説明

薬物制御放出のための経口用剤形

【課題】異なった身体環境における活性な医薬の制御放出を提供する経口用剤形、かかる剤形の調製法および医学におけるかかる剤形の使用法を提供すること。
【解決手段】(i)医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む壊食性コア;および(ii)該コアの周りの壊食性コーティングであって、前記コーティングを実質的に完全に貫通してのびるが、前記コアを貫通せず、使用環境から前記コアと連絡する1またはそれ以上の開口部を含むコーティングを含む経口用剤形であって、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の該剤形からの放出が、所定のpH条件下での前記壊食性コアの壊食により、前記開口部から、また前記壊食性コーティングの壊食から起こることを特徴とする経口用剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異なった身体環境における活性な医薬の制御放出を提供する経口用剤形、かかる剤形の調製法および医学におけるかかる剤形の使用法に関する。
【0002】
(背景技術)
活性剤の放出速度を制御するためのコーティングの使用はかなり注目を集めてきており、多くの異なったデバイスがかかる目的のために開発されている。例えば、国際特許出願公開番号WO01/05430は、pHに依存した溶解性を示す薬剤、特に中性付近のレベル(約pH5以上)よりも、低いpHレベル(pH2未満)でより溶解度の高い化合物の送達を可能にするドラッグデリバリーデバイスを記載している。かかるデリバリーデバイスは、使用環境の液体中に浸透せず、溶解しないコーティングの存在を特徴とする。
国際特許出願公開番号WO95/30422はアジスロマイシンの一連の制御放出型剤形を記載している。特に、pH依存性コーティングの使用により、上部胃腸管が高濃度のアジスロマイシンにさらされるのを低減する一連の剤形が記載されている。かかる剤形は、これを通して薬剤の放出が起こる開口部を特徴としない。
【0003】
米国特許第6099859号は、浸透活性な薬剤を含有するコアおよび半透膜を含む抗高血糖症薬を送達するための制御放出型錠剤を記載し、ここにおいて、半透過性膜は水および生物学的液体の通過について透過性であり、薬剤の通過について不透過性である。半透膜は抗高血糖症薬を放出するための少なくとも1つの通路を含んでいる。
活性剤の放出速度を制御するためにコーティングを利用するさらなるデバイスが米国特許番号第5004614号において議論されている。この特許は環境液体について実質的に不透過性である外被を備えた錠剤コアを記載している。前記外被は、環境液体中に不溶性または可溶性のいずれかである物質から調製することができる。可溶性物質が使用される場合、コーティングは、活性剤の所望の制御放出の期間が終了する前に環境液体にコアがさらされないために十分な厚さを有するものである。この不透過性外被を貫通して、1またはそれ以上の開口部が作られ、かくして環境液体にコアへの接近経路が提供される。したがって、コートされた錠剤を摂取すると、該外皮を通して胃腸液が開口部に侵入し、コアと接触または浸透し、活性剤が放出される。この結果、活性剤が開口部のみから制御された方法で放出される。好ましい形状は、コートされた錠剤の上面および底面に円形の孔があるようなものである。問題の開口部はコートされた錠剤の表面積の約10ないし60パーセントの面積を有する。薬剤の放出速度は開口部の直径ならびにマトリックスコアおよび活性剤の溶解度と直接関連し、様々な薬剤放出特性の可能性がゼロまたはわずかの放出となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO01/05430号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第WO95/30422号公報
【特許文献3】米国特許第6099859号明細書
【特許文献4】米国特許第5004614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、米国特許第5004614号の実質的に不透過性のコーティングがすべての活性剤、特に医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の制御放出に好適でないという発見に基づく。このような活性剤は著しくpHに依存した溶解度を示す。すなわち、小腸の一般的に中性の条件(pH7付近)におけるその溶解度と比べて、胃において見いだされる領域と関連したpH2付近で溶解度が高い。
本発明者らは、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の投与について、活性化合物の放出が1またはそれ以上のpH環境において起こるのが望ましい場合、コーティングがpHに依存した方法で壊食または溶解するのが有利であることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、その最も広義の態様において、本発明は医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む壊食性コアであって、該コアに至る1またはそれ以上の開口部を有するコーティングを有する壊食性コアを含む経口用剤形であって、該コーティングが前もって決定されたpH条件の下で壊食性であるということを特徴とする経口用剤形を提供する。
本発明はさらに、
(i)壊食性コアであって、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含むコア;および
(ii)前記コアの周りの壊食性コーティングであって、前記コーティングを実質的に貫通してのびるが、前記コアを透過せず、使用環境から前記コアまで連絡する1またはそれ以上の開口部を含む壊食性コーティングを含む経口用剤形であって、該壊食性コーティングからの医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の放出が実質的に前記開口部を通して、所定のpH条件下で前記壊食性コーティングの壊食により起こることを特徴とする経口用剤形を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の経口用剤形の2種の処方についての時間に対する壊食のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
疑いを避けるために、本明細書において使用される場合、「弱塩基」なる用語は、その共役酸が、Pharmaceutical Handbook、第19版、1980にしたがって11.5未満のpKaを有する任意の塩基を意味する。「医薬的に許容される弱塩基」なる用語も相応して解釈されるべきである。好適には、本発明において使用される医薬的に許容される弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物は顕著なpH依存性溶解性を示す。好ましくは、本発明において使用される医薬的に許容される弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物は、4.5ないし8のpH範囲におけるその溶解度と比較して、1ないし3のpH範囲においてより溶解度が高い。好ましい医薬的に許容される弱塩基または医薬的に許容されるその塩または溶媒和物は、哺乳動物の腸のほぼ中性の条件におけるよりも、哺乳動物の胃において見いだされる酸性条件において溶解度がより高い。
【0009】
本発明における使用に好適な医薬的に活性な弱塩基は、1−(3−クロロフェニル)−2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−1−プロパノン(ブプロピオン)、1,2,3,9−テトラヒドロ−9−メチル−3−[(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−4H−カルバゾール−4−オン(オンダンセトロン)、(3S−トランス)−3−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルオキシ)メチル]−4−(4−フルオロフェニル)ピペリジン(パロキセチン)、α−[[1,1−ジメチルエチル)アミノ]メチル]−4−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジメタノール(サルブタモール)およびその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物を包含する。
【0010】
欧州特許出願公開番号0306228A1は、抗高血糖症および低脂質血症活性を有すると開示されているある種のチアゾリジンジオン誘導体に関する。EP0306228A1で開示されているある特定のチアゾリジンジオンは、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(以下、「化合物A」と記載)である。国際特許出願番号WO94/05659はその実施例1でマレイン酸塩を含む化合物Aのある種の塩を開示している。
【0011】
化合物Aおよびその医薬的に許容される塩または溶媒和物は有用な医薬特性を有する。特に、化合物Aまたはその塩または溶媒和物は、糖尿病、糖尿病に関連する症状およびある特定の合併症の治療および/または予防法に有用であることが示される。
本発明における使用に好ましい医薬的に活性な弱塩基は化合物Aまたはその医薬的に許容される塩または溶媒和物である。本発明における使用に特に好ましい医薬的に活性な弱塩基は化合物Aのマレイン酸塩である。
【0012】
本発明における使用にさらに好ましい医薬的に活性な弱塩基はバラシクロビルまたはその医薬的に許容される塩である。バラシクロビルは、アシクロビルのL−バリンエステルであり、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチルL−バリネートである。この化合物の好ましい塩は、バラシクロビル塩酸塩として知られている塩酸塩である。バラシクロビルおよびその塩酸塩は、米国特許第4957924号(特に実施例IB参照)、欧州特許番号EP0308065B1(特に実施例IB参照)、およびL.M.Beauchampら、Antiviral Chemistry and Chemotherapy、3(3)、157−164(1992)(特に162ページ1列参照)において開示されている(これらは全て全体が記載されているかのように出典明示により本発明の一部として参照される)。バラシクロビル塩酸塩の好ましい無水結晶形態は、国際特許出願公開番号WO96/22291(出典明示により本発明の一部とする)に開示され;この無水結晶形態は、例えば実質的にWO96/22291の図1ないし3の1またはそれ以上のX線粉末回折図形を有することにより決定することができる。バラシクロビルおよびその塩酸塩の合成はWO96/22291に記載されている(例えば、実施例1A/Bおよび2A/Bおよび4〜7ページ参照)。
【0013】
バラシクロビルまたはその塩は、哺乳動物、例えばヒトにおけるウイルス感染症、特にヘルペス属のウイルス、例えば、帯状ヘルペスおよび/または1型または2型単純ヘルペスウイルスにより引き起こされるウイルス感染症の治療および/または抑制において使用できる。見本として、用量がバラシクロビル遊離塩基として換算されている次の投与レジメを示す:
(a)1型および2型単純ヘルペスウイルス感染のエピソードの治療:約1または2gの合計一日量(500mgで1日につき2回または1gを1日に2回投与)を5ないし10日間;
(b)1型および2型単純ヘルペスウイルス感染(例えば陰部ヘルペス)の再発の抑圧:患者によって、約1カ月ないし10年間、約250ないし1gの合計一日量(例えば1日500mgを2回)。WO97/25989(出典明示により本発明の一部として参照される)に開示されているように、バラシクロビルまたはその塩はまた、ヒトにおける陰部ヘルペスの再発の抑制において、約200mgないし約1000mg(例えば、250mg、500mgまたは1000mg)のバラシクロビルまたはその塩(遊離塩基として計算)の一日量で1回、有効な治療期間、例えば、約2ヶ月から約10年まで使用できる。
(c)水痘帯状ヘルペスウイルス感染(帯状ヘルペス、例えば帯状疱疹)の治療:約3gの合計一日量(1日1gで3回)を7日間投与;
(d)サイトメガロウイルス感染の抑圧:合計一日量約8g(2gで1日に4回投与);移植患者については、この一日量を危険な期間中、3ないし6ヶ月間投与し;HIV陽性の患者については、生活の質を向上されるために通常必要とされるように、例えば2年以上一日量が投与される。
【0014】
好適には、医薬的に許容される弱塩基は、1−(3−クロロフェニル)−2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−1−プロパノン(ブプロピオン)、1,2,3,9−テトラヒドロ−9−メチル−3−[(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−4H−カルバゾール−4−オン(オンダンセトロン)および(3S−トランス)−3−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルオキシ)メチル]−4−(4−フルオロフェニル)ピペリジン(パラキセチン)、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチルL−バリネート(バラシクロビル)、化合物Aおよびその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物(以下、「本発明の第一化合物」)からなる群から選択される。好適には、医薬的に許容される弱塩基は1−(3−クロロフェニル)−2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−1−プロパノン(ブプロピオン)またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物である。好適には、医薬的に許容される弱塩基は1,2,3,9−テトラヒドロ−9−メチル−3−[(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−4H−カルバゾール−4−オン(オンダンセトロン)またはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物である。好適には、医薬的に許容される弱塩基は(3S−トランス)−3−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルオキシ)メチル]−4−(4−フルオロフェニル)ピペリジン(パロキセチン)またはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物である。さらに好適には、医薬的に許容される弱塩基は、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチルL−バリネート(バラシクロビル)である。最も好適には、医薬的に許容される弱塩基は化合物Aまたはその医薬的に許容される塩または溶媒和物である。
【0015】
本発明における使用に典型的な医薬的に活性な弱塩基は、本発明の第一化合物、特に化合物Aまたはその医薬的に許容される塩または溶媒和物である。かかる化合物およびその医薬的に許容される塩は、著しくpHに依存した溶解度を示す。すなわち、小腸の一般に中性な条件(pH7付近)におけるその溶解度と比較して、胃における領域のpH2付近でより溶解度が高い。
発明の第一化合物およびその医薬的に許容される塩および溶媒和物は、詳細に記載されている有用な医薬特性を有している(例えば英国および米国薬局方、レミントン製薬科学(Mack Publishing Co.)、Martindale The Extra Pharmacopeia(London、The Pharmaceutical Press))。
【0016】
本発明の経口用剤形は、弱塩基が必要とされることがわかっている障害を治療するために、本発明の第一化合物と類似した溶解特性を有する他の医薬的に活性な弱塩基を投与するためにも使用できる。
コーティングが壊食性であることについての上記の記載は、環境液体と接触して、コーティングが部分的または完全に崩壊するか、または溶解するか、溶けるか、または多孔質になり、該液体がコアと接触できるようになる状態を包含する。好適には、コーティングは部分的に崩壊する。好適には、コーティングは完全に崩壊する。好適には、コーティングは溶解する。好適には、コーティングは多孔質になる。
【0017】
同様に、コアが壊食性であることについての記載は、環境液体と接触して、コアが部分的に、または完全に崩壊するか、または溶解するか、または多孔質になり、該液体がコアと接触できるようになる状態を包含する。好適には、コアは部分的に崩壊する。好適には、コアは完全に崩壊する。好適には、コアは溶解する。好適には、コアは多孔質になる。
本発明はコーティングの壊食がpH依存性であることを規定するが、コアは、pHに依存しない方法での壊食により医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を放出することができる。しかしながら、特定の要求に適合するために、コアはpH依存性壊食またはコアの崩壊を許容して、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物をそのマトリックスから放出させる物質であってもよい。
【0018】
最も好適には、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物は腸よりも胃において溶解度が高い。コアは、両条件下で実質的に同じ程度まで壊食可能であるように処方される。
コーティング中の開口部がその一体性および放出速度の制御を維持するように、コーティングのpH依存性壊食が所定の閾値を有すること、すなわち、コーティングは腸以外では実質的に壊食しないのが望ましい。従って、コーティングの壊食は、これが溶解する所定の所定のpH閾値を有すると予想される。好ましくは、コーティングはpH>4.5で壊食する。さらに好ましくは、コーティングは4.5ないし8のpH範囲において壊食する。最も好ましくは、コーティングは5ないし7のpH範囲で壊食する。
【0019】
本発明は、腸のpH条件において壊食する場合に特に有用である。したがって、本発明はさらに、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩を含む壊食性コアを含む経口用剤形を提供し、該コアは、コアに至る1またはそれ以上の開口部を有するコーティングを有し、該コーティングが哺乳動物の腸において一般的なpH条件下で壊食性であることにより特徴づけられる。
低いpHレベルでの放出は、壊食性コーティング中の開口部を通した活性剤の拡散に実質的に限定されるので、pH>4.5で壊食するコーティングの使用は、胃と関連する酸性条件中に放出される薬剤の量を限定するであろうことは理解されるであろう。従って、本発明は、4.5から8までpH範囲よりも、1から3までのpH範囲で溶解度がより高い化合物について、胃におけるドースダンピング(dose dumping)の問題を取り扱うことが必要である。剤形は、低いpH環境を離れ、次により高いpH環境に遭遇する、例えば、胃から腸に移動すると、コーティングは溶解し始め、壊食して、錠剤コアを全て露出させる。コートの壊食中、薬剤を放出するために利用可能な表面積は増大する。腸における薬剤溶解度の減少、ひいては薬剤吸着率の減少は、錠剤コアの全表面積が壊食にさらされているため、表面積が増大するために、相殺することができる。結果として、両環境においてさらにバランスのとれた薬剤放出特性が得られる。
【0020】
本発明の概念の適用において、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物は従来の経口錠剤または徐放性マトリックス(膨潤可能および非膨潤可能なシステムのどちらも包含する)中に組み入れることができる。マトリックスは、pHに依存した壊食性を有する物質、例えばポリメタクリレートコポリマーなどのpH>4.5で可溶性のコーティングでコートされたコアに形成される。米国特許第5004614号に開示されているような従来技術を使用して、次にコーティングに開口部を穿孔することができる。
【0021】
本発明のさらに別の態様によると:
(a)壊食性錠剤コアを調製する;
(b)pHに依存した壊食性を有する物質でコアをコーティングする;
(c)コーティングに1またはそれ以上の開口部を形成する(前記開口部は前記コーティングを実質的に完全に貫通するが、前記コアを透過せず、使用環境から前記コアまで連絡する)ことを含む、本発明の経口用剤形の調製法が提供される。
【0022】
剤形のコア(「錠剤コア」ともいう)を含む圧縮された塊を形成するために好適な成分を圧縮することによりコアを調製することができる。これは、従来の錠剤賦形剤および処方圧縮法を用いて調製することができる。かくして、コアは典型的には活性剤を、希釈剤、バインダーおよび滑剤などの満足できる加工および圧縮特性を賦与する賦形剤と共に含む。デバイスのコアの一部を形成し得る追加の賦形剤は、壊食剤、矯味矯臭剤、着色剤、放出修飾剤および/または可溶化剤、例えば界面活性剤、pH修飾剤および複合体形成ビヒクルを包含する。
【0023】
コアに好適な物質は、壊食性ポリメチルメタクリレート樹脂、例えば。Eudragit L30DなどのEudragitシリーズ、サッカロース、例えばラクトースおよびマルトース、ならびにセルロースエステル、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルセルロースを包含する。好適には、コアは主にヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびラクトースである。さらに好適には、コアは本質的にヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素およびリン酸マグネシウムからなる。
【0024】
典型的には、活性剤と賦形剤をよく混合した後、圧縮して固体コアにする。デバイスのコアは、湿式造粒法、乾式造粒法または直接打錠法により形成することができる。コアは、任意の所望のあらかじめ選択された形状、例えば、両凸、半球、近半球、円形、楕円形、一般的なだ円体または多面形、例えば、三角プリズム形に製造することができる。「近半球」なる用語は、米国特許第5004614号に記載されたように解釈される。好適には、コアは両凸形、例えば2つのドーム形の相対する面を有するものに処方される。加えて、コアは多層(例えば二層または三層)形に製造することができる。
コア内に存在する医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の量は、典型的な製薬上の要件、たとえば、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物について既知の投与量に基づいて決定すべき事項であり、本発明のプロセスにより制限されない。
【0025】
特に、化合物Aまたはその医薬的に許容される塩または溶媒和物が本発明にしたがって使用される場合、適当な用量範囲は2ないし12mgである。従って、好適な剤形は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
特定の剤形は2ないし4mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
特定の剤形は4ないし8mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
特定の剤形は8ないし12mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
1つの剤形は2mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
好ましい剤形は4mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
好ましい剤形は8mgの化合物Aまたはその医薬的に許容される塩またはその溶媒和物を含む。
【0026】
コアは任意の医薬的に許容されるコーティング方法により、適当なpH依存性壊食性材料でコートすることができる。例としては、米国特許第5004614号に記載されているコーティング法およびフィルムコーティング、シュガーコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、圧縮コーティング、静電コーティングが挙げられる。典型的な方法は、回転しているパンコータでまたは流動床コータ中で、所望のコーティング厚が達成されるまで、錠剤コア上にコーティングをスプレーすることを含む。好適には、錠剤表面の周りに約4ないし8mg/cmまたは5〜7mg/cmの乾燥ポリマーを加えるためにコーティングが提供される。典型的には、この結果、重量が3〜10重量%または5〜10重量%(コアに対して)増加する。好適には、コーティングは0.05ないし0.5mmの範囲の層厚を有する。
【0027】
本発明におけるpH依存性壊食性コーティングとしての使用に好適な物質およびそのブレンドは、種々のポリメタクリレートポリマー、同時処理されたポリビニルアセテートフタレート、酢酸セルローストリメリテート、酢酸セルロースフタレート、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートポリマーおよびそのコポリマーを含む。
コーティング材料は、胃酸中、すなわちpH1.5〜2で不溶性であり、小腸、すなわちpH5.5付近、または大腸、すなわちpH7付近で可溶性または壊食性であるように適当に選択される。これを達成するために、典型的には、コーティング材料は4.5以上のpHにおいて壊食性である。
【0028】
好適には、塗料は以下から選択される:
pH4.8で溶解する酢酸セルローストリメリテート(CAT)
pH5.0で溶解するポリビニルアセテートフタレート、
pH5.2で溶解するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート50、
pH5.4で溶解するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート55、
Acryl−eze(pH5.5で溶解)、
Aquateric(pH5.8で溶解)、
pH6.0で溶解するセルロースアセテートフタレート、
Eudragit L30 D(pH5.5で溶解)、
Eudragit L(pH6.0で溶解)、
Eudragit S(pH6.8で溶解)および
pH7.2で溶解するシェラック。
【0029】
必要ならば、可塑剤または粘着防止剤の添加により壊食性コーティングを修飾することができる。この目的のために適当な材料は、グリセリド、例えばグリセリルモノステアレートなどのワックス状材料を包含する。
コーティングにおいて形成される開口部の典型的な大きさは、円形の場合は、錠剤の全体的な大きさおよび所望の放出速度に応じて、直径0.5mmから8mmの範囲、例えば直径1、2、4または4mmである。開口部は、任意の都合の良い幾何学的形状であって良いが、丸みを帯びた形状、例えば実質的に円形または楕円形が一般的に好ましい。放出速度を個別の剤形で均一にすることができるなら、文字または図形のような、さらに手のこんだ形も形成することができる。円形でない開口部の典型的な大きさは、円形開口部についてすでに記載されたものと同等の面積、例えば、約0.19〜約50.3mmまで範囲である。
【0030】
本発明の目的に関して、「開口部」なる用語は、穴、間隙、オリフィス、通路、出口などと同義である。
開口部は、米国特許第5004614号において開示された方法により形成することができる。典型的には、開口部は例えばドリルビットまたはレーザー光線を使って、穿孔することにより、または切り口を除去するパンチにより形成することができる。開口部の形成は、デフォルトで露出したコアの小さい部分を取り除くことができる。放出速度制御装置として、空洞を間隙下に意図的に形成することも可能であり、該空洞は、平らな表面よりも大きなコアの初期表面積を露出させる。デバイスが所望の使用環境中に置かれた場合に、コアが直ちに環境流体へ露出されるように、開口部は壊食性コーティング全体を貫通してのびるのが好適である。
【0031】
剤形が投与された場合に、孔形成剤、すなわち、胃中で溶解してコーティング中に孔を形成する物質を含有するコーティングを形成することにより、開口部をその場で形成することも可能である。従って、
(i)医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む壊食性コア;
(ii)当該のコアを取り巻く壊食性コーティングであって、1ないし3のpH範囲において壊食可能な孔形成剤を含み、前記コーティングを実質的に完全に貫通してのびるが、前記コアを透過せず、使用環境から前記コアまで連絡するコーティングを含む経口用剤形であって;
該剤形からの医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の放出が、前記壊食性コアの壊食により、また所定のpH条件下での前記壊食性コーティングの壊食により、前記開口部を通して起こることを特徴とする経口用剤形も提供される。
【0032】
米国特許第5004614号において、開口部は好ましくは、錠剤の全表面積、両凸形錠剤の上側および下側表面積の約10〜60%である。本発明において、開口部は全表面積の0.25〜70%、例えば10〜70%である。
別法として、コートされた錠剤の全表面積と比較しての開口部の面積を参照することにより、開口部の効果を制御する速度を特徴づけることが有用であり得る。さらに、特に開口部の縁部を切り落とすことによりコアが壊食する場合、効果を制御する速度は開口部の全外周と関連し得る。
【0033】
2つの開口部、例えば両凸形錠剤の各第一表面上の1つずつは、同じ全面積の1つの開口部よりも少し速い速度でコアから活性剤を放出するということは予想外な発見である。しかしながら、2つの開口部からの放出速度のばらつきは、対応する1つの開口部からの放出速度のばらつきよりも小さい。従って、本発明の好ましい具体例において、コアのコーティングには、コアに至る2、または2以上の間隙がある。さらに好ましくは、該コアを取り巻く壊食性コーティングには、前記コーティングを実質的に完全に貫通してのびるが、前記コアを透過せず、使用環境から前記コアまで連絡する、2、または2以上の開口部がある。
【0034】
1またはそれ以上の開口部が提供される場合、開口部は経口用剤形の同じ表面上、または異なる表面上に位置し得る。好適には、経口用剤形は2つの開口部、それぞれの相対する面上に1つずつ有する。好適には、経口用剤形は、各相対する表面上に1つずつ、2つの開口部を有する。好適には、経口用剤形は2つの相対する主表面を有する錠剤であって、各表面は該コーティングを貫通する1つの開口部を有する。
投与前の開口部を介した汚染を防止するために、コア材料の防護として、開口部の形成後に、コア、または剤形のいずれかに通常のシールコーティングを提供することが望ましい。該シールコートは、壊食性コーティングのサブコートまたはオーバーコートであり得る。
【0035】
前記変数および露出したコアの表面積を調節することにより、異なる身体環境下での匹敵する放出速度を得、かくして患者に対してさらに一定の投薬を達成するために、異なる環境状態における放出速度をあわせることができる。
好ましくは、本発明の経口用剤形の溶解速度は、例えば、壊食性コーティングおよび開口部の寸法の慣例的な調節により決められ、放出速度は、投与された場合に剤形が経験する異なるpH環境において実質的に均一となる。溶解速度は、適当なpHの溶液中でのインビトロ試験により評価することができる。例えば、胃と腸における溶解度を比較する場合、試験はまずpH1.5で行い、それぞれ空腹状態および食事をとった状態の仮想の患者の腸へ内容物が排出される前の胃中での滞留について想定される時間として、2時間または4時間後にpH6.8にする。
【0036】
本発明はさらに、医薬的に許容される弱塩基による治療が可能なヒトまたはヒト以外の哺乳動物における障害を治療および/または予防するための方法であって、医薬的に許容される弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む本発明の経口用剤形を、それを必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
好ましい具体例において、本発明は、糖尿病、糖尿病と関連する症状およびそのある特定の合併症を治療および/または予防する方法であって、化合物Aまたはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む本発明の剤形を、それを必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0037】
本発明において使用される場合、「医薬的に許容される」なる用語は、ヒトおよび獣医学的用途の両方において用いられる化合物、組成物および成分を含む。例えば、「医薬的に許容される塩」なる用語は、獣医学的に許容される塩を含む。特に、好適な化合物Aの医薬的に許容される塩形態は、欧州特許番号0306228および国際特許出願公開番号WO94/05659に記載されているものを包含する。
適当な医薬的に許容される溶媒和物は水和物を含む。
前記治療において有害な毒物学的効果はない。
【0038】
本明細書に記載された特許および特許出願を包含するが、これらに限定されない全ての刊行物は、全体が記載されているかのように、出典明示により本発明の一部として参照される。
以下の実施例において、錠剤コアは、通常の手段により、活性成分を賦形剤と共に混合し、圧縮して錠剤コアを形成することにより形成した。これらの実施例は、本発明を限定するのではなく、例示するためのものであり、化合物Aは本発明に関する使用に好適な弱塩基の単なる一例である。
【実施例1】
【0039】
次の処方にしたがって、圧縮して、150mgの7mm標準的凹形錠剤を形成することにより、コアを形成した:
重量%
化合物A(マレイン酸塩として) 7.1
HPMC 30.0
ラクトース 60.9
コロイド状二酸化ケイ素 0.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5
錠剤コアは、pH5.5で可溶性のポリメタクリレート樹脂でコートして、合計重量160mgにした。
コートされたコアの2つの主表面のそれぞれにコーティングを貫通して直径3.0mmの開口部を穿孔して、コアの表面を露出させた。
【実施例2】
【0040】
次の処方にしたがって、圧縮して、150mgの7mm標準的凹形錠剤を形成することにより、コアを形成した:
重量%
化合物A(マレイン酸塩として) 7.1
HPMC 20.0
ラクトース 70.9
コロイド状二酸化ケイ素 0.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5
錠剤コアは、pH5.5で可溶性のポリメタクリレート樹脂でコートして、合計重量160mgにした。
コートされたコアの2つの主表面のそれぞれにコーティングを貫通して直径3.5mmの開口部を穿孔して、コアの表面を露出させた。
開口部が大きく、HPMC含量が低いために、実施例2の剤形はpH1.5および6.8でさらに速い化合物Aの放出速度を示した。
【0041】
溶解試験
図1は、実施例1および2の処方の溶解速度を示す(pH1.5で始めて、腸へ内容物排出される前の食事をとった胃中の滞留について想定される時間として4時間後にpH6.8に移す)。この溶解試験の媒体は、まず胃の環境においてみられるpHを模倣するために、塩化ナトリウムと塩酸の水性溶液(pH1.5)である。この媒体を次に、腸中のpHを模倣するために、4時間後にドデシル硫酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムとトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンの水溶液を添加することによりpH6.8に滴定した。図1は、壊食性コートについて、実施例2の処方については約8時間後、実施例1の処方については約12時間後に放出が実質的に完了すること、すなわち、90%を超える放出が達成されることを示す。この期間に、放出速度は両処方について、両pHで実質的に均一である。
同じ溶液において、絶食状態における胃内容排出を模倣するために2時間で移して試験すると、同じ結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む壊食性コア;および
(ii)該コアの周りの壊食性コーティングであって、前記コーティングを完全に貫通してのびるが、前記コアを貫通せず、使用環境から前記コアと連絡する1またはそれ以上の開口部を含むコーティングを含む経口用剤形であって、医薬的に活性な弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物の該剤形からの放出が、前記壊食性コアの壊食によって前記開口部から、また所定のpH条件下での前記壊食性コーティングの壊食から起こることを特徴とする経口用剤形。
【請求項2】
壊食性コーティングがpH>4.5で壊食する請求項1記載の経口用剤形。
【請求項3】
壊食性コーティング材料が、ポリメタクリレートポリマー、同時処理されたポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレート、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートポリマーおよびそのコポリマー、およびそのブレンドから選択される請求項1記載の経口用剤形。
【請求項4】
壊食性コーティングが0.05ないし0.5mmの範囲の厚さを有する前記請求項のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項5】
開口部のサイズが0.5mmないし8mmの範囲にある前記請求項のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項6】
壊食性コーティングが2つの開口部を含む前記請求項のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項7】
壊食性コアが多層形態である前記請求項のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項8】
壊食性コーティングにおける開口部が剤形の全表面積の10ないし70%を構成する前記請求項のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項9】
コアが優勢的にヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびラクトースである請求項1〜8のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項10】
医薬的に許容される弱塩基が、本発明の第一の化合物またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物である請求項1〜9のいずれか1つに記載の経口用剤形。
【請求項11】
医薬的に許容される弱塩基が、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(化合物A)またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物である請求項10記載の経口用剤形。
【請求項12】
(a)壊食性錠剤コアを調製し;
(b)pH依存性壊食性を有する物質でコアをコーティングし;
(c)コーティングに、実質的に前記コーティングを完全に貫通するが、前記コアを貫通せず、使用環境から前記コアまでを連絡する1またはそれ以上の開口部を形成することを含む、請求項1記載の経口用剤形の調製法。
【請求項13】
医薬的に許容される弱塩基による治療に対して敏感なヒトまたはヒト以外の哺乳動物における障害の治療および/または予防法であって、医薬的に許容される弱塩基またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む請求項1記載の経口用剤形を、それを必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳動物に投与することを含む方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−159301(P2010−159301A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98906(P2010−98906)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2003−567378(P2003−567378)の分割
【原出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】