説明

薬学的組成物

本発明は、微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のための投与に有用である薬学的組成物に関する。本発明は、(a)オキサゾリジノン抗菌剤又は薬学的に許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグ、(b)緩衝剤、(c)pH調節剤、及び(d)溶媒
を含む、薬学的組成物に関する。別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤が薬学的許容量を含む、組成物に関する。別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤が予防的有効量を含む、組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年10月13日に出願された米国仮特許出願61/251,023号への優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のための投与に有用である薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
適切な薬学的担体システムは、一般に、薬学的有効成分(pharmaceutical active)の安全で有効な送達に必要である。薬学的組成物全体、すなわち薬学的担体中に処方された薬物有効成分は、有効成分の生物学的利用能、並びに薬物動態学及び薬力学に影響を及ぼし得る。したがって、薬学的組成物が、所望の薬学的有効成分を安全で有効な様式で送達するように慎重に開発され、製造されることが重要である。
【0004】
微生物感染症を治療するための抗菌剤の送達は、特別な難題を引き起こし得る。治療効果を得るために、一般に、抗菌剤を患者に投与して、血流又は標的器官において最小阻止濃度(すなわちMIC)を超える全身濃度を、標的となる特定の微生物(単数又は複数)に対して十分な時間得ることが望ましい。したがって、in vivo投与用に適切に処方しないと、通常は有効な抗菌プロファイルをin vitroで示す抗菌剤が無効となり、有害にさえなり得る。
【0005】
したがって、薬物有効成分、特に抗菌剤の安全で有効な送達に適した薬学的組成物の開発及び製造は、重要であり、継続的に必要とされる。本発明は、これら及び他の要求を満足することが理解されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、患者における微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のための投与に有用である薬学的組成物に関する。本発明は、これらの薬学的組成物を製造する方法、及び患者における微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のための医薬品の調製における薬学的組成物の使用にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)オキサゾリジノン抗菌剤又は薬学的に許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグ、
(b)緩衝剤、
(c)pH調節剤、及び
(d)溶媒
を含む、薬学的組成物に関する。
【0008】
別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤が薬学的許容量を含む、組成物に関する。
【0009】
別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤が予防的有効量を含む、組成物に関する。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤がラデゾリド(radezolid)、リネゾリド、トレゾリド(torezolid)又は薬学的に許容されるその塩若しくはプロドラッグである、組成物に関する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤がラデゾリド又は薬学的に許容されるその塩である、組成物に関する。
【0012】
別の実施形態においては、本発明は、前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、組成物に関する。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、前記オキサゾリジノン抗菌剤がラデゾリド一塩酸塩である、組成物に関する。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、前記緩衝剤がクエン酸及びクエン酸塩を含む、薬学的組成物に関する。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、前記緩衝剤がクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを含む、薬学的組成物に関する。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、前記pH調節剤が水酸化ナトリウム及びリン酸から選択される、薬学的組成物に関する。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、前記pH調節剤が水酸化ナトリウムである、薬学的組成物に関する。
【0018】
別の実施形態においては、本発明は、前記pH調節剤がリン酸である、薬学的組成物に関する。
【0019】
別の実施形態においては、本発明は、前記糖がデキストロースである、薬学的組成物に関する。
【0020】
別の実施形態においては、本発明は、前記溶媒が水である、薬学的組成物に関する。
【0021】
別の実施形態においては、本発明は、以下を含む薬学的組成物に関する。
【0022】
【表1】

一塩酸塩(3.009mg塩)として供給される活性な薬学的成分(API)=遊離塩基として2.778mg。
【0023】
別の実施形態においては、本発明は、以下を含む薬学的組成物に関する。
【0024】
【表2】

別の実施形態においては、本発明は、静脈内投与のための薬学的組成物に関する。
【0025】
別の実施形態においては、本発明は、注射投与のための薬学的組成物に関する。
【0026】
別の実施形態においては、本発明は、薬学的有効量の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症を治療する方法に関する。
【0027】
別の実施形態においては、本発明は、予防的有効量の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症を予防する方法に関する。
【0028】
別の実施形態においては、本発明は、予防的有効量の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症のリスクを低減する方法に関する。
【0029】
別の実施形態においては、本発明は、患者における微生物感染症を治療するための薬学的組成物に関する。
【0030】
別の実施形態においては、本発明は、患者における微生物感染症を予防するための薬学的組成物に関する。
【0031】
別の実施形態においては、本発明は、患者における微生物感染症のリスクを低減するための薬学的組成物に関する。
【0032】
別の実施形態においては、本発明は、患者における微生物感染症を治療するための薬学的組成物の製造における抗生化合物(antibiotic compound)の使用であって、薬学的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用に関する。
【0033】
別の実施形態においては、本発明は、患者における微生物感染症を予防するための薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、予防的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用に関する。
【0034】
別の実施形態においては、本発明は、患者における微生物感染症のリスクを低減するための薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、予防的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用に関する。
【0035】
別の実施形態においては、本発明は、前記患者がヒト又は動物である、方法、組成物又は使用に関する。
【0036】
別の実施形態においては、本発明は、前記患者がヒトである、方法、組成物又は使用に関する。
【0037】
本発明の上記並びに他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによってより十分に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のために患者に投与するのに有用である薬学的組成物に関する。これらの組成物は、オキサゾリジノン抗菌剤、緩衝剤、pH調節剤及び溶媒を含む。
【0039】
1.定義
「担体」又は「担体システム」という用語は、患者又は被験体に投与するために薬学的有効成分を送達する、含む、又は「輸送する」のに適した1種類以上の適合性物質を意味する。
【0040】
「患者」又は「被験体」という用語は、本明細書では、ヒト又は動物を意味する。動物の例としては、家畜が挙げられ、その非限定的例としては、ネコ、イヌなどの家庭伴侶動物、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家禽、魚、および甲殻類などの食用動物、動物園及び他の展示動物、並びにウマ、ラマ、ウサギなどの労働用動物及び他の動物が挙げられる。
【0041】
本明細書では「有効量」という用語は、病態又は症状、例えば微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のために単独で又は組み合わせて投与される場合の、薬学的活性化合物、又は化合物の組合せ、例えば抗菌剤(単数又は複数)の量を指す。この用語は、活性化合物、又は化合物の組合せを含む、薬学的組成物の量も指す。例えば、有効量とは、レシピエント患者又は被験体に投与され、生物活性、例えば抗感染活性、例えば抗微生物活性、抗菌活性などを誘発するのに十分である、処方中に存在する化合物の量を指す。
【0042】
本明細書では「薬学的に許容される」という句は、ヒト及び動物の組織に接触して使用するのに、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応並びに他の問題及び合併症もなく、妥当な利点/リスク比に相応して、正しい医学的判断の範囲内で適切である、活性化合物、材料、組成物、担体及び/又は剤形を指す。
【0043】
本明細書では「薬学的有効量」という用語は、病態又は症状、例えば微生物感染症の治療、予防又はリスク低減のために単独で又は組み合わせて投与される場合の、薬学的活性化合物、又は化合物の組合せ、例えば抗菌剤(単数又は複数)の量を指す。この用語は、活性化合物、又は化合物の組合せを含む、薬学的組成物の量も指す。例えば、薬学的有効量とは、レシピエント患者又は被験体に投与され、生物活性、例えば微生物感染症に対する活性を誘発するのに十分である、本発明の薬学的組成物若しくは処方中、又は本発明の組成物若しくは処方物を含む医療機器上の、薬学的有効成分の量を指す。
【0044】
「予防的有効量」という用語は、病態又は症状、例えば微生物感染症の予防又はリスク低減のために単独で又は組み合わせて投与される場合の、薬学的活性化合物、又は化合物の組合せ、例えば抗菌剤(単数又は複数)の有効量、換言すれば、予防又は予防効果を生じる量を意味する。この用語は、活性化合物、又は化合物の組合せを含む、薬学的組成物の量も指す。
【0045】
本明細書では「治療」という用語は、患者又は被験体における既発の病態又は症状、例えば微生物感染症を治すことを意味する。治療は、病態又は症状、例えば微生物感染症の発生の阻止、すなわち抑止、及び病態又は症状、例えば微生物感染症の軽減又は改善、すなわち回復も含み得る。
【0046】
本明細書では「予防」という用語は、特に患者又は被験体が、病態又は症状、例えば微生物感染症に罹患しやすい、又はリスクのあるときに、病態又は症状、例えば微生物感染症が患者又は被験体において発生するのを完全に又はほぼ完全に抑えることを意味する。予防は、病態又は症状、例えば微生物感染症の発生の阻止、すなわち抑止も含み得る。
【0047】
本明細書では「リスク低減」という用語は、特に患者又は被験体が、病態又は症状、例えば微生物感染症に罹患しやすい、又はリスクのあるときに、病態又は症状、例えば微生物感染症が患者又は被験体において発生する尤度又は確率を低下させることを意味する。
【0048】
当業者は、「治療」、「予防」及び「リスク低減」の定義に幾らかの重複があり得ることを認識するであろう。
【0049】
本明細書では「薬学的に許容される塩」とは、親化合物がその酸塩又は塩基塩を生成することによって改変された、薬学的活性化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、それだけに限定されない。薬学的に許容される塩としては、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成された、親化合物の慣例的な非毒性の塩又は第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような慣例的な非毒性の塩としては、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸(glycollyarsanilic acid)、ヘキシルレゾルシン酸(hexylresorcinic acid)、ヒドラバム酸(hydrabamic acid)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン酸(subacetic acid)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び一般のアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される無機及び有機酸から誘導されるものが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0050】
本発明の薬学的に許容される塩は、塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、遊離酸又は遊離塩基の形のこれらの化合物を、水若しくは有機溶媒又はその混合物中の化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.(Mack Publishing Company,1990)及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Baltimore,MD:Lippincott Williams&Wilkins,2000(これは、参考としてその全体が本明細書中に援用される)に見られる。例えば、塩としては、本発明の脂肪族アミン含有、ヒドロキシルアミン含有及びイミン含有化合物の塩酸塩及び酢酸塩が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0051】
さらに、本発明の化合物、例えば、化合物の塩は、水和物若しくは非水和物(無水)の形で、又は別の溶媒分子との溶媒和物として、存在することができる。水和物の非限定的例としては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
【0052】
本発明の化合物は、エステル、例えば薬学的に許容されるエステルとして調製することもできる。例えば、化合物中のカルボン酸官能基は、その対応するエステル、例えばメチル、エチル又は他のエステルに変換することができる。さらに、化合物中のアルコール基は、その対応するエステル、例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステル又は他のエステルに変換することができる。
【0053】
本発明の化合物は、プロドラッグ、例えば薬学的に許容されるプロドラッグとして調製することもできる。プロドラッグは、薬剤の多数の望ましい性質(例えば、溶解性、生物学的利用能、製造性など)を高めることが知られているので、本発明の化合物をプロドラッグの形で送達することができる。したがって、本発明は、本請求項に係る化合物のプロドラッグ、それを送達する方法、及びそれを含む組成物を包含するものとする。「プロドラッグ」は、かかるプロドラッグをほ乳動物被験体に投与したときに本発明の活性な親薬物をin vivoで放出する任意の共有結合担体を含むものとする。本発明のプロドラッグは、修飾が通常の操作又はin vivoで親化合物に開裂するように、化合物中の官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、本発明のプロドラッグをほ乳動物被験体に投与したときに開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、遊離アミノ又は遊離スルフヒドリル基を形成する任意の基にヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基が結合した、本発明の化合物を含む。プロドラッグの例としては、本発明の化合物中のアルコール及びアミン官能基のアセタート、ホルマート及びベンゾアート誘導体が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0054】
本明細書においては、単数形は、別段の記載がない限り、複数形も含む。別段の記載がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。矛盾が生じた場合には、本明細書が基準になる。
【0055】
本明細書で使用するすべての百分率及び比は、別段の記載がない限り、重量基準である。
【0056】
本明細書を通して、組成物が特定の成分を有する、含有する又は含むと記述した場合、組成物は列挙した成分から本質的になる、又はそれからなることも企図される。同様に、方法又はプロセスが特定のプロセスステップを有する、含有する又は含むと記述した場合、プロセスは列挙したプロセシングステップから本質的になる、又はそれからなることも企図される。さらに、ステップの順序、又はある動作を実施する順序は、本発明が実施可能であれば、重要でないことを理解すべきである。さらに、2つ以上のステップ又は動作を同時に実行することができる。
【0057】
2.本発明の組成物
本発明は、薬学的有効量の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症を治療する方法に関する。本発明は、予防的有効量の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症を予防する方法に関する。本発明は、予防的有効量の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症のリスクを低減する方法に関する。
【0058】
本発明は、患者における微生物感染症を治療するための薬学的組成物に関する。本発明は、患者における微生物感染症を予防するための薬学的組成物に関する。本発明は、患者における微生物感染症のリスクを低減するための薬学的組成物に関する。
【0059】
本発明は、患者における微生物感染症を治療するための薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、薬学的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用に関する。本発明は、患者における微生物感染症を予防するための薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、予防的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用に関する。本発明は、患者における微生物感染症のリスクを低減するための薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、予防的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用に関する。
【0060】
本発明は、前記患者がヒト又はである、方法、組成物又は使用に関する。一実施形態においては、本発明は、前記患者がヒトである、方法、組成物又は使用に関する。
【0061】
本発明の組成物は、以下の必須及び任意選択の成分を含む。
【0062】
a.オキサゾリジノン抗菌剤
オキサゾリジノン抗菌剤並びにその薬学的に許容される塩、エステル及びプロドラッグを本発明の方法、組成物及び使用に使用することができる。
【0063】
オキサゾリジノン抗菌剤は、2008年11月25日に発行されたLou他の米国特許第7,456,206号B2、2006年12月12日に発行されたLou他の米国特許第7,148,219号B2及び2008年3月4日のその訂正証明、2006年10月31日に発行されたChen他の米国特許第7,129,259号B2及び2007年3月6日のその訂正証明書、2005年11月29日に発行されたLou他の米国特許第6,969,726号B2並びに2007年2月27日及び2007年11月27日のその訂正証明書、1997年11月18日に発行されたBarbachyn他の米国特許第5,688,792号、2001年12月13日に公表されたDong A Pharm.Co.Ltdの国際公開第2001/94342号、並びに2005年6月30日に公表されたDong A Pharm.Co.Ltdの国際公開第2005/058886号に記載されている。
【0064】
本明細書で有用であるオキサゾリジオン抗菌剤の非限定的例としては、以下の化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはプロドラッグが挙げられる。
【0065】
【化1】

塩の例としては塩酸塩が挙げられる。塩の更なる一例は一塩酸塩である。上記化合物は、とりわけ、化学名N−[3−(2−フルオロ−4’−{[(3H−[1,2,3]トリアゾル−4−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ビフェニル−4−イル)−2−オキソ−オキサゾリジン−5−(S)−イルメチル]−アセトアミドに相当する。この化合物は、USANによって、ラデゾリドとしても知られ、CAS登録番号869884−78−6に対応する。一塩酸塩は、USANによって、ラデゾリド塩酸塩としても知られ、CAS登録番号869884−77−5に対応する。
【0066】
本明細書で有用である別のオキサゾリジオン抗菌剤としてはリネゾリド及びトレゾリドが挙げられる。
【0067】
オキサゾリジノン抗菌剤の用量及び薬学的組成物の投与方法は、意図される患者又は被験体及び標的微生物、例えば標的細菌によって決まるであろう。
【0068】
オキサゾリジノン抗菌剤は、組成物中で、例えば最終組成物からの薬物生物学的利用能などの所望の薬理学的性質を与える重量百分率で使用される。オキサゾリジノン抗菌剤の重量百分率は約0.01%から約5%の範囲である。更なる実施形態においては、重量百分率は約0.1%から約0.5%の範囲である。更なる実施形態においては、重量百分率は約0.25%から約0.40%の範囲である。
【0069】
b.緩衝剤
本発明の組成物は緩衝剤を含む。一実施形態においては、緩衝剤は、クエン酸とクエン酸塩の組合せを含む。更なる一実施形態においては、緩衝剤は、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの組合せを含む。更なる一実施形態においては、緩衝剤は、クエン酸とクエン酸三ナトリウム(二水和物)の組合せを含む。
【0070】
c.pH調節剤
本発明の組成物は、pH調節剤を含む。一実施形態においては、pH調節剤は水酸化ナトリウム及びリン酸から選択される。別の一実施形態においては、pH調節剤は水酸化ナトリウムである。別の一実施形態においては、pH調節剤はリン酸である。
【0071】
d.糖
本発明の組成物は糖を含む。一実施形態においては、糖は、グルコースとしても知られるデキストロースである。
【0072】
e.溶媒
本発明の組成物は溶媒を含む。一実施形態においては、水は本発明の組成物の一成分であるが、所望の最終処方物を与える適切なレベルで使用することができる。
【0073】
f.他の追加の成分
本発明の組成物は、医薬製剤の技術分野で知られる多種多様な賦形剤から選択される1種類以上の追加の成分を更に含むことができる。錠剤又はカプセル剤の所望の性質に従って、任意の数の成分を、本発明の組成物を調製する際のその公知の用途に基づいて、単独で又は組み合わせて選択することができる。かかる成分としては、水;非水性溶媒(例えば、エタノール);コーティング剤;カプセル剤皮;着色剤;ワックス、ゼラチン;香味剤;防腐剤(例えば、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム及び安息香酸カリウム);抗酸化剤[例えば、ブチルヒドロキシアニソール(「BHA」)、ブチルヒドロキシトルエン(「BHT」)、ビタミンE、ビタミンEエステル(例えば、酢酸トコフェロール)];香味向上剤;甘味料(例えば、アスパルテーム及びサッカリン);圧縮助剤;界面活性剤などが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0074】
3.薬剤担体及び薬学的組成物を製造する方法
投与に有用な担体及び組成物は、例えば、Eds.R.C.Rowe,et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,Fifth Edition,Pharmaceutical Press(2006),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.(Mack Publishing Company,1990),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Baltimore,MD:Lippincott Williams&Wilkins,2000、及びL.Lachman,H.A.Lieberman,J.L.Kanig(1986)The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(3rd Ed.).Lea&Febiger,Philadelphiaに記述された、薬学分野で周知である方法のいずれかによって調製することができる。その全体を参考として本明細書中に援用する。
【0075】
4.微生物感染症を治療、予防又はリスク低減する方法
本発明は、患者又は被験体における微生物感染症を治療、予防又はそのリスクを低減する方法も提供する。これらの方法は、薬学的又は予防的有効量の本発明の薬学的有効成分を薬学的組成物又は処方物として本発明の担体から患者又は被験体に適切な投与量で投与することを含む。
【0076】
当業者は、適切な投与量の薬学的有効成分を選択することができる。本発明の方法を実施する際には、患者又は被験体における化合物の血中及び又は組織内レベルが十分な時間間隔で適切なレベルにあることが望ましい。上述したように、治療効果を得るためには、一般に、抗菌剤を患者に投与して、血流又は標的器官において最小阻止濃度(すなわちMIC)を超える全身濃度を、標的となる特定の微生物(単数又は複数)に対して十分な時間達成することが望ましい。
【0077】
本発明の薬学的組成物は、患者又は被験体、例えば、ヒト又は非ヒトほ乳動物若しくは他の動物における微生物感染症などの障害の治療、予防又はリスク低減に有用である。これは、薬学的有効量又は予防的有効量の本発明の組成物を投与するステップ(単数又は複数)を含む。微生物感染症又は治療としては、とりわけ、皮膚感染症、肺炎(院内と市中肺炎の両方)、ウイルス感染後の肺炎、腹部感染症、尿路感染症、菌血症、敗血症、心内膜炎、房室シャント感染症(atrio−ventricular shunt infection)、血管アクセス感染症、髄膜炎、外科的予防、腹膜感染症、骨感染症、関節感染症、メチシリン耐性Staphylococcus aureus感染症、バンコマイシン耐性Enterococci感染症、リネゾリド耐性生物体感染症、及び結核からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0078】
本発明の方法に関連して、薬理ゲノミクス(すなわち、個体の遺伝子型と外来化合物又は薬物に対する個体の反応との関係の研究)を考慮することができる。治療薬の代謝の差は、薬理活性薬物の用量と血中濃度との関係を変えることによって重篤な毒性又は治療不全をもたらすおそれがある。したがって、医師又は臨床医は、薬物を投与するかどうかを決定する際に、さらに、薬物治療の投与量及び/又は治療計画を作成する際に、関連する薬理ゲノミクス研究で得られた知識の適用を考慮することができる。
【0079】
一般に、薬学的有効成分の有効投与量は、約0.1から約100mg/kg体重/日、より好ましくは約1.0から約50mg/kg体重/日の範囲であろう。投与量は、治療、予防又はリスク低減しようとする疾患又は症状、患者の健康状態全般、硫酸水素塩から送達される親化合物の相対的生物学的有効性、処方物、処方物中の賦形剤の有無及びタイプ、投与経路などの変数によって決まる可能性もあるであろう。さらに、投与する初回投与量は、所望の血中レベル又は組織内レベルを迅速に得るために、上記上限レベルよりも増加させることができ、又は初回投与量を最適値よりも少なくすることができることを理解されたい。
【実施例】
【0080】
5.実施例
(実施例1)
ラデゾリド塩酸塩静脈内処方物の組成物:遊離塩基として2.778mg/ml
【0081】
【表3】

手順
1.合計バッチ重量の約80%の注射用5%デキストロース溶液を適切な容器に秤量する。
【0082】
2.必要量のクエン酸及びクエン酸三ナトリウム(二水和物)を上記溶液に添加し、溶解するまで混合する。pHを記録する。
【0083】
3.溶液を35〜43℃に加熱する。
【0084】
4.35〜43℃で連続加熱しながら、純度補正したラデゾリドHCl塩を添加し、溶解するまで混合する。
【0085】
5.溶液温度を25℃(±3)に下げる。
【0086】
6.pHを調べる。目標pHは3.5(±0.1)である。必要に応じて1規定水酸化ナトリウム又はリン酸で調節する。
【0087】
7.注射用5%デキストロース溶液で最終重量に合わせる。
【0088】
8.pHを調べる。3.5(±0.1)ではない場合、調節する。最終pH及び溶液重量を記録する。
【0089】
9.溶液(0.22μm)をろ過し、バイアルに充填する。
【0090】
(実施例2)
ラデゾリド塩酸塩静脈内処方物の組成物:10mM緩衝剤中、遊離塩基として2.778mg/ml
【0091】
【表4】

手順
1.注射用デキストロース粉末を適切な容器に秤量する。
【0092】
2.必要量のクエン酸及びクエン酸三ナトリウム(二水和物)を上記溶液に添加し、溶解するまで混合する。pHを記録する。
【0093】
3.溶液を35〜43℃に加熱する。
【0094】
4.35〜43℃で連続加熱しながら、純度補正したラデゾリドHCl塩を添加し、溶解するまで混合する。
【0095】
5.溶液温度を25℃(±3)に下げる。
【0096】
6.pHを調べる。目標pHは3.5(±0.1)である。必要に応じて1規定水酸化ナトリウム又はリン酸で調節する。
【0097】
7.注射用5%デキストロース溶液で最終重量に合わせる。
【0098】
8.pHを調べる。3.5(±0.1)ではない場合、調節する。最終pH及び溶液重量を記録する。
【0099】
9.溶液(0.22μm)をろ過し、バイアルに充填する。
【0100】
参考としての援用
訂正証明書を含めた特許文書、特許出願文書、科学論文、政府報告書、ウェブサイト、及び本明細書で参照する他の参考文献の各々の開示全体を参考としてその全体を援用する。
【0101】
均等形態
本発明は、その精神や本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的形態で実施することができる。したがって、上記実施形態は、あらゆる点で例示であり、本明細書に記載の本発明を限定するものではないとみなすべきである。したがって、本発明の範囲は、上記明細書本文によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等範囲に属する変更はすべて、本発明の範囲に包含されるものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オキサゾリジノン抗菌剤又は薬学的に許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグ、
(b)緩衝剤、
(c)pH調節剤、及び
(d)溶媒
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記オキサゾリジノン抗菌剤が薬学的許容量を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オキサゾリジノン抗菌剤が予防的有効量を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記オキサゾリジノン抗菌剤がラデゾリド、リネゾリド、トレゾリド又は薬学的に許容されるその塩若しくはプロドラッグである、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記オキサゾリジノン抗菌剤がラデゾリド又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記オキサゾリジノン抗菌剤がラデゾリド一塩酸塩である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤がクエン酸及びクエン酸塩を含む、請求項1から7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記緩衝剤がクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを含む、請求項1から7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記pH調節剤が水酸化ナトリウム及びリン酸から選択される、請求項1から9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記pH調節剤が水酸化ナトリウムである、請求項1から10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記pH調節剤がリン酸である、請求項1から10に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記糖がデキストロースである、請求項1から12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記溶媒が水である、請求項1から13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
【表5】

を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
【表6】

を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
静脈内投与のための、請求項1から16のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項18】
注射投与のための、請求項1から16のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的有効量の請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症を治療する方法。
【請求項20】
予防的有効量の請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症を予防する方法。
【請求項21】
予防的有効量の請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを含む、患者における微生物感染症のリスクを低減する方法。
【請求項22】
患者における微生物感染症を治療するための、請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項23】
患者における微生物感染症を予防するための、請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項24】
患者における微生物感染症のリスクを低減するための、請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項25】
患者における微生物感染症を治療するための請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、薬学的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用。
【請求項26】
患者における微生物感染症を予防するための請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、予防的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用。
【請求項27】
患者における微生物感染症のリスクを低減するための請求項1から18のいずれかに記載の薬学的組成物の製造における抗生化合物の使用であって、予防的有効量の前記薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、使用。
【請求項28】
前記患者がヒト又は動物である、請求項19から27のいずれかに記載の方法、組成物又は使用。
【請求項29】
前記患者がヒトである、請求項19から27のいずれかに記載の方法、組成物又は使用。


【公表番号】特表2013−507443(P2013−507443A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534277(P2012−534277)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052263
【国際公開番号】WO2011/046905
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(502427253)リブ−エックス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】Rib−X Pharmaceuticals, Inc.
【住所又は居所原語表記】New Haven, Connecticut,U.S.A.
【Fターム(参考)】