説明

藻類増殖抑制方法及びその装置

【課題】 手間が掛からず安価で藻類の増殖を抑制することのできる閉鎖水域における藻類増殖抑制方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーン21,22を有し、微生物を担持可能な微生物保持担体Sを収容する生物反応槽2を閉鎖水域の表層付近に設置し、曝気手段3により生物反応槽2を下方から曝気して、生物反応槽2の内側に緩やかな上昇流と生物反応槽2の外側に緩やかな下降流を発生させると共に、微生物保持担体Sを流動化させることを継続することで藻類の増殖に必要な微量金属を酸化する微量金属酸化微生物を微生物保持担体Sの表面に自然発生的に担持させ、この微生物保持担体Sに担持させた微量金属酸化微生物により生物反応槽2の下部から流入させた閉鎖水域の水に含まれる微量金属を酸化して不溶化させ、酸化させた微量金属酸化物を前記下降流で沈降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダム貯水池などの閉鎖的な水域において、藻類の増殖を抑制する方法、及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダム貯水池や湖沼などの閉鎖的な水域に汚濁水が流入すると、その閉鎖水域内の栄養塩類(リン、窒素などの化合物)の濃度が高まって富栄養化し、そして、夏季などの水温上昇に伴って藻類が大量発生することがある。このような閉鎖水域に藻類が大量発生すると、それ自体が景観障害であると共に、藻類が岸に打ち上げられて腐敗すると悪臭を放ったり、その水域を水道水の水源としているような場合は水道水から異臭味がしたりするという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、従来から、ダム貯水池などの湖沼の湖底付近で曝気循環を行い、水温躍層(日射で温められた比較的高温低密度の水域と、それより深い比較的低温高密度の水域との境界であり、密度差が大きくこれらの水域同士の水の交換が殆どおこらない層のこと)を破壊して表層水温を低下させると共に、藻類を有光層以深に引き込むことにより、藻類の異常増殖を抑制することが行われていた。しかし、大規模な装置が必要であり設備費が高く、且つ、十分な効果を上げていない例が多く見られる。
【0004】
また、特許文献1には、アオコを溶解及び凝集させる能力を有する微生物を固定化した生分解性プラスチック担体を散布するアオコの除去方法が開示されている。しかし、この特許文献1に記載のアオコの除去方法では、生分解性とは云え、閉鎖水域へプラスチック担体を直接的に添加するため、環境への2次汚染や生態系の撹乱を生じさせてしまうという問題がある。
【0005】
特許文献2には、閉鎖性水域の表層水に設置され、微生物を表面に担持する底泥固定化担体が充填された分解処理槽を有し、その分解処理槽の下部から曝気装置により空気曝気を行うことにより、前記閉鎖性水域に発生する藍藻類及びミクロシスチンの異常増殖を抑制する藍藻類及びミクロシスチンの処理装置が記載されている。この特許文献2に記載の藍藻類及びミクロシスチンの処理装置は、特許文献1に記載のアオコの除去方法と同様に、微生物を担持する担体に有効な微生物を選別して固定化したり、底泥を採取して担体の1つ1つに固定化したりしなければならず、手間が掛かるという問題がある。また、効果においても十分ではないという問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−254686号公報
【特許文献2】特開2005−205336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、前記従来の技術の問題点を解決し、手間が掛からず安価で藻類の増殖を抑制することのできる閉鎖水域における藻類増殖抑制方法、及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ダム貯水池などの閉鎖水域において藻類の増殖を抑制する方法であって、上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーンを有し、微生物を担持可能な微生物保持担体を収容する生物反応槽を前記閉鎖水域の表層付近に設置し、曝気手段により前記生物反応槽を下方から曝気して、前記生物反応槽の内側に緩やかな上昇流と生物反応槽の外側に緩やかな下降流を発生させると共に、前記微生物保持担体を流動化させることを継続することで藻類の増殖に必要な微量金属を酸化する微量金属酸化微生物を前記微生物保持担体の表面に自然発生的に担持させ、この微生物保持担体に担持させた微量金属酸化微生物により前記生物反応槽の下部から流入させた前記閉鎖水域の水に含まれる前記微量金属を酸化して不溶化させ、この微量金属酸化微生物により酸化した微量金属酸化物を前記下降流で沈降させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の閉鎖水域における藻類増殖抑制方法に用いられる装置であって、上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーンを有し、微生物を担持可能な微生物保持担体を収容する生物反応槽と、この生物反応槽の下方に所定間隔離間して連結され、空気を送り込んで曝気する曝気手段と、前記生物反応槽を所定深さに吊り下げる連結部材とを有し、前記閉鎖水域の水面付近を移動可能な水面移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、微生物保持担体は、比重が1程度の樹脂製であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、連結部材は、その長さが調整可能となっており、水温躍層の深さに応じて生物反応槽の設置深さが変更可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、前記のように、上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーンを有し、微生物を担持可能な微生物保持担体を収容する生物反応槽を前記閉鎖水域の表層付近に設置し、曝気手段により前記生物反応槽を下方から曝気して、前記生物反応槽の内側に緩やかな上昇流と生物反応槽の外側に緩やかな下降流を発生させると共に、前記微生物保持担体を流動化させることを継続することで藻類の増殖に必要な微量金属を酸化する微量金属酸化微生物を前記微生物保持担体の表面に自然発生的に担持させ、この微生物保持担体に担持させた微量金属酸化微生物により前記生物反応槽の下部から流入させた前記閉鎖水域の水に含まれる前記微量金属を酸化して不溶化させ、この微量金属酸化微生物により酸化した微量金属酸化物を前記下降流で沈降させるので、溶解性マンガンをはじめとする藻類の増殖に必要な微量金属を藻類が摂取できない状態にして、閉鎖水域の藻類増殖ポテンシャルを大幅に低減することができる。そのため、夏場の藻類の大量発生を確実に防ぐことができ、景観障害、悪臭、異臭味等の問題を解決することができる。そのうえ、作業の手間も掛からず設備費や運転費も安価である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーンを有し、微生物を担持可能な微生物保持担体を収容する生物反応槽と、この生物反応槽の下方に所定間隔離間して連結され、空気を送り込んで曝気する曝気手段と、前記生物反応槽を所定深さに吊り下げる連結部材を有し、前記閉鎖水域の水面付近を移動可能な水面移動手段と、を備えたので、水面移動手段で容易に閉鎖水域全域又は特定場所に移動して生物処理し、藻類の増殖に必要な微量金属を沈降させて藻類が摂取できない状態にすることができ、藻類増殖を抑制すべき場所の藻類増殖ポテンシャルを大幅に低減することができる。そのため、夏場の藻類の大量発生を確実に防ぐことができると共に、景観障害、悪臭、異臭味等の問題を解決することができる。そのうえ、作業の手間も掛からず設備費や運転費も安価である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、微生物保持担体は、比重が1程度の樹脂製であるので、前記効果に加え、微生物保持担体をより効果的に流動化させることができ、微量金属酸化微生物の生物反応を促進することができる。このため、微量金属の酸化が効率的に短期間で可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、連結部材は、その長さが調整可能となっており、水温躍層の深さに応じて生物反応槽の設置深さが変更可能となっているので、つまり、季節の移り変わりに伴って変化する水温躍層の深さや厚さに応じて、生物反応槽の設置深さを変えられるので、閉鎖水域の水温躍層より上方の表層水に含まれる微量金属を効率的に酸化することができる。このため、藻類の増殖を効率的に短期間で抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
先ず、本発明に係る藻類増殖抑制装置の実施の形態について図1、2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る藻類増殖抑制装置の概要構成を示す構成説明図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る微生物保持担体の写真である。図1中の符号1は、藻類増殖抑制装置であり、この藻類増殖抑制装置1は、生物反応槽2と、曝気手段3と、水面移動手段である台船4とから主に構成され、ダム貯水池などの閉鎖水域において藻類の増殖を抑制する装置である。
【0018】
この生物反応槽2は、主に上部及び下部が開口した筒状の反応槽本体20からなり、上部に後述の微生物保持担体Sを通さず水の流入・流出が可能なスクリーン21と、同様に下部に微生物保持担体Sを通さず水の流入・流出が可能なスクリーン22とを有し、下部から水を流入して上部から流出可能に構成され、図に示すように、水温躍層の水深の略半分程度の深さ、即ち、表層水の略中央の深さに設置される。このスクリーン21,22は、耐蝕性を考慮して、ステンレス製とするとよい。また、この生物反応槽2内には、微生物を担持可能な微生物保持担体Sが収容されている。
【0019】
この微生物保持担体Sは、表面に微生物が付着し易いようにある程度の凹凸があり、空気曝気により容易に流動化するものであれば形状及び材質については特に限定されないが本実施の形態では、図2に示すように、樹脂から中空円筒状に成形され、比重が1程度になるよう調整されている。このように、本実施の形態に係る微生物保持担体Sは、中空円筒状に形成されているので、体積に比して表面積を大きく取ることができ、このため、多くの微生物を担持して生物反応を促進することができる。また、比重が1程度の樹脂製であるので、下部から曝気するだけで容易に流動化する。
【0020】
曝気手段3は、散気板30と、空気圧送手段である圧送パイプ31とコンプレッサー32と、から主に構成され、複数の固定棒33で生物反応槽2の下方に所定間隔離間して連結されている。この曝気手段3の空気圧送手段であるコンプレッサー32から圧送パイプ31を介して空気を散気板30に送り込んで、生物反応槽2を下方から曝気し、図の矢印で示すように、生物反応槽2の内側に緩やかな上昇流と生物反応槽2の外側に緩やかな下降流を発生させるようになっている。また、生物反応槽2に収容されている微生物保持担体Sは、この曝気手段3の曝気により流動化して、満遍なく閉鎖水域の水と接触する。このため、担持する微生物による生物反応で閉鎖水域の水を処理することができる。
なお、固定棒33は、メンテナンス等を考慮して長さを調節できるようにしてもよい。
【0021】
ところで、従来から藻類の増殖に必要な微量金属(例えば、マンガンMn)を酸化する微量金属酸化微生物が存在することが知られている。しかし、これらの微量金属酸化微生物は、増殖速度が遅く、浮遊状態ではダム貯水池などの閉鎖水域でも大量に増殖することができない。しかし、前述のように、微生物保持担体Sを入れた生物反応槽2を設置し、下方から曝気手段3で曝気することを継続することにより、つまり、好気的な条件下で一定期間流動化し続けることにより、微生物保持担体Sの表面に微量金属酸化微生物を付着増殖させることができる。
【0022】
台船4は、人が操縦する一般的な船であるが、水面移動手段の一実施の形態として例示するものであり、生物反応槽2と曝気手段を吊り下げて水面付近に留まれるだけの浮力を有し、エンジンやモータなどの駆動手段と水中スクリューやプロペラなどの推進手段を備えて、閉鎖水域の水面上の所定の場所へ移動可能に構成されていればよく、例えば、無線で操縦可能な水中スクリューと浮きとを備えて岸などの離れた場所から操縦できるようにしてもよいし、プログラムにより自動でランダムに水面上を動いて閉鎖水域の水面全域を移動して処理できるようにしてもよい。
【0023】
この台船4は、台船4と生物反応槽2の反応槽本体20とを連結する連結手段である複数の可変固定棒40を有し、生物反応槽2を所定の深さ、つまり、水温躍層の水深の略半分程度の深さに吊り下げられるようになっている。また、この可変固定棒40は、その長さが調節可能であり、季節により変化する水温躍層の水深に応じて生物反応槽2の設置深さを変更可能となっている。
【0024】
次に、水温躍層について図3を用いて説明する。図3は、水温躍層と藻類増殖抑制装置の設置位置を示す説明図である。水温躍層とは、前記背景技術でも述べたが、太陽光線が届き日射で温められた比較的高温低密度の水域(表層水)と、それより深く、即ち、有光層以深の比較的低温高密度の水域との境界(界面層)であり、図の水温の水深による変化曲線に示すように、水温がこの層で急激に変化する。このため、両水域の密度差が大きくこれらの水域同士の水の交換が殆どおこらない、つまり、この層を超えて水の対流循環がおこなわれなくなる。この水温躍層は、当然地域により差はあるが、日本では一般的に気温が高く、日射が強くなる春先頃から形成され始め、夏に最深(5m程度)となり、晩秋頃に消滅する。
【0025】
次に、藻類増殖抑制装置1の動作、即ち、本発明に係る閉鎖水域における藻類増殖抑制方法の実施の形態について図1、3を用いて説明する。
先ず、台船4で藻類の増殖が危惧される閉鎖水域の所定位置に春先に移動し、そこで、可変固定棒40の長さを調整して、水温躍層を破壊せずに、水面から水温躍層までの表層水の略中央となるように生物反応槽2(及び曝気手段3)を設置する(図3参照)。このように、表層水の略中央に設置すると効率よく表層水中に含まれる微量金属を酸化・不溶化することができる。
【0026】
次に、曝気手段3を一定期間継続動作させ、生物反応槽2内の微生物保持担体Sを好気的な条件下で一定期間流動化し続けることにより、比較的増殖速度が遅い微量金属酸化微生物(例えば、溶解性マンガンを酸化して不溶化する微生物)を微生物保持担体Sの表面に自然発生的に担持させる。
【0027】
そして、この微量金属酸化微生物の生物反応により図1の矢印方向に流れる水に含まれる微量金属を酸化して不溶化する。不溶化された微量金属酸化物は、次第に凝集して行き、徐々に大きな粒子となっていく。
【0028】
曝気手段3の動作を継続すると、図1の矢印で示すように、生物反応槽2の内側に緩やかな上昇流と生物反応槽2の外側に緩やかな下降流が発生し、即ち、表層水内を循環対流する静かな流れが発生する。また、微量金属酸化物は比重が水より重いので、微量金属酸化物の粒子の大きさが1μm程度ぐらいになると、この下降流の流れに乗って、徐々に沈降して行く。また、この流れはとても緩やかなものなので、微量金属酸化物の粒子が流れの下端に達すると流れから脱して、そのまま水温躍層を超えて沈降して行く。
なお、前述のように、水温躍層を超えて水の循環はおこなわれないので、表層水に含まれる微量金属を殆ど酸化・不溶化すれば、光合成を利用して増殖する藻類は、増殖に必要な溶解性マンガンをはじめとする微量金属を摂取することができず、結果的に、大発生することができなくなる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態に係る閉鎖水域における藻類増殖抑制方法によれば、従来技術のようにダム貯水池などの閉鎖水域にある全水量を対象として生物反応処理するのではなく、表層水のみを対象としているので、最も藻類増殖の可能性のある水域において集中的に、且つ素早く短期間で藻類の増殖に必要な微量金属の濃度を下げることにより、表層水における藻類増殖のポテンシャルを低減することができる。このため、閉鎖水域において夏場の藻類の大量発生を確実に防ぐことができ、景観障害、悪臭、異臭味等の問題を解決することができる。そのうえ、微生物を選別して固定化するような作業手間も掛からず設備費や運転費も安価である。
【0030】
(効果確認実験)
本発明の閉鎖水域における藻類増殖抑制方法の藻類増殖の抑制効果を確認するため、藻類の異常増殖が問題となっているダム貯水池(三春ダム)の流入河川において、以下に示す実験を行った。図4は、実験装置の概要を示す説明図、表1は、図4の実験装置の各水系の水質と藻類の増殖量をクロロフィルa量で示す表である。
図4に示す、I系は、河川水を採取し、砂等を沈殿槽により除去した後、その水を直接試料とする系であり、II系は、I系の水を前述の微生物保持担体が収容された容量5Lの反応槽において10L/hの速度で処理した、即ち、I系の水を30分間担体処理(微量金属酸化微生物をはじめとする微生物保持担体に担持される微生物の生物反応により処理すること)した系であり、同様に、III系は、I系の水を容量5Lの反応槽において2.5L/hの速度、即ち、I系の水を120分間担体処理した系である。これら3系統の試料を数回に分けて採取して、実験室に持ち帰り、各系の水質(全リン、全窒素、溶解性マンガンの濃度)を測定し、その後、ダム貯水池に発生していた藻類をごく微量植種した後8〜10日培養して、増殖した藻類の量をクロロフィルaの濃度で計測した。その計測結果を平均(数回分を平均)したものを以下の表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
上記表1から分かるように、I系〜III系の水は、一般的に富栄養化の原因と考えられているリンや窒素の濃度において差はないが、II系、III系のいずれの水で培養した場合でもI系の水と比較して明らかに、クロロフィルaの濃度が減少しており、藻類増殖が抑制されていることが認められる。これは、リンや窒素の濃度において差がないことから微生物保持担体に担持されている微量金属微生物の働きにより溶解性マンガンが酸化・不溶化されたことにより、藻類の増殖に必要な微量金属(溶解性マンガン)の摂取が阻害されたからと考えられる。
【0033】
以上のように、この発明の実施の形態を説明してきたが、あくまでも一例を示すものであり、生物反応槽、曝気手段、水面移動手段は、従来技術と置換可能である。その場合であっても、前記効果を奏することは明らかである。また、図面で示した各構成の形状や材質等は、あくまでも好ましい一例を示すものであり、その実施に際しては特許請求の範囲に記載した範囲内で、任意に設計変更・修正ができるものである。なお、藻類とは、主に水中に生息する光合成生物(植物)の総称であり、海藻類や植物プランクトンなどを含む意味で使用している。この海藻類は、アオノリなどの緑藻類、コンブやワカメなどの褐藻類、アサクサノリなどの紅藻類といったそれぞれ色も形も生活様式も異なる3群を含み、植物プランクトンは、渦鞭毛藻類や珪藻類,ミドリムシ類などを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態に係る藻類増殖抑制装置の概要構成を示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る微生物保持担体の写真である。
【図3】水温躍層と藻類増殖抑制装置の設置位置を示す説明図である。
【図4】本発明の効果確認実験の実験装置の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 藻類増殖抑制装置
2 生物反応槽
20 反応槽本体
21 スクリーン
22 スクリーン
3 曝気手段
30 散気板
31 圧送パイプ(空気圧送手段)
32 コンプレッサー(空気圧送手段)
4 台船(水面移動手段)
40 可変固定棒(連結手段)
S 微生物保持担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム貯水池などの閉鎖水域において藻類の増殖を抑制する方法であって、
上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーンを有し、微生物を担持可能な微生物保持担体を収容する生物反応槽を前記閉鎖水域の表層付近に設置し、曝気手段により前記生物反応槽を下方から曝気して、前記生物反応槽の内側に緩やかな上昇流と生物反応槽の外側に緩やかな下降流を発生させると共に、前記微生物保持担体を流動化させることを継続することで藻類の増殖に必要な微量金属を酸化する微量金属酸化微生物を前記微生物保持担体の表面に自然発生的に担持させ、
この微生物保持担体に担持させた微量金属酸化微生物により前記生物反応槽の下部から流入させた前記閉鎖水域の水に含まれる前記微量金属を酸化して不溶化させ、
この微量金属酸化微生物により酸化した微量金属酸化物を前記下降流で沈降させることを特徴とする閉鎖水域における藻類増殖抑制方法。
【請求項2】
請求項1に記載の閉鎖水域における藻類増殖抑制方法に用いられる装置であって、
上部及び下部に水の流入又は流出が可能なスクリーンを有し、微生物を担持可能な微生物保持担体を収容する生物反応槽と、
この生物反応槽の下方に所定間隔離間して連結され、空気を送り込んで曝気する曝気手段と、
前記生物反応槽を所定深さに吊り下げる連結部材を有し、前記閉鎖水域の水面付近を移動可能な水面移動手段と、
を備えたことを特徴とする閉鎖水域における藻類増殖抑制装置。
【請求項3】
前記微生物保持担体は、比重が1程度の樹脂製であることを特徴とする請求項2に記載の閉鎖水域における藻類増殖抑制装置。
【請求項4】
前記連結部材は、その長さが調整可能となっており、水温躍層の深さに応じて前記生物反応槽の設置深さが変更可能となっていることを特徴とする請求項2又は3に記載の閉鎖水域における藻類増殖抑制装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−207986(P2009−207986A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52908(P2008−52908)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【Fターム(参考)】