説明

薬物融合体および複合体

本発明は、血清半減期が改良された薬物融合体に関する。これらの融合体および複合体はポリペプチド、免疫グロブリン(抗体)単一可変ドメインならびにGLPおよび/またはエキセンディン分子を含む。本発明はさらに、このような薬物融合体および複合体を含む使用、製剤、組成物およびデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清半減期が改良された薬物融合体および複合体に関する。これらの融合体および複合体は免疫グロブリン(抗体)単一可変ドメインとGLP分子および/またはエキセンディン分子を含む。本発明はさらに、このような薬物融合体および複合体を含む使用、製剤、組成物およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
治療および/または診断目的に有用であり得る、活性を有する多くの薬物は、投与されると急速に身体から排出されるので、有用性が限定されている。例えば、治療上有用な活性を有する多くのポリペプチドは、腎臓を介して循環から速やかに除去される。従って、望ましい治療効果を得るためには、大量を投与しなければならない。改良された薬物動態特性を有する改良された治療薬および診断薬の必要がある。
【0003】
このような、体内もしくは全身循環中の半減期が短い薬物種の一つが、グルカゴン様ペプチド1などのインクレチンホルモン、またはペプチドYY、ならびにエキセンディン、例えばエキセンディン−4である。
【0004】
グルカゴン様ペプチド(GLP)−1は、グルコース依存性インスリン分泌促進およびグルカゴン分泌抑制作用、膵臓β細胞に対する栄養作用、ならびに消化管の分泌および運動性に対する抑制作用を有するインクレチンホルモンであるが、それらの作用が相まって血漿グルコースを低下させ、血糖の変動幅を小さくする。さらにGLP−1は、その満腹感を高める能力によって、食物摂取を減らし、それによって体重増加を抑え、体重減少を引き起こすことさえある。以上を考え合わせると、これらの作用はGLP−1に独特な特徴を与え、特に、血糖降下作用のグルコース依存性は重症高血糖のリスクを最小限にするはずであるので、抗糖尿病薬として極めて望ましいと考えられる。しかしながら、その薬物動態/薬力学的特性は、天然GLP−1が治療上有用ではないというものである。従って、GLP−1は連続投与すれば最も効果的であるが、1回の皮下注射での持続時間は短い。GLP−1はin vivoで酵素分解を極めて受けやすく、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断の関連がおそらく最も高いと思われるが、それはこれが急速に起こって、非インスリン分泌性の代謝産物を生じるためである。従って、その代謝安定性および薬物動態/薬力学的特性に影響を及ぼす要因に関する理解に基づいた、GLP−1の治療上の可能性を活用するための方策が、集中的な研究の焦点となっている。
【0005】
生物活性をなお維持しながらその分解を遅くするように、ペプチダーゼを阻害するか、またはGLP−1を修飾することを試みて鋭意研究が行われてきた。国際公開第WO05/027978号は、持続性の作用特性を有するGLP−1誘導体を開示している。国際公開第WO02/46227号は、GLP−1または類似体と融合したポリペプチド(例えば、アルブミン)を含む異種融合タンパク質を開示している(これらの類似体の開示は、本発明で使用することができるGLP−1類似体の例として、引用することにより本明細書の一部とされる)。国際公開第WO05/003296号、同第WO03/060071号、同第WO03/059934号は、GLP−1がこのホルモンの半減期を延長するためにアルブミンと融合されている、アミノ融合タンパク質を開示している。
【0006】
しかしながら、これらの努力にもかかわらず、長時間持続する活性GLP−1は作製されていない。
【0007】
従って、特に糖尿病および肥満の分野において、糖尿病および肥満の治療に特に可能性のあるインスリン分泌促進作用を同様に有する、改良されたGLP−1ペプチド、またはエキセンディン−4もしくはPYYなどの他の薬剤の必要性が大いにある。従って、それらの低い毒性および治療上の利点を維持しながらin vivoでより長い作用時間をもたらすようにGLP−1、エキセンディン−4および他のインスリン分泌促進ペプチドを修飾する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、(a)(b)との融合体または複合体として存在する、例えばエキセンディン−4、PYY(例えば、3−26PYY)またはGLP−1(例えば、GLP−1(7−37)A8G突然変異体)であり得るインスリン分泌促進薬もしくは分子、またはインクレチン薬もしくは分子と、(b)(i)DOM 7h−14ドメイン抗体(dAb)(DOM 7h−14のアミノ酸配列は図1(h):配列番号8に示される)、(ii)DOM 7h−14−10ドメイン抗体(dAb)(DOM 7h−14−10のアミノ酸配列は図1(o):配列番号26に示される)またはDOM 7h−14−10 dAbの配列から4個までのアミノ酸変異を有するdAb、および(iii)DOM 7h−11−15 dAb(DOM 7h−11−15のアミノ酸配列は図1(p):配列番号27に示される)または(iv)DOM 7h−14−10 R108Cドメイン抗体(dAb)(DOM 7h−14−10のアミノ酸配列は図1(r)に示される)から選択される、血清アルブミンと特異的に結合するdAb(AlbudAb TM)とを含む、またはそれらからなる融合体または複合体である組成物を提供する。
【0009】
また、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、例えば、エキセンディン−4および/またはGLP−1、またはPYYと、dAb、例えば、DOM7h−14 dAb、DOM 7h−14−10 dAb、DOM 7h−11−15 dAbとを連結するアミノ酸リンカーまたは化学リンカーが場合により存在してもよい。リンカーは例えば、ヘリカルリンカー、例えば、図1(k):配列番号11に示される配列のヘリカルリンカーであってよく、または例えば図1(l):配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するgly−serリンカーであってもよい。
【0010】
ある実施形態では、本発明の融合体(または複合体)は、さらなる分子、例えばさらなるペプチドまたはポリペプチドを含むことができる。
【0011】
インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬(例えば、エキセンディンおよび/またはGLP−1)は、dAbのN末端またはC末端のいずれかとの融合体(または複合体)として存在することができる。
【0012】
ある実施形態では、本発明は、以下のもの:
(a)2xGLP−1(7−37)A8G DOM7h−14 dAb融合体(DAT0114、アミノ酸配列は図1(a):配列番号1に示される)、
(b)エキセンディン4(G4Sリンカー)3 DOM7h−14 dAb融合体(DAT0115、アミノ酸配列は図1(b):配列番号2に示される)、
(c)エキセンディン4−DOM7h−14 dAb融合体(DAT0116、アミノ酸配列は図1(c):配列番号3に示される)、
(d)エキセンディン4,ヘリカルリンカー,DOM7h−14 dAb融合体(DAT0117、アミノ酸配列は図1(d):配列番号4に示される)、
(e)GLP−1(7−37)A8G(G4Sリンカー)3 DOM7h−14 dAb融合体(DAT0118、アミノ酸配列は図1(e):配列番号5に示される)、
(f)GLP−1(7−37)A8G DOM7h−14 dAb融合体(DAT0119、アミノ酸配列は図1(f):配列番号6に示される)、
(g)GLP−1(7−37)A8G,ヘリカルリンカー,DOM7h−14 dAb融合体(DAT0120、アミノ酸配列は図1(g):配列番号7に示される)、
(h)エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−14−10融合体(DMS7139、アミノ酸配列は図1(m):配列番号24に示される)、
(i)エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−11−15融合体(DMS7143、アミノ酸配列は図1(n):配列番号25に示される)
から選択される融合体分子を含む、またはそれらからなるポリペプチドを提供する。
【0013】
本発明はまた、上記のアミノ酸配列、すなわち、配列番号1〜7および配列番号24〜25で示されるアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む、またはそれからなる複合体分子を提供する。
【0014】
ある実施形態では、本発明は、リシン(PYYの10番の位置に導入)および4リピートPEGリンカーを介して、C末端でアミド化されたPYY3−36と複合体化されたDOM 7h−14−10(R108C)AlbudAbである複合体分子を含む、またはそれからなるポリペプチドを提供する。このペプチド複合体のアミノ酸配列および構造は図14に示される。
【0015】
本発明はまた、エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−14−10融合体(DMS7139、アミノ酸配列は図1(m):配列番号24に示される)のアミノ酸配列、またはDMS7139のアミノ酸配列(アミノ酸配列は図1(m)に示される)から4個までのアミノ酸変化を有する融合体もしくは複合体分子を含む、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【0016】
DOM 7h−14は、血清アルブミンと結合するヒト免疫グロブリン単一可変ドメインすなわちdAb(Vk)であり、そのアミノ酸配列は図1(h):配列番号8に示される。図1(h):配列番号8に示されるアミノ酸配列では、DOM 7h−14 dAbのCDR領域が下線で示されている。
【0017】
DOM 7h−14−10は、血清アルブミンと結合するヒト免疫グロブリン単一可変ドメインすなわちdAbであり、そのアミノ酸配列は図1(o):配列番号26に示される。図1(o):配列番号26に示されるアミノ酸配列では、DOM 7h−14−10 dAbのCDR領域が下線で示されている。
【0018】
DOM 7h−11−15は、血清アルブミンと結合するヒト免疫グロブリン単一可変ドメインすなわちdAbであり、そのアミノ酸配列は図1(p):配列番号27に示される。図1(p):配列番号27に示されるアミノ酸配列では、DOM 7h−11−15 dAbのCDR領域が下線で示されている。
【0019】
本明細書において「融合体」とは、第1の部分としての、血清アルブミンと結合するDOM7h−14 dAbまたはDOM7h−14−10 dAbまたはDOM 7h−11−15 dAbと、第2の部分としての、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬とを含む融合タンパク質を表す。血清アルブミンと結合するdAbおよび薬物または薬剤は単一の連続するペプチド鎖の別個の部分として存在する。第1の部分(dAb)と第2の部分(インクレチン薬もまたはインスリン分泌促進薬)は、ペプチド結合を介して互いに直接結合させることもできるが、適当なアミノ酸リンカー、またはペプチドもしくはポリペプチドリンカーを介して結合させることもできる。適当であれば、別の部分(付加的部分)、例えば、ペプチドもしくはポリペプチド(例えば、第3、第4の部分)、および/またはリンカー配列が存在してもよい。第1の部分は、第1の部分のN末端、C末端の位置、または内部に存在することができる。ある実施形態では、融合タンパク質は、1つまたは2以上(例えば、1〜約20)のdAb部分を含む。
【0020】
本明細書において「複合体」とは、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、例えば、GLP−1、エキセンディン−4、PYY、例えば、PYY3−36が共有結合または非共有結合されている、血清アルブミンと結合するdAbを含む組成物を表す。インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬は、dAbに直接、または適当なリンカー部分、例えば、PEGリンカー部分を介して間接的に共有結合させることができる。この薬物または薬剤は、任意の適当な位置で、例えば、アミノ末端、カルボキシ末端または適当なアミノ酸側鎖(例えば、リジンのεアミノ基、またはシステインのチオール基)を介してdAbに結合させることができる。あるいはまた、該薬物または薬剤はdAbに直接的(例えば、静電相互作用、疎水性相互作用)、または間接的に(例えば、相補的結合相手の非共有結合によって(例えば、ビオチンとアビジン)、この場合、結合相手の一方が薬物または薬剤に共有結合され、その相補的結合相手がdAbと共有結合されている)非共有結合させることもできる。
【0021】
本発明はさらに、本発明の複合体または融合体、例えば、DAT0114、DAT0115、DAT0116、DAT0117、DAT0118、DAT0119およびDAT120、DMS7139またはDMS7143またはDMS7143のうちいずれかの(実質的に)純粋なモノマーを提供する。ある実施形態では、それは少なくとも純度98、99、99.5%または100%のモノマーである。
【0022】
本発明はまた、本明細書に記載の融合体をコードする核酸、例えば、DAT0114、DAT0115、DAT0116、DAT0117、DAT0118、DAT0119およびDAT120、DMS7139またはDMS7143をコードする核酸を提供し、ここで、その核酸配列は図2(配列番号13〜32)に示される。また、これらの核酸を含む宿主細胞も提供される。
【0023】
本発明はまた、DOM7h−14(配列番号8)、DOM7h−14−10(配列番号26)、DOM7h−11−15(配列番号27)およびDOM 7h−14−10R108C(配列番号42)から選択される、血清アルブミンと結合するdAb(AlbudAb(商標))をコードするアミノ酸も提供する。
【0024】
本発明はまた、DOM7h−14(配列番号23)、DOM7h−14−10(配列番号31)、DOM7h−11−15(配列番号32)およびDOM 7h−14−10R108C(配列番号44)から選択される、血清アルブミンと結合するdAbをコードする核酸を提供する。
【0025】
本発明はさらに、本発明の融合体を作製する方法を提供し、その方法は、本発明の融合体をコードする組換え核酸および/または構築物を含む宿主細胞を、該組換え核酸の発現に適した条件下で維持し、それによって融合体が産生されることを含む。
【0026】
本発明はまた、本発明の融合体または複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)も提供する。
【0027】
本発明はまた、本明細書に記載されているものなどの疾患または障害、例えば、高血糖症、耐糖能異常、β細胞不全、糖尿病(例えば、1型または2型糖尿病または妊娠糖尿病)もしくは肥満などの代謝性疾患、または過食を特徴とする疾患を有する個体を処置する方法を提供し、例えば、本発明は、例えばプラダーウィリィ症候群において食欲を抑制するために使用することができ、その方法は、該個体に治療上有効な量の本発明の融合体または複合体を投与することを含む。
【0028】
他の代謝障害には、限定されるものではないが、インスリン抵抗性、インスリン欠乏、高インスリン血症、高血糖症、異脂肪血症、高脂血症、高ケトン血症、高血圧症、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、腎不全、神経障害(例えば、自律神経障害、副交感神経神経障害および多発性神経障害)、網膜症、白内障、代謝障害(例えば、インスリンおよび/またはグルコース代謝障害)、内分泌障害、肥満、体重減少、肝臓障害(例えば、肝疾患、肝硬変、および肝臓移植関連障害)、およびこれらの疾患または障害と関連した症状が含まれる。
【0029】
さらに、本発明の化合物を用いて予防または治療することができる、糖尿病関連症状には、限定されるものではないが、高血糖症、肥満、糖尿病性網膜症、単神経障害、多発性神経障害、アテローム性動脈硬化、潰瘍、心疾患、脳卒中、貧血、壊疽(例えば、足および手の壊疽)、性的不全、感染症、白内障、腎機能低下、自律神経系の不調、白血球機能不全、手根管症候群、デュピュイトラン拘縮、および糖尿病性ケトアシドーシスが含まれる。
【0030】
本発明はまた、高血糖に関連する疾患を治療または予防する方法を提供し、その方法は、本発明の複合体もしくは融合体および/または医薬組成物の少なくとも一用量を患者または対象に投与することを含む。
【0031】
本発明はさらに、本発明の複合体もしくは融合体を用いて、患者のインスリン応答性を調節する方法、ならびに細胞によるグルコース取り込みを増加させる方法、および細胞のインスリン感受性を調節する方法に関する。また、患者において、インスリンの合成および放出を刺激する方法、インスリン取り込みに対する脂肪、筋肉または肝組織の感受性を高める方法、グルコース取り込みを刺激する方法、消化過程を遅くする方法、またはグルカゴン分泌を遮断する方法も提供され、その方法は、該患者に本発明の融合体もしくは複合体を投与することを含み、例えば、少なくとも一用量の本発明の薬物複合体もしくは融合体および/または医薬組成物を投与することを含む。
【0032】
本発明の融合体もしくは複合体および/または医薬組成物は、単独で投与することもできるし、あるいは他の分子または部分、例えば、ポリペプチド、治療用タンパク質および/または分子(例えば、インスリン、ならびに/または患者のインスリン感受性、体重、心疾患、高血圧症、神経障害、細胞代謝および/もしくはグルコース、インスリンもしくは他のホルモンレベルを調節する他のタンパク質(抗体を含む)、ペプチドまたは小分子)と併用投与することもできる。特定の実施形態では、本発明の複合体もしくは融合体は、インスリン(またはインスリン誘導体、類似体、融合タンパク質または分泌促進薬)と併用投与される。
【0033】
本発明はまた、上記の、例えば、高血糖症、糖尿病(1型もしくは2型または妊娠糖尿病)または肥満などの代謝性疾患のうちいずれかのような疾患または障害の処置用薬剤の製造のための、本発明の複合体または融合体の使用も提供する。
【0034】
本発明はまた、治療、診断または予防に用いる、本明細書に記載の融合体または複合体の使用に関する。
【0035】
本発明の融合体または複合体、例えば、融合体のdAb成分は、例えば、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体または少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域を付加することによって、または抗体ドメインと複合体化することによって、より大きな流体力学的サイズを持たせて半減期をさらに延長するように、さらに構成することができる。例えば、血清アルブミンと結合するdAbは、抗体の、より大きい抗原結合フラグメントとして構成することができる(例えば、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、IgG、scFvとして構成することができる)。
【0036】
本開示を通じて記載される本発明の他の実施形態において、本発明の融合体に「dAb」を使用する代わりに、当業者は、血清アルブミンと結合する、dAbのCDR、例えば、DOM 7h−14、DOM 7h−14−10またはDOM 7h−11−15のCDR(例えば、適当なタンパク質スキャフォールドまたは骨格(例えば、アフィボディー、SpAスキャフォールド、LDL受容体クラスAドメインまたはEGFドメイン)上にグラフトされたCDR)を含むドメインを使用可能であることも意図される。従って、本開示は全体として、dAbの代わりにこのようなドメインの開示を与えると解釈されるべきである。
【0037】
ある実施形態では、本発明は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、二重特異性リガンドまたは多重特異性リガンド(該リガンドは、血清アルブミンと結合する本発明の第1のdAb、例えば、DOM 7h−14、DOM 7h−14−10またはDOM 7h−11−15と、第1のdAbと同じまたは異なる結合特異性を有する第2のdAbとを含み、さらに多重特異性リガンドの場合には、場合によりさらなるdAbを含んでもよい)とを含む本発明の融合体または複合体を提供する。第2のdAb(またはさらなるdAb)は、場合により、例えば、FgFr 1cまたはCD5標的などの異なる標的と結合し得る。
【0038】
よって、一態様において、本発明は、非経口投与、例えば、皮下注射、筋肉注射もしくは静脈注射による送達、吸入、鼻腔送達、経粘膜送達、経口送達、患者の消化管への送達、直腸送達または眼内送達のための、本発明の融合体または複合体を提供する。一態様において、本発明は、皮下注射による送達、吸入、静脈送達、鼻腔送達、経粘膜送達、経口送達、患者の消化管への送達、直腸送達または眼内送達用の薬剤の製造における、本発明の融合体または複合体の使用を提供する。
【0039】
一態様において、本発明は、皮下注射、肺送達、静脈送達、鼻腔送達、経粘膜送達、経口送達、患者の消化管への送達、直腸送達または眼内送達による、患者への送達方法を提供し、該方法は、薬学上有効な量の本発明の融合体または複合体を患者に投与することを含む。
【0040】
一態様において、本発明は、本発明の融合体または複合体を含む、経口製剤、注射製剤、吸入製剤、ネブライザー製剤または眼用製剤を提供する。該製剤は、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤またはシロップ剤であり得る。一態様において、該組成物は、例えば、肥満治療用の減量飲料として市販される飲料として、経口投与することができる。一態様において、本発明は、患者に対する直腸送達用の製剤を提供し、該製剤は、例えば、坐剤として提供することができる。
【0041】
GLP−1化合物の非経口投与用組成物は、例えば、国際公開第WO03/002136(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように調製することができる。
【0042】
ある種のペプチドの鼻腔投与用組成物は、例えば、欧州特許第272097号(Novo Nordisk A/s)、または国際公開第WO93/18785号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように調製することができる。
【0043】
「対象」または「個体」とは、本明細書では、限定されるものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ,ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、齧歯類またはネズミ種を含む哺乳類などの動物を含むと定義される。
【0044】
本発明はまた、本発明の組成物(例えば、本発明の複合体もしくは融合体)を対象(例えば、患者)に投与する際に用いるための、組成物(例えば、本発明の複合体または融合体)、薬物送達デバイスおよび場合により使用説明書を含むキットを提供する。組成物(例えば、複合体または融合体)は、凍結乾燥製剤などの製剤として提供することができる。ある実施形態において、薬物送達デバイスは、注射器、吸入器、鼻腔内または眼用投与デバイス(例えば、噴霧器、点眼器または点鼻器)、および無針注射器からなる群から選択される。
【0045】
本発明の組成物(例えば、複合体または融合体)は、保存のために凍結乾燥し、使用前に適当な担体で再構成することができる。任意の適当な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、固形物乾燥)および/または再構成法を使用することができる。当業者ならば、凍結乾燥および再構成が様々な程度の抗体活性の損失につながる可能性があること、そして使用レベルはそれを補うように調整しなければならないことが分かるであろう。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される凍結乾燥組成物(例えば、薬物複合体、薬物融合体)を含む組成物を提供する。好ましくは、凍結乾燥組成物(例えば、薬物複合体、薬物融合体)は、再び水和し際にその活性(例えば、血清アルブミンに対する結合活性)の損失は、約20%以下、または約25%以下、または約30%以下、または約35%以下、または約40%以下、または約45%以下、または約50%以下である。活性は、凍結乾燥前にその組成物の効果をもたらすのに必要とされる組成物(例えば、薬物複合体、薬物融合体)の量である。例えば、望ましい血清濃度を達成し、望ましい期間それを維持するのに必要とされる複合体または融合体の量である。組成物(例えば、薬物複合体、薬物融合体)の活性は、凍結乾燥前に任意の適当な方法を用いて測定することができ、活性の損失量を測定するためには、再水和後に同じ方法を用いて活性を測定することができる。
【0046】
本発明はまた、本発明の融合体または複合体を含む徐放性製剤を提供し、このような徐放性製剤は、本発明の融合体または複合体を、例えば、ヒアルロン酸、マイクロスフェアまたはリポソーム、および他の薬学医上または薬理学上許容される担体、賦形剤および/または希釈剤と組み合わせて含むことができる。このような徐放性製剤は、例えば、坐剤の形であり得る。
【0047】
一態様において、本発明は、本発明の融合体または複合体と、薬学上または薬理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明はまた、C末端にアミノ酸配列AMAまたはAWAを有する改変されたリーダー配列(このリーダー配列は野生型配列ではない)を提供する。この改変されたリーダー配列は、OmpA−AMAもしくは−AWA;またはOmpT−AMAもしくは−AWA;またはGAS−AMAもしくは−AWAであり得る。
【0049】
改変されたリーダー配列は宿主細胞における異種ポリペプチドの発現のために使用することができる。異種ポリペプチドはインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬を含む、またはそれからなり得る。異種ポリペプチドは、ドメイン抗体(dAb)、例えば血清アルブミンと結合するdAbを含む、またはそれからなり得る。
【0050】
改変されたリーダーによる発現のための異種ポリペプチドは、(a)(b)との融合体または複合体として存在する、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、(b)dAbとを含むかまたはそれらからなる融合体または複合体組成物であって、(a)は、(b)dAb、例えば、血清アルブミンと結合し、図1(h)(配列番号8)に示されるアミノ酸配列を有するDOM 7h−14 Vkドメイン抗体(dAb)、図1(o)(配列番号26)に示されるアミノ酸配列を有するDOM 7h−14−10 dAb、および図1(p)(配列番号27)に示されるアミノ酸配列を有するDOM 7h−11−15 dAbから選択されるdAbとの融合体または複合体として存在する、融合体または複合体組成物であり得る。
【0051】
また、改変されたリーダー配列は、
(a)2xGLP−1(7−37)A8G DOM7h−14 dAb融合体(DAT0114、アミノ酸配列は図1(a):配列番号1に示される)、
(b)エキセンディン4(G4Sリンカー)3 DOM7h−14 dAb融合体(DAT0115、アミノ酸配列は図1(b):配列番号2に示される)、
(c)エキセンディン4−DOM7h−14 dAb融合体(DAT0116、アミノ酸配列は図1(c):配列番号3に示される)、
(d)エキセンディン4,ヘリカルリンカー,DOM7h−14 dAb融合体(DAT0117、アミノ酸配列は図1(d):配列番号4に示される)、
(e)GLP−1(7−37)A8G(G4Sリンカー)3 DOM7h−14 dAb融合体(DAT0118、アミノ酸配列は図1(e):配列番号5に示される)、
(f)GLP−1(7−37)A8G DOM7h−14 dAb融合体(DAT0119、アミノ酸配列は図1(f):配列番号6に示される)、
(g)GLP−1(7−37)A8G,ヘリカルリンカー,DOM7h−14 dAb融合体(DAT0120、アミノ酸配列は図1(g):配列番号7に示される)、
(h)エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−14−10融合体(DMS7139、アミノ酸配列は図1(m):配列番号24に示される)、
(i)エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−11−15融合体(DMS7143、アミノ酸配列は図1(n):配列番号25に示される)
から選択される融合体を含む、またはそれからなる異種ポリペプチドの発現のために使用可能である。
【0052】
また、改変されたリーダーにより発現される異種ポリペプチドは、上記のアミノ酸配列、すなわち、配列番号1〜7および配列番号24〜25で示されるアミノ酸配列との複合体分子を含む、またはそれからなることもできる。
【0053】
また、改変されたリーダーにより発現される異種ポリペプチドは、エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−14−10融合体(DMS7139、アミノ酸配列は図1(m):配列番号24に示される)のアミノ酸配列、またはDMS7139のアミノ酸配列(アミノ酸配列は図1(m)に示される)から4個までのアミノ酸変化を有する融合体もしくは複合体分子を含む、またはそれからなることもできる。
【0054】
発現のための宿主細胞は、微生物宿主細胞、原核生物宿主細胞、グラム陰性菌宿主細胞または大腸菌宿主細胞であり得る。
【0055】
また、(i)インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、(ii)インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬からインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬のN末端のアミノ酸が2個少ないものとの混合物を作製する方法(プロセス)も提供され、該方法は、宿主細胞において該インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の1番の位置の前での切断と3番の位置の前での切断を生じるリーダー配列を用いて(i)を発現させるステップを含む。該インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬は、例えば、上記で定義されたような血清アルブミンと結合するdAbとの融合体または複合体の形態であり得る。本発明はまた、上記の方法によって得られた、または得ることができる混合物も提供する。
【0056】
リーダー配列はompA、ompT、GAS、または上記の改変された配列のいずれか1つであり得る。該方法は、異種発現によって宿主細胞で該混合物を産生するステップを含み得る。該宿主細胞は微生物宿主細胞、原核生物宿主細胞、グラム陰性菌宿主細胞または大腸菌宿主細胞であり得る。
【0057】
インスリン分泌促進薬およびインクレチン薬、例えば、GLP−1は、GLP−1Rによって媒介され得る多様な治療効果(例えば、膵臓からのグルコース依存性インスリン分泌を刺激するものなど)を有する。また、DPPIV切断産物であるGLP−1 9−36アミド(またはGLP−1 9−37)によって媒介され得る、ある種の効果が存在することもすでに提案されている。GLP−1 9−37は膵臓からのグルコース感受性インスリン分泌の刺激には活性が無いが、おそらくはGLP−1Rにより駆動されるものではない機構を介する他の生物学的効果を有することがすでに提案されている。GLP−1種の分子に関するこれまでのほとんどの臨床応用は膵臓のGLP−1Rを介して糖尿病を標的としていたので、エキセンディン−4のような非ヒトGLP−1類似体を使用するか、またはアルビグルチド(Albiglutide)(Syncria)で用いられているようなGLP−1の8もしくは9個のアミノ酸を突然変異させることによって、あるいは該ペプチドのアミノ末端における化学的修飾または合成的修飾によって、ペプチドにおいてDPPIVに対する安定性が操作されている。さらなるアプローチとしては、いずれの内因性分泌GLP−1の半減期も延長する、ビルダグリプチン(Galvus)およびシタグリプチン(Januvia)などの小分子DPPIV阻害剤を用いたDPPIV活性の全面的遮断であった。これらのアプローチは双方とも、DPPIV代謝産物であるGLP−1 9−36アミドまたはGLP−1 9−37のレベルを効果的に低下させる。
【0058】
しかしながら、DPPIV代謝産物であるGLP−1 9−36アミドまたはGLP−1 9−37は、望ましい生物学的効果を有することもすでに提案されている。いくつかの研究は、GLP−1 7−36の分泌後すぐに生成され、通常の条件下でGLP−1 7−37よりも豊富なGLP−1 7−36アミドのDPPIV切断産物、すなわち、GLP−1 9−36アミドが生物学的効果を有し得ることを示した。この機構に関しては、以下に挙げるような、経路の異なるいくつかの作用が提案されている。
【0059】
GLP−1(9−37)はGLP−1Rにおけるアンタゴニストである(例えば、Eur J Pharmacol. 1996 Dec 30;318(2−3):429−35参照)。
グルカゴン様ペプチド−1−(9−36)アミドは、イヌにin vivo投与した後のグルカゴン様ペプチド−1−(7−36)アミドの主要代謝産物であり、膵臓受容体に対してアンタゴニストとして働き(Knudsen LB, Pridal L. J Biol Chem. 1997 Aug 22; 272(34): 21201−6)、膵臓グルカゴン様ペプチド−1受容体の強力なアンタゴニストである(Montrose−Rafizadeh C, Yang H, Rodgers BD, Beday A, Pritchette LA, Eng J. J Biol Chem. 1997 Aug 22;272(34):21201−6)。
【0060】
GLP−1(9−37)は、非インスリン依存性機構によって、異なる機構を介してGLP−1(7−37)にシグナルを伝達する(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002 Apr;282(4):E873−9.)。
GLP−1−(9−36)アミドは、麻酔状態のブタにおいて、インスリン分泌に関わりのない機構によって血糖を低下させる(Deacon CF, Plamboeck A, Moller S, Holst JJ.)。
【0061】
あるいは、肥満個体においてインスリン感受性を高める働きをすることによる(Obesity (Silver Spring). 2008 Jul; 16(7):1501−9. Epub 2008 Apr 17)。
【0062】
GLP−1(7−36)アミドの切断産物であるGLP−1(9−36)アミドは血糖調節ペプチドである(Elahi D, Egan JM, Shannon RP, Meneilly GS, Khatri A, Habener JF, Andersen DK)。
【0063】
エキセンディンのアミノ酸が2個少ない種に関しては、DPPIV切断の結果としてこれが生じないことからこの活性は示されなかったが、これはエキセンディン−4のアミノ酸が2個少ない種の場合である可能性もある。エキセンディン−4はまた、心臓作用およびその他の作用に関して、GLP−1R依存性および非依存性の経路を介して働くことも示されている(Circulation. 2008;117:2340‐2350: Cardioprotective and Vasodilatory Actions of Glucagon−Like Peptide 1 Receptor Are Mediated Through Both Glucagon−Like Peptide 1 Receptor‐Dependent and ‐Independent Pathways Kiwon Ban, MSc; M. Hossein Noyan−Ashraf, PhD; Judith Hoefer, MD; Steffen−Sebastian Bolz, MD, PhD; Daniel J. Drucker, MD; Mansoor Husain, MD)。このことにより、エキセンディンの全長型とアミノ酸が2個少ない形態の双方に対して同等または並行した活性が実際に存在する可能性が浮上する。
【0064】
少なくとも2つのプロセス経路が、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬とアミノ酸が2個少ない形態の混合物を作製するために利用可能である。例えば、全長GLP−1 7−36アミド(AlbudAbなどの所望の半減期延長形式における)とGLP−1 9−36アミド(または所望の融合タンパク質)の個別生産があり得る。その後、これらを混合して、GLP−1 7−36分子とGLP−1 9−36分子の所望の比率で生成物を得ることができる。2つの並行GMPプロセスを用いて薬剤混合物を得てもよい。
【0065】
もう1つの方法は、シグナル配列の除去を担うシグナルペプチダーゼ酵素が単一の切断部位を持たず、むしろ2つの切断部位を有する分泌シグナルを選択することである。これらは用いる分泌シグナルによって定義される比率で切断される。従って、選択された分泌シグナルによって、生産比率は、
1番の位置の前で100%の切断となって、GLP−1 7−36(もしくは他のインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬全長分子)が得られるか;または3番の位置の前で100%の切断となって、GLP−1 9−36(もしくはアミノ酸配列が2個少ない他のインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬)が得られるか;または全長もしくは2個少ない形態のそれぞれについて0〜100%の間のいずれかであり得る。例えば、比率は、
全長型90%:アミノ酸が2個少ない形態10%、
全長型80%:アミノ酸が2個少ない形態20%、
全長型75%:アミノ酸が2個少ない形態25%、
全長型50%:アミノ酸が2個少ない形態50%、
全長型25%:アミノ酸が2個少ない形態75%、
全長型20%:アミノ酸が2個少ない形態80%、または
全長型10%:アミノ酸が2個少ない形態90%
であり得る。
【0066】
所望の比率を得るのに適当なリーダー配列を選択することで、ある単一の宿主細胞からの生産が可能となる。これはGMPプロセスに関して主要な利点である。これにより、内因性酵素の安定性を保持しながら、両種の潜在的治療効果の活用が可能となる。
【0067】
他の内因性ペプチドおよび類似体の全範囲もアミノ末端ジペプチダーゼで処理することにより、元の全長分子および/またはジペプチダーゼ感受性種が生じる。従って、このアプローチは、1回の製造工程で、アミノ酸数個分だけ長さの異なる(このアミノ酸の違いは、シグナルペプチダーゼの認識部位の一部を含む)2種の所定の混合物を得ることができる、いずれのペプチドおよびタンパク質の生産にも有用であり得る。このプロセスの利用は、哺乳類、真核生物または原核生物宿主細胞、例えば、大腸菌で可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1−1】(a)DAT0114(配列番号1)、(b)DAT0115(配列番号2)、(c)DAT0116(配列番号3)、(d)DAT0117(配列番号4)、(e)DAT0118(配列番号5)、(f)DAT0119(配列番号6)、(g)DAT0120(配列番号7)、(h)DOM 7h−14(配列番号8)(dAb)(CDRが下線で示される)、(i)GLP−1 7−37 A(8)G(配列番号9)、(j)エキセンディン−4(配列番号10)、(k)ヘリカルリンカー(配列番号11)、(l)Gly−serリンカー(配列番号12)、(m)DMS 7139(配列番号24)、(n)DMS 7143(配列番号25)、(o)DOM 7h−14−10(配列番号26)(dAb)(CDRが下線で示される)、(p)DOM 7h−11−15(配列番号27)(dAb)(CDRが下線で示される)、(q)OmpT AWAシグナルペプチド(リーダー)(配列番号28)、(r)DOM7h−14−10R108C(配列番号42)、(s)PYY 3−36(10番の位置にリシンを有する)(配列番号43)のアミノ酸配列を示す。
【図1−2】図1−1の続き。
【図1−3】図1−1の続き。
【図2−1】(a)DAT0114(哺乳類構築物)(配列番号13)、(b)DAT0115(哺乳類構築物)(配列番号14)、(c)DAT0115(大腸菌構築物用に至適化されたもの)(配列番号15)、(d)DAT0116(哺乳類構築物)(配列番号16)、(e)DAT0116(大腸菌構築物用に至適化されたもの)(配列番号17)、(f)DAT0117(哺乳類構築物)(配列番号18)、(g)DAT0117(大腸菌構築物用に至適化されたもの)(配列番号19)、(h)DAT0118(哺乳類構築物)(配列番号20)、(i)DAT0119(哺乳類構築物)(配列番号21)、(j)DAT0120(哺乳類構築物)(配列番号22)、(k)Dom7h−14(配列番号23)、(l)DMS 7139(配列番号29)、(m)DMS 7143(配列番号30)、(n)Dom7h−14−10(配列番号31)(dAb)、(o)DOM7h−11−15(配列番号32)(dAb)、(p)Omp AWAシグナルペプチド(配列番号33)、(q)DOM 7h−14−10 R108C(dAb)(配列番号44)、(r)カニクイザル(cynomologous monkey)のcDNA(配列番号45)、(s)オリゴヌクレオチド1(配列番号47)、(t)オリゴヌクレオチド2(配列番号48)、(u)大腸菌での発現のためのDM7139の核酸配列(配列番号50)の核酸配列を示す。
【図2−2】図2−1の続き。
【図2−3】図2−1の続き。
【図2−4】図2−1の続き。
【図2−5】図2−1の続き。
【図3a】(a)は、マウス肥満モデルにおけるDAT0115投与による用量依存的体重減少を示す。
【図3b】(b)は、マウス肥満モデルにおけるDAT0115投与による毎日の摂食量を示す。
【図4】DAT0115のDSCを示す。実線はDAT0115のトレース、点線は非2状態モデルへの当てはめ。
【図5】リゾチームのDSCを示す。実線はリゾチームのトレース、点線は非2状態モデルへの当てはめ(トレースが重複しているために点線は見えない)。
【図6】DAT0115のSEC MALLSを示す。
【図7】DAT0117のSEC MALLSを示す。
【図8】DAT0120のSEC MALLSを示す。
【図9】リーダー:(a)ompA(大腸菌由来)(配列番号34)、(b)ompA−AMA(人工配列)(配列番号35)、(c)ompA−AWA(人工配列)(配列番号36)、(d)ompT(大腸菌由来)(配列番号37)、(e)ompT−AMA(人工配列)(配列番号38)、(f)GAS(S.セレビシエ(S. cerevisiae)由来)(配列番号39)、(g)GAS−AMA(人工配列)(配列番号40)、(h)GAS−AWA(人工配列)(配列番号41)、(i)Pel B(エルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora))(配列番号46)、(j)Mal E(人工配列)(配列番号49)のアミノ酸配列を示す。
【図10】質量分析によって分析した精製DMS7139を示す。
【図11】DAT0115と対照、DMS7139と対照、およびDMS7139とDAT0115の間の比較を含む、血糖低下の統計的有意性を示す。(a)は実験計画を示し、(b)はグルコースAUCのグラフを示す。水平線が重ならない信頼区間は有意である。
【図12】DMS7139の反復投与は、DOM7h−14対照に比べて、HbA1cの用量依存的減少を示すことを示す。
【図13】DIOマウス肥満モデルにおいて、DAT0115およびDMS7139は、DOM7h−14対照に比べて、摂食量および体重の用量依存的減少を示すことを示す。グラフでは、mcg=マイクログラム。
【図14】リシン(PYYの10番の位置に導入)および4リピートPEGリンカーを介して、C末端でアミド化されたPYY3−36と複合体化されたDOM 7h−14−10(R108C)AlbudAbであるペプチド複合体を示す。直線は、DOM7h−14−10(R108C)AlbudAbの遊離のC末端システインおよびPYY配列の10番の位置のリシンと共有結合しているリンカーを表す。このペプチド複合体のアミノ酸配列および構造は下記の通りである。
【図15】DMS7605はビヒクル対照に比べて用量依存的体重減少を示したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
発明の詳細な説明
本明細書において、本発明を、実施形態を参照して、明瞭かつ簡潔な明細書を記載できるような方法で説明した。実施形態は本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分割したりできるものと意図され、また、そのように考えるべきである。
【0070】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション法および生化学分野の)当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を持つ。分子的、遺伝学的および生化学的方法(一般的には、参照により本明細書に組み入れるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.参照)および化学的方法に関して標準的な技術を用いる。
【0071】
本明細書において「インスリン分泌促進薬」とは、ホルモンであるインスリンの合成もしくは発現、または活性を刺激することができる化合物、あるいはその合成もしくは発現または活性の刺激を引き起こすことができる化合物を意味する。インスリン分泌促進薬の既知の例としては、限定されるものではないが、例えば、グルコース、GIP、GLP、エキセンディン(例えば、エキセンディン−4およびエキセンディン−3)、PYYおよびOXMが含まれる。
【0072】
本明細書において「インクレチン」とは、グルコースレベルが正常である場合、または特にグルコースレベルが上昇している場合に、放出されるインスリン量の増加を引き起こす、消化管ホルモンの一種を意味する。例としては、GLP−1、GIP、OXM、PYY(例えば、PYY3−36)、VIPおよびPP(膵臓ポリペプチド)が挙げられる。
【0073】
本明細書において、ポリペプチドに関して「類似体」とは、ペプチドの1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている、かつ/または1以上のアミノ酸残基がペプチドから欠失されている、かつ/または1以上のアミノ酸残基がペプチドから欠失されている、かつ/または1以上のアミノ酸残基がペプチドに付加されている、修飾されたペプチドを意味する。このようなアミノ酸残基の付加または欠失はペプチドのN末端でも、かつ/またはペプチドのC末端でも起こる可能性があり、あるいはペプチド内部にある場合もある。簡単な体系を用いてGLP−1の類似体が表される:例えば、GLP−1 A8G(7−37アミノ酸)は、天然の8位のアラニンがグリシン残基で置換されたGLP−1類似体を表す。ペプチド類似体およびその誘導体の式は、IUPAC−IUB命名法に従って使用されるアミノ酸の標準的な1文字略号を用いて記される。
【0074】
本明細書において「断片」とは、ペプチドに関して使用される場合、天然の完全なポリペプチドのアミノ酸配列の全てではないが一部が同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。断片は、「独立」であっても、あるいはそれらが一部または一領域をなしている、より大きなポリペプチド内に、単一のより大きなポリペプチド中の単一の連続した領域として含まれる。例としては、天然のGLP−1の断片は、天然アミノ酸1〜36のうち、アミノ酸7〜36を含む。その上、ポリペプチドの断片は、天然の部分配列の変異体であってもよい。例えば、天然GLP−1のアミノ酸7〜36を含むGLP−1の断片は、その部分配列内にアミノ酸置換を有する変異体であってもよい。
【0075】
本発明の適当なインスリン分泌促進薬の例としては、GLP−1、GLP−1誘導体、GLP−1類似体、またはGLP−1類似体の誘導体が含まれる。それに加えて、エキセンディン−4、エキセンディン−4類似体およびエキセンディン−4誘導体または断片、ならびにエキセンディン−3、エキセンディン−3誘導体およびエキセンディン−3類似体も含まれる。
【0076】
本明細書において「GLP−1」とは、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−35)、GLP−1(7−38)、GLP−1(7−39)、GLP−1(7−40)、GLP−1(7−41)、GLP−1類似体、GLP−1ペプチド、GLP−1誘導体もしくは突然変異体もしくは断片、またはGLP−1類似体の誘導体を意味する。このようなペプチド、突然変異体、類似体および誘導体はインスリン分泌促進薬である。
【0077】
例えば、GLP−1は、図1(i):配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するGLP−1(7−37)A8G突然変異体であり得る。
【0078】
さらなるGLP−1類似体が、GLP−1(7−36)およびその機能的誘導体を含み、かつ、GLP−1(1−36)もしくはGLP−1(1−37)のインスリン分泌促進活性を上回るインスリン分泌促進活性を有するペプチド断片、ならびにインスリン分泌促進薬としてのそれらの使用に関する国際特許出願第90/11296号(The General Hospital Corporation)に記載されている(特に、本発明で用いる薬物の例として、参照により本明細書に組み入れる)。
【0079】
国際特許出願第91/11457号(Buckleyら)は、本発明のGLP−1薬としても有用であり得る、活性GLP−1ペプチド7−34、7−35、7−36および7−37の類似体を開示している。
【0080】
本明細書において「エキセンディン−4ペプチド」とは、エキセンディン−4(1−39)、エキセンディン−4類似体、エキセンディン−4ペプチドの断片、エキセンディン−4誘導体、またはエキセンディン−4類似体の誘導体を意味する。このようなペプチド、断片および誘導体はインスリン分泌促進薬である。エキセンディン−4(1−39)のアミノ酸配列は図1(j):配列番号10に示される。
【0081】
本発明に有用なさらなるエキセンディン類似体が、PCT特許公報第WO99/25728号(Beeley et al)、同第WO99/25727号(Beeley et al)、同第WO98/05351号(Young et al)、同第WO99/40788号(Young et al)、同第WO99/07404号(Beeley et al)および同第WO99/43708号(Knudsen et al)に記載されている(特に、本発明で用いる薬物の例として、参照により全て本明細書に組み入れる)。
【0082】
本明細書において「ペプチド」とは、ペプチド結合によって互いに連結された約2〜約50個のアミノ酸を表す。
【0083】
本明細書において「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも約50個のアミノ酸を表す。ポリペプチドは一般に三次構造を含み、折り畳まれて機能的ドメインとなっている。
【0084】
本明細書において「ディスプレイ系」とは、ポリペプチドまたはペプチドの集合体が、所望の特性、例えば、物理的、化学的または機能的特性に基づく選択に利用可能な系を表す。ディスプレイ系は、ポリペプチドまたはペプチド(例えば、溶液中、適当な担体上に固定化)の適当なレパートリーであり得る。また、ディスプレイ系は、細胞発現系(例えば、形質転換細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞または形質導入細胞などにおける核酸ライブラリーの発現、およびコードされているポリペプチドの細胞表面上でのディスプレイ)または無細胞発現系(例えば、エマルションコンパートメント化およびディスプレイ)を用いる系であってもよい。典型的なディスプレイ系は、核酸のコード機能と、核酸によってコードされるポリペプチドまたはペプチドの物理的、化学的および/または機能的特性とを関連づけるものである。このようなディスプレイ系を用いると、所望の物理的、化学的および/または機能的特性を有するポリペプチドまたはペプチドを選択することができ、選択されたポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸を容易に単離または回収することができる。核酸のコード機能と、ポリペプチドまたはペプチドの物理的、化学的および/または機能的特性とを関連づけるいくつものディスプレイ系が当技術分野で知られており、例えば、バクテリオファージディスプレイ(ファージディスプレイ、例えば、ファージミドディスプレイ)、リボソームディスプレイ、エマルションコンパートメント化およびディスプレイ、酵母ディスプレイ、ピューロマイシンディスプレイ、細菌ディスプレイ、プラスミド上でのディスプレイ、共有結合ディスプレイなどがある(例えば、欧州特許第0436597号(Dyax)、米国特許第6,172,197号(McCafferty et al)、米国特許第6,489,103号(Griffiths et al)参照)。
【0085】
本明細書において「機能的」とは、特異的結合活性などの生物学的活性を有するポリペプチドまたはペプチドを表す。例えば、「機能的ポリペプチド」とは、抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、その抗原結合部位を介して標的抗原と結合する。
【0086】
本明細書において「標的リガンド」とは、ポリペプチドまたはペプチドが特異的または選択的に結合するリガンドを表す。例えば、ポリペプチドが抗体またはその抗原結合フラグメントである場合には、その標的リガンドは任意の望ましい抗原またはエピトープであり得る。標的抗原との結合は、ポリペプチドまたはペプチドが機能的であることによるものである。
【0087】
本明細書において抗体は、自然に抗体を産生する任意の種に由来するものであれ、組換えDNA技術によって作製されたものであれ、血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクト体、酵母または細菌から単離されたものであれ、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE、またはフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディー)を表す。
【0088】
本明細書において「抗体フォーマット」とは、その構造に抗原に対する結合特異性を付与するように1以上の抗体可変ドメインを組み込むことができる、任意の適当なポリペプチド構造を表す。キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記のいずれかの抗原結合フラグメント(例えば、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント)、単一抗体可変ドメイン(例えば、dAb、V、VHH、V)、ならびに前記のいずれかの修飾形(例えば、ポリエチレングリコールもしくは他の適当なポリマーまたはヒト化VHHの共有結合による修飾)など、種々の適当な抗体フォーマットが当技術分野で知られている。
【0089】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」とは、他のV領域またはドメインとは独立に、抗原またはエピトープと特異的に結合する抗体可変ドメイン(V、VHH、V)を表す。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを有するフォーマット(例えば、ホモまたはヘテロ多量体)で存在することもできるが、この場合、他の領域またはドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合には必要とされない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変ドメインとは独立に抗原と結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。「単一免疫グロブリン可変ドメイン」は、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。「単一抗体可変ドメイン」は、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインは、ある実施形態では、ヒト抗体可変ドメインであるが、齧歯類(例えば、国際公開第WO00/29004号に開示、その内容は参照によりその全てが本明細書に組み入れられる)、テンジクザメ、およびラクダ科動物のVHH dAbなどの他種由来の単一抗体可変ドメインも含まれる。ラクダ科動物VHHは、もともと軽鎖を欠いた重鎖抗体を産生するラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。VHHはヒト化することができる。
【0090】
「ドメイン」は、タンパク質の残りの部分とは独立した三次構造を有する、折り畳まれたタンパク質構造である。一般に、ドメインは、タンパク質の個別の機能的特性に関与しており、多くの場合、タンパク質の残りの部分および/またはそのドメインの機能を失うことなく、他のタンパク質に付加したり、取り除いたり、移したりすることができる。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む、折り畳まれたポリペプチドドメインである。従って、これには、完全な抗体可変ドメイン、および例えば1以上のループが、抗体可変ドメインに特徴的でない配列で置き換えられているなどの改変された可変ドメイン、あるいは末端切断されているか、またはN末端もしくはC末端伸長部を含む抗体可変ドメイン、ならびに少なくとも全長ドメインの結合活性および特異性を保有する、折り畳まれた可変ドメインフラグメントが含まれる。
【0091】
「ライブラリー」とは、異種ポリペプチドまたは核酸の混合物を表す。ライブラリーは、それぞれが単一のポリペプチドまたは核酸配列を有するメンバーから構成される。この点で、「ライブラリー」は、「レパートリー」と同義である。ライブラリーメンバー間の配列の相違が、ライブラリーに存在する多様性を担っている。ライブラリーは、ポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形をとってもよいし、核酸のライブラリーで形質転換された、例えば、細菌、ウイルス、動物または植物細胞などの生物または細胞の形をとってもよい。一実施形態では、個々の生物または細胞は、1つだけまたは限られた数のライブラリーメンバーを含む。一実施形態において、核酸は、その核酸によってコードされるポリペプチドの発現を可能にするために、発現ベクターに組み込まれている。従って、ある態様において、ライブラリーは、宿主生物の集団の形をとってもよく、各生物は、それを発現させればその対応するポリペプチドメンバーを生成することができる核酸形態でライブラリーの単一メンバーを含む、1コピー以上の発現ベクターを含む。従って、宿主生物の集団は、多様なポリペプチドからなる大きなレパートリーをコードする能力を有している。
【0092】
本明細書において「用量」とは、1回で全量を(単位用量)、または所定の時間間隔で2回以上の投与で、対象に投与される融合体または複合体の量を表す。例えば、用量は、1日(24時間)(1日量)、2日、1週間、2週間、3週間または1ヶ月以上の間に(例えば、1回投与で、または2回以上の投与で)対象に投与される融合体または複合体の量を表し得る。投与間隔は、任意の望ましい時間とすることができる。
【0093】
「半減期」とは、融合体または複合体の血清濃度または血漿濃度がin vivoで、例えば、自然のメカニズムによる分解および/または排出または隔離によって50%だけ減少するのにかかる時間を表す。本発明の融合体または複合体はin vivoで安定化されており、その半減期は、分解および/または排出または隔離に抵抗する血清アルブミン分子、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)と結合することによって長くなる。これらの血清アルブミン分子は、それ自体in vivoで長い半減期を有する天然タンパク質である。分子の半減期は、その機能的活性がin vivoで、半減期延長分子に特異的でない類似の分子よりも長期間持続するならば延長されている。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的なdAbとインクレチン薬またはインスリン分泌促進薬、例えば、GLP−1またはエキセンディンとを含む本発明の融合体または複合体は、HSAに対する特異性が無く、HSAとは結合せずに別の分子と結合する、同じリガンドと比較される。例えば、それは細胞上の第3の標的と結合することができる。一般に、半減期は、10%、20%、30%、40%、50%またはそれを超えて延長される。2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍またはそれを超える範囲での半減期の延長が可能である。その代わりに、またはそれに加えて、最大30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍までの範囲での半減期の延長が可能である。
【0094】
本明細書において「流体力学的サイズ」とは、水溶液中での分子の拡散に基づいた、分子(例えば、タンパク質分子、リガンド)の見かけの大きさを表す。溶液中でのタンパク質の拡散または運動を分析処理して、タンパク質の見かけの大きさを導き出すことができるが、この大きさはタンパク質粒子の「ストークス半径」または「流体力学的半径」によって示される。タンパク質の「流体力学的半径」は、質量と形状(立体構造)の両方に依存するので、同じ分子質量を有する2つのタンパク質でも、タンパク質の全体的な立体構造に基づいて異なる流体力学的サイズを有することがある。
【0095】
2つの配列間の「相同性」または「同一性」または「類似性」(これらの用語は本明細書において互換的に用いられる)の計算は以下のように行われる。配列を、最適な比較ができるようにアラインする(例えば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸もしくは核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、非相同配列は、比較の目的で無視することができる)。一実施形態において、比較のためにアラインされる参照配列の長さは、その参照配列の長さの少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められているならば、その分子はその位置で同一である(本明細書においてアミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と同等である)。2配列間の同一性%は、2配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れ、配列が共有する同一位置の数の関数である。本明細書で定義される、アミノ酸およびヌクレオチド配列アラインメントおよび相同性、類似性もしくは同一性は、アルゴリズムBLAST 2 Sequencesによって、デフォルトパラメーターを用いて作製し、決定することができる(Tatusova, T. A. et al,, FEMS Microbiol Lett, 174:187−188 (1999))。
【0096】
核酸、宿主細胞:
本発明は、本明細書に記載された本発明の融合体(例えば、配列番号13〜23によってコードされるもの)をコードする、単離されたおよび/または組換え核酸に関する。
【0097】
本明細書において「単離された」と称される核酸は、そのもとの環境中(例えば、細胞内、またはライブラリーなどの核酸混合物中)の他の材料(例えば、ゲノムDNA、cDNAおよび/またはRNAなどの他の核酸)から分離された核酸である。単離された核酸は、ベクターの一部として単離することもできる(例えば、プラスミド)。
【0098】
本明細書において「組換え」と称される核酸は、例えば制限酵素、相同組換え、ウイルスなどを用いたベクターまたは染色体へのクローニングといった、人為的組換えによる方法を含む、組換えDNA法によって作製された核酸、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて調製された核酸である。
【0099】
本発明はまた、本明細書に記載の本発明の融合体をコードする核酸を含む(1以上の)組換え核酸または発現構築物を含む、組換え宿主細胞、例えば、哺乳動物または微生物に関する。また、本明細書に記載の本発明の融合体を調製する方法も提供され、該方法は、本発明の組換え宿主細胞、例えば、哺乳動物または微生物を、融合ポリペプチドの発現に適当な条件下で維持することを含む。該方法はさらに、必要に応じて、融合体を単離または回収するステップを含むことができる。
【0100】
例えば、本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸分子(すなわち、1以上の核酸分子)、またはこのような核酸分子を含む発現構築物(すなわち、1以上の構築物)を、選択された宿主細胞に適した任意の方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)を用いて、その核酸分子が1以上の発現制御エレメント(例えば、ベクター内のエレメント、細胞内プロセスによって作出される構築物中のエレメント、宿主細胞ゲノムに組み込まれているエレメント)に機能的に連結されるように、適切な宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞を作出することができる。得られた組換え宿主細胞は、発現に適した条件下で(例えば、誘導因子の存在下で、適当な動物内で、適当な塩、増殖因子、抗生物質、栄養添加物などを添加した適当な培地中で)維持することができ、それによって、コードされたペプチドまたはポリペプチドが産生される。必要に応じて、コードされたペプチドまたはポリペプチドを(例えば、動物、宿主細胞、培地、乳汁から)単離または回収することができる。このプロセスには、トランスジェニック動物の宿主細胞における発現が含まれる(例えば、国際公開第WO92/03918号、GenPharm International参照)。
【0101】
また、本明細書に記載の本発明の融合ポリペプチドは、適当なin vitro発現系で、例えば、化学合成によって、または他のいずれかの適当な方法によって作製することもできる。
【0102】
本明細書に記載され、例示されるように、本発明の融合体または複合体は一般に血清アルブミンと、高い親和性で結合する。
【0103】
例えば、本発明の融合体または複合体は、約5μM〜約100p、例えば、約1μM〜約100pM、例えば、約5〜50nm、例えば、約10〜30nm、例えば、約20〜30nmの親和性(KD;KD=Koff(kd)/Kon(ka)[表面プラズモン共鳴により測定])でヒト血清アルブミンと結合することができる。
【0104】
本発明の融合体または複合体は、大腸菌(E. coli)またはピキア(Pichia)種(例えば、P. pastoris)で発現させることができ、また、酵母または真菌細胞で発現させることもできる。一実施形態において、融合体は、大腸菌またはピキア種(例えば、P. pastoris)、または哺乳類細胞培養(例えば、CHOまたはHEK293細胞)で発現させた場合、少なくとも約0.5mg/lの量で分泌される。大腸菌またはピキア種または哺乳類細胞で発現させる場合、本明細書に記載の融合体または複合体は分泌可能であるが、それらは化学合成法、または大腸菌もしくはピキア種を使用しない生物生産法などの任意の適当な方法を用いて作製することもできる。
【0105】
ある実施形態において、本発明の融合体および複合体は、国際公開第WO2006/059106号(例えば、国際公開第WO2006/059106号の104〜105ページ)に記載されているような、または本明細書の実施例に記載されているような動物モデルにおいて、有効量を投与した際に、効果がある。一般に、有効量は、約0.0001mg/kg〜約10mg/kg(例えば、約0.001mg/kg〜約10mg/kg、例えば、約0.001mg/kg〜約1mg/kg、例えば、約0.01mg/kg〜約1mg/kg、例えば、約0.01mg/kg〜約0.1mg/kg)である。疾病モデルは、ヒトでの治療効果を予測するものとして当業者に認識されている。
【0106】
一般に、本発明の融合体および複合体は、精製形態で、薬理学的または生理学的に適当な担体とともに使用される。一般に、これらの担体としては、水性もしくはアルコール/水性の溶液、エマルションもしくは懸濁液、生理食塩水および/または緩衝媒体を含む任意のものを含み得る。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウムおよび乳酸加リンゲル液を含み得る。懸濁液中でポリペプチド複合体を維持するために必要であれば、適当な生理学上許容されるアジュバントを、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。
【0107】
静脈ビヒクルは、ブドウ糖加リンゲル液をベースとしたものなどの液体および栄養補給物質および電解質補給物質を含む。また、保存剤および他の添加物、例えば、抗生物質、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスが存在してもよい(Mack (1982) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版)。持続放出製剤を含む、様々な適切な製剤を使用することができる。
【0108】
本発明の医薬組成物の投与経路は、当業者に一般に知られているもののいずれであってもよい。治療のために、本発明の薬物融合体または複合体を標準的な技術に従って任意の患者に投与することができる。
【0109】
投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、経皮、肺経路を含む任意の適当な方法で、または適切ならば、カテーテルを用いた直接注入によっても可能である。用量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の併用投与、禁忌、ならびに臨床医によって考慮される他のパラメーターによって異なる。投与は、指示に応じて、局所でも全身でも可能である。
【0110】
一実施形態において、本発明は、(a)本発明の複合体または融合体と(b)薬学上許容されるバッファーを含む肺送達用の肺製剤を提供し、ここで、該組成物は液滴を含み、組成物中に存在する液滴の約40%以上、例えば50%以上は、約6μm未満、例えば、約1ミクロン〜約6ミクロン、例えば、約5ミクロン未満、例えば、約1〜約5ミクロンの範囲の大きさを有する。このような組成物は、例えば、直接的な局所的肺送達によって対象に投与するのに特に適している。これらの組成物は、例えば、吸入によって、例えば、噴霧器の使用によって、肺に直接投与することができる。肺送達用のこれらの組成物は、生理学上許容されるバッファーを含むことができ、そのpH範囲は約4〜約8、例えば、約7〜約7.5であり、その粘度は1.2%(w/v)スクロース含有50mMリン酸バッファー中の約2%〜約10%PEG1000溶液の粘度にほぼ等しい。
【0111】
本発明の融合体または複合体は、保存のために凍結乾燥し、使用前に適当な担体で再構成することができる。この方法は、従来の免疫グロブリンで有効であることが示されており、当技術分野で知られている凍結乾燥および再構成法を使用することができる。当業者には当然のことながら、凍結乾燥および再構成は、様々な程度の抗体活性の損失をもたらす可能性がある(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも活性の損失が大きい傾向がある)ので、使用レベルは補填のために多めに調整する必要がある。
【0112】
予防用途において、例えば、前糖尿病を有するまたはインスリン抵抗性を有する個体に投与する場合、本発明の融合体または複合体を含有する組成物はまた、疾患の発症を予防、抑制または遅延するため(例えば、寛解もしくは静穏期を持続させるため、または急性期を予防するため)に、同等またはやや少ない用量で投与することもできる。熟練の臨床医ならば、疾患を治療、抑制または予防するために、適当な投与間隔を決定することができる。本発明の融合体または複合体が疾病の治療、抑制または予防のために投与される場合、1日4回まで、週2回、週1回、2週間に1回、月1回または2ヶ月に1回、例えば、約0.0001mg/kg〜約10mg/kg(例えば、約0.001mg/kg〜約10mg/kg、例えば、約0.001mg/kg〜約1mg/kg、例えば、約0.01mg/kg〜約1mg/kg、例えば、約0.01mg/kg〜約0.1mg/kg)の用量で投与することができる。
【0113】
本明細書に記載の組成物を用いて行われる処置または治療は、1以上の症状が、処置前に存在するそのような症状に比べて、またはその組成物で処置されない個体(ヒトまたはモデル動物)もしくは他の適当な対照のそのような症状と比べて軽減される(例えば、少なくとも10%だけ、または臨床評価スケールで少なくとも1ポイントだけ)ならば、「有効」とみなされる。症状は、標的とする疾患または障害の厳密な性質に応じて明らかに多様であるが、熟練の臨床医または技術者ならばそれを評価することができる。
【0114】
同様に、本明細書に記載の組成物を用いて行われる予防は、1以上の症状の発症または重症度が、その組成物で処置されない同等の個体(ヒトまたは動物モデル)の症状に比べて遅延される、軽減される、または消失されるならば、「有効」である。
【0115】
本発明の融合体または複合体は個別に投与される組成物として使用することもできるし、あるいは他の治療薬または活性剤、例えば、他のポリペプチドまたはペプチドまたは小分子と併用投与してもよい。これらのさらなる薬剤としては、例えば、メトフォルミン、インスリン、グリタゾン(例えば、ロシグリタゾン)、免疫抑制薬、免疫賦活薬などの様々な薬物を挙げることができる。
【0116】
本発明の融合体または複合体は、1以上の別の治療薬または活性剤とともに投与および/または調剤することができる。本発明の融合体または複合体が別の治療薬とともに投与される場合、その融合体または複合体は、別の薬剤の投与の前、投与と同時、投与とともに、または投与の後に投与することができる。一般に、本発明の融合体または複合体は、治療効果の重複をもたらすように投与される。
【0117】
半減期:
インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、例えば、GLP−1またはエキセンディンリガンドの半減期の延長は、in vivo適用に有用である。本発明はこの課題を、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、例えば、GLPおよびエキセンディンのin vivoでの半減期を延長し、その結果としてこれらの分子の機能的活性の、体内での持続時間を延長することによって解決する。
【0118】
本明細書に記載のように、本発明の組成物(すなわち、本明細書に記載の融合体または複合体を含む組成物)は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独に比べて、著しく延長されたin vivo血清半減期もしくは血漿半減期、および/または増加したAUC、および/または増加した平均滞留時間(MRT)を有し得る。加えて、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の活性は、本発明の組成物(例えば、複合体または融合体)において、実質的にとは言えないまでも全般的に変化している。しかしながら、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独に比べて、本発明の組成物の活性におけるある程度の変化は許容でき、本発明の複合体または融合体の薬物動態特性の改善によって一般に補償される。例えば、本発明の薬物複合体または融合体は、薬物単独より低い親和性で薬物標的と結合するかもしれないが、薬物組成物の薬物動態特性の改善(例えば、in vivo血清半減期の延長、AUCの増大)によって、薬物単独に比べてほぼ等しいか優れた有効性を有し得る。さらに、本発明の複合体または融合体の半減期の延長によって、それらはインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独よりも少ない頻度で投与することができ(例えば、月1回または週1回患者に投与することができる)、また、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独の投与よりも、より一定な血中インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬レベルを達成し、従って、望ましい治療または予防効果を達成する。
【0119】
薬物動態分析およびリガンド半減期測定の方法は当業者によく知られている。詳細は、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for PharmacistsおよびPeters et al, Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996)に見出すことができる。また、薬物動態パラメーター、例えば、tαおよびtβ半減期、ならびに曲線下面積(AUC)を記載している“Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron, Marcel Dekker発行, 2nd Rev. ex edition (1982)も参照。
【0120】
半減期(t1/2αおよびt1/2β)ならびにAUCおよびMRTは、時間に対するリガンドの血漿濃度または血清濃度の曲線から決定することができる。WinNonlin解析パッケージ(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAより入手可能)を使用して、例えば、曲線をモデル化することができる。第1相(α相)では、患者においてリガンドは主として、いくらかの消失を伴いながら分布中である。第2相(β相)は、リガンドの分布が終わり、患者からリガンドが排出につれて血清濃度が低下していく終末相である。tα半減期は第1相の半減期であり、tβ半減期は第2相の半減期である。加えて、当業者によく知られている非コンパートメントフィッティングモデルを用いて半減期を決定することもできる。
【0121】
一実施形態において、本発明は、例えば、ヒト対象において、約12時間以上、例えば、約12時間〜約21日、例えば、約24時間〜約21日、例えば、約2〜10日、例えば、約3〜4日の消失半減期を有する本発明の融合体または複合体を提供する。
【0122】
また、本発明の融合体または複合体は、例えば、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域の結合によって、または抗体ドメインとの複合体化合によって、より大きな流体力学的サイズを有するようにさらに構成することができる。
【0123】
流体力学的サイズは、当業者によく知られている方法を用いて測定することができる。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、リガンドの流体力学的サイズを決定することができる。リガンドの流体力学的サイズを測定するのに適したゲル濾過担体、例えば、架橋アガロース担体がよく知られており、容易に入手できる。
【0124】
本発明の組成物、すなわち、本明細書に記載の融合体および複合体を含む組成物は、さらにいくつかの利点を提供する。ドメイン抗体成分は非常に安定であり、抗体および抗体の他の抗原結合フラグメントに比べて小さく、大腸菌または酵母(例えば、Pichia pastoris)における発現によって高収率で作製することができ、血清アルブミンと結合する、抗体の抗原結合フラグメントは、ヒト起源のライブラリーまたは任意の所望の種に由来するライブラリーから容易に選択することができる。従って、血清アルブミンと結合するdAbを含む本発明の組成物は、一般に哺乳類細胞で作製される治療薬(例えば、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体)よりも容易に作製することができ、免疫原性のないdAbを使用することができる(例えば、ヒトdAbはヒトの疾患を治療または診断するために使用することができる)。
【0125】
インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬が、血清アルブミンと結合するdAbを含有する薬物組成物の一部である場合、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の免疫原性を低下させることができる。従って、本発明は、血清アルブミンと結合するdAbを含有する薬物組成物に関して、(例えば、インスリン分泌促進薬またはインクレチン単独よりも)免疫原性が低いか、または実質的に免疫原性のない、融合体または複合体組成物を提供する。従って、このような組成物は、対象の免疫系による抗薬物抗体の合成による有効性の損失を最小限にしつつ、対象に長期間にわたって繰り返し投与することができる。
【0126】
さらに、本明細書に記載の複合体または融合体組成物は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン単独よりも安全性が高く、副作用が少ない可能性がある。例えば、dAbの血清アルブミン結合活性の結果として、本発明の融合体または複合体は、血液循環における滞留時間が長くなっている。加えて、本発明の融合体または複合体は、実質的に血液脳関門を超えることができず、全身投与(例えば、静脈投与)後に中枢神経系に蓄積することはあり得ない。従って、本発明の融合体または複合体は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独に比べて、高い安全性かつ少ない副作用で投与することができる。同様に、該融合体または複合体は、薬物単独よりも、特定の臓器(例えば、腎臓または肝臓)に対して低い毒性を有し得る。
【実施例】
【0127】
実施例1:GLP−1(A8G)またはエキセンディン−4とDOM7h−14 AlbudAbとの遺伝子融合体の発現
エキセンディン−4、または8位のアラニンがグリシンで置換されたGLP−1(7−37)([Gly8]GLP−1)のいずれかを、DOM7h−14(下記に示すアミノ酸配列を有する、血清アルブミンと結合するドメイン抗体(dAb)(AlbudAb))との融合体として、pTT−5ベクター(CNRC, Canadaから入手可能)にクローニングした。各場合において、GLP−1またはエキセンディン−4は構築物の5’末端にあり、dAbは3’末端にあった。図1(A〜G)に示されるアミノ酸配列を有する、合計7個の構築物(DAT0114、DAT0115、DAT0116、DAT0117、DAT0118、DAT0119、DAT0120)を作製した。リンカーは存在しないか、gly−serリンカー(G4S)またはヘリカルリンカー(Arai, R., H. Ueda, et al. (2001). “Design of the linkers which effectively separate domains of a bifunctional fusion protein.” Protein Eng 14(8): 529−32.456)もしくは第2のGLP−1部分からなるリンカーが、GLP−1またはエキセンディン−4とdAbの間に存在した。リンカーは、GLP−1またはエキセンディン−4をdAbから空間的に分離してGLP−1またはエキセンディン−4とGLP−1受容体の間の結合の立体障害を防ぐためのスペーサーとして含めた。これらの構築物の配列を図1(A〜G)に示す。
【0128】
エンドトキシン不含DNAを大腸菌において、アルカリ溶菌法を用いて調製し(Qiagen CAから入手可能なエンドトキシン不含プラスミドGigaキットを使用)、それを用いてHEK293E細胞(CNRC, Canadaから入手可能)にトランスフェクトした。トランスフェクションは、フラスコ当たり333μlの293fectin(Invitrogen)および250μgのDNAを用いて、250ml/フラスコのHEK293E細胞1.75×10細胞/mlに対して行い、発現は30℃にて5日間とした。上清を遠心分離によって回収し、精製はプロテインLによるアフィニティー精製によった。タンパク質は樹脂にバッチで結合させてカラムに充填し、カラム容積の10倍のPBSで洗浄した。タンパク質は、50mlの0.1MグリシンpH2で溶出し、Tris pH8で中和した。予想されるサイズのタンパク質をSDS−PAGEゲル上で同定し、サイズを下記表1に示す。
【表1】

【0129】
実施例2:GLP−1およびエキセンディン−4 AlbudAb融合体は血清アルブミンと結合することを示す
GLP−1およびエキセンディン−4 AlbudAb融合体は、表面プラズモン共鳴(Biacore AB、GE Healthcareから入手可能)によって分析し、親和性に関する情報を得た。分析は、血清アルブミンでコーティングしたCM5 Biacoreチップ(カルボキシメチル化デキストランマトリックス)を用いて行った。各供試血清アルブミン(ヒト、ラットおよびマウス血清アルブミン)約1000レゾナンスユニット(RU)を、酢酸バッファーpH5.5中で固定化した。Biocore ABのフローセル1は、コーティングのない、ブロックされた陰性対照とし、フローセル2はヒト血清アルブミン(HSA)(815RU)でコーティングし、フローセル3はラット血清アルブミン(RSA)(826RU)でコーティングし、フローセル4はマウス血清アルブミン(MSA)(938RU)でコーティングした。各供試融合体分子は、上記実施例に記載のように哺乳類組織培養にて発現された。
【0130】
BIACORE HBS−EPバッファー(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% surfactant P20)で希釈することによって、一定の濃度範囲(16nM〜2μM)の融合体分子を調製し、BIACOREチップに流した。
【0131】
親和性(KD)は、BIACORE出力から、KD領域内のdAb濃度によって作成された出力に結合速度および解離速度曲線を当てはめることによって計算した。親和性(KD)を下記表2にまとめる。
【表2】

【0132】
上記の結果は、融合体分子が全種類の血清アルブミンと結合する能力を保持していることを示すが、このことはそれらのin vivo半減期が長くなっている可能性があることを示唆している。
【0133】
実施例3:GLP−1およびエキセンディン−4 AlbudAb融合体はGLP−1受容体結合アッセイ(GLP−1R BA)において活性がある
融合体に100mM NaVl、20mMクエン酸 pH6.2へのバッファー交換を行った。一方で、CHO 6CRE GLP1R細胞(ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動する6 cAMP応答エレメントで、そしてヒトGLP−1受容体でも安定にトランスフェクトされたCHO K1細胞(American Type Tissue Collection, ATCCから入手可能))を、懸濁培地中2×10細胞/mLで播種した。懸濁培養を24時間維持した。次に、細胞を2mM Lグルタミンを含有する15mM HEPESバッファー(Sigmaから入手可能)で希釈し(2.5×10細胞/ml)、10μl/ウェルのアッセイ化合物を含む384ウェルプレートに分注した。アッセイ対照を加えた後、プレートを37℃、5%COのインキュベーターに3時間戻した。インキュベーション後、steady gloシフェラーゼ基質(Promegaから入手可能)を、キットに記載されているようにウェルに添加し、粘着性のプレートシール(Weber Marking Systems Inc.カタログ番号607780)でプレートを密閉した。プレートをリーダー(Viewlux, Perkin Elmer)に入れ、5分間プレインキュベートした後に蛍光を読み取り、結果をプロットした。化合物は10μMアルブミンの存在下および不在下、一定の濃度範囲でアッセイしたところ、用量反応曲線をアルブミンの有り無しで当てはめることができた。EC50を算出し、下記表3にまとめる。
【表3】

【0134】
上記の結果は、全ての供試融合体分子がGLP−1受容体に結合する能力を保持していることを示す。これらの結果はまた、この能力が血清アルブミンの存在下でも保持されることを示す。従って、これらの融合体分子は、in vivoでGLP−1受容体と結合する能力を保持する可能性が高い。
【0135】
実施例4:HEK293哺乳類組織培養物におけるDAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120の発現とその後のプロテインLによるアフィニティー捕捉およびイオン交換クロマトグラフィー
本試験の目的は、in vivoおよびin vitro特性決定のためにタンパク質を作製することであった。タンパク質は、これまでに記載されているように哺乳類組織培養でHEK293E細胞においてpTT−5ベクターから発現させた。簡単に述べると、エンドトキシン不含DNAを調製および精製し、それを用いてHEK293E細胞をトランスフェクトした。タンパク質発現は振盪培養器で30℃にて5日間とし、培養物を回転沈降させ、(目的タンパク質を含有する)上清を回収した。その上清から、プロテインLアガロースStreamlineアフィニティー樹脂(樹脂はGE Healthcare製で、プロテインLは当所で結合させた)によるアフィニティー捕捉によってタンパク質を精製した。次に、樹脂をカラム容積の10倍のPBSで洗浄した後、カラム容積の5倍の0.1MグリシンpH2.0でタンパク質を溶出した。カラム容積と同量の1M Tris−グリシン pH8.0で中和した。この場合(前の実施例とは対照的に)、その後さらに精製を行った。タンパク質(Tris−グリシン中)を、20mM酢酸バッファーpH5.0へのバッファー交換を行った後、20mM酢酸バッファーpH5.0で予め平衡化した1本の(または並行した2本の)6ml resource Sカラム(GE Healthcare)上にAktaを用いて添加した。同じバッファーで洗浄した後、20mM酢酸バッファーpH5.0中0〜0.75Mまたは0〜1M NaCl勾配によってタンパク質を溶出した。次いで、適正なサイズの画分をSDS−PAGE電気泳動および質量分析により同定した後、それらを合わせて最終のタンパク質サンプルとした。その後、タンパク質を、20mMクエン酸バッファーpH6.2、100mM NaClにバッファー交換し、0.5〜5mg/mlの間に濃縮した。タンパク質を0.2μMフィルターで濾過して無菌性を確保した。その後、タンパク質を下記の実施例に使用した。
【0136】
実施例5:1回、3回および6回の凍結融解サイクルに対するDAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120の安定性の比較
本試験の目的は、1回、3回および6回の凍結融解サイクルに対するDAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120の安定性を比較することであった。各タンパク質は、前記のように哺乳類組織培養でHEK293E細胞においてpTT−5ベクターから発現させ、プロテインLアフィニティー樹脂で精製した後、イオン交換クロマトグラフィーを行った。タンパク質は、20mMクエン酸バッファー、100mM NaClにバッファー交換し、同バッファーを用いて0.5mg/mlに希釈した。次に、各タンパク質の0.5mlアリコート(エッペンドルフ管中)に対して0回、1回、3回または6回の凍結融解サイクルを行い、各サイクルはドライアイス上での3分間とその後の37℃の水浴中での2分間を含んだ。(タンパク質溶液を完全に融解させるには37℃2分間で十分であることが試験中に認められた)。必要な回数の凍結融解サイクルを終えた後、タンパク質サンプルは次に分析するまで2〜8℃で保存した。その後、タンパク質に対してSDS PAGE電気泳動、GLP−1R結合アッセイ、Superdex 75カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーおよび質量分析法による分析を行った。4つのタンパク質全てのSDS PAGE分析結果、GLP−1R BAによる能力、および質量分析結果は、1回、3回または6回の凍結融解サイクルによって、ベースラインから有意には変化しないことが見出された。SEC分析における最大ピークの高さは影響を受け、6回の凍結融解サイクル後、DAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120のそれぞれで最大の高さの78%、86%、104%および57%が維持された。DAT0120は、凍結融解サイクルに対して他の3つのタンパク質よりも安定性が低いと結論づけられた。
【表4】

【0137】
実施例6:II型糖尿病のdb/dbマウスモデルにおけるDAT0115の作用持続時間の実証
本試験の目的は、db/dbマウスにおいて、経口耐糖能に対するDAT0115の作用の持続時間を測定することであった。試験開始の3日前に血糖値の低下で動物を分類し、その後ブロック化した。各ブロック内の動物1個体を、26の各試験群に割り当てた。これにより、各試験群における平均開始血糖値の類似性を確保した。
【0138】
DAT0115(上記のように、HEK293E細胞で作製し、精製した)を、経口ブドウ糖負荷の5、24、48、72、96または120時間前のいずれかに、1mg/Kg、0.3mg/Kgまたは0.1mg/Kgで皮下投与した。(全ての用量を全ての時点で投与したわけではなく、詳細については下表を参照)。DAT0115は、ビヒクルで処置したdb/dbマウスに比べて、0.1mg/Kgおよび0.3mg/Kgの用量では24時間まで(24時間を含む)、1mg/Kgの用量では72時間まで(72時間を含む)の時点で、2時間の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)について、グルコースAUCを有意に減少させた。陽性対照として42μg/Kgで投与したエキセンディン−4もやはり、経口ブドウ糖ボーラス投与の5時間前に投与した場合、OGTT後のグルコースAUCを有意に減少させた。下記表5は、ビヒクルと比較した場合のDAT0115の各試験群のAUC減少パーセンテージを示す。アステリスクは、偽発見率補正(false discovery rate correction)を用いてDAT0115をビヒクルと比較した場合にP<0.05であることを示す。
【表5】

【0139】
実施例7:食餌性肥満(DIO)マウスの肥満モデルにおけるDAT0115の有効性の実証
本試験の目的は、確立されたマウス摂食モデル(食餌性肥満マウス)を用いて、摂食量および、結果としての体重がDAT0115処置によって影響を受けるかどうかを調べることであった。これはヒトに対する予測となり得る。雄C57Bl/6マウス(Taconicから購入)は、60%kcal高脂肪の放射線照射済み食餌で12週間太らせた後、所内施設に移した。到着後、そのマウスを、温度および湿度制御室(70〜72°F、湿度=48〜50%、5AM/5PM光周期)のalpha−dri床敷上に個別に収容した。食餌を45%高脂肪食に変え、動物を18日間順応させた。供試化合物を投与する前に、3日間1日1回マウスに生理食塩水を皮下注射し、摂餌量をモニタリングした。マウスは、群間または群内で体重および摂餌量に差がないようにブロック化および群分けした。試験当日、8匹のマウスからなる群に5ml/kgの注射量で下記のように皮下投与を施した:3群にDAT0115を投与し(低用量、中用量および高用量)、1群に陰性対照分子(DOM7h−14 AlbudAb、エキセンディン−4複合体を含まない)、そして、1群にエキセンディン−4陽性対照を投与した。
【表6】

【0140】
1日の摂餌量および体重を10日間毎日測定した。DAT0115は、DOM7h−14対照に比べて用量依存的な体重および摂餌量の減少を示した(図3aおよび3b参照)。従って、このマウス試験から得られたデータは、DAT0115が良好な臨床候補であるという仮説を支持すると結論づけられた。
【0141】
実施例8:マウスII型糖尿病モデルにおけるDAT0115、DAT0116およびDAT0117の血漿半減期の測定
本試験の目的は、マウスII型糖尿病モデル(db/dbマウス)においてDAT0115、DAT0116およびDAT0117の血漿消失特性を決定し、その結果からPKパラメーターを算出することであった。DAT0115、DAT0116およびDAT0117タンパク質は前記のように調製した。簡単に述べると、HEK293E細胞を用いて哺乳類組織培養でタンパク質を発現させ、プロテインL−アガロースアフィニティー樹脂へのバッチ吸着によって精製した後、グリシンpH2.0で溶出し、Tris pH8.0で中和した。その後、Resource Sカラムで、20mM酢酸pH5.0中0〜1Mの塩勾配を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。次に、目的タンパク質を含有する画分を合わせ、100mM NaCl、20mMクエン酸pH6.2にバッファー交換した。タンパク質は、in vivoで使用する前に、濾過除菌、バッファー交換およびエンドトキシン除去を行い、試験した。
【0142】
絶食させていない雄db/dbマウス(レプチン受容体遺伝子(lepr)に突然変異があり、レプチン受容体を欠いたLEPr db同系接合性マウス)の群には、1mg/KgのDAT0115、DAT0116またはDAT0117の皮下または静脈投与を行った。iv投与については、投与前、投与の0.25、0.5、1、4、7、12、24、36、48および60時間後、ならびにsc投与については、投与前、投与の0.5、1、4、7、12、24、36、48および60時間後に、血液サンプルを末梢採血によって採取し、血漿を調製した。血漿サンプルは凍結し、後に、必要に応じて、固相抽出およびLC/MS/MSによりDAT0115、DAT0116またはDAT0117レベルを分析するために解凍して、タンパク質断片の存在を検出した(タンパク質のエキセンディン−4部分から)。次に、算出された血漿レベルを用いて、WinNonLinソフトウェアを用い、薬物動態パラメーターの当てはめを行った。皮下および静脈投与後の半減期およびバイオアベイラビリティの概要を下表に示す。これらの結果から(下記表7参照)、3つの化合物はいずれも、マウスII型糖尿病モデルにおいて、望ましい薬物動態パラメーターを示すと結論づけられた。よって、これらの分子は、糖尿病のヒトにおいて、良好なPKパラメーターをもたらす可能性があり、この試験はDAT0117よりもDAT0115またはDAT0116の選択に好都合である。
【表7】

【0143】
実施例9:ラットにおけるDAT0115、DAT0116、DAT0117の血漿半減期の測定
本試験の目的は、ラットにおいてDAT0115、DAT0116およびDAT0117の血漿消失(排出)特性を決定し、それらの結果からPKパラメーターを算出することであった。DAT0115、DAT0116およびDAT0117タンパク質は前記のように調製した。簡単に述べると、HEK293E細胞を用いて哺乳類組織培養でタンパク質を発現させ、プロテインL−アガロースアフィニティー樹脂へのバッチ吸着によって精製した後、グリシンpH2.0で溶出し、Tris pH8.0で中和した。その後、Resource Sカラムで、20mM酢酸pH5.0中0〜1Mの塩勾配を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。次に、目的タンパク質を含有する画分を合わせ、100mM NaCl、20mMクエン酸pH6.2にバッファー交換した。タンパク質はin vivoで使用する前に、濾過除菌、バッファー交換し、品質確認を行った。
【0144】
血漿半減期を測定するために、3匹のラットからなる群に、1回の静脈(i.v.)または皮下(S.C.)注射で0.3mg/Kg(iv)または1mg/Kg(SC)のDAT0115、DAT0116またはDAT0117を投与した。血漿サンプルは、72時間にわたって尾静脈から順次出血させることによって得、LC/MS/MSによって分析して、融合体の断片の存在を検出した(融合体のエキセンディン−4部分から)。次に、算出された血漿レベルを用いて、WinNonLinソフトウェアを用い、薬物動態パラメーターの当てはめを行った。皮下および静脈内投与後の半減期およびバイオアベイラビリティの概要を下記の表8に示す。これらの結果から、3つの化合物はいずれも、ラットにおいて、望ましい薬物動態パラメーターを示すと結論づけられた。よって、これらの分子は全て、ヒトにおいて、良好なPKパラメーターをもたらす可能性があり、この試験は、DAT0116またはDAT0117よりもDAT0115の選択に好都合であった。
【表8】

【0145】
実施例10:カニクイザルにおけるDAT0115の血漿半減期の測定
本試験の目的は、ヒト以外の霊長類(カニクイザル)においてDAT0115に関する薬物動態パラメーターを決定してパラメーターの非比例的尺度化を図ること、およびDAT0115がヒトにおいて良好なPK特性を有する可能性が高いかどうかについてできる限り最良の指標を与えることであった。DAT0115エキセンディン−4 AlbudAb融合体は、哺乳類組織培養においてHEK293E細胞で発現させ、前記のように精製した。簡単に述べると、プロテインL−アガロースアフィニティー樹脂へのバッチ吸着によってタンパク質を精製し、グリシンpH2.0で溶出し、Tris pH 8.0で中和した。その後、Resource Sカラムで20mM酢酸pH5.0中0〜1Mの勾配を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。その後、目的タンパク質を含有する画分を集め、バッファーを100mM NaCl、20mMクエン酸pH6.2に交換した。
【0146】
タンパク質に詳細な品質確認を行い(SDS−PAGE、質量分析、活性アッセイ:GLP−1R−BA、pH確認、浸透圧確認を含む)、濾過除菌し、エンドトキシンを除去した。エンドトキシンが低いことが確認されたタンパク質(<0.05EU/mgタンパク質)をその後in vivo試験に使用した。
【0147】
この試験では6匹の雌カニクイザル(Macaca fascicularis; Charles River Laboratories BRF, Houston, TX, Primate Products, Miami, FLおよび/またはCovance Research Products, Inc., Alice, TX)を使用した。サルは投与開始時に約2〜9才(体重範囲は約2〜5キログラム)であった。サルは個別に、環境制御室(華氏64〜84度;相対湿度30〜70%、12時間明暗周期)内のステンレスケージに収容した。これらの雌サルに、Monkey Diet#5038(PMI Nutrition International, Richmond, IN)のビスケット約6個を1日2回与え、新鮮な果物を毎日割り当てた。各動物に、投与群(sc3匹、iv3匹)に応じて、供試化合物(DAT0115)を皮下または静脈投与した。用量は0.1mg/Kgとした。投与当日は、各サルへの投与後約1時間以内に最初の給餌を行った(試験に関係する手順として動物を長時間その個体の飼育ケージから出す必要がる場合には、投与後2.5時間まで延長される)。2回目の給餌は、1回目の給餌の2時間後より早くには行わなかった。環境を豊かにするため、各サルに、追加の果物、豆類および/または野菜(例えば、ブドウ、ベビーキャロット、ピーナッツ)を生存率確認時もしくはその前後に、または順応後もしくは試験関連の手順後の報酬の方法として与えた。濾過した水道水(Aqua Pennsylvania, Inc.提供、定期的に分析)は自由に摂らせた。
【0148】
投与前(0時間)、ならびに投与後わずか5分(iv群のみ)、0.5、4、8、24、48、96、144、192、288、336、504および672時間の時点で、大腿血管から血漿サンプル(約2ml)を採取した。(iv投与群の動物のうち1頭から得られたPKサンプルは24時間までしか採取しなかったので、この動物はPKの当てはめから除外した)。サンプルの分析は質量分析によって行い、データの当てはめは、WinNonLin当てはめソフトウェアによって行った。PKパラメーターは下記のとおり、iv投与(n=2)では、T1/2 67時間、MRT 46時間、Vz 327ml/KgならびにCl 3.3ml/時/Kgであり、sc投与(n=3)では、T1/2 68時間、MRT 98時間、Vz 306ml/KgならびにCl 3.1ml/時/Kgであった。バイオアベイラビリティは99%と計算された。
【0149】
この試験(ならびにカニクイザルおよびヒト血清アルブミンのbiacore結合データ)から、カニクイザルにおけるDAT0115の68時間という皮下投与の半減期(上記の通り)によって、ヒトでの同分子の半減期が週1回(またはそれより少ない回数)の投与の要件に相関させるに十分長いものである可能性が高いという確信が得られるものと結論づけられた。
【0150】
実施例11:カニクイザルにおけるDAT0115のPDの測定
カニクイザルで上記のようにPK試験を行った。本試験の主要な目的は、(前期実施例に記載のように)カニクイザルにおいてDAT0115に関する薬物動態パラメーターを決定することであったが、第二の目的は、そのサルにおけるDAT0115化合物の有効性の指標を得ることであった(本試験には統計的有意性に関する十分な検出力は無い)。この二次的目的を達成するために、サルによるビスケットの消費を本研究の過程でモニタリングした。投与後数日間、全てのサルに摂食量の減少傾向があることが示された。これはおそらく、この分子のエキセンディン−4部分の、十分に立証された、食欲抑制剤としての効果によるものであると結論づけられた。従って、DAT0115はin vivoで活性があることが示された。動物の快適な生活を確保するため、果物およびおやつはビスケットの消費に関わらずほとんどの日に与えた。
【表9】

【0151】
実施例12:表面プラズモン共鳴を用いたDAT0115エキセンディン−4 AlbudAb融合体のラット、カニクイザルおよびヒト血清アルブミンとの結合
DAT0115を発現させて精製した後、表面プラズモン共鳴(Biacore, GE Healthcare)によって分析し、親和性に関する情報を得た。分析は、ビオチン化血清アルブミンをコーティングしたストレプトアビジンチップ(SA)を用いて行った。200〜1000レゾナンスユニット(RU)の各血清アルブミンをチップに固定化した。フローセル1はコーティングせず、フローセル2はHSAでコーティングし、フローセル3はRSAでコーティングし、フローセル4はCSAでコーティングした。一定の濃度範囲の融合体を、BIACORE HBS−EPバッファー(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20)中への希釈によって15.6nM〜2μMの範囲で調製し、BIACOREチップに流した。
【0152】
親和性(KD)は、BIACORE出力から、KD領域内のdAb濃度によって作成された出力に結合速度および解離速度曲線を当てはめることによって計算した。親和性(KD)を下表にまとめる。
【表10】

【0153】
実施例13:示差走査熱量測定によるDAT0115熱変性の特性評価
本試験の目的は、オートサンプラーを備えたキャピラリーセルマイクロ熱量計VP−DSC(Microcal)を用いて、DSC(示差走査熱量測定)によってDAT0115の熱変性をモニタリングすることであった。タンパク質は、20mMクエン酸pH6.2、100mM NaCl中で一晩透析し、濾過した後、280nmの吸光度により測定した場合に1mg/mlの濃度となるように調製した。濾過した透析バッファーを全サンプルに対する標準として使用した。DSCは180℃/時間の加熱速度で行った。各サンプルの前に、1%decon溶液、次いでバッファーを注入してセルを洗浄し、機器のベースラインとした。得られた出力を、Origin 7 Microcalソフトウェアを用いて分析した。標準バッファーから得られたDSC出力をサンプル出力から差し引いた。計算にはサンプルの正確なモル濃度を用いた(Originにより自動的に実施)。遷移前後の上および下のベースライン直線領域の両方に対するベースライン設定は、三次connect関数を用いて選択し、関連づけを行った。得られたグラフを非2状態モデルに当てはめ、見かけのTmおよびΔH/ΔHv値を得る。
【0154】
DAT0115から得られた出力を非2状態遷移モデルに当てはめたところ、見かけTmは56.3℃であった。適合度(フィット)は十分であった(図4参照)。同じ装置を用いて実施した対照出力のリゾチームは、予想どおり完全に適合した良好な品質データを示した。(リゾチームについて得られた見かけTmは76.2℃であり、これは文献で報告されたものと一致する(図5参照))。よって、この試験から、DAT0115が臨床候補として許容される56.3℃の融点を有する分子であることを示す信頼性のあるデータが得られたものと結論づけられた。
【0155】
実施例14:SEC MALLSによる溶液状態のDAT0115、DAT0117およびDAT0120の特性決定
この試験の目的は、DAT0115、DAT0117およびDAT0120の溶液状態をSEC MALLSによって測定することであった。サンプルを精製し、適当なバッファー(PBS)に対して透析し、透析後に濾過し、濃度を測定し、1mg/mlに調整した。BSAおよびHSAはSigmaから購入し、それ以上精製することなく使用した。
【0156】
機器の詳細:
オートサンプラー(SIL−20A)およびSPD−20A Prominence UV/Vis検出器を備えたShimadzu LC−20AD Prominence HPLCシステムを、Wyatt Mini Dawn Treos(MALLS、多角度光散乱検出器)およびWyatt Optilab rEX DRI(示差屈折計)に接続した。検出器は−LS−UV−RIの順序で接続した。RIおよびLS機器はいずれも488nmの波長で操作した。50もしくは200mMリン酸バッファー(塩を含有するもしくは含有しない)、pH7.4または1×PBSの移動相を用いて、TSK2000(Tosoh corporation)またはBioSep2000(Phenomenex)カラム(双方とも同じ分離範囲1〜300kDaのシリカ系HPLCカラム)を使用した。使用流速は0.5または1ml/分とし、作動時間は流速の違いに応じて調整し(45または23分)、分子の分離に有意な影響を及ぼさないと予想される。タンパク質はPBS中で1mg/mlの濃度に調製し、注入量は100μlとした。光散乱検出器は、製造業者の説明書に従ってトルエンで較正した。UV検出器およびRI検出器のアウトプットを光散乱装置と接続し、Wyatt ASTRAソフトウェアを用いて3つの検出器からのシグナルを全て同時に収集できるようにした。PBS移動相中のBSA(0.5または1ml/分)をTosoh TSK2000カラムに数回注入し、UV、LSおよびRIシグナルをWyattソフトウェアによって収集する。次に、その出力を、ASTRAソフトウェアを用いて分析し、製造業者の説明書に従い、シグナルを正規化し、アラインし、バンドの広がりを補正する。その後、較正定数の平均を求め、以降のサンプル測定に使用されるテンプレートにインプットする。
【0157】
絶対モル質量の計算:
1mg/mlのサンプル100μlを、予め平衡化した適当なカラムに注入した。SECカラムの後、サンプルを3つのオンライン検出器、UV、MALLS(多角度光散乱)およびDRI(示差屈折率)検出器に通すことで、絶対モル質量の測定が可能となる。カラムで生じる希釈は約10倍であることから、溶液中の状態を測定している際の濃度は100μg/ml、すなわち、約8μM dAbとなる。
【0158】
ASTRAでの計算およびZimmプロット法の原理(多くの場合バッチサンプルモードで実施される)は、Zimm [J. Chem. Phys. 16, 1093−1099 (1948)]の式である:
【数1】

式中、
cは、溶媒中の溶質分子の質量濃度(g/ml)であり、
Mは、重量平均モル質量(g/mol)であり、
は、第2ビリアル係数(mol mL/g)であり、
=4p(dn/dc)−4−1は光学定数であり、ここでnは入射光(真空)波長での溶媒の屈折率であり、lはナノメーター単位で表された入射光(真空)波長であり、Nはアボガドロ数(6.022×1023mol−1に相当)であり、dn/dcは溶媒−溶質溶液の、溶質濃度の変化に対する示差屈折率の増加をmL/gで表したものである(この因子はdRI検出器を用いて独立に測定しなければならない)、
P(q)は、理論的に導き出された形状因子であって、およそ1−2μ<r>/3!+・・・に相当し、ここで、μ=(4π/λ)sin(θ/2)であり、<r>は平均二乗半径である。P(q)は、分子のz平均サイズ、形状および構造の関数であり、
は過剰Rayleigh比である(cm−1)]。
【0159】
この式は、垂直に偏光/入射光を仮定し、cの次数まで有効である。
【0160】
sin(q/2)に対するR/Kcのプロットへの当てはめである、Zimmフィット法によって計算を行うために、cについて一次まで式1の逆数を展開する必要がある。
【0161】
sin2(q/2)に対するR/Kcのプロットへの当てはめである、Zimmフィット法により計算を行うために、cについて一次まで式1の逆数を展開する必要がある。
【数2】

【0162】
この場合、適切な結果は
【数3】

および
【数4】

であり、式中、
【数5】

である。
【0163】
計算は、ASTRAソフトウェアにより自動的に行われ、その結果としてプロットが得られ、各スライスについてモル質量が決定された[ASTRAマニュアル]。
【0164】
クロマトグラムで観察された各ピークについてのプロットから得られたモル分子量を、タンパク質の単一ユニットの予測分子量と比較する。これによってタンパク質の溶解状態について結論を下すことができる。
【0165】
試験データ:
DAT0115
20mMクエン酸、0.1M NaCl、pH6.2で平衡化したSuperdex 200カラムに、1mg/ml DAT0115を100μl注入した。流速は0.5ml/分に設定した。タンパク質は単一ピークとして溶出し、分子量はピークの全幅にわたって17.4kDaと測定された(単量体の予測分子量は16.9kDa)。溶出効率は100%である。図6参照。(HSA対照は予測通りの挙動を示し、DAT0115に関する試験結果を実証した。それは分子量64kDa(単量体)および110kDa(二量体)の2つのピークとして溶出する。HSA二量体の分子量は、このピーク内のタンパク質の量が極めて少ないためにあまり正確でない可能性がある)。
【0166】
DAT0117
50mMリン酸バッファー、pH7.4で平衡化したTSK2000カラムに、1mg/ml DAT0117を100μl注入した。流速は1ml/分に設定した。DAT0117の注入量の約50%は、35〜45kDa(二量体以上)前後の分子量を有する2つの重複したピークとしてカラムから溶出したが、これは、ここで試験された条件での強い自己会合を示唆する。(BSA対照は予測通りの挙動を示し、DAT0117の試験結果を実証し、分子質量61kDaおよび146kDa(単量体および二量体)の2つのピークを示す)。SEC Malの結果については図7参照。
【0167】
DAT0120
50mMリン酸バッファー、pH7.4で平衡化したTSK2000カラムに、1mg/ml DAT0117を100μl注入した。流速は1ml/分に設定した。DAT0120の注入量の約50%は、25kDa前後と測定された分子量を有するやや非対称のピークとしてGFカラムから溶出した。これは、ここで試験された条件でのDAT0120の強い自己会合を示唆し、タンパク質は単量体−二量体の迅速な平衡状態にあると思われる。(BSA対照は予測通りの挙動を示し、DAT0120の試験結果を実証し、分子量61kDaおよび146kDa(単量体および二量体)の2つのピークを示した)。SEC Malの結果については図8参照。
【0168】
上記の試験結果から、DAT0115は、ここで使用された条件下で、有意な自己会合を示す他の2つの分子に比べて、自己会合が有意に小さい(場合によっては、無い)と結論づけられた。溶液中の単量体状態は、in vivo作用、ならびに製造時の上流および下流プロセスに関して好ましいものであり得るので、DAT0115は、溶解状態に関して、臨床的進展のために最も理想的な分子であるといえる。
【0169】
実施例15:アフィニティマトリックス・プロテインLを使用しない哺乳類発現からの精製
DAT0120およびDAT0115はいずれも、HEK293上清から精製した。各タンパク質を哺乳類組織培養でHEK293E細胞においてpTT−5ベクターから発現させた。MEP Hypercel樹脂の1mlカラムをPBSで平衡化し、0.1M水酸化ナトリウムで洗浄した後、PBSで再び平衡化した。上清200mlを2.5ml/分でカラムに加えた後、カラムをPBSで洗浄し、0.1Mグリシン、pH2で溶出した。
【0170】
溶出後、1/5容量の1M Tris、pH8を加えることでサンプルを中和し、室温で保存した。サンプルは保存後に少量の沈殿が見られたことから、脱塩処理の前にsteriflipデバイスを用いて濾過した。
【0171】
2つの26/10 HiPrep脱塩カラムは20mM酢酸ナトリウム、pH5(実測値pH5.3)10ml/分で平衡化し、0.1M NaOHを添加することで洗浄し、20mM酢酸ナトリウム、pH5で再平衡化した。
【0172】
DAT0115は20mM酢酸ナトリウム、pH5中で脱塩した後、20mM酢酸ナトリウム、pH5(実測値5.2)で平衡化した1ml HiTrap SPFFに添加した。このカラムを洗浄した後、20mM酢酸ナトリウム、pH5、1M NaClを用いた0〜100%勾配にかけ、5mAUsを越える吸光度を有する溶出画分を回収し、SDS−PAGEによって分析した。
【0173】
SP FF画分を一晩保存した後、そのサンプルを0.2μmフィルタで濾過し、20mMクエン酸ナトリウム、pH6.2、100mM NaClで平衡化した2本の26/10 HiPrep脱塩カラムに加えた。溶出液を20ml遠心濃縮器で濃縮し、濾過除菌し、エンドトキシンを1/10および1/200希釈で試験した。
【0174】
2通りの希釈でエンドトキシンを試験したところ、1/10希釈はスパイク回収率250で30EU/mlの値を示した。1/200試験は、スパイク回収率126%で<10.8EU/mlの値を示した。ID27823を用いてサンプルに質量分析を行った。高負荷量では、80kDaマーカーより下と100〜160kDaマーカーの間に見られる低レベルの夾雑物がある。サンプルの純度は95%より高いと思われる。
【0175】
実施例16 エキセンディン−4およびDOM7h−14−10/DOM7h−11−15 AlbudAbの遺伝子融合体の発現および精製
本試験の目的は、DMS7139およびDMS7143を効率的に発現させることであった。DMS7139は、適切にプロセシングされたN末端を有する大腸菌における、エキセンディン−4とDOM7h−14−10(血清アルブミンと結合するドメイン抗体(dAb)、AlbudAb(商標)としても知られる)との融合体であり、DMS7143はエキセンディン−4とDOM 7h−11−15(血清アルブミンと結合するドメイン抗体(dAb)、AlbudAbとしても知られる)との融合体である。次に、その後の試験で、この融合体のエキセンディン−4部分とAlbudAb部分の活性を調べることができる。
【0176】
エキセンディン−4をDOM7h−14−10またはDOM7h−11−15との融合体としてクローニングしたが、この場合、エキセンディン−4ペプチドは構築物の5’末端にあり、AlbudAbは3’末端にあった。それぞれエキセンディン−4ペプチドとAlbudAbの間に(Gly4Ser)3リンカーを含む全部で2つの構築物を作製した。このリンカーは、エキセンディン−4とGLP−1受容体の間の結合の立体障害を防ぐためにエキセンディン4をdAbから空間的に分離するためのスペーサーとして含まれた。これらの構築物の配列を図1(m)および1(n)に示す。発現ベクターへのクローニングを可能とするために、融合体を5’にNdeI制限部位とその後に改変OmpT(OmpT AWA、そのアミノ酸配列は図1(q)配列番号28に示される)シグナルペプチドを有し、3’末端にBamHI部位を有するアセンブリPCRとして作製した。OmpT AWAシグナルペプチドは、最後の3つのコドンが野生型から、SFAの代わりにAWAをコードする「GCTTGGGCC」に変更されていた(図2(p):配列番号33に示される)。その変異は大腸菌のシグナルペプチダーゼによる適切な部位でのプロセシングを向上させる。
【0177】
その上、このペプチダーゼ切断部位のすぐ後に融合体の配列が始まる。シグナルペプチドの最後のコドンおよびエキセンディン−4配列の最初の2つのアミノ酸で重複するNcoI消化部位が導入されている。この変異は、以後の、エキセンディン−4のフリーのN末端を有する融合体のサブクローニングならびに生産誘導を容易にする。上記に挙げた変異を含む改変されたpET12a発現ベクター(pETベクターはEMD Biosciencesから入手した)をpDOM35と呼称した。ベクターおよびアセンブリPCRをNdeIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化した後、この挿入配列を、Quick Ligation Kit(NEB)を用いてベクターに連結した。この連結物2μlをMachI細胞の形質転換に用いた。回復増殖期の後、細胞を、カルベニシリンを含有する寒天プレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。コロニーを配列決定し、適切な配列を含むものをプラスミド増殖および単離(Plasmid Mini Prepキット、Qiagen)に用いた。BL21(DE3)細胞をプラスミドDNAで形質転換し、得られたコロニーを発現培養物の接種に用いた。発現は、TB Onex培地(Overnight Express(商標)autoinduction solutions)の4×0.5リットル培養物、消泡剤1滴および100μg/mlのカルベニシリンの接種によって行った。培養物を、250rpmで振盪しながら30℃で3晩インキュベートした後、培養上清を3700xgで1時間の遠心分離によって清澄化した。その後、発現したタンパク質を清澄上清から、プロテインLストリームライン(GE Healthcare,カタログ番号28−4058−03,プロテインL結合型)を用いて精製し、プロテインLから、0.1Mグリシン pH2.0を用いて溶出した後、0.1容量の1M Tris pH8.0を用いて中和した。次に、タンパク質を濃縮し、バッファーA(20mM酢酸ナトリウム−酢酸 pH5.0)に対して透析し、AktaXpress(GE healthcare)でのイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。タンパク質をバッファーA(無塩バッファー)中、Resource S 6mlカラムに添加した後、バッファーB勾配(20mM酢酸ナトリウム−酢酸 pH5.0 1M NaCl)を用い、65分かけて0〜68%Bにて画分として溶出した(DMS7139の場合)。画分をSDS−PAGEおよび質量分析によって分析し、適切な質量のものをプールした。最終タンパク質を20mMクエン酸 0.1M NaClバッファーに対して透析し、属性をSDS−PAGEおよび質量分析によって再確認した。
【0178】
実施例17 表面プラズモン共鳴を用いた、エキセンディン−4 AlbudAb融合体DMS7139およびDMS7143の血清アルブミンとの結合
DMS7139およびDMS7143を発現させ、上記のように精製し、表面プラズモン共鳴(Biacore, GE Healthcare)によって分析して親和性に関する情報を得た。分析は、血清アルブミンでコーティングされた2つのCM5チップ(カルボキシメチル化デキストランマトリックス)を用いて行った。約500レゾナンスユニット(RU)の各血清アルブミンを酢酸バッファーpH4.5中で固定化した。第1のチップはコーティングのない、ブロックされたフローセル1を含み、フローセル2はMSA(560Rus)でコーティングされていた。第2のチップはコーティングのない、ブロックされたフローセル1を備え、フローセル2はHSAでコーティングされ、フローセル3はCSAでコーティングされ、フローセル4はRSAでコーティングされていた。全ての血清アルブミンに関して、目的はチップ上の350RUのタンパク質の領域にコーティングを施すことであった。
【0179】
BIACORE HBS−EPバッファー(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% surfactant P20)に希釈することで、一定の濃度範囲の融合体を調製し(DMS7139では55nM〜1μMの範囲、DMS7143では24nM〜4.4μMの範囲)、BIACOREチップに流した。親和性(KD)は、BIACORE出力から、KD領域内のdAb濃度によって作成された出力に結合速度および解離速度曲線を当てはめることによって計算した。親和性(KD)を下記表11にまとめる。
【表11】

【0180】
DMS7139およびDMS7143は、血清アルブミンに対して10〜90nMの範囲の親和性を有する(RSAに対するDMS7143の親和性を除く)と結論づけられた。これは、これまでの融合体(例えば、これらのアルブミンに対して数百nM範囲の親和性を有する、グリシンセリンリンカーでDOM7h−14 AlbudAbと連結されたエキセンディン−4であるDAT0115)のSAに対する親和性よりも有意に高い。これらの新規融合体の(血清アルブミンに対する)より高い親和性は、より長いin vivo血漿半減期に表れる可能性があり、それは該融合体が同じ有効性でより少ない頻度で投与可能であること、および/または時間が経過しても血漿中により一定のレベルの薬剤を維持することができ、望ましくないcMax関連の毒性または副作用を軽減する可能性があることを意味する。
【0181】
実施例18
DMS7139およびDMS7143融合体はGLP−1受容体結合アッセイで活性がある
GLP−1Rは、このアッセイの目的で、CHO細胞で発現させる7TM Gタンパク質共役受容体である。GLP−1または類似体による受容体の活性化によって、この受容体に結合されているアデニル酸シクラーゼによるATPのcAMPへの変換がもたらされる。CHO細胞に6CRE/lucリポーター遺伝子を安定的にトランスフェクトする。従って、受容体のGLP−1活性化の後にcAMPが生産されると、プロモーター遺伝子(6コピーのcAMP応答エレメント−6CREを含む)がルシフェラーゼリポーター遺伝子の発現を駆動する。その後、これはルシフェリンとの反応を触媒し、照度計で測定可能な光を生じる。
【0182】
方法:
CHO 6CRE GLP1R細胞を、37℃の湯浴中にバイアルを半分沈めることによって急速解凍し、バイアルの内容物を50mlのファルコン試験管に移し、バイアル当たり10mlのRPMI(フェノールレッドフリー)アッセイ媒体(Sigma、カタログ番号R7509)+2mMのL−グルタミン(Gibco、カタログ番号25030)+15mMのHEPES(Sigma、カタログ番号H0887)を加えた。計数し、1200rpmで5分間遠心分離した後、細胞を適当な容量のRPMIアッセイ媒体に再懸濁させて1×10細胞/mlとし、白色96ウェル平底組織培養プレート(Costar 96ウェル組織培養プレート、white sterile、カタログ番号3917)の各ウェルに50μlずつ分注した。細胞を37℃/5%COで一晩インキュベートした。翌日、細胞をインキュベーターから取り出し、予め調製した対照/サンプル50μlをウェルに加え、プレートを37℃、5%COのインキュベーターに3時間戻した。
【0183】
エキセンディン−4対照の調製(Sigma、カタログ番号E7144):
V底96ウェルプレートにて、198μlのRPMIアッセイ媒体に対して1mg/mlのエキセンディン−4 2μlを加え、2.39μM溶液とした。この2.39μM溶液2μlを237μl RPMIアッセイ媒体に加え、20nM溶液とした(10nMアッセイにおける終濃度)。プレートに対照1:10の連続希釈を行い(対照15μl+RPMIアッセイ媒体135μl)、8点曲線を作成した。
【0184】
未知のサンプルの調製:
未知のサンプルの調製にも対照の調製と同じ指針を用いる。上限濃度を必要なアッセイ濃度の2倍とし、プレートを1:10希釈する。
【0185】
ルシフェラーゼ(Promega、カタログ番号E2620)の調製:
冷凍庫から必要な数のBright−Gloルシフェラーゼアリコートを取り出し、暗所にて室温で解凍させる。アッセイプレート1枚につき、5mlバイアル1本で十分である。
【0186】
インキュベーションの後、50μlのBright−Gloルシフェラーゼ試薬を全てのウェルに加え、プレートを室温で3分間インキュベートし、細胞溶解を生じさせた。発光(1秒当たりの計数値)を、M5eマイクロプレートリーダーを用いて読み取ったが、読み取りはウェルごとに0.1秒間とした。細胞だけを含むバックグラウンドウェルのCPSを他の全てのウェルから差し引いた。対照ウェル(GLP−1(7−36)またはエキセンディン−4)は最高濃度で最大の刺激を示すはずである。未知のサンプルの濃度効果曲線を当てはめ、その曲線から、GraphPad PrismまたはExcelFitソフトウェアを用いてEC50を算出する。
【0187】
2つのエキセンディン−4 AlbudAb融合体(DMS7139およびDMS7143)を、エキセンディン−4と並んだGLP−1R BAにおける活性に関するアッセイで試験した。結果を下表12に示す。
【表12】

【0188】
上記の結果から、DMS7139およびDMS7143はGLP−1R BAにおいて予測された活性を示し、従って、それらはin vivoにおいてGLP−1受容体に対して活性がある可能性があるということが結論づけられた。従って、DMS7139およびDMS7143はさらなる前臨床研究の良好な候補であり、これが上手く行けば臨床に移行する展望を持っている。
【0189】
実施例19
DAT0115またはDAT0117を発現するベクターを大腸菌Bl21−(DE3)株(Novagen)に形質転換した。50mlの改変テリフィックブロス培地(Sigma カタログ番号T0918)を含む250mlフラスコにOD=0.1で接種した後、50mg/lカナマイシンを添加して30℃で増殖させた。A600=0.5〜1で、細胞をIPTGで誘導して終濃度50μMとし、同じ温度で一晩増殖を続けた。培養物を回転沈降させ、プロテインL樹脂(所内作製)を用い、DAT0115またはDAT0117を培養上清から捕捉した。8℃で一晩バッチ結合を行い、樹脂をカラム容積の10倍のPBSで洗浄し、その樹脂からDAT0115またはDAT0117を、カラム容積の3倍の0.1MグリシンpH=2で溶出した。このタンパク質を、1/5容量の1M Tris pH8.0を加えることで中和した。その後、タンパク質をSDS−ゲルおよび質量分析(MS)またはEdman分解(Edman)によって分析した。
【0190】
アステリスク()の付いたDAT0117発現ベクターを、実施例16に示した条件を用いて、形質転換し、培養し、分析した。
【表13】

【0191】
実施例20 MalE/pET30ベクターを用いた、DMS7139(エキセンディン−4とDOM7h14−10の遺伝子融合体)AlbudAbの発現および精製
DMS7139遺伝子を、DMS7139含有プラスミドから、オリゴヌクレオチドno.1(図2s:配列番号47)(GGAATTCCATATGAAAATCAAAACCGGTGCTCGCATCCTGGCTCTGTCCGCTCTGACCACTATGATGTTCTCCGCTTCCGCGCTGGCTCATGGTGAAGGAACATTTACCAGTGAC)およびオリゴヌクレオチドno.2(GTTCAGAATTCTTATTACCGTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTG)(図2t:配列番号48)を用い、PCRにより増幅した。増幅産物は、N末端MalEシグナル配列MKIKTGARILALSALTTMMFSASALA(図9j:配列番号49)を有するDMS7139構築物を含み、その5’および3’末端にそれぞれNdeIおよびEcoRI認識配列を残している。得られた遺伝子断片をNdeI/EcoRIで消化し、NdeI/EcoRIで消化したpET30ベクター(Invitrogen)に連結した。この挿入配列を確認するため、T7−フォワードプライマーおよびT7−リバースプライマークローンを用いてクローンの配列決定を行った。
【0192】
DMS7139発現ベクターを、pECO−pglベクター(Aon et al. applied and environmental microbiology feb. 2008 vol.74, No.2, pg 950−958参照)を含む大腸菌BL21−(DE3)株(Novagen)に形質転換し、培養物を、50mg/lのカナマイシンおよび37.5mg/Lのクロラムフェニコールを添加した最小培地(Korz D.J. et al J. Biotechnol. 1995 39 pg 59−65参照)にて30℃で増殖させた。0.25〜0.5の間のA600で、細胞(得られた実際の値は0.347)をIPTGで誘導して終濃度70μMとし、28℃で一晩増殖を続けた。培養物を回転沈降させ、プロテインL樹脂(所内作製)を用い、DMS7139を培養上清から捕捉した。4℃で一晩バッチ結合を行い、樹脂をカラム容積の10倍のPBSで洗浄し、その樹脂からDMS7139を、カラム容積の3倍の0.1MグリシンpH=2で溶出した。その後、タンパク質をSDS−ゲルおよび質量分析によって分析した。図10に示されるように、質量分析は極めて純粋なDMS7139が存在することを示す。
【0193】
また、タンパク質DMS7139をコードするDNA配列に対して大腸菌発現向けにコドンの至適化を行うことができ、この配列を図2(u)配列番号50に示す。
【0194】
実施例21 DMS7139はマウス、ラット、カニクイザルおよびヒトGLP−1Rと同様の効力で結合する
ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルGLP−1RにおけるDMS7139の相対的効力を決定するために、黒色素胞機能性GLP−1Rバイオアッセイを用いた(Jayawickreme et. al., Curr Protocols in Pharmacol. 2005と同様)。7TMの活性化を介したメラノソーム輸送はすでに十分記されており、黒色素胞内に局在するGタンパク質は哺乳類細胞系と同様の方式でGPCRと結合することが示されている(Gross et al., J Cell Biol 2002; 156:855−865)。このバイオアッセイでは、メラノソームとして知られるオルガネラを含む暗色の色素(メラニン)を有する、ツメガエル(Xenopus laevis)の皮膚細胞に由来する黒色素胞細胞系を用いる(Lerner, Trends Neurosci. 1994; 17:142−146)。細胞内cAMPレベルの変化は、メラノソームが凝集する、または細胞に拡散する程度を制御し、従って、黒色素胞の色の濃さはcAMPレベルに直接関係する。さらに詳細を以下に示す。
【0195】
ラット、マウスおよびヒトGLP−1受容体をコードする全長オープンリーディングフレームcDNAを、標準的な分子生物学的技術を用いて、発現ベクターpJG3.6またはpcDNA3にクローニングした。Genebankアクセッション番号を下表14に示す。
【表14】

【0196】
カニクイザルGLP−1Rをコードするクローンを、カニクイザル肺、肝臓および脳から単離された全RNAから逆転写されたcDNAから増幅し、pcDNA3.2DGWにサブクローニングした。全長cDNA配列を確認した。黒色素胞をT225フラスコ(Costar カタログ番号3000)にて、L−15培地中、27℃および0%COで維持し、1週間に1回、集密フラスコから0.7倍トリプシンを用いて分割し(1:10)、その後、1週間に2回栄養分を与えた。カニクイザルのcDNAを図2(r)(配列番号45)に示す。
【0197】
アッセイの目的で、細胞を洗浄し、トリプシンで処理し、0.7倍EPG PBSに15×10細胞/mlの濃度で再懸濁させた。800μlの細胞を20〜40μgのcDNAと穏やかに混合し、氷上で20分間インキュベートした。インキュベーション後、800μlの細胞/cDNA混合物をピペットでキュベットに移し、500V、725uFおよび950オームでエレクトロポレーションを行った。その後、細胞をキュベットからRFM(標準カエル培地)を含むT75フラスコに直接移し、室温で少なくとも3時間、次いで、インキュベーター(25℃、0%CO)内で一晩インキュベートした。翌日、細胞をトリプシンで処理し、計数し、Costar 96ハーフウェルプレート(カタログ番号3697)に300,000細胞/mlの密度で加えた。2時間後、それらをインキュベーター(25℃、0%CO)内の密閉容器に一晩入れた。次の日、培地を吸引し、1%DMSOと10nMメラトニンを含有する25μlのMAB(黒色素胞アッセイバッファー)を各ウェルに加えた。細胞を1時間インキュベートし、SLT Spectraプレートリーダーにて620nmで基礎透過率を測定した。次に、2倍濃度のペプチドおよび標品25μlを含有する希釈シリーズ(MABで3倍間隔の希釈を用いた12点シリーズ)を各ウェルに直接加えた。標品はメラトニン10nM、MSH200nMおよびMABを含み、それぞれアッセイ系の最小値、最大値および基本応答レベルを設定するために用いた。ペプチドおよび標品を加えた後、プレートを1時間インキュベートし、上記のように透過率を測定した。データは、Robosage(バージョン7.3.2)を用い、(1−Tf/Ti)(式中、Tiは最初のベースラインの読み取り値であり、Tfは応答の読み取り値である)を計算することによって解析した。
【0198】
共役型7TM受容体の活性化(すなわち、GLP−1R)は細胞内cAMPの増加をもたらし、メラトニンを用いて予め凝集させたメラノソームをより分散性とし、その応答は細胞の光透過率の低下として測定される。あるいは、cAMPを低下させる条件下では、メラノソームが凝集し、細胞の光透過率が増大する。従って、GLP−1R cDNA含有プラスミド構築物を黒色素胞にトランスフェクションし、一次的に発現させた後、GLP−1Rの活性化に対するDMS7139の相対的効力が用量反応曲線から算出可能である。結果を下表15に示す。
【表15】

【0199】
ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルGLP−1Rでトランスフェクトとした黒色素胞を用い、DMS7139のアッセイにおける効力を、各種につき少なくとも2回調べた。2回のアッセイのpEC50を表15に示す。カニクイザル、ヒトおよびラット受容体における効力は極めて類似しており、マウス受容体における効力はやや低い可能性がある。全体として、表15に示されているデータは、この薬物を用いたマウスモデルで見られた有効性が、毒性学的種(ラットおよびカニクイザル)で、またヒトでも再現する可能性があるということとよく一致する。
【0200】
実施例22 II型糖尿病のdb/dbマウスモデルにおけるDAT0115およびDMS7139の有効性および作用持続時間
本試験の目的は、10〜11週齢のdb/dbマウス(Jackson Labsから入手)における経口糖耐能に対するDAT0115およびDMS7139の作用持続時間を決定および比較することであった。試験開始の3日前に評価した血糖値によって、処理間で動物を無作為化した。これによって、各試験群の平均開始血糖値の類似性を確保した。DAT0115およびDMS7139は、経口ブドウ糖ボーラスの120時間、96時間、72時間または48時間前に1mg/kgを皮下投与した(図11Aに示す)。
【0201】
グルコースAUCは、2時間の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)にわたって、ビヒクルで処置したdb/dbマウスに比べて、DMS7139の場合には120時間までの全ての時点で、DAT0115の場合には96時間までの全ての時点で、有意に減少した(図11B)。72時間、96時間または120時間の時点で投与したDAT0115とDMS7139の間で統計的な差は無かったが、DAT0115は48時間の時点でDMS7139よりもグルコースAUCを有意に低下させた。
【0202】
DMS7139が示すグルコースAUCの低下が一貫しているほど、このクラスの薬物にとってより望ましい特性を表すと結論づけられた。よって、本試験は明確な優越性を特定するものではなかったが、このデータ、また他のデータに基づいてDMS7139が主要薬剤として選択された。
【0203】
実施例23 DMS7139の繰り返し投与は、DOM7h−14対照と比べてHbA1cの用量依存的減少を示す
本試験の目的は、10〜11週齢のdb/dbマウス(Jackson labs)においてDMS7139の繰り返し投与後のHbA1c低下を調べることであった。HbA1cはヘモグロビンの糖化型であり、その濃度は長期間にわたる血漿グルコース濃度の代替指標として用いられる。各試験群で平均開始HbA1cレベルの類似性を確保するために、試験開始の3日前にHbA1cレベルに基づき、db/dbマウスを無作為化した。動物にDMS7139(0.01、0.03、0.1、0.3mg/kg)、Byetta(商標)(0.0001、0.001、0.01、0.1mg/kg)またはDOM7h−14(0.3mg/kg)のいずれかを2週間、1日1回(QD)皮下投与した。試験中、体重、摂食量およびグルコースの測定を行い、HbA1cの測定は14日の終了時に行った。
【0204】
与えたグルコースおよびHbA1cは、対照(DOM7h−14)に対して、0.03、0.1および0.3mg/kgのDMS7139処置群で有意に低下したが、それらは生理食塩水対照に対しては有意ではなかった(図12の結果を参照)。生理食塩水対照に関して得られたデータは、最低用量のエキセンディン−4またはDMS7139で得られたデータに基づいて予測されたものよりも低かった。生理食塩水対照に比べ、エキセンディン−4では変化は見られなかった。また、DMS7139では、体重および摂食量にも有意な低下が見られた。エキセンディン−4は最高用量で摂食量に有意な効果を示した。
【0205】
DMS7139の繰り返し投与はdb/dbマウスにおいてHbA1c低下をもたらすとともに、摂食量および体重にも効果をもたらすと結論づけられた。これらの変化はGLP−1Rアゴニストに関して予測されたものと一致している。
【0206】
実施例24 食餌性肥満(DIO)マウスの肥満モデルにおいて、DAT0115およびDMS7139はDOM7h−14対照に比べて摂食量および体重の用量依存的減少を示した
ここに記載される試験の目的は、10日間の摂食量および結果としての体重がDAT0115およびDMS7139処置によって影響を受けるかどうかを判定すること、およびこれらの化合物のあるものが他のものより長い作用期間を有するかどうかを判定することであった。これはヒトに対する予測となり得る。食餌性肥満(DIO)マウス給餌モデルにおいて、DAT0115投与群、Byetta投与群およびDMS7139投与群を用いて試験を行った。
【0207】
雄C57Bl/6マウス(Taconic)を60%kcal高脂肪の放射線照射済み食餌(Research Diets D12492)で12週間太らせた後、所内施設に移した。到着後、そのマウスを、温度および湿度制御室(70〜72°F、湿度=48〜50%、5AM/5PM光周期)のalpha−dri床敷上に個別に収容した。食餌を45%高脂肪食(Research Diets D12451)に変え、動物を18日間順応させた。化合物を投与する前に、3日間マウスに生理食塩水を皮下注射し、摂餌量をモニタリングした。マウスは、群間で体重および摂餌量に差がないように群分けした。3群にそれぞれ0.01mg/kg、0.1mg/kgおよび1mg/kgのDAT0115またはDMS7139のいずれかを投与し、1群に陰性対照分子(DOM7h−14 AlbudAb(商標)1mg/kg)を、また1群にエキセンディン−4陽性対照(0.01mg/kg)を投与した。10日間、毎日、摂食量および体重を測定した。
【0208】
DAT0115およびDMS7139は、DOM7h−14対照に比べて、摂食量および体重の用量依存的減少を示した(図13の結果を参照)。図13に示されているエキセンディンはByetta(商標)であったことを注記しておく。このマウス試験からのデータは、これらの有効性の間に統計的な違いは無いことを示す。
【0209】
実施例25 マウス、ラットおよびカニクイザルにおけるDMS7139のPK分析
3種のモデル(db/dbマウス、ラットおよびカニクイザル)におけるDSM7139でのs.c.およびi.v.の一連の試験を行った。適切な時点でのアッセイにより検出可能であると推測される血漿濃度を達成する目的で用量を選択した:マウスでは1mg/kg i.v.およびs.c.、ラットでは1mg/kg s.c.および0.3mg/kg i.v.、カニクイザルでは0.1mg/kg i.v.およびs.c.。
【0210】
PKサンプリングの時点は、db/dbマウス(0.17、1、4、8、24、48、72、96、120および168時間)、ラット(0.17、1、4、8、12、24、48、72、96および120時間)ならびにカニクイザル(0.083(i.v.群のみ)、0.5、4、8、24、48、96、144、192、288、336、504および672時間(4週間))。各時点で1個体の動物を犠牲にしたマウス以外は、一連の血液サンプリングを行った。血漿サンプルを調製し、後のDMS7139レベルの分析のために冷凍保存した。
【0211】
様々な試験でPKサンプルを分析するのに、分子のエキセンディン−4部分とAlbudAb部分を検出するELISA法と、エキセンディン−4からN末端ペプチドを検出するHPLC−MS/MS法の、2種類の定量アッセイを用いた。ELISAに基づく方法からのデータを以下に示す。
【0212】
ELISA:
カニクイザル血漿中のDAT0115およびDMS7139のレベルを、ELISAアッセイを用いて測定した。簡単に述べると、96ウェルのfluoronuncプレート(Nunc #437796)を冷蔵庫内で、50mM炭酸ナトリウムバッファーpH9.4(100μL/ウェル)中、5μg/mLの抗エキセンディン−4抗体(Abcam カタログ番号ab26263)で一晩コーティングした。翌日、プレートを10mM Tris、150mM NaCl pH7.5および0.1%tween−20(300μL/ウェル)で5回洗浄した後、200μLのブロッキングバッファー(superblock, thermoscientific # 37535,TBS中)を用い、公称37℃でおよそ1時間振盪しながらブロックした。ウェルを上記のように洗浄した後、100μl/ウェルのQC、標品またはサンプルとともに公称37℃でおよそ2時間振盪しながらインキュベートした。再びウェルを洗浄した後、アッセイバッファー(10mM Tris、150mM NaCl、0.1%BSA、0.1%Tween 20 pH7.5)中、1:2000最終希釈のウサギ抗ヒトκ軽鎖抗体とともに公称37℃で1時間振盪しながらインキュベートした後、上記のように洗浄した。次に、ウェルを、100μl/ウェルのリポータータグ溶液(アッセイバッファー中1/500,000のヤギ抗ウサギIgG複合体)とともに公称37℃で振盪しながらインキュベートした後、上記のように洗浄した。結合したDAT0115またはGSK2374697Aは、100μL/ウェルの発光基質(upersignal ELISA femto (thermoscientific #37075))を、およそ1分間一定振盪しながら加えることで検出し、その後、化学発光プレートリーダー(Wallac 1420 Victor Mulyilabel Counter (Perkin Elmer Life Sciences))を用いて読み取った。
【0213】
測定された血漿レベルに対し、WinNonLinソフトウェアバージョンX TBCを用いて、コンパートメントおよびノンコンパートメント薬物動態分析を行った(下表16参照)。ノンコンパートメント結果では、試験間の一貫性のために同日にDAT0115およびDMS7139の全pKデータのコンパイルとフィッティングを行った。従って、示されたデータはDAT0115およびDMS7139のコンパイルされたデータ、NCA結果および図である。
【0214】
カニクイザルでは、半減期は、コンパートメント法およびノンコンパートメント法によってそれぞれ106.4時間または112.8時間(iv)、および113.8時間または113.1時間(sc)であると計算された。3つの種全てにおいて、DMS7139は血清アルブミンそれ自体の半減期に迫る半減期を有し、従って、DMS7139が(例えばカニクイザル血清アルブミンに比べて)ヒト血清アルブミンに対して有しているものと同等の親和性を示すと結論づけられ、このことにより、DMS7139がヒトにおいて毎週の投与(すなわち、低頻度)に適合する半減期を有するという強い確信が得られる。
【表16】

【0215】
実施例26 カニクイザルにおけるDMS7139およびDAT0115のPK分析の比較
ヒトでの使用を目的に開発するために最も望ましい分子を選択するため、カニクイザルにおける薬物動態パラメーターをDAT0115およびDMS7139に関して比較した(表17参照)。本発明者らは、表のデータが、DMS7139がDAT0115よりも望ましいPKパラメーターを有することを示し、皮下投与または静脈投与された際にカニクイザルにおいてより長い半減期を示すと結論づけた。半減期がより長いと、より後の時点で、DMS7139はDAT0115よりも一貫して血漿中の濃度が高いという効果を有する(データは示されていない)。
【表17】

【0216】
実施例27: PYY(3−36)DOM7h−14−10(R108C)AlbudAb(商標)ペプチド複合体DMS7605(図14に示されている構造を有し、リシンおよび4リピートPEGリンカーを介してPYY3−36と複合体化されたDOM 7h−14−10(R108C)AlbudAbである)の作出:
DOM7h−14−10(R108C)albudabを下記のように大腸菌で発現させ、精製した。DOM7h−14−10(R108C)をコードする遺伝子をベクターpET30にクローニングした。発現ベクターへのクローニングを可能とするために、融合体を、5’にNdeI制限部位、その後にPEL Bリーダー配列を有するアセブンリPCRとして作出した(アミノ酸配列は図9(i)配列番号46に示される)。ベクターおよびアセンブリPCRをNdeIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化した後、Quick Ligation Kit(NEB)を用いて、この挿入配列をベクターに連結した。MachI細胞を形質転換するのにこの連結物2μlを用いた。回復増殖期間の後、細胞を、カルベニシリン含有寒天プレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。コロニーを配列決定し、適切な配列を含むものをプラスミド増殖および単離(Plasmid Mini Prepキット、Qiagen)に用いた。BL21(DE3)細胞をプラスミドDNAで形質転換し、得られたコロニーを発現培養物の接種に用いた。発現は、50mlの改変テリフィックブロス培地(Sigma)を含む250mlフラスコに接種(これはOD=0.1で接種した)した後、50mg/mlカナマイシンを添加して30℃で増殖させた。A600=0.5〜1で、細胞をIPTGで誘導して終濃度50μMとし、23℃で一晩増殖を続けた。その後、培養上清を3700xgで1時間の遠心分離によって清澄化した。その後、発現したタンパク質を清澄上清から、プロテインLストリームライン(GE Healthcare,カタログ番号28−4058−03,プロテインL結合型)を用いて精製し、プロテインLから、0.1MグリシンpH2.0を用いて溶出した後、溶出量の1/5の1M Tris pH8.0を加えることで中和した。次に、このタンパク質を、0.1Mクエン酸を用いてpH5に調整し、50mMクエン酸ナトリウム、pH5で平衡化した30ml Source Sカラム(GE Healthcare)に添加した。AktaXpress FPLC(GE healthcare)を用い、150mlにわたり、50mMクエン酸ナトリウム pH5、1M NaClの0〜100勾配を適用した。画分をSDS−PAGEで分析し、最も純度の高い産物を含有する画分をプールした。最終タンパク質を50mMリン酸ナトリウム pH6.5、5mM EDTA中で脱塩した。
【0217】
次に、Dom7h−14−10(R108C)AlbudAbを、図14に示されているPEGリンカーを用い、PYY 3−36アミノ酸分子(ただし、10番の位置に、PEGリンカーで誘導体化可能なリシンを含む)に連結した。PYYおよびPEGは標準的な化学合成によって調製した。次に、PEGリンカーの末端のマレイミドを用い、上記のように調製したDOM7h−14−10(R108C)AlbudAbの遊離システインにPYYペプチドを結合させた。
【0218】
DOM7h−14−10(R108C)を50mMリン酸ナトリウム pH6.5、5mM EDTA中で脱塩した。その後、マレイミドで活性化したペプチドをこのタンパク質と1:1比で混合し、インキュベートして複合体を生じさせた。
【0219】
上記と同様の方法でイオン交換クロマトグラフィーにより、複合体を未反応のDOM7h−14−10(R108C)から精製した。最後に、複合体が豊富な画分を、上記と同様の方法でプロテインLアフィニティー精製を用い、遊離ペプチドから精製した。最終的なDMS7605複合体をバッファー交換し、SDS−PAGEおよび質量分析によって分析した。
【0220】
実施例28: 黒色素胞機能性バイオアッセイにおける、エキセンディン−4 AlbudAb(上記のように作製したDAT0115)およびPYY(3−36)AlbudAb融合体ペプチド(実施例27に記載のように作製したDMS7605、図14に示される構造を有する)の薬理学的特性
【0221】
対象の受容体でトランスフェクトした細胞を用いた黒色素胞機能性バイオアッセイにおいて、エキセンディン−4 AlbudAb(DAT0115)およびPYY(3−36)AlbudAb(実施例27に記載のように作製したDMS7605、図14に示される構造を有する)の薬理学的特性を調べた。バイオアッセイは、ヒトNPY1Rでは80μgのcDNAを用い、マウスNPY1Rでは40μgを用い、他のマウスおよびヒトNPY受容体(NPY2R、NPY4RおよびNPY5R)では40μgを用いたこと以外は、本質的に実施例21に記載のように行った。
【0222】
エキセンディン−4およびPYY(3−36)AlbudAb融合体ペプチドの薬理学的特性(データは示されていない)は、該融合体がマウスおよびヒトNPY受容体の双方と結合し、それらを活性化することを明らかにした。DMS7605はNPY1R、NPY2R、NPY4RおよびNPY5Rと結合し、NPY2Rが最も強く活性化される(データは示されていない)。NPYRアクセッション番号は次の通りである:NPY1R:NM00909(ヒト)およびNM010934(マウス);NPY2R:NM00910(ヒト)およびNM008731(マウス);NPY4R:NM005972(ヒト)およびNM008919(マウス);NPY5R:NM006174(ヒト)およびNM016708(マウス)。
【0223】
実施例29: 食餌性肥満(DIO)マウスの肥満モデルにおいて、DMS7605はビヒクル対照に比べて体重の用量依存的減少を示した
本試験はDMS7605(aka DMS7167:PYY3−36)の有効性を評価するため、食餌性肥満(DIO)マウス肥満モデルで行った。ここに記載される試験の目的は、6日間の摂食量および体重がDMS7605処置によって影響を受けるかどうかを判定することであった。これらの結果はヒトに対する予測となり得る。
【0224】
雄C57Bl/6Jマウス(Taconic)を60%kcal高脂肪食(Research Diets D12492)で12週間太らせた後、所内施設に移した。到着後、そのマウスを、温度および湿度制御室(70〜72°F、湿度=48〜50%、5AM/5PM光周期)のalpha−dri床敷上に個別に収容した。食餌を45%高脂肪食(Research Diets D12451)に変え、動物を5週間順応させた。動物には食餌と水を自由に摂らせた。化合物を投与する前に、1日、マウスにビヒクルを皮下注射し、摂餌量をモニタリングした。マウスは、群間で体重および摂餌量に差がないように群分けした。これらの群に、1日おきに、3mg/kg、1mg/kg、0.3mg/kgまたは0.1mg/kg用量のビヒクルまたはDMS7605のいずれかを投与した。6日間の累積摂食量における統計的に有意な変化(T検定によりp<0.05)が、3mg/kg(37.3%の低下)、1mg/kg(31.3%の低下)および0.3mg/kg(21.8%の低下)で見られたが、0.1mg/kgでは有意な変化が見られなかった(8.7%の低下、T検定によりp=0.07)。体重は投与開始後0日目、3日目および6日目に測定した。
【0225】
DMS7605は、ビヒクル対照に比べて体重の用量依存的減少を示した(図15)。全ての用量で有意な体重減少が見られた(二元配置ANOVAとその後のBonferroni post−hoc(事後)分析によりp<0.01)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(b)との誘導体または複合体として存在する、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、(b)血清アルブミンと結合するdAbとを含むかまたはそれらからなる融合体または複合体組成物であって、前記(a)は、(b)血清アルブミンと結合するdAbであって、(i)DOM 7h−14ドメイン抗体(dAb)(DOM 7h−14のアミノ酸配列は図1(h):配列番号8に示される)、(ii)DOM 7h−14−10ドメイン抗体(dAb)(DOM 7h−14−10のアミノ酸配列は図1(o):配列番号26に示される)またはDOM 7h−14−10 dAbの配列から4個までのアミノ酸変異を有するdAb、および(iii)DOM 7h−11−15 dAb(DOM 7h−11−15のアミノ酸配列は図1(p):配列番号27に示される)または(iv)DOM 7h−14−10 R108Cドメイン抗体(dAb)(DOM 7h−14−10のアミノ酸配列は図1(r)に示される)から選択されるdAbとの融合体または複合体として存在する、上記融合体または複合体組成物。
【請求項2】
前記薬物がエキセンディン−4、GLP−1分子もしくはPYY分子、または天然分子の結合活性を保持するその突然変異体もしくは誘導体である、請求項1に記載の融合体または複合体。
【請求項3】
前記薬物が(a)図1(i)(配列番号9)に示されるアミノ酸配列を有するGLP−1(7−37)A8G突然変異体、または(b)図1(j)(配列番号10)に示されるアミノ酸配列を有するエキセンディン−4分子、または(c)PYY3−36、もしくは10番の位置にリシンを有しかつ図1sに示されるアミノ酸配列を有するPYY3−36から選択される、請求項1または2に記載の融合体または複合体。
【請求項4】
前記薬物と前記dAbを連結するアミノ酸リンカーまたは化学リンカーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合体または複合体。
【請求項5】
前記アミノ酸リンカーが図1(k)(配列番号11)に示されるアミノ酸配列を有するヘリカルリンカー、または図1(l)(配列番号12)に示されるアミノ酸配列を有するgly−serリンカーである、請求項4に記載の融合体または複合体。
【請求項6】
前記インスリン分泌促進薬または前記インクレチン薬が融合体の一部として前記dAbのN末端またはC末端のいずれかに存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合体。
【請求項7】
(a)エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−14−10融合体(DMS7139)
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSGGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQWIGSQLSWYQQKPGKAPKLLIMWRSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQGLRHPKTFGQGTKVEIKR
(配列番号24)
(b)エキセンディン4,(G4S)3,リンカーDOM7h−11−15融合体(DMS7143)
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSGGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASRPIGTMLSWYQQKPGKAPKLLILAFSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQAGTHPTTFGQGTKVEIKR
(配列番号25)
(c)リシン(PYYの10番の位置に導入)および図14に示されるような4リピートPEGリンカーを介して、C末端でアミド化されたPYY3−36と複合体化されたDOM 7h−14−10(R108C)AlbudAbである、ペプチド複合体
から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項6に記載の融合体または複合体。
【請求項8】
前記dAbが、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域から選択される分子をdAbと結合させることによって、または抗体ドメインと複合体化することによって、流体力学的サイズを大きくするようにさらに構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の融合体または複合体。
【請求項9】
ペプチド部分またはポリペプチド部分をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合体または複合体。
【請求項10】
DOM 7h−14−10 dAbまたはDOM 7h−11−15 dAbに対して同じまたは異なる結合特異性を有する別のdAb部分を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の融合体または複合体。
【請求項11】
ヒトにおける排出半減期が12時間以上、例えば12〜21日である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の融合体または複合体。
【請求項12】
ヒト血清アルブミンと約5マイクロモル〜約1ピコモルの範囲のKDで結合する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の融合体または複合体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の融合体または複合体を薬学上または生理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項14】
さらなる治療薬または活性薬を含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
(a)請求項1〜12のいずれか一項に記載の融合体または複合体、および(b)さらなる治療薬または活性薬を含む組成物であって、対象に個別投与、逐次投与または同時投与するための組成物。
【請求項16】
代謝性疾患または障害の治療または予防に使用するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記疾患または障害が高血糖症、耐糖能異常、β細胞不全、糖尿病(1型もしくは2型糖尿病または妊娠糖尿病)、肥満、または過食を特徴とする疾患から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
代謝性疾患または障害を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
皮下注射、静脈注射または筋肉注射によって対象へ送達するための薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
非経口送達、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、眼送達、肺送達または消化管送達のための薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
患者に治療上または予防上有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、代謝性疾患を治療または予防する方法。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含む、経口製剤、注射製剤、吸入製剤またはネブライザー製剤。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含む、例えば坐剤の形態の、徐放性製剤。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含む、凍結乾燥製剤。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含む、送達デバイス。
【請求項26】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合体をコードする、例えば配列番号50、30、29、15〜22から選択される配列の、単離されたまたは組換え核酸。
【請求項27】
請求項7または8に記載の融合体のいずれか1つをコードする核酸。
【請求項28】
請求項27または28に記載の核酸を含むベクター。
【請求項29】
請求項27もしくは28に記載の核酸または請求項29に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項30】
(a)(b)との誘導体または複合体として存在する、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、(b)dAbとを含むかまたはそれからなる融合ポリペプチドを作製する方法であって、前記(a)は、(b)DOM 7h−14−10、DOM 7h−14−10 R108CまたはDOM 7h−11−15ドメイン抗体(dAb)から選択されるdAbとの融合体として存在するものであり、請求項29に記載の宿主細胞を前記核酸またはベクターの発現に好適な条件下で維持することを含み、それにより融合ポリペプチドが生産される、上記方法。
【請求項31】
患者、例えばヒト患者において高血糖に関連する疾患または障害を治療または予防する方法であって、治療上または予防上有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項32】
患者、例えばヒト患者においてインスリン生産を刺激する、かつ/またはインスリン感受性を高める方法であって、前記患者に少なくとも1用量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項33】
C末端にアミノ酸配列AMAまたはAWAを有する改変されたリーダー配列であって、野生型配列ではないリーダー配列。
【請求項34】
前記配列がOmpA−AMAもしくは−AWA;またはOmpT−AMAもしくは−AWA;またはGAS−AMAもしくは−AWAから選択される、請求項33に記載の改変されたリーダー配列。
【請求項35】
宿主細胞における異種ポリペプチドの発現のための、請求項33または34に記載の改変されたリーダー配列の使用。
【請求項36】
異種ポリペプチドがドメイン抗体(dAb)、例えば、血清アルブミンと結合するdAbを含む、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
異種ポリペプチドがインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬を含むかまたはそれからなる、請求項35または36に記載の使用。
【請求項38】
(i)インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、(ii)インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬から前記インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬のN末端のアミノ酸が2個少なくなったものとの混合物を作製する方法であって、宿主細胞において前記インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の1番の位置の前での切断と3番の位置の前での切断を生じるリーダー配列を用いて(i)を発現させるステップを含む方法。
【請求項39】
(i)インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬と、(ii)インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬から前記インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬のN末端のアミノ酸が2個少なくなったものとの混合物であって、請求項38に記載の方法によって得られるかまたは得ることが可能な、上記混合物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−521971(P2012−521971A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501290(P2012−501290)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053806
【国際公開番号】WO2010/108937
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】