説明

薬剤揮散具

【課題】交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着するという問題を解決しつつ、薬剤が保持された担体のみを交換可能とすることで環境(省資源)にも配慮し、またその交換を容易なものとする薬剤揮散具が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る薬剤揮散具は、揮散性薬剤を保持させた担体を収納する1個以上の薬剤収納部材と、フック部を有する吊り下げ部材を備える薬剤揮散具であって、薬剤収納部材と吊り下げ部材に、薬剤収納部材と吊り下げ部材または薬剤収納部材同士を取り付けまたは取り外し自在とするための連結部が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤などに使用される薬剤揮散具に係り、更に詳しくはウォークインクローゼットなどの大型衣料収納空間において使用される、薬材の交換が容易な薬剤揮散具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、揮散性の防虫剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤などを用いた薬剤揮散具は知られており、洋服ダンスなどの衣料の分野においてはハンガーパイプに吊り下げて薬剤を揮散させるタイプの薬剤揮散具が知られている。
【0003】
このような薬剤揮散具においては、近年環境への配慮から、揮散性の薬剤が保持された担体とその担体をハンガーパイプに吊り下げるための吊り下げ部材から構成され、薬剤が揮散し終わった後に、薬剤揮散具一式を交換するのではなく担体のみを新しいものに交換することができるタイプの薬剤揮散具が各種開発されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−67265号公報
【特許文献2】実開平6−13487号公報
【特許文献3】実公平7−33660号公報
【特許文献4】特開2004−182240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の薬剤揮散具においては、薬剤を保持させた担体が露出する状態で交換を行うことになるため、交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着するという問題がある。
【0006】
一方、特許文献3および特許文献4に記載の薬剤揮散具は、薬剤を保持させた担体が薬剤収納部材に収納されていることから、交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着するという問題を防止することができるという長所を有している。
しかしながら、この薬剤揮散具においては、薬剤収納部材を吊り下げ部材の中に挿入することによって使用することから、使用空間が大容量化して担体を大きくしなければならなくなった場合には、吊り下げ部材もそれに伴って大きく、また強度の高いものにしなければならないことになる。
従って、かかる場合には薬剤揮散具全体が大型化、重量化することになり、環境(省資源)に配慮しているとは言い難い状況になってしまうという問題が生じることになる。
【0007】
特に近年、住宅様式の変化に伴って、ウォークインクローゼットなど収納スペースの大容量化が進んでいることから、衣料用の薬剤揮散具においては薬剤が交換可能という要求を満足しつつ、大型収納空間にも対応し、かつ、環境にも配慮しなければならないという要求が強くなっており、上記の問題の解決は避けては通れない課題となっている。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着するという問題を解決しつつ、薬剤が保持された担体のみを交換可能とすることで環境(省資源)にも配慮し、またその交換を容易なものとする薬剤揮散具を提供することを目的とする。さらに、大型収納空間など、使用空間が大容量化した際にも、十分に対応することができる薬剤揮散具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る薬剤揮散具は、揮散性薬剤を保持させた担体を収納する1個以上の薬剤収納部材と、フック部を有する吊り下げ部材を備える薬剤揮散具であって、薬剤収納部材と吊り下げ部材に、薬剤収納部材と吊り下げ部材または薬剤収納部材同士を取り付けまたは取り外し自在とするための連結部が設けられている構成にしてある。
【0010】
本発明の請求項2に係る薬剤揮散具は、連結部が、薬剤収納部材の上端部に設けられた筒状部と、吊り下げ部材の下端部に設けられた吊り下げ部材の底面と並行する方向に延在させた筒状部の内壁に挿入する棒状部である構成にしてある。
【0011】
本発明の請求項3に係る薬剤揮散具は、棒状部の長さが吊り下げ部材の底面の長さよりも短い構成にしてある。
【0012】
本発明の請求項4に係る薬剤揮散具は、連結部が、吊り下げ部材の上端部および下端部に設けられたレール溝を有する嵌合雌部と、薬剤収納部材の上端部および下端部に設けられたレール溝の内壁に嵌合する嵌合雄部である構成にしてある。
【0013】
本発明の請求項5に係る薬剤揮散具は、連結部が、吊り下げ部材の下端部または/および薬剤収納部材の下端部に設けられた雌型部材と、他の薬剤収納部材の上端部に設けられた雌型部材と係合または嵌合する雄型部材、または、吊り下げ部材の下端部または/および薬剤収納部材の下端部に設けられた雄型部材と、他の薬剤収納部材の上端部に設けられた雄型部材と係合または嵌合する雌型部材である構成にしてある。
【0014】
本発明の請求項6に係る薬剤揮散具は、薬剤収納部材がポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂から構成されるようにしてある。
【0015】
本発明の請求項7に係る薬剤揮散具は、揮散性薬剤が防虫剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤のうち少なくとも1種からなる薬剤を用いたものである構成にしてある。
【0016】
本発明の請求項8に係る薬剤揮散具は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の薬剤揮散具が大型衣料収納空間にて使用される構成にしてある。
【0017】
本発明の請求項9に係る薬剤揮散具は、薬剤収納部材の開口部が設けられている面に吊り下げ部材の厚みよりも幅が厚い凸部が設けられている構成にしてある。
【0018】
本発明に用いられる薬剤収納部材の構造としては、揮散性薬剤を保持させた担体を内部に収納でき、後述する吊り下げ部材に連結できる連結部を有している必要がある。具体的には、薬剤収納部材の上端部に吊り下げ部材と連結できる連結部を有しておくことによって、薬剤の揮散が終了した後、薬剤収納部材のみを交換することができるのである。
【0019】
なお、薬剤収納部材の下端部には、さらに他の薬剤収納部材を連結することができるように連結部を設けておくこともできる。
【0020】
また、本発明に用いられる薬剤収納部材の構造としては、担体が薬剤収納部材の内壁に接触することによって、揮散効率が低下したり薬剤収納部材の変形や変色が発生したりすることを防止するために、担体を薬剤収納部材の内部で浮かせた状態で収納できる構造とすることが好ましい。
【0021】
そして、本発明に用いられる薬剤収納部材の構造としては、薬剤が薬剤収納部材の外に揮散するための開口部を設けておくことが好ましい。ただし、薬剤収納部材の壁面を不織布などで覆い、薬剤が不織布などを透過して揮散するようにする場合には、開口部を設けないこともできる。
その他、開口部の形状、位置、薬剤収納部材の表面積に占める比率(開口率)などについては、薬剤揮散具が使用される空間に応じて適宜決定されることになる。
【0022】
さらに、薬剤収納部材の構造としては、薬剤の交換時期を知らせるためのインジケータを設けておくこともできる。具体的には、担体の一方の面にシリカまたは炭酸カルシウムなどを用いて薬剤が保持される部分と薬剤が保持されない部分を設けておき、薬剤が揮散するのに伴い、薬剤が保持される部分の色が薄くなったり、模様が出てくるようしておくことで、薬剤の交換時期を表示させるものである。ここで、隠蔽層としては、例えば、無定形シリカ、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機材料に適当な結合剤を添加したものを用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる薬剤収納部材の形状としては特に限定されず、薬剤揮散具が使用される空間に応じて適宜決定されることになる。
なお、薬剤揮散具をクローゼットなどハンガーパイプに掛けられた衣料の間に吊るして使用する場合には、薬剤収納部材が収納空間内で無駄なスペースを取らないように、薬剤収納部材の形状を板状にしておくことが好ましい。
また、薬剤収納部材の形状を板状とした場合において、使用時に薬剤収納部材の開口部が衣料に挟まれて塞がれてしまうことが懸念される場合には、薬剤の揮散効率を向上させるために、開口部が設けられている面に衣料との隙間を作るための凸部を設けておくこともできる。
【0024】
また、外部から視認する面に絵柄や文字などの意匠を施すこともでき、薬剤収納部材の形状自体を動物などの絵柄の形状とすることもできる。
【0025】
本発明に用いられる薬剤収納部材の製法については、揮散性薬剤を保持させた担体を内部に収納できるものであれば特に限定されない。
例えば、シートを一体成形することによって上蓋部と下蓋部の一端同士がつながるようにした容器を作製し、その内部に担体を収納した後、上蓋部と下蓋部を折りたたんで容器内部に担体が収納されている構造にしてもよい。また、上蓋部と下蓋部となる2つの容器をそれぞれ別々に作製し、その内部に担体を収納した後、2つの容器を接合することによって、容器内部に担体が収納されている構造にしてもよい。
なお、大型収納空間での使用に対応できるように薬剤収納部材が大型化した場合にも軽量化が図れるようにするためには、シート状のプラスチック材料を真空成形によって作製することが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる薬剤収納部材の材質としては、使用される薬剤によって適宜選択されるが、薬剤に防虫剤成分を用いる場合には揮散した薬剤による薬剤収納部材の変形や変色などを防止するために、防虫剤成分が吸着しにくく透過しにくい性質を有するポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合物などが挙げられ、ポリアミド系樹脂としては各種のナイロンなどが挙げられる。
【0027】
本発明で用いられる揮散性薬剤を保持させた担体とは、紙などからなる基材に薬剤を含浸または練り込んだ担体のことをいう。
ここで、基材の材質としては、揮散性の薬剤を含浸または練り込むことができるものであれば特に限定されず、例えば、紙、パルプ紙、板紙、合成繊維混抄紙、不織布、織物、ポリオレフィン樹脂等が使用可能であるが、この中でも薬液を特に多量に含浸させることができる点から、紙、パルプ紙、板紙等を用いることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる揮散性薬剤としては、常温において有効成分が揮散するものであれば、特に限定されるものではなく、防虫剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤、抗菌剤などを用いることができる。
【0029】
ここで、薬剤に防虫剤を使用する場合には、少量で十分な効力を有し、においがなく、人体に対する安全性が高いという点からp−メンタン−3,8−ジオールやピレスロイド系防虫剤を使用することが好ましい。ピレスロイド系防虫剤としては、エムペントリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、テラレスリン、メトフルトリン等の化合物が揮散性の防虫剤として挙げられる。なお、これらの揮散性のピレスロイド系防虫剤については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、いずれの異性体類も使用することができ、また、各種の添加剤を使用することもできる。
【0030】
芳香剤としては、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α―ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、ベンジルアセテートなどが挙げられる。
【0031】
消臭剤としては、揮発性のものではヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油やピルビン酸エチル、ピルビン酸フェニルエチル等のピルビン酸エステルなどが挙げられるが、活性炭、ゼオライト等の多孔性物質から成る消臭剤や銀、銅、亜鉛等の金属イオン、あるいは酸化チタン光触媒を有する消臭剤を、板状、顆粒状、シート状等の状態としたものも使用できる。
【0032】
防黴剤としては、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、オルソフェニールフェノールなどが挙げられる。
【0033】
抗菌剤としては、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0034】
本発明に用いられる吊り下げ部材の構造としては、ハンガーパイプなどに吊り下げることができ、前述した薬剤収納部材に連結できる連結部を有している必要がある。具体的には、上端部にハンガーパイプなどに吊り下げることができるフック部と、下端部に薬剤収納部材を連結できる連結部を有しておくことによって、薬剤の揮散が終了した後、薬剤収納部材のみを交換することができるのである。
【0035】
なお、吊り下げ部材のフック部は、各種の直径のハンガーパイプに対応できるようにハンガーパイプが挿入される挿入口を狭くし、かつ弾性を持たせた構造にしておくことが好ましい。
すなわち、このような構造にしておくことで、吊り下げ部材をハンガーパイプに挿入する際に、挿入口がハンガーパイプによって押し広げられて、フック部がハンガーパイプに吊り下げられ、その後、挿入口が元の位置に戻って挿入口を狭くすることで、衣料を取り出す際などに薬剤揮散具がハンガーパイプから脱落することを防止することができるのである。
【0036】
その他、本発明に用いられる吊り下げ部材の形状、材質、製法などについては特に限定されず、使用環境などに応じて適宜決定される。また、外部から視認する面に絵柄や文字などの意匠を施すこともでき、吊り下げ部材の形状自体を動物などの絵柄の形状とすることもできる。
【0037】
本発明における連結部の構造としては、吊り下げ部材をハンガーパイプから取り外した状態で薬剤収納部材を交換するだけでなく、吊り下げ部材がハンガーパイプに吊り下げられたりしている状態であっても、薬剤収納部材を交換することができるものであれば特に限定されず、例えば以下の構造とすることで交換を容易なものとすることができる。
【0038】
まず、本発明における連結部の例としては、薬剤収納部材の上端部に筒状部を設け、吊り下げ部材の下端部に筒状部の内壁に挿入する棒状部を設けておく構造が挙げられる。
ここで、吊り下げ部材に設けた棒状部の長さを吊り下げ部材の底面よりも短くしておけば、吊り下げ部材の底面の棒状部がない部分が薬剤収納部材の筒状部を棒状部に導くガイドの役目をすることになる。従って、吊り下げ部材がハンガーパイプに吊り下げられたままの状態でも薬剤収納部材を棒状部に滑り込ませることができ、容易に薬剤収納部材を交換することができる。
また、筒状部と棒状部の形状については特に限定されず、角筒状、円筒状、角柱状、円柱状など適宜使用状況に応じた形状を選択することができる。
さらに、筒状部と棒状部には、薬剤収納部材の脱落を防止するためのストッパーを設けておくこともできる。
【0039】
次に、本発明における連結部の別の例としては、吊り下げ部材の上端部および下端部にレール溝を有する嵌合雌部を設け、薬剤収納部材の上端部および下端部に上記レール溝の内壁に嵌合または遊嵌合する雄部を設けておく構造が挙げられる。
ここで、レール溝については、レール溝の形状を適宜変更することで、吊り下げ部材の脱落をより効果的に防止することができる。また、レール溝を上端部または下端部のいずれか一方にのみ設けておくこともできる。
【0040】
さらに、本発明における連結部の別の例としては、吊り下げ部材の下端部に雌型部材を設け、薬剤収納部材の上端部に上記雌型部材と係合または嵌合する雄型部材を設けておく構造が挙げられる。
ここで、薬剤収納部材に設けた雄型部材を吊り下げ部材に設けた雌型部材に係合させる方法としては、雌型部材を開孔部とし雄型部材を開孔部に挿通されるフック部とすることなどが挙げられる。
また、薬剤収納部材に設けた雄型部材を吊り下げ部材に設けた雌型部材に嵌合させる方法としては、雌型部材を凹部とし雄型部材を凹部と嵌合または遊嵌合する凸部とすることなどが挙げられる。
【0041】
さらに、上記の雌型部材を薬剤収納部材の下端部に設けておき、他の薬剤収納部材の上端部に上記の雄型部材を設けておけば、薬剤収納部材同士を連結させることもできる。
【0042】
なお、上記した棒状部と筒状部、嵌合雌部と嵌合雄部、雌型部材と雄型部材については、それらが連結する組み合わせであれば、吊り下げ部材の下端部に筒状部を設け薬剤収納部材の上端部に棒状部を設けるなど、それぞれを逆にすることもできる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の請求項1、請求項2および請求項8に係る薬剤揮散具によれば、薬剤収納部材と吊り下げ部材を備え、薬剤収納部材と吊り下げ部材に薬剤収納部材を取り付けまたは取り外し自在とするための連結部が設けられているので、交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着することがなく、薬剤が保持された担体のみを交換することができ、またその交換を容易に行うことができる。
また、大型の収納空間に使用する場合においても対応が可能であり、環境に配慮した薬剤揮散具を提供することができる。
【0044】
本発明の請求項3に係る薬剤揮散具によれば、吊り下げ部材の底面が薬剤収納部材を吊り下げ部材に挿入するためにガイドの役目を果たすことから、薬剤が保持された担体をさらに容易に交換することができる。
【0045】
本発明の請求項4に係る薬剤揮散具によれば、レール溝を有する嵌合雌部とレール溝の内壁に嵌合する嵌合雄部によって構成されているので、薬剤収納部材の交換を容易にしつつ、薬剤収納部材が吊り下げ部材から落下することをより防止することができる。
【0046】
本発明の請求項5および請求項7に係る薬剤揮散具によれば、薬剤収納部材同士を連結することができるので、使用する空間に防虫効果を及ぼすだけでなく、同時に芳香効果や消臭効果なども及ぼすことができる。
【0047】
本発明の請求項6に係る薬剤揮散具によれば、薬剤収納部材がポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂によって構成されているので、薬剤による薬剤収納部材の変形や変色などを防止することができる。
【0048】
本発明の請求項9に係る薬剤揮散具によれば、凸部によって薬剤収納部材と衣料との間に空間ができるため、より効果的に薬剤を揮散させ、防虫効果などの薬剤の効果を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態における薬剤収納部材の構造を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態における薬剤揮散具の別の使用例を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図である。
【図5】第2の実施形態における薬剤収納部材と吊り下げ部材の他の連結形態を示す模式図である。
【図6】第2の実施形態における薬剤収納部材と吊り下げ部材の他の連結形態を示す模式図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図である。
【図8】第3の実施形態における薬剤収納部材と吊り下げ部材の他の連結形態を示す模式図である。
【図9】第3の実施形態における薬剤収納部材同士の他の連結形態を示す模式図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明の第1の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図であり、図2は第1の実施形態における薬剤収納部材の構造を示す模式図であり、図3は第1の実施形態における薬剤揮散具の別の使用例を示す模式図である。
【0051】
(第1の実施の形態)
最初に、図1において示した薬剤揮散具1の基本的な構造について説明する。本発明にかかる薬剤揮散具1は、薬剤収納部材2と吊り下げ部材3とから構成されている。また、薬剤収納部材2と吊り下げ部材3には連結部4が設けられている。
次に、薬剤収納部材2と吊り下げ部材3のそれぞれの構成を説明する。
【0052】
(薬剤収納部材の構成)
薬剤収納部材2は、図2に示すようにPETを真空成形することによって作製したPET成形品を2つ折りにして作製したものである。
この薬剤収納部材2には揮散性の薬剤が保持された担体5が収納されており、開口部6とインジケータ7が設けられている。また、上端部となる部分には連結部4が設けられている。具体的には、2つ折りに折り曲げた際に、吊り下げ部材3と連結するための筒状部8が形成されるようになっている。
【0053】
(吊り下げ部材の構成)
吊り下げ部材3の下部には連結部4が設けられている。具体的には、図1に示すように吊り下げ部材の底面と並行する方向に延在させた棒状部9が設けられている。この棒状部9は、上記の薬剤収納部材2の上端部に設けられている筒状部8の内壁に挿入できるように、直径が筒状部8の内径よりも細くなっている。
ここで、吊り下げ部材3に設けた棒状部9の長さは吊り下げ部材3の底面10よりも短くなっている。
また、吊り下げ部材3の上部にはフック部11が設けられており、洋服ダンス内などにあるハンガーパイプに吊り下げることができるようになっている。
このフック部11は、各種の直径のハンガーパイプに対応できるように、ハンガーパイプが挿入される挿入口12を狭くし、かつ弾性を持たせた構造になっている。
【0054】
次に、上記のように構成された薬剤揮散具1の作用を次に説明する。
図1に示すように、薬剤収納部材2は、上端部に設けられた筒状部8に吊り下げ部材3の下端部に設けられた棒状部9を挿入することによって使用される。
従って、交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着することなく、より容易に、薬剤が保持された担体5を交換することができ、環境に配慮した薬剤揮散具1を提供することができる。そして、薬剤収納部材2のみを交換することができることから大型収納空間に使用する場合においても薬剤収納部材2を大型化することによって対応することができる。
さらに、吊り下げ部材3の底面10の棒状部9がない部分が薬剤収納部材2の筒状部8を棒状部9に導くガイドの役目をすることになることから、吊り下げ部材3がハンガーパイプに吊り下げられたままの状態でも薬剤収納部材2を棒状部9に滑り込ませることができ、容易に薬剤収納部材2を交換することができる。
【0055】
なお、上記の実施形態では、薬剤揮散具1をハンガーパイプなどに吊り下げて使用したが、本実施形態の薬剤揮散具1はそれに限定されるものでなく、例えば、図3のように、吊り下げ部材3を底板として、筒状部8に棒状部9を挿入した薬剤収納部材2を吊り下げ部材3に立て掛けて使用することもできる。
このようにして使用すれば、クローゼットなどのハンガーパイプに吊り下げて用いる以外にも、収納空間の床面や棚に置いて使用することができる。また、薬剤に消臭剤や芳香剤を使用すれば、げた箱の中やリビングなどの室内に置いて使用することもできる。
【0056】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る薬剤揮散具を説明する。
図4は本発明の第2の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図であり、図5、6は第2の実施形態における薬剤収納部材と吊り下げ部材の他の連結形態を示す模式図である。
【0057】
最初に、図4において示した、薬剤揮散具1の基本的な構造について説明する。
図4に示すように、薬剤揮散具1は、連結部4が、吊り下げ部材3の上端部および下端部に設けられたレール溝を有する嵌合雌部13と、薬剤収納部材2の上端部および下端部に設けられた上記レール溝の内壁に嵌合する嵌合雄部14である点において第1の実施の形態と異なった構造となっている。
なお、上記のように連結部4を構成した以外は、第1の実施の形態と同様の構成を有している。
【0058】
次に、上記のように構成された薬剤揮散具1の作用を次に説明する。
図4に示すように吊り下げ部材3の上端部および下端部に設けられた嵌合雌部13の内壁に、薬剤収納部材2の上端部および下端部に設けられた嵌合雄部14を嵌合または遊嵌合することによって使用される。
従って、薬剤収納部材2が嵌合雌部13によって嵌合または遊嵌合されているので、薬剤収納部材2の交換を容易にしつつ、薬剤収納部材2が吊り下げ部材3から落下することをより防止することができる。
【0059】
なお、本実施形態の薬剤揮散具1は上記したものに限定されるものでなく、例えば、図5に示すように嵌合雌部13および嵌合雄部14の形状を適宜変更することもできるし、図6に示すように嵌合雌部13を吊り下げ部材3の上端部または下端部のいずれか一方にのみ設けておくこともできる。このようにしておけば、より効果的に吊り下げ部材3からの薬剤収納部材2の脱落を防止することができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る薬剤揮散具を説明する。
図7は本発明の第3の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図であり、図8は第3の実施形態における薬剤収納部材と吊り下げ部材の他の連結形態を示す模式図であり、図9は第3の実施形態における薬剤収納部材同士の他の連結形態を示す模式図である。
【0061】
最初に、図7において示した、薬剤揮散具1の基本的な構造について説明する。
図7に示すように、薬剤揮散具1は、連結部4が、吊り下げ部材3の下端部に設けられた開孔部となっている雌型部材15と、薬剤収納部材2の上端部に設けられた上記開孔部に挿通されるフック部となっている雄型部材16である点において第1の実施の形態と異なった構造となっている。
なお、上記のように連結部4を構成した以外は、第1の実施の形態と同様の構成を有している。
【0062】
次に、上記のように構成された薬剤揮散具1の作用を次に説明する。
図7に示すように、吊り下げ部材3の下端部に設けられた雌型部材15に、薬剤収納部材2の上端部に設けられた雄型部材16を挿通して係合することによって使用される。
従って、薬剤収納部材2が雌型部材15によって係合されているので、薬剤収納部材2の交換を容易にしつつ、薬剤収納部材2が吊り下げ部材から落下することをより防止することができる。
【0063】
ここで、雌型部材15を薬剤収納部材2の下端部に設けておき、他の薬剤収納部材の上端部に雄型部材16を設けておけば、図7のように薬剤収納部材2同士を連結させることもでき、使用する空間に防虫効果を及ぼすだけでなく、同時に芳香効果や消臭効果なども及ぼすことができる。
【0064】
なお、図7では、連結部4を雌型部材15と雄型部材16にしたが、本実施形態の薬剤揮散具1はそれに限定されるものでなく、例えば、図8(a)のように雄型部材17を別の形状にすることもできるし、図8(b)のように雌型部材15と雄型部材16をそれぞれ逆にして、吊り下げ部材3の下端部に雄型部材16を設け、薬剤収納部材2の上端部に雌型部材15を設けることもできる。
【0065】
さらに、図9のように、連結部4を凹部状の雌型部材18と凹部と嵌合または遊嵌合する凸部状の雄型部材19として、吊り下げ部材3に設けた雄型部材19を薬剤収納部材2に設けた雌型部材18に嵌合または遊嵌合させることによって連結させることもできる。
【0066】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る薬剤揮散具1を説明する。
図10は本発明の第4の実施形態に係る薬剤揮散具を示す模式図である。
【0067】
最初に、図10において示した、薬剤揮散具1の基本的な構造について説明する。
図10に示すように、薬剤揮散具1は、薬剤収納部材2の開口部6が設けられている面に吊り下げ部材3の厚みよりも幅が厚い凸部20が設けられている点において第1の実施の形態と異なった構造となっている。
なお、上記のように連結部4を構成した以外は、第1の実施の形態と同様の構成を有している。
【0068】
次に、上記のように構成された薬剤揮散具1の作用を次に説明する。
本実施形態における薬剤揮散具1も、第1の実施の形態における薬剤揮散具1と同様に、薬剤収納部材2を上端部に設けられた筒状部8に吊り下げ部材3の下端部に設けられた棒状部9を挿入することによって使用する。
ここで、図10に示すように、薬剤収納部材2の開口部が設けられている面に凸部20が設けられていることから、凸部20によって薬剤収納部材2と衣料との間に空間ができることになる。
従って、より効果的に薬剤を揮散させることができ、防虫効果などの薬剤の効果を発現させることができる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。
【0070】
(実施例1)
以下に示す寸法、材質、製法にて薬剤揮散具を作製した。
【0071】
まず、縦280mm×横185mm×厚み0.5mmのPETシートを真空成形することによって、上蓋部と下蓋部の一端同士が半筒状の部材でつながった薬剤収納部材用の容器を作製した。
ここで薬剤収納部材用容器の表面には、開口率が55%となるように幅6mmであるスリット状の開口部を作製した。さらに、薬剤収納部材用容器の表面には、後述するように上蓋部と下蓋部を折りたたんだ後の右上部にインジケータが設けられるように作製した。
【0072】
次に、縦108mm×横135mm×厚み2mmのパルプ紙にエンペントリンを900mg含浸させることによって、薬剤を保持させた担体を作製した。
そして、上記の担体を上記の薬剤収納部材用容器の内部に収納し、上蓋部と下蓋部を折りたたむことによって、上端部に直径6mm、長さ55mmの筒状部が形成された、縦136mm×横175mm×厚み5mmの薬剤収納部材を作製した。
【0073】
次に、PETを射出成形することによって、下端部に一辺が4mm、長さ65mmの断面正方形状の棒状部が形成され、上端部にハンガーパイプに吊り下げるための直径40mmΦのフック部が形成された、縦55mm×横115mm×厚み4mmの吊り下げ部材を作製した。
【0074】
最後に、上記吊り下げ部材の棒状部を上記薬剤収納部材の筒状部に挿入することによって、薬剤揮散具を作製した。
【0075】
(実施例2)
縦500mm×横185mm×厚み0.5mmのPETシートを真空成形することによって、上蓋部と下蓋部の一端同士が半筒状の部材でつながった薬剤収納部材用の容器を作製し、縦216mm×横135mm×厚み2mmのパルプ紙にエンペントリンを1800mg含浸させることによって、薬剤を保持させた担体を作製した以外は、実施例1と同様にして上端部に直径6mm、長さ55mmの筒状部が形成された、縦244mm×横175mm×厚み5mmの薬剤収納部材を作製した。
【0076】
次に、実施例1と同様の吊り下げ部材を作製し、この吊り下げ部材の棒状部を上記薬剤収納部材の筒状部に挿入することによって、実施例2の薬剤揮散具を作製した。
【0077】
(実施例3)
薬剤収納部材の開口部が設けられている面に、縦30mm×横100mm×厚み4mmの凸部を設けた以外は、実施例1と同様にして薬剤揮散具を作製した。
【0078】
(実施例4)
薬剤収納部材の開口部が設けられている面に、縦30mm×横100mm×厚み4mmの凸部を設けた以外は、実施例2と同様にして薬剤揮散具を作製した。
【0079】
(比較例1)
PETを射出成形することによって、実施例1と同じ大きさの担体が収納できる縦140mm×横180mm×厚み8mmの薬剤収納部と、縦55mm×横115mm×厚み5mmの吊り下げ部が一体となった、上端部にハンガーパイプに吊り下げるための直径40mmΦのフック部が形成された薬剤揮散具用の容器を作製した。
ここで、薬剤揮散具用容器の側面には、担体を挿入するための長さ120mm×幅5mmの挿入口を作製した。なお、担体が収納される薬剤揮散具用容器の内容積や開口部の形状や開口率などは、実施例1と同じとなるように作製した。
そして、実施例1と同じ大きさの担体を上記の薬剤揮散具用容器の内部に挿入することによって、比較例1の薬剤揮散具を作製した。
【0080】
(比較例2)
PETを射出成形することによって、実施例2と同じ大きさの担体が収納できる縦250mm×横180mm×厚み8mmの薬剤収納部と、縦55mm×横115mm×厚み5mmの吊り下げ部が一体となった、上端部にハンガーパイプに吊り下げるための直径40mmΦのフック部が形成された薬剤揮散具用の容器を作製した。
ここで、薬剤揮散具用容器の側面には、担体を挿入するための長さ225mm×幅5mmの挿入口を作製した。なお、担体が収納される薬剤揮散具用容器の内容積や開口部の形状や開口率などは、実施例2と同じとなるように作製した。
そして、実施例2と同じ大きさの担体を上記の薬剤揮散具用の容器の内部に挿入することによって、比較例2の薬剤揮散具を作製した。
【0081】
以上の実施例1〜4および比較例1、2の薬剤揮散具について、交換容易性試験、形状安定試験、フック部荷重試験、揮散効果試験をそれぞれ以下の方法で実施した。
【0082】
(交換容易性試験)
実施例1、2および比較例1、2の薬剤揮散具のフック部をハンガーパイプに吊り下げたままの状態で、薬剤が保持された担体の交換を男女10人ずつに片手で5回行ってもらい、いずれが交換容易かを選んでもらった。
すなわち、実施例1、2の薬剤揮散具については薬剤収納部材の交換を行ってもらい、比較例1、2の薬剤揮散具については薬剤揮散具に挿入されている担体の交換を行ってもらった。
なお、試験の水準については、内容積1500Lで、かつ、内容積の8割程度となるように衣料を入れたクローゼットと、内容積3000Lで、かつ、内容積の8割程度となるように衣料を入れたウォークインクローゼットの2水準について行った。
【0083】
【表1】

【0084】
表1の結果から、評価者の感想としては、実施例1、2の薬剤揮散具は片手でも簡単に交換が可能であるが、比較例1、2の薬剤揮散具は一度、薬剤揮散具をポールから外さないと交換が難しい、という意見が大半であった。特に、比較例1に比べて薬剤収納部材が大きい比較例2はその傾向が強かった。
【0085】
(形状安定試験)
実施例1、2および比較例1、2の薬剤揮散具をハンガーパイプに10個セットし、設置後3ヶ月後のフック部の形状変化を観察した。
【0086】
その結果、表1に示す通り、実施例1、2の薬剤揮散具ではフック部の形状に変化は認められなかったのに対して、比較例1の薬剤揮散具では10個中2個に、比較例2の薬剤揮散具では10個中4個にフック部の変形が認められた。また、本試験においても、比較例1に比べて薬剤収納部材が大きい比較例2はその傾向が強かった。
【0087】
(フック部荷重試験)
フック部にバネばかりを設置し、実施例1、2および比較例1、2の薬剤揮散具のフック部にかかる荷重を10個について測定し、その平均荷重を比較した。
【0088】
その結果、表1に示す通り、実施例1、2の薬剤揮散具ではフック部にかかる荷重がそれぞれ約30gと約45gであったのに対し、比較例1、2の薬剤揮散具ではフック部にかかる荷重がそれぞれ約80gと約150gであった。
従って、担体を収納する薬剤収納部材の内容積が同じであっても、真空成形にて作製する実施例1、2の薬剤揮散具は軽量であることから、形状安定性を維持しつつ担体を収納できるのに対して、射出成形にて作製する比較例1、2の薬剤揮散具では吊り下げ部を含む容器全体が一体となっていることから、フック部にかかる荷重が大きくなることがわかった。
【0089】
(揮散効果試験)
まず、交換容易性試験と同様に、内容積1500Lで、かつ、内容積の8割程度となるように衣料を入れたクローゼットと、内容積3000Lで、かつ、内容積の8割程度となるように衣料を入れたウォークインクローゼットの2水準の試験空間を準備した。
次に、実施例1の薬剤揮散具を1500Lのクローゼットに、実施例2の薬剤揮散具を3000Lのウォークインクローゼットにそれぞれ1個設置した。また、薬剤収納部材の開口部が設けられた凸部の効果を調べるために、実施例3の薬剤揮散具を別の1500Lのクローゼットに、実施例4の薬剤揮散具を別の3000Lのウォークインクローゼットにそれぞれ1個設置した。
【0090】
そして、試験開始直後、試験開始6ヶ月後及び試験開始12ヶ月後に、イガ幼虫各20匹を2cm角のウールモスリン布とともにアミカゴに入れたものを衣料の間に置き、置いてから1週間後のウールモスリン布の食害状況を観察することによって防虫効果を評価した。
具体的には、1500Lのクローゼットについては、衣料の間5箇所のそれぞれ上部・中部・下部の3つの位置、計15箇所に、3000Lのウォークインクローゼットについては、衣料の間10箇所のそれぞれ上部・中部・下部の3つの位置、計30箇所に上記アミカゴを置き、置いてから1週間後のウールモスリン布の食害状況を観察することによって防虫効果を評価した。
なお、防虫効果は以下の基準で評価した。
○:(全く食害なし)
△:(わずかな食害あり)
×:(明らかに食害が認められる)
【0091】
【表2】

【0092】
表2の結果から、実施例3、4の薬剤揮散具は、それぞれ実施例1、2の薬剤揮散具に比べて使用初期の段階においても防虫効果が高いことから、薬剤の揮散効果に優れていることがわかった。
【0093】
以上の一連の試験結果から、本発明にかかる薬剤揮散具は、吊り下げ部材がハンガーパイプに吊り下げられたりしている状態であっても、薬剤収納部材を容易に交換することができ、大型収納空間においても十分な防虫効果を発現することがわかった。
【0094】
また、本発明にかかる薬剤揮散具は、薬剤収納部材1個当たりの重量が軽くなることから、大型収納空間に対応するために薬剤収納部材を大型化した場合においても、吊り下げ部材を大型化することなく対応できることがわかった。
【0095】
さらに、衣料と開口部との間に凸部の空間が形成される本発明にかかる薬剤揮散具はより薬剤の揮散効果に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明にかかる薬剤揮散具は、交換時に薬剤が衣料や皮膚に付着するという問題を解決しつつ、薬剤が保持された担体のみを交換可能とすることで環境(省資源)にも配慮し、またその交換を容易な薬剤揮散具に使用することができる。さらに、大型衣料収納空間など、使用空間が大容量化した際にも、十分に対応することができる薬剤揮散具に使用することもできる。
【符号の説明】
【0097】
1 薬剤揮散具
2 薬剤収納部材
3 吊り下げ部材
4 連結部
5 担体
6 開口部
7 インジケータ
8 筒状部
9 棒状部
10 底面
11 フック部
12 挿入口
13 嵌合雌部
14 嵌合雄部
15 雌型部材
16 雄型部材
17 雄型部材
18 雌型部材
19 雄型部材
20 凸部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性薬剤を保持させた担体を収納する1個以上の薬剤収納部材と、
フック部を有する吊り下げ部材を備える薬剤揮散具であって、
前記薬剤収納部材と前記吊り下げ部材に、
前記薬剤収納部材と前記吊り下げ部材または前記薬剤収納部材同士を取り付けまたは取り外し自在とするための連結部が設けられていることを特徴とする薬剤揮散具。
【請求項2】
前記連結部が、
前記薬剤収納部材の上端部に設けられた筒状部と、
前記吊り下げ部材の下端部に設けられた前記吊り下げ部材の底面と並行する方向に延在させた前記筒状部の内壁に挿入する棒状部であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散具。
【請求項3】
前記棒状部の長さが
前記吊り下げ部材の底面の長さよりも短いことと特徴とする請求項2に記載の薬剤揮散具。
【請求項4】
前記連結部が、
前記吊り下げ部材の上端部および下端部に設けられたレール溝を有する嵌合雌部と、
前記薬剤収納部材の上端部および下端部に設けられた前記レール溝の内壁に嵌合する嵌合雄部であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散具。
【請求項5】
前記連結部が、
前記吊り下げ部材の下端部または/および前記薬剤収納部材の下端部に設けられた雌型部材と、他の薬剤収納部材の上端部に設けられた前記雌型部材と係合または嵌合する雄型部材、
または、
前記吊り下げ部材の下端部または/および前記薬剤収納部材の下端部に設けられた雄型部材と、他の薬剤収納部材の上端部に設けられた前記雄型部材と係合または嵌合する雌型部材、であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散具。
【請求項6】
前記薬剤収納部材がポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂から構成される
ことと特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の薬剤揮散具。
【請求項7】
前記揮散性薬剤が防虫剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤のうち少なくとも1種からなる薬剤を用いたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の薬剤揮散具。
【請求項8】
大型衣料収納空間にて使用することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の薬剤揮散具。
【請求項9】
前記薬剤収納部材の開口部が設けられている面に前記吊り下げ部材の厚みよりも幅が厚い凸部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の薬剤揮散具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−273630(P2010−273630A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130799(P2009−130799)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】