説明

薬剤収納容器及び薬剤揮散装置

【課題】軟質包材を用いて、薬効の高い持続性を実現すると共に、転倒時等に薬剤の漏出を防止乃至低減することができる、正立型取り替え式の薬剤収納容器を提供する。
【解決手段】薬剤を上部の揮散体30から揮散させる正立型の薬剤揮散装置のための薬剤収納容器であって、軟質包材で形成され、薬剤揮散装置の容器支持部20に支持される容器本体11と、該容器本体に収容された吸液用の芯材12と、芯材の上端部をシールすると共に使用時に該シールの解除が可能な封止構造14とを備え、該封止構造は、芯材上端部が露出して揮散体への接触が可能となるように、芯材上端部がシール解除されることを特徴とする薬剤収納容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を上部の揮散体から揮散させる正立型の薬剤揮散装置、及び、該薬剤揮散装置のための薬剤収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香剤や消臭剤を部屋等に拡散させるための装置は、用途や使用場面に合わせて、必要時に噴射を行うエアゾールタイプと、連続的な揮散を行う据え置きタイプとが主に用いられている。
【0003】
据え置きタイプの揮散装置は、一般的に、芳香剤や消臭剤等の薬剤が薬剤収納容器に収納され、そこから揮散体に供給された薬剤が揮散される。そして、薬剤収納容器内の薬剤がなくなったときや芳香剤の香りを変えたい場合等には、新たな揮散装置を購入し直していた。しかし、コストを抑えたり廃棄物を少なくしたいといった需要者の要求から、近時では装置本体の再利用が求められている。
【0004】
例えば、薬剤収納容器には、装置本体の再利用を可能にする形態として、詰め替え用袋内に収納された薬剤を薬剤収納容器の口部から注入する注ぎ足し式のものと、新たな薬剤収納容器を空の容器と取り替える取り替え式のものとがある。
【0005】
注ぎ足し式の薬剤収納容器は、容器の口部から薬剤を注ぎ入れるので、容器外に薬剤がこぼれたり、注ぎ足しに手間が掛かり作業が面倒という問題があった。一方、取り替え式の薬剤収納容器は、このような問題がない反面、保形性のある成形容器が一般的に用いられているので、廃棄物の嵩が増したり、製造コストもさほど低減されないという問題があった。そこで、廃棄物を少なくし、製造コストも低減し得る取り替え式の薬剤収納容器として、軟質樹脂製袋に薬剤を収納したいわゆるパウチを使用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
薬剤揮散装置の形態はさらに、薬剤収納容器に対して揮散体を、上方に配置した正立型と、下方に配置した倒立型とに分けられる。倒立型の薬剤揮散装置は、薬剤収納容器の下部に装着した吸液芯から下方の揮散体へ薬剤を供給すればよいので、吸液芯で薬剤を上方へ吸い上げるようにした正立型の装置に比し、揮散体に対する薬剤の供給が円滑であり、薬剤が減少しても吸液芯を経た供給量が減少しないという利点がある。一方、倒立型の薬剤揮散装置は、下部に位置する薬剤収納容器の口部または吸液芯から薬剤が漏出しやすいという大きな難点があるため、使用上の安全性においては正立型の装置が勝っている。
【0007】
特許文献1に記載のものは、据え置きタイプで正立型の揮散装置であり、薬剤収納容器は取り替え式となっている。この揮散装置は、筒状の支持体内でパウチの側縁を支持し、揮散口付きの蓋をパウチ上部の開口端に嵌合する構造となっている。しかしながら、この装置では、軟質包材を用いているのでパウチの開口端と蓋との嵌合が弱く、容器を倒したときに中の薬剤が大量にこぼれ出やすいといった問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の揮散装置では、薬剤収納容器は、取り替え及び廃棄の容易性を考慮して、軟質包材を用いて薬剤を収納する簡易な構造となっており、使用時に十分な揮散量を確保するために、パウチ上端全体を開口し、開口面を揮散のために使用する。その結果、広い面積で外気に露出した薬剤が酸化し易く、芳香剤の香りが変化したり消臭剤が劣化するなど、薬効の持続性を低下させるといった問題もあった。このように、パウチを使用した取り替え式の薬剤収納容器では、軟質包材を用いたことに起因するパウチ特有の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−249010公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術の難点を解消し、薬剤収納容器が軟質包材を用いた正立型の取り替え式であり、薬効の高い持続性を実現すると共に、転倒時等に薬剤の漏出を防止乃至低減することができる薬剤揮散装置及びその薬剤収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、薬剤を上部の揮散体から揮散させる正立型の薬剤揮散装置のための薬剤収納容器であって、軟質包材で形成され、薬剤揮散装置の容器支持部に支持される容器本体と、容器本体に収容され上端部を容器本体から突出させた吸液用の芯材と、前記芯材の上端部をシールすると共に使用時に該シールの解除が可能な封止構造とを備え、前記封止構造は、芯材上端部が露出して揮散体への接触が可能となるように、芯材上端部がシール解除されることを特徴とする薬剤収納容器を提供するものである。
【0012】
本発明はまた、上記目的を達成するため、上記薬剤収納容器と、該薬剤収納容器を正立状態に保持する容器支持部とを備えたことを特徴とする薬剤揮散装置を提供するものである。
【0013】
上記薬剤収納容器は、正立型の薬剤揮散装置のための薬剤収納容器であって、容器支持部に支持される容器本体は、軟質包材で形成されている。そして、薬剤収納容器には、上端部を容器本体から突出させた吸液用の芯材が収容され、芯材の上端部をシールする封止構造が備えられている。このように、薬剤収納容器は、容器本体が軟質包材で形成されたパウチの形態となっているので、廃棄物を少なくし製造コストを低減することができる。また、封止構造により、製造後の流通過程や使用までの保存時において、薬剤が密封状態に維持される。
【0014】
さらに、芯材の上端部をシールする封止構造は、使用時に該シールの解除が可能であり、シール解除の際には、芯材上端部が露出して揮散体への接触が可能となるように、芯材上端部がシール解除される。したがって、薬剤揮散装置に装着されている薬剤収納容器を新たな薬剤収納容器に取り替えることができる取り替え式として機能し、注ぎ足し式のような薬剤のこぼれを防いで、少ない手間で容易に新たな薬剤揮散の開始が可能となる。
【0015】
また、封止構造は、シール解除の際には、芯材上端部が露出して揮散体への接触が可能となるように、芯材上端部がシール解除される。したがって、封止構造は、芯材上端部を露出させて揮散体への接触を可能とするのに必要な部分をシール解除すればよく、シール解除箇所の領域を小さくすることができる。また、露出した芯材上端部は揮散体に接触することとなる。これらの結果、容器を倒したときに薬剤収納容器内の薬剤の漏出を防止乃至低減することができる。
【0016】
そして、この薬剤収納容器を支持して揮散を行う薬剤揮散装置も同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
上記の通り、本発明によれば、薬剤収納容器が軟質包材を用いた正立型の取り替え式であり、薬効の高い持続性を実現すると共に、転倒時等に薬剤の漏出を防止乃至低減することができる薬剤揮散装置及びその薬剤収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置を示す図であり、(a) は縦断正面図、(b) は縦断側面図、(c) は平面図である。
【図2】図1に示した薬剤揮散装置を分解して示す縦断正面図である。
【図3】図1に示した薬剤収納容器における容器本体と芯材との間の保持部を中心に示す平面図である。
【図4】図1に示した薬剤収納容器を示す図であり、(a) は縦断正面図、(b) は縦断側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る薬剤収納容器を用いた薬剤揮散装置を示す図であり、(a) は縦断正面図、(b) は縦断側面図である。
【図6】本発明に係る薬剤収納容器に用い得る容器本体と芯材との間の保持部の他の例を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る薬剤収納容器に用い得る保持部の種々の例を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る薬剤収納容器に用い得る封止構造の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置を示しており、(a) は縦断正面図、(b) は縦断側面図、(c) は平面図である。図2は、その薬剤揮散装置を分解して示す縦断正面図である。
【0021】
この薬剤揮散装置は、容器支持部20が、内部に薬剤収納容器10を支持し、上部に揮散体30を保持している。容器支持部20は、薬剤収納容器10を納める胴部21と、該胴部21の上部を覆う外蓋22と、該外蓋の内側に保持される内蓋23とを備えている。
【0022】
胴部21は、全体が直方体状をなし、4面の側壁211と、底壁212とを備え、上端は開放されている。底壁212は、中央孔213を囲むように周囲部に壁部を有している。
【0023】
外蓋22は内側に内蓋23を嵌合させ、内蓋23は、下端を胴部21の上端に嵌合して胴部21に保持される。外蓋22の上壁には、揮散体30から揮散した薬剤を通すための開口221が形成されており、この実施形態では、多数のスリットの形態で設けられている。
【0024】
内蓋23は、水平に延びた盤体231を備え、該盤体は、中央部に薬剤収納容器10の芯材の保持部を通す通し孔232が形成され、外周部に胴部21への嵌合用フランジ233を有している。盤体231の通し孔232の周縁からは、筒部234が上方へ延びており、筒部234から両側へ離反した位置に盤体231に支持された2枚の保持板235が平行に設けられている。
【0025】
揮散体30は、平面視矩形の平板状であり、保持板235の上に載置されている。揮散体30は、芳香剤や消臭剤等の薬剤の揮散効果に優れた繊維層で主要部が構成されていることが望ましく、繊維層は、植物繊維やパルプ等の天然繊維、レーヨン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)等の合成繊維又はそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。特に、繊維層としては、ニードルパンチ法、エアレイド法、スパンボンド法、スパンレース法などによって製造される不織布が好適であるが、この他、織物、編物等であってもよい。また、揮散体は、発泡ウレタン等の合成樹脂製のスポンジ材料、素焼きの陶器等であってもよい。揮散体の厚さは、必要に応じて決められるが、薬剤収納容器10や容器支持部20の大きさ、取り扱い性、揮散効果等の観点から、2〜20mm程度が好ましい。
【0026】
薬剤収納容器10は、図1に示す装着状態とされるまでは、後述する封止構造14で封止した状態で、容器支持部20に収容状態で支持されて市場に流通し、或いは、薬剤揮散装置と別個に付け替え容器として流通する。この薬剤収納容器10が流通過程におかれる形態の一例は、包装箱B内に揮散体30と共に梱包された状態で、図4に示されている。
【0027】
図4に示すように、薬剤収納容器10は、薬剤揮散装置の容器支持部に支持される容器本体11と、容器本体11に収容された吸液用の芯材12と、容器本体11及び芯材12の間に設けられた接触構造13と、芯材12の上端部をシールする封止構造14とを備えている。
【0028】
容器本体11は、軟質包材のフィルムで形成されている。軟質包材としては、一般的な軟質包材用材料が単体及び積層体で用いられ、例えば、ナイロンフィルム(Ny)、ポリエチレンテフタレートフィルム(PET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、アルミニウム箔(Al箔)、或いは、NyやPET、OPPに、金属アルミニウム(Al)、アルミナ、または、シリカなどの無機物を蒸着した蒸着フィルム等からなる、単層、または、多層の基材フィルムに、熱可塑性樹脂で熱溶着が可能な低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)等のシーラント材を設けたものが用いられる。
【0029】
軟質包材のフィルムの具体的な構成例としては、PET/Ny/LLDPEからなる構成のフィルムや、PET/LLDPE、Ny/LLDPE、Ny/PET/LLDPからなる構成のフィルムなどが挙げられる。
【0030】
また、容器本体11は、軟質包材として、柔軟な容器であればよく、たとえばポリエチレンなどをダイレクトブローで成形した柔軟な容器や、ポリエチレンテレフタレートをインジェクションブローで成形した薄肉容器であってもよい。これらの成形容器の場合において、芯材と容器本体との間が後述する気密性の接触構造とされている場合は、収容する薬剤の減少に伴って容器本体が収縮し得る程度の柔軟性を有するのが望ましい。また、成形容器において、芯材と容器本体との間が通気性の接触構造とされている場合は、廃棄の際に、容器本体を手で潰すなどして容易に小さくし得る程度の柔軟性を有するのが望ましい。
【0031】
芯材12は、棒状をなし、下端は薬剤収納容器10の底部に接し、上端は薬剤収納容器10の上端から僅かに突出している。この実施形態では、芯材12は断面円形とされているが、四角形、三角形、筒状等、種々の形状とすることができ、その太さ用途や揮散量に応じて適宜決められ、この実施形態では2〜8mmとされている。また、芯材12としては、液体を浸漬位置から浸漬外の位置へ移動し得る種々の材料を使用することができ、天然繊維(羊毛、パルプ、木綿、レーヨン、アセテート等)、合成繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン+ポリプロピレン混合物、ポリエチレンテレフタレート、メラミン、ポリアセタール等)からなる不織布、石綿、無機質成形物等を例示することができる。
【0032】
接触構造13は、この実施形態では、シール部111から上方へ延びて芯材12を囲む筒状の部材で形成されており、シール部111の2枚のフィルム(軟質包材)間に挟持される基部131と、該基部から上方へ延びる筒部132と、該筒部の内面から径方向内方へ延びる保持部133とを備えている。図1及び図3は、容器本体11及び芯材12の間に設けられた接触構造を示している。基部131は、側面視において筒部132と同じ幅を有し、正面視においてこれより広い幅を有し、全体として舟形に形成されている。筒部132は、芯材12との間に小さい間隙を形成する径を有し、基部131から芯材12の上端より僅かに下方まで延びている。保持部133は、この実施形態では、筒部132の内面から内方へ下向きに延びる皿状に形成され、中央の通し孔は、芯材12の外径と等しいか、芯材12をその弾性変形で通し得るように僅かに小さくされている。その結果、図示のように、保持部133は、芯材12と接触構造13の筒部132とに気密性をもって接触した状態を形成し、これにより芯材12と容器本体11との気密性も形成する。したがって、たとえ薬剤揮散装置を傾けたり倒したりしても、容器本体11内の薬剤の漏出を防止乃至低減することができる。
【0033】
封止構造14は、この実施形態においては、芯材12及び筒部132の上部を覆うキャップの形態とされている。すなわち、封止構造14は、図4に示すように、上壁141及び側壁142を備え下端が開いたキャップ140を用いて、芯材12の上端部を覆うと共に、筒部132に嵌合することにより構成されている。筒部132には、側壁142と気密性をもって嵌合し得るように側壁周方向に延びる環状の突起134が2箇所に設けられている。この封止構造14のキャップ140は、使用時までは芯材12の上部をシールし、使用時に筒部132から取り除かれることによりシールを解除する。これにより、芯材12の上端部が露出して揮散体30への接触が可能となる。また、封止構造14によって使用時にシールを解除するまでは薬剤が気密状態に維持されるので、製造後の流通過程や使用までの保存時において、芳香剤の香りの変化や消臭剤の劣化等が防止される。
【0034】
この薬剤揮散装置は、次のようにして組み立てられ、使用される。先ず、図2に示すように、容器支持部20の胴部21、外蓋22及び内蓋23を分離する。薬剤収納容器10は、図4に示す梱包から取り出し、筒部132からキャップ140を取り外す。そして、この薬剤収納容器10を胴部21内に納め、胴部21に内蓋23を嵌合する。内蓋23の保持板235上に揮散体30を載せ、その上から内蓋23に外蓋22を嵌合する。これにより、図1に示す状態となる。その結果、芯材12の上端が揮散体30に接し、薬剤収納容器10内の薬剤が芯材12に吸い上げられ、上端に接触している揮散体30に供給される。そして、薬剤は揮散体30から外蓋22の開口221を経て装置外へと揮散する。
【0035】
この揮散に伴って薬剤収納容器10内の薬剤が減少する。芯材12と容器本体11の筒部132との間は、皿状の保持部133で気密性の接触状態となっているので、薬剤の減少に伴って容器本体11内の圧力が低下すると、軟質包材で形成された容器本体11は、内容積を減少するように収縮する。一般的に用いられる保形性のある成型容器であれば、芯材12と成型容器とが気密性の接触状態となっている場合、使用とともに容器内が陰圧となり芯材による薬剤の吸い上げ量が減少するため、このような使用形態は困難であるが、本実施形態のように軟質包材を用いた薬剤収納容器10では、上述のように容器本体11が収縮するので、使用とともに薬剤の吸い上げ量が減少することはない。
【0036】
薬剤は、使用期間を通じてこのようにして消費される結果、空気との接触が回避乃至抑制され、芳香剤の香りの変化や消臭剤の劣化等が防止され、薬効が長期間に亘って持続する。また、薬剤の減少に伴って容器本体11が収縮するので、容器本体11の収縮具合によって薬剤の残量を判断することができる。よって、不透明など薬剤の残量を外観視することができない容器本体11であっても、使用者が取り替え時期を容易に判断することができる。
【0037】
そして、薬剤収納容器10内の薬剤がなくなったときや芳香剤の香りを変えるために新しい薬剤収納容器10に取り替える際は、上述のように組み立てた薬剤揮散装置を分離して薬剤収納容器10を取り外し、同様にして新しい薬剤収納容器10に取り替える。このような取り替えを可能にすることで、注ぎ足し式のような薬剤のこぼれを防ぐことができるとともに、少ない手間で容易に取り替えることができる。さらに、薬剤収納容器10は、容器本体が軟質包材で形成されたパウチの形態となっているので、嵩ばらずに廃棄物を少なくすることができ、かつ、保形性のある成型容器に比べ製造コストも低減することができる。
【0038】
図5は、本発明の他の実施形態に係る薬剤揮散装置を示しており、(a) は縦断正面図、(b) は縦断側面図である。この薬剤揮散装置は、容器支持部における外蓋22及び内蓋23並びに揮散体30の保持構造が図1の実施形態と異なり、他の形態は図1の実施形態と同じであるので、この相違点を中心に説明する。
【0039】
この薬剤揮散装置は、図1の実施形態に示した内蓋23がなく、外蓋22aが胴部21に嵌合されている。そして、揮散体30の支持部材25が、容器支持部20内に納められている。この支持部材25は、下部に筒部251、上部に受け部252を備え、中央部は芯材12を通すように貫通孔となっている。受け部252は、揮散体30より僅かに大きい寸法の平板部253と、平板部253の周縁から起立したフランジ254とを備えている。筒部251は、容器本体11のシール部111に位置する基部131の長径より径が小さくされている。したがって、支持部材25は、筒部251を基部131上に載置することによって容器本体11に支持され、その状態で、受け部252に揮散体30を保持することができる。
【0040】
この薬剤揮散装置は、図1に示したものに比し、構造が簡単で製造が容易である。また、薬剤の揮散と共に容器本体11が収縮しても、芯材12と揮散体30との接触が確実に保持されるという利点を有する。
【0041】
図6は、容器本体11及び芯材12の間に設けられた接触構造の他の例を示している。この接触構造13aは、図1の実施形態と基本的な形態は同じである。異なるのは、保持部133が、図1の実施形態では、筒部132の内面から内方へ下向きに延びる皿状に形成され、接触構造13が芯材12と容器本体11の筒部132とに気密性をもった接触状態を形成していたのに対し、この保持部133aは、筒部132の内面から内方へ下向きに延びる4片の爪状部材135で形成され、保持部133aの爪状部材の間は、空隙136となっている点である。なお、保持部133aに囲まれた中央の通し孔は、芯材12の外径と等しいか、芯材12をその弾性変形で通し得るように僅かに小さくされている。
【0042】
この接触構造13aは、揮散に伴って容器本体11内の薬剤が減少すると、空隙136を経て外気が容器本体11内に導入される。その結果、薬剤の減少に伴う容器本体11の収縮は生じないので、芯材12上端と揮散体30との接触が確実に保持される。
【0043】
このように容器本体11の収縮が生じず外形が変化しないので、薬剤揮散装置が透明な場合や容器本体11にデザインを施した場合であっても、外観を損ねることがない。また、外気に露出しているのは空隙136だけであるため、薬剤揮散装置を傾けたり倒したりしても、容器本体11内の薬剤の漏出を低減することができる。この例では、薬剤収納部15内の薬剤は、空隙136を通じてのみ空気と接触するので、薬剤収納部の上端全体を開口させる従来の薬剤収納容器に比べて、芳香剤の香りの変化や消臭剤の劣化等が防止され、高い薬効持続性が得られる。
【0044】
図7は、接触構造における保持部の種々の例を示している。図7の(a), (b), (c) は各々、筒部132を中心にした縦断面図を示している。(a) は筒部132の一部に縮径部137を形成することにより、容器本体11と芯材12とが気密性をもって接触したもの、(b) は筒部132の上端部に栓体138を支持したもの、(c) は筒部132の内面に突起139を形成したものである。これらの保持部は、筒部132の全周に連続した形態で設けることにより、芯材12と筒部132とに気密性をもった接触状態を形成することができる。また、保持部を筒部132の周方向に断続的に設けることにより、間の空隙を経て外気が容器本体11内に導入されるようにすることができる。
【0045】
図8は、芯材12の上端部をシールする封止構造の他の例を備えた薬剤収納容器10aを示している。この封止構造14aは、容器本体11aの上部に設けられている。容器本体11aは、フィルム(軟質包材)同士を接触したシール部111aを上部に備えている。このシール部111aは、芯材12の両側部121、並びに、芯材12上端との間に間隙122をおいた位置の全幅部分123に亘って、設けられている。シール部111aには、芯材12を横切るように切取線124が形成されている。切取線124は、手で引きちぎり易い弱部として形成することができ、この場合、弱部は気密性を保つように設けられる。或いは、切取線124は、切り取り箇所を示す線として印刷したものとすることもできる。
【0046】
この封止構造は、切取線124で容器本体11aを切断することにより、芯材12の上部のシール状態を解除することができる。そして、容器支持部20に対して、図1に示した状態に組み込むことにより、芯材12上端を揮散体30に接触した状態とすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10、10a:薬剤収納容器
11、11a:容器本体
12:芯材
13、13a:接触構造
14、14a:封止構造
20:容器支持部
25:支持部材
30:揮散体
111、111a:シール部
132:筒部
133、133a:保持部
140:キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を上部の揮散体から揮散させる正立型の薬剤揮散装置のための薬剤収納容器であって、
軟質包材で形成され、薬剤揮散装置の容器支持部に支持される容器本体と、
容器本体に収容され上端部を容器本体から突出させた吸液用の芯材と、
前記芯材の上端部をシールすると共に使用時に該シールの解除が可能な封止構造とを備え、
前記封止構造は、芯材の上端部が露出して揮散体への接触が可能となるように、芯材の上端部がシール解除されることを特徴とする薬剤収納容器。
【請求項2】
前記芯材と前記容器本体との間が気密性の接触構造とされていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤収納容器。
【請求項3】
前記接触構造が、前記容器本体の上部に設けられた保持部を備え、該保持部は、前記芯材と前記容器本体とに気密性をもって接触することを特徴とする請求項2に記載の薬剤収納容器。
【請求項4】
前記接触構造が、前記容器本体の上部に上方へ延びるように設けられた筒部をさらに備え、
前記保持部が、前記筒部の内面に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の薬剤収納容器。
【請求項5】
前記芯材と前記容器本体との間が一部に空隙を有する接触構造とされていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤収納容器。
【請求項6】
前記接触構造が、前記容器本体の上部に設けられた保持部を備え、該保持部は、前記芯材と前記容器本体とに部分的に空隙を有して接触することを特徴とする請求項5に記載の薬剤収納容器。
【請求項7】
前記接触構造が、前記容器本体の上部に上方へ延びるように設けられた筒部をさらに備え、
前記保持部が、前記筒部の内面に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の薬剤収納容器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の薬剤収納容器と、該薬剤収納容器を正立状態に保持する容器支持部とを備えたことを特徴とする薬剤揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171680(P2012−171680A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38585(P2011−38585)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】