説明

薬草抽出物および薬草抽出物を含有する組成物

本発明は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の薬草抽出物、および胃腸運動性障害を治療および予防するための、その薬草抽出物を含有する組成物に関する。本発明の抽出物は、HT3受容体拮抗作用および/またはHT4受容体刺激作用によって、胃腸運動性を促進する顕著な効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芥子(Sinapis Semen)、延胡索(Corydalis Tuber)、牽牛子(Pharbitidis Seed)および呂宋果(Strychni Ignatii Semen)からなる群から選択される1以上の薬草抽出物およびそれらを含有する胃腸運動性障害を治療および予防するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性胃腸症は、病理学的または生化学的な器官障害ではなく、上腹部領域に持続的な不快感または痛みを伴う機能性症状である。医学的には、機能性胃腸症は、上腹部に限定される持続性および反復性の不快感または痛みを伴うさまざまな症状を意味する。具体的には、機能性胃腸症のひとつである非潰瘍性の胃腸症には、食後の膨満感、食欲不振、腹部の膨張、早期満腹感、げっぷ、上腹部の不快感または痛み、呑酸(brash)、吐き気、嘔吐、胃逆流、胸やけなどを含む、あらゆる消化器系の症状が含まれる。その病態生理学は、未だ明確には知られていない(Panganamamula et al., Functional (Nonulcer) Dyspepsia, Current Treatmnet Options in Gastroenterology, 5, pp.153-160, 2002)。
【0003】
機能性胃腸症は明らかな器質性障害のない様々な胃腸症状に基づいて診断されるため、治療は単純ではなく、ほとんどの症状は改善と悪化の間を行き来し、減食やストレスに強く影響を受ける。これらの病理学的メカニズムは同時に働き、1つまたは通常複数の症状が現れる。
【0004】
代表的な機能性胃腸症の処置には、ドンペリドン、メトクロプラミド、レボスルピリド(levosulpride)、モサプリド、イトプリドおよびエリスロマイシンなどの消化管運動改善薬が含まれる。呑酸および潰瘍が機能性胃腸症の代表的な症状である場合、胃酸抑制薬や制酸薬が処置に用いられるが、H拮抗薬を含むこれらの薬物の効力は通常一過性である(Vincenzo Stanghellini et al., Delayed Gastric Emptying in Functional Dyspepsia, Current Treatment Options in Gastroenterology, 7, 259-264, 2004)。
【0005】
近年、新たな消化管運動改善薬の開発は、セロトニン作動性修飾薬に集中している。なぜなら、セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)は胃腸の蠕動運動において中心的な役割を担っているためであり、またセロトニンの80%は胃腸管に存在し、特にセロトニンの95%は小腸の腸内分泌細胞に分布している。
【0006】
機能性胃腸症ならびに便秘の治療薬として、5-HT関連受容体の特異的刺激薬(agonist)および拮抗薬(antagonist)の開発が試みられており、5-HT4刺激薬が開発中である。なぜなら5-HT4刺激薬は消化管運動改善作用を促進し、胃の収縮力および推進圧力を増大させるためである。5-HT拮抗薬は嘔吐を抑制し、また内臓過敏を減弱させるのに効果的であり、5-HT1p刺激薬は、その胃底における弛緩作用機序により、機能性胃腸症治療薬として開発が進んでいる(Robin spiller, Serotonergic modulating drugs for functional gastrointestinal disease, J Clin Pharmacol, 54, pp.11-20, 2002)。
【0007】
具体的には、5-HT受容体拮抗薬であるグラニセトロンは、過敏性腸症候群の患者における直腸の敏感性を減少させ、オンダンセトロンは過敏性腸症候群の患者には効果的でないが、健康な人の十二指腸に脂肪が入った際の膨張によって起こる嘔吐や胃の敏感性を減少させる。シランセトロン(cilansetron)は、胃腸の感受性の調節や胃の膨張に対する消化管の適応性を改善し、蠕動運動に関係する興奮性の5-HT受容体をブロックし、空腸の流動体吸収を向上させる。しかしながら、トロピセトロン、オンダンセトロンおよび他のほとんどの5-HT受容体拮抗薬は、ラットにおいて胃腸排出遅延症状を改善するが、その効果はヒトを含めた他の種においては確証がない。
【0008】
シサプリドは機能性胃腸症の治療に効果的に用いられている消化管運動改善薬の1つであり、5-HT受容体刺激薬および5-HT受容体拮抗薬であり、また他の薬物と比較して統計的に有意な効果を有すると認識されている。シサプリドの奏功率は50-82%とプラセボの奏功率(27-53%)よりも高く、4から8週間投与した場合70%以上の症例において効果的であることが報告されている。シサプリドは、過敏性腸症候群の合併症にも効力を有し、ドーパミン拮抗薬のレボスルピリドやドンペリドンによる治療に反応しない患者の症状を改善することも報告されている。シサプリドは1993年に胃食道逆流疾患のための薬物として認可された後、400億(世界市場:13億ドル)の年間収益を上げたが、2000年7月には販売を禁止された。
【0009】
一方、別のセロトニン受容体5-HT1 B/D刺激薬であるトリプタンは、片頭痛に用いられる用量において胃腸運動および敏感性の胃腸に効果的である。スマトリプタンは胃内容の排出を遅らせることが報告されているが、実際の機能性胃腸症の患者において胃底の調節を改善し、胃腸の膨張反応を低下させるので、その効果は上腹部の症状を改善するものであることが知られている。
【0010】
機能性胃腸症の治療に最近用いられている消化管運動改善薬の1つである5-HT4受容体刺激薬は、胃底の張力増大を伴わずに症状を改善させる。5-HT4受容体刺激薬の1つであるシサプリドは、胃排出を促進するのに効果的であり、十二指腸または胃内圧の波長(>6cm)において、胃の膨張を認識する閾値が患者だけでなく健康な人においても高くなる。5-HT4受容体刺激薬にはテガセロドおよびプルカロプリドもあるが、それらは臨床研究中であり、より下部の消化器系疾患を対象にしている(Fraser RJ, Postprandial antropyloroduodenal motility and gastric emptying in gastroparesis - effects of cisapride, Gut, 35(2), p.172-8, 1994 ; Talley NJ., New and emerging treatments for irritable bowel syndrome and functional dyspepsia, Expert Opin Emerg Drugs, 7(1), p.91-8, 2002)。
【0011】
一方、韓国のマスタードの芥子は、アブラナ科のカラシナ(Brassica juncea Cosson)の成熟種子であり、シナルビン、シナピンおよび脂肪油を含有し、痰の排出や皮膚の刺激に効果的である(韓国薬局方V(The Korean Pharmacopoedia V)パート2、pp453-454)。
【0012】
延胡索は、ケシ科のコリダリス・テルナタ・ナカイ(Corydalis ternata Nakai)や他の塊茎状植物であり、ベルベリン、1-カナジン(Canadine)、プロトピンおよび1-テトラヒドロコプチシン(coptisine)を含有し、鎮痛、鎮静、抗痙攣、制吐およびACTH過分泌作用を有する(韓国薬局方V(The Korean Pharmacopoedia V)パート2、pp664)。
【0013】
牽牛子は、ヒルガオ科のアサガオ(Pharbitis nil Choisy)の種子であり、およそ11%の脂肪油および2%の樹脂配糖体ファルビチン(pharbitin)を含有し、排便促進、利尿および殺虫効果を有すると知られている(韓国薬局方V(The Korean Pharmacopoedia V)パート2、pp651)。
【0014】
呂宋果は、マチン科のストリクノス・イグナチイ・ベルギウス(Strychnos ignatii Bergius)の種子であり、ストリキニーネ、ブルシン、ボミシン(Vomicine)、α-コルブリン(Colubrine)、β-コルブリンおよびロガニン(Loganine)を含有し、CNS興奮、健胃、抗菌、抗炎症および鎮痛効果を有する(Oriental Herb(galenicals) Standard Annotation(東洋の薬草(本草薬)標準注解)、pp175、韓国薬局方V(The Korean Pharmacopoedia V)パート2、pp633-634)。
【0015】
しかしながら、これらの本草薬は他の様々な薬草と混合された和漢薬として用いられており、よって具体的な消化管運動促進作用機序についてはこれまで報告されていない。
【0016】
この背景を踏まえ、発明者らは、機能性胃腸症および過敏性腸症候群に治療および予防効果を有する消化管運動促進性の薬草を同定するために、消化管運動促進の引き金点に相当する5-HT3および5-HT5受容体について活性化試験を行い、これらの受容体を活性化する候補薬草を同定した。これを基に、機能性胃腸症についての動物モデル実験によって適切な薬草抽出物を発見した。
【0017】
また、発明者らは、本発明の薬草抽出物が、制吐および胃排出を促進し、内臓過敏を抑制する5-HT3拮抗薬であり、かつ、消化管運動促進性を示し、便秘および慢性大腸炎を伴う過敏性腸症候群に治療効果を示す、5-HT4受容体刺激薬であることも発見した。個々の薬草またはそれらの組合せが機能性胃腸症および過敏性腸症候群に治療効果を有するという事実を確認して本発明は完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、胃腸運動性障害を予防および治療するための、薬草抽出物、および活性成分としてその薬草抽出物を含有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の1以上の薬草抽出物を提供する。
【0020】
本明細書において、「薬草抽出物」は、その薬草抽出物が他の単語または語句によって修飾されない限りは、薬草抽出物および/または薬草抽出物の混合物を意味する。
【0021】
本発明を以下に詳しく説明する。
【0022】
本発明は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の薬草抽出物を提供する。
【0023】
また、本発明は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の2以上の薬草抽出物の混合物を提供する。
【0024】
本混合物には、芥子および延胡索の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、芥子の薬草抽出物:延胡索の薬草抽出物の混合比が1:1から10:1の重量比(w/w)である。
【0025】
本発明の混合物には、芥子および牽牛子の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、芥子の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が1:1から30:1の重量比(w/w)である。
【0026】
本発明の混合物には、延胡索および牽牛子の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、延胡索の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が1:1から10:1の重量比(w/w)である。
【0027】
本発明の混合物には、延胡索および呂宋果の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、延胡索の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物の混合比が3:1から1:3の重量比(w/w)である。
【0028】
本発明の混合物には、牽牛子および呂宋果の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、牽牛子の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物の混合比が1:1から1:10の重量比(w/w)である。
【0029】
本発明の混合物には、芥子、延胡索および牽牛子の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、芥子の薬草抽出物:延胡索の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が(1〜30):(1〜10):1の重量比(w/w)である。
【0030】
本発明の混合物には、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の薬草抽出物の混合物が含まれる。好ましくは、その混合物は、芥子の薬草抽出物:延胡索の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が(1〜30):(1〜10):1:(1〜10)の重量比(w/w)である。
【0031】
また、本発明の薬草には、本発明において特定したものと同じ障害を予防および治療するのに有用であることが当分野において知られている同属種の薬草も含まれる。
【0032】
また、本発明は、本発明の薬草抽出物の調製法であって、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される薬草を水、C1〜C4の低級アルコールまたはそれらの混合物によって抽出することを特徴とする方法を提供する。好ましくは、選択した薬草は45〜75℃にて65〜80時間、1〜5回抽出する。
【0033】
本発明はまた、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の抽出物、極性溶媒に可溶性の抽出物、および非極性溶媒に可溶性の抽出物の調製法であって、以下の工程を含む方法を提供する:芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の薬草を、水、C1〜C4の低級アルコールまたはそれらの混合物によって抽出し、濾過し、濃縮して薬草抽出物を得る第1の工程;第1の工程の薬草抽出物を、ヘキサン、クロロホルムおよび酢酸エチルによって連続的に処理して非極性溶媒に可溶性の抽出物を回収する第2の工程;第2の工程の非極性溶媒に可溶性の抽出物を、水、メタノール、ブタノールまたはそれらの混合物によって処理して極性溶媒に可溶性の薬草抽出物を得る第3の工程。
【0034】
本発明の抽出物には、抽出物、極性溶媒に可溶性の抽出物、または非極性溶媒に可溶性の抽出物が含まれる。その抽出物は、水、C1〜C4の低級アルコール、またはそれらの混合物から選択される溶媒、好ましくはエタノールによって抽出する。また、その極性溶媒に可溶性の抽出物は、水、メタノール、ブタノールまたはそれらの混合物から選択される溶媒、好ましくはブタノールから抽出する。その非極性溶媒に可溶性の抽出物は、ヘキサン、クロロホルムおよび酢酸エチルから選択される溶媒から抽出する。
【0035】
本発明において、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の薬草抽出物は以下の工程によって得ることができる。
【0036】
初めに、芥子、延胡索、牽牛子または呂宋果を洗浄し乾燥させた後、その乾燥した薬草を粉ひき器(mill)にかけて粉砕薬草とし、その粉砕薬草をグラインダーにかけて粉末にする。その乾燥薬草または粉末を、乾燥薬草または粉末の1〜25倍(好ましくは5〜15倍)の重量の水、低級アルコール、例えばエタノールまたはメタノール(好ましくはエタノール)、またはそれらの混合物の中に入れる。そして、それらを熱水抽出、冷却沈殿抽出、還流-冷却抽出または超音波抽出によって抽出し(好ましくは、20〜100℃(好ましくは45〜75℃)の約1〜100時間(好ましくは65〜80時間)の熱水抽出により1から5回抽出する)、真空下において濾過し、凍結乾燥させて、芥子からの薬草抽出物、延胡索からの薬草抽出物、牽牛子からの薬草抽出物および呂宋果からの薬草抽出物を得る。
【0037】
芥子からの薬草抽出物、延胡索からの薬草抽出物、牽牛子からの薬草抽出物および呂宋果からの薬草抽出物それぞれを水に懸濁させ、クロロホルム、酢酸エチルおよびブタノールの順序で溶媒を用いて抽出し、本発明の極性溶媒に可溶性の抽出物および非極性溶媒に可溶性の抽出物を得る。詳しく説明すると、本発明の極性溶媒に可溶性の抽出物および非極性溶媒に可溶性の抽出物は、以下の工程を含む方法によって得た:芥子からの薬草抽出物、延胡索からの薬草抽出物、牽牛子からの薬草抽出物および呂宋果からの薬草抽出物(熱水抽出によって得た抽出物)それぞれをヘキサンに加えてヘキサン可溶性抽出物および水溶性抽出物を得る第1の工程;第1の工程で得られた水溶性抽出物をクロロホルムによって抽出してクロロホルム可溶性抽出物および水溶性抽出物を得る第2の工程;第2の工程で得られた水溶性抽出物を酢酸エチルによって抽出して酢酸エチル可溶性抽出物および水溶性抽出物を得る第3の工程;第3の工程で得られた水溶性抽出物をブタノールによって抽出してブタノール可溶性抽出物および水溶性抽出物を得る第4の工程。
【0038】
本発明は、活性成分としての本発明の薬草抽出物および医薬的に許容される担体、希釈剤または充填剤を含む、胃腸運動性障害を予防および治療するための組成物を提供する。
【0039】
本発明の組成物は、組成物の総重量の0.01から80%の重量(好ましくは、1から50%(w/w))の本発明の抽出物を含有する。
【0040】
本発明の組成物の調製において、いくつかの成分を本発明の薬草抽出物に加えても、または本抽出物から取り除いてもよく、それらの混合率を変化させてもよい。
【0041】
本明細書において、胃腸運動性障害は、5-HT受容体および/または5-HT受容体拮抗薬の機能亢進によって起こる疾患であることを特徴とする。
【0042】
胃腸運動性障害には、機能性胃腸症、例えば早期満腹感、痛み、胃部不快感、錯覚の満腹感、胸やけ、吐き気および嘔吐;潰瘍性胃腸障害;非潰瘍性胃腸障害;逆流性食道炎;胃の運動性の麻痺;便秘;過敏性腸症候群;過敏性大腸炎;糖尿病性の胃腸運動性障害;化学療法による胃腸運動性障害;および腸閉鎖による消化管の運動障害、および筋緊張性ジストロフィーによる胃腸運動性障害などがある。
【0043】
過敏性大腸炎には、一般的な大腸炎、便秘または下痢を伴う過敏性大腸炎などがある。
【0044】
本発明の薬草抽出物を含む組成物は、適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよい。
【0045】
本発明の組成物に含ませてよい担体、賦形剤および希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニル ピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたはミネラルオイルなどがある。
【0046】
また、本発明の組成物は、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエアロゾル剤のような経口薬;外用薬;または坐剤もしくは滅菌注射溶液として調製することもできる。
【0047】
具体的には、医薬に調製する際に、希釈剤または賦形剤、例えば、一般的に用いられるプライミング剤、エキスパンダ剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤または界面活性剤などを加えてもよい。経口投与のための固体薬には、錠剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤などがある。本薬草組成物は、少なくとも1以上の賦形剤(デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトースまたはゼラチンなど)と混合してもよい。単なる賦形剤だけでなく、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクのような潤滑剤も用いることができる。液体経口薬において、懸濁液、内容剤、乳液およびシロップを用いることができるが、一般に用いられる単なる希釈液(水や液体パラフィンなど)ならびに様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、着臭剤または保存料なども用いることができる。非経口的に管理する医薬には、滅菌水性懸濁剤、非水性溶媒剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤および坐剤などがある。非水性溶媒および懸濁液としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、または注射用のエステル、例えばオレイン酸エチルを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、Tween 61、カカオバター、ラウリン脂肪(laurin fat)、グリセリン、ゼラチンなどを用いることができる。
【0048】
また、本発明は、胃腸運動性障害の治療および予防のための本発明の薬草抽出物の使用を提供する。
【0049】
さらに、本発明は、ヒトを含む哺乳類に有効量の本発明の薬草抽出物を含む医薬組成物を投与することによる、胃腸運動性障害の処置方法を提供する。
【0050】
本発明の薬草抽出物を含む組成物の投与量は、患者の年齢、性別または体重に応じて変化し得る。しかしながら、一般に、乾燥粉末状の本抽出物は、1日に0.01から10g/Kg、好ましくは5g/Kg量を単回投与または複数回投与にて投与することができる。投与量は、投与経路、疾患の重篤度、性別、体重、年齢、健康状態、食餌、投与回数および方法ならびに排泄率に応じて調整することができる。それ故、上記の用量は、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
本発明の医薬組成物は、ラット、マウス、ウシまたはヒトのような哺乳類に、様々な経路を通して投与することができる。例えば、経口的に、直腸を通して、または、静脈、筋肉、皮下、子宮、硬膜または脳室内注射によって投与することができる。
【0052】
本発明の薬草抽出物は、毒性または副作用がほとんどないので、予防を目的として長期間安全に使用することができる。
【0053】
本薬草抽出物の消化管運動促進および抗胃腸症効果を確認するために、本発明者らは5-HT3および5-HT4受容体に対する薬草抽出物の親和性、拮抗作用および刺激作用を試験し、選択的かつ顕著な効力を立証した。また、薬草抽出物の適切な割合を調べるために、動物モデルにおいて多くの機能性胃腸症の病態について様々なイン・ビボ実験を行い、本抽出物の顕著な効果を立証した。
【0054】
胃腸運動性障害を予防および改善するために、本発明は、韓国マスタード、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の抽出物および食品学的に許容される添加物を含む保健機能食品を提供する。
【0055】
本発明に用いる保健機能食品は、2002年の保健機能食品法(Health Function Food Act)を新たに明確化するために、ヒトにおける機能性と安全性に基づいて、韓国FDA告示第2004-12号(Notice 2004-12)に列挙された保健機能食品成分の特徴を有する。
【0056】
本発明はまた、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品(health care food)であって、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される2以上の薬草抽出物および食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。
【0057】
本発明は、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、芥子の薬草抽出物、延胡索の薬草抽出物および牽牛子の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、芥子の薬草抽出物:延胡索の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比は、(1〜30):(1〜10):1の重量比(w/w)である。
【0058】
本発明は、胃腸運動性傷害を予防および改善するための医療食品であって、芥子の薬草抽出物、延胡策の薬草抽出物、牽牛子の薬草抽出物および呂宋果の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、芥子の薬草抽出物:延胡策の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比は、(1〜30):(1〜10):1:(1〜10)の重量比である(w/w)。
【0059】
本発明は、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、芥子の薬草抽出物および延胡策の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、芥子の薬草抽出物:延胡策の薬草抽出物の混合比は、1:1から10:1の重量比である(w/w)。
【0060】
本発明は、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、芥子の薬草抽出物および牽牛子の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、芥子の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比は、1:1から30:1の重量比(w/w)である。
【0061】
本発明は、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、延胡策の薬草抽出物および牽牛子の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、延胡策の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比は、1:1から10:1の重量比(w/w)である。
【0062】
本発明は、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、延胡策の薬草抽出物および呂宋果の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、延胡策の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物の混合比は、3:1から1:3の重量比(w/w)である。
【0063】
本発明は、胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、牽牛子の薬草抽出物および呂宋果の薬草抽出物の混合物ならびに食品学的に許容される添加物を含有する食品を提供する。好ましくは、その混合物において、牽牛子の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物の混合比は、1:1から1:10の重量比(w/w)である。
【0064】
一方、本発明の薬草抽出物を含む組成物は、消化管運動促進効果を目的とする様々な形態の薬物、食品および飲料に用いることができる。本発明の薬草抽出物は、様々な食品(飲料、ガム、お茶、複合ビタミン剤など)および保健補助食品に加えることができ、また丸剤、粉末剤、顆粒剤、輸液剤、錠剤、カプセル剤または飲料剤の形態に用いることができる。
【0065】
本発明の健康食品組成物について、食品または飲料における本薬草抽出物の用量は、一般に全食品重量の0.01から15重量%、好ましくは0.1から10重量%である。健康飲料組成物においては、100ml中に0.1から30g、好ましくは0.2から5gの薬草抽出物を加えることができる。
【0066】
健康飲料組成物においては、特定の割合で必要な成分は本発明の薬草抽出物のみであり、液体成分については特に制限はない。一般的な飲料のように、様々な種類の香味料や天然の炭水化物を加えることができる。
【0067】
上述の天然の炭水化物の例には、単糖類、二糖類、例えばグルコースおよびフルクトース、多糖類、例えばマルトースおよびスクロース、一般的な糖、例えばデキストリンおよびシクロデキストリン、ならびに糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールなどがあり得る。上述の香味料に加え、天然の香味料(タウマチン、ステビア抽出物(すなわちレバウジオシド(rebaudiosid)A、グリチルリチン))および合成香味料(つまり、糖類、アスパルテーム)を用いることもできる。上記の天然の炭水化物組成物は、一般に100mlにつき1から20g、好ましくは5から12gを用いる。
【0068】
上記の他に、本発明の組成物は、様々な栄養素、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成および天然香味料、着色料、増量材(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびペクチン酸塩、アルギン酸およびアルギン酸塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定剤、保存料、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤(carbonator)などを含有し得る。さらに、本発明の組成物は、天然果汁を生じる果肉、果汁飲料および野菜飲料を含有してもよい。これらの成分は単独で、または組み合わせて用いることができる。これらの添加物の割合は重要ではないが、一般に本発明の組成物100重量につき0から20重量/パーセントを用いる。
【0069】
[有利な効果]
本発明の抽出物またはそれらの混合物は、HT3受容体拮抗作用および/またはHT4受容体刺激作用によって、胃腸運動性障害を予防および処置するための医薬組成物として、また胃腸運動性を促進する保健機能食品として用いることができる。
【0070】
[発明の実施形態]
以下の実施例および実験例により本発明をより詳細に説明する。
【0071】
以下の実施例は、本発明をさらに説明することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
本発明において、r.tは室温を意味する。
【実施例1】
【0073】
本発明の薬草抽出物の調製
1-1.芥子抽出物の調製
芥子は、キュン・ドン(Kyung-dong)市場の漢方薬店で購入し、洗浄して不純物を除去し、乾燥させて実験に用いた。そして、乾燥した薬草を粉ひき器にかけて粉砕し、20gの粉砕芥子を0%、15%、30%、50%、70%、85%および96%エタノール-水(160ml)に入れ、室温にて72時間攪拌した。次いで、生じた混合物を抽出し、濾過し、低圧下55〜65℃にて濃縮し、凍結乾燥させて、芥子抽出物(1.04〜3.1g)を得た(表1:各溶媒における芥子抽出物の収率)。
【0074】
【表1】

【0075】
1-2. 延胡索抽出物の調製
延胡索は、キュン・ドン市場の漢方薬店で購入し、水を用いて洗浄して不純物を除去し、乾燥させて実験に用いた。そして、乾燥薬草を粉ひき器にかけて粉砕し、20gの粉砕延胡索を0%、15%、30%、50%、70%、85%および96%エタノール-水(160ml)に入れ、室温にて72時間攪拌した。次いで、実施例1-1と同じ方法を用いて、生じた混合物を抽出し、濾過し、低圧下55〜65℃にて濃縮し、凍結乾燥させて、延胡索抽出物(0.36〜2.94g)を得た(表2:各溶媒における延胡索抽出物の収率)。
【0076】
【表2】

【0077】
1-3.牽牛子抽出物の調製
牽牛子は、キュン・ドン市場の漢方薬店で購入し、水を用いて洗浄して不純物を除去し、乾燥させて実験に用いた。そして、乾燥薬草を粉ひき器にかけて粉砕し、20gの粉砕牽牛子 を0%、15%、30%、50%、70%、85%および96%エタノール-水(160ml)に入れ、室温にて72時間攪拌した。次いで、実施例1-1と同じ方法を用いて、生じた混合物を抽出し、濾過し、低圧下55〜65℃にて濃縮し、凍結乾燥させて、牽牛子抽出物(0.92〜3.85g)を得た(表3:各溶媒における牽牛子抽出物の収率)。
【0078】
【表3】

【0079】
1-4.呂宋果抽出物の調製
呂宋果は、キュン・ドン市場の漢方薬店で購入し、水を用いて洗浄して不純物を除去し、乾燥させて実験に用いた。そして、乾燥薬草を粉ひき器にかけて粉砕し、20gの粉砕呂宋果を0%、15%、30%、50%、70%、85%および96%エタノール-水(160ml)に入れ、室温にて72時間攪拌した。次いで、実施例1-1と同じ方法を用いて、生じた混合物を抽出し、濾過し、低圧下55〜65℃にて濃縮し、凍結乾燥させて、呂宋果抽出物(0.59〜5.41g)を得た(表3:各溶媒における呂宋果抽出物の収率)。
【0080】
【表4】

【実施例2】
【0081】
極性溶媒に可溶性の抽出物および非極性溶媒に可溶性の抽出物の調製
2-1.ヘキサンに可溶性の抽出物の調製
実施例1のそれぞれの50%エタノール抽出物10gを、蒸留水100mlおよびメタノール80mlに溶解させ、個別に漏斗に入れ、しっかりと混合して水層とヘキサン層を分離した。ヘキサン180mlを再び水層に入れ、混合し、分離させてヘキサンに可溶性の抽出物とヘキサンに不溶性の抽出物を得た。
【0082】
2-2.クロロホルムに可溶性の抽出物の調製
ヘキサンに不溶性の抽出物(水層)をクロロホルム160mlと混合しクロロホルム層と水層に分離させた。そして水層をクロロホルム160mlに加え、混合してクロロホルムに可溶性の抽出物とクロロホルムに不溶性の抽出物を得た。
【0083】
2-3.酢酸エチルに可溶性の抽出物の調製
クロロホルムに不溶性の抽出物(水層)を酢酸エチル140mlと混合し、酢酸エチル層と水層に分離させた。そして、水層を酢酸エチル140mlに加え、混合して酢酸エチルに可溶性の抽出物と酢酸エチルに不溶性の抽出物を得た。
【0084】
2-4.ブタノールに可溶性の抽出物の調製
酢酸エチルに不溶性の抽出物(水層)をブタノール40mlと混合し、ブタノール層と水層に分離させた。そして、水層をブタノール20mlに加え、混合して、ブタノールに可溶性の抽出物とブタノールに不溶性の抽出物を得た。
【0085】
ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルおよびブタノールに可溶性の抽出物、およびヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルおよびブタノールに不溶性の抽出物を低圧下にて濃縮し、次いで凍結乾燥させて、ヘキサンに可溶性の抽出物(0.2〜0.4g)、クロロホルムに可溶性の抽出物(0.1〜0.3g)、酢酸エチルに可溶性の抽出物(0.3〜0.6g)、ブタノールに可溶性の抽出物(0.8〜1.6g)および水に可溶性の抽出物(1.5〜3.0g)を得た。結果を表5に示す(各種薬草の極性溶媒に可溶性の抽出物および非極性溶媒に可溶性の抽出物の収率)。
【0086】
【表5】

【実施例3】
【0087】
本発明の薬草抽出物の混合物の調製
3-1.芥子、延胡索および牽牛子の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノール抽出物を、芥子抽出物:延胡索抽出物:牽牛子抽出物の割合が30:10:1、30:3:1、10:10:1、10:3:1、10:1:1、3:3:1および3:1:1の重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-1-A、3-1-B、3-1-C、3-1-D、3-1-E、3-1-Fおよび3-1-Gを調製した。
【0088】
3-2.芥子および延胡索の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノール抽出物を、芥子抽出物および延胡索抽出物の割合が、10:1、3:1および1:1の重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-2-A、3-2-Bおよび3-2-Cを調製した。
【0089】
3-3.芥子および牽牛子の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノールの抽出物を、芥子抽出物と牽牛子抽出物の割合が 30:1、10:1および3:1重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-3-A、3-3-Bおよび3-3-Cを調製した。
【0090】
3-4.延胡索および牽牛子の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノール抽出物を延胡索抽出物および牽牛子抽出物の割合が10:1、3:1および1:1の重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-4-A、3-4-Bおよび3-4-Cを調製した。
【0091】
3-5. 延胡索および呂宋果の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノール抽出物を、延胡索抽出物および呂宋果抽出物の割合が3:1、1:1および1:3の重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-5-A、3-5-Bおよび3-5-Cを調製した。
【0092】
3-6.牽牛子および呂宋果の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノール抽出物を、牽牛子抽出物および呂宋果抽出物の割合が1:1、1:3および1:10の重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-6-A、3-6-Bおよび3-6-Cを調製した。
【0093】
3-7.芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の抽出物の混合物の調製
実施例1から得られた50%エタノール抽出物を、芥子抽出物:延胡索抽出物:牽牛子抽出物:呂宋果抽出物の割合が30:10:1:10、30:10:1:3、30:3:1:10、30:3:1:3、10:3:1:3、10:10:1:10、10:10:1:3、10:3:1:10および3:3:1:3の重量比(w/w)となるように混合し、粉砕混合物として3-7-A、3-7-B、3-7-C、3-7-D、3-7-E、3-7-F、3-7-G、3-7-Hおよび3-7-Iを調製した。
【0094】
<実験例1> 実施例1の抽出物についての5-HT3受容体結合アッセイ
ヒト起源の5-HT3受容体について、5-HT3受容体への親和性を有する薬草抽出物を選択するために、結合アッセイを行った(Nagakura Y et al., Pharmacology properties of a novel gastrointestinal prokinetics benzamide selective for human-5-HT4 receptor versus human 5-HT3 receptor. Pharma. Research, 39(5), pp. 375-382, 1999;Miyake et al., Molecular cloning of human 5-hydroxytamine3 receptor: heterogeneity in distribution and function among species. Mol. Pharmacology, pp.407-416, 1995)。
【0095】
1-1.芥子抽出物
配列番号1の5-HT3受容体遺伝子(HTR03A0000、ミズーリ大学ローラ校cDNAリソースセンター(UMR cDNA Resource Center))をCos-7細胞にトランスフェクトし、受容体を発現している細胞膜を調製した。膜(タンパク質:20μg)を96ウェルプレートに蒔き、次いで同位体標識リガンドおよび芥子抽出物をプレートに加え、混合した。プレートを25℃にて40分間インキュベートした後、プレートの放射能を、ベータ放射能測定装置によって測定した(トップカウンター)。阻害率を以下の数式1を用いて算出した。
【0096】
[数式1]
阻害率(%)=100−[(探索物質CPM−非特異的結合CPM)/(全CPM−非特異的結合CPM)×100]
(*CPM:カウント/分)
【0097】
表6に示すように、50〜96%エタノール-水からの芥子抽出物は、5-HT3受容体に対して最も強い親和性を示した。50%エタノール-水からの芥子抽出物の50%抑制濃度(IC50)は79.2 ug/mlである(表7)。
【0098】
【表6】

【0099】
【表7】

【0100】
1-2.呂宋果抽出物
実験例1-1と同じ方法を用いて5-HT3受容体への呂宋果抽出物の親和性を測定した。結果を表8および9に示した。表8および9に示すように、30〜85%エタノール-水からの呂宋果抽出物が5-HT3受容体に対して最も強い親和性を示した。50%エタノール-水からの呂宋果抽出物の50%抑制濃度(IC50)は144.9 ug/mlである(表9)。
【0101】
【表8】

【0102】
【表9】

【0103】
<実験例2> 実施例1の抽出物の5-HT4受容体結合アッセイ
ヒト起源5-HT4受容体について、5-HT4受容体に対して親和性を有する薬草抽出物を選択するために、結合アッセイを行った[Nagakura Y et al., Pharmacology properties of a novel gastrointestinal prokinetics benzamide selective for human-5-HT4 receptor versus human 5-HT3 receptor. Pharma. Research, 39(5), pp.375-382, 1999;Wyngaert IV et al., Cloning and expression of a human serotonin 5-HT4 receptor cDNA. J. Neurochemistry. 69(5), pp.1810-1819, 1997]。
【0104】
2-1.延胡索抽出物
配列番号2の5-HT4受容体遺伝子(HTR0400000、ミズーリ大学ローラ校cDNAリソースセンター)をCos-7 細胞にトランスフェクトし、受容体を発現している細胞膜を調製した。膜(タンパク質:20μg)を96ウェルプレートに蒔き、次いで同位体標識リガンドおよび延胡索抽出物をプレートに加え、混合した。プレートを25℃にて40分間インキュベートした後、プレートの放射能をベータ放射能測定装置によって測定した(最高カウンター)。阻害率を以下の式2を用いて算出した。
【0105】
[式2]
阻害率(%)=100−[(探索物質CPM−非特異的結合CPM)/(全CPM−非特異的結合CPM)×100](*CPM:カウント/分)
【0106】
表10および11に示すように、50〜96%エタノール-水からの延胡策抽出物が5-HT4受容体に対して最も強い親和性を示した。50%エタノール-水からの延胡策抽出物の50%抑制濃度(IC50)は、43.4 ug/mlである。
【0107】
【表10】

【0108】
【表11】

【0109】
2-2.牽牛子抽出物
実験例2-1と同じ方法を用いて5-HT3受容体に対する牽牛子抽出物の親和性を測定した。結果を表12および13に示した。表12および13に示すように、50〜96%エタノール-水からの牽牛子抽出物が5-HT4受容体に対して最も強い親和性を示した。50%エタノール-水からの牽牛子抽出物の50%抑制濃度(IC50)は65.6 ug/mlである。
【0110】
【表12】

【表13】

【0111】
<実験例3> 実施例2の極性溶媒に可溶性の抽出物および非極性溶媒に可溶性の抽出物の5-HT3受容体および5-HT4受容体結合アッセイ
3-1. 芥子および呂宋果
ヒト起源5-HT3受容体について、実施例2のヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルおよび水から抽出された抽出物の5-HT3受容体に対する親和性を、結合アッセイにより測定した。実験方法は実験例1-1と同じであり、極性溶媒からの抽出物および非極性溶媒からの抽出物は表14に示す濃度にした。表14に示すように、クロロホルムからの抽出物(分画)が最も効果的であった。
【0112】
【表14】

【0113】
3-2. 延胡索および牽牛子
実施例2のヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルおよび水から抽出した抽出物の5-HT4受容体に対する親和性を比較した。実験方法は実験例1-1と同じであった。表15に示すように、クロロホルムからの抽出物(分画)が最も効果的であった。
【0114】
【表15】

【0115】
<実験例4> モルモットの大腸を用いる5-HT3受容体に対する実施例1の抽出物の拮抗効果
モルモットの大腸および実施例1の50%エタノール抽出物を用いて器官槽実験を行い、5-HT3受容体に対する抽出物の拮抗効果を測定した(Briejer M et al., The in vitro pharmacological profile of prucalopride, a novel enterokinetic compound. European Journal of Pharmacology 423, pp.71-83, 2001)。
【0116】
CO2による窒息後に、開腹術を行いモルモットの大腸を摘出した。そして、摘出した大腸を平行な2つのあぶみと固定した。
【0117】
抽出物によって処理する前に、少なくとも30分間大腸を安定化させると、大腸の張力は徐々に1gになった(サンプル添加前の張力は0.0g)。抽出物の反応のために、メタコリン(3μM)を大腸に加えて大腸の収縮を誘導した。そして、大腸を15分間安定化させ、抽出物によってそれぞれのサンプルが同じ濃度になるように処理し、15分間培養した。0.1μMのセロトニン(5-HT)で処理した後、大腸の収縮を調べ、次いで大腸を洗浄し、繰り返し抽出物によって処理し、サンプルと0.3μMのセロトニン(5-HT)を組み合わせた。この方法を繰り返し用いて0.1、0.3、1、3、10および30μMのセロトニン(5-HT3)によって処理した後のサンプルの阻害効果を、以下の表16に示す。50%エタノール-水からの牽牛子抽出物のIC50値は27.8 ug/mlであり、50%エタノール-水からの延胡策抽出物では76.5 ug/mlであり、50%エタノール-水からの呂宋果抽出物では138.7 ug/mlであった。
【0118】
【表16】

【0119】
<実験例5> オスのWisterラット食道切片を用いた5-HT4受容体に対する実施例1の抽出物の刺激効果
オスのWisterラットの食道切片および実施例1の50%エタノールからの抽出物を用いて器官槽実験を行い、5-HT4受容体に対する抽出物の刺激効果を測定した。測定方法はBriejer Mらの論文に記載されている(The in vitro pharmacological profile of prucalopride, a novel enterokinetic compound. European Journal of Pharmacology, 423, pp.71-83, 2001;Sonda S et al., Synthesis and pharmacological properties of benzamide derivatives as selective serotonin 4 receptor agonists. Bioorganic & Medicinal Chemistry, 12, pp.2737-2747, 2004)。
【0120】
CO2窒息後にSDラットの開腹術を行い、食道を摘出した。摘出した大腸を平行な2つのあぶみと固定した。
【0121】
抽出物により処理する前に、食道を少なくとも60分間安定化させると、初めの30分の間に食道の張力は徐々に1gになった(サンプル添加前の張力は0.0 g)。抽出物の反応のために、カルバコール(3μM)を食道に加えて収縮を誘導し、食道を安定化し、次いで0.1、0.3、1、3、10、30μMのセロトニン(5-HT)により処理し、この時の最大弛緩強度を100%とした。食道を洗浄した後、15分間隔で溶液を交換し1時間安定化させた。次いで、食道をカルバコール(3μM)により処理して収縮を誘導し、安定化させた。そして、3、10、30、100、300μg/mlの抽出物により処理した後、食道の収縮効果を測定した。この時、食道に収縮効果を示す抽出物のみを、GR13808(30 nM)によって処理した後に処理し、抽出物の5-HT4受容体に対する刺激効果を測定した。結果を以下の表17に示す。
【0122】
50%エタノール-水からの延胡策抽出物のEC50値(半有効濃度)は12.1 ug/mlであり、50%エタノール-水からの牽牛子抽出物では67.4 ug/mlであり、50%エタノール-水からの呂宋果抽出物では38.8 ug/mlであった。
【0123】
【表17】

【0124】
<実験例6> 本発明の抽出物の遅延された胃排出に対する効果の確認
実施例1の50%エタノール-水からの抽出物および実施例3の混合物の遅延された胃排出に対する効果を胃排出遅延モデルを用いて測定した(Ozaki A and Sukamoto et al., Improvement of cisplatin-induced emesis and delayed gastric emptying by KB-R6933, a novel 5-HT3 receptor antagonist. General pharmacology, 33, pp.283-288, 1999)。
【0125】
200〜250gのオスのSDラットに、基本食および水を与え、22-24℃、60〜80RH%(相対湿度%)にて1週間飼育した。そして、ラットを体重別に分け、24時間空腹状態にした。それぞれの抽出物を固定用量の生理食塩水またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC, 3%)に溶解させ、その溶液をラットに経口投与した。60分後、10 mg/kgのシスプラチン(50℃の生理食塩水に溶解させ、投与時に37℃に冷ました)をラットの腹腔に投与した。そして、半固体状の試験食(1.5%MCを含有する0.05%フェノールレッド溶液)1.5mlをそれぞれのラットに経口投与した。15〜30分後、ラットを屠殺して胃を摘出し、胃の中に残存したフェノールレッドの量を測定した。胃とその内容物を0.1N NaOH溶液100mlに20秒間溶解させ、室温に1時間おいた。そして、生じたホモジネート5mlをチューブに移した。次いで、タンパク質を沈殿させるためにトリクロロ酢酸(20%)0.5mlをチューブに加え、2500×gにより20分間遠心分離した。そして、0.5N NaOH 溶液2ml を等量の液体としてチューブに加え、560nmにおける吸光度を測定した(ABS560nm)。胃排出率を以下の式3により算出した。
【0126】
[式3]
胃排出率(%)=[1−(B/A)]×100
A:フェノールレッド投与の直後に胃から回収したフェノールレッドの全量
B:フェノールレッド投与後に胃に残存しているフェノールレッドの量
【0127】
抽出物およびそれらの混合物の遅延された胃排出に対する効果についての結果を、以下の表18および19に示した。各抽出物は遅延された胃排出に対して効果を示し(表18)、抽出物の混合物も遅延された胃排出に対して効果を示した(表19)。特に、延胡索および牽牛子の抽出物の混合物、および延胡索および呂宋果の抽出物の混合物は、最も効果的であった。
【0128】
1) 抽出物の遅延された胃排出に対する効果
【表18】

【0129】
上記の表において、「正常」とは、シスプラチンおよび本発明の抽出物を与えない正常群を表し、「対照」とは、生理食塩水を与えた正の対照群を表す。
【0130】
2)抽出物の混合物の遅延された胃排出に対する効果
【表19】

【0131】
上記の表において、「正常」とは、シスプラチンおよび本発明の抽出物を与えない正常群を表し、「対照」とは、生理食塩水を与えた正の対照群を表す。
【0132】
<実験例7> 本発明抽出物による半固体物の胃排出遅延に対する効果の確認
実施例1の50%エタノール-水からの抽出物および実施例3の混合物の半固体物胃排出効果を、半固体物胃排出モデルを用いて測定した(Calatayud S, Garcia-Zaragoza E, Hernandez C, Quintana E, Felipo V, Esplugues JV, Barrachina MD. Downregulation of nNOS and synthesis of PGs associated with endotoxin-induced delay in gastric emptying. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2002 Dec;283(6):G1360-7)。
【0133】
200〜250gのオスのSDラットに、基本食および水を与え、22-24℃、60〜80RH%(相対湿度%)にて1週間飼育した。そして、ラットを体重別に分け、24時間空腹状態にした。空腹期間中、飲用水は与えたが、実験の3時間前に供給を止めた。それぞれの抽出物を固定用量の生理食塩水またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC, 3%)に溶解させ、その溶液をラットに経口投与した。45分後、動物性食品を粉砕し水に溶かして作製した半固体状の試験食(1.5%MCを含有する0.05%フェノールレッド溶液)2mlをそれぞれのラットに経口投与した。35分後、ラットを屠殺して胃を摘出し、その半固体状の試験食を含む胃の重量を測定した。胃排出率を以下の式4により算出した。
【0134】
[式4]
胃排出(%)=[1−(胃に残存していた半固体食の重量/0時間の胃に残存していた半固体食の重量)]× 100
(「0時間の胃に残存していた半固体食の重量」は、半固体食投与の直後に胃から得られた残存半固体食から測定した。)
【0135】
抽出物およびそれらの混合物の胃排出遅延に対する効果についての結果を、以下の表20および21に示した。各抽出物は胃排出遅延に対して効果を示し(表20)、抽出物の混合物は、抽出物よりも効果的な胃排出遅延に対する効果を示した(表21)。特に、延胡索および牽牛子の抽出物の混合物、および延胡索および呂宋果の抽出物の混合物は、最も効果的であった。
【0136】
1) 抽出物の半固体物胃排出効果
【表20】

【0137】
上記の表において、「対照」とは、抽出物の代わりに生理食塩水を投与する対照群を意味する。
【0138】
2) 抽出物の混合物の半固体物胃排出効果
【表21】

【0139】
上記の表において、「対照」とは、抽出物の代わりに生理食塩水を投与する対照群を意味する。
【0140】
<実験例8> 本発明の抽出物の上部消化管運動性効果の確認
実施例1の50%エタノール-水からの抽出物および実施例3の混合物の上部消化管運動性効果を測定した。
【0141】
220〜230gのオスのSDラットに、基本食および水を与え、22-24℃、60〜80RH%(相対湿度%)にて1週間飼育した。そして、ラットを体重別に分け、24時間空腹状態にした。上部消化管運動性効果を抑制するために、1mg/kgのアトロピン(50℃の生理食塩水に溶解させ、投与時に37℃に冷ました)をラットの腹腔に投与した。次いで、固定用量の各抽出物を生理食塩水またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC, 3%)に溶解させ、その溶液をラットに経口投与した。1時間後、フルオレセインイソシアネート標識化デキストラン(FITC)(生理食塩水に10倍まで希釈した5mMのFITC溶液を用いた)1mlをそれぞれのラットに投与した。15分後、ラットについて剖検を行った。そして、胃幽門部から虫垂までの小腸を均等に10断片に切り分けた。組織を生理食塩水1mlに浸漬し、冷蔵庫においた。1日後、等量のそれぞれの液体の蛍光を検出した。小腸におけるフルオレセインイソシアネート標識化デキストランの分布比を検出値から式5を用いて算出し、胃腸管の運動性を、フルオレセインイソシアネート標識化デキストランの分布についての幾何学的中心として表した。そして、胃を分離し、重量を量って胃排出を測定した。
【0142】
[式5]
1) 断片あたりの蛍光画分=(各断片の蛍光/全蛍光)× 100
2) 幾何学的中心=[Σ(断片あたりの蛍光画分 × 断片番号)]/100
【0143】
それぞれの薬草抽出物およびそれらの混合物の胃腸運動性効果を、以下の表22(本発明の抽出物の遅延された胃腸運動に対する効果)および表23(胃腸運動の遅延モデルにおける本発明の抽出物の胃排出効果)に示した。薬草抽出物の混合物が薬草抽出物よりも効果的であることが確認された。
【0144】
【表22】

【0145】
上記の表において、「対照」とは、抽出物の代わりに生理食塩水によって処理した正の対照群を意味する。
【0146】
【表23】

【0147】
上記の表において、「対照」とは、抽出物の代わりに生理食塩水によって処置した正の対照群を意味する。
【0148】
以下の調製例は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の本発明の抽出物を含有する。ただし、これらの調製例は本発明を具体的に説明することのみを意図しており、決して本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0149】
<調製例1> 注射用製剤の調製
実施例1の抽出物............100 mg
メタ重亜硫酸ナトリウム.........3.0 mg
メチルパラベン.............0.8 mg
プロピルパラベン............0.1 mg
注射用蒸留水..............適量
各成分を当分野に既知の方法によって混合し、総量2mlとした。そしてその混合物を2ml容量のアンプルに充填し、滅菌して注射用製剤を調製した。ゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を調製した。
【0150】
<調製例2> 注射用製剤の調製
実施例2の抽出物............10〜30 mg
メタ重亜硫酸ナトリウム.........3.0 mg
メチルパラベン.............0.8 mg
プロピルパラベン............0.1 mg
注射用蒸留水..............適量
各成分を当分野に既知の方法によって混合し、総量2mlとした。そしてその混合物を2ml容量のアンプルに充填し、滅菌して注射用製剤を調製した。
【0151】
<調製例3> 注射用製剤の調製
実施例3の抽出物............100〜300 mg
メタ重亜硫酸ナトリウム.........3.0 mg
メチルパラベン.............0.8 mg
プロピルパラベン............0.1 mg
注射用蒸留水..............適量
各成分を当分野に既知の方法によって混合し、総量2mlとした。そしてその混合物を2ml容量のアンプルに充填し、滅菌して注射用製剤を調製した。
【0152】
<調製例4> 錠剤の調製
実施例1の抽出物............100〜300 mg
ラクトース...............100 mg
デンプン................100 mg
ステアリン酸マグネシウム........適量
各成分を当分野に既知の錠剤調製法により混合し錠剤化した。
【0153】
<調製例5> 錠剤の調製
実施例2の抽出物............10〜30 mg
ラクトース...............100 mg
デンプン................100 mg
ステアリン酸マグネシウム........適量
各成分を当分野に既知の錠剤調製法により混合し錠剤化した。
【0154】
<調製例6> 錠剤の調製
実施例3の抽出物............100〜1000 mg
ラクトース...............100 mg
デンプン................100 mg
ステアリン酸マグネシウム........適量
各成分を当分野に既知の錠剤調製法により混合し錠剤化した。
【0155】
<調製例7> カプセル剤の調製
実施例1の抽出物............100〜300 mg
ラクトース...............50 mg
デンプン................50 mg
タルク.................2 mg
ステアリン酸マグネシウム........適量
各成分を当分野に既知のカプセル剤調製法によって混合し、ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を調製した。
【0156】
<調製例8> カプセル剤の調製
実施例2の抽出物............10〜30 mg
ラクトース...............50 mg
デンプン................50 mg
タルク.................2 mg
ステアリン酸マグネシウム........適量
各成分を当分野に既知のカプセル剤調製法によって混合し、ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を調製した。
【0157】
<調製例9> カプセル剤の調製
実施例3の抽出物............100〜1000 mg
ラクトース...............50 mg
デンプン................50 mg
タルク.................2 mg
ステアリン酸マグネシウム........適量
各成分を当分野に既知のカプセル剤調製法によって混合し、ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を調製した。
【0158】
<調製例10> 液剤の調製
実施例1の抽出物............100〜300 mg
糖...................20g
異性化糖................20g
レモン香辛料..............適量
精製水.................液剤の総量が100mlになる量
各成分を当分野に既知の液剤調製法によって混合し、100mlの褐色瓶に充填し、滅菌して液剤を調製した。
【0159】
<調製例11> 液剤の調製
実施例2の抽出物............10〜30 mg
糖...................20g
異性化糖................20g
レモン香辛料..............適量
精製水.................液剤の総量が100mlになる量
各成分を当分野に既知の液剤調製法によって混合し、100mlの褐色瓶に充填し、滅菌して液剤を調製した。
【0160】
<調製例12> 液剤の調製
実施例3の抽出物............100〜1000 mg
糖...................20g
異性化糖................20g
レモン香辛料..............適量
精製水.................液剤の総量が100mlになる量
各成分を当分野に既知の液剤調製法によって混合し、100mlの褐色瓶に充填し、滅菌して液剤を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の抽出物またはそれらの混合物は、HT3受容体拮抗作用および/またはHT4受容体刺激作用により胃腸運動性を促進することができるので、胃腸運動性障害を予防および治療するための医薬組成物として、また保健機能食品として用いることができる。
【0162】
[配列表]
【表24−1】

【0163】
【表24−2】

【0164】
【表24−3】

【0165】
【表24−4】

【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果のエタノール抽出物のH2SO4を用いた薄層液体クロマトグラフィー(TLC)の分析結果を示す図である。
【図2】図2は、芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果のエタノール抽出物のKMNO4を用いた薄層液体クロマトグラフィー(TLC)の分析結果を示す図である。
【図3】図3は、5-HT3受容体刺激薬の複数の作用を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の薬草抽出物。
【請求項2】
水、C1〜C4の低級アルコールまたはそれらの混合溶媒から抽出される、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項3】
ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルおよび水から選択される非極性溶媒から抽出される、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項4】
芥子および延胡索の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項5】
芥子の薬草抽出物:延胡策の薬草抽出物の混合比が、1:1から10:1の重量比(w/w)である、請求項4に記載の薬草抽出物。
【請求項6】
芥子および牽牛子の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項7】
芥子の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が1:1から30:1(w/w)である、請求項6に記載の薬草抽出物。
【請求項8】
延胡索および牽牛子の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項9】
延胡策の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が1:1から10:1(w/w)である、請求項8に記載の薬草抽出物。
【請求項10】
延胡索および呂宋果の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項11】
延胡策の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物の混合比が3:1から1:3(w/w)である、請求項10に記載の薬草抽出物。
【請求項12】
牽牛子および呂宋果の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項13】
牽牛子の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物の混合比が1:1から1:10(w/w)である、請求項12に記載の薬草抽出物。
【請求項14】
芥子、延胡索および牽牛子の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項15】
芥子の薬草抽出物:延胡策の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が(1〜30):(1〜10):1(w/w)である、請求項14に記載の薬草抽出物。
【請求項16】
芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果の薬草抽出物の混合物である、請求項1に記載の薬草抽出物。
【請求項17】
芥子の薬草抽出物:延胡策の薬草抽出物:呂宋果の薬草抽出物:牽牛子の薬草抽出物の混合比が(1〜30):(1〜10):1:(1〜10)(w/w)である、請求項16に記載の薬草抽出物。
【請求項18】
胃腸運動性障害の予防および治療のための組成物であって、活性成分として請求項1から17のいずれかの薬草抽出物を含有する組成物。
【請求項19】
胃腸運動性障害が、5-HT3受容体機能亢進および/または5-HT4受容体拮抗作用に起因する障害である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
胃腸運動性障害が、機能性胃腸症、例えば早期満腹感、痛み、胃部不快感、錯覚の満腹感、胸やけ、吐き気および嘔吐;潰瘍性胃腸障害、非潰瘍性胃腸障害;逆流性食道炎、胃の運動性の麻痺;便秘;過敏性腸症候群;過敏性大腸炎;糖尿病性の胃腸運動性障害;化学療法による胃腸運動性障害;および腸閉鎖による消化管の運動障害、ならびに筋緊張性ジストロフィーによる胃腸障害から選択される障害である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
胃腸運動性障害を予防および改善するための医療食品であって、活性成分として請求項1から17のいずれかの薬草抽出物を含有する医療食品。
【請求項22】
粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップまたは飲料である、請求項21に記載の医療食品。
【請求項23】
請求項1に記載の薬草抽出物を調製する方法であって、乾燥した芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の薬草を、水、C1〜C4の低級アルコール、またはそれらの混合物を用いて45〜75℃にて65〜80時間、1から5回抽出することを含む方法。
【請求項24】
芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の薬草抽出物、極性溶媒可溶性抽出物、および非極性溶媒可溶性抽出物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:芥子、延胡索、牽牛子および呂宋果からなる群から選択される1以上の薬草を、水、低級アルコールまたはそれらの混合物によって抽出し、濾過し、濃縮して薬草抽出物を得る第1の工程;第1の工程の薬草抽出物をヘキサン、クロロホルムおよび酢酸エチルによって連続的に処理し、非極性溶媒に可溶性の抽出物を回収する第2の工程;および、第2の工程の非極性溶媒に可溶性の抽出物を、水、メタノール、ブタノールまたはそれらの混合物によって処理し、極性溶媒に可溶性の薬草抽出物を得る第3の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−528343(P2009−528343A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557203(P2008−557203)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000990
【国際公開番号】WO2007/100203
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(501187848)ドン・ア・ファーム・カンパニー・リミテッド (20)
【Fターム(参考)】