説明

薬剤混合システムにおけるバイアルアダプタ組立品

バイアル収容部(304)と針穿孔可能ポート(348)とを有する本体要素(302)を含んだバイアルアダプタ組立品(300)を備える薬剤混合システムで使用するための装置であって、本体要素(302)は、バイアル穿孔スパイク(322)の孔(327)と流体的に結合する軸方向の中空の管状部分(330)を含み、本体要素(302)はさらに、孔(327)を介して、そして本体要素(302)の中間部分(328)に形成された凹部(337)を介して、バイアル穿孔スパイク(32)と流体的に結合する第1の膜(336)を支持する膜支持表面(332)を含み、第2の膜(236)が、膜支持部材(240)によって支持され、間隙(238)によって、第1の膜(336)から分離されていることを特徴とする、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬剤混合システムに関し、具体的には、薬剤混合システムで使用するためのバイアルアダプタ組立品に関する。このバイアルアダプタ組立品は、バイアルアダプタの本体内に空気を自由に通過させるが、液体粒子および空中浮遊粒子、微生物並びにエアロゾルの通過は防止する二重膜を有する。
【背景技術】
【0002】
薬剤混合システムは当分野でよく知られている。1つの具体的な薬剤混合システムが、本願の現在の譲受人に譲渡された公開済みのPCT特許出願国際公開第2005/041846号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。この薬剤システムは、Teva Medical Ltd.から市販されており、Tevadaptorの商品名で販売されている。これは、危険な静注薬物を安全に調合し、投与するためのシステムである。Tevadaptorは、危険な薬剤物質に曝される危険を最小限にし、針刺し事故の危険を排除する。この薬剤混合システムは、ルアー付き皮下注射器で使用することが意図され、抗癌薬などの毒性薬物を取り扱うのに特に有用である。
【0003】
Tevadaptorの薬剤混合システムは、輸液バッグなどの流体容器のポートに挿入可能な容器ポートアダプタを含む。バイアルアダプタ組立品には、薬剤を収容したバイアルへの接続部が設けられている。シリンジアダプタ要素が、シリンジおよび容器ポートアダプタおよび/またはバイアルアダプタ組立品に取り付けられる。容器ポートアダプタ、シリンジアダプタ要素および/またはバイアルアダプタ組立品には、液体、固体またはガス状の場合によっては有害なバイアルの中身が大気へ放出されるのを防ぐようにして、大気への通気孔が設けられてもよい。
【0004】
シリンジアダプタ要素は、シリンジの中身と流体連通する針を有してもよい。針は、通常は、外側に突出しておらず、隔壁によってシリンジアダプタ要素内に封止されている。シリンジアダプタ要素は、シリンジのルアーチップ上に組み合わされてもよい。ここでは、シリンジアダプタ要素の針は、バイアルの中身と流体連通しているが、針が隔壁によって内側で封止されているため、中身は外に流れ出ない。
【0005】
同様に、バイアルアダプタ組立品も、バイアルの中身と流体連通する針を有してもよい。針は、通常は、外側に突出しておらず、隔壁によって、バイアルアダプタ組立品内に封止されている。バイアルは、バイアルアダプタ組立品に押し付けられ得、その場合には、バイアルアダプタ組立品の針がバイアルの隔壁を突き刺す。次に、バイアルアダプタ組立品は、シリンジアダプタ要素に押し付けられ得、その場合には、シリンジアダプタ要素の針が、シリンジアダプタ要素とバイアルアダプタ組立品の隔膜を突き刺す。これによって、流体が、シリンジからシリンジアダプタ要素の針を通って、そして、バイアルアダプタ組立品の針を通って、バイアルへと流れる。
【0006】
バイアルを所望の量の流体で充填した後には、バイアルアダプタ組立品は、シリンジアダプタ要素から分離される。分離後すぐに、シリンジアダプタ要素の針とバイアルアダプタ組立品の針は、両方とも、それぞれの隔膜によって封止される。このようにすると、流体が外側に漏れることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/041846号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、TERADAPTOR薬剤混合システムのための改良されたバイアルアダプタ組立品、具体的には、バイアルアダプタの本体に空気が自由に通過できるようにするが、液体粒子および空中浮遊粒子、微生物並びにエアロゾルの通過は防止する二重膜を有するバイアルアダプタ組立品を提供するものである。
【0009】
したがって、本発明の一実施形態によると、バイアル収納部と針穿孔可能ポートとを有する本体要素を含んだバイアルアダプタ組立品を含む薬剤混合システムで使用するための装置であって、本体要素は、バイアル穿孔スパイクの孔と流体的に結合する、軸方向の中空の管状部分を含み、さらに、本体要素は、孔を介し、そして、本体要素の中間部分に形成された凹部を介して、バイアル穿孔スパイクと流体的に結合する第1の膜と、膜支持部材によって支持され、そして第1の膜から間隙で分離された第2の膜とを支持する膜支持表面を含む。第1および第2の膜は疎水性であり、一般に、互いに平行である。
【0010】
本発明の一実施形態によると、膜支持部材には通気孔が形成されている。膜支持部材は、中間部分に形成された溝に嵌合するタブを含む。
【0011】
本発明は、図面に関連してなされる以下の詳細な説明からより完全に理解されよう。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】従来技術の薬剤混合システムのバイアルアダプタ組立品の分解図である。
【図1B】従来技術の薬剤混合システムのバイアルアダプタ組立品の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に基づいて構成され、機能するバイアルアダプタ組立品の簡略化された部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、図1Aおよび図1Bを参照する。図1Aおよび図1Bは、PCT特許出願国際公開第2005/041846号明細書に記載されているような、従来技術の薬剤混合システムのバイアルアダプタ組立品30を示している。
【0014】
バイアルアダプタ組立品30は、一般に、軸303回りに配置された本体要素302を備える。本体要素302は、一体形成され、プラスチックから射出成形されてもよい。
【0015】
本体要素302は、バイアル収納部とも称される後方部分304を含んでもよい。後方部分304は、略円筒形であり、前壁306で終端している。後方部分304は、前方基底部308を備え、前方基底部308の後方には、好ましくは、それぞれ矩形窓312を有する4つのタブ310が形成されている。
【0016】
矩形窓312の後方、および各タブ310の内側表面314上には、それぞれ傾斜面を有する、半径方向に延びて、内側で対向する2つの突条部316が形成されていることが好ましい。好ましくは、突条部316は、内側で対向し、横断して延びる突条部318内で、突条部316の前方端部で終端する。突条部316の後方には、各タブ310が、外側方向に向くテーパー状部分320を含むことが好ましい。
【0017】
中空のバイアル穿孔スパイク322が前壁306の後面324から後方に延び、基底部308によって、そしてタブ310によって囲まれている。
【0018】
後面324はさらに、穿孔スパイク322を取り囲む円形の円筒形突条部325を含む。半径方向に延びる2つの孔326、327が、バイアル穿孔スパイク322を貫通して延びている。
【0019】
後方部分304の前壁306の前方には、略矩形状で、バイアル穿孔スパイク322の孔327と流体的に結合する、軸方向の中空の管状部分330を含んだ中間部分328が形成されている。
【0020】
中間部分328の上面において、中間部分328に対して僅かに凹んだ膜支持表面332が形成されている。膜支持表面332上には、略均一に分配された複数の球形の突条部334が形成され、突条部334は、第1の膜336(好ましくは疎水性)を支持して、第1の膜336が過剰に膨張し、亀裂が発生するのを防止するように適合されている。膜336は、本体要素302に空気が自由に通過できるようにするが、液体粒子および空中浮遊粒子、微生物並びにエアロゾルの通過は防止するように適合されている。好ましい膜336は、米国ニューヨーク州のPall Corporationから市販されている0.2ミクロンのModel VersaporRである。
【0021】
膜336は、孔326を介して、そして中間部分328内に形成された凹部337を介して、バイアル穿孔スパイク322と流体的に結合している。
【0022】
支持表面332を取り囲むリム338が、任意の炭素布フィルタ340を支持し、このフィルタ340を膜336よりも上の上方位置で、膜336から間隔を空けて維持するよう適合されている。炭素布フィルタ340は、有毒な蒸気が本体要素302から漏れ出ないように適合され、これによりユーザを保護している。好ましい炭素布フィルタ340は、英国のホートンルスプリングのCharcoal Cloth International Ltd.から市販されているモデル番号Zorflex EMIである。
【0023】
中間部分328は、略円形壁342内で、その前方端部において終端している。円形壁342の前方には、中空の首部344が形成され、中空の首部344は、中空の管状部分330と、中空のバイアル穿孔スパイク322とに流体的に結合している。中空の首部344は、略円形壁面346内で、その前方端部において終端している。
【0024】
首部344の前方には、針穿孔可能ポートとも称される前方対向部分348が形成されている。前方対向部分348は、その部分348の前方端部に位置するシート352上で、略円形の隔壁350を密封状態で収容するように適合されている。前方対向部分348は、管状部分330と隔壁350との間を連結する中心孔354を画定する。
【0025】
バイアルアダプタ組立品30は、さらに、膜336と炭素フィルタ340とを支持、および覆うカバー要素360を含むことが好ましい。カバー要素360は、略円筒形で、略左右対称な要素であり、その前方端部において中央開口362が形成され、この開口362を通って前方部分348が延びていることが好ましい。
【0026】
カバー要素360の外側表面364にはそれぞれリブ付きのグリップ領域366が形成されている。カバー要素360の内側の上面368は平坦であることが好ましく、そして、膜336と炭素フィルタ340の上面を支持し、過剰な膨張と亀裂を防ぐように適合されている。
【0027】
ここで、図2を参照する。図2は、本発明の一実施形態に従って構成され、機能するバイアルアダプタ組立品300を示している。なお、バイアルアダプタ組立品30と同様の要素は、同様の符号で示されている。
【0028】
バイアルアダプタ組立品300は、バイアルアダプタ組立品300が、膜支持部材240によって支持された第2の膜236を含むという点で、バイアルアダプタ組立品30とは異なる。第2の膜236は、間隙238によって、第1の膜336と分離されている。第1および第2の膜336、236は互いに略平行である。第1の膜336と同様に、第2の膜236も疎水性であってもよい。
【0029】
膜支持部材240は、中間部分328に形成された溝248に密に嵌合するタブ246を含んでもよい。膜支持部材240には通気孔242が形成されてもよい。
【0030】
1組の膜236、336によって、バイアルアダプタの本体に空気が自由に通過できるが、液体粒子および空中浮遊粒子、微生物並びにエアロゾルの通過は防止される。
【0031】
炭素布フィルタ340は、第2の膜236の上に位置付けられてもよい。
【0032】
明確にするために、別個の実施形態に関連して説明した本発明の様々な特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解されよう。反対に、簡略化するために、単一の実施形態に関連して説明した本発明の様々な特徴は、別個に、または、任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤混合システムで使用する装置において、
バイアル収納部(304)と針穿孔可能ポート(348)とを有する本体要素(302)を含むバイアルアダプタ組立品(300)を備え、
前記本体要素(302)は、バイアル穿孔スパイク(322)の孔(327)と流体的に結合する軸方向の中空の管状部分(330)を備え、
前記本体要素(302)はさらに、前記孔(327)を介して、そして前記本体要素(302)の中間部分(328)に形成された凹部(337)を介して、前記バイアル穿孔スパイク(32)と流体的に結合する第1の膜(336)を支持する膜支持表面(332)を備え、
膜支持部材(240)によって支持され、間隙(238)によって、前記第1の膜(336)から分離された第2の膜(236)を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1および第2の膜(336、236)は互いに略平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1および第2の膜(336、236)は疎水性である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記膜支持部材(240)には通気孔(242)が形成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記膜支持部材(240)は、前記中間部分(328)に形成された溝(248)に嵌合するタブ(246)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の膜(236)の上に位置付けられた炭素フィルタ(340)をさらに備える、請求項1に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518471(P2012−518471A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551157(P2011−551157)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/024246
【国際公開番号】WO2010/099000
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(505271758)テバ メディカル リミテッド (5)
【Fターム(参考)】