説明

薬物−薬物相互作用を最小にするための薬学的処方物

哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分と、非経口投与のために処方された第2薬物成分を含む、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせにおいて、もしもその薬物動態プロフィールが不変であるとすると、第1薬物成分の薬物動態プロフィールに干渉すると考えられる、第2薬物成分を、不変の薬物動態プロフィールとは異なる、変更された薬物動態プロフィールを持つようにさせる薬物の組み合わせが記載される。その薬物動態プロフィールが変更されるために、第2薬物成分は、第1薬物成分の薬物動態プロフィールにほとんど影響を及ぼさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連技術の引用)
本願は、米国仮特許出願第60/690,322号(2005年6月14日出願)の優先権の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、薬物間相互作用(drug−drug interaction)の最小化に関する。より具体的には、薬物動態学的薬物間相互作用を解消するための薬物の組み合わせが提供される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
生体にすでに投与された薬物が、投与された別の薬物と相互作用し、その別の薬物の効果を変更するとき、および両薬物が該生体において同時に存在するときに、薬物間相互作用が起きる。薬物間相互作用が起きると、これら薬物の内の一方が、他方の薬物と相互作用し、その結果、治療反応が上昇したり低下したりする。
【0004】
薬物間相互作用は、薬力学的相互作用、または薬物動態的相互作用のいずれかに分類される。薬力学的相互作用は、一般に、ある薬物が、別の薬物に対し、生体における薬物濃度に変化を生ずることなく、その作用部位において別の薬物の効果を増強または減少するときに見られる。薬力学的相互作用は、一般に、同様のまたは拮抗する作用を伴う二つ以上の薬物に見られ、これらの作用は、それぞれの薬物適用に対する患者の感度に影響を及ぼす。薬物動態的相互作用は、ある薬物が、同時に生体に存在する別の薬物の吸収、分布、排泄、または代謝を、増強または阻害する場合に見られる。薬物動態的相互作用は、一般に、薬物動態の変化をもたらす。
【0005】
ある薬物の消化管からの吸収を増強または阻害する場合、体内に同時に存在する別の薬物の存在は、一般に、(1)消化管の運動性、消化管のpH、または消化管内細菌叢を変えること;(2)吸収の困難なまたは吸収が容易なキレートまたは錯体を形成すること;(3)消化管粘膜損傷を誘発すること;または(4)対象薬物の生理化学的性質を変える結合反応を開始することによって、前記薬物のバイオアベイラビリティを増大または低下させる。吸収困難を解消するための一つの方法として、薬物のそれぞれの投与時間をずらすことが挙げられる。
【0006】
ある薬物の分布を阻害する場合、体内に同時に存在する別の薬物は、一般に、血漿タンパクまたは組織結合部位から前記薬物に取って代わる。より具体的には、これら薬物は、タンパクまたは組織の結合部位を求めて競合する。これら薬物の内、その結合部位に対しより高い親和度を持つ方が、他の薬物をその結合部位から排除する。
【0007】
ある薬物の排泄を増強または阻害する場合、体内に同時に存在する別の薬物は、陰イオン性担体および陽イオン性担体を求めて前記薬物と競合する。これら担体によって、糸球体濾過速度、能動的尿細管分泌、尿pH、受動的尿細管再吸収、およびその他の、同様の腎臓パラメータに変化がもたらされる。
【0008】
ある薬物の代謝を増強または阻害する場合、別の薬物の存在は、一般に、肝臓、脾臓、および骨髄を含む細網内皮系(RES)器官および組織に存在する前記薬物の代謝速度を変える。RES系は、別に単核食細胞系(MPS)とも呼ばれる。
【0009】
吸収、分布、排泄、および代謝困難を解消するための一つの対処法が、Swada et al.,特許文献1(米国特許第6,761,895号)に記載される。この‘895特許は、ある薬物と、共存薬物との間の望ましくない相互作用を、薬物の徐放性調節、または薬物の消化管に対する放出部位の調節によって回避するシステムを記載する。この特許は、代謝困難を解消することを目的として、徐放性調節、または消化管放出部位の調節を提唱する。これによれば、薬物の内の一つが、共存薬物が肝臓に吸収された後のある指定時間に肝臓に到達すると示されている。したがって、この’895特許は、どの薬物についても、その代謝速度を直接変えることなく代謝困難を解消するためのシステムを提唱する。
【0010】
前記に鑑み、哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分と、改変された薬物動態プロフィールを有し、非経口投与用に処方された第2薬物成分とを有する、薬物の組み合わせを含み、薬物動態学的薬物間相互作用を解消するための薬物の組み合わせを提供することが、本開示の一局面または目的である。改変された薬物送達ベヒクルにおいて第2薬物成分の改変処方物によって、それぞれの薬物成分のそれぞれの薬物動態プロフィールが、互いにほとんど影響を及ぼしあうことがないようにするか、または、少なくとも、それぞれのプロフィール間の相互作用が、本発明に従って第2薬物成分を処方しない場合に比べて、実質的に低減されるようにする。
【0011】
本明細書では、便宜を図るために「第1」および「第2」という用語が用いられるが、これは、投与の特定の順序、タイミング、組み合わせ、またはグループ分けのための要件を意味すると解釈されるものではない。「薬物の組み合わせ」という用語は、種々の形態において、各種薬物成分が、ある時点で哺乳動物において同時に存在する限り、それら成分の組み合わせを意味すると広く解釈されかつ言及されるものとする。
【0012】
薬物の組み合わせは、別々にかつ異なる組成物において投与されるように処方される薬物成分を含んでもよい。その場合、ある薬物成分が、ある組成物において哺乳動物に投与された後に、異なる組成物において別の薬物成分が別に投与される。例えば、第1薬物成分が一バイアルとして(または、何か他の投与単位として)準備され、第2薬物成分がもう一つのバイアルとして(または、何か他の投与単位として)準備され、これらの第1および第2組成物が別々に投与される。この別個の投与は、異なる時点でおよび/または異なる投与手段によって行われてもよい。あるいは、薬物の組み合わせは、共に投与されるように処方されている薬物成分を含んでもよい。例えば、第1成分および第2成分は、それら成分の混合物を有する単一バイアル(または、何か他の投与単位)から一緒に投与されてもよい。これらの方法のいずれにおいても、第1および第2成分は同時に投与されると理解される。
【特許文献1】米国特許第6,761,895号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本明細書に記載される本発明の目的に鑑み、哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分と、改変薬物動態プロフィールを有し、非経口投与用に処方された第2薬物成分とを含む、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせが提供される。典型的には、第2薬物成分の薬物送達ベヒクルが改変され、第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、未改変処方物におけるプロフィールとは異なる。改変された薬物送達ベヒクルにおける第2薬物成分の改変処方物のために、これらの薬物成分の、それぞれの薬物動態プロフィールは、ほとんど互いに影響を及ぼしあうことがないか、または、少なくとも、それぞれのプロフィール間の相互作用が、第2薬物成分を前記改変処方法に従って処方しない場合に比べて、実質的に低減される。この実施態様のもう一つの局面では、薬物動態プロフィールは、経時的濃度変動プロフィールであってもよい。改変された薬物送達ベヒクルにおいて処方された結果、第2薬物成分の、経時的濃度変動の薬物動態プロフィールは、その未改変形態にある同じ成分の薬物動態プロフィールとは異なる。本開示における「改変された薬物送達ベヒクル」という用語は、第2薬物成分が、従来の液体溶液以外の状態で維持され得る異なる形態を指す。これら形態の例は、下記において議論される。
【0014】
本開示のさらに別の局面では、哺乳動物において薬物動態的相互作用を最小化するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分を投与する工程;前記哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第2薬物成分を所定の処方物において準備する工程であって、前記所定の処方物における第2薬物成分の前記特定の薬物動態プロフィールは、第1および第2薬物成分が同時に前記動物の体内に存在する場合、第1薬物成分の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼし;第2薬物成分を、第2薬物成分の前記特定の薬物動態プロフィールを変更する改変処方物に処方する工程;および、前記哺乳動物に、第2薬物成分の改変処方物を非経口的に投与する工程を含む。従って、第2薬物成分の変更後の薬物動態プロフィールは、第1薬物成分と第2薬物成分とが哺乳動物内に同時に存在している場合でも、第1薬物成分の薬物動態プロフィールにほとんど影響を及ぼさない。第2薬物成分は、第1薬物成分の後に投与されてもよいし、および/または、投与の順序は逆転させてもよいし、または、二つの薬物成分を同時に投与してもよい。
【0015】
さらに別の実施態様では、ある特定の代謝タイミングに従って特定の薬物代謝機序によって代謝される第1薬物成分と、RESまたはMPSにおいて最初に貪食される第2薬物成分とを含む、薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせが開示される。第2薬物成分は、続いて、第1薬物成分と同様の薬物代謝機序によって代謝され、その際、第2薬物成分の貪食作用は、食細胞が無い場合に起こる第2薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングをもたらす。したがって、本開示による薬物成分処方物は、第1および第2薬物成分が哺乳動物において同時に存在する場合でも、第1薬物成分と第2薬物成分との間の薬物動態的相互作用を最小化する、別々の代謝タイミングをもたらす。
【0016】
上記の議論において、代謝タイミングは、薬物代謝機序を含む細胞における、薬物成分の経時的濃度プロフィールと定義される。ある状況では、複数の薬物成分が、薬物代謝酵素の能力を超え(すなわち、飽和して)、それらの成分の代謝を抑制するほどに存在する場合がある。この実施態様の一局面では、改変された薬物送達ベヒクル中の1種以上の成分の処方が、酵素(単数または複数)が飽和される可能性を低くするように、それらの成分の濃度の合計を減少させる。
【0017】
さらに別の局面では、哺乳動物における薬物動態的相互作用を最小化するための方法が提供され、この方法は、前記哺乳動物に対し、ある特定の代謝タイミングに従ってある特定の薬物代謝機序によって代謝される第1薬物成分を投与する工程;前記哺乳動物に投与されると、第1薬物成分と類似の薬物代謝機序によってかつ第1薬物成分と類似の代謝タイミングに従って代謝される所定の処方物において第2薬物成分を準備する工程;第2薬物成分の処方物を改変する工程であって、この改変処方物は、前記哺乳動物に投与されると、RESまたはMPSにおける第2薬物成分の貪食をもたらし;および、前記哺乳動物に、前記第2薬物成分の改変処方物を非経口的に投与する工程を含む。この実施態様では、第2薬物成分の改変処方物の貪食作用は、二つの薬物成分の共通の代謝酵素が飽和されることがないように、貪食作用の無い場合に起こる代謝タイミングとは異なる代謝タイミングをもたらす。従って、これら異なる代謝タイミングによって、第1薬物成分と第2薬物成分が哺乳動物において同時に存在する場合でも、第1薬物成分と第2薬物成分の間の薬物動態的相互作用は最小化される。あるいは、第1薬物成分は、第2薬物成分の後で投与されてもよい。
【0018】
本発明は、単独で、および/または、他の局面または特質と組み合わせられると有用性を発揮する、異なるいくつかの局面または特質を含むことを理解しなければならない。したがって、本要旨は、現在請求される、またはこの後請求される可能性のある、それら局面または特質それぞれを網羅的に同一視するものではなく、下記のさらに詳細な説明の理解を助けるために、本発明のいくつかの局面の概観を表しているにすぎない。本発明の範囲は、後述する特定の実施態様に限定されるものではなく、現在またはこの後に提出される特許請求の範囲において記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(複数の実施態様の詳細な説明)
従来の薬物の組み合わせは、薬物間相互作用を示す可能性のある、いくつかの薬物成分を含み得る。従来の薬物輸送では、二つ以上の薬物成分が、同様の代謝機序、例えば、類似の種類の薬物代謝酵素によって代謝される可能性がある。したがって、それらの薬物成分が哺乳動物の体内に同時に存在する場合、それらは、同種の薬物代謝酵素を求めて競合し、無用の薬物間相互作用を誘発することになる。
【0020】
例えば、薬物成分は、多くの場合、CYP酵素系(例えば、肝臓ミクロソームに局在するチトクローム(cytokine)P−450酵素)によって代謝されることが認められる。この系を構成するものはごく少数の酵素分子である。したがって、一般に、これら酵素分子の任意の一つの能力は限られている。同時に存在する複数の薬物が、同じ酵素分子によって代謝されるとすると、一方の薬物が、他方の薬物の血漿濃度に干渉し、影響を及ぼすことになる。このようなことが起こるのは、酵素は、飽和されるものであり、全ての化合物を同時に代謝する無限の能力を持たないからである。
【0021】
これまでにも他の薬物の代謝に干渉する複数の薬物を同時投与したことから、重大な副作用が生じた。例えば、ケトコナゾルとテルフェナジンの同時投与は、致命的となる可能性のある心室不整脈を引き起こした。さらに、ソリブジンとフルオロウラシルの同時投与は、致命的毒性をもたらした。このような場合、ある薬物が、肝臓ミクロソームにおいて別の薬物の代謝低下を引き起こすと、その第1薬物の、過度に高い血漿濃度が、高度の毒性をもたらすことになる。
【0022】
本開示の一局面では、哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分と、改変処方物における第2薬物成分とを含む薬物の組み合わせが提供される。改変された薬物送達ベヒクルの中に処方されるために、第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、その未処方状態に比べると変化しており、この改変された第2薬物成分は、第1薬物成分の薬物動態プロフィールに影響をほとんど及ぼさないか、その効果は低減される。
【0023】
本開示のもう一つの局面では、ある個体が、処方状態の第2薬物成分について、未処方状態で起こるものと同じ合計有効用量の投与を受けた場合でも、この処方の結果、第2薬物成分の血漿濃度レベルは、未処方状態で得られる血漿濃度レベルと比べて低減される。処方状態における第2薬物成分の血漿濃度レベルの低下は、未処方状態に比べて、薬物代謝系の抑制の緩和をもたらす。なぜなら、薬物代謝酵素を求める、第1薬物成分と第2薬物成分との競合がより少なくなるからである。第2薬物成分は、共通の酵素系の抑制の緩和をもたらすために、未処方状態に比べて血漿濃度レベルが低減されるように再処方される。これは、未処方状態と比べ、この再処方された薬物成分の血漿半減期を延長することによって達成される。したがって、本発明の一局面によれば、未処方の第2薬物成分が、哺乳動物に対し、ある選ばれた用量で投与された場合、ある一定期間ある一定の平均血漿濃度を示し、そして再処方された第2薬物成分が、前記哺乳動物に同じ選ばれた用量で投与された場合、より長い期間に亘ってより低い平均血漿濃度を示す方法が提供される。
【0024】
さらに別の実施態様では、第1薬物成分のものと類似種の薬物代謝酵素によって代謝される第2薬物成分が提供される。薬物間相互作用を最小化するために、第2薬物成分は、RESまたはMPSによる貪食作用を先ず受けるよう非経口投与のために処方される。さらに具体的には、非経口投与されると、この第2薬物成分は、一般的には、血液にすぐには溶解せず、全身循環から排除すべき異物と認識される。従って、第2薬物成分は、RESまたはMPSにおける固定マクロファージによって貪食作用を通じて隔離される。貪食作用と一般的に関連する器官または組織は、肝臓、脾臓、および骨髄である。固定マクロファージの中に包み込まれると、該薬物成分はそれから溶け出し、そのため、薬物成分は、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境に移動することが可能となる。この議論において、溶解とは、ファゴリソソームが、薬物成分の形を、該薬物成分がMPSから細胞外環境へ出ていくのを可能とするように変えるプロセスを指す。理論によって拘束されることを望むものではないが、この出現は、薬物成分の可溶化分子の、生体膜を通過する受動的拡散、または、細胞外排出経路を経由する排除を含む可能性がある。あるいは、第2薬物成分を含むマクロファージが死滅し、他のマクロファージが、この第2薬物成分を食べて、同じプロセスを繰り返す可能性がある。あるいは、他の機構が働いている可能性もある。
【0025】
このようにして、固定マクロファージによる貪食作用、溶解、および輸送によって、第2薬物成分は、第1薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングを持たされる。したがって、これらの異なる代謝タイミングは、第1および第2薬物成分が哺乳動物の体内に同時に存在する場合でも、第1薬物成分と第2薬物成分との間の薬物間相互作用を最小化する。
【0026】
本発明は、多くの異なる形状、種々の組み合わせを持つ実施態様に対し対応が可能である一方で、本明細書に記載される本発明の複数の実施態様が特に注目される。これらの実施態様は、本発明の原理の例示と見なされるべきであって、本発明の広い局面を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0027】
例えば、本開示の教示によれば、対象となる薬物の組み合わせは、一般に、ある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分、および、未処方状態と比べて第2薬物成分の薬物動態プロフィールを変える処方において存在する第2薬物成分を含む。
【0028】
第1薬物成分は、いくつかの経路、例えば、非経口、経口、頬内、歯周、直腸、鼻腔、肺、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、眼内、脳内、リンパ系内、肺、関節内、硬膜下腔内、および腹腔内投与が挙げられるが、これらに限定されない経路によって投与されてもよい。さらに、薬物成分のミクロイン以下粒子の液体分散形(例えば、注入処方物、溶液、徐放性処方物、調節放出性処方物、長期放出性処方物、パルス状放出性処方物、および高速放出性処方が挙げられるが、これらに限定されない)が調製されてもよい。
【0029】
さらに、第1薬物成分の固体用量は、例えば、錠剤、コート被覆錠剤、カプセル、アンプル、坐剤、凍結乾燥処方物、遅延放出性処方物、調節放出性処方物、長期放出性処方物、パルス状放出性処方物、パッチ投与による高速放出性および調節放出性処方物、吸引が可能な散剤調剤、懸濁液、クリーム、軟膏、およびその他の固体剤形投与手段の形において調製されてもよい。
【0030】
薬物動態プロフィールが改変された第2薬物成分は、一般に、約10mg/ml以下の水溶性を持つ低い溶解度の薬物である。このような薬物は、例えば、非経口投与のような注入型として輸送するにはさらに困難を呈する。これらの薬物の輸送をやり易くするために、後述する対処法の下に、難溶性または不溶性の薬物および/またはそれらの薬物送達ベヒクルが改変されている。
【0031】
選択された投与経路により適するようにする試みにおいて、薬物自体を改変するための方法としては、薬物の処方または分子構造を変化させることが挙げられる。難溶性または不溶性の薬物の薬物送達ベヒクルの改変法としては、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化法、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化の使用が挙げられる。
【0032】
ベヒクル改変のさらにもう一つの方法として、固体粒子懸濁液におけるナノ粒子が挙げられる。水に不溶性の薬物は、水性媒体におけるミクロン以下粒子の安定な懸濁液として処方されると、著明な安定性という利点を発揮する可能性がある。これらの処方の安全かつ効果的な使用のためには、粒子サイズの正確な調節が必須である。粒子は、塞栓を誘発することなく毛細管を安全に通過するためには直径が数ミクロンを超えてはならない(Allen et al.,1987;Davis and Taube,1978;Schroeder et al.,1978;Yokel et al.,1981)。
【0033】
したがって、本開示の教示に従って薬物の組み合わせにおけるいくつかの薬物成分間の薬物間相互作用を最小化するために、該薬物の組み合わせは、該薬物の薬物送達ベヒクル改変によって達成された調整薬物動態プロフィールを有する少なくとも一つの薬物成分を含んでもよい。ナノ粒子、ナノ懸濁液、マイクロエマルジョン、エマルジョン、ミセル、およびリポソームによって薬物動態プロフィールを調整する方法が、例示目的のためだけに以下に詳細に説明される。さらに、ナノ粒子、ナノ懸濁液、エマルジョン、ミセル、おおびリポソームは、RESまたはMPSにおいてそれぞれ異なる速度の貪食作用および分解を受ける。したがって、RESまたはMPSにおけるマクロファージによる溶解および放出速度、および、結果的に、薬物の組み合わせにおける薬物成分間の相互作用も、異なる輸送法を用いることによって調節することが可能である。
【0034】
(ナノ粒子)
本開示の教示に従って薬物の組み合わせにおけるいくつかの薬物成分間の薬物間相互作用を最小化するために、該薬物の組み合わせは、薬物成分のナノ粒子を形成することによって達成される調整薬物動態プロフィールを有する少なくとも一つの薬物成分を含んでもよい。
【0035】
難溶性薬物成分のナノ粒子は、本開示の教示に従っていくつかの異なる方法で調製されてもよい。これらのナノ粒子調製法としては、溶媒非含有懸濁液の調製、賦形剤の交換、凍結乾燥、エマルジョン沈殿、溶媒抗溶媒沈殿、相逆転沈殿(phase iversion precipitation)、pHシフト沈殿、注入沈殿(infusion precipitation)、温度シフト沈殿、溶媒蒸発沈殿、反応沈殿、圧縮流体沈殿、活性因子の機械的磨砕、または、難溶性ミクロン以下粒子の懸濁液を生産するための、他の任意の方法(例えば、米国特許第6,607,784号;5,560,932号;5,662,883号;5,665,331号;5,145,684号;5,510,118号;5,518,187号;5,534,270号;5,718,388号;および5,862,999号;米国特許出願公開第2005/0037083号;2004/0245662号;2004/0164194号;2004/0173696号;2004−0022862号;2003/0100568号;2003/0096013号;2003/0077329号;2003/0072807号;2003/0059472号;2003/0044433号;2003/0031719号;2002/176935号;2002/0127278号;および2002/0168402号、および同一譲受人に係る同時係属中の米国特許出願60/258,160および60/347,548号に記載されるもの)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの特許、特許公開公報、特許出願、および本明細書において引用される他の全ての特許、特許公開公報、特許出願、論文、またはその他の文献も、本明細書に参考として援用され、本明細書の一部とされる。
【0036】
(I. ナノ懸濁液)
固体粒子懸濁液を用いて難溶性薬物を輸送するための一つの方法は、一般にナノ懸濁液と呼ばれるものを準備することである。ナノ懸濁液は、比較的不溶性の薬物因子のナノ粒子の水性懸濁液を含む。ナノ粒子はまた、一般に、該ナノ粒子の凝集または綿状沈殿(flocculation)を阻止するために、1種以上の界面活性剤または他の賦形剤によってコートされる。このようなコーティングに一般に使用される好ましい界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双生イオン界面活性剤、リン脂質、生物系界面活性剤、またはアミノ酸およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
ナノ粒子を調製するための一つの方法が、Kipp et al.米国特許第6,607,784号に記載される。この‘784特許は、有機化合物のミクロン以下粒子を調製する方法であって、該有機化合物の溶解度が、選ばれた水混和性溶媒に対して、もう一つの水性溶媒に対してよりも大きくなっている方法を開示する。‘784特許に記載される方法は、一般に、(i)選ばれた水混和性溶媒に有機化合物を溶解して溶液を形成する工程;(ii)この溶液をもう一つの溶媒と混合してプレ懸濁液を定める工程;および(iii)このプレ懸濁液にエネルギーを加えて、ミクロン以下のサイズの可能性を持つ粒子を形成する工程を含む。粒子のサイズは、約10nmから約10ミクロンの範囲に亘るが、約100nmから約1000nmまたは1ミクロンであることが好ましい。多くの場合、平均実効粒径は、400nm以下から、低ミクロンサイズにわたり、典型的には約2ミクロン以下の範囲を持つ。
【0038】
本明細書に詳述される複数のナノ懸濁液実施態様は、エネルギー添加法を用いて、難溶性製剤のナノ粒子を含むナノ懸濁液を調製することを指す、および/または、該調製に関する。全クラスの難溶性薬物成分、薬物成分類縁体、および、ナノ懸濁液を調製するための他の全ての等価的方法も、本発明の精神から逸脱することなくミクロン以下の形に生産することが可能である。本発明の粒子懸濁液を調製するためのエネルギー添加法および装置は、同一譲受人に係る‘784特許に開示される。本発明のこのナノ懸濁液局面の実施に有用な懸濁液調製のための一般的プロセスは下記の通りである。
【0039】
このタイプの工程は、三つの全体的区分に分けることができる。プロセスの各区分は、下記の工程を共有する。すなわち、(i)選ばれた水混和性溶媒に有機化合物を溶解して溶液を形成する工程;(ii)この溶液を別の溶媒と混合してプレ懸濁液を定める工程;および、(iii)このプレ懸濁液にエネルギーを加えて、後述のような平均実効粒径を持つ粒子を形成する工程である。
【0040】
(A.ナノ懸濁液調製のための第1プロセス区分)
ナノ懸濁液調製のための第1プロセス区分の方法は、一般に、選ばれた水混和性溶媒に、薬物成分を、その薬物動態プロフィールが改変されるように溶解して、溶液を形成する工程を含む。このようにして得られた、薬物成分を含む溶液は、非晶質形、半結晶形、または過冷却液体形であってもよい。このナノ懸濁液局面に従って選ばれる溶媒は、対象の有機化合物が比較的可溶であるが、他方の溶媒とは混和しない溶媒、または複数の溶媒の混合物である。そのような溶媒としては、水混和プロトン性化合物であって、分子中の水素原子が、電気的陰性原子(例えば、酸素、窒素、または、元素周期律表におけるその他のVA、VIA、およびVII族元素と結合する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。そのような溶媒の例としては、アルコール類、アミン類(一級または二級)、オキシム類、ヒドロキサム酸類、カルボン酸類、スルホン酸類、フォスフォン酸類、リン酸類、アミド類、および尿素類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
選ばれた溶媒の他の例としては、非プロトン有機溶媒が挙げられる。これら非プロトン性溶媒のあるものは、水と水素結合を形成することが可能であるが、効果的なプロトン供与基を欠くために、プロトン受容体としてのみ活動することが可能である。非プロトン性溶媒の一つのクラスは、国際純正応用化学連合(IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2版、1997)による下記の定義:
約15よりも大きい比較的高い比誘電率(または誘電率)、およびかなりの恒久的双極モーメントを持つが、強い水素結合を形成するのに適当なほどに高変動の水素原子を供与することができない溶媒(例えば、ジメチルスルフォキシド)、
によって定められる双極性非プロトン溶媒である。
【0042】
双極性非プロトン溶媒は、アミド類(完全に置換されたもの、窒素に水素原子が付着していない)、尿素類(完全に置換されたもの、窒素に水素原子が付着していない)、エーテル類、環状エーテル類、ニトリル類、ケトン類、スルホン類、スルホキシド類、完全に置換されたリン酸塩、リン酸エステル、ホスホルアミド類、ニトロ化合物等から成る群から選ばれてもよい。このクラスの中のメンバーでは、特に、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、2−ピロリジノン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリル、およびヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ニトロメタンがある。
【0043】
全体として水と混和しないが、低容量(10%以下)では十分な水溶性を持ち、これらの低い容量では水混和性の第1溶媒として作用する溶媒を選んでもよい。例としては、芳香族炭化水素類、アルケン類、アルカン類およびハロゲン化芳香族、ハロゲン化アルケン類、およびハロゲン化アルカン類が挙げられる。芳香族としては、ベンゼン(置換体、または非置換体)、および、単環または多環アレーンが挙げられるが、これらに限定されない。置換ベンゼンの例としては、キシレン(オルソ、メタ、またはパラ)、およびトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。アルカンの例としては、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタン、およびシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化芳香族の例としては、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、およびクロロトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化アルカンの例としては、トリクロロエタン、塩化メチレン、エチレンジクロリド(EDC)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
前述の溶媒クラス全ての例としては、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、カルボン酸(例えば、酢酸および乳酸)、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、およびn−プロパノール)、ベンジルアルコール、グリセロール、ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、および2,3−ブタンジオール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノ−およびジアシル化グリセリド、ジメチルイソソルビド、アセトン、ジメチルスルホン、ジメチルフォルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリル、ニトロメタン、テトラメチルウレア、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル(TBME),芳香族炭化水素、アルケン、アルカン、ハロゲン化芳香族、ハロゲン化アルケン、ハロゲン化アルカン、キシレン、トルエン、ベンゼン、ベンゼン置換体、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、トリクロロエタン、塩化メチレン、エチレンジクロリド(EDC)、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGエステル、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150、ポリエチレングリコールエステル、PEG−4ジラウレート、PEG−20ジラウレート、PEG−6イソステアレート、PEG−8パルミトステアレート、PEG−150パルミトステアレート、ポリエチレングリコールソルビタン、PEG−20ソルビタンイソステアレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギネート、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、プロピレングリコールラウレート、およびグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
選ばれる溶媒は、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)であることが好ましい。もう一つの好ましい選択溶媒は乳酸である。
【0046】
(B.ナノ懸濁液調製のための第2プロセス区分)
ナノ懸濁液調製のための第2プロセス区分は、第1プロセス区分の溶液を、別の溶媒と混合し、薬物成分を沈殿させてプレ懸濁液を定めることを含む。このプロセス区分では、薬物成分のプレ懸濁液は結晶形を持つ。最初の二つのプロセス工程の後、プレ懸濁液の薬物成分は、ある平均実効粒径を持つ脆弱形(例えば、細い針および薄板)を取る。これによって、プレ懸濁液の粒子は脆弱状態、すなわち、有機化合物が脆くなる状態を取ることが確保される。さらに脆弱状態の化合物では、それを脆弱にする方法を用いることなしに有機化合物を処理した場合と比べて、より容易に、かつ速やかに、所望のサイズ範囲内に粒子を調製することが可能となる。
【0047】
第2プロセス区分で用いられるこの他の溶媒は、一般に、水性溶媒である。この水性溶媒は水そのものであってもよい。この溶媒はまた、バッファー、塩、界面活性剤(単数または複数)、水溶性ポリマー、および、これら賦形剤の混合物を含んでもよい。
【0048】
(C.ナノ懸濁液調製のための第3プロセス区分)
ナノ懸濁液調製のための第3プロセス区分は、脆弱な粒子の分解とコーティングをもたらすエネルギーを、プレ懸濁液に加える工程を含む。このエネルギー添加工程は、プレ懸濁液が、キャビテーション、せん断力、または衝撃力に曝露される任意のやり方で実行されてよい。本発明の一つの好ましい形態では、エネルギー添加工程は、アニーリング工程である。本開示では、アニーリングとは、エネルギー(直接加熱または機械的ストレス)を1回、または複数回与え、次いで熱緩和を適用することによって、熱力学的に不安定な物質をより安定な形に変換するプロセスと定義される。このエネルギー低下は、固体形を、より無秩序な形状からより秩序だった格子構造に変換することによって実現してもよい。あるいは、この安定化は、固体−液体界面における界面活性分子の秩序再編(reordering)によって行われてもよい。
【0049】
(1.ナノ懸濁液調製法A)
図1に示すように、ナノ懸濁液の調製法Aでは、その薬物動態プロフィールを改変される薬物成分は、先ず、選ばれた溶媒に溶解されて第1溶液を形成する。この第1溶液は、選ばれた溶媒に対する薬物成分の完全な溶解を確実するにするために、約30℃から約100℃に加熱してもよい。
【0050】
1種以上の界面活性剤を添加された、もう一つの水溶液が準備される。この一つの界面活性剤または複数の界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、双生イオン界面活性剤、リン脂質、生物系界面活性剤の中から選ばれてもよい。本発明の粒子をコートするのに好適な界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双生イオン界面活性剤、リン脂質、生物系界面活性剤、またはアミノ酸およびその誘導体から選ばれてもよい。イオン性界面活性剤は、陰イオン性または陽イオン性であってもよい。界面活性剤は、該成分において、約0.01%w/vから10%w/v、好ましくは約0.05%w/vから約5%w/vの量として存在する。
【0051】
好適な陰イオン性界面活性剤としては、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレン硫酸、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ホスファチジン酸およびその塩、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、胆汁酸およびその塩、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、およびグリコデオキシコール酸、およびカルシウムカルボキシメチルセルロース、ステアリン酸およびその塩(例えば、ステアリン酸カルシウム)、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
好適な陽イオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、キトサン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アシルカルニチン塩酸、アルキルピリジニウムハロゲン化物、セチルピリジニウムクロリド、陽イオン性脂質、ポリメチルメタクリレート、トリメチルアンモニウムブロミド、スルホニウム化合物、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ホスホニウム化合物、四級アンモニウム化合物、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリド、ココナツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12−15−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、C12−15−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)アンモニウムクロリド、ラウリルジメチル(エテノキシ)アンモニウムブロミド、N−アルキル(C12−18)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C14−18)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルイドメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N−アルキルおよび(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハリドアルキル−トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル−ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N−ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N−アルキル(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12トリメチルアンモニウムブロミド、C15トリメチルアンモニウムブロミド、C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、「POLYQUAT 10」(四級アンモニウムポリマー化合物の混合物)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル、塩化ベンザルコニウム、ステアルアルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化塩、「MIRAPOL」(ポリクワテルニウム−2)、「ALKAQUAT」、アルキルピリジニウム塩、アミン、アミン塩、イミドアゾリニウム塩、プロトン化四級アクリルアミド、メチル化四級ポリマー、および陽イオン性グアールゴム、塩化ベンザルコニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエタノールアミン、およびポロキサミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、グリセリルエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールエステル、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・コポリマー、ポロキサマー、ポロキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、ポリサッカリド、でん粉、でん粉誘導体、ヒドロキシエチルでん粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、トリエタノールアミンステアレート、アミン酸化物、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールのエチレン酸化物とホルムアルデヒドとのポリマー、ポロキサマー、アルキルアリールポリエーテルスルホネート、スクロースステアレートとスクロースジステアレートの混合物、C1837CHC(O)N(CH)CH(CHOH)(CHOH)、p−イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)、デカノイル−N−メチルグルカミド、n−デシル−β−D−グルコピラノシド、n−デシル−β−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド、n−ノニル−β−D−グルコピラノシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、オクチル−β−D−チオグルコピラノシド、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、および酢酸ビニルとビニルピロリドンとのランダムコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
双性イオン界面活性剤は、電気的に中性であるが、同じ分子の中に局所的に正電荷および負電荷を持つ。好適な双生イオン界面活性剤としては、双生イオンリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。好適なリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(例えば、ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびジオレオリル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。本発明では、陰イオン性リン脂質および双生イオンリン脂質を含むリン脂質の混合物を用いてもよい。そのような混合物としては、リゾリン脂質、卵または大豆のリン脂質、またはそれらの任意の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
好適な生物系界面活性剤としては、脂質タンパク、ゼラチン、カゼイン、リゾチーム、アルブミン、カゼイン、ヘパリン、ヒルジン、またはその他のタンパクが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい界面活性剤は、イオン性界面活性剤(例えば、デオキシコール酸)と、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン・ブロックコポリマー、例えば、Poloxamer 188)の混合物である。もう一つの好ましい界面活性剤は、リン脂質同士の組み合わせ(例えば、Lipoid E80とDSPE−PEG2000)である。
【0056】
界面活性剤の水溶液に、pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、グリシンのようなアミノ酸、トリスバッファー、またはクエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メグルミン等を加えることが望ましい場合がある。界面活性剤水溶液は、約2から約12の範囲内のpHを持つことが好ましい。好適なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、トリスバッファー、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、およびそれらの塩、クエン酸バッファー、ホスフェート、グリセロール−1−ホスフェート、グリセロール−2−ホスフェート、酢酸塩、乳酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アミノサッカリド、モノアルキル化アミン、ジアルキル化アミン、およびトリアルキル化アミン、メグルミン(N−メチルグルコサミン)、およびアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
界面活性剤水溶液は、さらに、浸透圧調整剤(例えば、グリセリン、モノサッカリド(例えば、デキストロース)、ジサッカリド(例えば、スクロース、トレハロース、およびマルトース)、トリサッカリド(例えば、ラフィノース)、および、糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール)が挙げられるが、これらに限定されない)を含んでもよい。
【0058】
さらに、粒子懸濁成分から、界面活性剤水溶液は取り除かれて、乾燥粒子を形成してもよい。水性媒体を除去する方法は、当該分野で公知の任意の方法であってよい。一例は蒸発である。別の例は、フリーズドライ、すなわち凍結乾燥である。次に、乾燥粒子は、受容可能である任意の物理形(例えば、溶液、錠剤、カプセル、懸濁液、クリーム、ローション、エマルジョン、エーロゾル、散剤、徐放用として貯留槽または基質デバイス(例えば、インプラント、または経皮パッチ)への組み込みが挙げられるが、これらに限定されない)へ処方されてもよい。本発明の水性懸濁液はまた、保存時の安定性を改善するために凍結されてもよい。安定性を改善するために水性懸濁液を凍結するやり方は、同一譲受人に係る同時係属中の米国特許出願公開第2003/0077329号に開示される。
【0059】
次に、薬物成分溶液と、界面活性剤水溶液とが合わせられる。薬物成分液が、調節速度において、界面活性剤水溶液に加えられることが好ましい。添加速度は、バッチサイズ、および薬物成分の沈殿速度論に依存する。添加の際、二つの溶液は常に攪拌していなければならない。非晶質粒子、半結晶固体、または過冷却液体が形成されてプレ懸濁液を生成することが光学顕微鏡によって観察されている。この方法はさらに、プレ懸濁液にアニリーング工程を実施し、非晶質粒子、過冷却液体、または半結晶固体を、結晶性の、より安定な固体状態に変換する工程を含む。得られた粒子は、動的光散乱法(例えば、光相関分光光度計、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光すりガラス透過法(light obscuration method)(例えば、Coulter法)、レオロジー、または顕微鏡観察(光または電子)によって測定した場合、前述の範囲内に平均実効粒径を持つ。
【0060】
ナノ懸濁液を生成するためのエネルギー添加工程は、超音波処理、ホモジェナイゼーション、対向流ホモジェナイゼーション(例えば、Mini DeBEE2000ホモジェナイザー、BEE Incorporated,ノースカロライナ州から市販される。この装置では、噴流が第1通路にそって向けられ、第1通路の中途に構造が置かれ、これが噴流の向きを変えて、新たな通路に調節流として通し、流体の乳化または混合を実現する)、微小流動化、またはその他の、衝撃力、せん断力、またはキャビテーション力を付与する方法、他のホモジェナイゼーション法を含む方法を通じてエネルギーを付与する工程を含む。この段階では、サンプルを冷却しても、あるいは加熱してもよい。本発明のこの局面の別の好ましい形態では、アニーリング工程は、超音波処理によって実現してもよい。さらに別の好ましい形態では、アニーリングは、米国特許第5,720,551号に記載されるような乳化装置を用いて実行してもよい。
【0061】
アニーリング速度に応じて、処理サンプルの温度を、約0℃から約30℃の範囲内に調節することが望ましい場合がある。あるいは、処理された固体において所望の位相変化を実現するために、アニーリング工程の間、プレ懸濁液の温度を約−30℃から約100℃の範囲内に調節することが必要となる場合がある。
【0062】
(2.ナノ懸濁液調製法B)
図2に示すように、ナノ懸濁液調製法Bは、第1溶液に、一つの界面活性剤、または複数の界面活性剤の組み合わせを加えることを含む。界面活性剤は、前述したように、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、双性イオン界面活性剤、リン脂質、生物系界面活性剤の中から選ばれてもよい。本発明のプロセスを用いて得られた薬物懸濁液は、溶液の滅菌化のために適切な手段が用いられている限り、注入溶液として直接投与されてもよい。ナノ懸濁液調製法Bはさらに、溶媒非含有懸濁液の調製、賦形剤の交換、凍結乾燥、溶媒抗溶媒沈殿、相逆転沈殿、pHシフト沈殿、注入沈殿、温度シフト沈殿、溶媒蒸発沈殿、反応沈殿、および圧縮流体沈殿のような方法を含む。
【0063】
(溶媒非含有懸濁液の調製)
ナノ懸濁調製品は、沈殿後溶媒除去によって生成され得る溶媒非含有懸濁液を含んでもよい。これは、遠心分離、塩析、ダイアフィルトレーション、分子力場分画法(force−field fractionation)、高圧ろ過、または、下記のような当該分野で周知の他の分離技術によって実現することが可能である。例えば、乳酸またはN−メチル−2−ピロリジノンの完全除去は、通常、1回から3回の連続遠心分離運転によって実行される。各遠心分離後、上清をデカンテーションして棄てる。有機溶媒を含まないある容量の新鮮懸濁ベヒクルを残留固体に加え、混合物をホモジェナイゼーションによって分散させる。当業者には、この再構成工程には、他の高せん断混合技術も使用可能であることが認識されるであろう。
【0064】
(賦形剤の交換)
さらに、不要な賦形剤があればどれでも、例えば、界面活性剤を、上のパラグラフに記載した分離法を用いてより好ましい賦形剤と交換してよい。溶媒および第1賦形剤は、遠心分離またはろ過後、上清と共に廃棄してよい。次に、溶媒を含まずかつ第1賦形剤を含まない、新鮮な容量の懸濁ベヒクルを加えてもよい。あるいは、新しい界面活性剤を加えてもよい。例えば、薬物、N−メチル−2−ピロリジノン(溶媒)、Poloxamer 188(第1賦形剤)、デオキキシコール酸ナトリウム、グリセロール、および水から成る懸濁液を、遠心分離して上清を除去した後、リン脂質(新しい界面活性剤)、グリセロール、および水と交換してもよい。
【0065】
(凍結乾燥)
懸濁液は、凍結乾燥(フリーズドライ)によって乾燥させて凍結乾燥懸濁液を形成してもよい。これは、投与に好適な懸濁液として再構成される。安定な、乾燥固体を調製する目的で、充填剤(bulking agent)、例えば、マンニトール、ソルビトール、スクロース、でん粉、ラクトース、トレハロース、またはラフィノースを、凍結乾燥前に加えてもよい。懸濁液は、凍結乾燥用の任意の実行可能なプログラム、例えば、+25℃で負荷する工程;1時間で−45℃に冷却する工程;−45℃に3.5時間維持する工程;0.4mbar圧において+15℃まで33時間、温度を連続上昇させて中程度乾燥させる工程;0.03mbar圧において+20℃で10時間、最終乾燥させる工程;および寒冷保護剤:マンニトール、の実行可能プログラムを用いて凍結乾燥してもよい。
【0066】
前述の微小沈殿法の外に、当該分野で公知の任意の他の、活性因子の粒子(より好ましくは、ナノ粒子)を調製するための沈殿法を、本発明の方法Bナノ沈殿局面と組み合わせて用いることが可能である。下記は、他の沈殿法の例の説明である。これらの例は、例示のためにのみ挙げるのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0067】
(溶媒抗溶媒沈殿)
もう一つの沈殿技術は、溶媒抗溶媒沈殿法である。好適な溶媒抗溶媒沈殿技術が、米国特許第5,118,528号および5,100,591号に記載される。この方法は、(1)一つの溶媒または複数の溶媒の混合物(これら溶媒に、1種以上の界面活性剤が添加され得る)の中に生物学的活性物質の液体相を調製する工程;(2)一つの非溶媒、または複数の非溶媒の混合物の第2液体相を調製する工程であって、非溶媒は、前記物質のための溶媒または溶媒混合物と混和することが可能である、工程;(3)(1)と(2)の溶液同士を攪拌しながら一緒に加える工程;および、(4)不要の溶媒を除去し、ナノ粒子のコロイド状懸濁液を生成する工程を含む。この‘528特許は、エネルギーの補給無しに500nmよりも小さい、物質の粒子を生成することを記述する。
【0068】
(相逆転沈殿)
もう一つの技術は、相逆転沈殿である。一つの好適な相逆転沈殿が米国特許第6,235,224号、6,143,211号、および米国特許出願公開第2001/0042932号に記載される。相逆転とは、連続相溶媒システムに溶解されるポリマー(ここでこのポリマーは連続相である)が、固体の巨大分子ネットワークに転換される物理現象を記述するために用いられる用語である。相逆転を誘発する一つの方法は、連続相に非溶媒を加えることである。ポリマーは、単一相から不安定な二相混合、すなわち、ポリマー富裕画分とポリマー欠乏画分への移行を経験する。ポリマー富裕相における非溶媒のミセル状小滴が、核形成部位の役割を果たし、ポリマーでコートされるようになる。‘224特許は、ある条件下において、ポリマー溶液の相逆転は、ナノ粒子を含むばらばらの微細粒子の自発的形成を誘発することがあることを記述する。’224特許は、溶媒におけるポリマーの溶解または分散を記載する。この溶媒の中には、薬物も溶解または分散される。このプロセスにおいて、結晶のシード添加工程が有効であるためには、薬物が溶媒に溶解することが好ましい。ポリマー、薬物、および溶媒は共に、連続相を有する混合物を形成し、その際溶媒が連続相となる。次に、この混合物は、少なくとも10倍過剰な、混和可能な非溶媒中に導入される。これによって、薬物の、微小カプセル封入型微細粒子の自発的形成が誘発される。この粒子は、10nmから10μmの平均粒径を持つ。この粒径は、溶媒:非溶媒体積比、ポリマー濃度、ポリマー−溶媒溶液の粘度、ポリマーの分子量、および、溶媒−非溶媒ペアの特徴によって影響される。このプロセスは、例えば、溶媒からエマルジョンを形成するといった、微小滴生成工程を省く。この方法はまた、攪拌および/またはせん断力を回避する。
【0069】
(pHシフト沈殿)
もう一つの沈殿技術はpHシフト沈殿である。pHシフト沈殿技術は、通常、薬物を、該薬物が溶解可能なpHを持つ溶液に溶解する工程、次いで、pHを、薬物が溶解できなくなる点まで変化させる工程を含む。pHは、特定の薬物成分に応じて、酸性であっても、塩基性であってもよい。次に、溶液は中和されて、製薬学的に活性な化合物のミクロン以下粒子のプレ懸濁液を形成する。一つの好適なpHシフト沈殿法が、米国特許第5,665,331号に記載される。この方法は、薬物を、アルカリ性溶液中に、結晶成長改変因子(CGM)と一緒に溶解する工程、次に、好適な、一つのまたは複数の界面活性剤の存在下に酸によってその溶液を中和して、薬物の微粒子分散体を形成する工程を含む。沈殿工程の次に、ディアフィルトレーションによる分散体の清浄工程、および分散体の濃度を所望レベルに変える調整工程が導入されてもよい。このプロセスは、フォトン相関分光光度計によって測定した場合、400nmよりも小さいZ平均直径を持つ微細結晶粒子を生成すると報告されている。pHシフト沈殿法の他の例が、米国特許第5,716,642号;5,662,883号;5,560,932号;および4,608,278号に記載される。
【0070】
(注入沈殿法)
もう一つの沈殿技術は注入沈殿である。好適な注入沈殿技術が、米国特許第4,997,454号および4,826,689号に記載される。先ず、好適な固体化合物が、好適な有機溶媒に溶解されて溶媒混合物を形成する。次に、前記有機溶媒と混和可能な沈殿させる非溶媒が、この溶媒混合物に、約−10℃から約100℃の温度において、50mlの容量について1分当たり約0.01mlから1分当たり約1000mlの注入速度で注入され、化合物の、沈殿性で、非凝集性の固体粒子の懸濁液を生成する。この粒子は、10μm以下の、ほぼ均一な平均直径を持つ。沈殿を生ずる非溶媒とともに、注入される溶液をかき混ぜる(例えば、攪拌によって)ことが好ましい。非溶媒は、粒子を凝集しないよう安定化させるために、界面活性剤を含んでもよい。次に、粒子は溶媒から分離される。固体化合物および所望の粒径に応じて、温度、非溶媒対溶媒の比、注入速度、攪拌速度、および容量等のパラメータは、本発明に従って変動させてよい。粒径は、非溶媒:溶媒の体積比、および注入温度に比例し、注入速度および攪拌速度に反比例する。沈殿性非溶媒は、化合物の相対的溶解度および所望の懸濁ベヒクルに応じて、水性であっても、非水性であってもよい。
【0071】
(温度シフト沈殿)
もう一つの沈殿技術は温度シフト沈殿である。別に熱溶融技術とも呼ばれる、温度シフト沈殿技術は、Dombに交付された米国特許第5,188,837号に記載される。本発明のある実施態様では、リポ小球が、(1)輸送されるべき物質(例えば、薬物)を溶融ベヒクルに融解または溶解して、輸送されるべき物質の液体を形成する工程;(2)溶融物質またはベヒクルに、物質またはベヒクルの融解温度よりも高い温度において、水性媒体と共にリン脂質を加える工程;(3)ベヒクルの融解温度よりも高い温度において懸濁液を、均一な微細調製品が得られるまで混合する工程、および(4)前記調製品を室温以下で急速に冷却する工程によって調製される。
【0072】
(溶媒蒸発沈殿)
もう一つの沈殿技術は、溶媒蒸発沈殿である。溶媒蒸発沈殿技術は、米国特許第4,973,465号に記載される。この‘465特許は、微細結晶を調製する方法であって、(1)共通の一つの有機溶媒または複数の溶媒の組み合わせに溶解した薬物成分およびリン脂質の溶液を準備する工程;(2)前記一つまたは複数の溶媒を蒸発させる工程;および、(3)前記一つまたは複数の溶媒の蒸発によって得られた薄膜を、激しく攪拌することによって水性溶液に懸濁する工程を含む方法を記載する。上記溶媒は、溶液にエネルギーを加えて十分量の溶媒を蒸発させ、これによって化合物の沈殿を誘発することによって除去することが可能である。溶媒はまた、他の周知の技術、例えば、溶液に真空を適用すること、または、溶液の上に窒素を吹きつけることによって除去することも可能である。
【0073】
(反応沈殿)
もう一つの沈殿技術は反応沈殿である。反応沈殿は、適切な溶媒に薬物化合物を溶解して溶液を形成する工程を含む。化合物の添加量は、溶媒における化合物の飽和点以下でなければならない。化合物は、化学薬品との反応によって、あるいは、熱またはUV光等のような添加エネルギーに対する反応によって改変され、改変された化合物は、溶媒に対する溶解度がより低くなり、この溶液から沈殿するようになる。
【0074】
(圧縮流体沈殿)
もう一つの沈殿技術は圧縮流体沈殿である。圧縮流体による沈殿に好適な技術が、米国特許第6,576,264号に記載される。この方法は、水溶性薬物を溶媒に溶解して溶液を形成する工程を含む。次に、この溶液を、気体、液体、または超臨界流体であってもよい圧縮流体に噴霧する。溶媒中のある溶質の溶液に圧縮流体を加えると、この溶質は、過飽和状態に達するかまたは近づき、微細粒子として沈殿する。この場合、圧縮流体は、薬物が溶解する溶媒における凝集エネルギー密度を下げる抗溶媒として作用する。
【0075】
あるいは、その薬物を圧縮流体に溶解し、次いで、水性相に噴霧することも可能である。この圧縮流体の急速な膨張は、流体の溶媒力を下げ、これは次に溶質の水性相における微細粒子としての沈殿を誘発する。この場合、圧縮流体が溶媒として作用する。
【0076】
(II.粒子調製ための他の方法)
ナノ懸濁液調製のような方法の外に、本開示の粒子はまた、活性因子の機械的磨砕によって調製することが可能である。機械的磨砕としては、例えば、ジェットミリング、パールミリング、ボールミリング、ハンマーミリング、流体エネルギーミリングのような技術、または、ウェット磨砕技術、例えば、米国特許第5,145,684号に記載されるものが挙げられる。
【0077】
粒子を調製するもう一つの方法は、活性因子を懸濁することによる。この方法では、該活性因子の粒子が、該粒子を直接水性媒体に加えることによって水性媒体において分散され、プレ懸濁液が誘導される。粒子は、通常、粒子同士の凝集を抑制するために表面改変因子によってコートされる。活性因子または水性媒体のいずれかに、一つ以上の賦形剤を加えてもよい。
【0078】
(III.薬物間相互作用を最小化するためのナノ粒子)
一般に、ナノ粒子形状を取る薬物成分は、RESまたはMPSにおける固定マクロファージによって隔離されるのに対して、溶液形状の薬物成分は、吸収されて全身に分布される。さらに具体的に言うと、非経口投与されると、ナノ粒子形状の薬物成分は、一般に、血液にはすぐには溶解せず、全身循環から除去されるべき異物体として認識される。したがって、ナノ粒子形状の薬物成分は、RESまたはMPS内の固定マクロファージによって貪食作用を通じて隔離される。固定マクロファージの中に包み込まれると、ナノ粒子形の薬物成分は溶解し、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境に移動することが可能となる。
【0079】
このようにして、固定マクロファージによる貪食作用およびそれからの溶解によって、ナノ粒子形状の薬物成分は、溶液形状の薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングを持たされる。したがって、複数の薬物成分間の薬物間相互作用を最小化するためには、RESまたはMPS内のマクロファージによる溶解および放出速度、および、結果として、薬物成分間の薬物間相互作用を、溶液形状を持つある薬物成分と一緒に、ある薬物成分をナノ粒子形として(例えば、ナノ懸濁液型として)投与することによって調節してもよい。
【0080】
一般に、ナノ粒子形の薬物成分は、結晶として凝集するか、または非晶質状態で存在する分子を含む。このような凝集は、その分子が細胞外環境に抜け出す前に、MPSにおいて分解(「溶解」)されなければならない。貪食作用が起こる可能性を高めるために、通常、ナノ懸濁液中のナノ粒子は、結晶形または特徴を備えることが好ましい。具体的に言うと、結晶格子と関連するナノ粒子は、非晶質形のナノ粒子または他の物質よりも、可溶化に抵抗する、したがって、全身の吸収および分布に対して抵抗する可能性がより高い。非晶質形のナノ粒子は通常、可溶化に対する抵抗能力がより低い。したがって、ナノ粒子の非晶質形は多くの場合吸収されて全身的に分布する。しかし、ある場合には、非晶質形ナノ粒子は、RESまたはMPSによって捕捉されることもある。ある状況では、ナノ粒子の非晶質形を結晶形に再処方してもよい。
【0081】
(マイクロエマルジョン)
薬物動態プロフィールを改変された薬物成分はまた、マイクロエマルジョンとして提供されてもよい。マイクロエマルジョンは、一般に、水、油、および界面活性剤(単複)から構成される薬物成分を輸送する改変型ベヒクルで、単一の光学的等方性を持ち、熱力学的に安定な液状溶液を構成する。マイクロエマルジョン小滴のサイズは、約10−100nmの範囲である。マイクロエマルジョンは、水溶性化合物、油溶性化合物の両方を可溶化する能力を持つ。したがって、輸送のために、マイクロエマルジョンは、水性連続相における油小滴、油連続相における水、または、キュボソーム(cubosome)と呼ばれる両性連続構造から構成されてもよい。
【0082】
疎水性薬物の分散および放出は、水中油マイクロエマルジョンでは水溶性薬物のものよりも遅いが、一方、油中水マイクロエマルジョンでは逆である。したがって、薬物間相互作用を最小化するために、マイクロエマルジョンの吸収および分布を、油/水分配を調節することによって変えてもよい。
【0083】
油が存在するために、マイクロエマルジョンは血液にすぐには溶解せず、全身循環から排除を必要とする異物として認識される。したがって、マイクロエマルジョンは、RESまたはMPS内の固定マクロファージによって貪食作用を通じて隔離される。固定マクロファージの中に包み込まれると、マイクロエマルジョンは溶解し、そのため薬物成分が、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境に移動することが可能となる。
【0084】
MPS系による隔離およびそこから出るために、マイクロエマルジョン形を持つ薬物成分の薬物動態プロフィールは、非マイクロエマルジョン形状の成分の薬物動態プロフィールから変更される。したがって、薬物成分をマイクロエマルジョンとして処方することによって薬物成分の薬物動態プロフィールを変え、それによって薬物間相互作用を抑えることが可能である。
【0085】
薬物動態プロフィールが改変されるエマルジョン処方物を調製するに当たって、一つの好適なエマルジョン沈殿技術が、同一譲受人に係る同時係属中の米国特許公開第2005/0037083号に記載される。この対処法では、この方法は、(1)有機相および水相を持つ複数相システムを準備する工程であって、有機相は、製薬学的に有効な化合物をその中に有する工程;および(2)このシステムを超音波処理して、有機相の一部を蒸発させ、約2μm以下の平均実効粒径を持つ化合物を水相中に沈殿させる工程を含む。この複数相システムを準備する工程は、(1)水に混和しない溶媒を、製薬学的に有効な化合物と混合して有機溶液を定める工程;(2)1種以上の界面活性化合物を用いて水性溶液を準備する工程;および(3)上記有機溶液を上記水溶液と混合して、複数相システムを形成する工程を含む。有機相と水相を混合する工程は、ピストンギャップホモジェナイザー、コロイドミル、高速攪拌装置、押し出し装置、手動の攪拌または振盪装置、マイクロフルイダイザー、または、高せん断条件を実現する他の装置または技術の使用を含む。未精製エマルジョンは、水の中に、直径が約1μm以下のサイズを持つ油小滴を持つ。この未精製エマルジョンを超音波処理すると、マイクロエマルジョンが、そして最終的にミクロン以下のサイズを持つ粒子の懸濁液が求められる。
【0086】
ミクロン以下の粒子を持つエマルジョンを調製するもう一つの方法が、係属中の同一譲受人に係る米国特許出願公開第2003/0059472号に開示される。この方法は、(1)有機相および水相を持つ複数相システムの未精製分散体を準備する工程であって、有機相がその中に薬物化合物を有する工程;(2)未精製分散体にエネルギーを与えて、微細分散体を形成する工程;(3)この微細分散体を凍結する工程;および(4)この微細分散体を凍結乾燥し、薬物化合物のミクロン以下粒子を得る工程を含む。この複数相システムを準備する工程は、(1)水に非混和性の溶媒を、製薬学的に有効な化合物と混ぜ合わせて有機溶液を定める工程;(2)1種以上の界面活性化合物を用いて水性溶液を準備する工程;および(3)上記有機溶液を上記水溶液と混合して複数相システムを形成する工程を含む。有機相と水相を混合する工程は、ピストンギャップホモジェナイザー、コロイドミル、高速攪拌装置、押し出し装置、手動の攪拌または振盪装置、マイクロフルイダイザー、または高せん断条件を実現する他の装置または技術の使用を含む。
【0087】
一般に、マイクロエマルジョンの形を取る薬物成分は、ナノ粒子形の薬物成分よりも、RESまたはMPSにおいてより速やかな溶解速度を持つ。このより速やかな溶解速度は、マイクロエマルジョン形の薬物成分はMPSによって貪食されるが、マイクロエマルジョン中の薬物成分の分子は、凝集形ではなく、したがって可溶性の低い形状でないためである。一方、ナノ粒子形の薬物成分は、結晶として、または非晶質状態において凝集する分子を含んでおり、そのような凝集体は、細胞外環境に脱出する前に、MPSにおいて分解(「溶解」)されなければならない。同様に対照的に、従来の溶液型の薬物成分は速やかに全身に分布する。したがって、RESまたはMPS内のマクロファージによる溶解および放出速度、および、結果として、薬物成分間の薬物間相互作用は、送達ベヒクルを変えることによって調節することが可能である。例えば、マイクロエマルジョン状の薬物成分を、ナノ粒子状の別の薬物成分と共に投与して、薬物間相互作用が抑えられた薬物の組み合わせを実現することが可能である。あるいは、成分間の薬物間相互作用を最小化するために、薬物マイクロエマルジョンを、溶液状のもう一つの薬物成分と共に投与することが可能である。
【0088】
(エマルジョン)
薬物動態プロフィールが改変された薬物成分は、また、エマルジョンとして提供されてもよい。エマルジョンは、マイクロエマルジョンと比べてサイズが比較的大きな小滴を含む。自発的に形成されるマイクロエマルジョンと違って、エマルジョンは、エネルギーを入力することによって調製しなければならない。エマルジョンの形成は、エマルジョン小滴(サイズが約100nm−10μmの範囲)の生成およびその上に新規表面を形成するための、高圧ホモジェナイゼーションを含む。エマルジョンは、界面活性剤、油および水容量割合、温度、塩濃度、および共界面活性剤およびその他の共溶質の存在に基づいて、油中水型エマルジョンであっても、水中油型エマルジョンであってもよい。さらに、二重ホモジェナイゼーションプロセスによって、水/油/水または油/水/油エマルジョンを形成してもよい。
【0089】
油小滴のサイズの方が比較的大きいために、水中油型エマルジョンは、水中油型の表面積に対して、相対的に大きな疎水性体積を持つ。この関係によって、水中油型エマルジョンには大量の疎水性活性成分が取り込まれる。さらに、表面積が大きくないので、エマルジョンを生成し、安定化するのに必要な界面活性剤の量が比較的少なく、非毒性界面活性剤、例えば、リン脂質およびその他の極性脂質を安定化剤として使用することが可能である。
【0090】
エマルジョンの小滴は、血液に簡単に溶解しないように、したがって、全身循環から排除することが必要な異物として認識されるのに十分な時間存在するように処方されてもよい。例えば、エマルジョンは、通常、注入後1時間以内に分解される。しかしながら、調製しようと思えば、貪食されるほど比較的長い寿命を持つエマルジョンを調製することは可能である。その場合、このエマルジョンの改変処方物は、RESまたはMPS内の固定マクロファージによって貪食作用を通じて隔離される。固定マクロファージの中に包み込まれると、エマルジョンは溶解し、そのため薬物分子が、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境に移動することが可能となる。
【0091】
このようにして、固定マクロファージによる貪食作用およびそれからの溶解によって、エマルジョンは、溶液形状の薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングを持たされる。さらに別の実施態様では、エマルジョンの成分および該成分に対する表面改変因子を操作することによって該薬物成分をエマルジョンに組み込みむことで、それら薬物成分の薬物動態プロフィールを改変し、それによってそれら薬物成分の相互作用を抑えてもよい。
【0092】
一般に、エマルジョンの形を取る薬物成分は、ナノ粒子形の薬物成分よりも、RESまたはMPSにおいてより速やかな溶解速度を持つ。このより速やかな溶解速度は、エマルジョン形の薬物成分はMPSによって貪食されるが、エマルジョン中の薬物成分の分子は、凝集形ではないためである。一方、ナノ粒子形の薬物成分は、結晶として、または非晶質状態において凝集する分子を含んでおり、この分子が細胞外環境に脱出する前に、そのような凝集体がMPSにおいて分解(「溶解」)されなければならない。同様に対照的に、溶液型の薬物成分は吸収されて全身に分布する。したがって、RESまたはMPS内のマクロファージによる溶解および放出速度、および、結果として、薬物成分間の薬物間相互作用は、送達ベヒクルを変えることによって調節することが可能である。例えば、エマルジョン状の薬物成分を、ナノ粒子状の別の薬物成分と共に投与して、薬物間相互作用が低下した薬物の組み合わせを実現することが可能である。あるいは、成分間の薬物間相互作用を最小化するために、薬物エマルジョンを、溶液状のもう一つの薬物成分と共に投与してもよい。
【0093】
(ミセル)
薬物動態プロフィールを改変される薬物成分は、ミセルとして提供されてもよい。ミセルは、複数の界面活性分子の集塊を含む薬物成分を輸送する改変されたベヒクルである。ミセルの形成は、一般に、界面活性分子の疎水性部分間の相互作用によって指定される。ミセル化における対向性相互作用としては、イオン性界面活性剤の荷電頭部基同士の間の静電気的反発性相互作用、オリゴ鎖のような鎖状極性頭部基同士の間の浸透圧反発作用、または、拡大した頭部基同士の立体相互作用が挙げられる。対向力の間のバランスを維持するには、ミセル形成は、疎水性成分のサイズ、極性頭部基の性質、対向イオン(荷電した界面活性剤、塩濃度)の性質、pH、温度、および共存溶質の存在に依存する。例えば、疎水性ドメインのサイズの増加は、疎水性相互作用の上昇をもたらし、したがってミセル化を誘発する。
【0094】
ミセルは、その中では全体として非凝集状態で存在する、きわめてダイナミックな構造を形成する。さらに、溶液では、界面活性分子は、個々のミセルの間で自由に交換される。疎水性薬物の可溶性は、ミセルの数と凝集度に依存する。従って、一般に、大きいミセルの方が、小さいミセルよりも、疎水性薬物に対しより効率的な安定化剤となる。低分子量界面活性剤を含むミセルは、非経口投与の後直ちに解離する場合がある。一方、高分子量界面活性剤、高濃度の界面活性剤を含むミセル、およびブロックコポリマーとして形成されるミセルは、解離が遅れるために、それらが、異物として認識されるのに十分な時間が経過するために貪食作用を受ける。
【0095】
したがって、ミセルは、血液に簡単に解けないように、したがって、全身循環から排除することが必要な異物として認識されるように処方されてもよい。その場合、ミセルは、RESまたはMPS内の固定マクロファージによって貪食作用を通じて隔離される。固定マクロファージの中に包み込まれると、ミセルは溶解し、そのため薬物成分が、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境に移動することが可能となる。このようにして、固定マクロファージによる貪食作用およびそれからの溶解によって、ミセルは、溶液形状の薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングを持たされる。したがって、ミセルの構造を操作することによってミセルの薬物動態プロフィールを改変し、それによって薬物成分の相互作用を低下させてもよい。
【0096】
(リポソーム)
薬物動態プロフィールを改変される薬物成分は、リポソームとして提供されてもよい。ミセルは、複数の界面活性分子の集塊を含む薬物成分を輸送する改変されたベヒクルであり、および場合によっては、通常は脂質を含む、一つまたはいくつかの二重層構造を持つブロックポリマーである。リポソームは、水溶性および親油性、両方の物質を取り込む能力を持つ。
【0097】
リポソームにおける薬物放出は、一般に、脂質二重層の透過性を、(1)脂質二重層の成分(単複)を変えること、(2)pHを変えること、(3)二重層成分を除去すること、および(3)補充成分を導入することによって操作することを含む。にも拘わらず、リポソームは簡単に吸収および分布されず、初回投与後全身循環に留まり続ける。
【0098】
さらに具体的に言うと、リポソームは、血液にすぐには解けず、したがって、全身循環から排除することが必要な異物として認識される。その場合、リポソームは、RESまたはMPS内の固定マクロファージによって貪食作用を通じて隔離される。固定マクロファージの中に包み込まれると、リポソームは溶解し、そのため薬物成分が、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境に移動することが可能となる。
【0099】
このようにして、固定マクロファージによる貪食作用およびそれからの溶解によって、リポソームは、溶液形状の薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングを持たされる。したがって、リポソーム成分を操作することによって薬物動態プロフィールを改変し、それによって薬物成分の相互作用を抑えてもよい。
【0100】
一般に、リポソームの形を取る薬物成分は、貪食作用を受けるナノ粒子形の薬物成分よりも、RESまたはMPSにおいてより速やかな溶解速度を持つ。このより速やかな溶解速度は、薬物成分が、分子として溶解した状態でリポソームに取り込まれるのに対し、一方、ナノ粒子形の薬物成分は、凝集形の分子を含んでおり、先ず、MPSにおける分解工程を必要とするからである。同様に対照的に、溶液型の薬物成分は、貪食作用を回避し、全身に分布する。したがって、薬物動態プロフィール、結果として、薬物成分間の薬物間相互作用は、送達ベヒクルを変えることによって調節することが可能である。例えば、成分間の薬物間相互作用を最小化するために、リポソーム形状の薬物成分を、ナノ粒子状の、または大きさを調節したミセル状の、または溶液状の、別の薬物成分と共に投与してもよい。
【0101】
(複数の改変された薬物送達ベヒクルの使用を組み合わせる)
異なるやり方で改変された薬物送達ベヒクルを有する薬物成分を、それら成分間の薬物間相互作用の最小化を実現するために用いてもよい。本発明の一局面では、複数の薬物成分間の薬物間相互作用を最小化するために、複数の薬物送達ベヒクルが使用される。この場合、一部はその薬物輸送状態に基づいてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第1薬物成分が提供される。例えば、第1薬物成分は、ナノ粒子、ナノ懸濁液、マイクロエマルジョン、エマルジョン、ミセル、またはリポソームとして輸送されてもよい。この第1薬物成分は、第2薬物成分が溶液型でない場合は、溶液型として輸送されてもよい。さらに、一部は、その薬物輸送状態に基づく別の薬物動態プロフィールを有する第2薬物成分が提供される。この第2薬物成分は、ナノ粒子、ナノ懸濁液、マイクロエマルジョン、エマルジョン、ミセル、またはリポソームとして輸送されてもよい。第2薬物成分は、第1薬物成分が溶液型でない場合は、溶液型として輸送されてもよい。薬物送達ベヒクルは、第1および第2薬物成分が実施的に互いに影響を及ぼしあうことがないように、あるいは、それぞれのプロフィール間の相互作用が、改変された輸送状態の組み合わせ成分が未改変処方物状態である場合と比べて、実質的に低減されるように選択される。
【0102】
例えば、一般に、ナノ懸濁液、マイクロエマルジョン、エマルジョン、ミセル、およびリポソームは、RESまたはMPSにおけるマクロファージによって様々な速度で分解および放出される。一つのより具体的な例では、リポソームの分解速度は、一般に、ナノ懸濁液のものよりも速い。このため、ナノ懸濁液型の薬物成分の方が放出により長くかかる。したがって、濃度の時間的変動を表す薬物動態プロフィールがある改変を受けた、ナノ懸濁液として処方される少なくとも一つの薬物成分を含む薬物の組み合わせを提供することが可能である。濃度の時間的変動を表す薬物動態プロフィールが別様に改変された、リポソーム形として処方される第2薬物成分をさらに提供してもよい。この薬物の組み合わせが、哺乳動物に対しほぼ同時に、または時間を変動させて投与されると、MPS/RESにおけるリポソームの分解速度は、ナノ懸濁液の分解速度よりも速い。したがって、複数の薬物成分の一つ以上が、変更後の薬物動態プロフィールを有するように処方されると、これらの成分は、未改変の処方状態のみを持つ成分が投与された場合に起こる薬物間相互作用を低減させる様式で投与される。
【実施例】
【0103】
実施例1
図3は、イトラコナゾールのナノ懸濁液による、薬物間相互作用の最小化をもたらす改変された薬物動態プロフィールを示す。イトラコナゾール・ナノ懸濁液の放出をプロットしたものが10で表され、12で表される液体注射イトラコナゾールと比較される。図3に示すイトラコナゾール処方物は、Janssen Pharmaceutica Products,L.P.によって製造されるSporanox(登録商標)ブランド名の静注液である。イトラコナゾールのナノ懸濁液成分10、および、静注可能な液体Sporanox(登録商標)イトラコナゾール成分12それぞれについて、10mg/mLが投与される。プロットの最初の低下によって、静注可能な液体Sporanox(登録商標)イトラコノゾル成分12が、全身循環から急激に排除されるとの所見が裏付けられる。同プロットの別のデータによれば、イトラコナゾールのナノ懸濁液成分10はまた、RESまたはMPSによる貪食作用によって全身循環から速やかに排除されるとの所見が裏付けられる。
【0104】
図3のプロット10はさらに、イトラコナゾールのナノ懸濁液成分10が、ナノ懸濁液の濃度の低下から分かるように、RESまたはMPSの固定マクロファージによって隔離され、取り込まれるという所見と一致する。その後、ナノ懸濁液濃度は上昇すると記録され、これによって、イトラコナゾールのナノ懸濁液が次に溶解し、そのためイトラコナゾールが、ファゴリソソームから抜け出し、次に細胞外環境への移動が可能になるとの結論が裏付けられる。ナノ懸濁液濃度における第2の比較的ゆっくりした低下は、ナノ懸濁液が徐々に代謝されることと一致する。以上まとめると、図3のデータによって、ナノ懸濁液の貪食作用が起こるという結論が裏付けられる。「Long−Circulating and Target−Specific Nanoparticles:Theory to Practice」,S.Moein Moghimi et al.,Pharmacological Reviews,Vol.53,No.2(2001)、および、「Nanosuspensions in Drug Delivery」,Barrett E.Rabinow,Nature,Vol.3,(September,2004)を参照されたい。
【0105】
ナノ懸濁液処方物のイトラコナゾールは、血漿濃度の経時的変動を表す薬物動態プロフィールを、Sporanox(登録商標)イトラコナゾールと比べ、効果的に改変する。例えば、溶液型に比べ、ナノ懸濁液処方では、血漿濃度のピークレベル(Cmax)が低下する。さらに、血漿濃度のピークレベル(Cmax)が、両処方について同じ期間の異なる時点において起きる。さらに具体的に言うと、ナノ懸濁液の血漿曲線のCmaxは、液体注射型の場合のように注入の直後には起こらず、さらに遅く、貪食作用と、RESまたはMPSのマクロファージからのナノ粒子の放出との後数時間たって起こる。
【0106】
したがって、放出速度が特定の改変を受け、薬物動態プロフィールが変更された、ナノ懸濁液型のイトラコナゾールを含む薬物の組み合わせが提供され得る。この薬物の組み合わせはさらに、液体注入型の別の薬物成分を含んでもよい。このようにして、イトラコナゾール処方物と、別の薬物成分との間の、潜在的な薬物間相互作用は、イトラコナゾール処方をナノ懸濁液型として提供し、それによってRESまたはMPSによるイトコナゾル処方の分解または放出速度を変えることによって最小化される。
【0107】
方程式1は、薬物代謝抑制係数(R)の数式を表す。
【0108】
R=1+f*Cmax/K 方程式1
薬物代謝抑制係数(R)とは、ある薬物について、第1薬物の代謝を妨げる薬物の同時投与によって該薬物の濃度がどれだけ増加したかを表す係数である。
【0109】
方程式1において、fは、血漿中に未結合で存在する抑制剤の割合を表す。この未結合薬物は、膜を通過して血液区画から組織の中に入って自由に平衡を維持する。Kは、薬物に対する抑制剤の抑制定数を表し、薬物の濃度が影響を受ける。Cmaxは、投与後における抑制剤の肝臓Cmaxである。Cmaxは、通常、薬物動態実験で求めた血漿における抑制剤のCmax(Cmax)に、組織分布実験で求めた肝臓/血漿濃度比を掛けることによって計算される。 溶液としてのSporanox(登録商標)イトラコナゾール成分と、イトラコナゾールナノ懸濁液処方物とについて計算された薬物抑制係数の比較例は、ミダゾラムを第2の被抑制薬物として用いた場合、下記のようになる。
【0110】
ヒトの場合、溶液としてのイトラコナゾールのSporanox成分は、Cmax=3748ng/mlである。肝臓/血漿濃度比(P)は3.5である。したがって、Cmax=13118ng/mlとなる。イトラコナゾールの200mg用量では、f=0.035である。ミダゾラムでは、K=0.275μMである。
【0111】
イヌでは、溶液としてのイトラコナゾールのSporanox成分は、Cmax=3μg/mlである。イトラコナゾール成分のナノ懸濁液処方では、血漿曲線のCmaxは、溶液剤形のように注入直後では起こらず、図3に関連して詳細に論じたように、肝臓のマクロファージによる貪食および放出後数時間経って起こる。したがって、ナノ懸濁液処方では、Cmax=0.31μg/mlとなる。これは、イトラコナゾールの外にヒドロキシ−イトラコナゾール代謝産物を含む。これらの数値を念頭に置くと、Sporanoxイトラコナゾールは、10.5μg/mlの血漿Cmaxを持ち、一方、イトラコナゾールのナノ懸濁処方は、親化合物とその代謝産物の両方について、1.085μg/mlのCmaxを持つ。したがって、Sporanoxの薬物代謝抑制係数は、(R)=1+0.035(10.5/.275)=2.35である。ミダゾラムに対するイトラコナゾールのナノ懸濁液処方の抑制定数Rは、R=1+0.035(1.085/.275)=1.14として与えられる。この数式から、イトラコナゾールのナノ懸濁液処方によって誘発される増加が無視できるほど小さい(1.14)のに比べ、Sporanoxは、ミダゾラムの濃度を際立った係数(2.35)で増加させる。以上、ナノ懸濁液型のイトラコナゾールの濃度は、薬物間相互作用を増大させる心配をすることなく、効力を上げるために増すことが可能である。
【0112】
実施例2
この実施例は、改変された薬物輸送処方におけるイトラコナゾールによる薬物間相互作用の低減を示す。他の様々な薬物と共に、本発明に従わずに同時に投与されると、イトラコナゾールのSporanoxはある種の薬物の血漿濃度を増す。そのような薬物として、抗不整脈剤(例えば、ジゴキシン、ドフェチリド、キニジン、ジソピラミド)、抗痙攣剤(例えば、カルバマゼピン)、抗マイコバクテリア剤(例えば、リファブチン)、抗癌剤(例えば、ブスルファン、ドセタキセル、ビンカアルカロイド)、抗精神病剤(例えば、ピモジド)、ベンゾジジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、ジアゼパム、ミダゾラム、またはトリアゾラム)、カルシウムチャンネル遮断剤(例えば、ジヒドロピリジン、ベラパミル)、消化管運動剤(例えば、シサプリド)、HMG Co−Aレダクターゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)、経口血糖低下剤、プロテアーゼ阻害剤(イジナビル、リトナビル、サキナビル)、レバセチルメタドル(レボメタジル)、麦角アルカロイド、ハロファントリン、アルフェンタニル、ブスピロン、メチルプレドニソロン、ブデソニド、デキサメタゾン、トリメトレキセート、ワーファリン、シロスタゾル、およびクレトリパンが挙げられる。この薬物間相互作用に関連する副作用として、他の反応が種々ある中でも、重大な循環系障害、長期の催眠および沈静作用、および脳虚血が挙げられる。したがって、本発明の教示にしたがって、イトラコナゾールのSporanox処方は、前掲の薬物との薬物間相互作用を最小にするように改変される。
【0113】
さらに具体的に言うと、イトラコナゾールのSporanoxと、前掲の各薬物との間の薬物間相互作用は、イトラコナゾールを輸送するために様々に改変されるベヒクルを用いることによって低減される。この実施例では、薬物間相互作用を低減するために、ナノ懸濁液型のイトラコナゾールが、ジゴキシンと同時に投与される。他の同時投与は、イトコナゾルのナノ懸濁液と、他の前掲の薬物それぞれとの組み合わせである。
【0114】
あるいは、ナノ粒子、ナノ懸濁液、エマルジョン、ミセル、およびリポソーム形状のイトラコナゾールは、それぞれ、RESまたはMPSにおいて、様々の分解または放出速度を持つ。したがって、薬物間相互作用を低減するために、イトラコナゾールは、前掲の薬物と同時に、エマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソーム、またはミセルから選ばれる任意の形状で投与される(例えば、ジゴキシン+イトラコナゾールのマイクロエマルジョン、エマルジョン、リポソーム、またはミセル形)。
【0115】
実施例3
本実施例は、イトラコナゾールのSporanoxと、改変された薬物輸送処方として調製された薬物成分の間の薬物間相互作用の低減に関する。本発明によらず同時に投与されると、ある種の薬物は、イトラコナゾールの血漿濃度を増す。そのような薬物として、マクロライド抗生物質(例えば、クラリスロマイシン、エリスロマイシン)およびプロテアーゼ阻害剤(例えば、インディナビル、リトナビル)が挙げられる。本開示の教示に従って、これらの薬物の処方は、イトラコナゾールSporanoxとの薬物間相互作用を低減するために改変される。さらに具体的に言うと、前掲の薬物を輸送するための様々のベヒクルを用いて薬物動態を変える。結果、イトラコナゾールSporanoxと、輸送改変形として調製された前掲の各薬物との間の薬物間相互作用は低減される。
【0116】
未改変輸送形におけるクラリスロマイシンと比較した場合の薬物間相互作用を低減するために、クラリスロマイシンのナノ懸濁液が、イトラコナゾールSporanox(溶液型)と同時に投与される。あるいは、薬物間相互作用を抑えるために、エマルジョン、ミセル、またはリポソーム形状の前掲の薬物が、イトラコナゾールSporanoxと同時に投与される。
【0117】
本発明をいくつかの具体的局面を参照しながら説明してきたが、この説明は、限定な意味で解釈されないものとすることが理解される。それどころか、その特定の局面の各種組み合わせを含め、様々の変更および改変を、本発明の真の趣旨、中心的特徴、および本明細書に個別に開示され、特許請求される特徴の組み合わせも含めた本発明の範囲から逸脱することなく、例示的実施態様に対して実行することが可能である。さらに、そのような変更および改変は、それがどのようなものであれ、当業者には、下記の特許請求項の一つ以上の要素と等価であると認められること、かつ、法律で認められる最大限においてこれらの特許請求項で網羅されるものとすることが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
本明細書を通じて、上記記載も以下の記載も添付の図面を参照する。図面中、類似の事項は、類似の参照番号で示す。
【図1】図1は、本開示の一実施態様に従って、薬物動態プロフィールが改変されたナノ粒子薬物成分を生産する方法を示す模式図である。
【図2】図2は、本開示の一実施態様に従って、薬物動態プロフィールが改変されたナノ粒子薬物成分を生産する方法を示す模式図である。
【図3】図3は、イトラコナゾールの溶液処方物と比べた場合の、ナノ懸濁液形態のイトラコナゾールの、経時的濃度変動を表す、静注下薬物動態プロフィールを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物体内における薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせであって、該薬物の組み合わせは、
前記哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを有する第1薬物成分;および、
非経口投与用に処方される第2薬物成分
を含み、該第2薬物成分は、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールが未変更薬物動態プロフィールから変更されるように処方されており、該未変更薬物動態プロフィールは、第1薬物成分の該特定の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼし、そのため、該第2薬物成分の変更後薬物動態プロフィールが、該第1薬物成分の薬物動態プロフィールに対し実質的に影響を及ぼさなくなることを特徴とする、薬物の組み合わせ。
【請求項2】
前記第2薬物成分は不溶性であることを特徴とする、請求項1に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項3】
前記第2薬物成分は、薬物送達ベヒクル改変と共に投与されることを特徴とする、請求項2に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項4】
前記薬物送達ベヒクル改変は、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項5】
前記第2薬物成分は、前記哺乳動物のMPSにおいて貪食されることを特徴とする、請求項1に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項6】
前記第2薬物成分は、ミセル薬物送達ベヒクル改変と共に投与され、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、そのミセルとの会合によって変更されることを特徴とする、請求項1に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項7】
前記第2薬物成分は、マイクロエマルジョン薬物送達ベヒクル改変と共に投与され、前記マイクロエマルジョンは、油/水分画を含み、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、該油/水分画を有するマイクロエマルジョンとして処方されることによって変更されることを特徴とする、請求項1に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項8】
前記第2薬物成分は、エマルジョン薬物送達ベヒクル改変と共に投与され、エマルジョンは、油/水分画を含み、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、該エマルジョンとして処方されることによって変更されることを特徴とする、請求項1に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項9】
前記薬物送達ベヒクル改変は、表面改変因子をさらに含み、前記第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、その表面改変因子との会合によって変更されることを特徴とする、請求項3に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項10】
前記薬物送達ベヒクル改変は、結晶性ナノ粒子のナノ懸濁液であることを特徴とする、請求項3に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項11】
前記薬物送達ベヒクル改変は、非晶質ナノ粒子のナノ懸濁液であることを特徴とする、請求項3に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項12】
前記第2薬物成分はイトラコナゾールであることを特徴とする、請求項10に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項13】
前記第1および第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、血漿濃度の経時的変動によって測定され;改変されて処方された第2薬物成分は、前記哺乳動物に投与された場合、期間が同じでも、未改変で処方された状態の第2薬物成分の薬物動態プロフィールとは異なる血漿濃度の経時的変動を示す薬物動態プロフィールを持ち、この異なる血漿濃度変動によって、該第1および第2薬物成分が同時に該哺乳動物の体内にあるときも、該第1薬物成分と第2薬物成分との間の薬物動態学的薬物間相互作用が最小化されることを特徴とする、請求項1に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項14】
前記未変更の第2薬物成分が、ある期間のある時点にピーク血漿濃度を持ち、変更後の第2薬物成分は、その改変された処方によって、同じ期間の異なる時点に出現するピーク血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項13に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項15】
前記未変更の第2薬物成分はピーク血漿濃度を持ち、前記変更後の第2薬物成分は、該未変更の第2薬物成分のピーク血漿濃度よりも低いピーク血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項13に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項16】
前記第2薬物成分の経時的濃度変動の薬物動態プロフィールは、該第2薬物成分が、前記哺乳動物への投与後にMPSにおいてマクロファージによって貪食されることと関連することを特徴とする、請求項13に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項17】
前記第1薬物成分は、任意の所定の時点において血漿濃度を持ち、前記改変処方物中の第2薬物成分が、該所定の時点における薬物成分の合計濃度を下げるように、未改変で処方された状態において持つものよりも低い血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項13に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項18】
前記第2薬物成分の所定の処方物が、ある選ばれた用量で投与された場合、ある期間において所定の平均血漿濃度を示し、改変された第2薬物成分が、該同じ選ばれた用量で投与された場合、より長い期間においてより低い平均血漿濃度を示すことを特徴とする、請求項13に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項19】
哺乳動物における薬物間相互作用を最小化するための方法であって、
該哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第1薬物成分を投与する工程;
該哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第2薬物成分を所定の処方物において準備する工程であって、該所定の処方物における該第2薬物成分の特定の薬物動態プロフィールは、該第1および第2薬物成分が同時に該動物の体内に存在する場合、該第1薬物成分の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼす、工程;
該第2薬物成分を、該第2薬物成分の特定の薬物動態プロフィールを変更後の薬物動態プロフィールに変える改変処方物へと処方する工程;および、
該哺乳動物に、該第2薬物成分の改変処方物を非経口的に投与する工程を包含し、該第2薬物成分の変更後の薬物動態プロフィールは、該第1薬物成分と該第2薬物成分が同時に該哺乳動物体内に存在しても、該所定の処方の第2薬物成分の効果に比べて、該第1薬物成分の薬物動態プロフィールに対して実質的に低減した効果を有することを特徴とする、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項20】
前記第2成分の変更後の薬物動態プロフィールが、前記第1薬物成分の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼさないことを特徴とする、請求項19に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項21】
前記第2薬物成分が不溶性であることを特徴とする、請求項19に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項22】
前記第2薬物成分の処方物は、薬物送達ベヒクル改変を通じて改変されていることを特徴とする、請求項20に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項23】
前記薬物送達ベヒクル改変は、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項22に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項24】
前記第1薬物成分は、前記哺乳動物に投与されると、血漿濃度の経時的変動によって測定される、ある特定の薬物動態プロフィールを持ち;前記改変処方物中の第2薬物成分が、該哺乳動物に投与されると、期間が同じでも、前記未改変処方物中の第2薬物成分の薬物動態プロフィールとは異なる血漿濃度の経時的変動によって測定される薬物動態プロフィールを持ち、この異なる血漿濃度変動によって、該第1および第2薬物成分が同時に該哺乳動物の体内にあっても、該第1薬物成分と該第2薬物成分との間の薬物動態学的薬物間相互作用が最小化されることを特徴とする、請求項19に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項25】
前記第1薬物成分は、任意の所定の時点において血漿濃度を持ち、前記改変処方物中の第2薬物成分は、該所定の時点における薬物成分の合計濃度を下げるように、未改変で処方された場合に持つものよりも低い血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項24に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項26】
前記第2薬物成分の所定の処方物は、ある選ばれた用量で投与された場合、ある期間において所定の平均血漿濃度を示し、改変された第2薬物成分は、該同じ選ばれた用量で投与された場合、より長い期間においてより低い平均血漿濃度を示すことを特徴とする、請求項25に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項27】
前記未改変処方物中の第2薬物成分はあるピーク血漿濃度を持ち、前記改変処方物中の第2薬物成分は、該未改変処方物中の第2薬物成分のピーク血漿濃度よりも低いピーク血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項25に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項28】
前記改変処方物中の第2薬物成分の、経時的濃度変動の薬物動態プロフィールは、前記改変処方物中の第2薬物成分が、哺乳動物への投与後にMPSにおいてマクロファージによって貪食されることと関連することを特徴とする、請求項25に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項29】
哺乳動物における薬物相互作用を最小化するための方法であって、
該哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第1薬物成分を準備する工程;
該哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第2薬物成分を所定の処方物において準備する工程であって、該第2薬物成分の特定の薬物動態プロフィールは、該第1および該第2薬物成分が同時に前記動物の体内に存在する場合、該第1薬物成分の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼす、工程;
該第2薬物成分を、該第2薬物成分の特定の薬物動態プロフィールを変更後の薬物動態プロフィールに変える改変処方物へと処方する工程;
該哺乳動物に、該改変された第2薬物成分を非経口的に投与する工程;および、
該哺乳動物に第1薬物成分を投与する工程
を包含し、該改変処方物の第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、第1薬物成分と第2薬物成分が同時に哺乳動物体内に存在しても、該第1薬物成分の薬物動態プロフィールに及ぼす効果を実質的に最小化することを特徴とする、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項30】
前記第2成分の変更薬物動態プロフィールは、前記第1薬物成分の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼさないことを特徴とする、請求項29に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項31】
前記第2薬物成分が不溶性であることを特徴とする、請求項30に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項32】
前記第2薬物成分の処方物が、薬物送達ベヒクル改変を通じて改変されることを特徴とする、請求項31に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項33】
前記薬物送達ベヒクル改変が、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項32に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項34】
前記未改変処方物中の第2薬物成分が、前記哺乳動物に投与されると、血漿濃度の経時的変動によって測定される、ある特定の薬物動態プロフィールを持ち;該改変処方物中の第2薬物成分が、前記哺乳動物に投与されると、期間が同じでも、未改変処方物中の第2薬物成分の薬物動態プロフィールとは異なる血漿濃度変動によって測定される薬物動態プロフィールを持ち、この異なる経時的血漿濃度変動によって、前記第1および該第2薬物成分が同時に前記哺乳動物の体内にあっても、該第1薬物成分と該第2薬物成分との間の薬物動態学的薬物間相互作用が最小化されることを特徴とする、請求項30に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項35】
前記未改変処方物中の第2薬物成分は、ある期間のある時点にピーク血漿濃度を持ち、前記改変処方物の第2薬物成分が、同じ期間の異なる時点に出現するピーク血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項34に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項36】
前記未改変処方物中の第2薬物成分はあるピーク血漿濃度を持ち、前記改変処方物中の第2薬物成分は、該未改変処方中の第2薬物成分のピーク血漿濃度よりも低いピーク血漿濃度を持つことを特徴とする、請求項35に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項37】
前記改変処方物の第2薬物成分の、経時的濃度変動の薬物動態プロフィールは、該改変処方物中の第2薬物成分は、前記哺乳動物への投与後にMPSにおいてマクロファージによって貪食されることと関連することを特徴とする、請求項34に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項38】
哺乳動物体内における薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせであって、前記薬物の組み合わせは、
ある特定の代謝タイミングに従って特定の薬物代謝機序によって代謝される第1薬物成分、および、
MPSにおいて貪食される第2薬物成分
を含み、該第2薬物成分は、該第1薬物成分と同様の薬物代謝機序によって代謝され、該第2薬物成分に対する貪食作用は、該第1薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングをもたらし、該異なる代謝タイミングによって、該第1および第2薬物成分が哺乳動物において同時に存在しても、該第1薬物成分と該第2薬物成分との間の薬物動態学的薬物相互作用が最小化されることを特徴とする、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項39】
前記第2薬物成分は不溶性であることを特徴とする、請求項38に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項40】
前記第2薬物成分は、薬物送達ベヒクル改変と共に投与されることを特徴とする、請求項39に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項41】
前記薬物送達ベヒクル改変は、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項40に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項42】
前記薬物代謝機序は、ある特定の種類の薬物代謝酵素との相互作用であることを特徴とする、請求項38に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項43】
前記第2薬物成分は、マイクロエマルジョン薬物送達ベヒクル改変と共に投与され、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールが、そのマイクロエマルジョンとの会合によって変更されることを特徴とする、請求項38に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項44】
前記第2薬物成分が、エマルジョン薬物送達ベヒクル改変と共に投与され、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールが、そのエマルジョンとの会合によって変更されることを特徴とする、請求項38に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項45】
前記薬物送達ベヒクル改変は表面改変因子をさらに含み、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールは、その表面改変因子との会合によって変更されることを特徴とする、請求項40に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項46】
前記薬物送達ベヒクル改変はナノ粒子のナノ懸濁液であることを特徴とする、請求項39に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項47】
前記第2薬物成分はイトラコナゾールであることを特徴とする、請求項37に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項48】
哺乳動物における薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための方法であって、
前記哺乳動物に対し、ある特定の代謝タイミングに従ってある特定の薬物代謝機序によって代謝される第1薬物成分を投与する工程;
前記哺乳動物に投与されると、該第1薬物成分と類似の薬物代謝機序によって、類似の代謝タイミングに従って代謝される第2薬物成分を所定の処方物において準備する工程;
該第2薬物成分の処方物を改変する工程であって、該改変処方物は、該哺乳動物に投与されると、MPSにおける該第2薬物成分の貪食をもたらす、工程;および、
該哺乳動物に、該第2薬物成分の改変処方物を非経口的に投与する工程
を包含し、該第2薬物成分の改変処方物の貪食作用が、該改変されていない場合の第2薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングをもたらし、該異なる代謝タイミングによって、該第1薬物成分と第2薬物成分が哺乳動物体内に同時に存在しても、該第1薬物成分と該第2薬物成分との間の薬物動態学的薬物相互作用が最小化されることを特徴とする、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項49】
前記第2薬物成分は不溶性であることを特徴とする、請求項48に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項50】
前記第2薬物成分の処方物は、薬物送達ベヒクル改変を通じて改変されることを特徴とする、請求項49に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項51】
前記薬物送達ベヒクル改変が、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項50に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項52】
哺乳動物における薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための方法であって、
ある特定の代謝タイミングに従ってある特定の薬物代謝機序によって代謝される第1薬物成分を準備する工程;
該哺乳動物に投与されると、該第1薬物成分と類似の薬物代謝機序によってかつ該第1薬物成分と類似の代謝タイミングに従って代謝される第2薬物成分を所定の処方物において準備する工程;
該第2薬物成分の処方物を改変する工程であって、該改変処方物は、該哺乳動物に投与されると、MPSにおける該第2薬物成分の貪食をもたらす、工程;
該哺乳動物に、該第2薬物成分の改変処方物を非経口的に投与する工程;および、
該哺乳動物に該第1薬物成分を投与する工程
を包含し、該第2薬物成分の改変処方物の貪食作用が、該改変されていない場合の第2薬物成分の代謝タイミングとは異なる代謝タイミングをもたらし、該異なる代謝タイミングによって、該第1および第2薬物成分が哺乳動物体内に同時に存在しても、該第1薬物成分と該第2薬物成分との間の薬物動態学的薬物相互作用が最小化されることを特徴とする、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項53】
前記第2薬物成分が不溶性であることを特徴とする、請求項52に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項54】
前記第2薬物成分の処方物が、薬物送達ベヒクル改変を通じて改変されることを特徴とする、請求項53に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項55】
前記薬物送達ベヒクル改変が、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項54に記載の、哺乳動物における薬物相互作用の最小化法。
【請求項56】
哺乳動物体内における薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせであって、該薬物の組み合わせは、
抗不整脈剤、抗痙攣剤、抗マイコバクテリア剤、抗癌剤、抗精神病剤、ベンゾジジアゼピン、カルシウムチャンネル遮断剤、消化管運動剤、HMG Co−Aレダクターゼ阻害剤、免疫抑制剤、経口血糖低下剤、プロテアーゼ阻害剤、レバセチルメタドル、麦角アルカロイド、ハロファントリン、アルフェンタニル、ブスピロン、メチルプレドニソロン、ブデソニド、デキサメタゾン、トリメトレキセート、ワーファリン、シロスタゾル、およびクレトリパンから成る群から選ばれ、該哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第1薬物成分;および、
非経口投与用に、該第2薬物成分イトラコノゾールの薬物動態プロフィールがその未変更の薬物動態プロフィールから変更されるように処方された第2薬物成分イトラコナゾール
を含み、該未変更のプロフィールは、該第1薬物成分の特定の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼし、そのため、該第2薬物成分イトラコナゾールは、該第1薬物成分の薬物動態プロフィールに対して実質的に影響を及ぼさなくなることを特徴とする、薬物の組み合わせ。
【請求項57】
前記第2薬物成分イトラコナゾールは、薬物送達ベヒクル改変と共に投与されることを特徴とする、請求項56に記載の、哺乳動物における薬物相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項58】
前記薬物送達ベヒクル改変が、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項57に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項59】
哺乳動物体内における薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせであって、該薬物の組み合わせは、
溶液形態の、該哺乳動物においてある特定の薬物動態プロフィールを持つ第1薬物成分イトラコナゾール;および
マクロライド抗生物質およびプロテアーゼ阻害剤から成る群から選ばれる、非経口投与用に処方された第2薬物成分
を含み、該第2薬物成分は、該第2薬物成分の薬物動態プロフィールが、その未変更の薬物動態プロフィールから変更されるように処方され、該未変更プロフィールは、該第1薬物成分イトラコナゾールの該特定の薬物動態プロフィールに実質的に影響を及ぼし、そのため、該第2薬物成分の変更後の薬物動態プロフィールが、該第1薬物成分イトラコナゾールの薬物動態プロフィールに対し実質的に影響を及ぼさなくなることを特徴とする、薬物の組み合わせ。
【請求項60】
前記第2薬物成分が、薬物送達ベヒクル改変と共に投与されることを特徴とする、請求項59に記載の、哺乳動物における薬物相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。
【請求項61】
前記薬物送達ベヒクル改変が、ナノ粒子、塩形成、固体担体システム、共溶媒/可溶化、ミセル化、脂質小胞、油−水分画、リポソーム、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および錯化から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項60に記載の、薬物動態学的薬物間相互作用を最小化するための薬物の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−543842(P2008−543842A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516970(P2008−516970)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/022715
【国際公開番号】WO2006/138202
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(505309110)バクスター インターナショナル インコーポレイテッド (9)
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】