説明

藻類処理装置及び方法

【課題】 藻類の個々の発生状況に応じた処理を行って、効率の良い不活化処理を行うことができるような藻類処理装置を提供する。
【解決手段】 この藻類処理装置は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置である。この藻類処理装置は、被処理水中に開口する被処理水流路2中に取り入れた被処理水から群生した藻類Gを分離する分離処理部3と、分離処理部3を通過した被処理水を電気的に処理して被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理部4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼、貯水池、貯水槽等の被処理水中で放電等を行って水中で種々の処理を行う藻類処理装置及び方法に閲する。
【背景技術】
【0002】
水中の殺菌方法として、被処理水中に浸漬させた電極間に被処理水の絶縁破壊電圧未満の電圧を印加する電界処理法が知られているが、さらに電圧を上昇させて水の絶縁破壊電圧以上の電圧を印加すると、電極間で放電を起こす。この放電に伴って紫外線や衝撃波等が発生することが知られており、これらは水中での各種の処理に利用することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、水中でのパルス放電を用いて、取水口や船舶の船底等の水中の各種設備に付着する貝類・藻類などの水生生物の付着を防止する技術が開示されている。この技術では、設備の水生生物の付着位置に、一対の放電用電極を対向して設置し、放電による処理効率を向上させるようにしている。
【0004】
ところで、近年、富栄養化等の原因によって、各地の湖沼、貯水池、あるいは貯水槽等(以下、被処理水と言う。)において、アオコと呼ばれる藍藻プランクトンの大量発生が起こり、悪臭等の水辺の環境問題や、また、有毒物質の生成等の問題を引き起こしている。このようなアオコの発生の抑制や除去の方法として、上記の水中パルス放電は、薬品による除去よりも費用が安い、二次汚染の危険が少ない、等の利点が有ると考えられる。
【0005】
しかしながら、上記従来の技術のような、電極を局所的に配置するような構成では、アオコのような広い領域に発生する水生生物を処理することが難しい。そこで、被処理水中に開口する被処理水流路中に被処理水を処理部に導くようにすることが考えられる。そして、このような藻類処理装置を船体に取り付けることにより、発生している領域や発生が予測される領域へ移動しつつ処理することにより、効率的な処理がなされる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−81119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被処理水流路中に取り入れた被処理水には、様々な生態の藻類が含まれている。アオコの発生の原因となる藻類は、繁殖が進行して群生化するほど浮上してくるので、このような状態のものも当然多く存在する。しかしながら、藻類が群体を形成するのは、増殖の末期であるため、これを処理しても増殖を抑制するには有効ではない。処理すべきは、分散して存在し、これから増殖する藻類であるが、これを含む被処理水を処理しても効率が悪く、処理にかかる時間やエネルギー消費量が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、アオコのような藻類の個々の発生状況に応じた処理を行って、効率の良い不活化処理を行うことができるような藻類処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の藻類処理装置は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水から群生した藻類を分離する分離処理部と、前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理部とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の藻類処理装置は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水中に含まれる藻類を濃縮する濃縮処理部と、前記濃縮処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中の藻類を不活化する不活化処理部とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の藻類処理装置は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水から群生した藻類を分離する分離処理部と、前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に含まれる藻類を濃縮する濃縮処理部と、前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理部とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の藻類処理装置は、前記分離処理部は、濾過手段、遠心分離手段、加圧浮上手段、および凝集沈殿手段のいずれか1つ以上を有することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の。
【0013】
請求項5に記載の藻類処理方法は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理方法であって、前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水から群生した藻類を分離する分離処理工程と、前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理工程とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の藻類処理方法は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理方法であって、前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水中に含まれる藻類を濃縮する濃縮処理工程と、前記濃縮処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中の藻類を不活化する不活化処理工程とを有することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の藻類処理装置は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、処理部を搭載するための水上浮遊構造体と、該浮遊構造体を移動するための水流発生手段とを備え、該水流発生手段によって発生する水流により、被処理水が前記処理部内に流入することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の藻類処理方法は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理方法であって、処理部を搭載する水上浮遊構造体を移動するための水流発生手段を用い、該水流発生手段による水流により、被処理水を前記処理部内に流入させることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の藻類処理装置の運転方法は、被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置の運転方法であって、処理部を搭載する水上浮遊構造体を移動するための水流発生手段を用い、該水流発生手段による水流により、被処理水を前記処理部内に流入させつつ前記水上浮遊構造体を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の藻類処理装置または請求項5に記載の藻類処理方法によれば、被処理水中の藻類の内、群体化して容易に除去可能なものを予め所定の分離手段により除去し、水中に分散する活性な藻類のみを電気的に処理するので、藻類を個々の発生状況に応じて効率良く不活化処理することができる。
【0019】
請求項2に記載の藻類処理装置または請求項6に記載の藻類処理方法によれば、被処理水中の藻類の内、水中に分散する藻類を濃縮させた後に電気的に処理するので、必要な処理体積を大幅に減らし、効率的な藻類の不活化処理を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の藻類処理装置、請求項8に記載の藻類処理方法または請求項9に記載の藻類処理装置の運転方法によれば、水上浮遊構造体を移動するための水流発生手段を用いて被処理水を処理部内に流入させつつ処理するので、藻類の不活化処理をエネルギー効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の第1の実施の形態であって、湖沼や溜池等において発生する藻類を処理するための藻類処理装置であり、湖沼等に浮上する船体1と、船体1に形成された被処理水流路2と、この被処理水流路2に設置された分離処理部3と、この分離処理部3の下流側に設置された不活化処理部4とを有している。不活化処理部4は、この実施の形態では放電処理を行うもので、図2に示すように、被処理水流路2の一部を構成する筒状の導管10と、導管10の軸線に沿って延びる線状の高圧側電極12と、これを取り囲む筒状の接地側電極14とを有している。
【0022】
被処理水流路2は、船体1の前部において喫水線、すなわち、水面を挟むように開口しており、船体1の長手方向に延びて船体1の後部において開口している。したがって、船体1が水面を走行すると、湖水等の被処理水が自然に被処理水流路2に流入して後方へ排出される。
【0023】
分離処理部3は、導入された被処理水から藻類の群体Gなどの浮遊する物体を分離するもので、喫水線より下側にほぼ水平に設置された所定のメッシュの網状の濾過部材60と、この濾過部材60の上面に蓄積した藻類の群体G等の物体を、吸込管(濾過物排出路)61を介して吸い込んで、船体1上の保管槽62に移送する流体移送ポンプ63とを備えている。濾過部材60により濾過された物体は濾過部材60の後半部分にヘドロ状に蓄積するので、流体移送ポンプ63で移送することができる。
【0024】
不活化処理部4は、被処理水流路2の内部にその軸線に沿って延びて配置された線状の高圧側電極12と、これを取り囲む筒状の接地側電極14と、これらの電極間に電界を付与する電源装置22および放電制御装置30を備えている。
【0025】
高圧側電極12は、導管10の一側(ここでは上側)に軸方向に間隔を置いて設けられた開口フランジ16から導管10内に挿入された棒状の絶縁体からなる一対の高圧側支持部材18により両端を支持されている。高圧側電極12は、高圧側支持部材18を挿通する導線20aにより導管10の外部に導出され、船体1を挿通して電源装置22の高圧端子に接続されている。
【0026】
一方、接地側電極14は同じく導管10の開口フランジ24から導管10内に挿入された棒状の絶縁体からなる接地側支持部材26により支持されている。接地側支持部材26は図示例では1本であるが、複数を配置して強固に支持するようにしてもよい。接地側電極14は、接地側支持部材26を挿通する導線20bにより導管10の外部に導出され、電流計28を介して接地されている。
【0027】
この電流計28は放電制御装置30に接続されており、放電制御装置30は、例えば実験的に求めた閾値と電流計28により実測した放電電流値を比較して、アーク放電の発生またはストリーマ放電の消失を検知するようになっている。この場合、単に閾値との比較だけでなく、放電電流値の変化率や変化のパターンを考慮し、アーク発生時やストリーマ放電の消失(電離放電路が消失して電界処理状態へ退行する状態)の時のそれらの特徴を予めデータとして得ておいて、それと実測値を比較することにより、より迅速にかつ正確にアーク放電の発生またはストリーマ放電の消失を検知することができる。
【0028】
電源装置22は、電気エネルギーを時間的に圧縮したパルス電力として放電装置に供給するためのもので、図3に示すように、電源32と、電源32からの電気エネルギーを蓄積するための充分な容量を持つコンデンサ34と、コンデンサ34に蓄積された電気エネルギーを所定のタイミングで電極に送るスイッチ36を備えている。放電制御装置30は、コンデンサ34の充電電圧を電位計38で測定し、これが所定の値になったときに放電するようにスイッチ36を制御する。電源32には、充電電圧調整手段として、例えばDC/DCコンバータ、パルス幅変調器(PWM)及び/又は可変トランスを有するのが好ましい。
【0029】
放電制御装置30は、電流計28の測定値がストリーマ放電の時よりも上昇して、アーク放電が発生していると判断される時には、アーク放電の発生を抑制するように、放電電圧の設定値を下げる。また、電流計28の測定値がストリーマ放電の時よりも低下して、ストリーマ放電が消失しつつあると判断される時には、ストリーマ放電を継続するように放電電圧の設定値を上げる。この際の放電電圧の変化量は、一定であってもよく、あるいはアーク放電の発生の程度によって変化させてもよい。例えば、放電電圧を5kVとした際にアーク放電が検出された場合には、次には4.8kVで放電し、それでもアーク放電が発生したら、4.6kVへ下げるようにする。また、アーク放電の発生が無い安定なストリーマ放電状態が継続する場合には、放電電圧の設定値を維持するようにする。
【0030】
上記のように構成された藻類処理装置の運転方法を説明する。湖沼や貯水池等の水源中で船体1を所定の速度で走行させると、水面に開口する被処理水流路2に被処理水が取り込まれる。被処理水中の水面に浮いている藻類の群体Gのような粗大な物体は、分離処理部3において濾過部材60により濾過され、流体移送ポンプ63により保管槽62に移送される。分離処理部3を通過した被処理水は、不活化処理部4においてストリーマ放電によって不活化処理され、分散して残留する藻類が不活化された後、後方に排出される。
【0031】
この実施の形態では、不活化処理部4において、ストリーマ放電を維持することにより、アオコ等の藻類を主に電界と電磁波の作用によって殺滅するようにしているが、アーク放電のような衝撃波の作用を伴う方法を採用してもよく、また、放電をさせずに電界を掛けるだけの電界処理を行うようにしてもよい。
【0032】
この実施の形態では、被処理水流路2に取り込まれた被処理水中の藻類の内、群体Gを形成していて濾過部材60で容易に分離できるものを分離し、分散した増殖能力の大きいもののみを不活化処理するので、不活化処理部4の負荷が小さく、少ない時間とエネルギーで効率的な不活化処理を行うことができる。
【0033】
図4に示すのは、この発明の他の実施の形態の藻類処理装置を示すもので、被処理水流路2Aには、分離処理部3Aの上流側で三方切換弁64を介して船体1A上の保管槽62に通じる濾過物排出路65が分岐して設けられている。分離処理部3Aには、被処理水流路2Aを塞ぐように所定のメッシュのフィルタ(濾過部材)66が設けられている。分離処理部3Aの下流側には濃縮処理部5が設けられており、被処理水流路2Aはこの濃縮処理部5の下流で濾過水流路67と濃縮水流路68に分岐している。分岐したそれぞれの流路に、船体移動用水流発生手段である水中ポンプ69,70が設けられており、濾過水流路67はそのまま船体1Aの後方に開口し、一方、濃縮水流路68には不活化処理部4Aを経て後方に開口している。不活化処理部4Aの構成は、基本的に先の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
濃縮処理部5はこの実施の形態ではサイクロン分離装置71から構成されている。サイクロン分離装置71は、上部側の細孔を有する大径部72と、下部側の下方に向かって縮径するテーパ部73とを有する周知の構造である。
【0035】
この装置において、移動用水流発生器である水中ポンプ69,70を駆動すると、被処理水が自動的に被処理水路2Aに流入する。流体は下流側の水中ポンプ69,70の吸引力により、大径部72の接線方向からサイクロン分離装置71に流入し、内部で旋回流を形成して藻類等の粒子を中心側に集めて濃縮し、テーパ部73の下方より濃縮水流路68に放出する。藻類が濃縮した被処理水は先の実施の形態と同様に、不活化処理部4Aにおいてストリーマ放電等を受けて不活化処理される。その後被処理水は、それぞれ移動用水流発生器69,70を通過して濾過水流路67、濃縮水流路68の後方開口から排水され、同時に船体に前方向への推進力を与えることとなる。
【0036】
分離処理部3Aには藻類の群体G等が順次蓄積されるので、適当なタイミングで逆洗処理を行う。すなわち、三方切換弁64を切り換えて濾過物排出路65が分離処理部3Aに通じるようにし、その状態で船体移動用水流発生手段である水中ポンプ69,70の一方または両方を逆転させて排水口から水を取り込み、濾過部材66を逆流させて洗浄し、濾過物体を含む水を保管槽62に送るようにする。濾過部材66の詰まりを除いた後、三方切換弁64を切り換えて処理を継続する。
【0037】
この実施の形態では、群体Gが除去されて分散した藻類を含む被処理水を一旦濃縮してから不活化処理するので、先の実施の形態に比べてさらに不活化処理の効率が向上する。すなわち、濃縮水流路68を通過する水のみを処理するので処理流量は少なく、必要な電気エネルギー量も少ない。また、濃縮水流路68は先の実施の形態に比較して小径であり、放電用電極等の不活化処理部4Aの装置構成も小さくて済み、コストを低減させることができる。
【0038】
さらに、この実施の形態では、被処理液の送液に要する動力を船体の移動に要するポンプ動力で兼用できるため、より経済的な処理が行える。尚、本実施例では移動用水流発生器として水中ポンプを例に挙げたが、もちろんスクリューや水中モーターなどの水流発生手段を用いても同様の効果を得られる。さらに、移動用水流発生器は被処理水流路2Aから濾過水流路67までの間に最低1台以上あれば良く、船体の移動と処理液の送液を行うのに十分な水流を発生出来れば、どのような配置や手段でも構わない。
【0039】
この実施の形態では、分離処理部3Aに流路を塞ぐように濾過部材66が設けられているので、所定径以上の粒子はここで除去される。したがって、不活化処理部4Aでの負荷が軽減され、未処理のままの藻類が放出されるおそれが小さい。保管槽62に回収された、群体Gを含む藻類は、処理しなくてもそのまま廃棄できる状態となる。一方、濾過部材66を通過する程度の分散した藻類のみサイクロンで濃縮して、処理を加えることにより、効果的に増殖抑制処理を行うことが出来る。
【0040】
図5および図6はこの発明の他の実施の形態の藻類処理装置を示すもので、船体1Aと、湖沼等の被処理水を汲み上げるポンプ40と、ポンプ40の吸込口から被処理水に向けて延びる吸込配管42と、ポンプ40の吐出口と不活化処理部4Aの導管10をつなぐ給液配管44とを有している。導管10のそれぞれの端部は、三方切替弁11a,11bを介して給液配管44および排液配管45に接続されている。給液配管44および排液配管45により、被処理水流路2Bが構成されている。この実施の形態では三方切替弁11a,11bはニュートラルで閉止位置を取ることができるものである。導管10の内部の構造や電源装置22、放電制御装置30の構成は、図2、図3を用いて説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0041】
導管10の内部には、図6に示すように、一方の端部近傍に所定の(例えば、2.5〜625程度の)メッシュのフィルタ15が設けられている。2つの三方切替弁11a,11bは、導管10を互いに異なる配管に接続するように連動するようになっている。すなわち、フィルタ15と反対側の第1の三方切替弁11aが導管10を給液配管44に接続している時は、フィルタ15側の第2の三方切替弁11bは導管10を排液配管45に接続し、ポンプ40が駆動されるとフィルタ15で被処理液中の固形物を濾過する濾過モードとなる。逆に、第1の三方切替弁11aが導管10を排液配管45に接続し、第2の三方切替弁11bが導管10を給液配管44に接続した時は、ポンプ40が駆動されるとフィルタ15に捕捉された固形物が除去される逆洗モードとなる。ポンプ40および三方切替弁11a,11bは、主制御装置6によりそれぞれ制御される。
【0042】
吸込配管42の下端には、蛇腹状の伸縮可能な取入管46が接続されて水中に延び、下端の取入口48を下向きに開口させている。この取入管46は、下方に向かうに従い拡径するようになっているが、形状はこれに限られるものではない。船体1B上には、取入管46の伸縮を調整するためのリール装置(取入口変位手段)50が設けられており、これは取入管46の先端に接続されたワイヤ52と、これを巻き取るリール54と、これを駆動するモータ56から構成されている。
【0043】
モータ56には、出力軸に設けられたエンコーダ等のセンサ(図示略)が設けられ、主制御装置6はその出力信号を基にワイヤ52の繰り出し量を算出し、取入管46の下端の取入口48の深さ位置を知ることができるようになっている。勿論、取入管46の伸縮を直接に検出するセンサを設置して、その出力を用いても良い。なお、この実施の形態では、主制御装置6は放電制御装置30と別個に設けられているが、一体に設けるようにしてもよい。
【0044】
上記のように構成された藻類処理装置の運転方法を説明する。船体1Bを走行させて藻類の発生が想定される(あるいは検知された)位置に停止させ、取入管46を所定深さまで伸ばす。この藻類の取り入れ深さは、藻類が生息し、かつそれ以外の大きな浮遊物が存在しない深さであることが望ましい。次に、第1の三方切替弁11aが導管10を給液配管44に接続し、第2の三方切替弁11bが導管10を排液配管45に接続する濾過モードとなるように三方切替弁11a,11bを切り換え、ポンプ40を駆動し、所定の流量で不活化処理部4Bの導管10に給液する。これにより、被処理水に含まれる藻類がフィルタ15により捕捉される。
【0045】
所定の時間、濾過モードで運転した後、主制御装置6はポンプ40を停止し、第1の三方切替弁11aが導管10を排液配管45に接続し、第2の三方切替弁11bが導管10を給液配管44に接続する逆洗モードとなるように三方切替弁11a,11bを切り換える。そして、ポンプ40を短時間作動させて、フィルタ15に付着した藻類を導管10の中央側に移動させて再分散させる。この状態で、主制御装置6は処理部2の放電制御装置30に処理開始信号を送り、不活化工程として放電処理を開始する。放電制御装置30は、既述したように、導管10内の被処理水中で所定の放電状態を維持するように、電極間にコンデンサからのパルス電流を供給する。
【0046】
所定の時間放電処理を行った後、主制御装置6は三方切替弁11a,11bを逆洗モードとした状態でポンプ40を作動させて、不活化された藻類を含む被処理水を排液配管45より排出する。これで、処理の1サイクルが終わり、三方切替弁11a,11bを濾過モードに切り換えて、濾過工程を行うことで、新たな処理のサイクルが始められる。
【0047】
このように、この実施の形態では、分散した状態の藻類を含む被処理水を濾過し、藻類を濃縮してから、充分な時間やエネルギーを掛けて放電処理することにより、少ないエネルギーで効率的に不活化処理を行うことができる。
【0048】
上記の実施の形態では、濾過工程の間は放電処理を行っていないが、勿論放電処理を並行して行っても良い。その場合、濾過工程における放電を後の不活化工程とは異なる放電処理とすることができる。例えば、濾過工程の間は電界処理やストリーマ放電とし、後の不活化工程ではアーク放電を用いる等である。
【0049】
また、上記の実施の形態では、濾過モードから放電モードへの移行を時間によって設定したが、例えばフィルタ15の前後の差圧を測定し、またはポンプ40の駆動モータの負荷電流を測定して、フィルタ15の詰まり状況を判断し、それに基づいて濾過モードから放電モードへ移行するようにしてもよい。さらに、上記の実施の形態では、不活化処理後の藻類を水源に戻したが、別のフィルタを有する回収槽に送水してこれを回収するようにしてもよい。
【0050】
また、上記の実施の形態では、導管10を1台設けたが、これを複数並列配置し、いずれかが不活化工程を行っているときに他が濾過工程を行うようにすれば、ポンプ40や電源装置22等を有効活用して処理効率を向上させることができる。
【0051】
以上、この発明を実施の形態に即して説明したが、この発明はこれらに限られるものではない。例えば、上記の実施の形態では、船体の移動は人間が行うようにしているが、他の船舶が通らないような水域であれば、船体の操舵操作を自動的に行うようにしてもよい。その場合、GPS(Global positioning system)のような適当なガイド手段を用いるのが好ましい。上記の実施の形態では、水処理装置を船体に搭載したが、湖沼内に設置したリグや近接した陸上に固定した装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の第1の実施の形態の藻類処理装置を示す図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態の藻類処理装置の不活化処理部の構成を示す図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態の藻類処理装置の不活化処理部の電源装置を示す図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態の藻類処理装置を示す図である。
【図5】この発明の第3の実施の形態の藻類処理装置を示す図である。
【図6】この発明の第3の実施の形態の藻類処理装置の不活化処理部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1,1A,1B 船体
2,2A,2B 被処理水流路
3,3A 分離処理部
4,4A,4B 不活化処理部
5 濃縮処理部
12 高圧側電極
14 接地側電極
15 フィルタ
22 電源装置
30 放電制御装置
32 電源
60 濾過部材
62 保管槽
66 濾過部材
69,70 水中ポンプ(水流発生手段)
71 サイクロン分離装置
G 群体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、
前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水から群生した藻類を分離する分離処理部と、
前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理部とを有することを特徴とする藻類処理装置。
【請求項2】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、
前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水中に含まれる藻類を濃縮する濃縮処理部と、
前記濃縮処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中の藻類を不活化する不活化処理部とを有することを特徴とする藻類処理装置。
【請求項3】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、
前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水から群生した藻類を分離する分離処理部と、
前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に含まれる藻類を濃縮する濃縮処理部と、
前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理部とを有することを特徴とする藻類処理装置。
【請求項4】
前記分離処理部は、濾過手段、遠心分離手段、加圧浮上手段、および凝集沈殿手段のいずれか1つ以上を有することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の藻類処理装置。
【請求項5】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理方法であって、
前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水から群生した藻類を分離する分離処理工程と、
前記分離処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中に残留する藻類を不活化する不活化処理工程とを有することを特徴とする藻類処理方法。
【請求項6】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理方法であって、
前記被処理水中に開口する被処理水流路中に取り入れた被処理水中に含まれる藻類を濃縮する濃縮処理工程と、
前記濃縮処理部を通過した被処理水を電気的に処理して該被処理水中の藻類を不活化する不活化処理工程とを有することを特徴とする藻類処理方法。
【請求項7】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置であって、処理部を搭載するための水上浮遊構造体と、該浮遊構造体を移動するための水流発生手段とを備え、該水流発生手段によって発生する水流により、被処理水が前記処理部内に流入することを特徴とする藻類処理装置。
【請求項8】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理方法であって、処理部を搭載する水上浮遊構造体を移動するための水流発生手段を用い、該水流発生手段による水流により、被処理水を前記処理部内に流入させることを特徴とする藻類処理方法。
【請求項9】
被処理水に浮遊する藻類を不活化する藻類処理装置の運転方法であって、処理部を搭載する水上浮遊構造体を移動するための水流発生手段を用い、該水流発生手段による水流により、被処理水を前記処理部内に流入させつつ前記水上浮遊構造体を移動させることを特徴とする藻類処理装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−167675(P2006−167675A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367083(P2004−367083)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】