦波振動については、法線13への射影P1L〜P4Lが全て同方向であるため、全ての圧電体層が同位相で振動する(図3(a))。それにより、第1圧電体層111の上面と第4圧電体層114の下面は180°異なる位相を持つ。従って、縦波は奇数次の振動モードを持つ。奇数次の振動モードのうち強度が最大になるのは1次モードである。1次モードの縦波振動の波長λLは2dtotalである。
【0021】
一方、横波振動については、分極ベクトルP1〜P4の面αへの射影が奇数番目の圧電体層と偶数番目の圧電体層で逆方向になるため、奇数番目の圧電体層と偶数番目の圧電体層が逆位相で振動する(図3(b))。それにより、奇数番目の圧電体層の上面と偶数番目の圧電体層の下面が同じ位相を持ち、奇数番目の圧電体層の下面と偶数番目の圧電体層の上面が同じ位相を持つ。従って、横波は圧電体層2層分の厚みの整数倍を1波長とする振動モードを持つ。このような振動モードのうち強度が最大になるのは、圧電体層2層分の厚み(の1倍)を1波長とする振動モードであり、本実施例では4次モードである。4次モードの横波振動の波長λSは0.5dtotalである。
【0022】
前述のように、圧電体層内での縦波の音速VLは圧電体層内での横波の音速VSのおよそ2倍であるため、1次モードの縦波振動の周波数fL及び4次モードの横波振動の周波数fSは、
fL=VL/λL≒2VS/(2dtotal)=VS/dtotal …(4)
fS=VS/λS=VS/(0.5dtotal)=2VS/dtotal …(5)
∴fS≒2fL …(6)
となる。即ち、周波数fSは周波数fLと異なる値(周波数fLの2倍)を持つため、本実施例の薄膜共振子10では、周波数fSにおいて、最大強度の縦波が生じることを防いで縦波の励振を抑制しつつ、最大強度の横波を励振することができる。
【0023】
また、本実施例の薄膜共振子10は、圧電体層が2層のみの場合と比較すると、同じ周波数の横波を励振するために用いる積層体の厚みをより大きくすることができる。これにより、機械的強度及び耐電圧性を高めることができると共に、電極の面積、即ち横波の音波を発信・受信する面積を大きくすることができる。電極の面積を大きくすることができる理由は以下の通りである。薄膜共振子は、音波の発信・受信のいずれの場合にも交流回路に接続され、交流回路内においてコンデンサとして作用する。そのため、交流回路内でインピーダンス整合をとるために、薄膜共振子のリアクタンスは所定の値(通常は50Ω)にする必要がある。コンデンサのリアクタンスXcは電極間の距離dに比例し、電極の面積Sに反比例する(Xc∝d/S)ため、距離dを大きくする、即ち積層体の厚みを大きくすることができることにより、電極の面積Sを大きくすることができる。
【0024】
第1圧電体層111〜第4圧電体層114の材料は、圧電体であれば特に限定されないが、機械的振動と交流電圧の間の変換効率が高い、ZnOやAlN等のウルツ鉱型構造を有するものが望ましい。ウルツ鉱型構造を有する圧電体は、図4に示すように、六方晶の単位格子を持ち、An+から成る層(A層)とBn-から成る層(B層)が交互に積層し、B層はその上下にある2枚のA層から等距離の位置よりもc軸の1方向にずれた位置に配置される。この結晶構造により、ウルツ鉱型構造を有する圧電体は外部電界が印加されなくともc軸に平行な方向に自発分極(極性)を持つ。
【0025】
第1電極121及び第2電極122の材料にはアルミニウムや金等の通常の電極材料を用いることができる。
【0026】
分極ベクトルの傾斜角ψ(法線13に対する角度で定義)は特に限定されないが、横波の振動に寄与する電気機械結合定数k15'ができるだけ大きくなるように定めることが望ましい。図5に示すように、ZnOではψ=28°において、AlNではψ=30°において、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)ではψ=168°において、電気機械結合定数k15'が最大となる。ここで、LiNbO3は、(ウルツ鉱型構造以外の)三方晶系イルメナイト構造に類似した構造を有する圧電体である。
【実施例2】
【0027】
次に、薄膜共振子10の変形例である薄膜共振子10Aについて説明する。薄膜共振子10Aは、図6に示すように、第1圧電体層111と第2圧電体層112の間に第1緩衝層141を有する。第1緩衝層141は、薄膜共振子10を製造する際に、第1圧電体層111と第2圧電体層112の一方を作製した後に他方を作製しても、一方の圧電体層の(分極ベクトルの方向を左右する)結晶軸の方向の影響を受けることなく他方の圧電体層を作製するためのものである。同様に、第2圧電体層112と第3圧電体層113の間に第2緩衝層142を、第3圧電体層113と第4圧電体層114の間に第3緩衝層143を、それぞれ有する。
【0028】
薄膜共振子10Aの製造方法の一例を、図7及び図8を参照しつつ説明する。ここでは、第1圧電体層111〜第4圧電体層114の材料にZnOを、第1緩衝層141〜第3緩衝層143にSiO2のアモルファスを、第1電極121及び第2電極122の材料にアルミニウムを用いた場合を例とする。
【0029】
まず、第1圧電体層111〜第4圧電体層114の作製に用いるRFマグネトロンスパッタ装置30(図7)について説明する。RFマグネトロンスパッタ装置30は、一対の板状の陽極31(上側)及び陰極32(下側)を有し、陰極32の下側にマグネトロン回路33を有する。陽極31と陰極32の間には、陽極31及び陰極32に対して傾斜した方向に基板21を固定可能な基板台34が設けられている。本実施例では、基板台34は陽極31及び陰極32に対して80°傾斜した固定面341を持つ。また、基板台34にはヒータ及び冷却水の循環パイプ(図示せず)が内蔵されており、それらによって基板21の温度を調節することができる。陰極32の上には、成膜材料から成るターゲットTが載置される。基板台34の上端と陽極31の下面は接しており、基板台34の下端とターゲットTの上面は3mm離れている。基板台34の上端と下端の距離は45mmである。これら各部は、真空容器(図示せず)内に配置されている。
【0030】
薄膜共振子10Aは以下のように作製する。まず、長辺45mm×短辺25mm×厚み1mmの石英製の基板21の上に、アルミニウムを蒸着することにより第1電極121を作製する(図8(a))。次に、基板21を、第1電極121を下側に向け、長辺を上下方向に向けて基板台34の固定面341に固定すると共に、ZnOから成るターゲットTを陰極32の上に載置する(図7)。そして、真空室内を排気したうえで、真空室内の圧力が1.0Paになるようにアルゴンと酸素の混合ガスを混合比3:1で真空室内に導入する。この状態で、基板21の温度を400℃に維持しつつ、マグネトロン回路33に200Wの高周波電力を投入することにより、ZnOのターゲットTを1時間スパッタする。これにより、スパッタされたZnOの粒子が第1電極121の表面に堆積し、ZnOから成る第1圧電体層111が形成される(b)。ここで、固定面341が陽極31及び陰極32に対して傾斜していることにより、第1圧電体層111を構成するZnOにおけるc軸の方向(分極ベクトルの方向)は、その層に対して傾斜する。
【0031】
次に、いったん真空室内の真空を破り、ターゲットTをZnOからSiO2に交換する。そして、真空室内を排気したうえで、真空室内の圧力が1.0Paになるようにアルゴンと酸素の混合ガスを混合比1:1で真空室内に導入する。この状態で、基板21の温度を100℃に維持しつつ、マグネトロン回路33に200Wの高周波電力を投入することにより、SiO2のターゲットTを10分間スパッタする。これにより、第1圧電体層111の表面に、SiO2のアモルファスから成る第1緩衝層141が形成される(c)。
【0032】
続いて、真空室内の真空を破り、ターゲットTをSiO2からZnOに交換する。それと共に、基板21を、固定面341に垂直な軸342の周りに180°回転させる(d)。そして、第1圧電体層111を製造した時と同じ条件でZnOのターゲットTをスパッタすることにより、第1緩衝層141の表面に第2圧電体層112を作製する(e)。ここで、上述のように基板21を軸342の周りに180°回転させたこと、及び第1緩衝層141が存在することにより、第2圧電体層112を構成するZnOにおけるc軸(分極ベクトル)は、第2圧電体層112に平行な成分が第1圧電体層111の場合と逆の方向を向く。
【0033】
以後、第2緩衝層142、第3圧電体層113、第3緩衝層143、第4圧電体層114の順に作製する。ここで、第3圧電体層113及び第4圧電体層114は第2圧電体層112と同様の方法により、第2緩衝層142及び第3緩衝層143は第1緩衝層141と同様の方法により、それぞれ作製することができる。最後に、第4圧電体層114の上に、アルミニウムを蒸着して第2電極122を作製する(f)ことにより、薄膜共振子10Aが得られる。
【0034】
上記方法を用いて作製された薄膜共振子10Aにつき、各種の測定を行った。まず、第1圧電体層111及び第2圧電体層112につき、X線回折測定を行い、ZnOの結晶の(0002)面に関する極点図を作成した(図9)。(0002)面はc軸(即ち分極ベクトル)に垂直な面である。この極点図によれば、X線回折の検出値は、第1圧電体層111及び第2圧電体層112共に、仰角ψに関しては25°付近を中心として、約7°の半値全幅で分布している。このことは、第1圧電体層111、第2圧電体層112共に分極ベクトルが法線13に対して約25°傾斜していることを示している。一方、方位角φは第1圧電体層111と第2圧電体層112でほぼ180°対称になっている。このことは、第1圧電体層111と第2圧電体層112で分極ベクトルの面αへの射影が逆になっていることを示している。
【0035】
第1圧電体層111〜第4圧電体層114の各層における、傾斜角ψ、ψの半値全幅Δψ及び厚みdは以下の表の通りであった。
【表1】
第1緩衝層141、第2緩衝層142及び第3緩衝層143の厚みは、順に0.13μm、0.12μm及び0.13μmであった。
【0036】
また、横波及び縦波に関する変換損失をそれぞれ測定したところ、図10に示すように、横波については280MHz、縦波については147MHzにおいて変換損失が最小、即ち励振の強度が最大になった。この結果は、上述の(5)の関係をほぼ満たしている。一方、横波の励振強度が最大になる周波数であるfS=280MHzにおいて横波及び縦波の変換損失を比較すると、前者は約5dB、後者は約22dBであった。これは、周波数fSにおいて、横波では入力されたエネルギーの約30%が出力されるのに対して、縦波では入力エネルギーの約0.6%しか出力されないことを意味する。従って、作製された薄膜共振子10Aは、周波数fSにおいて、縦波の影響をほとんど受けることなく横波の発信・受信を行うことができる。
【実施例3】
【0037】
ここまでは圧電体層が4層の場合を例として説明したが、圧電体層は3層又は5層以上であってもよい。図11(a)に示した薄膜共振子40は、第1電極421と第2電極422の間に、第1電極421側から順に第1圧電体層411、第2圧電体層412及び第3圧電体層413の3層が設けられたものである。また、図11(b)に示した薄膜共振子50は、第1電極521と第2電極522の間に、第1電極521側から順に第1圧電体層511、第2圧電体層512、...第n圧電体層51nのn層(5層以上)が設けられたものである。これらの例の薄膜共振子においてはいずれも、薄膜共振子10の場合と同様に、分極ベクトルは全て圧電体層に平行な面αの法線に対して傾斜している。また、やはり薄膜共振子10の場合と同様に、前記法線への分極ベクトルの射影は全て同方向である一方、面αへの分極ベクトルの射影は、奇数番目の圧電体層におけるものと偶数番目の圧電体層におけるものが逆方向になっている。
【0038】
薄膜共振子40及び薄膜共振子50においては、薄膜共振子10の場合と同様に、縦波振動は全ての圧電体層の厚みの和dtotalを1/2波長とする1次モードの強度が最大になり、横波振動は圧電体層2層分の厚みを1波長とするn次モードの強度が最大になる。これら最大強度の縦波の周波数fLはVS/dtotal、横波の周波数fSは(n/2)VS/dtotalである(上記(1)(2)式)。薄膜共振子40及び薄膜共振子50においてはいずれもnが3よりも大きいため、fLとfSは異なる値をとる。
【0039】
薄膜共振子40及び薄膜共振子50においても、隣接する圧電体層の間に緩衝層を設けることができる。
【0040】
ZnOから成る圧電体層を6層(n=6)有する薄膜共振子50を作製し、横波及び縦波に関する変換損失をそれぞれ測定した。各圧電体層の厚み及び分極ベクトルの傾斜角は前述の圧電体層が4層である場合の測定の際と同様(圧電体層の積層体全体の厚みdtotalは「4層」の場合の1.5倍)である。その結果、図12に示すように、横波の励振強度が最大(変換損失が最小)になる周波数fSは280MHzであるのに対して、縦波の励振強度が最大になる周波数fLは84MHzであった。これは、上述の(3)式の関係をほぼ満たしている(fS≒3fL:n=6の時)。圧電体層を増加させることにより、fSとfLの差を大きくすることができる。
【0041】
次に、n=4及び20並びに比較例であるn=1及び2の場合における薄膜共振子の横波及び縦波に対する変換損失を計算した結果を、図13を用いて説明する。この計算では、圧電体層の材料をZnOとし、分極ベクトルと法線13の成す角度を25°、各圧電体層の厚みを全て5.54μmと、電気機械結合定数k15'を0.23と、k33'を0.15とした。図中に縦の破線で示したように、横波と縦波が同じ周波数で最大の励振強度を持つのに対して、n=4及び20の場合には、横波が最大の励振強度を持つ周波数fS(図中の縦破線)において、縦波は励振強度が最大にはならない。特に、n=20の場合には、周波数fSにおいて、縦波は変換損失が60dBを超えており、ほとんど無視することができる。なお、比較例であるn=1の場合にも、最大の励振強度を持つ周波数が縦波と横波で相違するが、周波数fSにおける縦波の変換損失はn=4及び20の場合よりも小さい。
【0042】
ここまでは最大強度の横波が励振される周波数において縦波の励振を抑制する(縦波は利用しない)という観点で説明したが、本発明に係る薄膜共振子においては、最大強度の横波と、それとは周波数が異なる最大強度の縦波を共に利用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10、10A、40、50、90…薄膜共振子
111、411、511、911…第1圧電体層
112、412、512、912…第2圧電体層
113、413、513…第3圧電体層
114、514…第4圧電体層
51n…第n圧電体層
121、421、521、921…第1電極
122、422、522、922…第2電極
13、93…面αの法線
141…第1緩衝層
142…第2緩衝層
143…第3緩衝層
21…基板
31…陽極
32…陰極
33…マグネトロン回路
34…基板台
341…固定面
342…固定面341に垂直な軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、横波の機械的振動を交流電圧に変換し、あるいは交流電圧を横波の機械的振動に変換するすべりモード型の薄膜共振子に関する。
【背景技術】
【0002】
すべりモード薄膜共振子は横波の音波を発信・受信する素子として用いられる。このような素子を用いて、例えば、液体試料から析出する固体の量の時間変化を測定することができる。この測定では、液体試料が入った容器の壁に横波の音波を発信し、それにより生じる壁の横波振動を受信してその振動周波数を求める。ここで、横波は固体中のみを伝播し、液体中(及び気体中)では伝播しないため、壁(固体)の振動のみを捉えることができる。そして、容器の壁に析出する固体の量の変化に対応して、受信した横波振動の周波数が(わずかに)変化するため、その周波数の変化が固体の析出量の変化を反映した値となる。
【0003】
特許文献1には、横波を発信・受信する薄膜共振子の例として、図1に示した薄膜共振子(トランスデューサ)90が記載されている。この薄膜共振子90は、第1電極921と第2電極922の間に第1圧電体層911と第2圧電体層912の2層を有する。第1圧電体層911の第1分極ベクトルP1と第2圧電体層912の第2分極ベクトルP2はそれぞれトランスデューサ面(第1圧電体層911及び第2圧電体層912に平行な面)αの法線93に対して傾斜するように配向している。そして、第1分極ベクトルP1と第2分極ベクトルP2のトランスデューサ面αへの射影P1SとP2Sは逆方向であり、第1分極ベクトルと第2分極ベクトルの法線93への射影P1LとP2Lは同方向である。第1圧電体層911及び第2圧電体層912には、機械的振動と交流電圧の間の変換効率が高いウルツ鉱型構造(「ウルツ鉱構造」、「ウルツ鉱型結晶構造」とも呼ばれる)を有する圧電体を好適に用いることができる。ウルツ鉱型構造を有する圧電体では、分極ベクトルの方向は結晶軸のc軸方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-182515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の薄膜共振子では、所定の共振周波数を持つ横波の音波が励振されるのと同時に、その横波と同じ共振周波数を持つ縦波が励振される。このような特性は、例えば被測定物内部で様々な方向に走る亀裂等を検出する非破壊検査の振動源のように、同じ周波数の縦波と横波を同時に利用する場合には有益である。しかし、上述の固体析出量の測定のように横波のみを用いたい場合には、横波と同じ振動数を持つ縦波がノイズの原因となるため好ましくない。固体析出量測定の例では、薄膜共振子が、容器の壁の横波振動に加えて、その横波と同じ周波数で容器内の液体及び容器の壁を伝播する縦波振動を受信することから、受信信号はそれら2つの振動が重畳されたものになり、固体に関する情報だけを抽出することが困難になる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、所定の周波数において、縦波の励振を抑制しつつ横波を励振する薄膜共振子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る薄膜共振子は、
第1電極と第2電極の間にn層(nは3以上の自然数)の圧電体層が設けられた薄膜共振子であって、
各圧電体層における分極ベクトルが前記薄膜共振子に平行な面の法線に対して傾斜するように配向しており、
各圧電体層における分極ベクトルの前記法線への射影が同方向であり、
第1電極側から数えて奇数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影が、第1電極側から数えて偶数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影と逆方向である、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る薄膜共振子によれば、横波の強度が最大になる共振周波数Fpが、縦波の強度が最大になる共振周波数Fsと異なる値をとるため、周波数Fpにおいて、縦波の励振を抑制しつつ横波を励振することができる。以下、その理由を説明する。
【0009】
本発明に係る薄膜共振子では、各圧電体層における分極ベクトルの前記法線への射影が同方向であるため、第1電極と第2電極の間に交流電圧が印加された時、又は外部から縦波の振動が与えられた時に、法線方向には、全ての圧電体層が同位相で振動する。そのため、縦波はn層の圧電体層の積層体全体(全膜厚dtotal)に亘って1/2波長の振動が形成される、即ち波長λLが2dtotalである1次モードの強度が最大になる。
【0010】
一方、奇数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面(トランスデューサ面)への射影と偶数番目の圧電体層における分極ベクトルのトランスデューサ面への射影が逆方向であるため、第1電極と第2電極の間に交流電圧が印加された時、又は外部から横波の振動が与えられた時に、トランスデューサ面に平行な方向には、奇数番目の圧電体層と偶数番目の圧電体層が逆方向に振動する。そのため、横波は積層体全体に亘ってn/2波長の振動が形成される、即ち波長λSが(2/n)dtotalであるn次モードの強度が最大になる。
【0011】
圧電体層内での縦波の音速VLは圧電体層内での横波の音速VSのおよそ2倍である。そのため、最大強度の縦波の周波数fL及び最大強度の横波の周波数fSを音速VSで表すと、
fL=VL/λL≒2VS/(2dtotal)=VS/dtotal …(1)
fS=VS/λS≒VS/((2/n)dtotal)=(n/2)VS/dtotal …(2)
fS≒(n/2)fL …(3)
となる。即ち、n=2の場合にはfLとfSがほぼ等しくなるのに対して、nが3以上の自然数である場合にはfLとfSが異なる値をとる。従って、本発明のように3層以上の圧電体層を用いることにより、最大強度の励振が生じる周波数が異なることとなる。言い換えれば、本発明に係る薄膜共振子では、所定の周波数fSにおいて、該薄膜共振子における最大強度の縦波が生じることなく、最大強度の横波が励振される。
【0012】
上記のように、縦波の共振周波数と横波の共振周波数は共に全膜厚dtotal及び圧電体層内での音速により定まる。すなわち、縦波と横波の周波数は、個々の圧電体層の厚さdk(kは1〜nの自然数)や分極ベクトルと法線の成す角度θkにはほとんど依存しない。そのため、最大強度の縦波が生じることなく最大強度の横波を励振するという目的を達する限りにおいては、圧電体層毎に厚さdkや角度θkが異なってもよい。しかし、厚さdkや角度θkが圧電体層毎に異なると、縦波及び横波において、最大強度の振動モード以外の振動モードも生じてしまう。そのため、厚さdkや角度θkは全ての層において同一であることが望ましい。
【0013】
各圧電体層の材料は、圧電体であれば特に限定されないが、機械的振動と交流電圧の間の変換効率が高いウルツ鉱型構造を有する圧電体であることが望ましい。ウルツ鉱型構造を有する圧電体には、酸化亜鉛(ZnO)や窒化アルミニウム(AlN)等がある。
【0014】
本発明に係る薄膜共振子を製造する際には通常、基板(第1電極若しくは第2電極、又はそれらとは別の基板)の上に1層目の圧電体層を作製し、その上に2層目以降の圧電体層を順に作製する。この場合、k番目(kは2〜n)の圧電体層は、その直下にある(k-1)番目の圧電体層における結晶成長の方向の影響を受けて、結晶軸の方向が所定の方向からずれる場合がある。このように結晶軸の方向がずれると、それにより分極ベクトルも所定の方向からずれてしまう。そこで、本発明に係る薄膜共振子には、隣接する2つの圧電体層の間に、一方の圧電体層の結晶軸の向きが他方の圧電体層の結晶の向きに影響を及ぼすことを防ぐ緩衝層を設けることができる。例えば、各圧電体層の材料に酸化亜鉛を用いた場合には、緩衝層の材料には二酸化珪素(SiO2)を用いることができる。また、緩衝層の材料が結晶性を有すると、その結晶軸の方向が圧電体層の結晶軸の方向に影響を与えたり、薄膜共振子の使用時に不要な振動を発生させたりする可能性があるため、緩衝層にはアモルファスを用いることが望ましい。アモルファスの緩衝層の材料には、例えば、アルミナ、二酸化チタン、酸化ホウ素、カーボン、その他のガラス材料やアモルファス合金を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る薄膜共振子によれば、所定の周波数において、該薄膜共振子における最大強度の縦波が生じることを防いで縦波の励振を抑制しつつ、最大強度の横波を励振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の薄膜共振子90を示す縦断面図。
【図2】本発明の一実施例である薄膜共振子10を示す縦断面図。
【図3】本実施例の薄膜共振子10内に生じる縦波及び横波を模式的に示す図。
【図4】ウルツ鉱型構造を持つ物質の結晶構造を示す模式図。
【図5】(a)ZnO、(b)AlN、(c)LiNbO3における分極ベクトルの傾斜角ψと電気機械結合定数k15'の関係を示すグラフ(参考のために、傾斜角ψと縦波の振動に寄与する電気機械結合定数k33'の関係を併せて示した)。
【図6】隣接する2つの圧電体層の間に緩衝層を設ける例(薄膜共振子10A)を示す縦断面図。
【図7】圧電体層の作製に用いるRFマグネトロンスパッタ装置30を示す概略図。
【図8】本実施例の薄膜共振子10Aの製造方法を示す縦断面図。
【図9】本実施例で作製された薄膜共振子10Aにおける第1圧電体層111及び第2圧電体層112に対して行われたX線回折測定の結果を示す極点図。
【図10】本実施例で作製された薄膜共振子10Aの横波及び縦波に対する変換損失の測定結果を示すグラフ。
【図11】本発明の他の実施例を示す縦断面図。
【図12】n=6である薄膜共振子50の横波及び縦波に対する変換損失の測定結果を示すグラフ。
【図13】n=4及び20並びに比較例であるn=1及び2の場合における薄膜共振子の横波及び縦波に対する変換損失の計算結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る薄膜共振子の一実施例を、図2〜図11を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
本実施例の薄膜共振子10は、図2に示すように、第1電極121と第2電極122の間に4層の圧電体層(第1電極121側から順に第1圧電体層111、第2圧電体層112、第3圧電体層113、第4圧電体層114)が設けられたものである。第1圧電体層111〜第4圧電体層114の分極ベクトルP1〜P4はいずれも、圧電体層に平行な面αの法線13に対して傾斜する(法線13に対して平行でも垂直でもない)ように配向している。また、分極ベクトルP1〜P4の法線13への射影P1L〜P4Lは全て同方向になっている。一方、分極ベクトルP1〜P4の面αへの射影P1s〜P4sは、第1電極121側から数えて奇数番目の圧電体層(即ち第1圧電体層111及び第3圧電体層113)におけるもの(P1s, P3s)と、偶数番目の圧電体層(第2圧電体層112及び第4圧電体層114)におけるもの(P2s, P4s)が逆方向になっている。本実施例では、第1圧電体層111〜第4圧電体層114の厚みをd1〜d4とし、それら4層の厚みの合計をdtotalとする。
【0019】
薄膜共振子10の動作を、図3を用いて説明する。第1電極121と第2電極122の間に交流電圧が印加されると、第1圧電体層111及び第2圧電体層112には、縦波の生成に寄与する法線方向の圧縮振動(縦波振動)と、横波の生成に寄与するトランスデューサ面に平行な方向のすべり振動(横波振動)の両方の振動が生じる。
【0020】
縦波振動については、法線13への射影P1L〜P4Lが全て同方向であるため、全ての圧電体層が同位相で振動する(図3(a))。それにより、第1圧電体層111の上面と第4圧電体層114の下面は180°異なる位相を持つ。従って、縦波は奇数次の振動モードを持つ。奇数次の振動モードのうち強度が最大になるのは1次モードである。1次モードの縦波振動の波長λLは2dtotalである。
【0021】
一方、横波振動については、分極ベクトルP1〜P4の面αへの射影が奇数番目の圧電体層と偶数番目の圧電体層で逆方向になるため、奇数番目の圧電体層と偶数番目の圧電体層が逆位相で振動する(図3(b))。それにより、奇数番目の圧電体層の上面と偶数番目の圧電体層の下面が同じ位相を持ち、奇数番目の圧電体層の下面と偶数番目の圧電体層の上面が同じ位相を持つ。従って、横波は圧電体層2層分の厚みの整数倍を1波長とする振動モードを持つ。このような振動モードのうち強度が最大になるのは、圧電体層2層分の厚み(の1倍)を1波長とする振動モードであり、本実施例では4次モードである。4次モードの横波振動の波長λSは0.5dtotalである。
【0022】
前述のように、圧電体層内での縦波の音速VLは圧電体層内での横波の音速VSのおよそ2倍であるため、1次モードの縦波振動の周波数fL及び4次モードの横波振動の周波数fSは、
fL=VL/λL≒2VS/(2dtotal)=VS/dtotal …(4)
fS=VS/λS=VS/(0.5dtotal)=2VS/dtotal …(5)
∴fS≒2fL …(6)
となる。即ち、周波数fSは周波数fLと異なる値(周波数fLの2倍)を持つため、本実施例の薄膜共振子10では、周波数fSにおいて、最大強度の縦波が生じることを防いで縦波の励振を抑制しつつ、最大強度の横波を励振することができる。
【0023】
また、本実施例の薄膜共振子10は、圧電体層が2層のみの場合と比較すると、同じ周波数の横波を励振するために用いる積層体の厚みをより大きくすることができる。これにより、機械的強度及び耐電圧性を高めることができると共に、電極の面積、即ち横波の音波を発信・受信する面積を大きくすることができる。電極の面積を大きくすることができる理由は以下の通りである。薄膜共振子は、音波の発信・受信のいずれの場合にも交流回路に接続され、交流回路内においてコンデンサとして作用する。そのため、交流回路内でインピーダンス整合をとるために、薄膜共振子のリアクタンスは所定の値(通常は50Ω)にする必要がある。コンデンサのリアクタンスXcは電極間の距離dに比例し、電極の面積Sに反比例する(Xc∝d/S)ため、距離dを大きくする、即ち積層体の厚みを大きくすることができることにより、電極の面積Sを大きくすることができる。
【0024】
第1圧電体層111〜第4圧電体層114の材料は、圧電体であれば特に限定されないが、機械的振動と交流電圧の間の変換効率が高い、ZnOやAlN等のウルツ鉱型構造を有するものが望ましい。ウルツ鉱型構造を有する圧電体は、図4に示すように、六方晶の単位格子を持ち、An+から成る層(A層)とBn-から成る層(B層)が交互に積層し、B層はその上下にある2枚のA層から等距離の位置よりもc軸の1方向にずれた位置に配置される。この結晶構造により、ウルツ鉱型構造を有する圧電体は外部電界が印加されなくともc軸に平行な方向に自発分極(極性)を持つ。
【0025】
第1電極121及び第2電極122の材料にはアルミニウムや金等の通常の電極材料を用いることができる。
【0026】
分極ベクトルの傾斜角ψ(法線13に対する角度で定義)は特に限定されないが、横波の振動に寄与する電気機械結合定数k15'ができるだけ大きくなるように定めることが望ましい。図5に示すように、ZnOではψ=28°において、AlNではψ=30°において、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)ではψ=168°において、電気機械結合定数k15'が最大となる。ここで、LiNbO3は、(ウルツ鉱型構造以外の)三方晶系イルメナイト構造に類似した構造を有する圧電体である。
【実施例2】
【0027】
次に、薄膜共振子10の変形例である薄膜共振子10Aについて説明する。薄膜共振子10Aは、図6に示すように、第1圧電体層111と第2圧電体層112の間に第1緩衝層141を有する。第1緩衝層141は、薄膜共振子10を製造する際に、第1圧電体層111と第2圧電体層112の一方を作製した後に他方を作製しても、一方の圧電体層の(分極ベクトルの方向を左右する)結晶軸の方向の影響を受けることなく他方の圧電体層を作製するためのものである。同様に、第2圧電体層112と第3圧電体層113の間に第2緩衝層142を、第3圧電体層113と第4圧電体層114の間に第3緩衝層143を、それぞれ有する。
【0028】
薄膜共振子10Aの製造方法の一例を、図7及び図8を参照しつつ説明する。ここでは、第1圧電体層111〜第4圧電体層114の材料にZnOを、第1緩衝層141〜第3緩衝層143にSiO2のアモルファスを、第1電極121及び第2電極122の材料にアルミニウムを用いた場合を例とする。
【0029】
まず、第1圧電体層111〜第4圧電体層114の作製に用いるRFマグネトロンスパッタ装置30(図7)について説明する。RFマグネトロンスパッタ装置30は、一対の板状の陽極31(上側)及び陰極32(下側)を有し、陰極32の下側にマグネトロン回路33を有する。陽極31と陰極32の間には、陽極31及び陰極32に対して傾斜した方向に基板21を固定可能な基板台34が設けられている。本実施例では、基板台34は陽極31及び陰極32に対して80°傾斜した固定面341を持つ。また、基板台34にはヒータ及び冷却水の循環パイプ(図示せず)が内蔵されており、それらによって基板21の温度を調節することができる。陰極32の上には、成膜材料から成るターゲットTが載置される。基板台34の上端と陽極31の下面は接しており、基板台34の下端とターゲットTの上面は3mm離れている。基板台34の上端と下端の距離は45mmである。これら各部は、真空容器(図示せず)内に配置されている。
【0030】
薄膜共振子10Aは以下のように作製する。まず、長辺45mm×短辺25mm×厚み1mmの石英製の基板21の上に、アルミニウムを蒸着することにより第1電極121を作製する(図8(a))。次に、基板21を、第1電極121を下側に向け、長辺を上下方向に向けて基板台34の固定面341に固定すると共に、ZnOから成るターゲットTを陰極32の上に載置する(図7)。そして、真空室内を排気したうえで、真空室内の圧力が1.0Paになるようにアルゴンと酸素の混合ガスを混合比3:1で真空室内に導入する。この状態で、基板21の温度を400℃に維持しつつ、マグネトロン回路33に200Wの高周波電力を投入することにより、ZnOのターゲットTを1時間スパッタする。これにより、スパッタされたZnOの粒子が第1電極121の表面に堆積し、ZnOから成る第1圧電体層111が形成される(b)。ここで、固定面341が陽極31及び陰極32に対して傾斜していることにより、第1圧電体層111を構成するZnOにおけるc軸の方向(分極ベクトルの方向)は、その層に対して傾斜する。
【0031】
次に、いったん真空室内の真空を破り、ターゲットTをZnOからSiO2に交換する。そして、真空室内を排気したうえで、真空室内の圧力が1.0Paになるようにアルゴンと酸素の混合ガスを混合比1:1で真空室内に導入する。この状態で、基板21の温度を100℃に維持しつつ、マグネトロン回路33に200Wの高周波電力を投入することにより、SiO2のターゲットTを10分間スパッタする。これにより、第1圧電体層111の表面に、SiO2のアモルファスから成る第1緩衝層141が形成される(c)。
【0032】
続いて、真空室内の真空を破り、ターゲットTをSiO2からZnOに交換する。それと共に、基板21を、固定面341に垂直な軸342の周りに180°回転させる(d)。そして、第1圧電体層111を製造した時と同じ条件でZnOのターゲットTをスパッタすることにより、第1緩衝層141の表面に第2圧電体層112を作製する(e)。ここで、上述のように基板21を軸342の周りに180°回転させたこと、及び第1緩衝層141が存在することにより、第2圧電体層112を構成するZnOにおけるc軸(分極ベクトル)は、第2圧電体層112に平行な成分が第1圧電体層111の場合と逆の方向を向く。
【0033】
以後、第2緩衝層142、第3圧電体層113、第3緩衝層143、第4圧電体層114の順に作製する。ここで、第3圧電体層113及び第4圧電体層114は第2圧電体層112と同様の方法により、第2緩衝層142及び第3緩衝層143は第1緩衝層141と同様の方法により、それぞれ作製することができる。最後に、第4圧電体層114の上に、アルミニウムを蒸着して第2電極122を作製する(f)ことにより、薄膜共振子10Aが得られる。
【0034】
上記方法を用いて作製された薄膜共振子10Aにつき、各種の測定を行った。まず、第1圧電体層111及び第2圧電体層112につき、X線回折測定を行い、ZnOの結晶の(0002)面に関する極点図を作成した(図9)。(0002)面はc軸(即ち分極ベクトル)に垂直な面である。この極点図によれば、X線回折の検出値は、第1圧電体層111及び第2圧電体層112共に、仰角ψに関しては25°付近を中心として、約7°の半値全幅で分布している。このことは、第1圧電体層111、第2圧電体層112共に分極ベクトルが法線13に対して約25°傾斜していることを示している。一方、方位角φは第1圧電体層111と第2圧電体層112でほぼ180°対称になっている。このことは、第1圧電体層111と第2圧電体層112で分極ベクトルの面αへの射影が逆になっていることを示している。
【0035】
第1圧電体層111〜第4圧電体層114の各層における、傾斜角ψ、ψの半値全幅Δψ及び厚みdは以下の表の通りであった。
【表1】
第1緩衝層141、第2緩衝層142及び第3緩衝層143の厚みは、順に0.13μm、0.12μm及び0.13μmであった。
【0036】
また、横波及び縦波に関する変換損失をそれぞれ測定したところ、図10に示すように、横波については280MHz、縦波については147MHzにおいて変換損失が最小、即ち励振の強度が最大になった。この結果は、上述の(5)の関係をほぼ満たしている。一方、横波の励振強度が最大になる周波数であるfS=280MHzにおいて横波及び縦波の変換損失を比較すると、前者は約5dB、後者は約22dBであった。これは、周波数fSにおいて、横波では入力されたエネルギーの約30%が出力されるのに対して、縦波では入力エネルギーの約0.6%しか出力されないことを意味する。従って、作製された薄膜共振子10Aは、周波数fSにおいて、縦波の影響をほとんど受けることなく横波の発信・受信を行うことができる。
【実施例3】
【0037】
ここまでは圧電体層が4層の場合を例として説明したが、圧電体層は3層又は5層以上であってもよい。図11(a)に示した薄膜共振子40は、第1電極421と第2電極422の間に、第1電極421側から順に第1圧電体層411、第2圧電体層412及び第3圧電体層413の3層が設けられたものである。また、図11(b)に示した薄膜共振子50は、第1電極521と第2電極522の間に、第1電極521側から順に第1圧電体層511、第2圧電体層512、...第n圧電体層51nのn層(5層以上)が設けられたものである。これらの例の薄膜共振子においてはいずれも、薄膜共振子10の場合と同様に、分極ベクトルは全て圧電体層に平行な面αの法線に対して傾斜している。また、やはり薄膜共振子10の場合と同様に、前記法線への分極ベクトルの射影は全て同方向である一方、面αへの分極ベクトルの射影は、奇数番目の圧電体層におけるものと偶数番目の圧電体層におけるものが逆方向になっている。
【0038】
薄膜共振子40及び薄膜共振子50においては、薄膜共振子10の場合と同様に、縦波振動は全ての圧電体層の厚みの和dtotalを1/2波長とする1次モードの強度が最大になり、横波振動は圧電体層2層分の厚みを1波長とするn次モードの強度が最大になる。これら最大強度の縦波の周波数fLはVS/dtotal、横波の周波数fSは(n/2)VS/dtotalである(上記(1)(2)式)。薄膜共振子40及び薄膜共振子50においてはいずれもnが3よりも大きいため、fLとfSは異なる値をとる。
【0039】
薄膜共振子40及び薄膜共振子50においても、隣接する圧電体層の間に緩衝層を設けることができる。
【0040】
ZnOから成る圧電体層を6層(n=6)有する薄膜共振子50を作製し、横波及び縦波に関する変換損失をそれぞれ測定した。各圧電体層の厚み及び分極ベクトルの傾斜角は前述の圧電体層が4層である場合の測定の際と同様(圧電体層の積層体全体の厚みdtotalは「4層」の場合の1.5倍)である。その結果、図12に示すように、横波の励振強度が最大(変換損失が最小)になる周波数fSは280MHzであるのに対して、縦波の励振強度が最大になる周波数fLは84MHzであった。これは、上述の(3)式の関係をほぼ満たしている(fS≒3fL:n=6の時)。圧電体層を増加させることにより、fSとfLの差を大きくすることができる。
【0041】
次に、n=4及び20並びに比較例であるn=1及び2の場合における薄膜共振子の横波及び縦波に対する変換損失を計算した結果を、図13を用いて説明する。この計算では、圧電体層の材料をZnOとし、分極ベクトルと法線13の成す角度を25°、各圧電体層の厚みを全て5.54μmと、電気機械結合定数k15'を0.23と、k33'を0.15とした。図中に縦の破線で示したように、横波と縦波が同じ周波数で最大の励振強度を持つのに対して、n=4及び20の場合には、横波が最大の励振強度を持つ周波数fS(図中の縦破線)において、縦波は励振強度が最大にはならない。特に、n=20の場合には、周波数fSにおいて、縦波は変換損失が60dBを超えており、ほとんど無視することができる。なお、比較例であるn=1の場合にも、最大の励振強度を持つ周波数が縦波と横波で相違するが、周波数fSにおける縦波の変換損失はn=4及び20の場合よりも小さい。
【0042】
ここまでは最大強度の横波が励振される周波数において縦波の励振を抑制する(縦波は利用しない)という観点で説明したが、本発明に係る薄膜共振子においては、最大強度の横波と、それとは周波数が異なる最大強度の縦波を共に利用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10、10A、40、50、90…薄膜共振子
111、411、511、911…第1圧電体層
112、412、512、912…第2圧電体層
113、413、513…第3圧電体層
114、514…第4圧電体層
51n…第n圧電体層
121、421、521、921…第1電極
122、422、522、922…第2電極
13、93…面αの法線
141…第1緩衝層
142…第2緩衝層
143…第3緩衝層
21…基板
31…陽極
32…陰極
33…マグネトロン回路
34…基板台
341…固定面
342…固定面341に垂直な軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極の間にn層(nは3以上の自然数)の圧電体層が設けられた薄膜共振子であって、
各圧電体層における分極ベクトルが前記薄膜共振子に平行な面の法線に対して傾斜するように配向しており、
各圧電体層における分極ベクトルの前記法線への射影が同方向であり、
第1電極側から数えて奇数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影が、第1電極側から数えて偶数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影と逆方向である、
ことを特徴とする薄膜共振子。
【請求項2】
各圧電体層の厚さが同一であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜共振子。
【請求項3】
各圧電体層の分極ベクトルと前記法線の成す角度が同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜共振子。
【請求項4】
各圧電体層の材料がウルツ鉱型構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜共振子。
【請求項5】
隣接する2つの圧電体層の間に、一方の圧電体層の結晶軸の向きが他方の圧電体層の結晶軸の向きに影響を及ぼすことを防ぐ緩衝層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜共振子。
【請求項6】
前記隣接する2つの圧電体層の材料が酸化亜鉛であり、前記緩衝層の材料が二酸化珪素であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜共振子。
【請求項7】
前記緩衝層がアモルファスであることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜共振子。
【請求項1】
第1電極と第2電極の間にn層(nは3以上の自然数)の圧電体層が設けられた薄膜共振子であって、
各圧電体層における分極ベクトルが前記薄膜共振子に平行な面の法線に対して傾斜するように配向しており、
各圧電体層における分極ベクトルの前記法線への射影が同方向であり、
第1電極側から数えて奇数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影が、第1電極側から数えて偶数番目の圧電体層における分極ベクトルの前記面への射影と逆方向である、
ことを特徴とする薄膜共振子。
【請求項2】
各圧電体層の厚さが同一であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜共振子。
【請求項3】
各圧電体層の分極ベクトルと前記法線の成す角度が同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜共振子。
【請求項4】
各圧電体層の材料がウルツ鉱型構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜共振子。
【請求項5】
隣接する2つの圧電体層の間に、一方の圧電体層の結晶軸の向きが他方の圧電体層の結晶軸の向きに影響を及ぼすことを防ぐ緩衝層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜共振子。
【請求項6】
前記隣接する2つの圧電体層の材料が酸化亜鉛であり、前記緩衝層の材料が二酸化珪素であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜共振子。
【請求項7】
前記緩衝層がアモルファスであることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜共振子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図9】
【公開番号】特開2010−178543(P2010−178543A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19956(P2009−19956)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
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