説明

薄膜型センシング部材を利用した化学センサ

【課題】薄膜型センシング部材を利用した化学センサを提供する。
【解決手段】第1電極及び第2電極間の薄膜型センシング部材を具備し、センシングしようとする化合物がセンシング部材に吸着しつつ発生する電気的性質の変化を測定する化学センサである。該薄膜型センシング部材は、化学センサの面積が広く、化学センサの感度が向上する。第2電極はナノ構造体であって、センシング部材の表面を露出させることができる構造である。第2電極は、10nm〜10μm幅を有し、第1電極及び第2電極間のギャップは、10nm〜1μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシング部材の面積が広く、ナノワイヤなどのナノ構造体を上部電極として利用した化学センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な化学センサは、化合物分子の吸着によって、電気伝導度または電気抵抗が変化する特性を利用し、化合物の量を測定する。最近になって、人間の息から出てくる化合物成分を測定して計測することによって、疾病を診断できるという研究が進められている。例えば、肺ガン患者及び乳ガン患者の場合、呼吸時に排出する化合物のうち、10種余りの揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compound:VOC)に関し、一般人と差があることが知られている。
【0003】
従って、揮発性有機化合物の化学成分を分析する化学センサは、疾病を検出するセンサとしての機能を果たすことが可能である。
【0004】
揮発性有機化合物は、その特性が極めて安定的であるので、電気的方法を利用して成分を分析するのが非常に困難である。このため、ガスクロマトグラフィ(gas chromatography)などを利用することになるが、これは、センサの体積が大きく、コストもかさむ。
【0005】
半導体を利用したセンサの場合、コストが低廉であり、リアルタイムで検出が可能であって、体積を非常に小さくすることができるという長所があるが、まだ検出感度が低く、揮発性有機化合物のように安定した物質を検出し難い。
【0006】
一方、伝導性ポリマー(conducting polymer)を利用した揮発性有機化合物測定センサが試みられている。揮発性有機化合物が吸着されたときに発生する膨張(スウェリング:swelling)現象など、さまざまな原因によって、伝導性ポリマーの仕事関数が変化するので、この変化を測定することによって、測定が可能になりうる。
【0007】
しかし、伝導性ポリマーを利用した素子を具現する場合にも、その検出能が数ppmレベルまで達することは困難である。これは、非常に少量の吸着物による電気的性質の変化を検出するには、センシングチャンネルの体積が大きすぎるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、センシング面積を広く維持しつつ、薄膜のセンシング部材を利用して感度が向上した化学センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による化学センサは、基板上に形成された第1電極と、前記基板上で前記第1電極を覆うセンシング部材と、前記センシング部材上に前記センシング部材の表面を露出させる構造の第2電極とを具備し、センシングしようとする化合物が前記センシング部材に吸着しつつ発生する電気的性質の変化が測定される。
【0010】
前記第2電極は、10nm〜10μm幅を有することができる。
【0011】
前記第1電極及び前記第2電極間のギャップは、10nm〜1μmでありうる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記第1電極は、複数のナノワイヤを具備し、前記第2電極は、複数のナノワイヤを具備する。そして、前記第1電極及び前記第2電極は、交差するように配される。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、前記第1電極及び前記第2電極は、互いに平行に並んで配される。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記第1電極は、平板電極である。前記第2電極は、複数のナノワイヤを具備することができる。
【0015】
また、前記第2電極は、コイル状電極でありうる。
【0016】
前記センシング部材は、金属酸化物、伝導性ポリマー、絶縁性ポリマーのうち選択された一つによって形成される。
【0017】
前記金属酸化物は、SnO、TiO、ZnO、WO、Feのうち選択された一つで形成される。
【0018】
前記ポリマーは、炭素ナノチューブ、グラフェン、ナノワイヤのうち少なくともいずれか一つが含浸されうる。
【0019】
本発明の他の実施形態による化学センサアレイは、基板上に、アレイ状に配列された複数の前記化学センサを具備し、前記複数の化学センサの前記センシング部材は、互いに異なる化合物を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による化学センサの構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の構造の平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による化学センサの構成を示す図面である。
【図4】図1の変形例の化学センサを図示した平面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態による化学センサの平面図である。
【図6】図5の変形例を図示した平面図である。
【図7A】図1の化学センサを製造する方法を段階別に説明する斜視図である。
【図7B】図1の化学センサを製造する方法を段階別に説明する斜視図である。
【図7C】図1の化学センサを製造する方法を段階別に説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態による化学センサについて、さらに詳細に説明する。この過程で図面に図示された層や領域の厚さは、明細書の明確性のために誇張されるように図示されている。また、同じ構成要素には、同じ参照符号を使用し、反復される説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による化学センサ100の構造を概略的に示す斜視図である。
【0023】
図1を参照すれば、基板110上に、第1ナノワイヤ120が互いに平行に配されている。そして、第1ナノワイヤ120上に、第2ナノワイヤ140が第1ナノワイヤ120と離隔されつつ、第1ナノワイヤ120と交差するように配されている。第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140間には、センシング部材130が第1ナノワイヤ120を覆うように形成される。
【0024】
前記第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140は、金属物質、例えば、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、金(Au)、白金(Pt)などから形成され、その直径が10nm〜10μmに形成されうる。第1ナノワイヤ120間の間隔G1及び第2ナノワイヤ140間の間隔G2は、それぞれ10nm〜10μmに形成されうる。また、センシング部材130は、第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140間のギャップG3が10nm〜1μmになるように形成されうる。第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140は、第1電極及び第2電極とも呼ばれる。
【0025】
また、第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140は、炭素ナノチューブ、またはパターニングされたグラフェンから形成されうる。
【0026】
前記センシング部材130は、金属酸化物、伝導性ポリマー、絶縁性ポリマーのうち、いずれか一つによって形成されうる。前記金属酸化物は、SnO、TiO、ZnO、WO、Feのうち、いずれか一つでありうる。前記伝導性ポリマー及び絶縁性ポリマーには、炭素ナノチューブ、グラフェン、ナノワイヤなどが含浸されうる。
【0027】
前記伝導性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(9−ビニルカーボネート)、ポリ(ピロール)/BSA、ポリ(ビチオフェン)/TBATFBなどから形成されうる。そして、絶縁性ポリマーには、導電物質、例えば、カーボンブラックが含浸され、それによって、伝導度を調節することも可能である。ここで、BSAは1−スルホン酸ブタンであり、TBATFBは、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートである。これらは、当該ポリマーに添加されたものである。
【0028】
一方、絶縁性ポリマーをセンシング部材130として使用する場合、第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140間の伝導性は、トンネリング電流による。
【0029】
図2は、図1の構造の平面図である。便宜上、基板は省略した。
【0030】
図2を参照すれば、第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140は、直交するように配されている。第1ナノワイヤ120の一端は、第1電極パッド122に連結され、第2ナノワイヤ140は、第2電極パッド142に連結される。センシング部材130は、化学センサ100の大部分の面積を占め、従って、化学センサ100の感度が向上する。図1では、便宜上、第1電極パッド122及び第2電極パッド142を省略した。第1電極パッド122及び第2電極パッド142間に、それらの間の電流を測定する電流計(ammeter)150が形成されうる。
【0031】
一実施例による化学センサ100の動作原理について説明する。まず、化学センサ100に化合物を接触させれば、化合物は、化学センサ100のセンシング部材130に吸着される。前記センシング部材130には、第1ナノワイヤ120と第2ナノワイヤ140とが交差するコンタクト、すなわち、ナノコンタクトアレイが形成される。前記化合物が付着されたセンシング部材130に抵抗の変化が生じる。この抵抗の変化は、電流値の差として検出されうる。例えば、第1電極パッド122及び第2電極パッド142に読み取り電圧を印加し、電流計150で抵抗変化による電流値を測定する。読み取り電圧は、センシング部材及びセンサによって数mVないし10Vの直流電圧を使用できる。この電流値差を感知すれば、当該化合物の濃度を測定できる。
【0032】
本発明の一実施形態による化学センサ100には、ナノコンタクトがnmサイズでアレイ状に形成され、数ppm以下の化合物が吸着されても、化合物濃度を把握できる。また、化学センサ100で、センシング部材130の面積が広いため、化学センサ100の感度が向上する。
【0033】
図3は、本発明の他の実施形態による化学センサアレイ200の構成を示す図面である。図1の化学センサ100の構成要素と同じ構成要素には、同じ参照符号を使用し、詳細な説明は省略する。
【0034】
図3を参照すれば、基板210上には、複数の化学センサ100がアレイ状に配される。化学センサ100の第1ナノワイヤ120は、第1電極パッド122に連結され、第2ナノワイヤ140は、第2電極パッド142に連結される。第1電極パッド122及び第2電極パッド142は、パターン分析システム220に連結される。
【0035】
分析物(analyte)が第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140間のセンシング部材130に吸着されれば、第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140間の仕事関数(work function)の変化が発生する。かような仕事関数の変化は、抵抗性または導電性の差によって示される。
【0036】
パターン分析システム220は、各化学センサ100での化合物の濃度を測定する。パターン分析システム220は、化合物の分析前に、各化学センサ100での化合物の吸着濃度による電流特性を分析する。各化学センサ100は、センシング部材130の構成が互いに異なるように形成されうる。すなわち、センシング部材130の種類及び第1ナノワイヤ120及び第2ナノワイヤ140間のギャップにより、各化学センサ100でのセンシング部材130の仕事関数を変更すれば、特定分析物の吸着濃度と高い相関関係を有した化学センサ100を作ることができる。
【0037】
従って、各化学センサ100は、特定の化合物に対する化学センサになり、パターン分析システム220は、あらかじめ作成した特性曲線に基づいて、吸着された化合物濃度を測定できる。
【0038】
図4は、図1の変形例の化学センサ300を図示した平面図である。
【0039】
図4を参照すれば、基板310上に、複数の第1ナノワイヤ320が互いに平行に並んで形成されており、センシング部材330が基板310上で、第1ナノワイヤ320を覆うように形成されている。センシング部材330上には、第2ナノワイヤ340が互いに平行に並んで形成される。第1ナノワイヤ320は、第1電極パッド322に連結され、第2ナノワイヤ340は、第2電極パッド342に連結される。第2ナノワイヤ340は、第1ナノワイヤ320とも平行に並んで形成される。図4では、第2ナノワイヤ340が第1ナノワイヤ320と互いに交互に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第2ナノワイヤ340が第1ナノワイヤ320の真上に配されもする。
【0040】
図4の化学センサ300の作用は、図1の化学センサ100の作用と実質的に同一なので、詳細な説明は省略する。
【0041】
図5は、本発明のさらに他の実施形態による化学センサ400の平面図である。
【0042】
図5を参照すれば、基板410上に平板形状の第1電極420が形成されており、第1電極420上に、センシング部材430が形成されている。センシング部材430上には、第2電極440が形成されている。第2電極440は、複数のナノワイヤによって構成される。第1電極420の一端には、第1電極パッド422が連結され、第2電極440の一端には、第2電極パッド442が連結される。第1電極420は、平板電極であるから、製造が容易であり、第1電極パッド422のサイズを縮小化することができる。他の構成は、図1の構成と実質的に同一であり、詳細な説明は省略する。
【0043】
図6は、図5の化学センサ400の変形例500を図示した平面図である。
【0044】
図6を参照すれば、第2電極540が螺旋状を有する。第2電極パッド542のサイズを縮小化しうる。他の構成は、図5の構成と実質的に同一であり、詳細な説明は省略する。
【0045】
図7Aないし図7Cは、図1の化学センサを製造する方法を段階別に説明する斜視図である。
【0046】
図7Aを参照すれば、基板610上に、第1金属(図示せず)、例えば、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、金(Au)、白金(Pt)などを蒸着する。次に、第1金属をパターニングし、互いに平行した複数の第1ナノワイヤ620を形成する。
【0047】
図7Bを参照すれば、基板610上に、第1ナノワイヤ620を覆うように、スピンコーティング法で伝導性ポリマー層630を形成する。伝導性ポリマー層630は、第1ナノワイヤ620より約数十nm高く形成する。このために、化学的機械的研磨(chemical−mechanical polishing)法を使用することも可能である。
【0048】
図7Cを参照すれば、伝導性ポリマー層630上に、第2金属(図示せず)を蒸着する。第2金属は、第1金属と同じ物質によって形成されうる。次に、第2金属をパターニングして第2ナノワイヤ640を形成する。第2ナノワイヤ640は、第1ナノワイヤ620と直交するように形成される。
【0049】
本発明は、図面を参照しつつ、実施形態を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当分野における当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な実施形態が可能であるという点を理解することで可能であろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって決まるものである。
【符号の説明】
【0050】
100,300,400,500 化学センサ
110,210,310,410,610 基板
120,320,620 第1ナノワイヤ
122,322,422,542 第1電極パッド
130,330,430 センサ部材
140,340,640 第2ナノワイヤ
142,342,442 第2電極パッド
150 電流計
200 化学センサアレイ
220 パターン分析システム
420 第1電極
440,540 第2電極
542 第2電極パッド
630 伝導性ポリマー層
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1電極と、
前記基板上で前記第1電極を覆うセンシング部材と、
前記センシング部材上で、前記センシング部材の表面を露出させる構造の第2電極とを具備し、
センシングしようとする化合物が前記センシング部材に吸着しつつ発生する電気的性質の変化を測定する化学センサ。
【請求項2】
前記第2電極は、10nm〜10μm幅を有することを特徴とする請求項1に記載の化学センサ。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極間のギャップは、10nm〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の化学センサ。
【請求項4】
前記第1電極は、複数のナノワイヤを具備し、
前記第2電極は、複数のナノワイヤを具備したことを特徴とする請求項1に記載の化学センサ。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極は、交差するように形成されたことを特徴とする請求項4に記載の化学センサ。
【請求項6】
前記第1電極及び前記第2電極は、互いに平行に並んで形成されたことを特徴とする請求項4に記載の化学センサ。
【請求項7】
前記第1電極は、平板電極であることを特徴とする請求項1に記載の化学センサ。
【請求項8】
前記第2電極は、複数のナノワイヤを具備したことを特徴とする請求項7に記載の化学センサ。
【請求項9】
前記第2電極は、コイル状電極であることを特徴とする請求項7に記載の化学センサ。
【請求項10】
前記センシング部材は、金属酸化物、伝導性ポリマー、絶縁性ポリマーのうち、選択された一つによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の化学センサ。
【請求項11】
前記金属酸化物は、SnO、TiO、ZnO、WO、Feのうち、選択された一つによって形成されたことを特徴とする請求項10に記載の化学センサ。
【請求項12】
前記ポリマーは、炭素ナノチューブ、グラフェン、ナノワイヤのうち、少なくともいずれか一つが含浸されたことを特徴とする請求項10に記載の化学センサ。
【請求項13】
基板上にアレイ状に配列された複数の請求項1に記載の化学センサを具備し、前記複数の化学センサの前記センシング部材は、互いに異なる化合物を検出する化学センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2010−78604(P2010−78604A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221178(P2009−221178)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】