説明

薬剤管理システム

【課題】 簡便に薬剤保管庫における担当者の認証作業と在庫管理とを行うための薬剤の取り出し履歴を記憶する薬剤管理システム。
【解決手段】 薬剤を区画された領域で薬剤ごとに保管する複数の収容部と、収容部ごとに設けられた情報受信手段と、情報受信手段によって受信された所定の情報を記憶するための情報記憶手段と、薬剤を収容部から取り出す担当者が身につけて固定するよう構成された個人データ記憶手段とを具備し、情報受信手段は、担当者が前記収容部に収容された薬剤を取り出す際に、個人データ記憶手段からの担当者の情報を受信し、担当者の情報を情報記憶手段に記憶させる構成の薬剤管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤管理を行うための薬剤の取り出し履歴を記憶する薬剤管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、薬剤の投与ミスおよび輸血の際の輸血ミス等による医療事故が多発している。また、薬剤の盗難も相次いでおり、これらのリスクマネージメントの問題を解決するため種々の薬剤保管庫が開発されている。
【0003】
従来の薬剤保管庫においては、キーボードから入力された処方内容により薬剤が払い出されるものや、薬剤の取り出しを行う担当者の認証作業を行った後、処方内容を入力し、取り出される薬剤の種類を記録するものがある。
【0004】
具体的には、当該薬剤を保管している薬剤保管庫の保管棚にバーコードを貼付し、これと各担当者の名札等に貼付された各担当者のデータを記憶したバーコード等をバーコードリーダで読み取って担当者の認証および薬剤の在庫管理を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、緊急を要する救命救急やICU(中央処置室)等の場にあっては、わざわざ時間のかかるバーコード認証を十分に行うことができず、担当者の認証が徹底できない。また、いつ何本取り出したか等までの管理ができず在庫管理として不十分であった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するべくなされたもので、簡便に薬剤保管庫における担当者の認証作業と在庫管理とを行うための薬剤の取り出し履歴を記憶する薬剤管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤管理システムは、薬剤を区画された領域で薬剤ごとに保管する複数の収容部と、該複数の収容部ごとに設けられた情報受信手段と、該情報受信手段によって受信された所定の情報を記憶するための情報記憶手段と、前記薬剤を収容部から取り出す担当者が身につけて固定するよう構成された個人データ記憶手段とを具備し、前記情報受信手段は、担当者が前記収容部に収容された薬剤を取り出す際に、前記個人データ記憶手段からの担当者の情報を受信し、担当者の情報を前記情報記憶手段に記憶させることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
まず、本発明の第1の実施の形態における薬剤管理システムについて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における薬剤管理システムの薬剤保管庫の概略図である。図1の薬剤保管庫は、薬剤を保管する収容部1、収容部1を保持する保管棚2、収容部1を引き出すための取っ手3および所定のデータを読み取るための情報受信手段としてのアンテナS1を具備する。
【0010】
また、図2は図1の薬剤保管庫における薬剤の取り出し方法を説明するための拡大図である。図2に示されるように、収容部1の内部には、個人データや在庫情報等を記憶するための情報記憶手段としての情報記憶部4が設けられている。また、担当者が腕に身につけるリストバンドWには、個人データ記憶手段としてのIC(Integrated Circuit)チップTwが設けられている。
【0011】
各担当者は、普段薬剤保管庫の収容部1を引き出す腕にリストバンドWを携行している。リストバンドWに備えられたICチップTwには、担当者の氏名や所属部署等の個人データが記憶されている。本実施の形態におけるICチップTwは、非接触型が用いられており、無線による情報交換が可能である。
【0012】
また、薬剤保管庫の収容部1にはその収容部1ごとに同じ種類、同じ容量の薬剤Mが収納されている。担当者が所望の薬剤を取り出すために当該薬剤が入っている収容部1の取っ手3に手を伸ばすと、担当者の携行しているリストバンドWに具備されているICチップTwから発信されている担当者の個人データを当該収容部1に具備されたアンテナS1が受信する。
【0013】
受信された担当者の個人データは、その受信時刻と合わせて情報記憶部4に記憶される。これにより、担当者が特別な操作をすることなく誰が何の薬剤をいつ取り出したかの薬剤取り出し履歴データを記憶させ管理することができる。なお、情報記憶部4を収容部1に設けずに別の場所で一括に管理してもよい。
【0014】
また、確認音や確認表示により引き出した収容部4のアンテナS1に正しく受信されたことを確認し得る構成とすることもできる。さらに、この場合、確認後当該収容部1の取っ手3を掴むことによって情報記憶部4に記憶させる構成とすることができ、より確実な薬剤取り出し履歴データを記憶させることができる。このとき、受信した収容部1とは異なる収容部1の取っ手3が掴まれた場合や、受信されていないのに取っ手3が掴まれた場合には、警告音や警告表示により薬剤を取り出せなくする構成とすることもできる。これにより、防犯対策としての薬剤管理も可能となる。
【0015】
次に、本発明の第2の実施の形態における薬剤管理システムについて説明する。図3は本発明の第2の実施の形態における薬剤管理システムの薬剤保管庫の概略図である。図3の薬剤保管庫は、薬剤を保管する収容部1、収容部1を保持する保管棚2、収容部1を引き出すための取っ手3および認証データを読み取るための情報受信手段としてのアンテナS2を具備する。本実施の形態においては、収容部1が引き出し部を有する場合に有効である。
【0016】
また、図4は図3の薬剤保管庫における薬剤の取り出し方法を説明するための拡大図である。第1の実施の形態と同様に、担当者は、普段薬剤保管庫の収容部1を引き出す腕に各担当者の個人データが記憶された非接触型のICチップTwを具備したリストバンドWを携行している。
【0017】
担当者が所望の薬剤Mを取り出すために当該薬剤Mが入っている収容部1の取っ手3に手を伸ばすと、担当者の携行しているリストバンドWに具備されているICチップTwが、図4(a)に示されるように、保管棚2に収容部1の前面を囲むように設けられたアンテナS2のフープ部S2a(輪部)で囲まれた領域Aを通過する。この領域Aを通過することによってICチップTwから発信された個人データをアンテナS2が受信し、収容部1に設けられた情報記憶部(図示せず)に記憶される。なお、情報記憶部は、第1の実施の形態のように収容部1ごとに設けてもよいし、別の場所で一括に管理してもよい。
【0018】
担当者が薬剤Mを取り出すために収容部1の取っ手3が保持され収容部1が引き出される。取っ手3によって収容部1が前述の領域Aのあたりまで引き出されるとその後は図4(b)に示されるようにアンテナS2の脚部S2bも収容部1と同様に引き出される。
【0019】
ところで、本実施の形態における収容部1に収容される薬剤Mには、薬剤の種類、容量等の情報が薬剤データとして記憶されたICチップTm(非接触型が好ましい)が貼付されている。収容部1が引き出され薬剤Mが取り出される際に、薬剤MはアンテナS2のフープ部S2aおよび脚部S2bで囲まれた領域Bを通過する。この領域Bを通過することによってICチップTmから発信された薬剤データをアンテナS2が受信し、収容部1に設けられた情報記憶部(図示せず)に記憶させる。
【0020】
このように、薬剤にICチップを設けることにより、実際に取り出された薬剤の種類を確認することができるとともに、取り出された薬剤の個数も管理することができるため、担当者が特別な操作をすることなく簡便に、在庫管理をより確実に行うことができる。
【0021】
なお、図4(b)に示される領域Bを通過する際に担当者の身につけているリストバンドWのICチップTwに記憶されている個人データがアンテナS2によって受信されてもよい。この際、図4(a)に示される領域AにリストバンドWを通過させる必要はなくなるため、フープ部S2aを設ける必要はない。したがって、収容部1の薬剤取り出し口である開口部に収容部1と一体化したアンテナを具備する構成とすることも可能である。
【0022】
最後に、本発明の第3の実施の形態における薬剤管理システムについて説明する。図5は本発明の第3の実施の形態における薬剤管理システムの薬剤保管庫の概略図である。図5の薬剤保管庫は、保管棚2に設けられた薬剤を保管する収容部1および認証データを読み取るための情報受信手段としてのアンテナS3を具備する。本実施の形態においては、収容部1に蓋がない場合や引き出しがない場合に有効である。
【0023】
また、図6は図5の薬剤保管庫における薬剤の取り出し方法を説明するための拡大図である。第1の実施の形態と同様に担当者は、普段薬剤保管庫の収容部1から薬剤を取り出す腕に各担当者の個人データが記憶された非接触型のICチップTwを具備したリストバンドWを携行している。
【0024】
担当者が所望の薬剤Mを取り出すために当該薬剤Mが入っている収容部1に手を伸ばすと、担当者の携行しているリストバンドWに具備されているICチップTwが、図6に示されるように、保管棚2に収容部1の前面を囲むように設けられたアンテナS3で囲まれた領域Aを通過する。この領域Aを通過することによってICチップTwから発信された個人データをアンテナS3が受信し、収容部1に設けられた情報記憶部(図示せず)に記憶される。なお、情報記憶部は、第1の実施の形態のように収容部1ごとに設けてもよいし、別の場所で一括に管理してもよい。
【0025】
ところで、この収容部1に収容される薬剤Mには、第2の実施の形態と同様に、薬剤の種類、容量等の情報が記憶されたICチップTm(非接触型が好ましい)が貼付されている。収容部1から薬剤Mが取り出される際に、薬剤MはアンテナS3で囲まれた領域Aを通過する。この領域Aを通過することによってICチップTmから発信された薬剤データをアンテナS3が受信し、収容部1に設けられた情報記憶部(図示せず)に記憶させる。
【0026】
このように、薬剤にICチップを設けることにより、実際に取り出された薬剤の種類を確認することができるとともに、取り出された薬剤の個数も管理することができるため、担当者が特別な操作をすることなく簡便に、在庫管理をより確実に行うことができる。
【0027】
なお、このアンテナS3は、図5および図6に示した構成に限られず、収容部1の薬剤取り出し口である開口部に保管棚2と一体となる形で形成されてもよい。また、薬剤を取り出そうとしている収容部1がアンテナS3により特定でき、情報を誤らずに受信できる限り、隣接する収容部1とアンテナS3を共用する構成としてもよい。
【0028】
また、本発明の、薬剤の取り出し履歴を記憶する薬剤管理システムでは、薬剤ごとに薬剤を保管する複数の収容部と、該複数の収容部を保持するための保管棚と、前記複数の収容部の前面に設けられた情報受信手段と、該情報受信手段によって受信された所定の情報を記憶するための情報記憶手段とを具備する薬剤保管庫を設け、前記薬剤を取り出す担当者が身につけて固定するよう構成された個人データ記憶手段を具備し、前記情報受信手段は、前記個人データ記憶手段から送信された担当者の情報を受信するものであって、しかも該担当者に身につけられた個人データ記憶手段が収容部に近づくかまたは接触することで該担当者の情報を受信して、前記情報記憶手段に記憶させるように構成してもよい。
【0029】
上記薬剤管理システムによれば、担当者の氏名や所属部署等の情報が記憶された個人データ記憶手段を当該担当者が身につけており、担当者が薬剤を取り出す際に、取り出したい薬剤の収容されている薬剤保管庫の収容部に近づくまたは接触することにより、個人データ記憶手段から送信された当該担当者の情報を当該収容部の前面に設けられた情報受信手段が受信し、その情報が情報記憶手段に記憶される。
【0030】
これにより、担当者が薬剤を薬剤保管庫から取り出すための動作をするだけでどの担当者がいずれの薬剤を取り出したかを把握することができ、簡便に薬剤保管庫における担当者の認証作業と在庫管理とを行うことができる。
【0031】
なお、個人データ記憶手段は、例えば担当者の腕に携行されるものである。また、情報受信手段の受信した情報を情報記憶手段に記憶させる際に、当該薬剤を取り出した時刻も一緒に記憶させる構成とすることも可能である。このとき、当該薬剤がいつ取り出されたかについても把握することができる。
【0032】
好ましくは、前記情報受信手段は、各収容部の前面の周辺を囲むように形成されるように構成される。
【0033】
この場合、個人データ記憶手段からの送信を異なる薬剤の収容部の情報受信手段が誤って受信することがなくなり、より正確かつ簡便に薬剤保管庫における担当者の認証作業と在庫管理とを行うことができる。
【0034】
なお、この情報記憶手段において収容部を囲んでいる部分は、四角形や円等のいずれの形状でもよいし、必ずしも輪状につながっている必要もない。また、収容部が特定できる限り収容部を囲んでいる部分を隣接する収容部と共用してもよい。さらに、この情報受信手段は、無線通信のみを意味するものではなく、接触により通信する構成とすることも可能であることを意味するものである。
【0035】
また、この薬剤管理システムでは、前記個人データ記憶手段は、ICチップが設けられたリストバンドであるように構成される。
【0036】
この場合、担当者がICチップを腕に携行することが容易であり、個人データ記憶手段としてリストバンドを常に携行していても普段の他の業務に支障をきたすことがなくなり、したがって、薬剤を取り出すときに個人データ記憶手段を身につけていないといったミスを防ぐことができる。IC(Integrated Circuit)チップには、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性メモリ、マイクロプロセッサなどが搭載され、情報読み出し、情報記録が可能である。このICチップは、メモリのみを搭載したものでもよいし、マイクロプロセッサも搭載するものでもよく、また、接触型(接点を接続して情報交換を行うもの)および非接触型(無線による情報交換を可能にしたもの)等のいずれのタイプであってもよい。
【0037】
また、この薬剤管理システムでは、前記情報受信手段によって受信可能な薬剤データが記憶されたICチップが薬剤ごとに設けられるように構成される。
【0038】
この場合、取り出された薬剤の種類等が記憶された薬剤データと担当者の個人データとが情報記憶手段に記憶される。よって、本当に薬剤が取り出されたか否かが確認できるため、担当者が特別な操作をすることなく簡便に、より確実な在庫管理を行うことができる。また、取り出された薬剤の数量も把握することができるため、在庫管理の徹底を図ることができる。
【0039】
また、この薬剤管理システムでは、前記ICチップは、無線通信可能な非接触型であるように構成される。
【0040】
この場合、ICチップに記憶された薬剤の種類または個人データ等の情報を情報受信手段であるアンテナに接触させることなく通信することができるため、担当者が薬剤を取り出す作業をするだけで、より確実な担当者の認証作業および在庫管理を行うことができる。
【0041】
また、この薬剤管理システムでは、収容部は取っ手によって保管棚から引き出されるよう構成されている。
【0042】
また、この薬剤管理システムでは、情報記憶手段は収容部の内部に設けられている。
【0043】
そして、上記薬剤管理システムによれば、担当者が薬剤を薬剤保管庫から取り出すための動作をするだけで当該担当者がいずれの薬剤をいつ取り出したかを把握することができ、簡便に薬剤保管庫における担当者の認証作業と在庫管理とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態における薬剤管理システムの薬剤保管庫の概略図である。
【図2】図1の薬剤保管庫における薬剤の取り出し方法を説明するための拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における薬剤管理システムの薬剤保管庫の概略図である。
【図4】図3の薬剤保管庫における薬剤の取り出し方法を説明するための拡大図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態における薬剤管理システムの薬剤保管庫の概略図である。
【図6】図5の薬剤保管庫における薬剤の取り出し方法を説明するための拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1…収容部 2…保管棚 4…情報記憶部 S1,S2,S3…アンテナ Tw,Tm…ICチップ W…リストバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を区画された領域で薬剤ごとに保管する複数の収容部と、該複数の収容部ごとに設けられた情報受信手段と、該情報受信手段によって受信された所定の情報を記憶するための情報記憶手段と、前記薬剤を収容部から取り出す担当者が身につけて固定するよう構成された個人データ記憶手段とを具備し、
前記情報受信手段は、担当者が前記収容部に収容された薬剤を取り出す際に、前記個人データ記憶手段からの担当者の情報を受信し、担当者の情報を前記情報記憶手段に記憶させることを特徴とする薬剤管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−296038(P2008−296038A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216582(P2008−216582)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【分割の表示】特願2001−350052(P2001−350052)の分割
【原出願日】平成13年11月15日(2001.11.15)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】