薬液調製用器具
【課題】溶解操作中にバイアル内に生じた泡を、より優れた操作性をもって容易且つ安定的に消滅させることの出来る、新規な構造の薬液調製用器具を提供すること。
【解決手段】穿刺針24が突設されたバイアル装着部18を備えた本体部12と、前記穿刺針24の内部を貫通して一端が該穿刺針24の先端部26に開口すると共に他端が前記本体部12の外周面に開口するエア通路58とを備えると共に、該エア通路58における前記本体部12の外周面の開口部を、スリット弁50によって開口可能に密封する一方、該スリット弁50の外方側に弾性支持された押釦部56を設け、該押釦部56を押圧することにより該押釦部56の突起68が前記スリット弁50に差し込まれて該スリット弁50が開口されるようにした。
【解決手段】穿刺針24が突設されたバイアル装着部18を備えた本体部12と、前記穿刺針24の内部を貫通して一端が該穿刺針24の先端部26に開口すると共に他端が前記本体部12の外周面に開口するエア通路58とを備えると共に、該エア通路58における前記本体部12の外周面の開口部を、スリット弁50によって開口可能に密封する一方、該スリット弁50の外方側に弾性支持された押釦部56を設け、該押釦部56を押圧することにより該押釦部56の突起68が前記スリット弁50に差し込まれて該スリット弁50が開口されるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末製剤が収容されたバイアル内に溶解液等を注入し、粉末製剤と溶解液を混合して調製するために使用される薬液調製用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗生物質や血液製剤等、輸液の状態では化学的に不安定となり変質のおそれのある製剤については、ゴム栓で密封されたバイアル中に凍結乾燥状態で保存する一方、使用直前に蒸留水や生理食塩水、ブドウ糖液等の溶解液に溶解調製して、患者へ投薬等することが行われている。
【0003】
このようなバイアル中に凍結乾燥状態で保存された製剤と溶解液等との調製を簡便に行うことができる薬液調製用器具として、例えば、特許文献1(特開平7−213585号公報)に記載のものが知られている。この薬液調製用器具は、仕切壁を挟んだ一方の側に設けられて穿刺針が突設されたバイアル装着部と、他方の側に突設されたシリンジ装着ポートを備えている。穿刺針の内部には、一端が穿刺針の表面に開口すると共に他端がシリンジ装着ポートに開口する薬液通路が貫通して設けられている。薬液の調製を行う際には、シリンジ装着ポートに取り付けたシリンジから、予め内部に収容した一定量の溶解液を、薬液通路を介してバイアル装着部に取り付けたバイアル内に移動させ、このバイアル内の製剤と溶解液を混合することにより行われる。そして、調製後の薬液をシリンジにより吸引して採取して、患者へ投薬等するようになっている。
【0004】
ところで、バイアル中に蛋白製剤等、溶解液との混合の際に泡を発生する製剤を収容する場合は、バイアルからシリンジに採取する際に、薬液と共に泡も吸引してしまうことから、発生した泡を消滅させる必要がある。ところが、蛋白製剤の溶解において一度発生した泡は、シリンジの外面を手指で叩いて微細な振動を加えるタッピング等の操作では、破泡させることが難しい。それ故、薬液と共に吸引した泡を、シリンジの空気抜き操作に併せて排出することも考えられるが、泡の排出は泡を形成する薬液の排出も伴うことから、薬液の損失が問題となる。そこで、この問題に対処するために、特許文献1では、バイアル内に連通するエア通路を設ける一方、該エア通路の外部開口部を蓋部材にて密封しバイアル内を負圧に保持した状態で製剤と溶解液の混合を行い、その後、エア通路の開口部の蓋部材を外して大気に解放し、バイアル内に空気を流入させることにより、発生した泡を消滅させることが提案されている。
【0005】
ところが、このような従来構造では、シリンジ内の溶解液とバイアル内の製剤を混合した後、蓋部材を取り外すために、シリンジの手を持ち替えたり、向きを変えたりする必要があり、操作が煩雑であった。加えて、シリンジの持ち替え等の動作によりバイアル内に外気を流入させる動作を安定した姿勢で行うことが難しくなったり、それに起因して、空気の流入による破泡が上手くいかないおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−213585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、溶解操作中にバイアル内に生じた泡を、より優れた操作性をもって容易且つ安定的に消滅させることの出来る、新規な構造の薬液調製用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、仕切壁と該仕切壁の一方の側に設けられて穿刺針が突設されたバイアル装着部および該仕切壁の他方の側に突設された採取デバイス装着ポートを備えた本体部と、前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の表面に開口すると共に他端が前記採取デバイス装着ポートに開口する薬液通路と、前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の先端部に開口すると共に他端が前記本体部の外周面に開口するエア通路とを備えた薬液調製用器具であって、前記本体部の外周面に開口する前記エア通路の他端の開口部が、スリット弁によって開口可能に密封されている一方、前記スリット弁の外方側には、スリット弁への接近方向と反対方向に付勢されて弾性支持された押釦部が設けられており、付勢力に抗して押釦部を押圧することにより該押釦部の突起がスリット弁に差し込まれてスリット弁が開口状態とされるようになっていることを、特徴とする。
【0010】
本発明に従う構造とされた薬液調整用器具によれば、エア通路の他端の開口部をスリット弁にて密封し、バイアル内を負圧に保持した状態で製剤と溶解液の混合を行い、溶解操作中にバイアル内に気泡が生じた場合には、押釦部を押圧して押釦部の突起をスリット弁に差し込んでスリット弁を開口することにより、エア通路を外部空間と連通することが出来る。これにより、エア通路を通じてバイアル内に外気を流入させて、バイアル内の泡を消滅させることが出来る。
【0011】
そして、本発明によれば、エア通路の密封と開口の切り換えを、押釦部の押圧とその解除によって行なうことが出来る。これにより、採取デバイス装着ポートにシリンジやバイアル等の採取器を装着した状態で、薬剤調製器具を把持した片方の手で押釦部を操作してシリンジ内の破泡を行なうことが可能であり、優れた操作性をもって、容易且つ安定的な破泡を行なうことが出来る。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記押釦部が平板状の押圧部と該押圧部を前記スリット弁の外方側に弾性支持するばね部を含んで構成されており、前記突起が前記押圧部のスリット弁側対向面からスリット弁に向かって突出されている一方、前記突起には、少なくとも一端が先端側で開口すると共に他端が基端側で開口する突起内連通路が設けられているものである。
【0013】
本態様によれば、押釦部が押圧されて、突起がスリット弁に差し込まれた際には、スリット弁の隙間に加えて、突起内連通路を通じても外気をバイアル内に導入することが出来る。従って、仮に、スリット弁の弾性復帰によりスリット弁と突起の間の隙間が塞がってしまった場合でも、突起内連通路を通じて外気をバイアル内に導入することが出来る。これにより、一度の押釦部の押圧操作により、バイアル内に確実に空気を導入することが出来る。
【0014】
なお、本態様において、より好ましくは、前記突起内連通路における前記突起の基端側の開口部が、前記突起の外周面上に開口されている。このようにすれば、押釦部を押し込む指で突起内連通路の基端側の開口部が塞がれることを防止することが出来て、突起内連通路の連通状態をより確実に維持することが出来る。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記採取デバイス装着ポートがシリンジの先端部が装着されるシリンジ装着ポートによって構成されている一方、該シリンジ装着ポートに対してバイアル装着用アダプタが装着可能とされているものである。
【0016】
本態様によれば、バイアル装着用アダプタを介して、シリンジ装着ポートにもバイアルを装着することが出来る。これにより、例えば、溶解液を収容したバイアル(液バイアル)と、製剤を凍結乾燥状態で収容して内部が負圧状態とされたバイアル(減圧バイアル)とを用意して、液バイアルをバイアル装着用アダプタを介してシリンジ装着ポートに装着した後に、減圧バイアルをバイアル装着部に装着することによって、両バイアルの内圧差を利用して、液バイアル内の溶解液を減圧バイアル内に移動させて、液バイアル内で製剤と溶解液を混合することが出来る。その後、液バイアルと共にバイアル装着用アダプタを取り外して、シリンジ装着ポートにシリンジを接続することによって、減圧バイアル内で調整された混合薬液を吸引して採取することが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バイアル内を外部空間と連通するエア通路上にスリット弁を設けると共に、該スリット弁の外方側に押釦部を設けて、該押釦部が押し込まれることにより該押釦部の突起を該スリット弁に差し込んで、該スリット弁を開口するようにした。これにより、シリンジ等を採取デバイス装着ポートに装着した状態で、片手で押釦部を操作して、バイアル内に外気を流入させることが出来る。その結果、優れた操作性をもって、バイアル内の気泡をより容易且つ安定的に消滅させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施形態としての薬液調製用器具の側面図。
【図2】図1に示した薬液調製用器具の図1とは異なる側面図。
【図3】図2におけるIII−III断面図。
【図4】図1におけるIV−IV断面図。
【図5】図1に示した薬液調製用器具の要部の断面説明図。
【図6】図1に示した薬液調製用器具の使用方法を説明する説明図。
【図7】図1に示した薬液調製用器具による破泡方法を説明する説明図。
【図8】本発明の第二の実施形態としての薬液調製用器具の側面図。
【図9】図8に示した薬液調製用器具の図8とは異なる側面図。
【図10】図9におけるX−X断面図。
【図11】図8に示した薬液調製用器具の使用方法を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
先ず、図1〜図4に、本発明の第一の実施形態としての薬液調製用器具10を示す。薬液調製用器具10は、全体として略円筒形状の本体部12と、本体部12にスライド可能に組み付けられた保護筒部14とを有している。
【0021】
本体部12は、略円筒形状の本体筒部15を有している。図3から明らかなように、本体筒部15は、一方の端部が開口されていると共に、他方の端部が本体筒部15の軸直角方向に広がる仕切壁16で塞がれた略有底円筒形状を有している。そして、本体筒部15の円筒の内側となる仕切壁16の一方の側(図3中、下側)にバイアル装着部18が形成されている一方、円筒の外側となる仕切壁16の他方の側(図3中、上側)に、採取デバイス装着ポートとしてのシリンジ装着ポート20が突設されている。
【0022】
バイアル装着部18には、穿刺針24が突設されている。穿刺針24は、仕切壁16の略中心部からバイアル装着部18内に突出して、本体筒部15の中心軸上を延伸する形状とされている。穿刺針24の突出寸法は、本体筒部15の軸寸法よりも大きくされており、穿刺針24の先端部26は、本体筒部15の開口端部28よりも外方に突出位置されている。穿刺針24の先端部26は、後述する薬剤バイアル86のゴム栓92を貫通可能なように針形状を有している。
【0023】
穿刺針24の内部には、薬液通路30が形成されている。薬液通路30は、穿刺針24の内部と仕切壁16を貫通して、穿刺針24の軸方向に延びる連通路とされている。薬液通路30は、一方の端部が第一開口部32においてバイアル装着部18内に開口されていると共に、他方の端部が第二開口部34においてシリンジ装着ポート20内に開口されている。第一開口部32は、穿刺針24を軸直角方向に貫通して、穿刺針24の外周面上に開口されている。また、第一開口部32は、穿刺針24の軸方向の中間部分に形成されており、本体筒部15の軸方向(図3中、上下方向)で、本体筒部15の開口端部28よりも内側に位置されて、バイアル装着部18の内部に位置されている。なお、第二開口部34には、シリンジ装着ポート20側からメッシュ状のフィルタ35が取り付けられている。これにより、後述する混合薬液102を薬液バイアル86からシリンジ88へ引き抜くに際して、混合薬液102をフィルタ35で濾過して、混合薬液102中に混入したゴム小片等の異物を除去することが出来る。
【0024】
さらに、バイアル装着部18には、連絡管体36が形成されている。連絡管体36は、仕切壁16におけるバイアル装着部18側の面上に形成されており、本体筒部15の軸直角方向に延伸して、穿刺針24と本体筒部15とを接続する中空菅体形状とされている。連絡管体36の一方の端部38は、本体筒部15の外周面上に突出されている。
【0025】
そして、連絡管体36と穿刺針24の内部を貫通して、エア通路40が形成されている。エア通路40は、連絡管体36と穿刺針24の軸方向に延びる略L字の連通路とされており、一方の端部が穿刺針24の先端部26に開口された内側開口部42とされていると共に、他方の端部が本体部12の外周面上に開口された外側開口部44とされている。従って、エア通路40の内側開口部42は、本体筒部15の軸方向で、本体筒部15の開口端部28よりも外側に位置されており、穿刺針24の突出方向で、薬液通路30の第一開口部32よりも先端部26側に位置されている。このように、エア通路40の内側開口部42が開口する穿刺針24の先端部26が、本体筒部15の開口端部28よりも外側に突出されている理由は、エア通路40の内側開口部42をバイアル装着部18内に開口する薬液通路30の第一開口部32からできるだけ遠位端に設けるためである。これにより、後述する薬剤バイアル86内にエア通路40を通じて外気が流入される際に、かかる外気が混合薬液102内に放出されて新たな薬液の発泡を招くことを防止することができる。また、混合薬液102をシリンジ88に吸引採取する際にも、エア通路40から流入される外気が混合薬液102内に放出されて薬液の発泡を生じさせたり、流入外気が直接シリンジ88内に吸引されることを防止することができる。従って、このような効果が達成される限り、本体筒部15やバイアル装着部18の形状、穿刺針24の突出長さ等の設計事項は適宜変更することが可能である。なお、エア通路40の経路上における外部開口部44の近傍には、疎水性のフィルタ45が設けられている。これにより、後述する薬剤バイアル86内にエア通路40を通じて外気が流入される際に、外気がフィルタ45により濾過されて、外気に含まれる雑菌や異物等が薬剤バイアル86内に混入することを防止できる。
【0026】
図5に示すように、連絡管体36において、本体筒部15の外周面上に突出された端部38には、キャップ部材46が取り付けられている。キャップ部材46は、合成樹脂製のハウジング部48に弾性体から形成されたスリット弁50が設けられた構造とされている。ハウジング部48は軸方向両側に開口する筒形状とされており、一方の端部には、軸方向の外方(図5中、右方)に開口する嵌合溝52が形成されている。また、嵌合溝52と反対側の端部の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0027】
そして、ハウジング部48の一方の端部に、スリット弁50が設けられている。スリット弁50は弾性体から形成された略円板形状とされており、厚さ方向(図5中、左右方向)に貫通して直径上を延びる切込状のスリット54が形成されている。このスリット弁50が外周部分においてハウジング部48の一方の開口部に固定されている。本実施形態においては、ハウジング部48の成形型内にスリット弁50を配設した状態でハウジング部48の樹脂材料が成形固化されることにより、スリット弁50がハウジング部48に一体的に固定されているが、例えばハウジング部48を分割構造体として、スリット弁50を挟んで固定するなどしても良い。また、リング状の一対の押さえ部材によりスリット弁50を両側から挟持する一方、かかる押さえ部材を超音波溶着により一体化して、押さえ部材をハウジング部48に接着剤等により固定するようにしても良い。スリット弁50のスリット54は、自然状態において閉状態とされている。
【0028】
このようなキャップ部材46は、本体部12の外周面上に突出された連絡管体36の端部38に固定されている。本体筒部15の外周面上において、連絡管体36の端部38の周囲には円筒状の周壁が形成されており、端部38とこの周壁によって、端部38の周囲に嵌合溝55が形成されている。そして、本体部12とキャップ部材46が互いの嵌合溝52,55に相互に入り込んで、必要に応じて接着等されることにより、キャップ部材46が端部38に外挿状態で固定されている。これにより、連絡管体36内に形成されたエア通路40の外側開口部44が、スリット弁50で密封されている。
【0029】
さらに、キャップ部材46には、押釦部56が取り付けられている。押釦部56は合成樹脂からなる一体成形品とされており、平板状の押圧部58が、ばね部60,60を介して固定筒部62に弾性的に固定された構造とされている。
【0030】
押圧部58は、略円形の平板形状とされている。固定筒部62は有底の円筒形状とされており、底部の中央部分には円形の貫通孔64が貫設されていると共に、内周面には、雌ネジが形成されている。そして、押圧部58において固定筒部62と対向する内面66の外周部分と、固定筒部62の外周面が、一対のばね部60,60で相互に連結されている。ばね部60はくの字に屈曲された板形状とされている。これらばね部60,60が屈曲可能とされていることにより、押圧部58が、固定筒部62に対して接近/離隔可能に弾性支持されている。ばね部60における屈曲部分の内側には、屈曲を容易とする切欠を必要に応じて形成しても良い。本実施形態においては、一対のばね部60,60が押圧部58の径方向で対向して設けられていることにより、押圧部58の変位がバランス良く行なえるようにされている。
【0031】
押圧部58には、突起68が形成されている。突起68は、押圧部58の内面66から固定筒部62に向けて突出されている。突起68には、突起内連通路69が形成されている。突起内連通路69は、突起68の内部を突起68の軸方向に延伸して形成されており、一方の端部が先端開口部70において突起68の突出端面上に開口されていると共に、他方の端部が基端開口部72において突起68の押圧部58側の突出基端部の外周面上に開口されている。なお、基端開口部72は、突起68の外周面上において、互いに対向する2箇所に形成されており、突起内連通路69は、突起68の突出基端側において、2つの基端開口部72,72を通じて外部空間と連通されている。なお、基端開口部72の設定は2箇所に限定されず、1箇所にのみ設けてもよいし、2箇所以上設けることも勿論可能である。
【0032】
このような押釦部56が、固定筒部62においてキャップ部材46に螺着される。なお、押釦部56とキャップ部材46の組み付けは、雄ネジと雌ネジによる螺着に限定されず、凹凸嵌合や圧入嵌合等任意の嵌合構造を採用して実現することができる。キャップ部材46への固定状態において、押圧部58が、スリット弁の外方側において、ばね部60,60によってスリット弁50への接近方向と反対方向(図5中、左方)に付勢されて弾性支持されており、押圧部58の内面66がスリット弁50と所定距離を隔てて対向されている。これにより、内面66が、押圧部58のスリット弁側対向面とされている。そして、突起68が内面66からスリット弁50に向けて突出されている。なお、好適には、押圧部58に押圧力が及ぼされていない状態で、突起68の突出先端部が、固定筒部62の貫通孔64に挿入されており、より好適には、突起68の突出端面がスリット弁50に接触状態とされる。このようにすれば、後述する押圧部58の押圧と略同時に突起68をスリット弁50に接触させて突起68のガタツキを抑えることにより、突起68によるスリット弁50の押し込みをより安定的に行なうことが出来る。
【0033】
また、図4から明らかなように、バイアル装着部18内には、保護筒部14がスライド可能に内挿されている。保護筒部14は、一方(図4中、下方)の端部が開口された有底円筒形状とされており、底部の中央には、中央孔73が貫設されている。保護筒部14の底部側の端部には、外周面上に突出して周方向に延びる環状突起74が形成されている。また、保護筒部14には、径方向で対向する部分が内側に傾斜された一対の押圧爪76,76が形成されている。押圧爪76,76は、保護筒部14の軸方向で底部側に行くに連れて保護筒部14の内方に傾斜する板形状とされており、保護筒部14の外壁が周上で部分的に切り起こされるようにして形成されている。更に、押圧爪76,76の先端縁部には、後述する係合爪80,80を確実に外方に押圧するために、外側に突出された押圧突部77,77が形成されている。なお、保護筒部14の内周面上に、保護筒部14の軸方向に延びる案内リブ78を設けて、後述する薬剤バイアル86を保護筒部14内で位置決めするようにしても良い。本実施形態においては、保護筒部14の周方向で等間隔を隔てて4つの案内リブ78,78,78,78が形成されている。
【0034】
一方、本体筒部15において、保護筒部14の押圧爪76,76と対応する位置には、内側に傾斜された一対の係合爪80,80が形成されている。係合爪80,80は、本体筒部15の軸方向で開口側(図4中、下側)に行くに連れて本体筒部15の内方に傾斜する板形状とされており、本体筒部15の外壁が周上で部分的に切り起こされるようにして形成されている。
【0035】
そして、本体筒部15の開口端部28に、保護筒部14が内挿される。図4に示したように、保護筒部14の内挿状態において、本体筒部15の係合爪80と保護筒部14の基端面82が係合することにより、保護筒部14の本体筒部15内へのスライドが阻止されると共に、本体筒部15の内周面において開口端部28側の周上の適宜の位置に形成された係止突起83と保護筒部14の環状突起74が係合することによって、保護筒部14の本体筒部15からの抜け出しが阻止されている。これにより、保護筒部14が、本体筒部15から突出した保護位置で保持されるようになっている。
【0036】
保護筒部14の組み付け状態において、穿刺針24が、保護筒部14の中央孔73を通じて保護筒部14内に突出されている。穿刺針24の先端部26は、保護筒部14が本体筒部15から突出された保護位置に位置された状態で、保護筒部14内に位置されるようになっている。
【0037】
また、本体部12の仕切壁16において、バイアル装着部18と反対側には、シリンジ装着ポート20が突設されている。シリンジ装着ポート20は、採取デバイスとしてのシリンジ(後述する図6等参照)のチップが装着可能とされており、必要に応じて採取デバイスが螺着可能なように、外周面上に雄ネジが形成されている。前述のように、このシリンジ装着ポート20内に薬液通路30の第二開口部34が開口されている。更に、仕切壁16において、シリンジ装着ポート20を挟む両側には、一対の螺合片84,84が突設されている。螺合片84,84の外面には雄ネジが形成されている。
【0038】
本実施形態における薬液調製用器具10は、スリット弁50を除く全体が樹脂材料によって形成されている。但し、薬液調製用器具10は、例えば金属から形成されていても良いし、穿刺針24の先端部26のみが金属で形成されて、その他の部分が樹脂材料から形成されていても良い。ここにおいて、樹脂材料で形成された本体部12や保護筒部14、キャップ部材46のハウジング部48や押釦部56に用いられる材料としては、薬剤に溶出するといった、薬剤に対して悪影響を与えることのないものが使用され、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ステンレス等が使用される。
【0039】
次に、このような薬液調製用器具10を用いて、薬液を調製する方法について図6に基づいて説明する。先ず、薬液調製用器具10と、薬剤バイアル86およびシリンジ88を準備する。
【0040】
薬剤バイアル86は、ガラス瓶90と、ガラス瓶90の開口を塞ぐゴム栓92とから構成されている。薬剤バイアル86の内部には、凍結乾燥された蛋白製剤等の固形の薬剤94が封入されている。薬剤バイアル86の内部は真空の負圧状態とされている。
【0041】
そして、図6(a)に示すように、薬液調製用器具10のシリンジ装着ポート20に、シリンジ88を接続した状態で、薬剤バイアル86を保護筒部14内に挿入する。シリンジ88の内部には、蒸留水、生理食塩水などの溶解液98が充填されている。薬液調製用器具10の姿勢は特に限定されるものではないが、好適には、机などの上に薬剤バイアル86を載置し、薬剤バイアル86の上方から保護筒部14を装着する。詳細な図示は省略するが、薬剤バイアル86が挿入されることによって、保護筒部14の押圧爪76,76(図4参照)が押し広げられる。これにより、本体筒部15の係合爪80,80が押圧爪76,76で押されて外側に撓まされて、係合爪80,80と保護筒部14の基端面82との係合が解除される。その結果、保護筒部14が本体筒部15内にスライド可能とされる。
【0042】
そして、図6(b)に示すように、保護筒部14の全体が本体筒部15内に収容されるまで、薬剤バイアル86をバイアル装着部18内に押し込む。これにより、穿刺針24の先端部26が薬液調製用器具10の外部に突出されて、薬剤バイアル86のゴム栓92を貫くことにより、薬液通路30およびエア通路40が薬剤バイアル86の内部と連通する。
【0043】
その結果、薬剤バイアル86の内部とシリンジ88の内部とが、薬液通路30を通じて連通される。そして、薬剤バイアル86の内部の負圧で吸引されると共にプランジャ100が押し込まれることによって、シリンジ88内の溶解液98が、薬液通路30を通じて薬剤バイアル86の内部に流入する。これにより、薬剤バイアル86内で溶解液98と薬剤94が混合されて、混合薬液102が調製される。
【0044】
次に、図6(c)に示すように、薬液調製用器具10の姿勢を、薬剤バイアル86が鉛直上方(図6中、上方)に、シリンジ88が鉛直下方(図6中、下方)に位置決めされる状態とする。これにより、薬液通路30の第一開口部32が、混合薬液102内に位置される。そして、押釦部56の押圧部58を、ばね部60の付勢力に抗して押圧しつつシリンジ88のプランジャ100を引くことにより、薬剤バイアル86内で調製された混合薬液102が、薬液通路30を通じて、シリンジ88内に吸引される。
【0045】
より詳しくは、このような構造とされた薬液調製用器具10によれば、薬剤バイアル86内で薬剤94と溶解液98を混合した際に泡が生じた場合には、図7に示すように、押釦部56の押圧部58を、ばね部60の付勢力に抗して押圧する。これにより、図5(b)に示したように、押圧部58の突起68がスリット弁50に差し込まれて、スリット弁50が開口状態とされる。その結果、エア通路40が外部空間と連通されて、薬剤バイアル86内が負圧から常圧となる。これにより、薬剤バイアル86内に生じていた泡の内圧が上昇し、泡が膨張することで破泡され、薬液バイアル86内の泡を消滅させることができる。
【0046】
そして、特に本発明における薬液調製用器具10によれば、押釦部56の押圧部58を押し込むという簡易な操作でエア通路40を外部空間と連通することが可能であり、図7に示したように、薬液調製用器具10を把持しつつ、薬液調製用器具10を把持した片手で容易に操作することが出来る。これにより、シリンジ88を持ち替えるなどの手間を要することなく、シリンジ88を把持したまま薬剤バイアル86内の泡を容易に消滅させることが出来ると共に、シリンジ88のプランジャ100を引くことにより、薬剤バイアル86内にエア通路40を介して外気を流入させつつ薬剤バイアル86内で調製された混合薬液102を、薬液通路30を通じて、シリンジ88内に吸引採取することができる。
【0047】
さらに、押釦部56における突起68内には、突起内連通路69(図5参照)が形成されている。これにより、突起68でスリット弁50を押し開いた際に、スリット弁50と突起68との間の隙間が小さかった場合でも、突起内連通路69を通じてエア通路40を外部空間と安定的に連通することが出来る。その結果、薬剤バイアル86内により確実に外気を流入させて、より安定的な破泡を行なうことが出来る。加えて、突起内連通路69の基端開口部72が、突起68の外周面上に開口されている。これにより、押釦部56を押圧する指で突起内連通路69が塞がれるおそれも回避されており、エア通路40をより確実に外部空間と連通することが可能とされている。
【0048】
また、図3等から明らかなように、穿刺針24において、エア通路40の内側開口部42が、薬液通路30の第一開口部32よりも先端部26側に位置されている。これにより、図6(c)に示したように、穿刺針24が鉛直上方に向いた状態で、エア通路40の開口部が混合薬液102の液面よりも上方に位置されるようになっている。その結果、エア通路40を通じて流入する空気が、混合薬液102中を通ることなく薬剤バイアル86内に流入されるようになっており、混合薬液102中の泡の発生がより軽減されている。
【0049】
更にまた、バイアル装着部18には、保護筒部14がスライド可能に設けられている。これにより、バイアル装着部18に薬剤バイアル86を装着する前の状態では、保護筒部14を本体筒部15から突出させることで穿刺針24の先端部26を保護筒部14内に位置させることが出来る。その結果、未使用時における穿刺針24の露出を抑えて、穿刺針24の汚染や怪我のおそれを軽減することが出来る。
【0050】
次に、図8〜図10に、本発明の第二の実施形態としての薬液調製用器具110を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0051】
薬液調製用器具110は、前記第一の実施形態としての薬液調製用器具10のシリンジ装着ポート20側に、バイアル装着用アダプタ112が装着されたものである。バイアル装着用アダプタ112は両端が開口する略円筒形状を有している。バイアル装着用アダプタ112の軸方向の中間部分には、軸直角方向に広がる中間壁114が形成されている。
【0052】
中間壁114の一方の側(図10中、下側)には、内筒部116と、内筒部116の周囲を囲む外筒部118が形成されている。内筒部116と外筒部118は、バイアル装着用アダプタ112と同一中心軸上に形成されている。内筒部116の内面には、雌ネジが形成されている。一方、外筒部118の外径は、本体筒部15の外径と略等しくされている。
【0053】
また、中間壁114の他方の側(図10中、上側)には、バイアル装着部120が形成されている。バイアル装着部120は、中間壁114を底部として、一方(図10中、上方)に開口する有底円筒形状とされている。なお、バイアル装着部120の内面には、必要に応じて、バイアル装着部120の軸方向に延びる案内リブ122が形成されており、後述する液バイアル130をバイアル装着部120内で位置決め出来るようにされている。本実施形態においては、4つの案内リブ122,122,122,122がバイアル装着部120の周方向で所定間隔を隔てて形成されている。
【0054】
さらに、バイアル装着部120には、穿刺針124が形成されている。穿刺針124は、中間壁114の中心部から、バイアル装着用アダプタ112の中心軸上を延伸して、バイアル装着部120内に突出されている。穿刺針124の内部には連絡路126が形成されている。連絡路126は、穿刺針124の内部を貫通して形成されており、一方の端部が穿刺針124の突出先端部分の外周面上に開口されていると共に、他方の端部が中間壁114を貫通して、中間壁114の中心部でバイアル装着部120と反対側(図10中、下側)に開口されている。この連通路126の経路上における他方の端部側には、メッシュ状のフィルタ127が設けられている。これにより、後述する液バイアル130をバイアル装着部120に取り付けて、液バイアル130の内部の溶解液98を、薬液通路30を通じて薬剤バイアル86の内部に流入させる際に、溶解液98をフィルタ127で濾過して、溶解液98中に混入したゴム小片等の異物を除去することが出来る。なお、中間壁114の内筒部116側には、連絡路126の開口部を囲む円筒形状のカラー部128が形成されている。カラー部128の内径寸法は、シリンジ装着ポート20の外径寸法と略等しくされている。
【0055】
このようなバイアル装着用アダプタ112は、内筒部116の雌ネジが本体部12の螺合片84に形成された雄ネジと螺合されることにより、本体部12におけるシリンジ装着ポート20側に装着される。本体部12への装着状態において、カラー部128内にシリンジ装着ポート20が挿入されている。これにより、本体部12の薬液通路30がバイアル装着用アダプタ112の連絡路126と接続されて、バイアル装着部120内に開口されている。
【0056】
このような薬液調製用器具110を用いて、薬液を調製する場合には、先ず、図11に示すように、バイアル装着用アダプタ112を装着した薬液調製用器具110と、薬剤バイアル86および液バイアル130を用意する。
【0057】
液バイアル130は、薬剤バイアル86と略同様の構造を有しており、ガラス瓶132とゴム栓134から構成されている。液バイアル130の内部には、液体状の溶解液98が封入されている。液バイアル130の内部は常圧とされている。
【0058】
そして、図11(a)に示すように、バイアル装着用アダプタ112のバイアル装着部120に液バイアル130を装着する。なお、薬液調製用器具110の姿勢は特に限定されるものではないが、好適には、机などの上に液バイアル130を載置し、液バイアル130の上方からバイアル装着用アダプタ112を装着する。これにより、穿刺針124がゴム栓134を貫いて、薬液通路30が液バイアル130の内部と連通する。
【0059】
次に、薬液調製用器具110の姿勢を、液バイアル130を装着したバイアル装着用アダプタ112を鉛直上側(図11中、上側)に位置決めし、図11(b)に示すように、保護筒部14内に薬剤バイアル86を装着して、保護筒部14の全体が本体筒部15内に収容されるまで薬剤バイアル86を本体筒部15内に押し込む。これにより、穿刺針24がゴム栓92を貫いて、薬液通路30が薬剤バイアル86の内部と連通される。
【0060】
そして、薬剤バイアル86の内部と液バイアル130の内部とが、薬液通路30を通じて連通される。薬剤バイアル86の内部は負圧状態とされており、薬剤バイアル86の内圧が、液バイアル130の内圧よりも低いことから、この内圧差を駆動力として、液バイアル130の内部の溶解液98が、薬液通路30を通じて薬剤バイアル86の内部に流入する。これにより、薬剤バイアル86内で溶解液98と薬剤94が混合されることにより、混合薬液102が調製される。そして、図11(c)に示すように、溶解液98と薬剤94との混合により混合薬液102内に泡を生じている場合には、押釦部56を押圧して、薬剤バイアル86内をエア通路40を通じて外部空間と連通させる。これにより、薬剤バイアル86内の負圧を利用して薬剤バイアル86内に外気を流入させて、薬剤バイアル86の内圧上昇により、泡の内圧を上昇させる。そして、泡を膨張させることにより泡を破泡して消滅させることが出来る。
【0061】
続いて、バイアル装着用アダプタ112と本体部12との螺合を解除して、バイアル装着用アダプタ112を液バイアル130と共に本体部12から取り外した後に、図6(c)に示したのと同様に、シリンジ装着ポート20にシリンジ88を接続して、押釦部56を押圧しつつシリンジ88のプランジャ100を引くことにより、薬剤バイアル86内に貯留された混合薬液102をシリンジ88内に吸引する。
【0062】
本実施形態に従う構造とされた薬液調製用器具110によれば、バイアル装着用アダプタ112によって、シリンジ装着ポート20に液バイアル130を装着することが出来る。これにより、薬液調製用器具110を用いて、液バイアル130内の溶解液98を薬剤バイアル86内に流入させて、薬剤94と混合させることにより、混合薬液102を調製することが出来る。そして、前記第一の実施形態と同様に、薬剤94と溶解液98との混合に際して気泡が生じた場合には、押釦部56を押圧することにより、容易且つ安定的に泡を消滅させることが出来る。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、押釦部の具体的構造は前記実施形態のものに限定されることはなく、ばね部を金属や弾性体等で形成する等しても良い。
【0064】
さらに、前記第一の実施形態におけるバイアル装着部18や、前記第二の実施形態におけるバイアル装着部120の形状は、バイアルが着脱可能な形状であれば特に限定されることはない。前記各実施形態におけるバイアル装着部18,120は略円筒形状とされていたが、例えばバイアルの開口部の外径と略同一長さの辺を有する正方形の矩形筒形状や、その他の多角筒形状とされる等しても良い。
【0065】
また、前記実施形態においては、一方のバイアルに固体状の薬剤、他方のバイアル又はシリンジに液体状の溶解液が収容されていたが、例えば本発明の薬剤調製器具に対して、液体を収容する二つのバイアル或いはバイアルとシリンジを装着しても良い。
【符号の説明】
【0066】
10,110:薬液調製用器具、12:本体部、14:保護筒部、15:本体筒部、16:仕切壁、18:バイアル装着部、20:シリンジ装着ポート(採取デバイス装着ポート)、24:穿刺針、26:先端部、30:薬液通路、32:第一開口部、34:第二開口部、40:エア通路、42:内側開口部、44:外側開口部、50:スリット弁、54:スリット、56:押釦部、58:押圧部、60:バネ部、68:突起、69:突起内連通路、70:先端開口部、72:基端開口部、86:薬剤バイアル、88:シリンジ、94:薬剤、98:溶解液、102:混合薬液、112:バイアル装着用アダプタ、130:液バイアル
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末製剤が収容されたバイアル内に溶解液等を注入し、粉末製剤と溶解液を混合して調製するために使用される薬液調製用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗生物質や血液製剤等、輸液の状態では化学的に不安定となり変質のおそれのある製剤については、ゴム栓で密封されたバイアル中に凍結乾燥状態で保存する一方、使用直前に蒸留水や生理食塩水、ブドウ糖液等の溶解液に溶解調製して、患者へ投薬等することが行われている。
【0003】
このようなバイアル中に凍結乾燥状態で保存された製剤と溶解液等との調製を簡便に行うことができる薬液調製用器具として、例えば、特許文献1(特開平7−213585号公報)に記載のものが知られている。この薬液調製用器具は、仕切壁を挟んだ一方の側に設けられて穿刺針が突設されたバイアル装着部と、他方の側に突設されたシリンジ装着ポートを備えている。穿刺針の内部には、一端が穿刺針の表面に開口すると共に他端がシリンジ装着ポートに開口する薬液通路が貫通して設けられている。薬液の調製を行う際には、シリンジ装着ポートに取り付けたシリンジから、予め内部に収容した一定量の溶解液を、薬液通路を介してバイアル装着部に取り付けたバイアル内に移動させ、このバイアル内の製剤と溶解液を混合することにより行われる。そして、調製後の薬液をシリンジにより吸引して採取して、患者へ投薬等するようになっている。
【0004】
ところで、バイアル中に蛋白製剤等、溶解液との混合の際に泡を発生する製剤を収容する場合は、バイアルからシリンジに採取する際に、薬液と共に泡も吸引してしまうことから、発生した泡を消滅させる必要がある。ところが、蛋白製剤の溶解において一度発生した泡は、シリンジの外面を手指で叩いて微細な振動を加えるタッピング等の操作では、破泡させることが難しい。それ故、薬液と共に吸引した泡を、シリンジの空気抜き操作に併せて排出することも考えられるが、泡の排出は泡を形成する薬液の排出も伴うことから、薬液の損失が問題となる。そこで、この問題に対処するために、特許文献1では、バイアル内に連通するエア通路を設ける一方、該エア通路の外部開口部を蓋部材にて密封しバイアル内を負圧に保持した状態で製剤と溶解液の混合を行い、その後、エア通路の開口部の蓋部材を外して大気に解放し、バイアル内に空気を流入させることにより、発生した泡を消滅させることが提案されている。
【0005】
ところが、このような従来構造では、シリンジ内の溶解液とバイアル内の製剤を混合した後、蓋部材を取り外すために、シリンジの手を持ち替えたり、向きを変えたりする必要があり、操作が煩雑であった。加えて、シリンジの持ち替え等の動作によりバイアル内に外気を流入させる動作を安定した姿勢で行うことが難しくなったり、それに起因して、空気の流入による破泡が上手くいかないおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−213585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、溶解操作中にバイアル内に生じた泡を、より優れた操作性をもって容易且つ安定的に消滅させることの出来る、新規な構造の薬液調製用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、仕切壁と該仕切壁の一方の側に設けられて穿刺針が突設されたバイアル装着部および該仕切壁の他方の側に突設された採取デバイス装着ポートを備えた本体部と、前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の表面に開口すると共に他端が前記採取デバイス装着ポートに開口する薬液通路と、前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の先端部に開口すると共に他端が前記本体部の外周面に開口するエア通路とを備えた薬液調製用器具であって、前記本体部の外周面に開口する前記エア通路の他端の開口部が、スリット弁によって開口可能に密封されている一方、前記スリット弁の外方側には、スリット弁への接近方向と反対方向に付勢されて弾性支持された押釦部が設けられており、付勢力に抗して押釦部を押圧することにより該押釦部の突起がスリット弁に差し込まれてスリット弁が開口状態とされるようになっていることを、特徴とする。
【0010】
本発明に従う構造とされた薬液調整用器具によれば、エア通路の他端の開口部をスリット弁にて密封し、バイアル内を負圧に保持した状態で製剤と溶解液の混合を行い、溶解操作中にバイアル内に気泡が生じた場合には、押釦部を押圧して押釦部の突起をスリット弁に差し込んでスリット弁を開口することにより、エア通路を外部空間と連通することが出来る。これにより、エア通路を通じてバイアル内に外気を流入させて、バイアル内の泡を消滅させることが出来る。
【0011】
そして、本発明によれば、エア通路の密封と開口の切り換えを、押釦部の押圧とその解除によって行なうことが出来る。これにより、採取デバイス装着ポートにシリンジやバイアル等の採取器を装着した状態で、薬剤調製器具を把持した片方の手で押釦部を操作してシリンジ内の破泡を行なうことが可能であり、優れた操作性をもって、容易且つ安定的な破泡を行なうことが出来る。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記押釦部が平板状の押圧部と該押圧部を前記スリット弁の外方側に弾性支持するばね部を含んで構成されており、前記突起が前記押圧部のスリット弁側対向面からスリット弁に向かって突出されている一方、前記突起には、少なくとも一端が先端側で開口すると共に他端が基端側で開口する突起内連通路が設けられているものである。
【0013】
本態様によれば、押釦部が押圧されて、突起がスリット弁に差し込まれた際には、スリット弁の隙間に加えて、突起内連通路を通じても外気をバイアル内に導入することが出来る。従って、仮に、スリット弁の弾性復帰によりスリット弁と突起の間の隙間が塞がってしまった場合でも、突起内連通路を通じて外気をバイアル内に導入することが出来る。これにより、一度の押釦部の押圧操作により、バイアル内に確実に空気を導入することが出来る。
【0014】
なお、本態様において、より好ましくは、前記突起内連通路における前記突起の基端側の開口部が、前記突起の外周面上に開口されている。このようにすれば、押釦部を押し込む指で突起内連通路の基端側の開口部が塞がれることを防止することが出来て、突起内連通路の連通状態をより確実に維持することが出来る。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記採取デバイス装着ポートがシリンジの先端部が装着されるシリンジ装着ポートによって構成されている一方、該シリンジ装着ポートに対してバイアル装着用アダプタが装着可能とされているものである。
【0016】
本態様によれば、バイアル装着用アダプタを介して、シリンジ装着ポートにもバイアルを装着することが出来る。これにより、例えば、溶解液を収容したバイアル(液バイアル)と、製剤を凍結乾燥状態で収容して内部が負圧状態とされたバイアル(減圧バイアル)とを用意して、液バイアルをバイアル装着用アダプタを介してシリンジ装着ポートに装着した後に、減圧バイアルをバイアル装着部に装着することによって、両バイアルの内圧差を利用して、液バイアル内の溶解液を減圧バイアル内に移動させて、液バイアル内で製剤と溶解液を混合することが出来る。その後、液バイアルと共にバイアル装着用アダプタを取り外して、シリンジ装着ポートにシリンジを接続することによって、減圧バイアル内で調整された混合薬液を吸引して採取することが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バイアル内を外部空間と連通するエア通路上にスリット弁を設けると共に、該スリット弁の外方側に押釦部を設けて、該押釦部が押し込まれることにより該押釦部の突起を該スリット弁に差し込んで、該スリット弁を開口するようにした。これにより、シリンジ等を採取デバイス装着ポートに装着した状態で、片手で押釦部を操作して、バイアル内に外気を流入させることが出来る。その結果、優れた操作性をもって、バイアル内の気泡をより容易且つ安定的に消滅させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施形態としての薬液調製用器具の側面図。
【図2】図1に示した薬液調製用器具の図1とは異なる側面図。
【図3】図2におけるIII−III断面図。
【図4】図1におけるIV−IV断面図。
【図5】図1に示した薬液調製用器具の要部の断面説明図。
【図6】図1に示した薬液調製用器具の使用方法を説明する説明図。
【図7】図1に示した薬液調製用器具による破泡方法を説明する説明図。
【図8】本発明の第二の実施形態としての薬液調製用器具の側面図。
【図9】図8に示した薬液調製用器具の図8とは異なる側面図。
【図10】図9におけるX−X断面図。
【図11】図8に示した薬液調製用器具の使用方法を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
先ず、図1〜図4に、本発明の第一の実施形態としての薬液調製用器具10を示す。薬液調製用器具10は、全体として略円筒形状の本体部12と、本体部12にスライド可能に組み付けられた保護筒部14とを有している。
【0021】
本体部12は、略円筒形状の本体筒部15を有している。図3から明らかなように、本体筒部15は、一方の端部が開口されていると共に、他方の端部が本体筒部15の軸直角方向に広がる仕切壁16で塞がれた略有底円筒形状を有している。そして、本体筒部15の円筒の内側となる仕切壁16の一方の側(図3中、下側)にバイアル装着部18が形成されている一方、円筒の外側となる仕切壁16の他方の側(図3中、上側)に、採取デバイス装着ポートとしてのシリンジ装着ポート20が突設されている。
【0022】
バイアル装着部18には、穿刺針24が突設されている。穿刺針24は、仕切壁16の略中心部からバイアル装着部18内に突出して、本体筒部15の中心軸上を延伸する形状とされている。穿刺針24の突出寸法は、本体筒部15の軸寸法よりも大きくされており、穿刺針24の先端部26は、本体筒部15の開口端部28よりも外方に突出位置されている。穿刺針24の先端部26は、後述する薬剤バイアル86のゴム栓92を貫通可能なように針形状を有している。
【0023】
穿刺針24の内部には、薬液通路30が形成されている。薬液通路30は、穿刺針24の内部と仕切壁16を貫通して、穿刺針24の軸方向に延びる連通路とされている。薬液通路30は、一方の端部が第一開口部32においてバイアル装着部18内に開口されていると共に、他方の端部が第二開口部34においてシリンジ装着ポート20内に開口されている。第一開口部32は、穿刺針24を軸直角方向に貫通して、穿刺針24の外周面上に開口されている。また、第一開口部32は、穿刺針24の軸方向の中間部分に形成されており、本体筒部15の軸方向(図3中、上下方向)で、本体筒部15の開口端部28よりも内側に位置されて、バイアル装着部18の内部に位置されている。なお、第二開口部34には、シリンジ装着ポート20側からメッシュ状のフィルタ35が取り付けられている。これにより、後述する混合薬液102を薬液バイアル86からシリンジ88へ引き抜くに際して、混合薬液102をフィルタ35で濾過して、混合薬液102中に混入したゴム小片等の異物を除去することが出来る。
【0024】
さらに、バイアル装着部18には、連絡管体36が形成されている。連絡管体36は、仕切壁16におけるバイアル装着部18側の面上に形成されており、本体筒部15の軸直角方向に延伸して、穿刺針24と本体筒部15とを接続する中空菅体形状とされている。連絡管体36の一方の端部38は、本体筒部15の外周面上に突出されている。
【0025】
そして、連絡管体36と穿刺針24の内部を貫通して、エア通路40が形成されている。エア通路40は、連絡管体36と穿刺針24の軸方向に延びる略L字の連通路とされており、一方の端部が穿刺針24の先端部26に開口された内側開口部42とされていると共に、他方の端部が本体部12の外周面上に開口された外側開口部44とされている。従って、エア通路40の内側開口部42は、本体筒部15の軸方向で、本体筒部15の開口端部28よりも外側に位置されており、穿刺針24の突出方向で、薬液通路30の第一開口部32よりも先端部26側に位置されている。このように、エア通路40の内側開口部42が開口する穿刺針24の先端部26が、本体筒部15の開口端部28よりも外側に突出されている理由は、エア通路40の内側開口部42をバイアル装着部18内に開口する薬液通路30の第一開口部32からできるだけ遠位端に設けるためである。これにより、後述する薬剤バイアル86内にエア通路40を通じて外気が流入される際に、かかる外気が混合薬液102内に放出されて新たな薬液の発泡を招くことを防止することができる。また、混合薬液102をシリンジ88に吸引採取する際にも、エア通路40から流入される外気が混合薬液102内に放出されて薬液の発泡を生じさせたり、流入外気が直接シリンジ88内に吸引されることを防止することができる。従って、このような効果が達成される限り、本体筒部15やバイアル装着部18の形状、穿刺針24の突出長さ等の設計事項は適宜変更することが可能である。なお、エア通路40の経路上における外部開口部44の近傍には、疎水性のフィルタ45が設けられている。これにより、後述する薬剤バイアル86内にエア通路40を通じて外気が流入される際に、外気がフィルタ45により濾過されて、外気に含まれる雑菌や異物等が薬剤バイアル86内に混入することを防止できる。
【0026】
図5に示すように、連絡管体36において、本体筒部15の外周面上に突出された端部38には、キャップ部材46が取り付けられている。キャップ部材46は、合成樹脂製のハウジング部48に弾性体から形成されたスリット弁50が設けられた構造とされている。ハウジング部48は軸方向両側に開口する筒形状とされており、一方の端部には、軸方向の外方(図5中、右方)に開口する嵌合溝52が形成されている。また、嵌合溝52と反対側の端部の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0027】
そして、ハウジング部48の一方の端部に、スリット弁50が設けられている。スリット弁50は弾性体から形成された略円板形状とされており、厚さ方向(図5中、左右方向)に貫通して直径上を延びる切込状のスリット54が形成されている。このスリット弁50が外周部分においてハウジング部48の一方の開口部に固定されている。本実施形態においては、ハウジング部48の成形型内にスリット弁50を配設した状態でハウジング部48の樹脂材料が成形固化されることにより、スリット弁50がハウジング部48に一体的に固定されているが、例えばハウジング部48を分割構造体として、スリット弁50を挟んで固定するなどしても良い。また、リング状の一対の押さえ部材によりスリット弁50を両側から挟持する一方、かかる押さえ部材を超音波溶着により一体化して、押さえ部材をハウジング部48に接着剤等により固定するようにしても良い。スリット弁50のスリット54は、自然状態において閉状態とされている。
【0028】
このようなキャップ部材46は、本体部12の外周面上に突出された連絡管体36の端部38に固定されている。本体筒部15の外周面上において、連絡管体36の端部38の周囲には円筒状の周壁が形成されており、端部38とこの周壁によって、端部38の周囲に嵌合溝55が形成されている。そして、本体部12とキャップ部材46が互いの嵌合溝52,55に相互に入り込んで、必要に応じて接着等されることにより、キャップ部材46が端部38に外挿状態で固定されている。これにより、連絡管体36内に形成されたエア通路40の外側開口部44が、スリット弁50で密封されている。
【0029】
さらに、キャップ部材46には、押釦部56が取り付けられている。押釦部56は合成樹脂からなる一体成形品とされており、平板状の押圧部58が、ばね部60,60を介して固定筒部62に弾性的に固定された構造とされている。
【0030】
押圧部58は、略円形の平板形状とされている。固定筒部62は有底の円筒形状とされており、底部の中央部分には円形の貫通孔64が貫設されていると共に、内周面には、雌ネジが形成されている。そして、押圧部58において固定筒部62と対向する内面66の外周部分と、固定筒部62の外周面が、一対のばね部60,60で相互に連結されている。ばね部60はくの字に屈曲された板形状とされている。これらばね部60,60が屈曲可能とされていることにより、押圧部58が、固定筒部62に対して接近/離隔可能に弾性支持されている。ばね部60における屈曲部分の内側には、屈曲を容易とする切欠を必要に応じて形成しても良い。本実施形態においては、一対のばね部60,60が押圧部58の径方向で対向して設けられていることにより、押圧部58の変位がバランス良く行なえるようにされている。
【0031】
押圧部58には、突起68が形成されている。突起68は、押圧部58の内面66から固定筒部62に向けて突出されている。突起68には、突起内連通路69が形成されている。突起内連通路69は、突起68の内部を突起68の軸方向に延伸して形成されており、一方の端部が先端開口部70において突起68の突出端面上に開口されていると共に、他方の端部が基端開口部72において突起68の押圧部58側の突出基端部の外周面上に開口されている。なお、基端開口部72は、突起68の外周面上において、互いに対向する2箇所に形成されており、突起内連通路69は、突起68の突出基端側において、2つの基端開口部72,72を通じて外部空間と連通されている。なお、基端開口部72の設定は2箇所に限定されず、1箇所にのみ設けてもよいし、2箇所以上設けることも勿論可能である。
【0032】
このような押釦部56が、固定筒部62においてキャップ部材46に螺着される。なお、押釦部56とキャップ部材46の組み付けは、雄ネジと雌ネジによる螺着に限定されず、凹凸嵌合や圧入嵌合等任意の嵌合構造を採用して実現することができる。キャップ部材46への固定状態において、押圧部58が、スリット弁の外方側において、ばね部60,60によってスリット弁50への接近方向と反対方向(図5中、左方)に付勢されて弾性支持されており、押圧部58の内面66がスリット弁50と所定距離を隔てて対向されている。これにより、内面66が、押圧部58のスリット弁側対向面とされている。そして、突起68が内面66からスリット弁50に向けて突出されている。なお、好適には、押圧部58に押圧力が及ぼされていない状態で、突起68の突出先端部が、固定筒部62の貫通孔64に挿入されており、より好適には、突起68の突出端面がスリット弁50に接触状態とされる。このようにすれば、後述する押圧部58の押圧と略同時に突起68をスリット弁50に接触させて突起68のガタツキを抑えることにより、突起68によるスリット弁50の押し込みをより安定的に行なうことが出来る。
【0033】
また、図4から明らかなように、バイアル装着部18内には、保護筒部14がスライド可能に内挿されている。保護筒部14は、一方(図4中、下方)の端部が開口された有底円筒形状とされており、底部の中央には、中央孔73が貫設されている。保護筒部14の底部側の端部には、外周面上に突出して周方向に延びる環状突起74が形成されている。また、保護筒部14には、径方向で対向する部分が内側に傾斜された一対の押圧爪76,76が形成されている。押圧爪76,76は、保護筒部14の軸方向で底部側に行くに連れて保護筒部14の内方に傾斜する板形状とされており、保護筒部14の外壁が周上で部分的に切り起こされるようにして形成されている。更に、押圧爪76,76の先端縁部には、後述する係合爪80,80を確実に外方に押圧するために、外側に突出された押圧突部77,77が形成されている。なお、保護筒部14の内周面上に、保護筒部14の軸方向に延びる案内リブ78を設けて、後述する薬剤バイアル86を保護筒部14内で位置決めするようにしても良い。本実施形態においては、保護筒部14の周方向で等間隔を隔てて4つの案内リブ78,78,78,78が形成されている。
【0034】
一方、本体筒部15において、保護筒部14の押圧爪76,76と対応する位置には、内側に傾斜された一対の係合爪80,80が形成されている。係合爪80,80は、本体筒部15の軸方向で開口側(図4中、下側)に行くに連れて本体筒部15の内方に傾斜する板形状とされており、本体筒部15の外壁が周上で部分的に切り起こされるようにして形成されている。
【0035】
そして、本体筒部15の開口端部28に、保護筒部14が内挿される。図4に示したように、保護筒部14の内挿状態において、本体筒部15の係合爪80と保護筒部14の基端面82が係合することにより、保護筒部14の本体筒部15内へのスライドが阻止されると共に、本体筒部15の内周面において開口端部28側の周上の適宜の位置に形成された係止突起83と保護筒部14の環状突起74が係合することによって、保護筒部14の本体筒部15からの抜け出しが阻止されている。これにより、保護筒部14が、本体筒部15から突出した保護位置で保持されるようになっている。
【0036】
保護筒部14の組み付け状態において、穿刺針24が、保護筒部14の中央孔73を通じて保護筒部14内に突出されている。穿刺針24の先端部26は、保護筒部14が本体筒部15から突出された保護位置に位置された状態で、保護筒部14内に位置されるようになっている。
【0037】
また、本体部12の仕切壁16において、バイアル装着部18と反対側には、シリンジ装着ポート20が突設されている。シリンジ装着ポート20は、採取デバイスとしてのシリンジ(後述する図6等参照)のチップが装着可能とされており、必要に応じて採取デバイスが螺着可能なように、外周面上に雄ネジが形成されている。前述のように、このシリンジ装着ポート20内に薬液通路30の第二開口部34が開口されている。更に、仕切壁16において、シリンジ装着ポート20を挟む両側には、一対の螺合片84,84が突設されている。螺合片84,84の外面には雄ネジが形成されている。
【0038】
本実施形態における薬液調製用器具10は、スリット弁50を除く全体が樹脂材料によって形成されている。但し、薬液調製用器具10は、例えば金属から形成されていても良いし、穿刺針24の先端部26のみが金属で形成されて、その他の部分が樹脂材料から形成されていても良い。ここにおいて、樹脂材料で形成された本体部12や保護筒部14、キャップ部材46のハウジング部48や押釦部56に用いられる材料としては、薬剤に溶出するといった、薬剤に対して悪影響を与えることのないものが使用され、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ステンレス等が使用される。
【0039】
次に、このような薬液調製用器具10を用いて、薬液を調製する方法について図6に基づいて説明する。先ず、薬液調製用器具10と、薬剤バイアル86およびシリンジ88を準備する。
【0040】
薬剤バイアル86は、ガラス瓶90と、ガラス瓶90の開口を塞ぐゴム栓92とから構成されている。薬剤バイアル86の内部には、凍結乾燥された蛋白製剤等の固形の薬剤94が封入されている。薬剤バイアル86の内部は真空の負圧状態とされている。
【0041】
そして、図6(a)に示すように、薬液調製用器具10のシリンジ装着ポート20に、シリンジ88を接続した状態で、薬剤バイアル86を保護筒部14内に挿入する。シリンジ88の内部には、蒸留水、生理食塩水などの溶解液98が充填されている。薬液調製用器具10の姿勢は特に限定されるものではないが、好適には、机などの上に薬剤バイアル86を載置し、薬剤バイアル86の上方から保護筒部14を装着する。詳細な図示は省略するが、薬剤バイアル86が挿入されることによって、保護筒部14の押圧爪76,76(図4参照)が押し広げられる。これにより、本体筒部15の係合爪80,80が押圧爪76,76で押されて外側に撓まされて、係合爪80,80と保護筒部14の基端面82との係合が解除される。その結果、保護筒部14が本体筒部15内にスライド可能とされる。
【0042】
そして、図6(b)に示すように、保護筒部14の全体が本体筒部15内に収容されるまで、薬剤バイアル86をバイアル装着部18内に押し込む。これにより、穿刺針24の先端部26が薬液調製用器具10の外部に突出されて、薬剤バイアル86のゴム栓92を貫くことにより、薬液通路30およびエア通路40が薬剤バイアル86の内部と連通する。
【0043】
その結果、薬剤バイアル86の内部とシリンジ88の内部とが、薬液通路30を通じて連通される。そして、薬剤バイアル86の内部の負圧で吸引されると共にプランジャ100が押し込まれることによって、シリンジ88内の溶解液98が、薬液通路30を通じて薬剤バイアル86の内部に流入する。これにより、薬剤バイアル86内で溶解液98と薬剤94が混合されて、混合薬液102が調製される。
【0044】
次に、図6(c)に示すように、薬液調製用器具10の姿勢を、薬剤バイアル86が鉛直上方(図6中、上方)に、シリンジ88が鉛直下方(図6中、下方)に位置決めされる状態とする。これにより、薬液通路30の第一開口部32が、混合薬液102内に位置される。そして、押釦部56の押圧部58を、ばね部60の付勢力に抗して押圧しつつシリンジ88のプランジャ100を引くことにより、薬剤バイアル86内で調製された混合薬液102が、薬液通路30を通じて、シリンジ88内に吸引される。
【0045】
より詳しくは、このような構造とされた薬液調製用器具10によれば、薬剤バイアル86内で薬剤94と溶解液98を混合した際に泡が生じた場合には、図7に示すように、押釦部56の押圧部58を、ばね部60の付勢力に抗して押圧する。これにより、図5(b)に示したように、押圧部58の突起68がスリット弁50に差し込まれて、スリット弁50が開口状態とされる。その結果、エア通路40が外部空間と連通されて、薬剤バイアル86内が負圧から常圧となる。これにより、薬剤バイアル86内に生じていた泡の内圧が上昇し、泡が膨張することで破泡され、薬液バイアル86内の泡を消滅させることができる。
【0046】
そして、特に本発明における薬液調製用器具10によれば、押釦部56の押圧部58を押し込むという簡易な操作でエア通路40を外部空間と連通することが可能であり、図7に示したように、薬液調製用器具10を把持しつつ、薬液調製用器具10を把持した片手で容易に操作することが出来る。これにより、シリンジ88を持ち替えるなどの手間を要することなく、シリンジ88を把持したまま薬剤バイアル86内の泡を容易に消滅させることが出来ると共に、シリンジ88のプランジャ100を引くことにより、薬剤バイアル86内にエア通路40を介して外気を流入させつつ薬剤バイアル86内で調製された混合薬液102を、薬液通路30を通じて、シリンジ88内に吸引採取することができる。
【0047】
さらに、押釦部56における突起68内には、突起内連通路69(図5参照)が形成されている。これにより、突起68でスリット弁50を押し開いた際に、スリット弁50と突起68との間の隙間が小さかった場合でも、突起内連通路69を通じてエア通路40を外部空間と安定的に連通することが出来る。その結果、薬剤バイアル86内により確実に外気を流入させて、より安定的な破泡を行なうことが出来る。加えて、突起内連通路69の基端開口部72が、突起68の外周面上に開口されている。これにより、押釦部56を押圧する指で突起内連通路69が塞がれるおそれも回避されており、エア通路40をより確実に外部空間と連通することが可能とされている。
【0048】
また、図3等から明らかなように、穿刺針24において、エア通路40の内側開口部42が、薬液通路30の第一開口部32よりも先端部26側に位置されている。これにより、図6(c)に示したように、穿刺針24が鉛直上方に向いた状態で、エア通路40の開口部が混合薬液102の液面よりも上方に位置されるようになっている。その結果、エア通路40を通じて流入する空気が、混合薬液102中を通ることなく薬剤バイアル86内に流入されるようになっており、混合薬液102中の泡の発生がより軽減されている。
【0049】
更にまた、バイアル装着部18には、保護筒部14がスライド可能に設けられている。これにより、バイアル装着部18に薬剤バイアル86を装着する前の状態では、保護筒部14を本体筒部15から突出させることで穿刺針24の先端部26を保護筒部14内に位置させることが出来る。その結果、未使用時における穿刺針24の露出を抑えて、穿刺針24の汚染や怪我のおそれを軽減することが出来る。
【0050】
次に、図8〜図10に、本発明の第二の実施形態としての薬液調製用器具110を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0051】
薬液調製用器具110は、前記第一の実施形態としての薬液調製用器具10のシリンジ装着ポート20側に、バイアル装着用アダプタ112が装着されたものである。バイアル装着用アダプタ112は両端が開口する略円筒形状を有している。バイアル装着用アダプタ112の軸方向の中間部分には、軸直角方向に広がる中間壁114が形成されている。
【0052】
中間壁114の一方の側(図10中、下側)には、内筒部116と、内筒部116の周囲を囲む外筒部118が形成されている。内筒部116と外筒部118は、バイアル装着用アダプタ112と同一中心軸上に形成されている。内筒部116の内面には、雌ネジが形成されている。一方、外筒部118の外径は、本体筒部15の外径と略等しくされている。
【0053】
また、中間壁114の他方の側(図10中、上側)には、バイアル装着部120が形成されている。バイアル装着部120は、中間壁114を底部として、一方(図10中、上方)に開口する有底円筒形状とされている。なお、バイアル装着部120の内面には、必要に応じて、バイアル装着部120の軸方向に延びる案内リブ122が形成されており、後述する液バイアル130をバイアル装着部120内で位置決め出来るようにされている。本実施形態においては、4つの案内リブ122,122,122,122がバイアル装着部120の周方向で所定間隔を隔てて形成されている。
【0054】
さらに、バイアル装着部120には、穿刺針124が形成されている。穿刺針124は、中間壁114の中心部から、バイアル装着用アダプタ112の中心軸上を延伸して、バイアル装着部120内に突出されている。穿刺針124の内部には連絡路126が形成されている。連絡路126は、穿刺針124の内部を貫通して形成されており、一方の端部が穿刺針124の突出先端部分の外周面上に開口されていると共に、他方の端部が中間壁114を貫通して、中間壁114の中心部でバイアル装着部120と反対側(図10中、下側)に開口されている。この連通路126の経路上における他方の端部側には、メッシュ状のフィルタ127が設けられている。これにより、後述する液バイアル130をバイアル装着部120に取り付けて、液バイアル130の内部の溶解液98を、薬液通路30を通じて薬剤バイアル86の内部に流入させる際に、溶解液98をフィルタ127で濾過して、溶解液98中に混入したゴム小片等の異物を除去することが出来る。なお、中間壁114の内筒部116側には、連絡路126の開口部を囲む円筒形状のカラー部128が形成されている。カラー部128の内径寸法は、シリンジ装着ポート20の外径寸法と略等しくされている。
【0055】
このようなバイアル装着用アダプタ112は、内筒部116の雌ネジが本体部12の螺合片84に形成された雄ネジと螺合されることにより、本体部12におけるシリンジ装着ポート20側に装着される。本体部12への装着状態において、カラー部128内にシリンジ装着ポート20が挿入されている。これにより、本体部12の薬液通路30がバイアル装着用アダプタ112の連絡路126と接続されて、バイアル装着部120内に開口されている。
【0056】
このような薬液調製用器具110を用いて、薬液を調製する場合には、先ず、図11に示すように、バイアル装着用アダプタ112を装着した薬液調製用器具110と、薬剤バイアル86および液バイアル130を用意する。
【0057】
液バイアル130は、薬剤バイアル86と略同様の構造を有しており、ガラス瓶132とゴム栓134から構成されている。液バイアル130の内部には、液体状の溶解液98が封入されている。液バイアル130の内部は常圧とされている。
【0058】
そして、図11(a)に示すように、バイアル装着用アダプタ112のバイアル装着部120に液バイアル130を装着する。なお、薬液調製用器具110の姿勢は特に限定されるものではないが、好適には、机などの上に液バイアル130を載置し、液バイアル130の上方からバイアル装着用アダプタ112を装着する。これにより、穿刺針124がゴム栓134を貫いて、薬液通路30が液バイアル130の内部と連通する。
【0059】
次に、薬液調製用器具110の姿勢を、液バイアル130を装着したバイアル装着用アダプタ112を鉛直上側(図11中、上側)に位置決めし、図11(b)に示すように、保護筒部14内に薬剤バイアル86を装着して、保護筒部14の全体が本体筒部15内に収容されるまで薬剤バイアル86を本体筒部15内に押し込む。これにより、穿刺針24がゴム栓92を貫いて、薬液通路30が薬剤バイアル86の内部と連通される。
【0060】
そして、薬剤バイアル86の内部と液バイアル130の内部とが、薬液通路30を通じて連通される。薬剤バイアル86の内部は負圧状態とされており、薬剤バイアル86の内圧が、液バイアル130の内圧よりも低いことから、この内圧差を駆動力として、液バイアル130の内部の溶解液98が、薬液通路30を通じて薬剤バイアル86の内部に流入する。これにより、薬剤バイアル86内で溶解液98と薬剤94が混合されることにより、混合薬液102が調製される。そして、図11(c)に示すように、溶解液98と薬剤94との混合により混合薬液102内に泡を生じている場合には、押釦部56を押圧して、薬剤バイアル86内をエア通路40を通じて外部空間と連通させる。これにより、薬剤バイアル86内の負圧を利用して薬剤バイアル86内に外気を流入させて、薬剤バイアル86の内圧上昇により、泡の内圧を上昇させる。そして、泡を膨張させることにより泡を破泡して消滅させることが出来る。
【0061】
続いて、バイアル装着用アダプタ112と本体部12との螺合を解除して、バイアル装着用アダプタ112を液バイアル130と共に本体部12から取り外した後に、図6(c)に示したのと同様に、シリンジ装着ポート20にシリンジ88を接続して、押釦部56を押圧しつつシリンジ88のプランジャ100を引くことにより、薬剤バイアル86内に貯留された混合薬液102をシリンジ88内に吸引する。
【0062】
本実施形態に従う構造とされた薬液調製用器具110によれば、バイアル装着用アダプタ112によって、シリンジ装着ポート20に液バイアル130を装着することが出来る。これにより、薬液調製用器具110を用いて、液バイアル130内の溶解液98を薬剤バイアル86内に流入させて、薬剤94と混合させることにより、混合薬液102を調製することが出来る。そして、前記第一の実施形態と同様に、薬剤94と溶解液98との混合に際して気泡が生じた場合には、押釦部56を押圧することにより、容易且つ安定的に泡を消滅させることが出来る。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、押釦部の具体的構造は前記実施形態のものに限定されることはなく、ばね部を金属や弾性体等で形成する等しても良い。
【0064】
さらに、前記第一の実施形態におけるバイアル装着部18や、前記第二の実施形態におけるバイアル装着部120の形状は、バイアルが着脱可能な形状であれば特に限定されることはない。前記各実施形態におけるバイアル装着部18,120は略円筒形状とされていたが、例えばバイアルの開口部の外径と略同一長さの辺を有する正方形の矩形筒形状や、その他の多角筒形状とされる等しても良い。
【0065】
また、前記実施形態においては、一方のバイアルに固体状の薬剤、他方のバイアル又はシリンジに液体状の溶解液が収容されていたが、例えば本発明の薬剤調製器具に対して、液体を収容する二つのバイアル或いはバイアルとシリンジを装着しても良い。
【符号の説明】
【0066】
10,110:薬液調製用器具、12:本体部、14:保護筒部、15:本体筒部、16:仕切壁、18:バイアル装着部、20:シリンジ装着ポート(採取デバイス装着ポート)、24:穿刺針、26:先端部、30:薬液通路、32:第一開口部、34:第二開口部、40:エア通路、42:内側開口部、44:外側開口部、50:スリット弁、54:スリット、56:押釦部、58:押圧部、60:バネ部、68:突起、69:突起内連通路、70:先端開口部、72:基端開口部、86:薬剤バイアル、88:シリンジ、94:薬剤、98:溶解液、102:混合薬液、112:バイアル装着用アダプタ、130:液バイアル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁と該仕切壁の一方の側に設けられて穿刺針が突設されたバイアル装着部および該仕切壁の他方の側に突設された採取デバイス装着ポートを備えた本体部と、
前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の表面に開口すると共に他端が前記採取デバイス装着ポートに開口する薬液通路と、
前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の先端部に開口すると共に他端が前記本体部の外周面に開口するエア通路とを備えた薬液調製用器具であって、
前記本体部の外周面に開口する前記エア通路の他端の開口部が、スリット弁によって開口可能に密封されている一方、
前記スリット弁の外方側には、スリット弁への接近方向と反対方向に付勢されて弾性支持された押釦部が設けられており、付勢力に抗して押釦部を押圧することにより該押釦部の突起がスリット弁に差し込まれてスリット弁が開口状態とされるようになっていることを特徴とする薬液調製用器具。
【請求項2】
前記押釦部が平板状の押圧部と該押圧部を前記スリット弁の外方側に弾性支持するばね部を含んで構成されており、前記突起が前記押圧部のスリット弁側対向面からスリット弁に向かって突出されている一方、前記突起には、少なくとも一端が先端側で開口すると共に他端が基端側で開口する突起内連通路が設けられている請求項1に記載の薬液調製用器具。
【請求項3】
前記採取デバイス装着ポートがシリンジの先端部が装着されるシリンジ装着ポートによって構成されている一方、該シリンジ装着ポートに対してバイアル装着用アダプタが装着可能とされている請求項1又は2に記載の薬液調製用器具。
【請求項1】
仕切壁と該仕切壁の一方の側に設けられて穿刺針が突設されたバイアル装着部および該仕切壁の他方の側に突設された採取デバイス装着ポートを備えた本体部と、
前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の表面に開口すると共に他端が前記採取デバイス装着ポートに開口する薬液通路と、
前記穿刺針の内部を貫通して一端が穿刺針の先端部に開口すると共に他端が前記本体部の外周面に開口するエア通路とを備えた薬液調製用器具であって、
前記本体部の外周面に開口する前記エア通路の他端の開口部が、スリット弁によって開口可能に密封されている一方、
前記スリット弁の外方側には、スリット弁への接近方向と反対方向に付勢されて弾性支持された押釦部が設けられており、付勢力に抗して押釦部を押圧することにより該押釦部の突起がスリット弁に差し込まれてスリット弁が開口状態とされるようになっていることを特徴とする薬液調製用器具。
【請求項2】
前記押釦部が平板状の押圧部と該押圧部を前記スリット弁の外方側に弾性支持するばね部を含んで構成されており、前記突起が前記押圧部のスリット弁側対向面からスリット弁に向かって突出されている一方、前記突起には、少なくとも一端が先端側で開口すると共に他端が基端側で開口する突起内連通路が設けられている請求項1に記載の薬液調製用器具。
【請求項3】
前記採取デバイス装着ポートがシリンジの先端部が装着されるシリンジ装着ポートによって構成されている一方、該シリンジ装着ポートに対してバイアル装着用アダプタが装着可能とされている請求項1又は2に記載の薬液調製用器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−228332(P2012−228332A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97804(P2011−97804)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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