薬剤被覆したバルーンカテーテル
本発明は患者の管腔系を治療するバルーンカテーテルに関する。とくに、本発明はカテーテルの末端部に配置する可撓性薄膜を有し、この可撓性薄膜は展開前にはほぼ外部に露出しない状態で維持するカテーテルに関する。好ましくは、この可撓性薄膜は、露出状態に展開されるとき、局部的環境に治療薬剤を送給することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、米国特許出願第12/171,134号(2008年7月10日出願)および米国特許仮出願番号第60/949,736号(2007年7月13日出願)の優先権を主張するものであり、双方を本明細書に付記する。
【0002】
本発明は患者の内腔系を治療するバルーンカテーテルに関する。特に、本発明は、カテーテルの末端部に位置する可撓性薄膜を有するカテーテルに関し、この末端部において、薄膜は展開前にほぼ外部に露出しない形態保持される。好ましくは、可撓性薄膜は、露出した状態に展開される局部環境に治療薬剤を送給することができる。
【背景技術】
【0003】
心臓および血管の疾患は、米国および全世界にわたる大きな問題である。アテローム性動脈硬化症のような症状は、血管を閉塞または狭窄する。閉塞または狭窄が、酸素添加された血液を送り出す心臓を支持する冠状動脈に生じるとき、深刻な影響をもたらすことになり、この理由としては、心筋は血液ポンプ送給動作を維持するために十分な酸素を供給されなければならないからである。
【0004】
閉鎖、狭窄または血管狭窄は、多くの比較的侵襲性のない医療処置、例えば経カテーテル血管拡張術(PTA:percutaneous transcatheter angioplasty)、経腔的冠状動脈拡張術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)およびアテローム切除術で処置する。このような血管拡張術は、一般的にバルーンカテーテルの使用を伴う。一般に、バルーンカテーテルは、まず、バルーンを狭窄部に隣接して配置するようにガイドワイヤ上に前進させる。適所に配置したとき、次にバルーンを膨張させ、血管の狭窄部を拡張する
【0005】
一般的に、バルーンカテーテルは中空カテーテルシャフトの外面周りにバルーンの少なくとも一方の端部を固定するように構成する。このバルーン中空内部はシャフトの中空内部と流体連通関係にある。したがって、加圧流体を、シャフトを経てバルーンの中空内部に供給し、閉塞部に対してバルーンを拡張させることができる。
【0006】
現在、カテーテルバルーン材料は、コンプライアント型、セミコンプライアント型、ノンコンプライアント型に分類することができる。コンプアイアント型は、公称バルーン圧力以上の圧力でもバルーンの直径が増加するものと定義される。通常、ノンコンプアイント型バルーンはセミコンプアイアント型バルーンより直径増加が少なく、このセミコンプアイアント型バルーンはコンプライアント型バルーンより直径増加が少ない。
【0007】
コンプライアント型バルーンは、バルーン内圧の増加により拡張および伸展し、またシリコーン、熱可塑性エラストマー(TPEs)、およびポリエチレンもしくはポリオレフィンの共重合体などの材料で形成する。ノンコンプライアント型バルーンは、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミドかで形成し、バルーン内圧がバルーンを完全に膨らますのに必要な圧力を超えて増加してもほぼ予め選択した直径を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンプライアント型バルーン材料は、バルーンにある程度の柔軟性を与え、例えば血管内を通過させ、また膨張させることを容易にする。既知のコンプライアント型バルーン材料も、医療機器バルーンに一般的に使用される厚さで、良い擦過抵抗性と穿刺抵抗性を示す。上記のことを考慮して、本発明の一つの目的はコンプライアント型バルーンを使用するバルーンカテーテルを提供することである。
【0009】
本発明の目的は、バルーンカテーテルの生体内移動を容易にするよう所期通りかつコンパクトに収縮させてバルーンを回収するのに有用な装置を得ることである。
【0010】
バルーンカテーテルを、上述した、PTA、PTCAおよびアテローム切除術に使用することに加え、若干のバルーンカテーテルは治療薬剤または物質の送給するよう形成する。例えば、幾つかのバルーンカテーテルはカテーテルシャフトの長さに沿う、ある部分に位置する開放カテーテルルーメンまたはチャネルを使用して目標組織部位に薬剤含むシステミック(全体浸透性)の液塊を送給する。代案として、バルーンの外面に薬剤を被覆することで薬剤を送給することができる。不幸なことに、この送給方法が要求組織位置に制御された量の薬剤を送給するために用いられるとき、薬剤が迅速に局部的組織に浸透できないこと、または薬剤被覆がすでに洗い流されてしまっていることのいずれかによって、薬剤のシステミック(全体浸透性)な循環効果が喪失することがあり得る。
【0011】
一般的に、液塊として目標組織の部位に送給される薬物または薬剤を含む液状調製剤は、結果的に十分な治療効果をもたらすには、目標組織部位に十分浸透せず、また体液によって洗い流されることがあり得る。同様に、バルーン表面に被覆した薬剤は、循環性の環境が薬剤を調製している目標環境に合致するとき、循環性の環境に接触することによって洗い流すことができる。このような全身浸透性(システミック)の希釈は薬剤や治療薬剤の十分な効果を減少させ、血流によって洗い流される薬物または薬剤の量によって生ずるより大きな全身浸透性作用の可能性を増大させる。
【0012】
上記のことを考慮に入れて、体内の目標組織に安全かつ効果的に、治療薬剤を送給することができる、改良したバルーンカテーテルに対する必要性がある。本発明は、今まで満たされていないこの必要性に取り組む解決法を目指す実施形態を含む。
【0013】
本発明の目的および利点を、以下に説明し、またこの説明から明らかであり、ならびに本発明を実施することにより分かるであろう。本発明の他の利点は、本明細書および特許請求の範囲、ならびに添付図面で特別に指摘した方法およびシステムによって実現かつ達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらおよび他の利点を達成するために本発明の目的に従って、本明細書に広義に記載したように、本発明バルーンカテーテルは、基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材を備える。このバルーンカテーテルは、さらに、内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材を備え、この外側シャフト部材は、基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する。バルーンカテーテルは、さらに、内側および外側のシャフト部材間に位置する環状流路と、内側シャフト部材の末端部と外側シャフト部材の末端部との間に延びて存在する(延在する)可撓性薄膜とを備える。この可撓性薄膜は内面および外面を有し、この内面は環状流路と流体連通するよう構成する。バルーンカテーテルのこの内側および外側のシャフト部材は可撓性薄膜を収容するように構成したチャンバを画定する。更に本発明によれば、この可撓性薄膜は可撓性薄膜上に配置した治療薬剤を有する。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、前記外側シャフト部材の基端側に配置したベローズ構成部材を設けることにより、または内側シャフト部材と外側シャフト部材との間に配置した動的シールを設けることにより前記内側シャフト部材に対する前記外側シャフト部材の移動中、前記還状流路の封止環境を維持する。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、このバルーンカテーテルの可撓性薄膜は、少なくとも1個のドライバセグメントおよび送給セグメントを有し、このドライバセグメントは送給セグメントを収容するよう構成したチャンバの少なくとも一部分を画定する。さらに、このドライバセグメントは、送給セグメントとは異なるコンプライアンスを有する材料で構成することができる。このドライバセグメントは送給セメントを構成するのに使用する材料よりもコンプライアンスが大きいまたは小さい材料によって構成することができ、このまたはこれらドライバセグメントは送給セグメントを畳み込むよう機能する。
【0017】
本発明の他の態様によれば、このバルーンカテーテルは、可撓性薄膜は展開前の状態で螺旋形状部を有する構成とする。可撓性薄膜のこのような螺旋形状部は外側シャフト部材を内側シャフト部材に対して回転移動により生ずることができる。
【0018】
本発明は患者の管腔系を治療する手段をも含む。この方法は、本明細書に記載のバルーンカテーテルを準備するステップ、所望展開位置にこのバルーンカテーテルを位置決めするステップ、環状流路に膨張流体を導入するステップ、内側シャフト部材に対して外側シャフト部材を移動させて、可撓性薄膜を展開し、患者の管腔系を治療するステップを含む。本発明の他の態様によれば、患者の管腔系を治療する方法は、可撓性薄膜の初期展開により、完全展開前に患者の管腔システムを少なくとも部分的に閉塞する。本発明の他の一態様においても、可撓性薄膜自体に治療薬剤を配置した可撓性薄膜を有する患者の管腔系を治療する方法を提供する。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、患者の管腔系を治療する方法は、展開および患者の管腔系の処置後に可撓性薄膜を畳み込むステップを有する。このような可撓性薄膜の畳み込みは、環状流路から膨張流体を抜き出すステップ、または内側シャフト部材に対して外側シャフト部材を軸線方向にまたは回転方向相対移動させるステップで行う。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、患者の管腔系を治療する方法は、可撓性薄膜は、可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ内に畳み込む際に再位置決めし、チャンバは、外側シャフト部材および内側シャフト部材によって画定する。
【0021】
添付図面は、本明細書の一部として組み込みかつこの一部をなし、本発明の方法およびシステムをよりよく理解できるようにする。以下の説明とともに、これら図面は本発明の原理を説明するものである。
以下の図面につき、本発明のいくつかの実施形態を示すが、これに限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるバルーンカテーテルの代表的な一実施形態の概略的側面図である。
【図1A】本発明の一実施形態によるカテーテルにおける、末端部における可撓性薄膜の詳細とともに、基端部近傍の動的シールの詳細示す断面図である。
【図1B】本発明によるバルーンカテーテルの他の代表的な実施形態であり、外側シャフト部材に配置したベローズ構成部材を有する実施形態の概略的側面図である。
【図1C】本発明によるバルーンカテーテルの他の代表的実施形態であり、基端部に配置したハブに組み込んだ動的シールを含む実施形態の概略的側面図である。
【図2】図1の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を部分的に展開した状態を示す断面図である。
【図3】図1の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を一層展開した状態を示す断面図である。
【図4】図1の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を完全に展開した状態を示す断面図である。
【図5】本発明による他の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を部分的に展開した状態を示す断面図である。
【図6】図5の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を一層展開した状態を示す断面図を示す。
【図7】柔軟な膜が完全に展開された、図5の実施例形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を完全に展開した状態を示す断面図である。
【図8】本発明による別の実施形態によるバルーンカテーテルの、可撓性薄膜を展開する前の状態を示す断面図である。
【図9】図8の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を部分的に展開した状態を示す断面図である。
【図10】図8の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を完全に展開した状態を示す断面図を示す。
【図11】本発明によるさらに他の実施形態による、可撓性薄膜を有利な形態で取り付けたバルーンカテーテルの末端部における薄膜を展開する前の状態を示す断面図である。
【図12】有利な形態で取り付けた可撓性薄膜を有する、図11の薄膜を展開した後におけるバルーンカテーテルの末端部の状態を示す断面図である。
【図13A】本発明の他の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を展開する前の状態を示す断面図である。
【図13B】図13Aの実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を展開する過程の状態を示す断面図である。
【図13C】柔軟な膜の展開後における図13Aの実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を展開した状態を示す断面図である。
【図14】本発明によるバルーンカテーテルの他の代表的な実施形態であり、可撓性薄膜を展開前にねじった形態とする実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、例示とする添付図面につき本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。本発明方法および対応する方法のステップを、本発明による系の詳細な説明に関連して説明する。
【0024】
本明細書に記載の装置および方法は、患者の内腔系の処置に使用できる。本発明は、とくに、患者の循環系内の特定部位に治療薬剤を送給するような、患者の循環器系の治療に適している。
【0025】
本発明によれば、バルーンカテーテルは、基端部、末端部、これら基端部と末端部との間における長さ部分を持つシャフト部材を設ける。このバルーンカテーテルは、さらに、内側シャフト部材に対して相対移動可能であり、基端部、末端部、およびこれら両端部間における長さ部分を有する外側シャフト部材を有する。このバルーンカテーテルは、さらに、内側シャフト部材と外側シャフト部材との間に位置する環状流路、および内側シャフト部材の末端部と外側シャフト部材の末端部との間に延びて存在する(延在する)可撓性薄膜を有する。この可撓性薄膜は、内面および外面の双方を有し、内面は、環状流路と流体連通するようす構成する。
【0026】
説明および図示の目的として、以下に限定するものではないが、本発明による心臓血管系および他の冠状動脈疾患に使用されるバルーンカテーテルの例示的実施形態を図1A〜図4に示す。本発明によるバルーンカテーテルの、他の特徴、態様、実施形態を、後述のように図5〜図14に示す。代表的な実施形態の使用方法を装置に関連して説明する。
【0027】
説明目的のためで、以下のものに限定しないが、図1A〜1Cに示すように、バルーンカテーテル100は、基端部12、末端部14およびこれら端部間における長さ部分を持つ内側シャフト部材10を有する。このバルーンカテーテル100は、さらに、内側シャフト部材10に対して相対移動可能で、基端部22、末端部24およびこれら端部間における長さ部分を持つ外側シャフト部品20を有する。
【0028】
このバルーンカテーテル100の内側および外側のシャフト部材10,20は、任意の適切な材料、以下のものに限定しないが、例えばナイロン、ウレタン、ポリウレタン、PEEK、PTFE、PVDF、カイナー、PE、HDPE、または種々の適切な濃度のポリウレタン等の、ポリマー材料で構成することができる。さらに代表的な代替案として、内側および外側のシャフト部材10,20は、数種類の異なる材料で形成した、例えば、異なるポリマーを同時押出し成形した複合材、または繊維強化樹脂材料もしくは強化繊維編組材料のような繊維強化複合材料で構成することができる。内側および外側のシャフト部材10,20は、さらに、合金材料および、ベンダーとしてとくに、メリーランド州メッドウェイMicroGroup(登録商標)社から入手可能なステンレス鋼皮下注射用チューブのような金属材料で構成することもできる。
【0029】
内側および外側シャフト部品10,20は、さらに、任意の生体適合性材料で構成することもできると考えられる。このように、バルーンカテーテル100の内側および外側シャフト部材10,20は、上述のポリマー、これらポリマーの組み合わせもしくは混合物、単独材料もしくは他の材料との組み合わせ、または他の生体適合性材料で構成することができる。
【0030】
この内側および外側のシャフト部材10、20は、既知の様々な技術、例えば、以下のものに限定しないが、押出成形、射出形成、吹付け加工、延伸加工、深絞り、重合、架橋結合、溶液浸漬、粉末堆積、焼結、電気的スピニング、溶融スピニング、熱変形、延伸ブロー、化学的融合(グラフティング)またはこれらの技術を、金属編組、コイル、ガラス繊維、炭素繊維および他の有機もしくは無機の繊維、液晶のような補強素子と組み合わせて、ならびにフライス加工、ドリル加工、研削加工などの古典的機械加工で構成することができる。皮下注射チューブのような金属素子を組み込む場合には、種々の金属製造技術を使用することができ、以下に限定しないが、例えば、機械加工、チューブ引き抜き加工、ドドリル加工、EDMミリング、他の変形方法、メッキスパッタリング、電着グラフト、焼結、および堆積e光沢仕上げ加工、を使用できる。さらに、この内側および外側シャフト部材10,20は、ポリプロピレンまたはウレタンから構成することができ、この場合、多数の既知のサプライヤー、例えば米国カリフォルニア州ムリエタのMedical Extrusion Technologies社から入手可能なポリマー材料を押出形成機を用いて押出加工することができ、このポリマー材料は、本明細書に参考として付記する米国特許第6,495,152号に開示されるプロセスによるバイオリアクターで構成することができる。この材料は多くの方法で後処理することができ、例えば以下の方法に限定しないが、押出加工、射出や浸漬のような成形、織成もしくは編組のような織物処理、造形処理で処理できる。適切な造形処理としては、材料の転造および溶接シート、またはチューブ形状への真空造形があり、これらは単に例示に過ぎない。
【0031】
この内側および外側のシャフト部材10,20は、さらに、Abbott Laboratories社による米国特許第6,541,116号、米国特許第6,287,285号、および米国特許出願公開第2002/0009535号(これらを本明細書に参考として付記する)に記載されているような複数の適切な被覆材および被覆技術を含む、複数の材料および要求に応じて硬化を高める技術によって被覆することができる。使用可能な被覆材としては、例えば、米国デラウェア州ウィルミントンのDuPont De Nemours社から入手可能なTeflon(登録商標)のような潤滑性材料および米国カリフォルニア州ヴェンチュラのApplied Silicone社から入手可能な分散型シリコーン潤滑性材料PN4097のような疎水性材料、または、米国フロリダ州メリット島のHydro−Silk社から入手可能な潤滑性被覆がある。
【0032】
内側および外側シャフト部材10,20は、任意の適切な断面形状、例えば楕円形、多角形もしくは角柱形状とすることができるが、一般的には円形断面が好ましい。冠状動脈用バルーンでは、断面は、一般的に約0.01mm〜1.50mmの範囲、好ましくは約0.10mm〜1.20mmの範囲、最も好ましくは約0.25mm〜1.00mmの範囲の寸法とする。冠状動脈ではない医療処置に使用するバルーンは、異なる寸法とし、本発明はこれら処置用途に基づいて変更することができるものと理解されたい。さらに、「ラピッドエクスチェンジ(RX:rapid exchange)」型ガイドワイヤ設計を有するバルーンカテーテル100の場合、バルーンカテーテル100は、約110cm〜400cm、好ましくは約120cm〜350cmの全長を有するものとし、より好ましくはバルーンカテーテル100は、120cm〜310cmの範囲、最も好ましくは約135cmの長さを有するものとする。「オーバー・ザ・ワイヤ(OTW:over the wire)」ガイドワイヤ設計を有するバルーンカテーテル100の場合、バルーンカテーテル100は、約110cm〜400cmの範囲の全長を有し、好ましくは約120cm〜350cmの範囲、より好ましくはバルーンカテーテル100の長さは120cm〜310cmの範囲、最も好ましくは約300cmとする。
【0033】
一般的に、本発明の内側シャフト部材10は、好ましくは内側ルーメン15を有する。いくつかの実施例において、内側ルーメン15はガイドワイヤルーメンとして機能する。従って、バルーンカテーテル100は、ガイドワイヤ110上で所望の位置に前進させることができる。このガイドワイヤルーメン15は、バルーンカテーテル100が、従来技術で既知の伝統的「オーバー・ザ・ワイヤ」型カテーテルのように、内側シャフト部材10の全長にわたり延在することができる。代案として、ガイドワイヤルーメン15は、バルーンカテーテル100が従来技術で既知の「シングルオペレーターエクスチェンジ」「ラピッドエクスチェンジ」のように、シャフト部材10の一部にわたってのみ延在させることができる。さらに、従来技術で既知の「固定ワイヤ」デザインを、本発明に使用することもできる。
【0034】
以下に図2〜4につき説明すると、バルーンカテーテル100の末端部における一部断面とする側面図を示す。図2〜4に示すように、末端部における可撓性のチップ40は内側シャフト部材10の末端部から突出することができる。末端部におけるチップの種々の形態が従来既知であり、また使用されており、どれも一般的に特定の機能を行うことができる。さらに、このチップ40はブラント(非鋭利)チップまたは予形成した曲面を有するチップとし、患者の血管系に傷をつけないでバルーンカテーテルを挿入することができるチップとして機能することができる。このような予成形した曲面は、バルーンカテーテル100を前進させるときにブラントチップは血管/動脈もしくは臓器を破らないことを確実にする。このチップおよび他のチップ設計も従来既知である。
【0035】
本発明の他の態様によれば、外側シャフト部材20および内側シャフト部材10は環状流路25を画定する。特定の実施例において、環状流路25の基端部は図1Bおよび1Cに示した膨張ハブユニットに直接的に封止接続する、または、図1および図1Aに示すように膨張ルーメン14および動的シール32を介して膨張ハブユニット30に直接接続する。図1Aおよび1Cに示すように、この環状流路25の封止環境は可撓性薄膜の膨張中、および外側シャフト部材20および内側シャフト部材10との間に配置した動的シール32の存在により内側シャフト部材10に対する外側シャフト部材20の相対移動中に維持される。特定の実施例において、この動的シール32は膨張ハブユニット30の基端部側に配置することができるが、他の実施例では膨張ハブユニット30の末端側に配置することができる。本発明の他の実施形態によれば、この環状流路25の封止環境は図1Bに示すように外側シャフト部品20の基端部22におけるベローズ構成部材34の存在によって維持する。
【0036】
本明細書で使用する、用語「可撓性薄膜」は、環状流路25に液体を導入する際に変形できるバルーンカテーテル100の部分を示す。この可撓性薄膜は、本明細書では参照符号50で示し、これは非コンプライアント特性、コンプライアント特性を示す方式、またはこれら特性の任意の組み合わせとして構成することができる。この可撓性薄膜50は、任意の多様な既知かつ適切な材料で形成することができ、バルーンカテーテル100の意図した目的に基づいて選択する。さらに、必要であれば、可撓性薄膜50は、以下に詳述するように展開され得る、一般的に可撓性の構成が容易となるようにほぼ可撓性のないセグメントに形成することができる。この可撓性薄膜50は、一般的に、基端部、中間部分、末端部を有する。この基端部および末端部は、取り付け部分として機能し、可撓性薄膜50を外側シャフト部材20の内面または外面に、また内側シャフト部材10の外面に取り付けることができ、これによりバルーンカテーテル100の環状流路を画定する。基端部および末端部を内側および外側のシャフト部材10,20に取り付けた状態で、環状流路25は可撓性薄膜50に対して封止流体連通する。
【0037】
本発明の特別な実施形態によれば、可撓性薄膜50は、可撓性薄膜50の後退および/またはバルーンカテーテル100の抜き出しを容易にする形態で内側および外側のシャフト部材10,20を取り付ける。例えば、好ましい実施形態において、可撓性薄膜50の外面を外側シャフト部材20の内面および内側シャフト部材10の外面に取り付け、図11および12に示すように、肩部を形成する。可撓性薄膜50の展開に適した他の構成にすることもできる。
【0038】
内側および外側のシャフト部材10,20に対する可撓性薄膜50の取り付けは、接着剤、溶着ボンド(例えば、熱的もしくは化学的な溶着ボンド)、金属リングのスウェージングまたは他の既知の接着方法もしくはそれらの組み合わせによって行うことができる。随意に、バンド、例えば放射線不透過性のマーカーバンドを使用して、可撓性薄膜50の基端部および/または末端部を内側もしくは外側シャフト部材10,20に取り付ける、または上述の処理の組み合わせを使用できる。他の放射線不透過性マーカーもしくはマーカーバンドは、バルーンカテーテル100の環状流路25内に含まれる、内側もしくは外側シャフト部材10,20の長さ部分ににわたる任意の位置で固定することができる。
【0039】
このマーカーバンドは、好ましくは、X線不透過性を容易にするまたは付与する材料で構成する。これら材料としては、以下のものに限定しないが、白金、白金の合金、金、タングステン、タンタルもしくはこれらの組み合わせ、金属、合金、プラスチック、ポリマー、複合材、これらの組み合わせ、もしくは他の適切なX線不透過性特性を示す材料がある。代案として、バルーンカテーテル100の一部(可撓性薄膜50および/または内側もしくは外側のシャフト部材10,20を含む)を、適切な放射線不透過性材料、例えばバリウム、硫酸塩、次炭酸ビスマス、二酸化チタンまたは放射線不透過性を与えるこれらの組み合わせ、で被覆することができる。
【0040】
この可撓性薄膜50は、一つまたはそれ以上の既知の生体適合性材料、また所要に応じて吸収性生体適合材料から構成することができる。このような材料の一つとしては生合成ポリエステルがあり、この生合成ポリエステルは、組織適合性がありかつ哺乳類に自然に発生する成分分子から構成される。この生合成ポリエステルは可撓性医療デバイスに望ましい特性を示す。例えば、生合成ポリエステルは極めて可撓性があり、そのうえ超高分子量ポリエチレンと同様の引張強さを示す。これらの特徴は、容易にねじれに追従し、高破裂圧力耐性を有する可撓性薄膜50をもたらす。生合成ポリエステルの例としては、上述したもの、および4−ヒドロキシ酪酸塩および3−ヒドロキシ酪酸塩、ならびにポリ−L−ラクチド−CO−グリコリド、ポリ−dL−ラクチド−CO−グリコド、ポリエステルアミド、キトサン、PBTおよびPEGがある。
【0041】
上述したように、バルーンカテーテル100には、少なくとも部分的に治療剤60を装填することができ、またこの装填は一般的に可撓性薄膜50の幾つかの部分で行う。本明細書で使用する用語「治療剤」は、治療的もしくは有用な結果をもたらす任意の化合物、化合物の混合物もしくは化合物から成る物質の合成物を意味する。治療剤60は、以下のものに限定しないが、放射線不透過性色素もしくは粒子のようなポリマー、マーカーとする、または医薬品と治療薬剤を含む薬剤、もしくは無機薬品か有機薬品とすることができる。この医療剤または薬剤は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩およびサリチル酸塩のような非荷電性分子、分子複合体の構成要素、薬理的に容認できる塩類など様々な形態で使用できる。
【0042】
水に不溶性の治療剤または薬剤は、溶質として効果的に働く水溶性誘導体とし、デバイスから放出され、酵素により変換され、体内pHもしくは代謝プロセスで生体活性形態加水分解される。さらに、この薬剤または医療剤の調製は、種々の既知の形態、例えば溶液、分散液、ペースト、細粒剤、顆粒剤、乳剤、懸濁剤および粉末とすることができる。この薬剤または治療剤は、必要に応じて、ポリマーもしくは液体と混合する、または混合しないこともできる。
【0043】
本発明の実施形態において、少なくとも一つの治療薬剤としては、以下のものに限定しないが、抗生増殖性薬物、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗血小板薬、抗凝固剤、抗血小板薬、抗血栓薬、細胞分裂抑制薬、抗アレルギー薬および酸化防止剤の混合物がある。従って、この治療薬剤は、合成物、無機物もしくは有機物の混合物、プロテイン、ペプチド、多糖類および他の糖類、脂質、DNAおよびRNA核酸配列、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、レセプタ−リガンド、酵素、接着ペプチド、ストレプトキナーゼを含む血栓因子および組織プラスミノゲン活性因子、抗原、ホルモン、成長因子、リボザイム、レトロウイルスベクター、ラパマイシン(シロリムス)を含む抗増殖剤、 40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルラパマイシン、40−O−テトラゾ−ルラパマイシン(ゾタロリムス,ABT−578)、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩およびマイトマイシン、抗血小板剤の混合物、抗凝固剤、抗血小板剤、ナトリウムヘパリンを含む抗トロンビン剤、低分子ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、vapriprost、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa(血小板膜受容体アンタゴニスト抗体)、組換え型ヒルジン、Angiomax(登録商標)を含むトロンビン阻害薬、ニフェジピンを含むチャンネルブロッカー、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子抑制剤(FGF:fibroblast growth factor)、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、単一クローン抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテーゼ抑制剤、トリアゾロトリアジン、酸化窒素もしくは酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ類似体、エストラジオール、抗がん剤、ビタミン含有ダイエットサプリメント、アスピリンを含む抗炎症剤、タクロリムス、デキサメタゾンおよびクロベタゾール、アンギオぺプチンを含む細胞増殖抑制剤、カプトプリル、シラザプリルもしくはリシノプリルを含むアンギオテンシン変換酵素抑制剤、パーミロラストカリウム、アルファインターフェロン、生物活性RGDおよび一般的に設計された上皮細胞を含む抗アレルギー剤がある。近年利用可能もしくは将来開発され得る移植可能な医療機器と共に使用される他の治療薬剤は、同じように使用可能かつ本発明の範囲内である。
【0044】
抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板因子および血栓溶解剤の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子ヘパリン、ヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、vapriprost、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa(血小板膜受容体アンタゴニスト抗体)、組換え型ヒルジン、およびマサチューセッツ州ケンブリッジのBiogen社のAngiomax(登録商標)のトロンビン阻害薬、ウロキナーゼの様な血栓溶解因子の例として、イリノイ州ノースシカゴのAbbott Aboratories社のAbbokinase(登録商標)などの血栓溶解剤、Abbott Aboratories社の組換え型ウロキナーゼおよびプロウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(カリフォルニア州南サンフランシスコのGenetech社のAlteplase(登録商標)およびテネクテプラーゼ(TNK−tPA)がある。
【0045】
細胞増殖抑制剤もしくは抗増殖剤としては、ランパマイシンおよびエベロリムス、ABT−578の様な類似体、すなわち3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15,E17E,719,21S,23S,26R,27R,34aS) −9,10,12,13,14,2−1,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9、27− ジヒドロキシ−3− [(IR)−2−[(−IS,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−−1−yl)シクロヘキシル] −1−メチルエチル]−10,21−ジメト−ホクシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3−ピリド[2,1B][1,4]オキサアザシク− lohentriacontine− 1,5,11,28,29 (4H, 6H, 31H) −ペンタエチル;23 , 27−エポキシ−3Hピリド[2,1B][1,4] oxaazacyclohentria−contine−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントーネ(米国特許第6,015,815号、同第6,329,386号および米国特許公開第2003/129215、同第2002/123505号に開示され、これら文献を本明細書に参考として付記する)、タクロリムスおよびピメクロリムス、アンギオペプチン、例えばコネチカット州スタムフォードBristol−Myers Squibb社のCapotenおよびCapozideのカプトプリルのようなアンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば ニュージャー州ホワイトハウスステーションMerck & Co社によるPrinivilおよびPrinzideシラザプリルやリシノプリル;ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフロペラジン、ジルチアゼムおよびベラパミルのようなカルシウムチャンネルブロッカー、線維芽細胞増殖抑制剤、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、例えばニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク社のMevacor(登録商標)などのロバスタチンがある。さらに、エトポシドおよびトポテカンのようなトポイソメラーゼ抑制剤、同様にタモキシフェンのような抗エストロゲン剤を使用できる。
【0046】
抗炎症剤の例としては、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンおよびヒドロコルチゾンのようなコルヒチンおよびグルココルチコイドを含む。非ステロイド性抗炎症剤はフルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェのプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラック、メクロフェナム酸、ピロキシカムおよびフェニルブタゾンがある。
【0047】
抗悪性腫瘍剤の例としては、アルトレタミン、ベンダムスチン、カルボプラチン、カルマスティン、シスプラチン、シクロホスファミド、ホテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチン、およびtreosulfinなどのアルキル化剤、ビンクリスチン、ビンブラスチン、例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社のTAXOL(登録商標)などのパクリタキセル、独国フランクフォートのアベンティスSA社のTaxotere(登録商標)などのドセタキセル、メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリン、およびフルオロウラシルなどの代謝拮抗剤、例えばニュージャージー州ピーパックのファルマシアアンドアップジョン社のAdriamycin(登録商標)などの塩酸ドキソルビシンなどの抗生物質、例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社のMutamycin(登録商標)などのマイトマイシン、およびエストラジオールなどの内皮細胞の修復を促進する薬剤といった細胞分裂抑制薬がある。
【0048】
他の治療剤および材料を、本発明により患者の人体内に送給することができる。例えば、血管新生因子を送給することができる。これには、血管内皮細胞成長因子のイソフォーム(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えばβ−FGF)、Del1、低酸素誘発因子(HIF1α)、モノサイト遊走蛋白(MCP−I)、血小板誘導成長因子(PDGF)、ニコチン、インスリン様成長因子(HGF)、エストロゲン、フォリスタチン、プロリフェリン、プロスタグランジンE1およびE2、腫瘍壊死因子(TNF−α)、インターロイキン8(11−8)、造血成長因子(G−CSF)および血小板由来成長因子のような成長因子がある。いくつかの実施例において、血管形成促進因子としては、以下のものに限定しないが、PR39、PRI1およびアンギオゲニンのようなペプチド、PDH阻害剤のような小分子もしくはeNOS促進剤のような他の薬剤がある。
【0049】
上述の治療薬剤が予防的かつ治療的特性で知られているが、これら物質また薬剤は例示的なものであり、これらに限定することを意図しない。さらに、一般的に使用可能または開発され得る他の治療薬剤も、同様に本発明に使用できる。
【0050】
所要に応じ、または必要であれば、治療薬剤は、適切なポリマーもしくは同様の搬送体(キャリヤ)に限定しないが、薬剤を運び、装填し、または持続的に放出する結合剤(バインダ)がある。用語「ポリマー」は、自然または合成に関わらず、単一ポリマー、共重合体、三量体などの重合反応の産物を含み、無秩序、交差、ブロック、グラフト、枝、交差結合、混合、混合物の合成品およびこれらのバリエーションを含む。このポリマーは真溶液、飽和溶液、もしくは粒子が懸濁しているか治療薬剤が過飽和し得る。このポリマーは生体適合性、生体溶解性、生体安定性もしくは生体分解性を有し得る。
【0051】
説明目的であり、限定するものではないが、重合(ポリマー)材料としては、ポリ(MPCw:LMAx:HPMAy:TSMAz)のような高分子含有ホスホリルコリン類などのホスホリルコリン架橋高分子があるが、このMPCは2−メタクリオイロキシエチルホスホリルコリンであり、LMAはラウリルメタクリレートであり、HPMAはヒドロキシプロピルメタクリレートであり、TSMAはトリメトキシシリルプロピルメタクリレートであり、w,x,yおよびzはモノマーの分子比率である。これらの値は典型的に各23,47,25および5であるが、必ずしもポリマー末端にその比率で存在する訳ではない。このポリマーは本明細書ではたいてい「PCポリマー」を意味する。
【0052】
この治療薬剤は液剤を含み得る。この液剤はどんな単一溶剤もしくは溶剤の組み合わせも可能である。説明目的として、以下のものに限定しないが、適切な溶媒の例としては、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、アセテートおよびこれらの組み合わせがある。好ましくは、この溶剤は、エタノールである。さらに好ましくは、この溶剤はイソブタノールである。加えて、本発明の別の一態様において、複数の治療薬剤を同一の溶剤内に溶解もしくは分散させることができる。説明目的のためで、以下のものに限定しないが、デキサメタゾン、エストラジオールおよびパクリタキセルをイソブタノールに溶解す。代案として、デキサメタゾン、エストラジオールおよびパクリタキセルをエタノールに溶解する。他の一実施形態において、デキサメタゾン、エストラジオール、およびABT−578、すなわちラパマイシン類似体すなわち3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15,E17E,719,21S,23S,26R,27R,34aS) −9,10,12,13,14,2−1,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34aヘキサデカヒドロ−9、27− ジヒドロキシ−3− [(IR)−2−[(−IS,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−−1−yl)シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメト−ホクシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3−ピリド[2,1B][1,4]オキサアザシク− lohentriacontine− 1,5,11,28,29 (4H,6H, 31H) −ペンタエチル;23,27−エポキシ−3Hピリド[2,1B][1,4] oxaazacyclohentria−contine−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントーネを一溶液中に溶解させることができる。好ましくは、この溶剤はエタノールである。さらに好ましくは、この溶剤はイソブタノールである。
【0053】
加えて、この治療薬剤には、上述の任意の薬剤、治療剤、ポリマーおよび液剤を単独でまたは混合して含有させることができる。
【0054】
このような治療薬剤をこの可撓性薄膜に塗布できる、好ましくは本発明に適合する任意な多数の従来技術をも可撓性薄膜の外面使用することで、膨張時に外部環境に対して治療薬剤を提供することができる。例えば、薬剤を表面に塗布する複数の技術が、Abbot Laboratories社が所有する様々な特許出願で議論されている。この治療薬剤は、患者の標的部位の組織に治療効果を誘起するために使用される。この治療薬剤の含有物は医療的もしくは治療的の効果を、可撓性薄膜と接触する組織に与える機会をつくる。この治療効果は、バルーンカテーテル上に装填する特定の治療薬剤によって変化させることができる。さらに、この治療薬剤は可撓性薄膜の実質的な接触によりバルーンカテーテルから患者の目標組織部位に送給し、一般的に目標組織部位に残留して目標組織に浸透するであろう。
【0055】
治療薬剤に加え、バルーンカテーテルは、少なくとも部分的に、塩または糖類の化合物を装填することもできる。可撓性薄膜の展開中に、塩か糖類の化合物は治療薬剤より先にまたは同時に目標組織に送給することができる。目標組織上に送給されるとき、この化合物は組織細胞から液体を補給される。液体補給は細胞間に存在する隙間のサイズを増加させ、それにより治療薬剤をチャネルに遊走させる。治療薬剤送給経路を容易にするため、より深く目標部位に浸透できる。この方法で、多量の治療薬剤を、意図した治療効果を得るために送給することができる。
【0056】
本発明の他の一実施形態によれば、この治療剤は、一般的に可撓性薄膜の外面を被覆するように調製する、または治療薬剤の有効量がバルーンカテーテルに沿って流れる体液流で洗い流されないよう物理的に配置する。このような調製物を形成する技術は従来既知であり、例えば被覆上に水溶性フィルムをオーバーレイし、このようなフィルムには、加熱または膨張するまで治療剤被覆の送給を抑止する成分を含ませることによって、フィルムで被覆された治療剤をゆっくりと放出できるようにする。代案として、上述のように、治療剤をヒドロゲルに組み込み、このヒドロゲルによって可撓性薄膜の展開前に体液の存在により治療剤の喪失を抑止することができる。
【0057】
本発明の他の態様によれば、この治療薬剤60は、治療薬剤60の有効量がバルーンカテーテル100と接触する体液の存在によって喪失しないように物理的に配置することができる。可撓性薄膜50上に治療薬剤60を物理的に配置する技術は従来既知である。このような技術としては、以下のものに限定しないが、可撓性薄膜50におけるチャネルまたは小孔内に治療薬剤を配置することがあり、これにより、膨張しない形態ではこれらチャンネルは外部環境にアクセスできないが、膨張時にはチャネルまたは小孔が拡張し治療薬剤60が外部環境に露出する。本発明の他の実施形態においては、治療薬剤60を可撓性薄膜50に取り付けたマイクロカプセル内に収納し、この治療薬剤60を可撓性薄膜50の膨張によってマイクロカプセルから放出する。
【0058】
本発明の他の一態様によれば、バルーンカテーテル100に沿って流れる体液の存在によって治療薬剤60が喪失するのを、図2に示すように、可撓性薄膜50自体をほぼ軸線方向に巻き込むことで抑止する。このような実施形態において、この巻き込み形態は、可撓性薄膜50を外側シャフト20部材および内側シャフト部材で画定されるチャンバ内に維持することにより、装置の送り込み中に、可撓性薄膜50が血流に接触するのを隔絶する。
【0059】
バルーンカテーテル100を患者の血管内に適切に配置した後、可撓性薄膜50を巻き込み解除または展開することができ、この巻き込み解除または展開は、環状流路25内に膨張流体の導入し、また内側シャフト部材10に対して外側シャフト部材20の末端部24を基端方向に後退させることにより行う。このような後退は、環状流路25を維持しつつ行うことができ、この流路維持は、図1Aに示すように内側シャフト部材10と外側シャフト部材20との間における動的シール32の存在によって、図1Bに示すように外側シャフト部材20に沿って配置したベローズ構成部材34によって、または図1Cに示すように内側シャフト部材10と外側シャフト部材20の基端部22に位置する膨張ハブユニット30との間における動的シール36の存在によって、行う。外側シャフト部材20の後退の際に、可撓性薄膜50の外面は部分的に周囲環境に露出する。この部分的な露出を図2に示す。外側シャフト部材20を完全に後退させることで図3に示すように、可撓性薄膜50の外面を完全に露出する。
【0060】
後退した際、または後退中に、流体を環状流路25に導入して可撓性薄膜50を膨張および拡張し、これにより可撓性薄膜50の末端表面が血管壁に接触させることができる。環状流路25への流体導入に応答する可撓性薄膜50の拡張を図4に示す。特定実施形態においては、外側シャフト部材20の後退中の流体導入は、部分的に拡張した可撓性薄膜50によって目標血管を閉塞するのに十分であり、その後完全な拡張および治療を行うことができる。
【0061】
他の実施形態において、環状流路25への流体の導入自体は、内側シャフト部材10に対する外側シャフト部材20の後退を促進するに十分であり、また可撓性薄膜50を膨張させる。このような実施形態を図5〜7に示し、可撓性薄膜50は優先的に拘束されない方向に拡張し、この拡張により可撓性薄膜50が外側シャフト部材20の基端側に荷重を発生する。当業者には理解されるように、後退方法および環状流路25への流体導入の広範囲にわたる種々の組み合わせは本発明の範囲に含まれ、外側シャフト部材20の後退および可撓性薄膜50の膨張に影響する。
【0062】
他の実施形態において、バルーンカテーテル100は、一般的に展開前に環状流路25内に含まれる可撓性薄膜50を有するものとし、これにより可撓性薄膜50を末端方向にほどくことで末端方向に展開する。図13Aに示すように、環状流路25に流体を導入するとき、可撓性薄膜50は加圧され、また環状流路内で前方に押し出される。この前方押し出しは、図13Bに示すように、可撓性薄膜50をほどく。可撓性薄膜50が完全に露出した後、図13Cに示すように、血管壁に対して拡張する。
【0063】
展開後に血流内での治療薬剤60の喪失を防ぐ場合、内側シャフト部材10および外側シャフト部材20によって画定される環状流路25内の可撓性薄膜50を回収することが望ましい。図1Cに示すように、回収は外側シャフト部材20を引っ張るまたは引張荷重を加えることで行うことができる。例えば、本発明の一実施形態において、この回収は内側シャフト部材10の基端部12を回収素子として使用することにより行う。内側シャフト部材10に引張荷重を加えることで、内側シャフト部材10の末端部14が、可撓性薄膜50を体液流から保護される環状流路25内に巻き戻す。この回収プロセスを図12に示す。
【0064】
他の一実施形態において、内側シャフト部材10の基端部12にアクセスできない場合、内側シャフト部材10の内部ルーメン15に一体構成としない回収素子を設けることができる。例えば、このことは、内側シャフト部材10に関連する素子を取り付けることによって行うことができ、この素子により、取り付けポイントの基端側の長さ部分にわたり内側シャフト部材10に圧縮荷重を加える。このような素子の例としては、縫合糸、ワイヤ、テンドンおよびロッドがあり、これら全ては内側シャフト部材の末端部に連結することができる。この素子に対して引張荷重を加えることにより、圧縮荷重を内側シャフト部材10に伝達し、これにより環状流路25内に可撓性薄膜50を後退させる。
【0065】
この可撓性薄膜50の後退は、図11に示すような可撓性薄膜50の基端部および末端部の構成で助長される。このように構成される場合、内側シャフト部材10に荷重を加えて可撓性薄膜50を回収するとき、この可撓性薄膜50の末端部が湾曲する、また形状記憶を付与し、これにより、回収を阻害する塊もしくは折れ曲がりを生ずることなく環状流路25内に優先して後退できるようにする。
【0066】
他の一実施形態において、バルーンカテーテル100に沿って流れる体液の存在による治療薬剤60の喪失は、セグメント化構造を有する可撓性薄膜50を設けることで抑止することができる。図8に示すように、このような実施例としては、可撓性薄膜を3つのセグメント、すなわち、この基端側ドライバ52、末端側ドライバ54および中間送給セグメント56により構成する実施例があるが、より少ないは多いセグメントを有する他の実施例も、本発明の範囲内であると考えらえられる。典型的一実施形態において、基端側および末端側のドライバセグメント52,54は中間送給セグメントを周囲環境から保護するように構成し、可撓性薄膜の中間送給セグメント56のみ治療薬剤60で被覆する。特定の実施形態において、好ましくは基端側および末端側ドライバセグメント52,54よりも可撓性に富むまたは少ない材料で構成した中間送給セグメント56を設けることができる。
【0067】
環状流路25に流体を導入するとき、基端側および末端側のドライバセグメント52,54は拡張し、お互いに離れる。この乖離は、上述のように、内側および外側のシャフト部材10,20の軸線方向変位により助長され、また基端側および末端側におけるドライバセグメント52,54と中間送給セグメント56とが互いに異なるコンプライアンスを有する結果として生ずるようにすることができる。このような分離を図9に示す。
【0068】
基端側および末端側のドライバセグメント52,54が離れることで、中間送給セグメント56を周囲環境に露出する。この拘束されない中間送給セグメント56は次に血管壁に対して拡張できるようになる。一層膨張する際に、基端側および末端側ドライバセグメント52,54および中間送給セグメント56は完全に拡張し、治療薬剤を被覆した中間送給セグメント56の表面を血管壁に接触させる。
【0069】
他の実施形態において、基端側および/または末端側のドライバセグメント52,54は優先的に一つまたはそれ以上の箇所で拡張して血管を閉塞するよう設計することができ、これにより中間送給セグメント56が完全な膨張する前に体液がこの中間送給セグメントに接触するのを抑止する。このような実施形態において、基端側ドライバ52がまず拡張し、これにより血管壁の基端側を閉塞し、この装置の展開中に中間送給セグメント56に体液流が接触するのを阻止する。
【0070】
セグメント化した可撓性薄膜50の展開後に治療薬剤が血流内に喪失するのを防ぐ場合、中間送給セグメント56が畳まれ込まれた後のみに基端側および/または末端側のドライバセグメント52,54が畳まれ込まれ、展開前の配置状態に戻るように基端側および/または末端側ドライバセグメント52,54を形成するのが望ましい。
【0071】
他の一実施形態において、図14に示すように、バルーンカテーテル100に接触する体液の存在による治療薬剤60の喪失は、可撓性薄膜50に沿って螺旋形状部58を導入することで抑止することができる。これら螺旋形状部58は、内側および外側のシャフト部材10,20を互いに回転するよう移動可能に構成することにより導入できる。可撓性薄膜50は内側および外側シャフト部材10,20の双方に結合しているため、これらシャフト部材の相対回転により可撓性薄膜50の表面に一連の螺旋形状部58を生じ、可撓性薄膜50には外部環境および体液流がアクセスできない部分を生ずる。このような部分は周囲環境に露出せず、この部分内に配置されるいかなる治療薬剤60をも血流から保護する。バルーンカテーテル100を適正に位置決めした際に、内側および外側シャフト部材10,20を逆方向に回転して、螺旋形状部58を解消し、また可撓性薄膜50を膨張させて治療薬剤60を治療部位に送給できるようにする。
【0072】
本発明の他の一態様によれば、螺旋形状部58を解消した可撓性薄膜50の展開後に治療薬剤60が血流内に喪失するのを防止する場合、内側および外側シャフト部材10,12を相対回転することで可撓性薄膜50を畳み込んで螺旋形状部58の再導入が可能となる。この再導入は、バルーンカテーテル100の抜き出し中または再位置決め中に、螺旋形状部58に配置した治療薬剤60が血流に接触するのを効果的に阻止する。
【0073】
上述の実施形態から、本発明は「普遍的」に使用し得るバルーンカテーテルを開示していると認識されるであろう。とくに、展開する可撓性薄膜の長さに基づいて、バルーンカテーテルを使用して種々の疾患部長さまたは治療部位を処置することができる。この施術者は、上述のように、カテーテルシャフト部材の相対移動により展開する長さを制御できる。このようなシステムは、使用者が単独長さのものをストックしておくだけでよくなることのみならず、最初に患者に導入したときよりもより長いまたはより短い可撓性薄膜が必要になるとき、使用者が装置交換する必要性を減らすこともできる。
【0074】
本発明の他の一態様によれば、また本発明の特定の態様に関して上述したように、患者の内腔系を治療する方法を提供する。本発明方法は、本明細書に記載のように、バルーンカテーテルを準備するステップと、所要位置へのバルーンカテーテルの位置決めするステップと、環状流路への膨張流体導入するステップと、および内側シャフト部材に対して外側シャフト部材を移動させ、可撓性薄膜を膨張状態に展開して患者の内腔系を治療するステップとを有する。上述のように、このバルーンカテーテルは、多数の異なる形態とすることができ、本発明の方法はこの特許請求の範囲内におけるこのような任意の方法も想定し得る。
【0075】
本発明方法の他の態様によれば、このバルーンカテーテルは、本体の畳み込みおよび抜き出しを容易にする特性を有する。例えば、本発明方法は、以下のものに限定しないが、環状流路からの膨張流体を抜き出すステップ、および内側および外側のシャフト部材の相対移動により可撓性薄膜の畳み込むステップを有する。このような一実施形態において、本発明方法は、バルーンカテーテルを患者から引き出すとき、可撓性薄膜を緊張状態にしかつ内腔構造に引っ掛かりにくいように内側シャフト部材の末端部を越えて外側シャフト部材の末端部を軸線方向に移動させるステップを有する。他の一実施形態において、内側シャフト部材の末端部を外側シャフト部材の末端部に対して軸線方向に相対移動させて、内側シャフト部材の末端部を外側シャフト部材の末端部を超えて突出させ、また可撓性薄膜を緊張状態にし、患者からバルーンカテーテルを引き出すとき内腔構造に引っ掛かりにくいようにする。他の実施形態において、本発明方法は、上述のようなバルーンカテーテルの他の構造を使用し、例えば、内側および外側シャフト部材によって画定されて、可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ構造を使用し、可撓性薄膜を畳み込み、またバルーンカテーテルの引き出しを容易にする。本発明の特許請求の範囲内でこのような構造を使用する方法、本明細書に記載した実施形態は、当業者にとっては容易に理解できるであろう。
【0076】
本発明方法およびシステムは、上述のように、また図面に示したように、優れた治療薬剤送給能力および展開後のカテーテル引き出し性能を含む優れた特性を有するバルーンカテーテルを提供する。当業者にとって、発明の要旨もしくは範囲から逸脱することなく本発明の装置および方法において多様な変更および改変が可能である。例えば、本発明は、とりわけ透析グラフトの治療に有効である。従来機器の透析グラフトは、腎疾患の透析時に必要に応じて基本的に患者血管系の動脈側と静脈側とを接続するシースである。これらシースは急速かつ大幅な再狭窄を生ずる傾向があるため、上述した実施形態は、再狭窄抑制剤をグラフトに送給するときに有利であり、またこの送給はより侵襲性が少なく、またグラフトの構造に対してより容易に適合し易いという利点を有する。このように、本発明は、添付した特許請求の範囲内における変更形態および改変形態、ならびに均等物をも包含する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、米国特許出願第12/171,134号(2008年7月10日出願)および米国特許仮出願番号第60/949,736号(2007年7月13日出願)の優先権を主張するものであり、双方を本明細書に付記する。
【0002】
本発明は患者の内腔系を治療するバルーンカテーテルに関する。特に、本発明は、カテーテルの末端部に位置する可撓性薄膜を有するカテーテルに関し、この末端部において、薄膜は展開前にほぼ外部に露出しない形態保持される。好ましくは、可撓性薄膜は、露出した状態に展開される局部環境に治療薬剤を送給することができる。
【背景技術】
【0003】
心臓および血管の疾患は、米国および全世界にわたる大きな問題である。アテローム性動脈硬化症のような症状は、血管を閉塞または狭窄する。閉塞または狭窄が、酸素添加された血液を送り出す心臓を支持する冠状動脈に生じるとき、深刻な影響をもたらすことになり、この理由としては、心筋は血液ポンプ送給動作を維持するために十分な酸素を供給されなければならないからである。
【0004】
閉鎖、狭窄または血管狭窄は、多くの比較的侵襲性のない医療処置、例えば経カテーテル血管拡張術(PTA:percutaneous transcatheter angioplasty)、経腔的冠状動脈拡張術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)およびアテローム切除術で処置する。このような血管拡張術は、一般的にバルーンカテーテルの使用を伴う。一般に、バルーンカテーテルは、まず、バルーンを狭窄部に隣接して配置するようにガイドワイヤ上に前進させる。適所に配置したとき、次にバルーンを膨張させ、血管の狭窄部を拡張する
【0005】
一般的に、バルーンカテーテルは中空カテーテルシャフトの外面周りにバルーンの少なくとも一方の端部を固定するように構成する。このバルーン中空内部はシャフトの中空内部と流体連通関係にある。したがって、加圧流体を、シャフトを経てバルーンの中空内部に供給し、閉塞部に対してバルーンを拡張させることができる。
【0006】
現在、カテーテルバルーン材料は、コンプライアント型、セミコンプライアント型、ノンコンプライアント型に分類することができる。コンプアイアント型は、公称バルーン圧力以上の圧力でもバルーンの直径が増加するものと定義される。通常、ノンコンプアイント型バルーンはセミコンプアイアント型バルーンより直径増加が少なく、このセミコンプアイアント型バルーンはコンプライアント型バルーンより直径増加が少ない。
【0007】
コンプライアント型バルーンは、バルーン内圧の増加により拡張および伸展し、またシリコーン、熱可塑性エラストマー(TPEs)、およびポリエチレンもしくはポリオレフィンの共重合体などの材料で形成する。ノンコンプライアント型バルーンは、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミドかで形成し、バルーン内圧がバルーンを完全に膨らますのに必要な圧力を超えて増加してもほぼ予め選択した直径を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンプライアント型バルーン材料は、バルーンにある程度の柔軟性を与え、例えば血管内を通過させ、また膨張させることを容易にする。既知のコンプライアント型バルーン材料も、医療機器バルーンに一般的に使用される厚さで、良い擦過抵抗性と穿刺抵抗性を示す。上記のことを考慮して、本発明の一つの目的はコンプライアント型バルーンを使用するバルーンカテーテルを提供することである。
【0009】
本発明の目的は、バルーンカテーテルの生体内移動を容易にするよう所期通りかつコンパクトに収縮させてバルーンを回収するのに有用な装置を得ることである。
【0010】
バルーンカテーテルを、上述した、PTA、PTCAおよびアテローム切除術に使用することに加え、若干のバルーンカテーテルは治療薬剤または物質の送給するよう形成する。例えば、幾つかのバルーンカテーテルはカテーテルシャフトの長さに沿う、ある部分に位置する開放カテーテルルーメンまたはチャネルを使用して目標組織部位に薬剤含むシステミック(全体浸透性)の液塊を送給する。代案として、バルーンの外面に薬剤を被覆することで薬剤を送給することができる。不幸なことに、この送給方法が要求組織位置に制御された量の薬剤を送給するために用いられるとき、薬剤が迅速に局部的組織に浸透できないこと、または薬剤被覆がすでに洗い流されてしまっていることのいずれかによって、薬剤のシステミック(全体浸透性)な循環効果が喪失することがあり得る。
【0011】
一般的に、液塊として目標組織の部位に送給される薬物または薬剤を含む液状調製剤は、結果的に十分な治療効果をもたらすには、目標組織部位に十分浸透せず、また体液によって洗い流されることがあり得る。同様に、バルーン表面に被覆した薬剤は、循環性の環境が薬剤を調製している目標環境に合致するとき、循環性の環境に接触することによって洗い流すことができる。このような全身浸透性(システミック)の希釈は薬剤や治療薬剤の十分な効果を減少させ、血流によって洗い流される薬物または薬剤の量によって生ずるより大きな全身浸透性作用の可能性を増大させる。
【0012】
上記のことを考慮に入れて、体内の目標組織に安全かつ効果的に、治療薬剤を送給することができる、改良したバルーンカテーテルに対する必要性がある。本発明は、今まで満たされていないこの必要性に取り組む解決法を目指す実施形態を含む。
【0013】
本発明の目的および利点を、以下に説明し、またこの説明から明らかであり、ならびに本発明を実施することにより分かるであろう。本発明の他の利点は、本明細書および特許請求の範囲、ならびに添付図面で特別に指摘した方法およびシステムによって実現かつ達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらおよび他の利点を達成するために本発明の目的に従って、本明細書に広義に記載したように、本発明バルーンカテーテルは、基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材を備える。このバルーンカテーテルは、さらに、内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材を備え、この外側シャフト部材は、基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する。バルーンカテーテルは、さらに、内側および外側のシャフト部材間に位置する環状流路と、内側シャフト部材の末端部と外側シャフト部材の末端部との間に延びて存在する(延在する)可撓性薄膜とを備える。この可撓性薄膜は内面および外面を有し、この内面は環状流路と流体連通するよう構成する。バルーンカテーテルのこの内側および外側のシャフト部材は可撓性薄膜を収容するように構成したチャンバを画定する。更に本発明によれば、この可撓性薄膜は可撓性薄膜上に配置した治療薬剤を有する。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、前記外側シャフト部材の基端側に配置したベローズ構成部材を設けることにより、または内側シャフト部材と外側シャフト部材との間に配置した動的シールを設けることにより前記内側シャフト部材に対する前記外側シャフト部材の移動中、前記還状流路の封止環境を維持する。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、このバルーンカテーテルの可撓性薄膜は、少なくとも1個のドライバセグメントおよび送給セグメントを有し、このドライバセグメントは送給セグメントを収容するよう構成したチャンバの少なくとも一部分を画定する。さらに、このドライバセグメントは、送給セグメントとは異なるコンプライアンスを有する材料で構成することができる。このドライバセグメントは送給セメントを構成するのに使用する材料よりもコンプライアンスが大きいまたは小さい材料によって構成することができ、このまたはこれらドライバセグメントは送給セグメントを畳み込むよう機能する。
【0017】
本発明の他の態様によれば、このバルーンカテーテルは、可撓性薄膜は展開前の状態で螺旋形状部を有する構成とする。可撓性薄膜のこのような螺旋形状部は外側シャフト部材を内側シャフト部材に対して回転移動により生ずることができる。
【0018】
本発明は患者の管腔系を治療する手段をも含む。この方法は、本明細書に記載のバルーンカテーテルを準備するステップ、所望展開位置にこのバルーンカテーテルを位置決めするステップ、環状流路に膨張流体を導入するステップ、内側シャフト部材に対して外側シャフト部材を移動させて、可撓性薄膜を展開し、患者の管腔系を治療するステップを含む。本発明の他の態様によれば、患者の管腔系を治療する方法は、可撓性薄膜の初期展開により、完全展開前に患者の管腔システムを少なくとも部分的に閉塞する。本発明の他の一態様においても、可撓性薄膜自体に治療薬剤を配置した可撓性薄膜を有する患者の管腔系を治療する方法を提供する。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、患者の管腔系を治療する方法は、展開および患者の管腔系の処置後に可撓性薄膜を畳み込むステップを有する。このような可撓性薄膜の畳み込みは、環状流路から膨張流体を抜き出すステップ、または内側シャフト部材に対して外側シャフト部材を軸線方向にまたは回転方向相対移動させるステップで行う。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、患者の管腔系を治療する方法は、可撓性薄膜は、可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ内に畳み込む際に再位置決めし、チャンバは、外側シャフト部材および内側シャフト部材によって画定する。
【0021】
添付図面は、本明細書の一部として組み込みかつこの一部をなし、本発明の方法およびシステムをよりよく理解できるようにする。以下の説明とともに、これら図面は本発明の原理を説明するものである。
以下の図面につき、本発明のいくつかの実施形態を示すが、これに限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるバルーンカテーテルの代表的な一実施形態の概略的側面図である。
【図1A】本発明の一実施形態によるカテーテルにおける、末端部における可撓性薄膜の詳細とともに、基端部近傍の動的シールの詳細示す断面図である。
【図1B】本発明によるバルーンカテーテルの他の代表的な実施形態であり、外側シャフト部材に配置したベローズ構成部材を有する実施形態の概略的側面図である。
【図1C】本発明によるバルーンカテーテルの他の代表的実施形態であり、基端部に配置したハブに組み込んだ動的シールを含む実施形態の概略的側面図である。
【図2】図1の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を部分的に展開した状態を示す断面図である。
【図3】図1の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を一層展開した状態を示す断面図である。
【図4】図1の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を完全に展開した状態を示す断面図である。
【図5】本発明による他の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を部分的に展開した状態を示す断面図である。
【図6】図5の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を一層展開した状態を示す断面図を示す。
【図7】柔軟な膜が完全に展開された、図5の実施例形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を完全に展開した状態を示す断面図である。
【図8】本発明による別の実施形態によるバルーンカテーテルの、可撓性薄膜を展開する前の状態を示す断面図である。
【図9】図8の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を部分的に展開した状態を示す断面図である。
【図10】図8の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を完全に展開した状態を示す断面図を示す。
【図11】本発明によるさらに他の実施形態による、可撓性薄膜を有利な形態で取り付けたバルーンカテーテルの末端部における薄膜を展開する前の状態を示す断面図である。
【図12】有利な形態で取り付けた可撓性薄膜を有する、図11の薄膜を展開した後におけるバルーンカテーテルの末端部の状態を示す断面図である。
【図13A】本発明の他の実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を展開する前の状態を示す断面図である。
【図13B】図13Aの実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を展開する過程の状態を示す断面図である。
【図13C】柔軟な膜の展開後における図13Aの実施形態によるバルーンカテーテルの末端部における可撓性薄膜を展開した状態を示す断面図である。
【図14】本発明によるバルーンカテーテルの他の代表的な実施形態であり、可撓性薄膜を展開前にねじった形態とする実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、例示とする添付図面につき本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。本発明方法および対応する方法のステップを、本発明による系の詳細な説明に関連して説明する。
【0024】
本明細書に記載の装置および方法は、患者の内腔系の処置に使用できる。本発明は、とくに、患者の循環系内の特定部位に治療薬剤を送給するような、患者の循環器系の治療に適している。
【0025】
本発明によれば、バルーンカテーテルは、基端部、末端部、これら基端部と末端部との間における長さ部分を持つシャフト部材を設ける。このバルーンカテーテルは、さらに、内側シャフト部材に対して相対移動可能であり、基端部、末端部、およびこれら両端部間における長さ部分を有する外側シャフト部材を有する。このバルーンカテーテルは、さらに、内側シャフト部材と外側シャフト部材との間に位置する環状流路、および内側シャフト部材の末端部と外側シャフト部材の末端部との間に延びて存在する(延在する)可撓性薄膜を有する。この可撓性薄膜は、内面および外面の双方を有し、内面は、環状流路と流体連通するようす構成する。
【0026】
説明および図示の目的として、以下に限定するものではないが、本発明による心臓血管系および他の冠状動脈疾患に使用されるバルーンカテーテルの例示的実施形態を図1A〜図4に示す。本発明によるバルーンカテーテルの、他の特徴、態様、実施形態を、後述のように図5〜図14に示す。代表的な実施形態の使用方法を装置に関連して説明する。
【0027】
説明目的のためで、以下のものに限定しないが、図1A〜1Cに示すように、バルーンカテーテル100は、基端部12、末端部14およびこれら端部間における長さ部分を持つ内側シャフト部材10を有する。このバルーンカテーテル100は、さらに、内側シャフト部材10に対して相対移動可能で、基端部22、末端部24およびこれら端部間における長さ部分を持つ外側シャフト部品20を有する。
【0028】
このバルーンカテーテル100の内側および外側のシャフト部材10,20は、任意の適切な材料、以下のものに限定しないが、例えばナイロン、ウレタン、ポリウレタン、PEEK、PTFE、PVDF、カイナー、PE、HDPE、または種々の適切な濃度のポリウレタン等の、ポリマー材料で構成することができる。さらに代表的な代替案として、内側および外側のシャフト部材10,20は、数種類の異なる材料で形成した、例えば、異なるポリマーを同時押出し成形した複合材、または繊維強化樹脂材料もしくは強化繊維編組材料のような繊維強化複合材料で構成することができる。内側および外側のシャフト部材10,20は、さらに、合金材料および、ベンダーとしてとくに、メリーランド州メッドウェイMicroGroup(登録商標)社から入手可能なステンレス鋼皮下注射用チューブのような金属材料で構成することもできる。
【0029】
内側および外側シャフト部品10,20は、さらに、任意の生体適合性材料で構成することもできると考えられる。このように、バルーンカテーテル100の内側および外側シャフト部材10,20は、上述のポリマー、これらポリマーの組み合わせもしくは混合物、単独材料もしくは他の材料との組み合わせ、または他の生体適合性材料で構成することができる。
【0030】
この内側および外側のシャフト部材10、20は、既知の様々な技術、例えば、以下のものに限定しないが、押出成形、射出形成、吹付け加工、延伸加工、深絞り、重合、架橋結合、溶液浸漬、粉末堆積、焼結、電気的スピニング、溶融スピニング、熱変形、延伸ブロー、化学的融合(グラフティング)またはこれらの技術を、金属編組、コイル、ガラス繊維、炭素繊維および他の有機もしくは無機の繊維、液晶のような補強素子と組み合わせて、ならびにフライス加工、ドリル加工、研削加工などの古典的機械加工で構成することができる。皮下注射チューブのような金属素子を組み込む場合には、種々の金属製造技術を使用することができ、以下に限定しないが、例えば、機械加工、チューブ引き抜き加工、ドドリル加工、EDMミリング、他の変形方法、メッキスパッタリング、電着グラフト、焼結、および堆積e光沢仕上げ加工、を使用できる。さらに、この内側および外側シャフト部材10,20は、ポリプロピレンまたはウレタンから構成することができ、この場合、多数の既知のサプライヤー、例えば米国カリフォルニア州ムリエタのMedical Extrusion Technologies社から入手可能なポリマー材料を押出形成機を用いて押出加工することができ、このポリマー材料は、本明細書に参考として付記する米国特許第6,495,152号に開示されるプロセスによるバイオリアクターで構成することができる。この材料は多くの方法で後処理することができ、例えば以下の方法に限定しないが、押出加工、射出や浸漬のような成形、織成もしくは編組のような織物処理、造形処理で処理できる。適切な造形処理としては、材料の転造および溶接シート、またはチューブ形状への真空造形があり、これらは単に例示に過ぎない。
【0031】
この内側および外側のシャフト部材10,20は、さらに、Abbott Laboratories社による米国特許第6,541,116号、米国特許第6,287,285号、および米国特許出願公開第2002/0009535号(これらを本明細書に参考として付記する)に記載されているような複数の適切な被覆材および被覆技術を含む、複数の材料および要求に応じて硬化を高める技術によって被覆することができる。使用可能な被覆材としては、例えば、米国デラウェア州ウィルミントンのDuPont De Nemours社から入手可能なTeflon(登録商標)のような潤滑性材料および米国カリフォルニア州ヴェンチュラのApplied Silicone社から入手可能な分散型シリコーン潤滑性材料PN4097のような疎水性材料、または、米国フロリダ州メリット島のHydro−Silk社から入手可能な潤滑性被覆がある。
【0032】
内側および外側シャフト部材10,20は、任意の適切な断面形状、例えば楕円形、多角形もしくは角柱形状とすることができるが、一般的には円形断面が好ましい。冠状動脈用バルーンでは、断面は、一般的に約0.01mm〜1.50mmの範囲、好ましくは約0.10mm〜1.20mmの範囲、最も好ましくは約0.25mm〜1.00mmの範囲の寸法とする。冠状動脈ではない医療処置に使用するバルーンは、異なる寸法とし、本発明はこれら処置用途に基づいて変更することができるものと理解されたい。さらに、「ラピッドエクスチェンジ(RX:rapid exchange)」型ガイドワイヤ設計を有するバルーンカテーテル100の場合、バルーンカテーテル100は、約110cm〜400cm、好ましくは約120cm〜350cmの全長を有するものとし、より好ましくはバルーンカテーテル100は、120cm〜310cmの範囲、最も好ましくは約135cmの長さを有するものとする。「オーバー・ザ・ワイヤ(OTW:over the wire)」ガイドワイヤ設計を有するバルーンカテーテル100の場合、バルーンカテーテル100は、約110cm〜400cmの範囲の全長を有し、好ましくは約120cm〜350cmの範囲、より好ましくはバルーンカテーテル100の長さは120cm〜310cmの範囲、最も好ましくは約300cmとする。
【0033】
一般的に、本発明の内側シャフト部材10は、好ましくは内側ルーメン15を有する。いくつかの実施例において、内側ルーメン15はガイドワイヤルーメンとして機能する。従って、バルーンカテーテル100は、ガイドワイヤ110上で所望の位置に前進させることができる。このガイドワイヤルーメン15は、バルーンカテーテル100が、従来技術で既知の伝統的「オーバー・ザ・ワイヤ」型カテーテルのように、内側シャフト部材10の全長にわたり延在することができる。代案として、ガイドワイヤルーメン15は、バルーンカテーテル100が従来技術で既知の「シングルオペレーターエクスチェンジ」「ラピッドエクスチェンジ」のように、シャフト部材10の一部にわたってのみ延在させることができる。さらに、従来技術で既知の「固定ワイヤ」デザインを、本発明に使用することもできる。
【0034】
以下に図2〜4につき説明すると、バルーンカテーテル100の末端部における一部断面とする側面図を示す。図2〜4に示すように、末端部における可撓性のチップ40は内側シャフト部材10の末端部から突出することができる。末端部におけるチップの種々の形態が従来既知であり、また使用されており、どれも一般的に特定の機能を行うことができる。さらに、このチップ40はブラント(非鋭利)チップまたは予形成した曲面を有するチップとし、患者の血管系に傷をつけないでバルーンカテーテルを挿入することができるチップとして機能することができる。このような予成形した曲面は、バルーンカテーテル100を前進させるときにブラントチップは血管/動脈もしくは臓器を破らないことを確実にする。このチップおよび他のチップ設計も従来既知である。
【0035】
本発明の他の態様によれば、外側シャフト部材20および内側シャフト部材10は環状流路25を画定する。特定の実施例において、環状流路25の基端部は図1Bおよび1Cに示した膨張ハブユニットに直接的に封止接続する、または、図1および図1Aに示すように膨張ルーメン14および動的シール32を介して膨張ハブユニット30に直接接続する。図1Aおよび1Cに示すように、この環状流路25の封止環境は可撓性薄膜の膨張中、および外側シャフト部材20および内側シャフト部材10との間に配置した動的シール32の存在により内側シャフト部材10に対する外側シャフト部材20の相対移動中に維持される。特定の実施例において、この動的シール32は膨張ハブユニット30の基端部側に配置することができるが、他の実施例では膨張ハブユニット30の末端側に配置することができる。本発明の他の実施形態によれば、この環状流路25の封止環境は図1Bに示すように外側シャフト部品20の基端部22におけるベローズ構成部材34の存在によって維持する。
【0036】
本明細書で使用する、用語「可撓性薄膜」は、環状流路25に液体を導入する際に変形できるバルーンカテーテル100の部分を示す。この可撓性薄膜は、本明細書では参照符号50で示し、これは非コンプライアント特性、コンプライアント特性を示す方式、またはこれら特性の任意の組み合わせとして構成することができる。この可撓性薄膜50は、任意の多様な既知かつ適切な材料で形成することができ、バルーンカテーテル100の意図した目的に基づいて選択する。さらに、必要であれば、可撓性薄膜50は、以下に詳述するように展開され得る、一般的に可撓性の構成が容易となるようにほぼ可撓性のないセグメントに形成することができる。この可撓性薄膜50は、一般的に、基端部、中間部分、末端部を有する。この基端部および末端部は、取り付け部分として機能し、可撓性薄膜50を外側シャフト部材20の内面または外面に、また内側シャフト部材10の外面に取り付けることができ、これによりバルーンカテーテル100の環状流路を画定する。基端部および末端部を内側および外側のシャフト部材10,20に取り付けた状態で、環状流路25は可撓性薄膜50に対して封止流体連通する。
【0037】
本発明の特別な実施形態によれば、可撓性薄膜50は、可撓性薄膜50の後退および/またはバルーンカテーテル100の抜き出しを容易にする形態で内側および外側のシャフト部材10,20を取り付ける。例えば、好ましい実施形態において、可撓性薄膜50の外面を外側シャフト部材20の内面および内側シャフト部材10の外面に取り付け、図11および12に示すように、肩部を形成する。可撓性薄膜50の展開に適した他の構成にすることもできる。
【0038】
内側および外側のシャフト部材10,20に対する可撓性薄膜50の取り付けは、接着剤、溶着ボンド(例えば、熱的もしくは化学的な溶着ボンド)、金属リングのスウェージングまたは他の既知の接着方法もしくはそれらの組み合わせによって行うことができる。随意に、バンド、例えば放射線不透過性のマーカーバンドを使用して、可撓性薄膜50の基端部および/または末端部を内側もしくは外側シャフト部材10,20に取り付ける、または上述の処理の組み合わせを使用できる。他の放射線不透過性マーカーもしくはマーカーバンドは、バルーンカテーテル100の環状流路25内に含まれる、内側もしくは外側シャフト部材10,20の長さ部分ににわたる任意の位置で固定することができる。
【0039】
このマーカーバンドは、好ましくは、X線不透過性を容易にするまたは付与する材料で構成する。これら材料としては、以下のものに限定しないが、白金、白金の合金、金、タングステン、タンタルもしくはこれらの組み合わせ、金属、合金、プラスチック、ポリマー、複合材、これらの組み合わせ、もしくは他の適切なX線不透過性特性を示す材料がある。代案として、バルーンカテーテル100の一部(可撓性薄膜50および/または内側もしくは外側のシャフト部材10,20を含む)を、適切な放射線不透過性材料、例えばバリウム、硫酸塩、次炭酸ビスマス、二酸化チタンまたは放射線不透過性を与えるこれらの組み合わせ、で被覆することができる。
【0040】
この可撓性薄膜50は、一つまたはそれ以上の既知の生体適合性材料、また所要に応じて吸収性生体適合材料から構成することができる。このような材料の一つとしては生合成ポリエステルがあり、この生合成ポリエステルは、組織適合性がありかつ哺乳類に自然に発生する成分分子から構成される。この生合成ポリエステルは可撓性医療デバイスに望ましい特性を示す。例えば、生合成ポリエステルは極めて可撓性があり、そのうえ超高分子量ポリエチレンと同様の引張強さを示す。これらの特徴は、容易にねじれに追従し、高破裂圧力耐性を有する可撓性薄膜50をもたらす。生合成ポリエステルの例としては、上述したもの、および4−ヒドロキシ酪酸塩および3−ヒドロキシ酪酸塩、ならびにポリ−L−ラクチド−CO−グリコリド、ポリ−dL−ラクチド−CO−グリコド、ポリエステルアミド、キトサン、PBTおよびPEGがある。
【0041】
上述したように、バルーンカテーテル100には、少なくとも部分的に治療剤60を装填することができ、またこの装填は一般的に可撓性薄膜50の幾つかの部分で行う。本明細書で使用する用語「治療剤」は、治療的もしくは有用な結果をもたらす任意の化合物、化合物の混合物もしくは化合物から成る物質の合成物を意味する。治療剤60は、以下のものに限定しないが、放射線不透過性色素もしくは粒子のようなポリマー、マーカーとする、または医薬品と治療薬剤を含む薬剤、もしくは無機薬品か有機薬品とすることができる。この医療剤または薬剤は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩およびサリチル酸塩のような非荷電性分子、分子複合体の構成要素、薬理的に容認できる塩類など様々な形態で使用できる。
【0042】
水に不溶性の治療剤または薬剤は、溶質として効果的に働く水溶性誘導体とし、デバイスから放出され、酵素により変換され、体内pHもしくは代謝プロセスで生体活性形態加水分解される。さらに、この薬剤または医療剤の調製は、種々の既知の形態、例えば溶液、分散液、ペースト、細粒剤、顆粒剤、乳剤、懸濁剤および粉末とすることができる。この薬剤または治療剤は、必要に応じて、ポリマーもしくは液体と混合する、または混合しないこともできる。
【0043】
本発明の実施形態において、少なくとも一つの治療薬剤としては、以下のものに限定しないが、抗生増殖性薬物、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗血小板薬、抗凝固剤、抗血小板薬、抗血栓薬、細胞分裂抑制薬、抗アレルギー薬および酸化防止剤の混合物がある。従って、この治療薬剤は、合成物、無機物もしくは有機物の混合物、プロテイン、ペプチド、多糖類および他の糖類、脂質、DNAおよびRNA核酸配列、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、レセプタ−リガンド、酵素、接着ペプチド、ストレプトキナーゼを含む血栓因子および組織プラスミノゲン活性因子、抗原、ホルモン、成長因子、リボザイム、レトロウイルスベクター、ラパマイシン(シロリムス)を含む抗増殖剤、 40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルラパマイシン、40−O−テトラゾ−ルラパマイシン(ゾタロリムス,ABT−578)、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩およびマイトマイシン、抗血小板剤の混合物、抗凝固剤、抗血小板剤、ナトリウムヘパリンを含む抗トロンビン剤、低分子ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、vapriprost、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa(血小板膜受容体アンタゴニスト抗体)、組換え型ヒルジン、Angiomax(登録商標)を含むトロンビン阻害薬、ニフェジピンを含むチャンネルブロッカー、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子抑制剤(FGF:fibroblast growth factor)、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、単一クローン抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテーゼ抑制剤、トリアゾロトリアジン、酸化窒素もしくは酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ類似体、エストラジオール、抗がん剤、ビタミン含有ダイエットサプリメント、アスピリンを含む抗炎症剤、タクロリムス、デキサメタゾンおよびクロベタゾール、アンギオぺプチンを含む細胞増殖抑制剤、カプトプリル、シラザプリルもしくはリシノプリルを含むアンギオテンシン変換酵素抑制剤、パーミロラストカリウム、アルファインターフェロン、生物活性RGDおよび一般的に設計された上皮細胞を含む抗アレルギー剤がある。近年利用可能もしくは将来開発され得る移植可能な医療機器と共に使用される他の治療薬剤は、同じように使用可能かつ本発明の範囲内である。
【0044】
抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板因子および血栓溶解剤の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子ヘパリン、ヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、vapriprost、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa(血小板膜受容体アンタゴニスト抗体)、組換え型ヒルジン、およびマサチューセッツ州ケンブリッジのBiogen社のAngiomax(登録商標)のトロンビン阻害薬、ウロキナーゼの様な血栓溶解因子の例として、イリノイ州ノースシカゴのAbbott Aboratories社のAbbokinase(登録商標)などの血栓溶解剤、Abbott Aboratories社の組換え型ウロキナーゼおよびプロウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(カリフォルニア州南サンフランシスコのGenetech社のAlteplase(登録商標)およびテネクテプラーゼ(TNK−tPA)がある。
【0045】
細胞増殖抑制剤もしくは抗増殖剤としては、ランパマイシンおよびエベロリムス、ABT−578の様な類似体、すなわち3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15,E17E,719,21S,23S,26R,27R,34aS) −9,10,12,13,14,2−1,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9、27− ジヒドロキシ−3− [(IR)−2−[(−IS,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−−1−yl)シクロヘキシル] −1−メチルエチル]−10,21−ジメト−ホクシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3−ピリド[2,1B][1,4]オキサアザシク− lohentriacontine− 1,5,11,28,29 (4H, 6H, 31H) −ペンタエチル;23 , 27−エポキシ−3Hピリド[2,1B][1,4] oxaazacyclohentria−contine−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントーネ(米国特許第6,015,815号、同第6,329,386号および米国特許公開第2003/129215、同第2002/123505号に開示され、これら文献を本明細書に参考として付記する)、タクロリムスおよびピメクロリムス、アンギオペプチン、例えばコネチカット州スタムフォードBristol−Myers Squibb社のCapotenおよびCapozideのカプトプリルのようなアンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば ニュージャー州ホワイトハウスステーションMerck & Co社によるPrinivilおよびPrinzideシラザプリルやリシノプリル;ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフロペラジン、ジルチアゼムおよびベラパミルのようなカルシウムチャンネルブロッカー、線維芽細胞増殖抑制剤、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、例えばニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク社のMevacor(登録商標)などのロバスタチンがある。さらに、エトポシドおよびトポテカンのようなトポイソメラーゼ抑制剤、同様にタモキシフェンのような抗エストロゲン剤を使用できる。
【0046】
抗炎症剤の例としては、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンおよびヒドロコルチゾンのようなコルヒチンおよびグルココルチコイドを含む。非ステロイド性抗炎症剤はフルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェのプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラック、メクロフェナム酸、ピロキシカムおよびフェニルブタゾンがある。
【0047】
抗悪性腫瘍剤の例としては、アルトレタミン、ベンダムスチン、カルボプラチン、カルマスティン、シスプラチン、シクロホスファミド、ホテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチン、およびtreosulfinなどのアルキル化剤、ビンクリスチン、ビンブラスチン、例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社のTAXOL(登録商標)などのパクリタキセル、独国フランクフォートのアベンティスSA社のTaxotere(登録商標)などのドセタキセル、メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリン、およびフルオロウラシルなどの代謝拮抗剤、例えばニュージャージー州ピーパックのファルマシアアンドアップジョン社のAdriamycin(登録商標)などの塩酸ドキソルビシンなどの抗生物質、例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社のMutamycin(登録商標)などのマイトマイシン、およびエストラジオールなどの内皮細胞の修復を促進する薬剤といった細胞分裂抑制薬がある。
【0048】
他の治療剤および材料を、本発明により患者の人体内に送給することができる。例えば、血管新生因子を送給することができる。これには、血管内皮細胞成長因子のイソフォーム(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えばβ−FGF)、Del1、低酸素誘発因子(HIF1α)、モノサイト遊走蛋白(MCP−I)、血小板誘導成長因子(PDGF)、ニコチン、インスリン様成長因子(HGF)、エストロゲン、フォリスタチン、プロリフェリン、プロスタグランジンE1およびE2、腫瘍壊死因子(TNF−α)、インターロイキン8(11−8)、造血成長因子(G−CSF)および血小板由来成長因子のような成長因子がある。いくつかの実施例において、血管形成促進因子としては、以下のものに限定しないが、PR39、PRI1およびアンギオゲニンのようなペプチド、PDH阻害剤のような小分子もしくはeNOS促進剤のような他の薬剤がある。
【0049】
上述の治療薬剤が予防的かつ治療的特性で知られているが、これら物質また薬剤は例示的なものであり、これらに限定することを意図しない。さらに、一般的に使用可能または開発され得る他の治療薬剤も、同様に本発明に使用できる。
【0050】
所要に応じ、または必要であれば、治療薬剤は、適切なポリマーもしくは同様の搬送体(キャリヤ)に限定しないが、薬剤を運び、装填し、または持続的に放出する結合剤(バインダ)がある。用語「ポリマー」は、自然または合成に関わらず、単一ポリマー、共重合体、三量体などの重合反応の産物を含み、無秩序、交差、ブロック、グラフト、枝、交差結合、混合、混合物の合成品およびこれらのバリエーションを含む。このポリマーは真溶液、飽和溶液、もしくは粒子が懸濁しているか治療薬剤が過飽和し得る。このポリマーは生体適合性、生体溶解性、生体安定性もしくは生体分解性を有し得る。
【0051】
説明目的であり、限定するものではないが、重合(ポリマー)材料としては、ポリ(MPCw:LMAx:HPMAy:TSMAz)のような高分子含有ホスホリルコリン類などのホスホリルコリン架橋高分子があるが、このMPCは2−メタクリオイロキシエチルホスホリルコリンであり、LMAはラウリルメタクリレートであり、HPMAはヒドロキシプロピルメタクリレートであり、TSMAはトリメトキシシリルプロピルメタクリレートであり、w,x,yおよびzはモノマーの分子比率である。これらの値は典型的に各23,47,25および5であるが、必ずしもポリマー末端にその比率で存在する訳ではない。このポリマーは本明細書ではたいてい「PCポリマー」を意味する。
【0052】
この治療薬剤は液剤を含み得る。この液剤はどんな単一溶剤もしくは溶剤の組み合わせも可能である。説明目的として、以下のものに限定しないが、適切な溶媒の例としては、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、アセテートおよびこれらの組み合わせがある。好ましくは、この溶剤は、エタノールである。さらに好ましくは、この溶剤はイソブタノールである。加えて、本発明の別の一態様において、複数の治療薬剤を同一の溶剤内に溶解もしくは分散させることができる。説明目的のためで、以下のものに限定しないが、デキサメタゾン、エストラジオールおよびパクリタキセルをイソブタノールに溶解す。代案として、デキサメタゾン、エストラジオールおよびパクリタキセルをエタノールに溶解する。他の一実施形態において、デキサメタゾン、エストラジオール、およびABT−578、すなわちラパマイシン類似体すなわち3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15,E17E,719,21S,23S,26R,27R,34aS) −9,10,12,13,14,2−1,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34aヘキサデカヒドロ−9、27− ジヒドロキシ−3− [(IR)−2−[(−IS,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−−1−yl)シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメト−ホクシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3−ピリド[2,1B][1,4]オキサアザシク− lohentriacontine− 1,5,11,28,29 (4H,6H, 31H) −ペンタエチル;23,27−エポキシ−3Hピリド[2,1B][1,4] oxaazacyclohentria−contine−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントーネを一溶液中に溶解させることができる。好ましくは、この溶剤はエタノールである。さらに好ましくは、この溶剤はイソブタノールである。
【0053】
加えて、この治療薬剤には、上述の任意の薬剤、治療剤、ポリマーおよび液剤を単独でまたは混合して含有させることができる。
【0054】
このような治療薬剤をこの可撓性薄膜に塗布できる、好ましくは本発明に適合する任意な多数の従来技術をも可撓性薄膜の外面使用することで、膨張時に外部環境に対して治療薬剤を提供することができる。例えば、薬剤を表面に塗布する複数の技術が、Abbot Laboratories社が所有する様々な特許出願で議論されている。この治療薬剤は、患者の標的部位の組織に治療効果を誘起するために使用される。この治療薬剤の含有物は医療的もしくは治療的の効果を、可撓性薄膜と接触する組織に与える機会をつくる。この治療効果は、バルーンカテーテル上に装填する特定の治療薬剤によって変化させることができる。さらに、この治療薬剤は可撓性薄膜の実質的な接触によりバルーンカテーテルから患者の目標組織部位に送給し、一般的に目標組織部位に残留して目標組織に浸透するであろう。
【0055】
治療薬剤に加え、バルーンカテーテルは、少なくとも部分的に、塩または糖類の化合物を装填することもできる。可撓性薄膜の展開中に、塩か糖類の化合物は治療薬剤より先にまたは同時に目標組織に送給することができる。目標組織上に送給されるとき、この化合物は組織細胞から液体を補給される。液体補給は細胞間に存在する隙間のサイズを増加させ、それにより治療薬剤をチャネルに遊走させる。治療薬剤送給経路を容易にするため、より深く目標部位に浸透できる。この方法で、多量の治療薬剤を、意図した治療効果を得るために送給することができる。
【0056】
本発明の他の一実施形態によれば、この治療剤は、一般的に可撓性薄膜の外面を被覆するように調製する、または治療薬剤の有効量がバルーンカテーテルに沿って流れる体液流で洗い流されないよう物理的に配置する。このような調製物を形成する技術は従来既知であり、例えば被覆上に水溶性フィルムをオーバーレイし、このようなフィルムには、加熱または膨張するまで治療剤被覆の送給を抑止する成分を含ませることによって、フィルムで被覆された治療剤をゆっくりと放出できるようにする。代案として、上述のように、治療剤をヒドロゲルに組み込み、このヒドロゲルによって可撓性薄膜の展開前に体液の存在により治療剤の喪失を抑止することができる。
【0057】
本発明の他の態様によれば、この治療薬剤60は、治療薬剤60の有効量がバルーンカテーテル100と接触する体液の存在によって喪失しないように物理的に配置することができる。可撓性薄膜50上に治療薬剤60を物理的に配置する技術は従来既知である。このような技術としては、以下のものに限定しないが、可撓性薄膜50におけるチャネルまたは小孔内に治療薬剤を配置することがあり、これにより、膨張しない形態ではこれらチャンネルは外部環境にアクセスできないが、膨張時にはチャネルまたは小孔が拡張し治療薬剤60が外部環境に露出する。本発明の他の実施形態においては、治療薬剤60を可撓性薄膜50に取り付けたマイクロカプセル内に収納し、この治療薬剤60を可撓性薄膜50の膨張によってマイクロカプセルから放出する。
【0058】
本発明の他の一態様によれば、バルーンカテーテル100に沿って流れる体液の存在によって治療薬剤60が喪失するのを、図2に示すように、可撓性薄膜50自体をほぼ軸線方向に巻き込むことで抑止する。このような実施形態において、この巻き込み形態は、可撓性薄膜50を外側シャフト20部材および内側シャフト部材で画定されるチャンバ内に維持することにより、装置の送り込み中に、可撓性薄膜50が血流に接触するのを隔絶する。
【0059】
バルーンカテーテル100を患者の血管内に適切に配置した後、可撓性薄膜50を巻き込み解除または展開することができ、この巻き込み解除または展開は、環状流路25内に膨張流体の導入し、また内側シャフト部材10に対して外側シャフト部材20の末端部24を基端方向に後退させることにより行う。このような後退は、環状流路25を維持しつつ行うことができ、この流路維持は、図1Aに示すように内側シャフト部材10と外側シャフト部材20との間における動的シール32の存在によって、図1Bに示すように外側シャフト部材20に沿って配置したベローズ構成部材34によって、または図1Cに示すように内側シャフト部材10と外側シャフト部材20の基端部22に位置する膨張ハブユニット30との間における動的シール36の存在によって、行う。外側シャフト部材20の後退の際に、可撓性薄膜50の外面は部分的に周囲環境に露出する。この部分的な露出を図2に示す。外側シャフト部材20を完全に後退させることで図3に示すように、可撓性薄膜50の外面を完全に露出する。
【0060】
後退した際、または後退中に、流体を環状流路25に導入して可撓性薄膜50を膨張および拡張し、これにより可撓性薄膜50の末端表面が血管壁に接触させることができる。環状流路25への流体導入に応答する可撓性薄膜50の拡張を図4に示す。特定実施形態においては、外側シャフト部材20の後退中の流体導入は、部分的に拡張した可撓性薄膜50によって目標血管を閉塞するのに十分であり、その後完全な拡張および治療を行うことができる。
【0061】
他の実施形態において、環状流路25への流体の導入自体は、内側シャフト部材10に対する外側シャフト部材20の後退を促進するに十分であり、また可撓性薄膜50を膨張させる。このような実施形態を図5〜7に示し、可撓性薄膜50は優先的に拘束されない方向に拡張し、この拡張により可撓性薄膜50が外側シャフト部材20の基端側に荷重を発生する。当業者には理解されるように、後退方法および環状流路25への流体導入の広範囲にわたる種々の組み合わせは本発明の範囲に含まれ、外側シャフト部材20の後退および可撓性薄膜50の膨張に影響する。
【0062】
他の実施形態において、バルーンカテーテル100は、一般的に展開前に環状流路25内に含まれる可撓性薄膜50を有するものとし、これにより可撓性薄膜50を末端方向にほどくことで末端方向に展開する。図13Aに示すように、環状流路25に流体を導入するとき、可撓性薄膜50は加圧され、また環状流路内で前方に押し出される。この前方押し出しは、図13Bに示すように、可撓性薄膜50をほどく。可撓性薄膜50が完全に露出した後、図13Cに示すように、血管壁に対して拡張する。
【0063】
展開後に血流内での治療薬剤60の喪失を防ぐ場合、内側シャフト部材10および外側シャフト部材20によって画定される環状流路25内の可撓性薄膜50を回収することが望ましい。図1Cに示すように、回収は外側シャフト部材20を引っ張るまたは引張荷重を加えることで行うことができる。例えば、本発明の一実施形態において、この回収は内側シャフト部材10の基端部12を回収素子として使用することにより行う。内側シャフト部材10に引張荷重を加えることで、内側シャフト部材10の末端部14が、可撓性薄膜50を体液流から保護される環状流路25内に巻き戻す。この回収プロセスを図12に示す。
【0064】
他の一実施形態において、内側シャフト部材10の基端部12にアクセスできない場合、内側シャフト部材10の内部ルーメン15に一体構成としない回収素子を設けることができる。例えば、このことは、内側シャフト部材10に関連する素子を取り付けることによって行うことができ、この素子により、取り付けポイントの基端側の長さ部分にわたり内側シャフト部材10に圧縮荷重を加える。このような素子の例としては、縫合糸、ワイヤ、テンドンおよびロッドがあり、これら全ては内側シャフト部材の末端部に連結することができる。この素子に対して引張荷重を加えることにより、圧縮荷重を内側シャフト部材10に伝達し、これにより環状流路25内に可撓性薄膜50を後退させる。
【0065】
この可撓性薄膜50の後退は、図11に示すような可撓性薄膜50の基端部および末端部の構成で助長される。このように構成される場合、内側シャフト部材10に荷重を加えて可撓性薄膜50を回収するとき、この可撓性薄膜50の末端部が湾曲する、また形状記憶を付与し、これにより、回収を阻害する塊もしくは折れ曲がりを生ずることなく環状流路25内に優先して後退できるようにする。
【0066】
他の一実施形態において、バルーンカテーテル100に沿って流れる体液の存在による治療薬剤60の喪失は、セグメント化構造を有する可撓性薄膜50を設けることで抑止することができる。図8に示すように、このような実施例としては、可撓性薄膜を3つのセグメント、すなわち、この基端側ドライバ52、末端側ドライバ54および中間送給セグメント56により構成する実施例があるが、より少ないは多いセグメントを有する他の実施例も、本発明の範囲内であると考えらえられる。典型的一実施形態において、基端側および末端側のドライバセグメント52,54は中間送給セグメントを周囲環境から保護するように構成し、可撓性薄膜の中間送給セグメント56のみ治療薬剤60で被覆する。特定の実施形態において、好ましくは基端側および末端側ドライバセグメント52,54よりも可撓性に富むまたは少ない材料で構成した中間送給セグメント56を設けることができる。
【0067】
環状流路25に流体を導入するとき、基端側および末端側のドライバセグメント52,54は拡張し、お互いに離れる。この乖離は、上述のように、内側および外側のシャフト部材10,20の軸線方向変位により助長され、また基端側および末端側におけるドライバセグメント52,54と中間送給セグメント56とが互いに異なるコンプライアンスを有する結果として生ずるようにすることができる。このような分離を図9に示す。
【0068】
基端側および末端側のドライバセグメント52,54が離れることで、中間送給セグメント56を周囲環境に露出する。この拘束されない中間送給セグメント56は次に血管壁に対して拡張できるようになる。一層膨張する際に、基端側および末端側ドライバセグメント52,54および中間送給セグメント56は完全に拡張し、治療薬剤を被覆した中間送給セグメント56の表面を血管壁に接触させる。
【0069】
他の実施形態において、基端側および/または末端側のドライバセグメント52,54は優先的に一つまたはそれ以上の箇所で拡張して血管を閉塞するよう設計することができ、これにより中間送給セグメント56が完全な膨張する前に体液がこの中間送給セグメントに接触するのを抑止する。このような実施形態において、基端側ドライバ52がまず拡張し、これにより血管壁の基端側を閉塞し、この装置の展開中に中間送給セグメント56に体液流が接触するのを阻止する。
【0070】
セグメント化した可撓性薄膜50の展開後に治療薬剤が血流内に喪失するのを防ぐ場合、中間送給セグメント56が畳まれ込まれた後のみに基端側および/または末端側のドライバセグメント52,54が畳まれ込まれ、展開前の配置状態に戻るように基端側および/または末端側ドライバセグメント52,54を形成するのが望ましい。
【0071】
他の一実施形態において、図14に示すように、バルーンカテーテル100に接触する体液の存在による治療薬剤60の喪失は、可撓性薄膜50に沿って螺旋形状部58を導入することで抑止することができる。これら螺旋形状部58は、内側および外側のシャフト部材10,20を互いに回転するよう移動可能に構成することにより導入できる。可撓性薄膜50は内側および外側シャフト部材10,20の双方に結合しているため、これらシャフト部材の相対回転により可撓性薄膜50の表面に一連の螺旋形状部58を生じ、可撓性薄膜50には外部環境および体液流がアクセスできない部分を生ずる。このような部分は周囲環境に露出せず、この部分内に配置されるいかなる治療薬剤60をも血流から保護する。バルーンカテーテル100を適正に位置決めした際に、内側および外側シャフト部材10,20を逆方向に回転して、螺旋形状部58を解消し、また可撓性薄膜50を膨張させて治療薬剤60を治療部位に送給できるようにする。
【0072】
本発明の他の一態様によれば、螺旋形状部58を解消した可撓性薄膜50の展開後に治療薬剤60が血流内に喪失するのを防止する場合、内側および外側シャフト部材10,12を相対回転することで可撓性薄膜50を畳み込んで螺旋形状部58の再導入が可能となる。この再導入は、バルーンカテーテル100の抜き出し中または再位置決め中に、螺旋形状部58に配置した治療薬剤60が血流に接触するのを効果的に阻止する。
【0073】
上述の実施形態から、本発明は「普遍的」に使用し得るバルーンカテーテルを開示していると認識されるであろう。とくに、展開する可撓性薄膜の長さに基づいて、バルーンカテーテルを使用して種々の疾患部長さまたは治療部位を処置することができる。この施術者は、上述のように、カテーテルシャフト部材の相対移動により展開する長さを制御できる。このようなシステムは、使用者が単独長さのものをストックしておくだけでよくなることのみならず、最初に患者に導入したときよりもより長いまたはより短い可撓性薄膜が必要になるとき、使用者が装置交換する必要性を減らすこともできる。
【0074】
本発明の他の一態様によれば、また本発明の特定の態様に関して上述したように、患者の内腔系を治療する方法を提供する。本発明方法は、本明細書に記載のように、バルーンカテーテルを準備するステップと、所要位置へのバルーンカテーテルの位置決めするステップと、環状流路への膨張流体導入するステップと、および内側シャフト部材に対して外側シャフト部材を移動させ、可撓性薄膜を膨張状態に展開して患者の内腔系を治療するステップとを有する。上述のように、このバルーンカテーテルは、多数の異なる形態とすることができ、本発明の方法はこの特許請求の範囲内におけるこのような任意の方法も想定し得る。
【0075】
本発明方法の他の態様によれば、このバルーンカテーテルは、本体の畳み込みおよび抜き出しを容易にする特性を有する。例えば、本発明方法は、以下のものに限定しないが、環状流路からの膨張流体を抜き出すステップ、および内側および外側のシャフト部材の相対移動により可撓性薄膜の畳み込むステップを有する。このような一実施形態において、本発明方法は、バルーンカテーテルを患者から引き出すとき、可撓性薄膜を緊張状態にしかつ内腔構造に引っ掛かりにくいように内側シャフト部材の末端部を越えて外側シャフト部材の末端部を軸線方向に移動させるステップを有する。他の一実施形態において、内側シャフト部材の末端部を外側シャフト部材の末端部に対して軸線方向に相対移動させて、内側シャフト部材の末端部を外側シャフト部材の末端部を超えて突出させ、また可撓性薄膜を緊張状態にし、患者からバルーンカテーテルを引き出すとき内腔構造に引っ掛かりにくいようにする。他の実施形態において、本発明方法は、上述のようなバルーンカテーテルの他の構造を使用し、例えば、内側および外側シャフト部材によって画定されて、可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ構造を使用し、可撓性薄膜を畳み込み、またバルーンカテーテルの引き出しを容易にする。本発明の特許請求の範囲内でこのような構造を使用する方法、本明細書に記載した実施形態は、当業者にとっては容易に理解できるであろう。
【0076】
本発明方法およびシステムは、上述のように、また図面に示したように、優れた治療薬剤送給能力および展開後のカテーテル引き出し性能を含む優れた特性を有するバルーンカテーテルを提供する。当業者にとって、発明の要旨もしくは範囲から逸脱することなく本発明の装置および方法において多様な変更および改変が可能である。例えば、本発明は、とりわけ透析グラフトの治療に有効である。従来機器の透析グラフトは、腎疾患の透析時に必要に応じて基本的に患者血管系の動脈側と静脈側とを接続するシースである。これらシースは急速かつ大幅な再狭窄を生ずる傾向があるため、上述した実施形態は、再狭窄抑制剤をグラフトに送給するときに有利であり、またこの送給はより侵襲性が少なく、またグラフトの構造に対してより容易に適合し易いという利点を有する。このように、本発明は、添付した特許請求の範囲内における変更形態および改変形態、ならびに均等物をも包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルにおいて、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有した前記内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側および外側のシャフト部材間に位置する還状流路と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在する可撓性薄膜と
を備え、
前記可撓性薄膜は内面および外面を有し、前記内面は前記還状流路と流体連通するよう構成し、また
前記可撓性薄膜は、前記可撓性薄膜上に配置した治療薬剤を有する構成とした、
バルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、外側シャフト部材を内側シャフト部材に対して軸線方向に移動可能にした、バルーンカテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記外側シャフト部材の基端側に配置したベローズ構成部材を設け、前記内側シャフト部材に対する前記外側シャフト部材の移動中、前記還状流路の封止環境を維持する構成とした、バルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項2に記載のバルーンカテーテルにおいて、動的シールを前記内側シャフト部材と前記外側シャフト部材との間に配置し、前記内側シャフト部材に対する前記外側シャフト部材の移動中、前記環状流路の封止環境を維持する構成とした、バルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記外側シャフト部材および内側シャフト部材は、前記可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバを画定した、バルーンカテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記可撓性薄膜の外面を前記外側シャフト部材の内面に接着し、また前記可撓性薄膜の外面を前記内側シャフト部材の外面に接着した、バルーンカテーテル。
【請求項7】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記外側シャフト部材を前記内側シャフト部材に対して回転できるよう移動可能にした、バルーンカテーテル。
【請求項8】
請求項7に記載のバルーンカテーテルにおいて、動的シールを前記内側シャフト部材と外側シャフト部材と間に配置し、内側シャフト部材に対する外側シャフト部材の移動中に環状流路の封止環境を維持する、バルーンカテーテル。
【請求項9】
請求項7のバルーンカテーテルにおいて、可撓性薄膜は、展開前の状態で螺旋形状部を有するものとした、バルーンカテーテル。
【請求項10】
内部シャフト部品に対して使用される回収要素を含む、請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記内側シャフト部材に取り付けた回収素子を有する構成とした、バルーンカテーテル。
【請求項11】
バルーンカテーテルにおいて、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有し、前記内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側および外側のシャフト部材間に位置する還状流路と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在する可撓性薄膜と
を備え、
前記可撓性薄膜は内面および外面を有し、前記内面は前記環状流路と流体連通するよう構成し、また
前記可撓性薄膜は、少なくとも1個のドライバセグメントおよび送給セグメントを有し、前記ドライバセグメントは前記送給セグメントを収容するよう構成したチャンバの少なくとも一部分を画定し、また前記ドライバセグメントは、前記送給セグメントとは異なるコンプライアンス特性を有する材料で構成した、バルーンカテーテル。
【請求項12】
請求項11に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記可撓性薄膜は、基端側ドライバセグメント、末端側ドライバセグメント、およびこれらドライバセグメント間における送給セグメントを有するものとした、バルーンカテーテル。
【請求項13】
請求項12に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記基端側ドライバセグメントおよび前記末端側ドライバセグメントは、前記送給セグメントを畳み込み、前記送給セグメントを収容するよう構成したチャンバを画定する、バルーンカテーテル。
【請求項14】
患者の管腔系を治療する方法において、
バルーンカテーテルであって、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有し、前記内側および外側のシャフト部材間に位置する環状流路を有して前記内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在して、内面および外面を有する可撓性薄膜であって、前記内面が前記環状流路と流体連通する、該可撓性薄膜と、
前記可撓性薄膜上に配置した治療薬剤と
を備えた、該バルーンカテーテルを準備するステップと、
前記バルーンカテーテルを所望の展開部位に位置決めするステップと、
前記外側シャフト部材を前記内側シャフト部材に対して相対移動させるステップと、
前記環状流路への膨張流体導入を、前記相対移動と同時にまたは順次に行い、患者の管腔系を治療するよう前記可撓性薄膜を拡張状態に展開させるステップと、
を有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記可撓性薄膜の初期展開により、完全展開前に患者の管腔システムを少なくとも部分的に閉塞する、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、展開前の状態で螺旋形状部を有し、また展開は前記内側シャフト部材に対して前記外側シャフト部材を回転移動させることで行う、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、展開および患者の管腔系の治療後に畳み込むものとした、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記環状流路から膨張流体を抜き出すことにより畳み込む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記内側シャフト部材に対して前記外側シャフト部材を軸線方向に移動させることにより畳み込む、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ内に畳み込む際に再位置決めし、前記チャンバは、前記外側シャフト部材および前記内側シャフト部材によって画定する、方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、前記再位置決めは、前記内側シャフト部材に取り付けた回収素子に引張荷重を加えることに行う、方法。
【請求項22】
患者の管腔系を治療する方法において、
バルーンカテーテルであって、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有し、前記内側シャフト部分に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側および外側のシャフト部材間に位置する環状流路と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在し、また内面および外面を有する可撓性薄膜であって、前記内面は、前記環状流路と流体連通する、該可撓性薄膜と
を備え、
前記可撓性薄膜は、少なくとも1個のドライバセグメントおよび送給セグメントを有し、前記ドライバセグメントは、前記送給セグメントを収容するよう構成したチャンバの少なくとも一部分を画定し、また
前記ドライバセグメントは前記送給セグメントと異なるコンプライアンスを有する材料で構成した、
該バルーンカテーテルを準備するステップと、
前記バルーンカテーテルを所望の展開部位に位置決めするステップと、
前記外側シャフト部材を前記内側シャフト部材に対して相対移動させるステップと、
前記環状流路への膨張流体導入を、前記相対移動同時にまたは順次に行い、患者の管腔系を治療するよう前記可撓性薄膜を拡張状態に展開させるステップと
を有する方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記可撓性薄膜の初期展開により、完全展開前に患者の管腔システムを少なくとも部分的に閉塞する、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、展開および患者の管腔系の治療後に畳み込むものとした、方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ内に畳み込む際に再位置決めし、前記チャンバは、前記外側シャフト部材および前記内側シャフト部材によって画定する、方法。
【請求項1】
バルーンカテーテルにおいて、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有した前記内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側および外側のシャフト部材間に位置する還状流路と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在する可撓性薄膜と
を備え、
前記可撓性薄膜は内面および外面を有し、前記内面は前記還状流路と流体連通するよう構成し、また
前記可撓性薄膜は、前記可撓性薄膜上に配置した治療薬剤を有する構成とした、
バルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、外側シャフト部材を内側シャフト部材に対して軸線方向に移動可能にした、バルーンカテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記外側シャフト部材の基端側に配置したベローズ構成部材を設け、前記内側シャフト部材に対する前記外側シャフト部材の移動中、前記還状流路の封止環境を維持する構成とした、バルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項2に記載のバルーンカテーテルにおいて、動的シールを前記内側シャフト部材と前記外側シャフト部材との間に配置し、前記内側シャフト部材に対する前記外側シャフト部材の移動中、前記環状流路の封止環境を維持する構成とした、バルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記外側シャフト部材および内側シャフト部材は、前記可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバを画定した、バルーンカテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記可撓性薄膜の外面を前記外側シャフト部材の内面に接着し、また前記可撓性薄膜の外面を前記内側シャフト部材の外面に接着した、バルーンカテーテル。
【請求項7】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記外側シャフト部材を前記内側シャフト部材に対して回転できるよう移動可能にした、バルーンカテーテル。
【請求項8】
請求項7に記載のバルーンカテーテルにおいて、動的シールを前記内側シャフト部材と外側シャフト部材と間に配置し、内側シャフト部材に対する外側シャフト部材の移動中に環状流路の封止環境を維持する、バルーンカテーテル。
【請求項9】
請求項7のバルーンカテーテルにおいて、可撓性薄膜は、展開前の状態で螺旋形状部を有するものとした、バルーンカテーテル。
【請求項10】
内部シャフト部品に対して使用される回収要素を含む、請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記内側シャフト部材に取り付けた回収素子を有する構成とした、バルーンカテーテル。
【請求項11】
バルーンカテーテルにおいて、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有し、前記内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側および外側のシャフト部材間に位置する還状流路と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在する可撓性薄膜と
を備え、
前記可撓性薄膜は内面および外面を有し、前記内面は前記環状流路と流体連通するよう構成し、また
前記可撓性薄膜は、少なくとも1個のドライバセグメントおよび送給セグメントを有し、前記ドライバセグメントは前記送給セグメントを収容するよう構成したチャンバの少なくとも一部分を画定し、また前記ドライバセグメントは、前記送給セグメントとは異なるコンプライアンス特性を有する材料で構成した、バルーンカテーテル。
【請求項12】
請求項11に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記可撓性薄膜は、基端側ドライバセグメント、末端側ドライバセグメント、およびこれらドライバセグメント間における送給セグメントを有するものとした、バルーンカテーテル。
【請求項13】
請求項12に記載のバルーンカテーテルにおいて、前記基端側ドライバセグメントおよび前記末端側ドライバセグメントは、前記送給セグメントを畳み込み、前記送給セグメントを収容するよう構成したチャンバを画定する、バルーンカテーテル。
【請求項14】
患者の管腔系を治療する方法において、
バルーンカテーテルであって、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有し、前記内側および外側のシャフト部材間に位置する環状流路を有して前記内側シャフト部材に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在して、内面および外面を有する可撓性薄膜であって、前記内面が前記環状流路と流体連通する、該可撓性薄膜と、
前記可撓性薄膜上に配置した治療薬剤と
を備えた、該バルーンカテーテルを準備するステップと、
前記バルーンカテーテルを所望の展開部位に位置決めするステップと、
前記外側シャフト部材を前記内側シャフト部材に対して相対移動させるステップと、
前記環状流路への膨張流体導入を、前記相対移動と同時にまたは順次に行い、患者の管腔系を治療するよう前記可撓性薄膜を拡張状態に展開させるステップと、
を有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記可撓性薄膜の初期展開により、完全展開前に患者の管腔システムを少なくとも部分的に閉塞する、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、展開前の状態で螺旋形状部を有し、また展開は前記内側シャフト部材に対して前記外側シャフト部材を回転移動させることで行う、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、展開および患者の管腔系の治療後に畳み込むものとした、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記環状流路から膨張流体を抜き出すことにより畳み込む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記内側シャフト部材に対して前記外側シャフト部材を軸線方向に移動させることにより畳み込む、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ内に畳み込む際に再位置決めし、前記チャンバは、前記外側シャフト部材および前記内側シャフト部材によって画定する、方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、前記再位置決めは、前記内側シャフト部材に取り付けた回収素子に引張荷重を加えることに行う、方法。
【請求項22】
患者の管腔系を治療する方法において、
バルーンカテーテルであって、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有する内側シャフト部材と、
基端部、末端部およびこれら端部間における長さ部分を有し、前記内側シャフト部分に対して移動可能な外側シャフト部材と、
前記内側および外側のシャフト部材間に位置する環状流路と、
前記内側シャフト部材の末端部と前記外側シャフト部材の末端部との間に延在し、また内面および外面を有する可撓性薄膜であって、前記内面は、前記環状流路と流体連通する、該可撓性薄膜と
を備え、
前記可撓性薄膜は、少なくとも1個のドライバセグメントおよび送給セグメントを有し、前記ドライバセグメントは、前記送給セグメントを収容するよう構成したチャンバの少なくとも一部分を画定し、また
前記ドライバセグメントは前記送給セグメントと異なるコンプライアンスを有する材料で構成した、
該バルーンカテーテルを準備するステップと、
前記バルーンカテーテルを所望の展開部位に位置決めするステップと、
前記外側シャフト部材を前記内側シャフト部材に対して相対移動させるステップと、
前記環状流路への膨張流体導入を、前記相対移動同時にまたは順次に行い、患者の管腔系を治療するよう前記可撓性薄膜を拡張状態に展開させるステップと
を有する方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記可撓性薄膜の初期展開により、完全展開前に患者の管腔システムを少なくとも部分的に閉塞する、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、展開および患者の管腔系の治療後に畳み込むものとした、方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法において、前記可撓性薄膜は、前記可撓性薄膜を収容するよう構成したチャンバ内に畳み込む際に再位置決めし、前記チャンバは、前記外側シャフト部材および前記内側シャフト部材によって画定する、方法。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【公表番号】特表2010−533513(P2010−533513A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516281(P2010−516281)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069835
【国際公開番号】WO2009/012163
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507328645)アボット カーディオバスキュラー システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069835
【国際公開番号】WO2009/012163
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507328645)アボット カーディオバスキュラー システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]