説明

薬物担体

カチオンポリマー担体、ターゲティング剤および治療剤を含み得る組成物がここに開示される。治療剤は、標的器官または組織内での線維症の抑制、または、がん細胞の成長の抑制などの治療活性を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、2007年9月14日に出願された米国仮出願第60/972,732号、2007年12月21に出願された米国仮出願第61/016,431号、および2008年7月30日に出願された米国仮出願第61/084,935号に対する優先権を主張し、これら全ての出願の全体を、あらゆる目的のために本明細書に援用する。
【0002】
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに提出される。配列表は、NDTCO-099VPC-SequenceListing.TXTという名称のファイルとして提供され、これは2008年9月9日に作成され、1.38Kbのサイズである。配列表の電子形式における情報は、その全体を本明細書に援用する。
【0003】
背景
分野
ここで開示されるのは、有機化学、薬品化学、生化学、分子生物学と医薬の分野に関連した組成物および方法である。特に、ここで開示される態様は、活性剤を細胞に送達するための組成物および方法、ならびに、線維症によって特徴づけられる疾患および障害の処置および緩和のための該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
線維化、または体内における過剰な線維性結合組織の発生は、複数の疾患および障害、例えば肝線維症、膵線維症、声帯瘢痕化および多くの形態のがんと関連づけられている。
【0005】
器官または組織における線維化を抑制するために、種々のアプローチが試みられてきた。はされた。1つのアプローチとして、1また2以上の星細胞の活性化の抑制を挙げることができる。かかる細胞の活性化は、細胞間マトリクス(ECM)の増大した産生によって特徴づけられる。他のアプローチは、コラーゲンの生産抑制に関連し得、これは例えば、コラーゲン分解の促進またはコラーゲン代謝の制御による。しかしながら、それを必要とする特定の器官または組織をターゲティングすることは困難と考えられる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載のいくつかの態様は、カチオンポリマー担体、カチオンポリマー担体と作動可能に結合したターゲティング剤(ここで、ターゲティング剤はレチノイドを含む)、およびカチオンポリマー担体と作動可能に結合した治療剤(ここで、治療剤は標的器官または組織に送達されてから治療効果を発揮し、治療効果が標的器官または組織内での線維症の抑制、および標的器官または組織内でのがん細胞の増殖の抑制から選択される)を含むことができる、治療組成物に関する。
【0007】
いくつかの態様は、本明細書に記載の治療組成物に、薬学的に許容し得る賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1種をさらに含むものに関する。
【0008】
いくつかの態様は、異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置する方法を提供し、これは、治療有効量の本明細書に記載の治療組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むことができる。
【0009】
他の態様は、異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置するための、本明細書に記載の治療組成物の使用を提供する。
【0010】
さらに別の態様は、異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置するための、本明細書に記載の治療組成物を提供する。
【0011】
これらおよび他の態様を、以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、修飾レチノールの調製のための反応スキームを示した図である。
【0013】
【図2】図2は、ポリ−L−リジンとレチノイン酸とを含むカチオンポリマー担体の調製のための反応スキームを示した図である。
【0014】
【図3】図3は、分枝ポリエチレンイミンと修飾レチノール化合物とを含むカチオンポリマー担体の調製のための反応スキームを示した図である。
【0015】
【図4】図4は、初代肝星細胞へのsiRNAの細胞取り込みを示した図である。
【0016】
【図5】図5は、siRNAのみ、水溶性分解性架橋カチオンポリマー+siRNAまたは水溶性分解性架橋カチオンポリマー+レチノール+siRNAで処理した後の初代肝星細胞(HSC)の細胞生存率を示した棒グラフである。
【0017】
【図6】図6は、siRNAのみ、カチオンポリマー+siRNAまたはカチオンポリマー+レチノール+siRNAで処理した後の熱ショックタンパク質(HSP−47)mRNAの相対パーセンテージを示した棒グラフである。
【0018】
【図7】図7は、カチオンポリマーまたはカチオンポリマー+siRNAで処理した後の熱ショックタンパク質(HSP−47)mRNAの相対パーセンテージを示した棒グラフである。
【図8】図8は、カチオンポリマーまたはカチオンポリマー+siRNAで処理した後の熱ショックタンパク質(HSP−47)mRNAの相対パーセンテージを示した棒グラフである。
【0019】
【図9】図9は、LD50測定の結果を示した図である。
【0020】
【図10】図10は、溶血アッセイの結果を示した図である。
【0021】
詳細な説明
他に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願、公開された出願および他の出版物は、その全体を援用する。本明細書中の用語について複数の定義がある場合には、他に記載がない限り、本節のものが優先する。
【0022】
本明細書で用いる用語「カチオンポリマー担体」は、1または2以上の剤と作動可能に結合していてもよい正電荷のポリマー(例えばホモポリマーまたはコポリマー)を指す。カチオンポリマー担体は、それが作動可能に結合している1または2以上の剤の、体の一部分から、標的細胞または組織への、および/または標的細胞内または組織内への輸送を促進する。当業者は、ポリマー担体の電荷を決定する際に、該ポリマー担体と作動可能に結合しているいずれのターゲティング剤および/または治療剤も、カチオンポリマー担体の一部とみなされないことを理解する。換言すると、ポリマー担体と作動可能に結合している任意のターゲティング剤および/または治療剤が有するあらゆる電荷は、ポリマー担体が正電荷を有することを決定する際に無視される。
【0023】
「ミクロ粒子」は、全ての向きで(in all dimensions)約100nm〜約1000nmの範囲のサイズを有する粒子を指す。ミクロ粒子は、あらゆる形状およびあらゆる形態を有することができる。
【0024】
「ナノ粒子」は、全ての向きで約100nm〜合計約1nmの範囲のサイズを有する粒子を指す。ナノ粒子は、あらゆる形状およびあらゆる形態を有することができる。ナノ粒子の例は、ナノパウダー、ナノクラスター、ナノクリスタル、ナノスフェア、ナノファイバーおよびナノチューブを含む。
【0025】
用語「ターゲティング剤」は、特定の標的器官または組織に対して選択性を示す化合物を指す。ターゲティング剤は、それが作動可能に結合している組成物を、特定の標的器官または組織に向かわせることができる。ターゲティング剤は、少なくとも1種のカチオンポリマー担体および/または他の剤と作動可能に結合していてもよい。
【0026】
「レチノイド」は、ヘッド−トゥ−テイル式に連結した4個のイソプレノイド単位で構成される化合物のクラスの成員である。G. P. Moss, "Biochemical Nomenclature and Related Documents," 2nd Ed. Portland Press, pp. 247-251 (1992)参照。「ビタミンA」は、レチノールの生物学的活性を定性的に示すレチノイドに対する一般的な記述子である。本明細書で用いる場合、レチノイドは第一世代、第二世代および第三世代レチノイドを含む、天然レチノイドおよび合成レチノイドを指す。天然に存在するレチノイドの例は、限定されずに、(1)11−シス−レチナール、(2)オールトランスレチノール、(3)パルミチン酸レチニル、(4)オールトランスレチノイン酸、および、(5)13−シス−レチノイン酸を含む。さらにまた、用語「レチノイド」は、レチノール、レチナールおよびレチノイン酸を含む。
【0027】
用語「治療的な」は、疾患または状態の任意の望ましくない徴候または症状の、あらゆる程度の緩和、予防または抑制を指す。かかる望ましくない徴候は、対象の全体的な幸福感または外観を悪化させるものを含み得る。この用語は、必ずしも疾患または状態の完全治癒または廃絶を示すわけではない。「治療剤」は、治療有効量で哺乳動物に投与した場合に、該哺乳動物に治療的な利益を提供する化合物である。治療剤は、本明細書中で薬物と称することがある。当業者は、用語「治療剤」が、規制上の承認を受けた薬物に限定されないことを理解する。「治療剤」は、少なくとも1つのリポソーム担体および/または他の剤と作動可能に結合していてもよい。
【0028】
「線維化」は、本明細書においてその通常の意味で用い、修復または反応性プロセスの一部としての、器官または組織における線維性瘢痕様結合組織の発生を指す。「異常な線維化」は、器官または組織における線維性瘢痕様結合組織の、当該器官または組織の機能を障害する程度の発生を指す。
【0029】
本明細書で用いる場合、「リンカー」および「連結基」は1つの化学部分をもう1つの化学部分に接続する1または2以上の原子を指す。連結基の例は、比較的低分子量の基、例えば、アミド、エステル、炭酸塩とエーテルなど、ならびに、高分子量連結基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などを含む。
【0030】
少なくとも2つの分子が「作動可能に結合する」場合、これは、分子が互いに電子的相互作用状態にあることを意味する。かかる相互作用は化学結合の形をとってもよく、これは、限定されずに、共有結合、極性共有結合、イオン結合、静電結合、配位共有結合、芳香族結合、水素結合、双極子またはファンデルワールス相互作用を含む。当業者は、かかる相互作用の比強度が大きく異なることがあることを理解している。
【0031】
本明細書で用いる場合、「m」および「n」が整数である「C〜C」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基における炭素原子数、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリシクリル基の環における炭素原子数を指す。すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルの環、シクロアルケニルの環、シクロアルキニルの環、アリールの環、ヘテロアリールの環またはヘテロアリシクリルの環は、「m」〜「n」個(「m」個および「n」個を含む)の炭素原子を含むことができる。したがって、例えば、「C〜Cアルキル」基は1〜4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわちCH−、CHCH−、CHCHCH−、(CHCH−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−および(CHC−を指す。アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリシクリル基に関して「m」および「n」が指定されていない場合、これらの定義に記載される最も広い範囲を想定すべきである。
【0032】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は、直鎖状または分枝状炭化水素鎖の完全に飽和した(二重結合または三重結合を含まない)炭化水素基を指す。アルキル基は、1〜50個の炭素原子を有し得る(本明細書に記載される場合は常に、「1〜50」などの数値範囲は所定の範囲内の各々の整数を指す。例えば、「1〜50個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、50個を含む50個までの炭素原子からなってもよいことを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されない用語「アルキル」の存在をもカバーする)。アルキル基は、また、1〜30個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってもよい。アルキル基はまた、1〜5個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。化合物のアルキル基は、「C〜Cアルキル」または類似した表示で指定することができる。ほんの一例として、「C〜Cアルキル」は、1〜4個の炭素原子がアルキル鎖にあること、すなわち、アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルからなる群から選択されることを示す。典型的なアルキル基は、限定されずに、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。
【0033】
アルキル基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から個々に独立して選択される1個または2個以上の基である。
【0034】
本明細書で用いる場合、「アルケニル」は、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖に1個または2個以上の二重結合を含むアルキル基を指す。アルケニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0035】
本明細書で用いる場合、「アルキニル」は直鎖状または分枝状の炭化水素鎖に1個または2個以上の三重結合を含むアルキル基を指す。アルキニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0036】
本明細書で用いる「ヘテロアルキル」は、アルキル基の骨格中の1個または2個以上の炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素、硫黄および/または酸素などと置き換えられた本明細書に記載のアルキル基を指す。
【0037】
本明細書で用いる「ヘテロアルケニル」は、アルケニル基の骨格中の1個または2個以上の炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素、硫黄および/または酸素などと置き換えられた本明細書に記載のアルケニル基を指す。
【0038】
本明細書で用いる「ヘテロアルキニル」は、アルキニル基の骨格中の1個または2個以上の炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素、硫黄および/または酸素などと置き換えられた本明細書に記載のアルキニル基を指す。
【0039】
本明細書で用いる場合、「アリール」は完全に非局在化したパイ電子系を有する炭素環式(全て炭素)の単環式または多環式芳香環系を指す。アリール基の例は、限定されずに、ベンゼン、ナフタレンおよびアズレンを含む。アリール基の環は、5〜50個の炭素原子を有してもよい。アリール基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、水素原子は、置換基を特に示さない限り、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される1個または2個以上の基である、1個または2個以上の置換基によって置き換えられる。
【0040】
本明細書で用いる場合、「ヘテロアリール」は、1個または2個以上のヘテロ原子、すなわち、限定されずに、窒素、酸素および硫黄を含む炭素以外の元素を含む、単環式または多環式芳香環系(完全に非局在化したパイ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環は、5〜50個の原子を有してもよい。ヘテロアリール基は置換されていても、非置換であってもよい。ヘテロアリール環の例は、限定されずに、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリンおよびトリアジンを含む。置換されている場合、水素原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される1個または2個以上の基である、1個または2個以上の置換基によって置き換えられる。
【0041】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキル」は完全に飽和した(二重結合を含まない)単環式または多環式炭化水素環系を指す。2個または3個以上の環から構成される場合、環は、縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよい。シクロアルキル基はC〜C10の範囲であってもよく、他の態様において、それはC〜Cの範囲であってもよい。シクロアルキル基は非置換であっても、置換されていてもよい。典型的なシクロアルキル基は、限定されずに、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキルであってもよく、または、アルキル基の置換に関して上記に示したのと同じ基から選択することができる。
【0042】
本明細書で用いる場合、「シクロアルケニル」は、環に1個または2個以上の二重結合を含むシクロアルキル基を指すが、二重結合が2個以上ある場合、二重結合は環において完全に非局在化したパイ電子系を形成することはできない(さもなければ、この基は本明細書に定義する「アリール」である)。2個または3個以上の環から構成される場合、環は、縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよい。シクロアルケニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキルであってもよく、または、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0043】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキニル」は、環に1個または2個以上の三重結合を含むシクロアルキル基を指す。2個または3個以上の環から構成される場合、環は、縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよい。シクロアルキニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキルであってもよく、または、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0044】
本明細書で用いる場合、「ヘテロシクリル」および「ヘテロアリシクリル」は炭素原子と、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなる安定した3〜18員環を指す。「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」は単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これは縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよく、「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」における窒素、炭素および硫黄原子は、任意に酸化されていてもよく、窒素は、任意に四級化されていてもよく、環はまた、1個または2個以上の二重結合を含んでもよく、ただしこれらは、いずれの環においても完全に非局在化したパイ電子系を形成しない。ヘテロシクリルおよびヘテロアリシクリル基は、非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される、1個または2個以上の基であってもよい。かかる「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」の例は、限定されずに、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、1,3−ダイオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキソラニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキソラニル、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,3−オキサチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−l,4−チアジン、2H−l,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、イミダゾリニル、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノンエステル、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリニル、オキシラニル、ピペリジニルN−オキシド、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドン、ピロリジオン、4−ピペリドニル、ピラゾリン、ピラゾリジニル、2−オキソピロリジニル、テトラヒドロピラン、4H−ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、およびこれらのベンゾ縮合類似物(例えばベンゾイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3、4−メチレンジオキシフェニルなど)を含む。
【0045】
基が「任意に置換されている」と記載されている場合は常に、その基は非置換であっても、示された置換基の1個または2個以上で置換されていてもよい。同様に、基が「非置換であるか、または置換されている」と記載されているとき、置換されている場合には、置換基は1個または2個以上の示された置換基から選択され得る。
【0046】
特に明記しない限り、置換基が「任意に置換されている」か、または「置換されている」とみなされる場合には、置換基が、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から個々に独立して選択される、1個または2個以上の基で置換されていてもよい基であることを意味する。上記の置換基の保護誘導体を形成し得る保護基は、当業者に知られており、その全体を本明細書に援用するGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999などの参考文献中に見出すことができる。
【0047】
1個または2個以上のキラル中心を有する本明細書に記載される任意の化合物において、絶体立体化学が明示されていない場合、各々の中心は、独立してR配置またはS配置またはこれらの複合であってもよい。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であっても、立体異性体の混合物であってもよい。さらに、EまたはZとして定義することができる幾何異性体を生成する1個または2個以上の二重結合を有する任意の化合物において、各々の二重結合は独立してEまたはZまたはこれらの複合であってもよいことが理解される。同様に、全ての互変異性形態もまた包含されることが意図される。
【0048】
本明細書で用いる場合、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略称は、特に明記しない限り、その一般的な用法、認められた略称、または生化学命名法に関するIUPAC−IUP委員会(Biochem. 11 :942-944 (1972)参照)に従う。
【0049】
本明細書に開示する態様は、カチオンポリマー担体、該担体と作動可能に結合したターゲティング剤、および該担体と作動可能に結合した治療剤を含み得る治療組成物に関する。
【0050】
種々のカチオンポリマー担体を、本明細書に開示する組成物に用いることができる。好適なカチオンポリマーは当業者に知られている。いくつかの態様において、カチオンポリマー担体は、ホモポリマー、例えば線状または分枝ホモポリマーなどを含み得る。ある態様において、カチオンポリマー担体は、ポリ−L−リジンを含んでもよい。他の態様において、カチオンポリマー担体は、分枝または線状ポリエチレンイミン(PEI)を含んでもよい。さらに別の態様において、カチオンポリマー担体は、少なくとも2つのポリマーの混合物を含んでもよい。さらに別の態様において、カチオンポリマー担体は、コポリマー、例えば線状または分枝コポリマーなどを含んでもよい。
【0051】
カチオンポリマー担体は、種々の繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、カチオンポリマー担体は、式(I):
【化1】

で表される繰り返し単位を含み得る。
【0052】
カチオンポリマー担体が式(I)で表される繰り返し単位を含む場合、担体はポリ−L−リジン(PLL)であってもよい。
【0053】
他の態様において、カチオンポリマー担体は、式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI):
【化2】

から選択される1個または2個以上の繰り返し単位を含んでもよい。
【0054】
カチオンポリマー担体が式(II)、(III)、(IV)、(V)および/または(VI)で表される繰り返し単位を含む場合、担体はポリエチレンイミン(PEI)であってもよい。ポリエチレンイミンは線状または分枝状であってもよい。
【0055】
種々の分子量のポリエチレンイミンを用いることができる。いくつかの態様において、カチオン性PEIの繰り返し単位の分子量は、約200〜約25,000ダルトンの範囲であってもよい。ある態様において、カチオン性PEIの繰り返し単位は、約400〜約5,000ダルトンの範囲の分子量を有することができる。別の態様において、カチオン性PEIの繰り返し単位は、約600〜約2,000ダルトンの範囲の分子量を有することができる。ある態様において、カチオン性PEIの繰り返し単位は、約400〜約1,200ダルトンの範囲の分子量を有することができる。いくつかの態様において、PEIは分枝状であり、600ダルトンと等しいか、これを超える分子量を有してもよい。他の態様において、ポリエチレンイミンは線状であり、600ダルトン未満の分子量を有してもよい。
【0056】
カチオンポリマー担体に含まれ得る他の繰り返し単位は、その全体を本明細書に援用する、2007年9月14日出願の米国仮特許出願第60/972,732号、「カチオンポリマー製剤」に、特にかかる繰り返し単位およびカチオンポリマー担体を説明する目的で開示されている。カチオンポリマーに組み込むことができる好適な繰り返し単位は、ペンタエチレンヘキサミン、N,N’−ビス(2−アミノプロピル)−エチレンジアミン、スペルミン、N−(2−アミノエチル)−l,3−プロパンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−l,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−l,3−プロパンジアミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(プロピレンイミン)デンドリマー(DAB−Am−16)、スペルミジン、l,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、l−(2−アミノエチル)ピペラジン、およびトリ(2−アミノエチル)アミンを含む。いくつかの態様において、カチオンポリマー担体は分解性、例えば生分解性であってもよい。他の態様において、カチオンポリマー担体は非分解性であってもよい。ある態様において、分解性カチオンポリマー担体は、分解性架橋カチオンポリマーを含んでもよい。いくつかの態様において、カチオンポリマー担体は水溶性であってもよい。他の態様において、カチオンポリマー担体は水不溶性であってもよい。ある態様において、分解性架橋カチオンポリマーは、水溶性分解性架橋カチオンポリマーであってもよい。
【0057】
ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマーは、(a)ポリエチレングリコール(PEG)の繰り返し単位、(b)カチオン性ポリエチレンイミン(PEI)の繰り返し単位、および(c)側鎖脂質基を含む分解性の繰り返し単位を含んでもよい。
【0058】
いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマーにおけるポリエチレングリコールの繰り返し単位は、約50ダルトン〜約5,000ダルトンの範囲の分子量を有してもよい。ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマーにおけるポリエチレングリコールの繰り返し単位は、約400ダルトン〜約600ダルトンの範囲の分子量を有してもよい。
【0059】
いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマーにおけるカチオン性PEIの繰り返し単位は、約200ダルトン〜約25,000ダルトンの範囲の分子量を有してもよい。ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマーのカチオン性PEIの繰り返し単位は、約600ダルトン〜約2,000ダルトンの範囲の分子量を有してもよい。
【0060】
ある態様において、分解性の繰り返し単位は、式(VII):
【化3】

で表される繰り返し単位であってもよい。
【0061】
式(VII)において、Aは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、および−(CHn1−D−(CHn2−から選択される任意に置換された置換基であってもよく、ここで、n1およびn2は、各々独立して0または1〜10の範囲の整数であってもよく、Dは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される任意に置換された置換基であってもよく、Aは存在しないか、酸素原子または−N(R)であってもよく、ここでRはHまたはC1〜6アルキルであり、Rは、電子対、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される任意に置換された置換基であってもよく、ここで、Rが水素またアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される任意に置換された置換基である場合、Rが結合している窒素原子は、関連する正電荷(associated positive charge)を有し、Rは、C〜C50アルキル、C〜C50ヘテロアルキル、C〜C50アルケニル、C〜C50ヘテロアルケニル、C〜C50アルキニル、C〜C50ヘテロアルキニル、C〜C50アリール、C〜C50ヘテロアリール、−(CHp1−E−(CHp2−、およびステロールから選択することができ、ここで、p1およびp2は、各々独立して0または1〜40の範囲の整数であってもよく、Eは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される任意に置換された置換基であってもよい。ある態様において、RはC〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニルまたはステロールであってもよい。別の態様において、RはC〜C24アルキル、C〜C24アルケニル、C〜C24アルキニルまたはステロールであってもよい。理論にとらわれることは望まないが、式(VII)におけるエステル基が水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体に改善された生分解性を付与すると考えられる。
【0062】
いくつかの態様において、Rは脂質基であってもよい。いくつかの態様において、Rは、オレイル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、マルガリル、ステアリル、アラキジル、ベヘニルおよびリグノセリルから選択することができる。ある態様において、Rはオレイルであってもよい。いくつかの態様において、Rはステロールであってもよい。ある態様において、ステロールはコレステリル部分であってもよい。
【0063】
式(VII)においてRが結合している窒素原子は、それに結合した電子対、水素または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールとヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された置換基を有してもよい。当業者は、窒素原子が電子対を有する場合、上記の式(VII)で表される繰り返し単位が低いpHでカチオン性であり、Rが水素または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された置換基である場合、窒素原子が関連した正電荷を有することを理解する。
【0064】
ある態様において、分解性の繰り返し単位は、以下の構造:
【化4】

を有してもよい。
【0065】
いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約1モル%〜約95モル%の分解性の繰り返し単位を含み得る。ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約30モル%〜約90モル%の分解性の繰り返し単位を含み得る。いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約50モル%〜約86モル%の分解性の繰り返し単位を含み得る。
【0066】
ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約1モル%〜約35モル%のカチオン性ポリエチレンイミンの繰り返し単位を含み得る。いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約1モル%〜約20モル%のカチオン性ポリエチレンイミンの繰り返し単位を含み得る。ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約5モル%〜約15モル%のカチオン性ポリエチレンイミンの繰り返し単位を含み得る。
【0067】
ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約1モル%〜約80モル%のポリエチレングリコールの繰り返し単位を含み得る。いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約1モル%〜約50モル%のポリエチレングリコールの繰り返し単位を含み得る。ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約5モル%〜約30モル%のポリエチレングリコールの繰り返し単位を含み得る。いくつかの態様において、分解性架橋カチオンポリマー担体は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体における繰り返し単位の総モル量に基づき、約8モル%〜約30モル%のポリエチレングリコールの繰り返し単位を含み得る。
【0068】
水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体の典型的な部分を下記に示す:
【化5】

【0069】
ある態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体は、ポリマー中に、約1200ダルトンの分子量を有する1個または2個以上の分枝ポリエチレンイミンのカチオン性繰り返し単位、ポリマー中に、1個または2個以上の式(VII)の分解性の繰り返し単位、および、ポリマー中に、約454ダルトンの分子量を有するポリマーの1個または2個以上のポリエチレングリコールの繰り返し単位を含み得る。
【0070】
ある態様において、カチオンポリマー担体は、式(VIII):
【化6】

で表される1個または2個以上の繰り返し単位を含んでもよい。
【0071】
式(VIII)におけるリンカーBおよびCは、各々、アミノ基およびエステル基をそれぞれ共有結合する一群の原子である。各々のリンカーは、炭素原子および/またはヘテロ原子(例えば窒素、酸素、硫黄など)を含んでもよい。いくつかの態様において、これらのリンカーの1個または2個以上は、約1〜30個の原子を含んでも、約1〜30個の原子からなってもよい。例示的な態様において、これらのリンカーの1個または2個以上は、約1〜15個の原子を含んでも、約1〜15個の原子からなってもよい。リンカーは、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含む種々の置換基で独立して任意に置換されていてもよい。当業者が理解するとおり、これらの基の各々はさらに置換されていてもよい。基R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、独立して、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含む任意の化学基であってもよい。いくつかの態様において、nは約5〜約10,000の範囲の整数である。例示的な態様において、nは約10〜約500の範囲の整数である。
【0072】
ある態様において、カチオンポリマー担体は、式(IX):
【化7】

で表される1個または2個以上の繰り返し単位を含んでもよい。
【0073】
式(IX)におけるリンカーDは、エステル基を共有結合する一群の原子であってもよい。リンカーは、炭素原子および/またはヘテロ原子(例えば窒素、酸素、硫黄など)を含んでもよい。いくつかの態様において、これらのリンカーは、約1〜30個の原子を含んでも、約1〜30個の原子からなってもよい。例示的な態様において、リンカーは、約1〜15の長さを含んでも、約1〜15の長さからなってもよい。リンカーは、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含む種々の置換基で独立して任意に置換されていてもよい。当業者が理解するとおり、これらの基の各々はさらに置換されていてもよい。基R11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17は、独立して、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含む任意の化学基であってもよい。いくつかの態様において、nは約5〜約10,000の範囲の整数であってもよい。例示的な態様において、nは約10〜約500の範囲の整数であってもよい。カチオンポリマー担体に含めることができる式(VIII)および(IX)で表される繰り返し単位のさらなる例は、限定されずに:
【化8】

を含み、ここで、nは約3〜約10,000の範囲の整数であってもよい。式(VIII)および(IX)の繰り返し単位は置換されていてもよく、その塩を含み得る。
【0074】
ある態様において、カチオンポリマー担体は、式(X):
【化9】

で表される1個または2個以上の繰り返し単位を含んでもよい
【0075】
式(X)におけるリンカーEおよびGは各々、アミノ基およびエステル基をそれぞれ共有結合する一群の原子であってもよい。各々のリンカーは、炭素原子および/またはヘテロ原子(例えば窒素、酸素、硫黄など)を含んでもよい。いくつかの態様において、これらのリンカーの1個または2個以上は、約1〜30原子の長さを含んでも、約1〜30原子の長さからなってもよい。例示的な態様において、これらのリンカーの1個または2個以上は、約1〜15個の原子を含んでも、約1〜15個の原子からなってもよい。リンカーは、アリールおよびヘテロアリール基を含む環状構造を含んでもよい。リンカーは、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含む種々の置換基で置換されていてもよい。当業者が理解するとおり、これらの基の各々はさらに置換されていてもよい。基R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24およびR25は、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含む任意の化学基であってもよい。特定の態様において、R18とR19とは同じである。他の態様において、R20とR23とは同じであり、R22とR24とは同じであり、R21とR24とは同じであり。いくつかの態様において、nは約5〜約10,000の範囲の整数である。例示的な態様において、nは約10〜約500の範囲の整数である。
【0076】
ある態様において、カチオンポリマー担体は、式(XI):
【化10】

で表される1個または2個以上の繰り返し単位を含んでもよい。
【0077】
式(XI)におけるリンカーJは、アクリレート部分を共有結合する一群の原子であってもよい。リンカーは、炭素原子および/またはヘテロ原子(例えば窒素、酸素、硫黄など)を含んでもよい。いくつかの態様において、これらのリンカーは、約1〜30個の原子を含んでも、約1〜30個の原子からなってもよい。例示的な態様において、リンカーは、約1〜15個の原子を含んでも、約1〜15個の原子からなってもよい。別の態様において、リンカーは約2〜10原子の長さであってもよい。いくつかの態様において、リンカーJは、置換または非置換の、直鎖または分枝アルキル鎖である。ある態様において、リンカーJは、約3〜10個の炭素原子を含んでもよい。別の態様において、リンカーJは、約3、4、5、6または7個の炭素原子を含んでもよい。他の態様において、リンカーJは、置換または非置換の、直鎖または分枝脂肪族鎖である。ある態様において、リンカーJは、約3〜10の原子を含んでもよい。別の態様において、リンカーJは、約3、4、5、6または7個の原子を含んでもよい。いくつかの態様において、リンカーJは、酸素および炭素原子を含む繰り返し単位を含む。リンカーは、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、アシル、アセチルおよびウレイド基を含む種々の置換基で任意に置換されていてもよい。当業者が理解するとおり、これらの基の各々はさらに置換されていてもよい。基R26、R27、R28、R29、R30、R31およびR32は、独立して、限定されずに、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、アルキルチオエーテル、チオール、アシル、アセチルおよびウレイド基を含む任意の化学基であってもよい。いくつかの態様において、R26はヒドロキシル基を含み得る。他の態様において、R26はアミノ、アルキルアミノおよび/またはジアルキルアミノ基を含み得る。いくつかの態様において、nは約3〜約10,000の範囲の整数であってもよい。例示的な態様において、nは約10〜約500の範囲の整数であってもよい。
【0078】
別の態様において、カチオンポリマーはポリ{(エチレンイミン)−コ−[N−(2−アミノエチル)エチレンイミン]−コ−[N−(N−コレステリルオキシカルボニル−(2−アミノエチル))エチレンイミン]}であってもよい。好適なカチオンポリマーのさらなる例は、2004年2月24日発行の米国特許第6,696,038号、2002年2月25日出願の米国特許公開第2003/0073619号、2003年11月19日出願の米国特許公開第2004/0142474号、およびLynn, et al. J. Am. Chem. Soc. (2001), 123, 8155-8156に開示されており、これら全てをそれぞれ本明細書に、特に、好適なカチオンポリマーおよびカチオンポリマーを製造するための方法を説明する目的で援用する。
【0079】
カチオンポリマー担体は、1個または2個以上のキラルの炭素原子を含み得る。キラル炭素(アスタリスク*によって示すことがある)は、rectus(右手型)またはsinister(左手型)構造を有することができ、したがって、繰り返し単位はラセミであっても、鏡像異性的であっても、鏡像異性的に富化されていてもよい。
【0080】
カチオンポリマー担体と同様に、種々のターゲティング剤を組成物に用いることができる。1つの好適なターゲティング剤は、レチノイド、例えば本明細書中に記載のものを含み得る。好適なレチノイドは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レキシノイドまたはその誘導体もしくは類似物を含む。典型的なレチノールは、ビタミンA、オールトランスレチノール、パルミチン酸レチニルおよび酢酸レチニルを含む。レチナールの1つの例は、11−シス−レチナールである。レキシノイドは、レチノイドXレセプター(RXR)に対して選択的なレチノイド化合物である。典型的なレキシノイドは、レチノイドのベキサロテンである。他のレチノイド誘導体および類似物は、エトレチネート、アシトレチン、タザロテン、ベキサロテン、アダパレンおよびフェンレチニドを含む。いくつかの態様において、レチノイドはレチノール、レチナール、レチノイン酸、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸、パルミチン酸レチニル、11−シス−レチナールおよび13−シス−レチノイン酸から選択することができる。ある態様において、レチノイドはビタミンAを含んでもよい。
【0081】
上記のとおり、ターゲティング剤は、治療組成物の特定の標的器官または組織への送達選択性を高めることができる。標的器官は、例えば、肝臓、膵臓、腎臓、肺、食道、喉頭、骨髄および脳を含み得る。いくつかの態様において、送達選択性の向上は、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも約2倍であってもよい。ある態様において、送達選択性の向上は、少なくとも3倍であってもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも10%増大させることができる。他の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも25%増大させることができる。さらに別の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも50%増大させることができる。さらにまた別の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも75%増大させることができる。
【0082】
治療組成物中に存在するターゲティング剤の量は、広範囲に異なり得る。いくつかの態様において、ターゲティング剤は、治療組成物の全質量の約1%〜約50%(重量/重量)であってもよい(ここで、ターゲティング剤の質量は治療組成物の全質量に含まれる)。他の態様において、ターゲティング剤は、治療組成物の全質量の約10%〜約30%w/wであってもよい(同基準)。さらに他の態様において、ターゲティング剤は、治療組成物の全質量の約20%〜約40%w/wであってもよい(同基準)。
【0083】
種々の治療剤が、本明細書に記載の組成物に含まれてもよい。いくつかの態様において、治療剤の治療活性は、がん細胞の成長の抑制であってもよい。治療剤は、がん細胞の成長を直接および/または間接的に抑制してもよい。例えば、治療剤は直接がん細胞に作用することによって、アポトーシスを誘発してもよい。治療剤はまた、がん細胞を支持する1個または2個以上の線維芽細胞を標的とすることによって、がん細胞の成長を間接的に抑制してもよい。ある態様において、治療剤は細胞毒性を有してもよい。
【0084】
いくつかの態様において、治療剤の治療活性は、標的器官または組織内、例えば上記した標的器官または組織内での線維化の抑制を含んでもよい。例えば、治療剤は、標的器官または組織へ治療剤が送達されてから星細胞の活性化を抑制してもよい。「活性化」は、本明細書でこの用語を用いる場合、増大した増殖、ビタミンA濃度の減少、および/または、コラーゲン産生の増大を特徴とする星細胞の異常な状態を表現する。
【0085】
いくつかの態様において、治療剤は抗がん剤であってもよい。典型的な抗がん剤はパクリタキセルである。いくつかの態様において、治療剤は小分子剤であってもよい。これらの態様において、治療剤は、TGFベータ(TGFβ)インヒビター、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)プロモーター、肝細胞増殖因子(HGF)プロモーター、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)生産インヒビター、ガンマ型ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARγ)リガンド、アンギオテンシン活性インヒビター、血小板由来増殖因子(PDGF)インヒビター、ナトリウムチャネルインヒビターおよびアポトーシス誘導物質から選択することができる。
【0086】
他の態様において、治療剤はアミノ酸を含んでもよい。これらの態様において、治療剤はsiRNA、DNA、RNAおよびアンチセンス核酸から選択され得る。ある態様において、治療剤はsiRNAであってもよい。いくつかの態様において、siRNAは5〜50塩基対、好ましくは10〜35塩基対、より好ましくは19〜27塩基対を有するRNAを含む。siRNAはまた、RNA/DNA混合分子またはタンパク質/RNA混合分子を含んでもよい。ある態様において、治療剤はコラーゲンの分泌を抑制してもよい。治療剤は、標的器官へ送達されてから、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)または分子シャペロンの活性を実質的に抑制してもよい。いくつかの態様において、治療剤の標的組織への送達によって抑制される分子シャペロンは、コラーゲン特異的なもの、例えば熱ショックタンパク質47(HSP47)などであってもよい。
【0087】
治療組成物中に存在する治療剤の量は、広範囲に異なり得る。治療剤は、治療組成物の全質量の約25%〜約75%(重量/重量)であってもよい(ここで、治療剤の質量は治療組成物の全質量に含まれる)。他の態様において、治療剤は、治療組成物の全質量の約30%〜約60%w/wであってもよい(同基準)。さらに他の態様において、治療剤は、治療組成物の全質量の約40%〜約70%w/wであってもよい(同基準)。
【0088】
いくつかの態様において、カチオンポリマー担体はミクロ粒子の形態であってもよい。他の態様において、カチオンポリマー担体はナノ粒子の形態であってもよい。
【0089】
本明細書に開示する治療組成物は、種々の手法で調製することができる。本明細書に開示するとおり、1または2以上の剤は、静電結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。ある態様において、ターゲティング剤は、静電結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。同様に、治療剤は、静電結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。
【0090】
あるいは、いくつかの態様において、1または2以上の剤は、共有結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。いくつかの態様において、ターゲティング剤とカチオンポリマー担体とは、共有結合を介して作動可能に結合していてもよい。共有結合を介して作動可能に結合している場合、ターゲティング剤とカチオンポリマー担体とは互いに直接結合していてもよい。ある態様において、レチノールはカチオンポリマー担体に直接結合していてもよい。当業者に知られている種々のメカニズムを、ターゲティング剤とカチオンポリマー担体との間で共有結合を形成するのに用いることができる。例えば、レチノールとカチオンポリマー担体とを、縮合反応を介して互いに直接結合させることができる。カチオンポリマー担体にレチノールを直接結合するさらなる方法は当業者に知られており、本明細書に提供されるガイダンスが示すルーチンの実験によって特定することができる。
【0091】
他の態様において、1または2以上の剤は、連結基を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。連結基の例は、比較的低分子量の基、例えば、アミド、エステル、炭酸塩およびエーテルなど、ならびに、より高分子量の連結基、例えば、ポリ(エチレン)グリコール(PEG)などを含む。1または2以上の連結基は、ターゲティング剤、治療剤および/またはカチオンポリマー担体を互いに反応させるときに、連結基を形成する部分を含ませるために、ターゲティング剤、治療剤およびカチオンポリマー担体の1または2以上を修飾することによって導入することができる。典型的な部分は二重結合である。修飾されたターゲティング剤、治療剤および/または担体は、次いで、当業者に既知の方法を用いて、例えば、マイケル反応(J. March, Advanced Organic Chemistry 3rd Ed., pp. 711-712 (1985)参照)などを介して互いに反応させることができる。例えば、修飾されたターゲティング剤、例えばレチノイドなどを、ターゲティング剤がカチオンポリマー担体と連結基を介して作動可能に結合するように、ポリ−L−リジンおよび/またはPEIと反応させることができる。ターゲティング剤をカチオンポリマー担体に連結基を介して結合させるための別法は当業者に知られており、本明細書に提供されるガイダンスが示すルーチンの実験によって特定することができる。
【0092】
いくつかの態様において、治療剤とターゲティング剤とは、別々に、または、組合わさって、カチオンポリマー担体と組合わさり、混合物を形成してもよい。混合物は、好適な条件で処理し(例えばインキュベートし)、ターゲティング剤および/または治療剤がカチオンポリマー担体と作動可能に結合するようにしてもよい。望ましい場合には、剤の1つとカチオンポリマー担体とを、他の剤の添加の前に反応させることができる。いくつかの態様において、治療剤の添加の前に、ターゲティング剤をカチオンポリマー担体と組合わせることができる。他の態様において、ターゲティング剤の添加の前に、治療剤をカチオンポリマー担体と組合わせることができる。さらに他の態様において、ターゲティング剤と治療剤とを、ほぼ同時にカチオンポリマー担体と組合わせることができる。
【0093】
あるいは、ターゲティング剤および/または治療剤を、カチオンポリマー担体の一部を形成するのに用いるモノマーに結合させてもよい。モノマーを、次いで、カチオンポリマー担体を形成するために、当業者に既知の方法を用いて重合させることができる。例えば、ターゲティング剤および/または治療剤を、重合の前にL−リジンモノマーに結合させることができる。結合したターゲティング剤および/または治療剤を有する得られたモノマーを、次いで、カチオンポリマー担体を形成するために当業者に既知の方法を用いて重合させることができる。
【0094】
種々のターゲティング剤が、カチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。好適なターゲティング剤は、上記のとおり、レチノイドであってもよい。好適なレチノイドは、上記のとおり、限定されずに、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レキシノイドならびにその誘導体および類似物を含む。いくつかの態様において、ターゲティング剤は、静電結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。他の態様において、ターゲティング剤は、共有結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。共有結合を介して作動可能に結合している場合、ターゲティング剤とカチオンポリマー担体とは互いに直接結合していてもよい。例えば、アクリロイルレチノールは、本明細書に記載の1個または2個以上の繰り返し単位(例えば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)(VIII)、(IX)および/または(X)で表される繰り返し単位)と、改変(modified)マイケル付加によって互いに直接結合することができる。他の態様においては、上記のとおり、ターゲティング剤とカチオンポリマー担体とを連結基を介して互いに結合することができる。
【0095】
上述のものを含む種々の治療剤が、カチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。いくつかの態様において、治療剤の治療活性は、標的器官または組織内での線維化の抑制を含んでもよい。いくつかの態様において、治療剤は抗がん剤であってもよい。典型的な抗がん剤はパクリタキセルである。いくつかの態様において、治療剤は小分子剤であってもよい。これらの態様において、治療剤は、TGFベータ(TGFβ)インヒビター、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)プロモーター、肝細胞増殖因子(HGF)プロモーター、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)生産インヒビター、ガンマ型ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARγ)リガンド、アンギオテンシン活性インヒビター、血小板由来増殖因子(PDGF)インヒビター、ナトリウムチャネルインヒビターおよびアポトーシス誘導物質から選択することができる。
【0096】
他の態様において、治療剤はアミノ酸を含んでもよい。これらの態様において、治療剤はsiRNA、DNA、RNAおよびアンチセンス核酸から選択され得る。ある態様において、治療剤はsiRNAであってもよい。いくつかの態様において、siRNAは5〜50塩基対、好ましくは10〜35塩基対、より好ましくは19〜27塩基対を有するRNAを含む。siRNAはまた、RNA/DNA混合分子またはタンパク質/RNA混合分子を含んでもよい。ある態様において、治療剤はコラーゲンの分泌を抑制してもよい。治療剤は、標的器官へ送達されてから、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)または分子シャペロンの活性を実質的に抑制してもよい。いくつかの態様において、治療剤の標的組織への送達によって抑制される分子シャペロンは、コラーゲン特異的なもの、例えば熱ショックタンパク質47(HSP47)などであってもよい。
【0097】
他の態様において、治療剤は共有結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。共有結合を介して作動可能に結合している場合、治療剤とカチオンポリマー担体は互いに直接結合していてもよい。例えば、抗がん剤はカチオンポリマー担体に直接結合していてもよい。ある態様において、パクリタキセルはC2’−炭素に結合した酸素原子で、カチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。別の態様において、パクリタキセルはC7−炭素に結合した酸素原子で、カチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。いくつかの態様において、カチオンポリマー担体は、C2’−炭素に結合した酸素原子および/またはC7−炭素に結合した酸素原子で結合したパクリタキセルを有していてもよい。他の態様においては、上記のとおり、治療剤とカチオンポリマー担体とは連結基を介して互いに結合していてもよい。
【0098】
本明細書に開示する治療剤とカチオンポリマー担体との作動可能な結合は、当業者に既知の複数の異なる手法で行なうことができる。治療剤とカチオンポリマー担体とを作動可能に結合する1つの方法は、熱(例えばマイクロ波法による熱など)を用いることによるものである。ある態様において、反応を約100℃〜約l50℃の範囲で温度まで加熱することができる。別の態様において、材料を加熱する時間は約5〜約40分の範囲である。必要に応じて、反応混合物を室温に冷却してもよい。これらの工程は、手動で、自動化されたシステムによって、またはこの両方の組合わせによって行なうことができる。
【0099】
上記反応は、任意の好適な温度、例えば室温などで行なうことができる。当業者に一般的に知られた、および/または、本明細書に記載された適切な溶媒、カップリング剤、触媒、促進剤および/またはバッファーを、治療剤、ターゲティング剤およびカチオンポリマー担体を作動可能に結合するために用いることができる。
【0100】
さらに、当業者に既知の好適な方法を用いて、治療組成物を単離および/または精製することができる。例えば、反応混合物を酸性の水溶液中で濾過することができる。次いで、形成されるあらゆる沈殿物を濾過し、水で洗浄することができる。任意に、沈殿物を当業者に既知の任意の好適な方法で精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移し、溶解することができ、得られる溶液を重炭酸ナトリウム溶液中で再度濾過することができる。必要に応じて、得られる反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、ポリマーを凍結乾燥および単離することができる。治療組成物の形成後、担体と作動可能に結合していないターゲティング剤または治療剤のあらゆる遊離量を測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて、治療組成物において残存している遊離の治療剤が実質的に存在しないことを確認してもよい。
【0101】
ターゲティング剤および治療剤は、カチオンポリマー担体と、カチオンポリマー担体に対する種々の位置で作動可能に結合していてもよい。かかる位置は固定的(例えば、カチオンポリマー担体の中央(middle)、末端または側鎖)であっても、相対的であってもよく、例えば、カチオンポリマー担体は特定の媒体(例えば水性媒体など)中で、内側部分および外側部分を有するような構造を示し得る。ある態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体の側鎖部分と作動可能に結合していてもよい。他の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体の一端または末端繰り返し単位と作動可能に結合していてもよい。さらに別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体の中央と作動可能に結合していてもよい。さらにまた別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体の骨格と作動可能に結合していてもよい。ある態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体の外側部分または外側表面と作動可能に結合していてもよい。いくつかの態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体の内側部分または内側表面と作動可能に結合していてもよい。ある態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体中に少なくとも部分的に含まれていてもよい。別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体中に実質的に完全に含まれていてもよい。
【0102】
いくつかの態様において、ある1つのタイプの剤(例えば、治療剤またはターゲティング剤)がある1つの部分でカチオンポリマー担体と作動可能に結合している一方で、別のタイプの剤(例えば、治療剤またはターゲティング剤)が別の部分でカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。例えば、ターゲティング剤はカチオンポリマー担体の外側部分または外側表面と作動可能に結合していてもよく、かつ、治療剤はカチオンポリマー担体の内側部分または内側表面と作動可能に結合していてもよい。代替的に、カチオンポリマー担体の外側部分または外側表面と作動可能に結合していてもよく、かつ、ターゲティング剤はカチオンポリマー担体の内側表面またはコアと作動可能に結合していてもよい。他の態様において、ある1つのタイプの剤(例えば、治療剤またはターゲティング剤)は、ほぼ同じ部分でカチオンポリマー担体と作動可能に結合していてもよい。例えば、両方の剤が、カチオンポリマー担体の内側部分または内側表面と結合していてもよい。代替的に、両方の剤は、カチオンポリマー担体の外側部分または外側表面と結合していてもよい。剤の1または2以上が内側部分または内側表面と結合しているとき、各々の剤はカチオンポリマー担体内に部分的または完全に被包されていてもよい。当業者は、結合の場所および向きが、特定のターゲティング剤、治療剤およびカチオンポリマー担体の特性に応じて変わり得ることを認識している。
【0103】
いくつかの態様において、カチオンポリマー担体が形成される前に、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、アミノ酸と作動可能に結合してもよく、ここで、アミノ酸はカチオンポリマー担体の部分を形成する。他の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、カチオンポリマー担体が形成された後でこれと作動可能に結合してもよい。いくつかの態様において、カチオンポリマー担体は、それが治療剤と作動可能に結合する前に、ターゲティング剤と作動可能に結合してもよい。他の態様において、カチオンポリマー担体は、それが治療剤と作動可能に結合した後で、ターゲティング剤と作動可能に結合してもよい。いくつかの態様において、ターゲティング剤および治療剤はいずれも、カチオンポリマー担体と静電的に結合していてもよい。他の態様において、ターゲティング剤および治療剤はいずれも、カチオンポリマー担体に共有結合していてもよい。さらに別の態様において、ある1つのタイプの剤(例えばターゲティング剤または治療剤)はカチオンポリマー担体と静電的に結合しており、別のタイプの剤(例えば治療剤またはターゲティング剤)はカチオンポリマー担体に共有結合していてもよい。
【0104】
本明細書に開示する治療組成物は、当業者に既知の種々の手法で調製することができる。本明細書に開示するカチオンポリマー担体は、種々の方法によって調製することができる。本明細書に開示するカチオンポリマー担体の多く、例えばポリ−L−リジンおよびポリエチレンイミン(PEI)などは、商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法を用いて調製することができる。
【0105】
いくつかの態様において、水溶性分解性架橋カチオンポリマー担体、例えば本明細書に開示するものなどは、Lynn, et al. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 8155-8156に開示されている方法に従い、ジアクリレートをカチオン性化合物間のリンカー分子として用いて調製することができる。いくつかの態様において、(a)ポリエチレングリコール(PEG)の繰り返し単位、(b)カチオン性ポリエチレンイミン(PEI)の繰り返し単位、および(c)側鎖脂質基を含む分解性の繰り返し単位を含み得る水溶性分解性架橋カチオンポリマーは、エチレンイミンの繰り返し単位を含む第1の反応物質を有機溶媒に溶解して、溶解された、または部分的に溶解されたポリマー反応物質を形成し、溶解された、または部分的に溶解されたポリマー反応物質を、分解性のモノマー反応物質と反応させて分解性の架橋ポリマーを形成し(ここで、分解性のモノマー反応物質は脂質基を含む)、分解性の架橋ポリマーを第3の反応物質と反応させることにより合成することができる(ここで、第3の反応物質はポリエチレングリコールの繰り返し単位を含む)。例えば、式(VII)で表される分解性の繰り返し骨格単位(recurring backbone degradable unit)を含む水溶性分解性架橋カチオンポリマーは、以下に示す1つの方法によって合成することができる。スキームAに示すとおり、式(VIIb)で表される化合物をPEIと反応させて、式(VIIc)で表される1または2以上の部分を含む分解性架橋カチオンポリマーを形成することができる。
【化11】

【0106】
スキーム中、A、A、RおよびRは、式(VII)に関して本明細書に記載したものと同じ意味を有する。
【0107】
スキームAに例示される反応は、PEIと式(VIIb)で表される化合物とを、相互溶媒、例えばエタノール、メタノールまたはジクロロメタンなどの中で撹拌しながら、好ましくは室温で数時間混合することによって行なうことができる。得られたポリマーは、当業者に既知の技術を用いて回収することができる。例えば、得られたポリマーを回収するために溶媒を蒸発させることができる。この発明は作用理論にとらわれないが、PEIと式(VIIb)で表される化合物との間の反応は、PEIの1個または2個以上のアミンと式(VIIb)で表される化合物の1個または2個以上の二重結合との間のマイケル反応を伴うと考えられる(J. March, Advanced Organic Chemistry 3rd Ed., pp. 711-712 (1985)参照)。スキームAに示す式(VIIb)で表される化合物は、米国特許公開第2006/0258751号(全ての図面を含めて本明細書に援用する)に記載の方法で調製することができる。
【0108】
式(VIII)、(IX)、(X)および(XI)で表される繰り返し単位は、当業者に既知の方法を用いて合成することができる。例えば、式(VIII)および(IX)で表される繰り返し単位は、ビス(第二級アミン)または第一級アミンの、ビス(アクリレートエステル)への共役付加を介して調製することができる。一般的な反応スキームを下記スキームBおよびCに示す。
【化12】

【0109】
スキームBおよびCにおいて、基RおよびRは、独立して、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、アルキルチオエーテル、チオールおよびウレイド基を含むがこれらに限定されない任意の化学基であってもよい。式(VIII)、(IX)、(X)および(XI)で表される繰り返し単位およびこれらを製造する方法のさらなる例は、2006年2月14日発行の、「BIODEGRADABLE POLY(β-AMINO ESTERS) AND USES THEREOF」なる名称の米国特許第6,998,115号、および、2007年6月5日出願の「CROSSLINKED, DEGRADABLE POLYMERS AND USES THEREOF」なる名称の米国特許公開第2008/0145338号に開示されており、これらを、好適なカチオンポリマー担体およびそれを製造する方法を説明する特定の目的で本明細書に援用する。式(VIII)、(IX)、(X)および/または(XI)で表される繰り返し単位を含むカチオンポリマー担体の合成に関するさらなる詳細は、2001年10月2日出願の米国特許第6,998,115号、「BIODEGRADABLE POLY(β-AMINO ESTERS) AND USES THEREOF」、および/または、2007年6月5日出願の米国特許公開第2008/0145338号「CROSSLINKED, DEGRADABLE POLYMERS AND USES THEREOF」に開示されている。
【0110】
本明細書に開示するターゲティング剤は、商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法によって製造することができる。さらに、本明細書に開示する治療剤は、当業者に既知の種々の方法によって調製することができる。特定の治療剤、例えばパクリタキセルは、商業的に入手できる。いくつかの態様において、治療剤は、核酸、例えばsiRNA、DNA、RNAまたはアンチセンス核酸などを含んでもよい。いくつかの態様において、核酸は特定の分子の分解を促進するために特異的に適合していてもよい。かかる分子は、例えば、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)または分子シャペロンであってもよい。治療剤の標的器官または組織への送達によって抑制される分子シャペロンは、コラーゲン特異的なもの、例えば熱ショックタンパク質47(HSP47)などであってもよい。いくつかの態様において、siRNAはHSP47を認識するための特定の配列を考慮して設計されていてもよい。当業者は、このようにして核酸を設計する種々の技法が利用でき、化学的に合成された核酸が商業的に入手できることを認識する。
【0111】
別の態様は、本明細書に記載の1または2以上の治療組成物を含むことができ、かつ、薬学的に許容し得る賦形剤、第2の担体(本明細書に記載のカチオンポリマー担体に加えて)および希釈剤から選択される少なくとも1つをさらに含む医薬組成物を提供する。いくつかの態様において、本明細書に開示する化合物のプロドラッグ、代謝産物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形および薬学的に許容し得る塩(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)が提供される。
【0112】
医薬製剤の製造が医薬賦形剤と塩形態の有効成分との均質な混合を伴う場合、非塩基性の医薬賦形剤、すなわち酸性または中性の賦形剤を用いるのが望ましいことがある。
【0113】
種々の態様において、本明細書に開示される組成物(例えば、ターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)は、単独で、本明細書に開示される他の化合物と組み合わせて、または、本明細書に記載の治療領域で活性を有する1または2以上の他の剤と組み合わせて用いることができる。
【0114】
別の側面において、本開示は、1または2以上の生理学的に許容し得る界面活性剤、さらなる担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁化剤、皮膜形成物質および被覆助剤またはこれらの組合わせと、本明細書に開示する組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)とを含む医薬組成物に関する。治療用の許容し得るさらなる担体または希釈剤は医薬分野でよく知られており、例えば、その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に記載されている。防腐剤、安定化剤、染料、甘味料、フレグランス、着香料などを、医薬組成物に供給してもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを、防腐剤として添加することができる。さらに、酸化防止剤および懸濁化剤を用いることができる。種々の態様において、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどを界面活性剤として用いてもよく、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを賦形剤として用いてもよく、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを平滑剤として用いてもよく、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆油を懸濁化剤または滑沢剤として用いてもよく、炭水化物(例えばセルロースまたは糖など)の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース、またはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーを懸濁化剤として用いてもよく、フタル酸エステルなどの可塑剤などを懸濁化剤として用いてもよい。
【0115】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示する組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)と、他の化学成分、例えば希釈剤またはさらなる担体との混合物を指す。医薬組成物は、化合物の生体への投与を容易にする。医薬組成物を投与する複数の技術が当該技術分野に存在し、これは、限定されずに、経口、注射、エアゾール、非経口および局所(topical)投与を含む。医薬組成物はまた、化合物を、無機または有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などと反応させることによって得ることができる。
【0116】
用語「担体」は、カチオンポリマー担体とは異なる、これに追加される第2の化学物質であって、化合物の細胞または組織への組み込みを容易にするものを指す。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、それが生体の細胞または組織内への多くの有機化合物の取り込みを容易にすることから、一般に用いられている担体である。
【0117】
用語「希釈剤」は、水中の希釈された化学物質であって、対象とする組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)を溶解するとともに、化合物の生物学的に活性な形態を安定化するものを指す。緩衝溶液に溶解した塩類は、当該技術分野で希釈剤として利用される。一般的に用いられている緩衝溶液の1つはリン酸緩衝生理食塩水だが、これはそれがヒト血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御することができるため、緩衝希釈剤は化合物の生物学的活性をほとんど変更しない。本明細書で用いる場合、「賦形剤」は、組成物に、限定されずに、嵩高さ、粘稠性、安定性、結合能力、滑沢性、崩壊能力などを提供するために組成物に添加される不活性物質を指す。「希釈剤」は、賦形剤の一種のである。
【0118】
用語「生理学的に許容し得る」は、化合物の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を指す。
【0119】
本明細書に記載の医薬組成物は、ヒト患者にそれ自体で、または、医薬組成物中、併用療法のように他の有効成分と、または好適な担体または1または2以上の賦形剤と混合して投与することができる。本出願の化合物の製剤化および投与のための技法は、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition, 1990に見出すことができる。
【0120】
好適な投与経路は、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与または腸投与、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、骨髄内注射、ならびに、髄腔内注射、直接脳室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射を含む非経口送達を包含する。化合物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)はまた、デポ注射、浸透圧ポンプ、ピル、経皮パッチ(エレクトロトランスポートパッチを含む)などを含む、持続性または制御放出剤形で、所定の速度での、長期間および/または持続的な、パルス状の投与のために投与することができる。
【0121】
本発明の医薬組成物は、それ自体知られた方法で、例えば、慣用の混合、溶解、造粒、糖衣剤作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入または打錠処理によって製造することができる。
【0122】
医薬組成物は、活性化合物を医薬的に用いることができる製剤に加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む、1または2以上の生理学的に許容し得る担体を用いて、任意の慣用の手法で製剤することができる。適した製剤は、選択する投与経路によって異なる。任意の周知の技法、担体および賦形剤を、当該技術分野において、例えば、上記Remington's Pharmaceutical Sciencesにおいて適切なように、かつ理解されているように用いることができる。
【0123】
注射剤は、溶液または懸濁液として、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態として、またはエマルジョンとして、慣用の形態に調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。さらに、注射可能な医薬組成物は、必要に応じて、少量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。生理学的に適合するバッファーは、限定されずに、ハンクス液、リンゲル液または生理食塩水バッファーを含む。必要に応じて、吸収増強製剤を利用してもよい。
【0124】
経粘膜投与のために、透過すべき障壁に適した浸透剤を製剤に用いてもよい。
【0125】
非経口投与、例えばボーラス注射または持続注入などによる非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。水性の注射懸濁液は、懸濁液の粘性を高める物質、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどを含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、好適な安定化剤、または、化合物の溶解性を高める剤を含んでもよい。注射用製剤は、単位投与形態で、例えば、アンプルまたは多回投与容器中に、添加された保存剤とともに提供することができる。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとってもよく、製剤用物質、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などを含んでいてもよい。あるいは、有効成分は、使用の前に好適なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水などによる構成のために粉末形態であってもよい。
【0126】
経口投与のために、対象となる組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)を当該技術分野で周知の薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって、組成物を容易に製剤することができる。カチオンポリマー担体に加えて用いることができるかかる担体により、本発明の組成物を、処置する患者による経口摂取用の錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することが可能となる。経口用途のための医薬製剤は、活性化合物を固形賦形剤と組合わせ、得られる混合物を任意に粉砕し、顆粒の混合物を、必要に応じて好適な助剤を添加した後に、錠剤または糖衣剤コアを得るために処理することにより得ることができる。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖など、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどを添加してもよい。糖衣剤のコアは、好適なコーティングを備えている。この目的のために、濃縮した糖液を用いることができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料を、識別のため、または、活性化合物用量の異なる組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣剤コーティングに加えてもよい。この目的のために、濃縮した糖液を用いることができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料を、識別のため、または、活性化合物用量の異なる組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣剤コーティングに加えてもよい。
【0127】
経口で用いることができる製剤は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)で作製されたシールされたソフトカプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、充填剤、例えば、ラクトースなど、結合剤、例えば、デンプンなど、および/または、滑沢剤、例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど、および任意に安定化剤と混合された有効成分を含み得る。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの中に溶解または懸濁していてもよい。さらに、安定化剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与に適した投薬量であるべきである。
【0128】
バッカル投与のために、組成物は、慣用の手法で製剤された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとってもよい。
【0129】
吸入による投与のために、組成物は、加圧パック(pressurized pack)またはネブライザーから、好適なプロペラント、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスにより、エアゾールスプレー物の形態で有利に送達することができる。加圧エアゾールの場合、投薬単位は、計量された量を放出するためのバルブを提供することにより決定することができる。吸入器またはインサフレーターに用いるカプセルおよびカートリッジ、例えばゼラチン製のものは、例えば、化合物と好適な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンなどの粉末混合物を含んだ製剤としてもよい。
【0130】
本明細書でさらに開示されるのは、眼内、鼻腔内、および耳介内送達を含む用途について医薬分野においてよく知られた種々の医薬組成物である。これらの用途のための好適な浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。かかる好適な医薬製剤は、ほとんどの場合、そして、好ましくは、無菌、等張、かつ安定性および快適性のために緩衝された製剤として製造される。鼻腔内送達のための医薬組成物はまた、通常の線毛作用の維持を保証するために多くの点で鼻内分泌物を模するようにしばしば調製されている点鼻剤およびスプレーを含んでもよい。その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に開示されているとおり、および、当業者に周知のとおり、好適な製剤は、ほとんどの場合、そして、好ましくは等張であり、5.5〜6.5のpHを維持するためにわずかに緩衝されており、ほとんどの場合、そして、好ましくは抗菌保存剤および適切な薬物安定化剤を含む。耳介内の送達のための医薬製剤は、耳内での局所適用のための懸濁剤および軟膏を含む。かかる耳用製剤のための一般的な溶媒は、グリセリンおよび水を含む。
【0131】
組成物はまた、直腸組成物、例えば坐剤または保持浣腸などに製剤することができ、これは、例えば、慣用の坐剤基剤、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどを含む。
【0132】
前述の製剤に加えて、組成物はまた、デポ製剤として製剤化してもよい。かかる長時間作用製剤は、移植(例えば皮下もしくは筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容し得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂とともに、または、難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化してもよい。
【0133】
疎水性化合物に関して、好適な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマーと、水相とを含む共溶媒系であってもよい。用いられる一般的な共溶媒系は、3%w/vのベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤ポリソルベート80TM、および65%w/vのポリエチレングリコール300とを含み、無水エタノールで体積を合わせた溶液である、VPD共存溶媒系である。当然ながら、共存溶媒系の比率は、その溶解性および毒性の特徴を損なうことなく、相当に多様であってもよい。さらにまた、共溶媒成分の同一性(identity)は多様であってもよい。例えば、他の低毒性非極性界面活性剤を、ポリソルベート80TMの代わりに用いてもよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズは多様であってもよく、ポリエチレングリコールを他の生体適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンに置き換えてもよく、デキストロースを、他の糖または多糖に置換してもよい。
【0134】
本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の治療組成物の治療有効量を投与することを含み得る、異常な線維化によって特徴づけられる状態を処置する方法である。異常な線維化によって特徴づけられる状態は、がんおよび/または線維性疾患を含んでもよい。本明細書に記載の治療組成物によって処置または改善することができるがんの種類は、限定されずに、肺がん、膵がん、乳がん、肝がん、胃がんおよび大腸がんを含む。ある態様において、処置または改善することができるがんは、膵がんである。別の態様において、処置または改善することができるがんは、肺がんである。本明細書に記載の治療組成物によって処置または改善することができる線維性疾患の種類は、限定されずに、肝線維症、肝硬変、膵炎、膵線維症、嚢胞性線維症、声帯瘢痕化、声帯粘膜線維症、喉頭線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症および腎性全身性線維症を含む。ある態様において、処置または改善することができる状態は、肝線維症である。
【0135】
本明細書に記載の組成物または医薬組成物は、対象に任意の好適な手段で投与することができる。投与方法の非限定例は、なかでも、活性化合物を生体組織と接触させるために当業者が適切と考える、(a)経口経路を介した投与(当該投与は、カプセル、錠剤、顆粒、スプレー、シロップなどの形態での投与を含む)、(b)非経口経路を介した投与、例えば、直腸投与、膣内投与、尿道内投与、眼内投与、鼻腔内投与または耳介内投与など(当該投与は、水性懸濁液もしくは油性製剤などとしての、または、滴剤、スプレー、坐薬、膏薬、軟膏などとしての投与を含む)、(c)注射、例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、眼窩内注射、嚢内注射、脊髄内注射、胸骨内注射など(注入ポンプ送達を含む)、(d)局部(locally)投与、例えば、腎臓または心臓領域における直接注射、例えば、デポ移植によるもの、ならびに(e)局所投与を含む。
【0136】
投与に適した医薬組成物は、有効成分がその意図される目的を達成するために有効な量で含まれる組成物を含む。用量として要求される本明細書に開示する化合物の治療有効量は、投与経路、処置する動物種(ヒトを含む)、および対象とする特定の動物の身体的特徴に依存する。用量は所望の効果を達成するように調整することができるが、重量、食事、併用薬物などの要因、および医学分野の当業者が認識する他の要因に依存する。より具体的には、治療有効量は、疾患の徴候を予防、緩和もしくは改善するか、処置する対象の生存を延長するのに有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0137】
当業者に直ちに明らかなように、投与すべき有用なin vivoの投薬量および投与の特定の方法は、年齢、重量および処置する哺乳動物種、用いる特定の化合物、およびこれらの化合物を用いる特定の用途によって異なる。有効投薬量レベル、すなわち所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルの決定は、当業者が通常の薬理学的方法を用いて行なうことができる。典型的には、製剤のヒト臨床適用は低い投薬量レベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増大させる。あるいは、確立した薬理学的方法を用いた許容し得るin vitro実験を、本方法によって特定された組成物の有用な用量および投与経路を確立するのに用いることができる。
【0138】
非ヒト動物試験において、潜在的製剤の適用は高い投薬量レベルで開始し、所望の効果もはや達成されなくなるまで、または副作用が消失するまで投薬量レベルを低減させる。投薬量は、所望の効果および治療適応に応じて広い範囲に及んでもよい。典型的に、投薬量は、約10マイクログラム/kg〜約100mg/体重kg、好ましくは約100マイクログラム/kg〜10mg/体重kgであってもよい。あるいは、当業者によって理解されるように、投薬量は患者の表面積に基づいて計算してもよい。
【0139】
本発明の医薬組成物のための正確な剤形、投与経路および投薬量は、個々の医師が患者の状態を考慮して選択することができる。(例えば、その全体を本明細書に援用する, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics"におけるFingl et al. 1975、特に第1章、第1頁を参照)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、約0.5〜約1000mg/患者体重kgであってもよい。投薬量は、患者の必要に応じて、1日または2日間以上の間に与えられる、単回のものであっても、一連の2回または3回のものであってもよい。化合物のヒトの投薬量が少なくともいくつかの状態に対して確立されている場合、本発明は、これらと同じ投薬量、または、確立されたヒトの投薬量の約0.1%〜約500%、より好ましくは25%〜約250%である投薬量を用いる。ヒトの投薬量が確立されていない場合、例えば、新規に見出された医薬組成物などの場合、好適なヒトの投薬量は、ED50もしくはID50値、または、動物における毒性試験および有効性試験によって認定された、in vitroまたはin vivo試験に由来する他の適切な値から推定することができる。
【0140】
主治医が、毒性または臓器機能不全によって、どのように、および、いつ投与を終了するか、中断するか、調整するかを知っている点に留意する必要がある。逆に、主治医は、臨床効果が適切ではない(毒性を除く)場合に、処置をより高いレベルに調整することも知っている。対象となる障害の管理における投与量の程度は、処置する状態の重篤度および投与経路によって異なる。状態の重篤度は、例えば、部分的に、標準的な予後評価方法によって評価することができる。さらに、用量およびおそらく投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重および反応によって異なる。上記で論じたのと同等の手法を、獣医学で用いることができる。
【0141】
正確な投薬量は薬物ごとに決定するが、ほとんどの場合、投薬量に関するある程度の一般化を行なうことができる。成人ヒト患者のための1日の投薬レジメンは、例えば、約0.1mg〜2000mg、好ましくは約1mg〜約500mg、例えば5〜200mgの各々の有効成分の経口用量であってもよい。他の態様において、約0.01mg〜約100mg、好ましくは約0.1mg〜約60mg、例えば約1〜約40mgの各々の有効成分の静脈内、皮下、筋肉内用量を用いる。薬学的に許容し得る塩の投与の場合、投薬量は遊離塩基として計算することができる。いくつかの態様において、組成物は1日あたり1〜4回投与される。あるいは、本発明の組成物は、静脈内持続点滴によって、好ましくは約1000mg/日までの各々の有効成分の用量で投与することができる。当業者によって理解されるように、特定の状況において、特に悪性の疾患または感染症を効果的かつアグレッシブに治療するために、本明細書に開示する化合物を、上記の好ましい投薬量範囲を超える量、さらにはそれをはるかに超える量で投与しなければならないことがある。いくつかの態様において、化合物は、持続治療の期間中、例えば1週間もしくはそれ以上、または数ヶ月もしくは数年にわたって投与される。
【0142】
投薬量および投薬間隔は、調節効果、または最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活発部分の血漿レベルをもたらすために、個々に調整することができる。MECは各々の化合物について異なるが、in vitroデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投薬量は、個々の特徴および投与経路に依存する。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを、血漿濃度を決定するのに用いることができる。
【0143】
投薬間隔はまた、MEC値を用いて決定することができる。組成物は、10〜90%、好ましくは30〜90%、および最も好ましくは50〜90%の時間、血漿レベルをMECより上に維持するレジメンで投与すべきである。
【0144】
局部投与または選択的取り込みの場合、薬物の有効な局部濃度は、血漿濃度と関連しないことがある。
【0145】
投与する組成物の量は、処置する対象、対象の重量、苦痛の重篤度、投与の様式、および処方医の判断に依存し得る。
【0146】
本明細書に開示される組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)は、既知の方法を用いて、有効性および毒性について評価することができる。例えば、特定の化合物、または、特定の化学部分を共有する化合物のサブセットの毒性学は、細胞系、例えば哺乳動物などの細胞系、好ましくはヒト細胞系に対するin vitro毒性を決定することにより確立することができる。かかる試験の結果は、しばしば、動物、例えば哺乳動物など、またはより具体的にはヒトにおける毒性を予測するものである。あるいは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギまたはサルなどにおける特定の化合物の毒性は、既知の方法を用いて測定することができる。特定の化合物の有効性は、いくつかの認められた方法、例えばin vitro方法、動物モデルまたはヒト臨床試験などによって確立することができる。認められたin vitroモデルは、限定することなく、がん、心血管疾患および種々の免疫機能障害を含む、ほとんどすべての種類の状態について存在する。同様に、許容し得る動物モデルは、かかる状態を処置するための化学品の有効性を確立するのに用いることができる。有効性を決定するためにモデルを選択する場合、当業者は、従来技術に基づいて、適切なモデル、用量および投与経路、ならびにレジメンを選ぶことができる。当然ながら、ヒト臨床試験によってヒトにおける化合物の有効性を決定することができる。
【0147】
組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1個または2個以上の単位投薬形態を含み得るパックまたはディスペンサー装置中に提供することができる。パックは、例えば、金属またはプラスチックのホイル、例えばブリスターパックなどを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与のために指示が付属していてもよい。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬の製造、使用または販売を規制する政府機関が規定する様式の、容器に関連した通知が付属していてもよく、この通知は、ヒトまたは獣医学的な投与のための薬物形態に対する当局による承認を反映したものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局により承認された処方薬についてのラベルまたは製品説明書であってもよい。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の化合物を含む組成物もまた、調製され、好適な容器内に入れられ、指示された状態の処置のためにラベルすることができる。
【実施例】
【0148】
以下の例は、本明細書に記載の態様をさらに説明する目的で提供する。化学品、例えば、メタノール、ジクロロメタン(DCM)、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(PEG)、レチノールおよび他の試薬などは、Sigma-Aldrich化学会社から購入した。ポリエチレンイミンはPolyScience, Inc.から購入した。式(VII)で表される分解性モノマーは、特許出願、米国特許公開第2006/0258751号に報告され、本明細書に記載された一般的な手順に従って合成した。水溶性分解性架橋カチオンポリマーは、2008年5月23日に出願の米国特許出願第12/126,721号(その全体を、あらゆる図面とともに本明細書に援用する)に報告されている一般的な手順に従って合成した。
【0149】
HSP−47を標的とするsiRNA配列は、Ambion, Inc.から購入した。
センス:GCAACUAAAGACCUGGAUGtt(配列番号1)
アンチセンス:ctCGUUGAUUUCUGGACCUAC(配列番号2)
【0150】
ヒト頸部腺がん細胞HeLaおよびマウス皮黒色腫細胞B16F0は、ATCCから購入し、10%FBSを含むDMEM培地で培養した。GFPを安定発現する細胞系は、GFP発現ベクターを細胞にトランスフェクトし、ハイグロマイシンB(HeLa−GFP用)またはネオマイシン(B16F0−GFP用)で選択することによって作出した。
【0151】
例1
アクリロイルレチノールを、図1に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。レチノール(302mg、1mmol)を、無水ジクロロメタン(CHCl、5mL)に溶解した。トリエチルアミン(EtN、0.25mL、1.8mmol)と4−ジ(メチルアミノ)ピリジン(DMAP、12mg、0.1mmol)とをレチノール溶液に添加した。塩化アクリロイル(0.12mL、96%、1.4mmol)を、得られた溶液に0℃で、撹拌しながら滴加した。添加後、撹拌を0℃で30分間続けた。次いで、溶液をCHCl(15mL)で希釈し、水を添加した(10mL)。有機相を抽出し、水、塩水でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、クロマトグラフィー精製(ヘキサン/酢酸エチル(EtOAc)、40:1)のために濃縮して、アクリロイルレチノール(160mg、47%)を得た。クロマトグラフィー後、濃縮の前に、0.8mg(0.5%w/w)の4−エトキシフェノールを、重合が起こるのを防ぐために、ヘキサン/EtOAc中のアクリロイルレチノール溶液に添加した。得られた溶液を、冷蔵庫内(−20℃)で遮光した。生成物の同一性は、NMRスペクトロスコピーによって確認した。
【0152】
例2
ポリ−L−リジン(PLL)−レチノール組成物を、図2に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。ポリ−L−リジン(PLL、100mg)は、DMF(10mL)に溶解した。レチノイン酸(5mg)、EDC(30mg)およびHOBt(5mg)を、溶液に添加した。得られた溶液を、5分間マイクロ波条件下に置いた。反応混合物を0.2N塩酸溶液に注いだ。白色沈殿を遠心分離で単離した。沈殿物を、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液に再溶解した。溶液を、水に対する透析下に置いた。生成物PLL−レチノールを凍結乾燥した。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。
【0153】
例3
ポリ(エチレンイミン)(PEI)−レチノール組成物を、図3に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。PEI600(50mg)を、エタノール(4mL)に溶解した。エタノール(1mL)中のアクリロイルレチノール(5mg)の溶液を、前記溶液に滴加した。エタノール(1mL)を得られた溶液にすすぎとして添加し、次いでこれを4時間撹拌した。得られた混合物を真空下に置いてエタノールを除去し、PEI600−レチノールを得た。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。また、同じ生成物、PEI600−レチノールを、種々の量の1または2以上の出発原料を用いて得、H−NMRによって確認した。例えば、PEI600(50mg)とアクリロイルレチノール(10mg)、またはPEI600(1200mg)とアクリロイルレチノール(10mg)。
【0154】
例4
PEI−レチノール組成物を、図3に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。PEI1200(50mg)を、エタノール(4mL)に溶解した。エタノール(1mL)中のアクリロイルレチノール(5mg)の溶液を前記溶液に滴加した。エタノール(1mL)を、得られた溶液にすすぎとして添加し、次いでこれを4時間撹拌した。得られた混合物を真空下に置いてエタノールを除去し、PEI1200−レチノールを得た。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。
【0155】
例5
PEI−レチノール組成物を、図3に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。PEI2000(50mg)を、エタノール(4mL)に溶解した。エタノール(1mL)中のアクリロイルレチノール(5mg)の溶液を前記溶液に滴加した。エタノール(1mL)を得られた溶液にすすぎとして添加し、次いでこれを4時間撹拌した。得られた混合物を真空下に置いてエタノールを除去し、PEI2000−レチノールを得た。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。また、同じ生成物、PEI2000−レチノールを、1200mgのPEI2000から出発して得、H−NMRによって確認した。
【0156】
例6
【化13】

ポリマー1の合成
CHCl/MeOH(1:2、1.2mL)中の分解性脂質リンカー(A、23.9mg、0.05mmol)の溶液を、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のPEI600(15.0mg、0.025mmol)の溶液に撹拌しながら添加した。これを、室温で1時間激しく撹拌した。次いで、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルレチノール(B、3.4mg、0.01mmol)の溶液、および、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルポリエチレングリコール(C、18.2mg、0.04mmol)の溶液を添加した。室温でさらに2時間激しく撹拌後、これを氷水中で冷却し、撹拌しながら2M塩酸/エーテル(0.5mL)でクエンチし、冷ジエチルエーテル(−20℃)で45mLにした。沈殿物が生じた。固体生成物を、遠心分離(5,000rpm)によって得た。ジエチルエーテル(30mL)を固体に添加し、懸濁液をもう1回遠心分離した。最終生産物を室温にて一晩減圧下で乾燥して、所望の生成物を得た(60mg、80%)。生成物は、NMRスペクトロスコピーによって確認した。
【0157】
ポリマー2の合成
CHCl/MeOH(1:2、1.2mL)中の分解性脂質リンカー(A、47.8mg、0.075mmol)の溶液を、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のPEI600(15.0mg、0.025mmol)の溶液に撹拌しながら添加した。これを、室温で1時間激しく撹拌した。次いで、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルレチノール(B、3.4mg、0.01mmol)の溶液、および、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルポリエチレングリコール(C、18.2mg、0.04mmol)の溶液を添加した。室温でさらに2時間激しく撹拌後、これを氷水中で冷却し、撹拌しながら2M塩酸/エーテル(0.5mL)でクエンチし、冷ジエチルエーテル(−20℃)で45mLにした。沈殿物が生じた。固体生成物を、遠心分離(5,000rpm)によって得た。ジエチルエーテル(30mL)を固体に添加し、懸濁液をもう1回遠心分離した。最終生産物を室温にて一晩減圧下で乾燥して、所望の生成物を得た(60mg、80%)。生成物は、NMRスペクトロスコピーによって確認した。
【0158】
ポリマー3の合成
CHCl/MeOH(1:2、1.2mL)中の分解性脂質リンカー(A、23.9mg、0.10mmol)の溶液を、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のPEI600(15.0mg、0.025mmol)の溶液に撹拌しながら添加した。これを、室温で1時間激しく撹拌した。次いで、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルレチノール(B、3.4mg、0.01mmol)の溶液、および、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルポリエチレングリコール(C、18.2mg、0.04mmol)の溶液を添加した。室温でさらに2時間激しく撹拌後、これを氷水中で冷却し、撹拌しながら2M塩酸/エーテル(0.5mL)でクエンチし、冷ジエチルエーテル(−20℃)で45mLにした。沈殿物が生じた。固体生成物を、遠心分離(5,000rpm)によって得た。ジエチルエーテル(30mL)を固体に添加し、懸濁液をもう1回遠心分離した。最終生産物を室温にて一晩減圧下で乾燥して、所望の生成物を得た(60mg、80%)。生成物は、NMRスペクトロスコピーによって確認した。
【0159】
ポリマー4の合成
CHCl/MeOH(1:2、1.2mL)中の分解性脂質リンカー(A、23.9mg、0.125mmol)の溶液を、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のPEI600(15.0mg、0.025mmol)の溶液に撹拌しながら添加した。これを、室温で1時間激しく撹拌した。次いで、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルレチノール(B、3.4mg、0.01mmol)の溶液、および、CHCl/MeOH(1:2、1mL)中のアクリロイルポリエチレングリコール(C、18.2mg、0.04mmol)の溶液を添加した。室温でさらに2時間激しく撹拌後、これを氷水中で冷却し、撹拌しながら2M塩酸/エーテル(0.5mL)でクエンチし、冷ジエチルエーテル(−20℃)で45mLにした。沈殿物が生じた。固体生成物を、遠心分離(5,000rpm)によって得た。ジエチルエーテル(30mL)を固体に添加し、懸濁液をもう1回遠心分離した。最終生産物を室温にて一晩減圧下で乾燥して、所望の生成物を得た(60mg、80%)。生成物は、NMRスペクトロスコピーによって確認した。
【0160】
ポリマー5の合成
式(VIIb)で表される分解性モノマー反応物の溶液を、ジクロロメタンとメタノールとの混合物(1:2、30mL)に2.37mgを溶解することによって調製した。ジクロロメタンとメタノールとの混合物(1:2、3mL)中の分枝PEI(MW=1200、360mg)の溶液を、分解性モノマー反応物溶液に添加した。混合溶媒(5mL)を、反応混合物にすすぎとして添加した。添加完了後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンおよびメタノール(1:2、2mL)中のPEG(MW=454、272.4mg)の溶液を添加した。混合溶媒(3mL)を、反応混合物にすすぎとして添加した。次いで、反応混合物をもう1時間撹拌した。次に、反応物を氷水中で10分間冷却した後、撹拌しながらエーテル(270mL)中の2M塩酸溶液でクエンチした。懸濁液を8本の50mLコニカル遠心チューブに入れ、さらなる冷エーテル(−20℃)で希釈した。チューブ内の懸濁液を遠心分離した。液体をデカントし、白色固体生成物をさらなるエーテルで洗浄し、2回遠心分離した。生成物を真空下で乾燥して、2.04g(62%)を得た。生成物、ポリマー5(分解性脂質単位:mPEI:PEG(12:1:2))を、H−NMRによって特性化した。
【表1】

【0161】
例7
siRNAトランスフェクション
トランスフェクションの前日に、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現している細胞を、1ウェルあたり1×10個の密度で96ウェルプレートに播種した。siRNA(1.0μg)の溶液を蒸留水に溶解し、OptiMEM(Invitrogen)で、30μlまでさらに希釈した。これらの実験で用いるsiRNAは、抗GFP(CGAGAAGCGCGAUCACAUGUU(配列番号3))であった。送達試薬を適切な量のdHOに溶解することにより、試験ポリマーおよびコントロールポリマーを5mg/mLの濃度で調製した。ポリマー5については、前述のとおり、ポリマーとレチノールとを混合し、5mg/mLの濃度で調製した。送達試薬液は、化合物とsiRNAとの比率に従い、30μLの最終容量までOptiMEMでさらに希釈した。希釈したsiRNA溶液と送達試薬液とを混合し、室温で15分間インキュベートした。siRNAと送達試薬との混合物(15μL)を、事前に細胞を播種した各ウェルに添加、混合し、5%CO、37℃のインキュベーターでインキュベートした。48時間後に、トランスフェクション効率および細胞生存率を評価した。
【0162】
例8
トランスフェクション効率の評価
トランスフェクションは、蛍光顕微鏡下でGFPの発現を測定することによって評価した。GFPの吸光度は、UV−visマイクロプレートリーダーにて、485〜528nmで検出した。
【0163】
例9
細胞取り込み
初代肝星細胞(HSC)であるNRK−49F細胞を、既報の手順(Houglum et al. "Two Different cis-acting Regulatory Regions Direct Cell-specific Transcription of the Collagen al (1) Gene in Hepatic Stellate Cells and in Skin and Tendon Fibroblasts." J. Clin. Invest. 1995, 96, 2269-2276)を用いて肝組織から単離した。単離した肝星細胞を、適切な培地中、3×10/2mL/ウェルの播種密度で、6ウェルプレートにて一晩培養した。ポリマー1〜4については、試験ポリマーの溶液を、Milli Q−HO(5mg/mL)に溶解した。ポリマー5については、試験ポリマーの溶液をMilli Q−HO(5mg/mL)に溶解し、ジメチルスルホキシド(DMSO、28.65mg/mL、約100mM)に溶解したオールトランスレチノールの溶液と、レチノール:試験ポリマーの重量/重量比25:2.5で混合した。全ポリマーについて、混合物を、試験ポリマーの終濃度0.17mg/mLまで、5%グルコース中でさらに希釈した。混合物を20秒間ボルテックスし、15分間室温で安定させた。RNaseフリー水中に調製したCy3標識siRNAの溶液(0.25mg/mL、約20mM)を、混合物に添加した(試験ポリマー1:Cy3−siRNAの重量/重量比2.5:1)。混合物をさらにボルテックスし、もう15分間室温でインキュベートした。混合物(100μL)を初代HSC培養物に添加し、もう4時間37℃でインキュベーションを続けた。次いで、蛍光顕微鏡下で画像を記録した(Ex/Em:532/554nm)。2つのコントロールについては、(a)DMSO中のレチノールの溶液(28.65mg/mL)を、RNaseフリー水中に調製したCy3標識siRNAの溶液(0.25mg/mL、約20mM)に、2.5:1のレチノール:Cy3−siRNAの重量/重量比で添加し、および(b)試験ポリマーをMilli Q−HOに溶解した溶液(5mg/mL)を、RNaseフリー水中に調製したCy3標識siRNAの溶液(0.25mg/mL、約20mM)に、2.5:1の試験ポリマー:Cy3−siRNAの重量/重量比で添加した。2つの混合物は、5%グルコースでさらに希釈し、15分間室温でインキュベートした。各々の混合物を100mL、別々に初代HSC培養物に添加し、4時間37℃でインキュベートした。画像を、蛍光顕微下で写真によって記録した(Ex/Em:532/554nm)。結果を図4に示す。図4の写真が示すとおり、カチオンポリマー+siRNA+レチノールで処理した細胞は、水溶性分解性架橋カチオンポリマー+siRNAまたはsiRNAのみで処理した細胞と比較して、より多くのCy3クロモフォアを取り込んだ。
【0164】
例10
細胞生存率アッセイ
臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)の溶液を、250mgの固体MTTを50mlのダルベッコPBSに溶解することにより調製し、4℃で保存した。48時間のトランスフェクションの後、MTT溶液(5mg/mLの10μL)を、細胞を含む各ウェルに添加し、紫色結晶の成長が観察できるまで、2〜4時間37℃でインキュベートした。次いで、可溶化した溶液(100μL)を添加し、37℃で一晩インキュベートした。吸光度を、690nmでの吸光度を対照として570nmの波長で検出した。細胞生存率アッセイの結果を図5に示す。図5に示すとおり、カチオンポリマー+siRNA+レチノールは、カチオンポリマー+siRNAおよびsiRNAのみと同等の細胞毒性を有した。
【0165】
例11
正常ラット腎線維芽細胞(NRK−49f)はATCCから購入し、一晩、10%のFBSおよび1%のペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDMEM培地中、3×10/2mL/ウェルの播種密度で、6ウェルプレートにて一晩培養した。ポリマー1〜4については、試験ポリマーの溶液を、Milli Q−HO(5mg/mL)に溶解した。ポリマー5については、試験ポリマーの溶液をMilli Q−HO(5mg/mL)に溶解し、ジメチルスルホキシド(DMSO、28.65mg/mL、約100mM)に溶解したオールトランスレチノールの溶液と、種々の重量/重量比で混合した。全ポリマーについて、混合物を、試験ポリマーの終濃度0.17mg/mLまで、5%グルコース中でさらに希釈した。混合物を、試験ポリマーの終濃度0.17mg/mLまで、5%グルコース中でさらに希釈した。混合物を20秒間ボルテックスし、15分間室温で安定させた。RNaseフリー水中に調製したsiHSP−47の溶液(0.25mg/mL、約20mM)を、種々の重量/重量比で混合物に添加した。混合物をさらにボルテックスし、もう15分間室温でインキュベートした。混合物(200μL)を初代HSC培養物に添加し、さらに48時間37℃でインキュベーションを続けた。細胞を、トランスフェクションの48時間後に採取し、全RNAをRNeasy Mini Kit(Qiagen, Cat. No. #74104)で抽出し、cDNAを、逆転写キットである、RT−PCR用Superscript III First-Strand Synthesis System(Invitrogen, Cat. No. #18080-051)で合成した。HSP−47に対する定量的PCRは、Brilliant SYBR Green QPCR Mix(Stratagene, Cat. No. #600548)により、Stratagene Mx3005Pシステムにて、プライマー:5’−CAATGTGACCTGGAAACTGG−3’(フォワード)(配列番号4)および5’−ATGAAGCCACGGTTGTCTAC−3’(配列番号5)を用いて行なった。結果を図6〜8に示す。図6〜8に示すとおり、産生されるmRNAの量は、カチオンポリマー+siRNA+レチノールを含む組成物で処理した細胞において、カチオンポリマー+siRNAまたはsiRNAのみで処理した線維芽細胞細胞と比較して減少した。
【0166】
例12
LD50
ポリマー4をMilli Q−水に50μg/μlで溶解した。siHSP47を、RNaseフリー水で2000μMに希釈した(約25μg/μlに相当)。nu/nu雄性マウス(30グラム)に、尾静脈への単回ボーラス注射で、ポリマー4/siRNA複合体(ポリマー4/siRNAの重量/重量比:5/1、200μL)を、種々のsiRNA用量で注射した:(1)1mg/kg、(2)2.5mg/kg、(3)5mg/kg、(4)7.5mg/kg、(5)10mg/kgおよび(6)15mg/kg。結果を図9に示す。LD50は10mg/kgであることが明らかとなり、これは、約2〜3mg/kgの典型的な治療レベルより顕著に高かった。
【0167】
例13
溶血アッセイ
ヌードマウスの血液試料を、ヘパリン化チューブに採取し、700×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、赤血球ペレットを冷PBS(pH7.4)で3回洗浄し、同じバッファー中に再懸濁した。異なる濃度のポリマーとsiEGFPとの溶液をPBSバッファー中に調製し、100μL/ウェルで丸底プレートに添加した。血液試料(10μL)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で60分間インキュベートした。ヘモグロビンの放出を、遠心分離(700gで10分間)後に、分光光度分析により決定した。各ウェルからの上清(100μL)を平底プレートに移した。540nmでの蛍光強度をプレートリーダーで測定した。結果を図10に示す。図10に示すとおり、完全溶血(すなわち赤血球の死)が0.2%のTritonX−100(100μL/ウェル(10μLの血液試料を含む))を用いて達成され、これは540nmでの高い吸光度が示す100%のコントロール値を与えた。本明細書に記載のポリマーとsiRNAとの複合体は、顕著に低い吸光度を示したが、これは10%未満の溶血が生じたことを示すものである。この低度の溶血は、本明細書に記載のポリマーとsiRNAとの複合体が動物において比較的安全であることを示唆している。
【0168】
多数の様々な改変が、本発明の精神から逸脱せずになされ得ることを当業者は理解する。したがって、本発明の形態は例示にすぎず、本発明の範囲を制限する意図がないことを明確に理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンポリマー担体、
カチオンポリマー担体に作動可能に結合したターゲティング剤(ここで、該ターゲティング剤はレチノイドを含む)、および
カチオンポリマー担体に作動可能に結合した治療剤(ここで、治療剤は標的器官または組織に送達されてから治療効果を発揮し、治療効果は、標的器官または組織内での線維症の抑制、および標的器官または組織内でのがん細胞の増殖の抑制からなる群から選択される)を含む、治療組成物。
【請求項2】
レチノイドが、レチノール、レチナールおよびレチノイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項3】
レチノイドが、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸、パルミチン酸レチニル、11−シス−レチナールおよび13−シス−レチノイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項4】
標的器官が、肝臓、膵臓、腎臓、肺、食道、喉頭、骨髄および脳からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項5】
ターゲティング剤が、標的器官または組織に送達されたときに、治療組成物の送達選択性を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物の送達選択性と比較して少なくとも約2倍向上させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項6】
送達選択性の向上が少なくとも約3倍である、請求項5に記載の治療組成物。
【請求項7】
ターゲティング剤が、静電結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項8】
ターゲティング剤が、共有結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項9】
カチオンポリマー担体とターゲティング剤との間に連結基をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項10】
カチオンポリマー担体が、連結基を介してターゲティング剤と作動可能に結合している、請求項9に記載の治療組成物。
【請求項11】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約1%〜約50%(重量/重量)の範囲のターゲティング剤の量を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項12】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約10〜約30%(重量/重量)の範囲のターゲティング剤の量を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項13】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約20〜約40%(重量/重量)の範囲のターゲティング剤の量を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項14】
治療剤が、静電結合を介してカチオンポリマー担体と作動可能に結合している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項15】
カチオンポリマー担体が、共有結合を介して治療剤と作動可能に結合している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項16】
カチオンポリマー担体と治療剤との間に連結基をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項17】
カチオンポリマー担体が、連結基を介して治療剤と作動可能に結合している、請求項16に記載の治療組成物。
【請求項18】
カチオンポリマー担体がホモポリマーを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項19】
ホモポリマーが線状ホモポリマーである、請求項18に記載の治療組成物。
【請求項20】
ホモポリマーが分枝ホモポリマーである、請求項18に記載の治療組成物。
【請求項21】
カチオンポリマー担体がコポリマーを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項22】
コポリマーが分枝コポリマーである、請求項21に記載の治療組成物。
【請求項23】
コポリマーが線状コポリマーである、請求項21に記載の治療組成物。
【請求項24】
カチオンポリマー担体が、少なくとも2つのポリマーの混合物を含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項25】
カチオンポリマー担体が分解性である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項26】
カチオンポリマー担体が非分解性である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項27】
カチオンポリマー担体が水溶性である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項28】
カチオンポリマー担体が水不溶性である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項29】
カチオンポリマー担体が架橋している、請求項1〜28のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項30】
カチオンポリマー担体が式(I):
【化1】

で表される繰り返し単位を含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項31】
カチオンポリマー担体がポリ−L−リジンを含む、請求項30に記載の治療組成物。
【請求項32】
カチオンポリマー担体が、式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI):
【化2】

からなる群から選択される繰り返し単位を含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項33】
カチオンポリマー担体がポリエチレンイミンを含む、請求項32に記載の治療組成物。
【請求項34】
カチオンポリマー担体が線状ポリエチレンイミンを含む、請求項32または33に記載の治療組成物。
【請求項35】
カチオンポリマー担体が分枝ポリエチレンイミンを含む、請求項32または33に記載の治療組成物。
【請求項36】
カチオンポリマー担体が、
(a)ポリエチレングリコール(PEG)の繰り返し単位、
(b)カチオン性ポリエチレンイミン(PEI)の繰り返し単位、および、
(c)ペンダント脂質基を含む分解性の繰り返し単位
を含む、請求項1〜35のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項37】
PEGの繰り返し単位が、約50〜約5,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項36に記載の治療組成物。
【請求項38】
PEGの繰り返し単位が、約400ダルトン〜約600ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項36に記載の治療組成物。
【請求項39】
PEGの繰り返し単位が、約454ダルトンの分子量を有する、請求項36に記載の治療組成物。
【請求項40】
カチオン性PEIの繰り返し単位が、約200ダルトン〜約25,000ダルトンの範囲に分子量を有する、請求項36〜39のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項41】
カチオン性PEIの繰り返し単位が、約600ダルトン〜約2,000ダルトンにの範囲の分子量を有する、請求項36〜39のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項42】
カチオン性PEIの繰り返し単位が、約1200ダルトンの分子量を有する、請求項36〜39のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項43】
カチオン性PEIの繰り返し単位が、約600ダルトンの分子量を有する、請求項36〜39のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項44】
カチオン性PEIの繰り返し単位が、分枝ポリエチレンイミン単位である、請求項36〜43のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項45】
分解性の繰り返し単位が式(VII):
【化3】

式中、
は存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、および−(CHn1−D−(CHn2−からなる群から選択される任意に置換された置換基であり、
ここで、n1およびn2は、各々独立して0または1〜10の範囲の整数であり、
Dは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された置換基であり、
は存在しないか、酸素原子または−N(R)であり、ここでRはHまたはC1〜6アルキルであり、
は、電子対、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された置換基であり、
ここで、Rが水素、またアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された置換基である場合、Rが結合している窒素原子は正電荷を有し、
は、C〜C50アルキル、C〜C50ヘテロアルキル、C〜C50アルケニル、C〜C50ヘテロアルケニル、C〜C50アルキニル、C〜C50ヘテロアルキニル、C〜C50アリール、C〜C50ヘテロアリール、−(CHp1−E−(CHp2−、およびステロールからなる群から選択され、
ここで、p1およびp2は、各々独立して0または1〜40の範囲の整数であり、
Eは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された置換基である
で表される繰り返し単位である、請求項36〜44のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項46】
が、オレイル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、マルガリル、ステアリル、アラキジル、ベヘニル、リグノセリルおよびステロールからなる群から選択される、請求項45に記載の治療組成物。
【請求項47】
がオレイルである、請求項45に記載の治療組成物。
【請求項48】
分解性の繰り返し単位が:
【化4】

で表される、請求項36〜47のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項49】
カチオンポリマー担体がミクロ粒子である、請求項1〜48のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項50】
カチオンポリマー担体がナノ粒子である、請求項1〜48のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項51】
治療剤が細胞毒性を有する、請求項1〜50のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項52】
治療剤が、TGFβインヒビター、MMPプロモーター、HGFプロモーター、TIMP産生インヒビター、PPARγリガンド、アンギオテンシン活性インヒビター、PDGFインヒビター、ナトリウムチャネルインヒビターおよびアポトーシス誘導物質からなる群から選択される、請求項1〜51のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項53】
治療剤が、標的器官または組織へ治療剤が送達されてから星細胞の活性化を実質的に抑制する、請求項1〜52のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項54】
治療剤が核酸を含む、請求項1〜53のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項55】
治療剤が、標的器官または組織へ治療剤が送達されてからコラーゲン生産を実質的に抑制する、請求項54に記載の治療組成物。
【請求項56】
治療剤が、標的器官または組織へ治療剤が送達されてから、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)および分子シャペロンからなる群から選択される物質の活性を実質的に抑制する、請求項54または55に記載の治療組成物。
【請求項57】
分子シャペロンがHSP47である、請求項56に記載の治療組成物。
【請求項58】
治療剤が、siRNA、DNA、RNAおよびアンチセンス核酸からなる群から選択される、請求項54〜57のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項59】
治療剤が抗がん剤である、請求項1〜53のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項60】
抗がん剤がパクリタキセルである、請求項59に記載の治療組成物。
【請求項61】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約25%〜約75%(重量/重量)の範囲の治療剤の量を含む、請求項1〜60のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項62】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約30〜約60%(重量/重量)の範囲の治療剤の量を含む、請求項1〜60のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項63】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約40〜約70%(重量/重量)の範囲の治療剤の量を含む、請求項1〜60のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項64】
薬学的に許容し得る賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜63のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項65】
異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1〜64のいずれか一項に記載の治療組成物の1または2以上を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項66】
状態が、がんおよび線維性疾患からなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
状態が線維性疾患である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
状態が、肝線維症、肝硬変症、膵炎、膵線維症、嚢胞性線維症、声帯瘢痕化、声帯粘膜線維症、喉頭線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維化症および腎性全身性線維症からなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
状態が肝線維症である、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
状態ががんである、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
状態が、肺がん、膵がん、乳がん、肝がん、胃がんおよび大腸がんからなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
状態が膵がんである、請求項65に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−539245(P2010−539245A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528021(P2010−528021)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/076287
【国際公開番号】WO2009/036368
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】