説明

薬剤送達装置

本発明は、薬剤を送達するための装置であって、上記装置は、対向する遠位端および近位端を有する概して細長い管状のハウジングを備え、上記管状のハウジングは、第1の係合手段によって互いに解放可能に接続された遠位ハウジング部および近位ハウジング部を備え、上記装置はさらに、薬剤を入れるように配置された上記近位ハウジング部内の容器と、ねじが切られたプランジャロッドと、ねじが切られたプランジャロッドにねじ切り接続された駆動ナットと、遠位ハウジング部の遠位端の外側にアクセス可能な張力ホイールを有する駆動部材とを備え、上記駆動部材は、上記駆動部材と上記駆動ナットとの間に配置されたプランジャハウジングによって駆動ナットに接続され、上記装置はさらに、上記張力ホイールおよび上記駆動部材を回転させたときに張力がかかるように、第1の端部が駆動部材に接続され、第2の端部が遠位ハウジング部上の固定点に接続されるばね力手段と、上記駆動部材を回転させて上記ばね力手段に張力がかかったときに任意の方向のプランジャハウジングの回転ロックを行ない、第4の係合が互いに離れたときに上記回転ロックを解放し、その結果、上記駆動部材、上記プランジャハウジングおよび上記駆動ナットが反対方向に回転させられて、プランジャロッドを軸方向に移動させ、送達部材を通して特定の予め定められた量の薬剤を放出するように容器内の薬剤に対して圧力をかけるための第4の係合手段によって上記プランジャハウジングに解放可能に相互接続された手動操作起動手段とを備え、上記装置はさらに、回転ロックを行なうがガイドナットに対するプランジャロッドの長手方向の移動を可能にするためのプランジャの長手方向溝と協働するガイド突起を備えるガイドナットを備え、上記ガイドナットは、2つのハウジング部を互いに接続させたときに第5の係合手段によって遠位ハウジング部に回転ロックされ、上記装置はさらに、上記駆動手段上に配置された傾斜した楔のような面および遠位ハウジング部の固定された内側環状面上に配置された傾斜した楔のような面を備える圧力解放手段を備え、傾斜した楔のような面は、駆動ナットを回転させたときに予め定められた量の送達の終わり近くで接触しなくなるように互いに当接している、装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力除去機構を有し、かつ、新たな薬剤容器を用いるべきときにプランジャロッドの戻りを可能にすることができる薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
技術背景
薬剤がシリンジ、カートリッジなどの容器に配置される薬剤を送達するための装置が市場には数多く存在し、また特許されており、これらの装置では、薬剤は送達すべきときに圧力に晒される。非常に一般的な構成は、一端にストッパを有し、患者に薬剤を送達できるたとえば針、ノズルなどの部材などの送達部材が反対側の端部に取付けられた、概して管状の区画である。
【0003】
ある量の薬剤を送達するために、ストッパは圧力に晒される。すなわち、ストッパはプランジャロッドによって区画に押し込まれる。これは、単純な手持ち式のシリンジの場合には指で手動でなされることができ、または、自動または半自動注射器において一般的であるばねなどの圧力手段によって手動でなされることができる。
【0004】
多くの場合、ある特定の規定量の薬剤を送達できることが望ましい。これは、たとえば、区画が空になるまで何回かの設定された規定投与量を送達できる複数回投与の注射装置に当てはまる。一例は、注射の前に特定の投与量を設定できる欧州特許出願番号第05104734.8号に開示されている。開示されている注射装置は、特定の投与量を送達するために薬剤に対して圧力をかける、すなわち、プランジャロッド、したがってストッパを容器に押し込むためのばね手段を備える。
【0005】
ある程度弾性のあるストッパとカートリッジの内面との間の摩擦を克服するため、および、おそらくは予め定められた時間内に送達部材の相当小さな通路を通るように液体状の薬剤を押すことができるようにするためにも、ある投与量を送達するにはばね手段からのある一定の力が必要である。ストッパなどの圧力下の構成要素の弾性に起因して、また非ニュートンの場合には薬剤にも起因して、ストッパが予め定められた距離だけ移動して投与量が送達されたときでさえ、支配的な圧力が存在する。これは、粘性が相当に高い薬剤、すなわち弾性特性を有する薬剤を取扱う際に特に顕著である。
【0006】
このタイプの粘性が高い物質では、および、送達部材の非常に小さな通路がしばしば用いられるので、相当大きな力が必要であり、構成要素の弾性のために、圧力が除去されると、送達を行なった後でさえ特定の少量の物質がしばしば送達部材から出てくることになる。すなわち、送達部材からの何らかの液だれが起こる。これは、特に患者を処置する際には望ましくなく、物質が患者の皮膚に滴り落ちて、おそらくは炎症または不都合で好ましくない影響を引起す可能性がある。1つの解決策がWO2008/020023 A1に開示されている。
【0007】
上述のゲル性物質は、一般に、手動で注射される。すなわち、標準的なタイプのシリンジが用いられる。物質を注射するために相当大きな力が必要であるので、また処置には多くの少量の注射が必要であるので、処置中にこのようなシリンジを用いることは操作者にとって厄介である。
【0008】
多くの薬剤送達装置のプランジャロッドは、ねじが切られており、ねじが切られたナットと協働し、それによって、プランジャロッドを前進させるとプランジャロッドまたはナットが回転させられる。使い捨ての薬剤送達装置の場合、この解決策は非常によく機能する。なぜなら、プランジャロッドがその最も前方の位置に移動したとき、薬剤容器は空であり、薬剤送達装置を廃棄できるためである。しかしながら、ある投与量の薬剤を送達するために自動機構を用いる再利用可能な薬剤送達装置の場合、元の位置に戻さなければならないので、ねじが切られたプランジャロッドを用いる際には問題がある。一例がEP0937471 A1に開示されており、このEP0937471 A1は、ねじが切られたプランジャロッドを元の位置に戻すペン注射器を示している。しかしながら、上記ペン注射器は、ある投与量の薬剤を送達するために自動機構を用いていない。
【0009】
この動作は、大半のユーザに歓迎されておらず、どれほどプランジャロッドを戻すべきかについて不確実であり得るという点で装置の誤った取扱いに繋がる可能性もある。さらに、送達機構および送達に関連する機構がプランジャロッドの戻りを可能にしないいくつかの薬剤送達装置が存在する。
【0010】
そこで、本発明によって対処されるいくつかの局面が存在する。
本発明の目的は、注射後の過剰な薬剤の望ましくない放出を最小限にすることである。
【0011】
この目的は、独立特許クレームの特徴によって本発明に従って得られる。
本発明の好ましい実施例は、従属特許クレームの主題を構成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の主要な局面によれば、薬剤を送達するための装置であって、対向する遠位端および近位端を有する概して細長い管状のハウジングを備え、上記管状のハウジングは、第1の係合手段によって互いに解放可能に接続された遠位ハウジング部および近位ハウジング部を備え、上記装置はさらに、薬剤を入れるように配置された上記近位ハウジング部内の容器と、ねじが切られたプランジャロッドと、ねじが切られたプランジャロッドにねじ切り接続された駆動ナットと、遠位ハウジング部の遠位端の外側にアクセス可能な張力ホイールを有する駆動部材とを備え、上記駆動部材は、上記駆動部材と上記駆動ナットとの間に配置されたプランジャハウジングによって駆動ナットに接続され、上記プランジャハウジングおよび上記駆動部材は、上記駆動部材を回転させたときに反対方向の駆動部材の回転ロックを行なうための第2の係合手段によって相互接続され、上記プランジャハウジングおよび上記駆動ナットは、回転ロックを行なうがプランジャハウジングに対する駆動ナットの長手方向の移動を可能にするための第3の係合手段によって相互接続され、上記装置はさらに、上記張力ホイールおよび上記駆動部材を回転させたときに張力がかかるように、第1の端部が駆動部材に接続され、第2の端部が遠位ハウジング部上の固定点に接続されるばね力手段と、上記駆動部材を回転させて上記ばね力手段に張力がかかったときに任意の方向のプランジャハウジングの回転ロックを行ない、第4の係合が互いに離れたときに上記回転ロックを解放し、その結果、上記駆動部材、上記プランジャハウジングおよび上記駆動ナットが反対方向に回転させられて、プランジャロッドを軸方向に移動させ、送達部材を通して特定の予め定められた量の薬剤を放出するように容器内の薬剤に対して圧力をかけるための第4の係合手段によって上記プランジャハウジングに解放可能に相互接続された手動操作起動手段とを備え、上記装置はさらに、回転ロックを行なうがガイドナットに対するプランジャロッドの長手方向の移動を可能にするためのプランジャの長手方向溝と協働するガイド突起を備えるガイドナットを備え、上記ガイドナットは、2つのハウジング部を互いに接続させたときに第5の係合手段によって遠位ハウジング部に回転ロックされ、上記装置はさらに、上記駆動手段上に配置された傾斜した楔のような面および遠位ハウジング部の固定された内側環状面上に配置された傾斜した楔のような面を備える圧力解放手段を備え、傾斜した楔のような面は、駆動ナットを回転させたときに予め定められた量の送達の終わり近くで接触しなくなるように互いに当接している、装置を特徴とする。
【0013】
この発明の一局面によれば、上記第5の係合手段は、元の位置への上記プランジャロッドの戻りが可能になるように、2つのハウジング部を切り離したときにガイドナットが遠位ハウジング部から解放されるように解放可能に配置されることを特徴とする。
【0014】
この発明の別の局面によれば、上記ばね力手段は捻りばねであることを特徴とする。
この発明のさらなる局面によれば、上記駆動部材は、その移動を制限するための阻止突起を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明にはいくつかの利点がある。装置が圧力解放手段を備えているので、過剰な量の薬剤の流出(drooling)または放出の危険性が大幅に減少し、協働する傾斜した楔のような面を用いることによって、協働する面同士が接触しなくなったときに圧力解放が起こる明確な位置および多くの構成要素を必要としない頑強な機構が提供される。圧力解放の大きさは、楔のような面の高さまたは傾きによって調整されてもよい。
【0016】
2つのハウジング部を切り離したときの第5の係合手段の解放によって、プランジャロッドは元の位置に戻ることができ、これは再利用可能な注射装置にとっては利点である。したがって、患者またはユーザが、たとえば2つのハウジング部を切り離すことによって空の薬剤容器を取外して、充填された新たな薬剤容器を装置に入れることが容易かつ簡単であり、それによってプランジャロッドを容易に元の位置に戻すことができる。
【0017】
適切な機能を提供するために、楔のような面の長さは、予め定められた量の薬剤を放出するためのプランジャロッドの移動に対応する。
【0018】
好ましくは、ばね駆動手段は、解放されたときに構成要素に回転運動を与えることができる捻りばねである。ばね駆動手段はさらに、たとえば張力ホイールの回転運動によってばねに張力をかける可能性を与える。過剰にばねを回転させないようにまたは過剰にばねに張力をかけないように、回転運動を制限する阻止突起が設けられる。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の局面ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになる。
【0020】
以下の発明の詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る装置の断面図である。
【図2】図1の装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本願では、「遠位部/遠位端」という用語が用いられる場合、これは、薬剤送達装置の使用下で患者の薬剤送達箇所から最も遠く離れた場所に位置する薬剤送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。対応して、「近位部/近位端」という用語が用いられる場合、これは、薬剤送達装置の使用下で患者の薬剤送達箇所の最も近くに位置する薬剤送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。
【0023】
この発明に係る薬剤を送達するための装置は、
対向する遠位端および近位端を有する概して細長い管状のハウジングを備え、上記管状のハウジングは、第1の係合手段によって互いに解放可能に接続された遠位ハウジング部10および近位ハウジング部8を備え、上記装置はさらに、
薬剤を入れるように配置された上記近位ハウジング部内の容器11と、
ねじが切られたプランジャロッド12と、
ねじが切られたプランジャロッド12にねじ切り接続された駆動ナット20と、
遠位ハウジング部の遠位端の外側にアクセス可能な張力ホイール30を有する駆動部材28とを備え、上記駆動部材は、上記駆動部材と上記駆動ナットとの間に配置されたプランジャハウジング14によって駆動ナットに接続され、上記プランジャハウジングおよび上記駆動部材は、上記駆動部材を回転させたときに反対方向の駆動部材の回転ロックを行なうための第2の係合手段24,26によって相互接続され、上記プランジャハウジングおよび上記駆動ナットは、回転ロックを行なうがプランジャハウジングに対する駆動ナットの長手方向の移動を可能にするための第3の係合手段16,18によって相互接続され、上記装置はさらに、
上記張力ホイールおよび上記駆動部材を回転させたときに張力がかかるように、第1の端部が駆動部材に接続され、第2の端部が遠位ハウジング部上の固定点に接続されるばね力手段32と、
上記駆動部材を回転させて上記ばね力手段に張力がかかったときに任意の方向のプランジャハウジングの回転ロックを行ない、第4の係合が互いに離れたときに上記回転ロックを解放し、その結果、上記駆動部材、上記プランジャハウジングおよび上記駆動ナットが反対方向に回転させられて、プランジャロッドを軸方向に移動させ、送達部材を通して特定の予め定められた量の薬剤を放出するように容器内の薬剤に対して圧力をかけるための第4の係合手段42,40によって上記プランジャハウジングに解放可能に相互接続された手動操作起動手段38とを備え、
上記装置はさらに、
回転ロックを行なうがガイドナットに対するプランジャロッドの長手方向の移動を可能にするためのプランジャの長手方向溝60と協働するガイド突起58を備えるガイドナット56を備え、上記ガイドナットは、2つのハウジング部を互いに接続させたときに第5の係合手段によって遠位ハウジング部に回転ロックされ、上記装置はさらに、
上記駆動手段20上に配置された傾斜した楔のような面50および遠位ハウジング部の固定された内側環状面52上に配置された傾斜した楔のような面54を備える圧力解放手段を備え、傾斜した楔のような面50,54は、駆動ナットを回転させたときに予め定められた量の送達の終わり近くで接触しなくなるように互いに当接している。
【0024】
図1に見られるように、近位ハウジング部8は、薬剤容器11が配置される薬剤容器ホルダ8として配置される。プランジャロッド12は、起動時に送達部材を通してある投与量の薬剤を放出するために上記薬剤容器内でストッパ13に作用するように配置される。送達部材は薬剤容器の一部であり、たとえば薬剤容器がシリンジである場合には針であり、または、近位ハウジング部の近位端に取付けられた解放可能な送達部材、たとえばペン針である。
【0025】
プランジャロッド12は、概して管状の形状を有するプランジャハウジング14内に同軸に配置される。プランジャハウジングの一方の端部は、たとえばスプライン溝16のような第3の係合手段をその外面上に備える(図2)。スプライン溝は、駆動ナット20の内面上のたとえばスプラインリッジ18のような対応する第3の係合手段と噛み合う(図2)。さらに、プランジャハウジング14はリング形状部22を備え、リングの内面は、たとえば横方向阻止突起24のような第2の係合手段を備える(図2)。これらの阻止突起は、駆動部材28のたとえば可撓性アーム26のような対応する第2の係合手段と協働する(図2)。駆動部材28の遠位端は、ハウジングの遠位端を通って突き出ており、そこに、上記駆動部材を回転させるための張力ホイール30が固定して取付けられている。
【0026】
しかしながら、阻止突起24および可撓性アームは、駆動部材28がプランジャハウジングに対して一方の方向に回転するだけでよく、可撓性アーム26が阻止突起24を摺動するように配置される。他方の方向では、可撓性アーム26の端部が阻止突起24と当接し、それによって回転を阻む(図2)。たとえば捻りばね32のようなばね力手段が、駆動部材28の周りに同軸に配置され、第1の端部が駆動部材に接続され、第2の端部が遠位ハウジング部上の固定点に接続される。図に示される例では、固定点は、製造プロセス中に遠位ハウジング部に固定して接続されるかまたは遠位ハウジング部と一体化した管状部34である。駆動部材は、駆動部材の回転を制限するための、遠位ハウジング部に取付けられた対応する阻止突起(図示せず)と協働する阻止突起36をさらに備える(図2)。
【0027】
さらに、たとえば起動ボタン38のような手動操作起動手段は、プランジャハウジング14上のたとえば阻止突起42のような対応する第4の係合手段と協働する、たとえば楔形状の阻止突起40のような第4の係合手段を有するリング形状部を備える(図2)。起動ボタンは、遠位ハウジング部の長手方向面上の貫通孔を通って突き出る横方向部と、横方向部に接続された長手方向に延びる外側部とをさらに備える。さらに、楔形状の阻止突起40とプランジャハウジング14上の阻止突起42とを接触させるように、戻りばね62が起動ボタンのリング形状部と遠位ハウジング部の内面上の環状突起面との間に配置される。
【0028】
駆動ナット20の内面は、プランジャロッド12の外面上のねじ山46と協働するねじ山44をさらに備える。駆動ナット20は、上記突起の周りにいくつかの傾斜した楔形状の面50を有する環状突起48をさらに備え、その機能については後述する。遠位ハウジング部の固定された内側環状面は、対応する傾斜した楔形状の面54を備え、その機能については後述する。
【0029】
プランジャロッド12はさらに、近位ハウジング部を遠位ハウジング部に接続させたときに、ガイドナットおよび遠位ハウジング部の近位端の両方において、たとえば対応するスプラインなどのような第5の係合手段によって遠位ハウジング部に回転ロックされるガイドナット56を貫通して配置される。上記第5の係合手段は、元の位置への上記プランジャロッドの戻りが可能になるように、2つのハウジング部を切り離したときにガイドナットが遠位ハウジング部から解放されるように解放可能に配置される。
【0030】
この装置は、以下のとおりに機能するよう意図されている。薬剤容器11が近位ハウジング部8に配置され、次いで遠位ハウジング部に係合され、それによってガイドナット56が回転ロックされる。
【0031】
ある投与量を送達すべきであるとき、張力ホイール30を回転させ、それによって駆動部材28も回転させる。この回転によって、捻りばね32に張力がかかる。回転中、可撓性アーム26は、次の阻止突起24と接触するまでプランジャハウジング14のリング形状部材22の阻止突起24と接触していない状態である。駆動部材28は、阻止突起24との可撓性アーム26の接触のために、元に戻るように回転できない。
【0032】
さらに、その結果として、起動ボタンの楔形状の阻止突起40がプランジャハウジング14上の阻止突起42と接触するので、プランジャハウジングは回転できない。張力ホイール30は、阻止突起36が対応する阻止突起と接触するまで回転させられる。これによって、確実にユーザが予め設定された位置を越えて張力ホイールを回すことができなくなり、したがって、大量すぎる投与量を設定できなくなる。示される実施例では、張力ホイールは、投与量の設定のために120度回すことができる。このため、可撓性アーム26は、阻止突起24とともに、3個であり、ピッチが120度である。120度のピッチは、駆動ナット20の楔形状の構成要素50およびハウジングの楔形状の構成要素54にも用いられる。投与量の大きさ、ならびに/または、プランジャロッドおよび駆動ナットのねじ山のピッチなどの他の構成要素の構成に応じて、120度以外のピッチを使用できることが理解される。
【0033】
ここで、ユーザは、送達箇所に薬剤送達装置を位置決めし、戻りばね62の力に対抗して起動ボタン38を摺動させることによって薬剤送達装置を手動で起動させる。これによって、起動ボタンの阻止突起40がプランジャハウジングの阻止突起42と接触しなくなる。このとき、駆動部材28はばね32の力によって自由に回転し、可撓性アーム26と阻止突起24との接続のために、プランジャハウジング14も回転し、プランジャハウジング14と駆動ナット20とのスプライン接続のために、後者も回転させられる。
【0034】
プランジャロッド12のねじ山46とねじ切り係合する駆動ナット20の回転のために、および、ガイドナット56とのプランジャロッドの回転ロックのために、プランジャロッドは軸方向に前進させられ、これによって、プランジャロッドがストッパを移動させて、ある投与量の薬剤を放出する。駆動ナット20の回転中、駆動ナット20の傾斜した楔のような面50は遠位ハウジング部10の対応する楔のような面54上を摺動し、これによって、駆動ナット20が近位方向、すなわち図面では左に軸方向に移動し、これは駆動部材28とのスプライン接続によって可能になる。駆動ナットおよびハウジングの楔のような面50,54は、投与の終わり際の移動の直前に楔形状が突然に終了するように設計される。突然の終了によって、駆動ナット20は反対方向、すなわち遠位方向にある程度移動し、それによってプランジャロッド12もその方向に動かされる。このプランジャロッドの移動は、プランジャロッドがストッパ、したがって容器の中の薬剤に対してかけている圧力を効果的に解放する。圧力が除去されるので、送達が行なわれた後の流出が大幅に回避される。突然の終了の動きを増大させるために、装置の遠位端のほうに、したがって環状突起52のほうに駆動ナットを駆り立てることができるばね(図示せず)を駆動ナットとガイドナットとの間に配置することができる。
【0035】
このとき、送達装置は送達箇所から取外すことができる。複数回投与の容器が用いられる場合にはその後の送達のために、用いられる場合には真新しい送達部材が取付けられ、張力ホイールを回転させて、投与量を設定し、ばねに張力をかける。複数回投与の容器が空になったとき、または、一回投与の容器が用いられる場合には、近位ハウジング部が遠位ハウジング部から外されて、薬剤容器が取外される。このときに近位に前進しているプランジャロッドは元の位置に戻されてもよく、これは、ガイドナットがこのとき自由に回転するので可能であり、それによってプランジャロッドも回転させることができる。新たな容器が近位ハウジング部に配置され、その後、後者は再び遠位ハウジング部に接続される。
【0036】
上述のおよび図面に示された実施例は、単に本発明の非限定的な例であるとみなされ、特許請求の範囲の範囲内でさまざまに変更されてもよいことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を送達するための装置であって、
対向する遠位端および近位端を有する概して細長い管状のハウジングを備え、前記管状のハウジングは、第1の係合手段によって互いに解放可能に接続された遠位ハウジング部(10)および近位ハウジング部(8)を備え、前記装置はさらに、
薬剤を入れるように配置された前記近位ハウジング部内の容器(11)と、
ねじが切られたプランジャロッド(12)と、
ねじが切られたプランジャロッド(12)にねじ切り接続された駆動ナット(20)と、
遠位ハウジング部の遠位端の外側にアクセス可能な張力ホイール(30)を有する駆動部材(28)とを備え、前記駆動部材は、前記駆動部材と前記駆動ナットとの間に配置されたプランジャハウジング(14)によって駆動ナットに接続され、前記プランジャハウジングおよび前記駆動部材は、前記駆動部材を回転させたときに反対方向の駆動部材の回転ロックを行なうための第2の係合手段(24,26)によって相互接続され、前記プランジャハウジングおよび前記駆動ナットは、回転ロックを行なうがプランジャハウジングに対する駆動ナットの長手方向の移動を可能にするための第3の係合手段(16,18)によって相互接続され、前記装置はさらに、
前記張力ホイールおよび前記駆動部材を回転させたときに張力がかかるように、第1の端部が駆動部材に接続され、第2の端部が遠位ハウジング部上の固定点に接続されるばね力手段(32)と、
前記駆動部材を回転させて前記ばね力手段に張力がかかったときに任意の方向のプランジャハウジングの回転ロックを行ない、第4の係合が互いに離れたときに前記回転ロックを解放し、その結果、前記駆動部材、前記プランジャハウジングおよび前記駆動ナットが反対方向に回転させられて、プランジャロッドを軸方向に移動させ、送達部材を通して特定の予め定められた量の薬剤を放出するように容器内の薬剤に対して圧力をかけるための第4の係合手段(42,40)によって前記プランジャハウジングに解放可能に相互接続された手動操作起動手段(38)とを備え、
前記装置はさらに、
回転ロックを行なうがガイドナットに対するプランジャロッドの長手方向の移動を可能にするためのプランジャの長手方向溝(60)と協働するガイド突起(58)を備えるガイドナット(56)を備え、前記ガイドナットは、2つのハウジング部を互いに接続させたときに第5の係合手段によって遠位ハウジング部に回転ロックされ、前記装置はさらに、
前記駆動手段(20)上に配置された傾斜した楔のような面(50)および遠位ハウジング部の固定された内側環状面(52)上に配置された傾斜した楔のような面(54)を備える圧力解放手段を備え、傾斜した楔のような面(50,54)は、駆動ナットを回転させたときに予め定められた量の送達の終わり近くで接触しなくなるように互いに当接している、装置。
【請求項2】
前記第5の係合手段は、元の位置への前記プランジャロッドの戻りが可能になるように、2つのハウジング部を切り離したときにガイドナットが遠位ハウジング部から解放されるように解放可能に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ばね力手段(32)は捻りばねであることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記駆動部材は、その移動を制限するための阻止突起(36)を備える、請求項1から3のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501705(P2012−501705A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525570(P2011−525570)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061565
【国際公開番号】WO2010/029043
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(503211493)エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット (30)
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
【Fターム(参考)】