説明

虚像表示装置

【課題】簡易な構成で虚像の表示サイズを大きくすることができ、良好なシースルー観察を可能にする虚像表示装置を提供すること。
【解決手段】支持フレーム123が導光部材21と組み合わせることによって透視部B4を構成する光透過部23kを有するので、画像光の観察のための導光部材21を支持フレーム123に組み付けることで、透視部B4によるシースルーによる外界の観察が可能になる。また、支持フレーム123に光透過部23hを設けることで、導光部材21を軽量化しつつ支持フレーム123の強度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。
【0003】
このような虚像表示装置において、画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系の提案がなされている(特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載の装置では、瞳サイズよりも射出開口の小さい導光光学系を用いる瞳分割方式によってシースルーを実現しているため、虚像の表示サイズを大きくすることが困難である。また、瞳サイズよりも小さい導光光学系を用いるため、人間の個々の眼幅に対応するために有効瞳径(虚像の取り込みを可能にする採光径であり、アイリング径とも呼ぶ)を大きくすることが困難である。また、物理的に瞳付近に導光光学系の射出開口や筐体が配置されるため、死角が生じてしまい完全なシースルーとはいえなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−3879号公報
【特許文献2】特開2010−224473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で虚像の表示サイズを大きくすることができ、アイリング径を大きく確保することができ、良好なシースルー観察を可能にする虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)導光部と、導光部に画像光を入射させる光入射部と、導光部によって導かれた画像光を外部に射出させる光射出部とを有し、光射出部を介して画像光の観察を可能にする導光部材と、(b)導光部材を支持する支持フレームとを備え、(c)支持フレームが、導光部材と組み合わせることによって透視部を構成する光透過部を有する。
【0008】
上記虚像表示装置では、支持フレームが導光部材と組み合わせることによって透視部を構成する光透過部を有するので、画像光の観察のための導光部材を支持フレームに組み付けることで、透視部によるシースルーによる外界の観察が可能になる。また、支持フレームに光透過部を設けることで、導光部材を軽量化しつつ支持フレームの強度を高めることができる。なお、導光部材の光射出部側において画像光に重ねて外界光のシースルー観察を可能にすることで、虚像の表示サイズを大きくすることができる。また、光射出部を瞳に近づけて瞳分割を行う必要がなくなり、アイリング径を大きく確保することができる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、上記虚像表示装置において、導光部が、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする第1反射面と第2反射面とを有し、光入射部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、光射出部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面を有し、第4反射面に、ハーフミラーが施されており、光透過部が、導光部材に接合される楔状の部材を有する。この虚像表示装置では、光入射部の第3反射面で反射された画像光が導光部の第1及び第2反射面で全反射されつつ伝搬され、光射出部の第4反射面で反射されて虚像として観察者の眼に入射する。この場合、導光部材を多面体ブロック状の外形を有するものとして形成可能になり、導光部材の高精度で観察可能になる。また、第4反射面のハーフミラー越しのシースルー観察を光透過部によって歪みの少ないものとできる。
【0010】
本発明の別の側面では、光透過部が、ハーフミラーを介して第4反射面に接着される光透過面を有する。この場合、光透過部の加工精度を導光部材に比較して低く設定することができ、光透過部の光透過面を導光部材の第4反射面に接着することで不要光の発生を低減できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、光透過部が、第1反射面と第2反射面とに対してそれぞれ平行に配置される第1面と第2面とを有する。これにより、透視部によるシースルー観察が平坦性の高いものとなる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、支持フレームが、導光部材を位置決めする位置決め部材を有する。これにより、支持フレームに対する導光部材の正確な設置が可能になり、支持フレームを装着する観察者に対して画像光による精密な虚像の形成が可能になる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、導光部材が、第1反射面と第4反射面との間に端面を有し、支持フレームが、位置決め部材として、第1面と光透過面との間に形成されて端面に対向する係止面を有する。これにより、第1及び第2反射面に対して傾斜して配置される第4反射面と光透過面とを比較的精密に位置決めすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、導光部材が、第1、第2、第3、及び第4反射面を側面とし、第1、第2、第3、及び第4反射面にそれぞれ隣接する上面と下面とを有し、支持フレームは、導光部材を上面側と下面側とから挟むように保持する。これにより、導光部材の支持が安定し導光部材の取り付け精度をさらに高めることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の第1反射面が、光透過部の第1面と同一の平面上に位置決めされて配置される。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の第2反射面は、光透過部の第2面と同一の平面上に位置決めされて配置される。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、画像光を形成する画像表示装置と、画像表示装置から射出された画像光を入射させる投射光学系とを備え、画像表示装置における第1部分領域から射出される第1画像光の導光部における反射回数と、導光に際して反射によって光路の折り返しが生じる閉じ込め方向に関して第1部分領域とは異なる第2部分領域から射出される第2画像光の導光部における反射回数とは、互いに異なる。この場合、反射回数の異なる画像光を利用することで、光射出部から射出される画像光の射出角度の角度幅を広くとることができる。つまり、画像表示装置における異なる表示領域又は部分領域からの画像光を比較的広い視野角で取り込むことができるようになり、光射出部越しに観察される虚像の表示サイズを大きく確保することができる。このように反射回数が異なる画像光を取り出す構造とすることにより、導光部をあまり厚くすることなく瞳を覆うように光射出部を大きくすることができるので、良好なシースルー観察が可能になる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、閉じ込め方向が、投射光学系を通る第1光軸と前記第3反射面の法線とを含む断面に平行な方向である。上記閉じ込め方向に関して異なる位置からの画像光は、射出角度すなわち光入射部への入射角度を互いに異なるものとすることで、導光部における反射回数を異なるものとできる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、導光部材と支持フレームとが、射出成型によってそれぞれ独立して一体的に成型される。この場合、射出成型技術を利用して導光部材や支持フレームを高精度で量産することができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、導光部材と支持フレームとが、熱重合型の樹脂材料によってそれぞれ成型される。この場合、樹脂によって軽量化や安全性を高めることができ、熱硬化によって安定した高精度の成型が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の部分断面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は導光部材の正面図であり、(B)は導光部材の下面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材の右側面図である。
【図4】(A)は支持フレームの裏面図であり、(B)は支持フレームのBB断面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材のCC断面図である。
【図5】第1表示装置の本体部分を説明する斜視図である。
【図6】(A)は、導光部材の光入射部における第3反射面の構造を説明する図であり、(B)は、導光部材の導光部における第1、2反射面の構造を説明する図であり、(C)は、導光部材の光射出部における第4反射面の構造を説明する図である。
【図7】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図8】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図9】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図10】(A)は、変形例における画像光の導光状態を説明する図であり、(B)は、変形例における液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図である。
【図11】導光部材に稜を除去するような端面を設けている理由を説明する図である。
【図12】導光部材に設けるハーフミラー層を端面から離している理由を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0023】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持する支持部121と、支持部121のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。なお、第1駆動部131と第2駆動部132とは、遮光用及び保護用のケース141に個別に収納されている。
【0024】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0025】
図2(A)等に示す第1表示装置100Aにおいて、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。画像形成装置10については、図1におけるケース141を除いた本体部分を図示している。なお、図2(A)において導光装置20の部分は、図2(B)のAA矢視断面図となっている。
【0026】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0027】
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、駆動制御部34等を動作させる電源は、軽量化のため画像形成装置10の外部に設けること、すなわち外付けとすることができる。また、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。投射光学系12は、図2(A)では鏡筒12aのみを示すが、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0028】
液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、投射光学系12を通る第1光軸AX1と、後述する導光部材21の第3反射面21cに平行な特定線とを含む縦断面の延びる方向に対応し、第2方向D2は、上記第1光軸AX1と、上記第3反射面21cの法線とを含む横断面の延びる方向に対応する。言い換えれば、第1方向D1は、後述する導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとの交線CLに平行な方向であり、第2方向D2は、上記第1反射面21aの平面と平行であり、上記第1反射面21aと第3反射面21cとの交線CLに垂直な方向となっている。つまり、液晶表示デバイス32の位置において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。
なお、液晶表示デバイス32の有効サイズは、第1方向D1よりも第2方向D2に長い横長となっている。一方、投射光学系12の射出開口幅は、第2方向D2よりも第1方向D1に長い縦長となっている。
【0029】
導光装置20は、導光部材21とフレーム部分23とを備え、導光部材21は、フレーム部分23に接合されて、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0030】
導光装置20のうち、導光部材21は、第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当するものとなり、導光に際して反射によって折り返されない縦方向すなわち自由伝搬方向は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。
【0031】
導光部材21は、図3(A)〜3(D)に示すように、平面視において台形のプリズム状部材であり、フレーム部分23は、図4(A)〜4(D)に示すように、正面視においてH字状の支持フレーム123の半分であり、コ字状又はU字状の外観を有する。導光部材21は、支持フレーム123に対してそのくり抜き部SPを埋めるように嵌合しており、支持フレーム123の中央部材24aと上側支持部材24bと下側支持部材24cとに接合されて固定されている。図5にも示すように、支持フレーム123の上側支持部材24bの先端部に設けた第1連結部24eと下側支持部材24cの先端部に設けた第2連結部24fとは、ネジ(不図示)等によって投射光学系12の鏡筒12aに連結されている。
【0032】
図3(A)〜3(D)等に示すように、導光部材21は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第4反射面21dとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3、及び第4反射面21a,21b,21c,21dに隣接するとともに互いに対向する上斜面21eと下斜面21fとを有する。さらに、導光部材21は、上斜面21eと第1反射面21aとの境界に上斜面21eに沿って直線状に延びる第1凸状部21mを有し、下斜面21fと第1反射面21aとの境界に下斜面21fに沿って延びる直線状に第2凸状部21nを有する。
【0033】
ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第4反射面21dは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第4反射面21dを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、以下に詳述するが、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21jが設けられている。また、第1反射面21aと第4反射面21dとの間にも、稜を除去するように端面21iが設けられている。
【0034】
第1凸状部21mは、導光部材21を支持フレーム123の上側支持部材24bに固定する際のガイド及び支持体となっており、段差面21sと側面21tとが上側支持部材24bの段差面24sと側面24tとに接着剤を介してそれぞれ接合される。第2凸状部21nは、導光部材21を支持フレーム123の下側支持部材24cに固定する際のガイド及び支持体となっており、段差面21sと側面21tとが下側支持部材24cの段差面24sと側面24tとに接着剤を介してそれぞれ接合される。
【0035】
図2(A)に戻って、導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、一体形成品であるが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0036】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための矩形の全反射ミラーであり、ミラー層25を有し保護層26で被覆されている(図6(A)参照)。このミラー層25は、全反射のコーティングであり、導光部材21の斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
【0037】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aは、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通の面部分となっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、ミラー層等の反射コートが施されていない。ただし、第1及び第2反射面21a,21bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層27で被覆されている(図6(B)参照)。このハードコート層27は、導光部材21の平坦面FS上にUV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光装置20の奥側即ち光射出部B3を設けた−X側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0038】
以上の第1及び第2反射面21a,21bでの全反射は、ハードコート層27の屈折率の設定によっており、ハードコート層27の表面SSの内側で生じさせることができるが、平坦面FSの内側で生じさせることもできる。
【0039】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第4反射面21dとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための表側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第4反射面21dは、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるための矩形の平坦面であり、例えばその一部にハーフミラー層28を有している(図6(C)参照)。このハーフミラー層28は、導光部材21の第3反射面21c側の斜面RS上にAg等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。ハーフミラー層28の反射率は、例えば20%に設定され、透過率は、例えば80%に設定される。第4反射面21dは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。なお、第4反射面21dを透過した画像光GLは、フレーム部分23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0040】
以下、フレーム部分23の光学的な側面について説明する。フレーム部分23は、導光部材21の本体と同一の屈折率を有し、第1面23aと、第2面23bと、第3面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第3面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第4反射面21dに対向して平行に配置されている。フレーム部分23は、導光部材21と同様に、視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。フレーム部分23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化させることで形成されている。
【0041】
フレーム部分23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第1及び第2面23a,23bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層で被覆されている。第3面23cは、矩形の透過面であり、導光部材21の第4反射面21dと合致するように第1面23aに対して例えば155°〜153°の鈍角で傾斜し、第2面23bに対して例えば25°〜27°の鋭角で傾斜している。つまり、第3面23cと第2面23bとの成す角は、導光部材21の第1反射面21aと第4反射面21dとが成す鋭角βと等しいものとなっている。同様に、第3面23cと第1面23aとの成す角は、導光部材21の第2反射面21bと第4反射面21dとが成す鋭角εと等しいものとなっている。
【0042】
フレーム部分23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍すなわち、観察者の眼前に対向する部位において、透視部B4を構成している。フレーム部分23のうち透視部B4を構成する透明な部分は、良好なシースルー観察を可能にする部分であり、光透過部23kと呼ぶものとする。この光透過部23kのうち、互いに鋭角を成す第2面23bと第3面23cとに挟まれて−X方向に広がる楔状の部材23mは、同様に楔状の光射出部B3と接合されることにより、全体として平板状の透視部B4におけるX方向に関する中央部分を構成する。光透過部23kの第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL'を高い透過率で透過させる。第3面23cも、外界光GL'を高い透過率で透過させる光透過面であるが、導光部材21の第4反射面21dがハーフミラー層28を有していることから、第3面23cを通過する外界光GL'は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL'とを重畳させたものを観察することになる。
【0043】
〔C.支持フレームの構造〕
以上で説明したフレーム部分23は、図4(A)〜4(D)に示す支持フレーム123のうち左眼用の半分である。つまり、支持フレーム123は、図3(A)に示す導光部材21と鏡対称に配置される導光部材を周囲から支持するフレーム部分23を右眼用の半分として有する。
【0044】
支持フレーム123において、中央部材24aは、左右一対の光透過部23kを有している。中央部材24aの中央下部には、鼻パッドを嵌め込むためのくり抜き24xが形成されている。中央部材24aの左側に延びるフレーム部分23は、光透過部23kと、上側支持部材24bと、下側支持部材24cとを有している。これらのうち、上下一対の上側支持部材24bと下側支持部材24cとは、左側の導光部材21を上下から挟んで光透過部23kを固定している。これらの支持部材24c,24bと光透過部23kとの協働により、導光部材21は、光透過部23kに対して、上下のY方向に関してだけでなく、左右のX方向及び前後のZ方向に関しても正確に位置決めされて固定される。なお、以上は、中央部材24aの左側に延びるフレーム部分23の説明であったが、中央部材24aの右側に延びるフレーム部分23も、左右を反転させただけで、同様のものとなっている。
【0045】
支持フレーム123の各フレーム部分23にプリズム状の導光部材21を固定する際には、支持フレーム123の中央部材24aに設けた第3面23cに対して導光部材21の第4反射面21dを接着剤を介して接合する。このような貼り合わせの際、導光部材21の端面21iを第3面23cと第1面23aとの境界に形成された係止面23gに軽く押し付けるように当接させつつ導光部材21をくり抜き部SPに嵌め込むことで、導光部材21をフレーム部分23に対して精密に位置決めできる。つまり、フレーム部分23の係止面23gは、第1面23aに対して垂直でYZ面に平行であり、X方向のアライメント機能を有する。また、フレーム部分23のうち第3面23cの上下の縁に形成された挟持面23qは、第1面23a等に対して垂直でXZ面に平行であり、Y方向のアライメント機能を有する。上下の支持部材24b,24cの側面24tも、XZ面に平行であり、Y方向について補助的なアライメント機能を有する。さらに、上下の支持部材24b,24cの段差面24sは、XY面に平行であり、Z方向の補助的なアライメント機能を有する。つまり、フレーム部分23のうち、係止面23g、挟持面23q、側面24t、及び段差面24sは、導光部材21を位置決めするための位置決め部材として機能している。
【0046】
なお、以上の位置決め部材のうち、フレーム部分23の係止面23gは、導光部材21の端面21iと等しいZ方向の幅を有するので、導光部材21の端面21iをフレーム部分23の係止面23gに押し付けつつ、導光部材21の第4反射面21dとフレーム部分23の第3面23cとの間に接着剤を挟んで押圧するだけで、導光部材21のX方向の精密な位置決めが可能になるだけでなく、導光部材21の第1反射面21aをフレーム部分23の第1面23aと同一平面上に簡単に配置できるとともに、導光部材21の第2反射面21bをフレーム部分23の第2面23bと同一平面上に簡単に配置できる。また、第3面23cと第4反射面21dとの間における接着剤の厚みを薄くでき接着剤の厚み調整も容易であるので、フレーム部分23と導光部材21の光射出部B3との配置関係はZ方向に関しても極めて精密なものとなる。つまり、フレーム部分23に対して導光部材21の光射出部B3が前後にずれることを防止できる。なお、端面21iは、鏡面とすることもできるが、例えば比較的高い反射率のコート又は粗面を施すこともできる。
【0047】
各フレーム部分23に設けた上側支持部材24bは、導光部材21の取付けに際して導光部材21の上側の被挟持面21qをY方向に関してアライメントする上述の挟持面23qのほか、導光部材21の上側の第1凸状部21mをZ方向に関して支持する段差面24sと、Y方向に関して位置決めする側面24tとを有する。導光部材21の第1凸状部21mは、接着剤によって上側支持部材24bの段差面24sと側面24tとに固定される。なお、導光部材21の取付けに際しては、導光部材21の上斜面21eも、接着剤を介して上側支持部材24bに設けた上内面23dに接合される。さらに、導光部材21の上側の被挟持面21qは、接着剤を介して上側支持部材24bの挟持面23qに接合される。以上のように、上側支持部材24bを利用して導光部材21をフレーム部分23に固定することで、ハーフミラー層28を有する第4反射面21dに過度の負担がかかることを防止できる。
【0048】
各フレーム部分23に設けた下側支持部材24cは、導光部材21の下側の被挟持面21qをY方向に関してアライメントする上述の第2挟持面23qのほか、導光部材21の取付けに際して導光部材21の下側の第2凸状部21nをZ方向に関して支持する段差面24sと、Y方向に関して位置決めする側面24tとを有する。導光部材21の第2凸状部21nは、接着剤によって上側支持部材24bの段差面24sと側面24tとに固定される。なお、導光部材21の取付けに際しては、導光部材21の下斜面21fも、接着剤を介して下側支持部材24cに設けた下内面23eに接合される。さらに、導光部材21の下側の被挟持面21qは、接着剤を介して上側支持部材24bの挟持面23qに接合される。以上のように、下側支持部材24cを利用して導光部材21をフレーム部分23に固定することで、ハーフミラー層28を有する第4反射面21dに過度の負担がかかることを防止できる。
【0049】
上側支持部材24bの端部と下側支持部材24cの端部とにそれぞれ設けた連結部24e,24fは、投射光学系12の鏡筒12aをフレーム部分23に固定するために用いられるだけでなく、図1のケース141を取り付けるために利用される。
【0050】
〔D.画像光の光路の概要〕
図7(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0051】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φの上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ(|φ|=|φ|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ,φは、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0052】
図7(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向(閉じ込め方向又は合成方向)D2の光路を説明する図である。第2方向(閉じ込め方向又は合成方向)D2に沿った横断面すなわちXZ面(展開後のX'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GLcとし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GLdとする。図7(B)中には、参考のため、右寄り内側から射出される画像光GLeと、左寄り内側から射出される画像光GLfとを追加している。
【0053】
右側の第1表示点P1からの画像光GLcは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θの右向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GLdは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ(|θ|=|θ|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ,θは、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0054】
なお、第2方向D2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GLc,GLdが反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GLc,GLdが導光部材21中で不連続に表現されている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GLc,GLdの導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GLcの射出角度θ'と左側の画像光GLdの射出角度θ'とは異なるものに設定されている。
【0055】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GLc,GLdは、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0056】
〔E.横方向に関する画像光の光路〕
図8は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0057】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θの傾きで平行光束として射出される。
【0058】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ(θ≒θ)の傾きで平行光束として射出される。
【0059】
図8において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS'を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS"を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS',IS"の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察可能であることになる。
【0060】
図9(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図9(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図9(C)及び9(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図9(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図9(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図9(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図9(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0061】
図9(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図9(B)に示す重複画像ISを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像ISについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。なお、重畳の生じている帯域SAの横幅又は重畳幅は、液晶表示デバイス32を照明する照明光SLの角度範囲を制御することで調整可能である。本実施形態では、照明光SLの角度範囲を特に調節していないので、バックライト導光部31b等の発散特性に応じた横幅又は重畳幅の帯域SAが存在することになる。
【0062】
以上では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1部分領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2部分領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0063】
〔F.その他〕
図10(A)は、図2(A)等に示す導光部材21の変形例を説明する図である。以上の説明では、導光部材21を伝播する画像光が第1及び第2反射面21a,21bに対して2つの反射角γ1,γ2のみで全反射されるとしたが、図10(A)に示す変形例の導光部材21のように、3つの成分の画像光GL31,GL32,GL33が反射角γ1,γ2,γ3(γ1>γ2>γ3)でそれぞれ全反射されることを許容することもできる。この場合、液晶表示デバイス32から射出される画像光GLは、3つのモードで伝搬され、観察者の眼EYの位置において合成されて虚像となる。この場合、図10(B)に示すように、有効表示領域A0の左側に例えば計3回全反射による投射像IM21が形成され、有効表示領域A0の中央寄りに例えば計5回全反射による投射像IM22が形成され、有効表示領域A0の右側に例えば計7回全反射の投射像IM23が形成される。
【0064】
図11は、図2(A)等に示す導光部材21に稜を除去するような端面21jを設けている理由を説明する拡大図である。導光部材21の稜121jに近い位置に入射した画像光GLは、第3反射面21cで反射された後に第1反射面21aで反射されるが、第1反射面21aでの反射後に第3反射面21cで再度反射されてしまう。このような再反射光HLは、結果的に望まれないゴースト光となるので、予め除去することが望ましい。このため、稜121jを除去して端面21jを設け、光路に制限を設けている。
【0065】
図12は、図2(A)等に示す導光部材21の第3反射面21cに付随して設けるハーフミラー層28が端面21iから離れて形成されている理由を説明する拡大図である。このように端面21iから所定距離だけ離してハーフミラー層28を設けることで、導光部材21を伝播する正規の画像光GLが第4反射面21dで2度以上反射され不要光HLとして観察者の眼EYに入射すること、或いは3回未満の反射で導光部B2を通過する画像光等である不要光HLが第4反射面21dで2度以上反射されて観察者の眼EYに入射すること等を防止することができ、ゴースト光が観察者の眼に入射することを防止することが可能となる。
【0066】
以上説明した実施形態の虚像表示装置100では、光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLが導光部の第1及び第2反射面21a,21bで全反射されつつ伝搬され、光射出部B3の第4反射面21dで反射されて虚像として観察者の眼EYに入射する。この際、画像表示装置11の第1表示点P1を含む第1部分領域A10から射出される第1画像光GL11,GL12の導光部における反射回数と、画像表示装置11の第2表示点P2を含む第2部分領域A20から射出される第2画像光GL21,GL22の導光部B2における反射回数とが異なるので、光射出部B3から射出される画像光GLの射出角度の角度幅を広くとることができる。つまり、画像表示装置11における異なる部分領域A10,A20からの画像光GLを比較的広い視野角で取り込むことができるようになり、光射出部B3越しに観察される虚像の表示サイズを大きく確保することができる。このように、反射回数が異なる画像光GLを取り出す構造とすることにより、導光部B2をあまり厚くすることなく瞳を覆うように光射出部B3を大きくすることができるので、光射出部B3を瞳に近づけて瞳分割を行う必要がなくなり、アイリング径を大きく確保することができ、良好なシースルー観察も可能になる。
【0067】
また、上記虚像表示装置100では、支持フレーム123が導光部材21と組み合わせることによって透視部B4を構成する光透過部23kを有するので、画像光の観察のための導光部材21を支持フレーム123に組み付けることで、透視部B4によるシースルーによる外界の観察が可能になる。また、支持フレーム123に光透過部23kを設けることで、導光部材21を軽量化しつつ支持フレーム123の強度を高めることができる。
【0068】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
上記実施形態では、フレーム部分23において第3面23cと第1面23aとの境界の全域に亘って係止面23gを形成しているが、第3面23cと第1面23aとの境界の一部に係止面23gを設けて導光部材21の端面21iと部分的に対向させることによっても位置決めが可能である。
【0070】
上記実施形態では、導光部材21において第1反射面21aと第4反射面21dとの境界の全域に亘って端面21iを形成しているが、第1反射面21aと第4反射面21dとの境界の一部に端面21iを設けてフレーム部分23の係止面23gと部分的に対向させることによっても位置決めが可能である。
【0071】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0072】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図9(B)に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0073】
上記実施形態では、第4反射面21dに設けたハーフミラー層28の反射率を20%としてシースルーを優先しているが、ハーフミラー層28の反射率を50%以上として画像光を優先することもできる。なお、ハーフミラー層28は、導光部材21側でなく、フレーム部分23の第3面23c上に形成することもできる。
【0074】
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
【0075】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0076】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光射出面OSを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0077】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0078】
上記の説明では、導光部材21の第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。以上のようなコートは、フレーム部分23の第1及び第2面23a,23bにも同様に適用可能である。
【0079】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。つまり、支持フレーム123は、一対の導光部材21を同一平面上に平行に配置するものとなる。
【符号の説明】
【0080】
10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20…導光装置、 21…導光部材、 21a,21b,21c,21d…第1〜第4反射面、 21e…上斜面、 21f…下斜面、 21j,21i…端面、 21m,21n…凸状部、 23…フレーム部分、 23a,23b,23a…面、 23k…光透過部、 23g…係止面、 24a…中央部材、 24b…上側支持部材、 24c…下側支持部材、 24e,24f…連結部、 25…ミラー層、 26…保護層、 27…ハードコート層、 28…ハーフミラー層、 31…照明装置、 32…液晶表示デバイス、 34…駆動制御部、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 111,112…パネル部分、 121…支持部、 123…支持フレーム、 131,132…駆動部、 141…ケース、 A0…有効表示領域、 AX1,AX2…光軸、 B1…光入射部、 B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 EY…眼、 FS…平坦面、 GL…画像光、 GL'…外界光、 GL11,GL12,GL21,GL22…画像光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光部と、前記導光部に画像光を入射させる光入射部と、前記導光部によって導かれた画像光を外部に射出させる光射出部とを有し、前記光射出部を介して前記画像光の観察を可能にする導光部材と、
前記導光部材を支持する支持フレームとを備え、
前記支持フレームは、前記導光部材と組み合わせることによって透視部を構成する光透過部を有する、
虚像表示装置。
【請求項2】
前記導光部は、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする第1反射面と第2反射面とを有し、
前記光入射部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、
前記光射出部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面を有し、
前記第4反射面には、ハーフミラーが施されており、
前記光透過部は、前記導光部材に接合される楔状の部材を有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記光透過部は、前記ハーフミラーを介して前記第4反射面に接着される光透過面を有する、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記光透過部は、前記第1反射面と第2反射面とに対してそれぞれ平行に配置される第1面と第2面とを有する、請求項3に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記支持フレームは、前記導光部材を位置決めする位置決め部材を有する、請求項3及び4のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記導光部材は、前記第1反射面と前記第4反射面との間に端面を有し、
前記支持フレームは、前記位置決め部材として、前記第1面と前記光透過面との間に形成されて前記端面に対向する係止面を有する、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記導光部材は、前記第1、第2、第3、及び第4反射面を側面とし、前記第1、第2、第3、及び第4反射面にそれぞれ隣接する上面と下面とを有し、
前記支持フレームは、前記導光部材を前記上面側と前記下面側とから挟むように保持する、請求項3から6までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記導光部材の前記第1反射面は、前記光透過部の前記第1面と同一の平面上に位置決めされて配置される、請求項3から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部材の前記第2反射面は、前記光透過部の前記第2面と同一の平面上に位置決めされて配置される、請求項3から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光を入射させる投射光学系とを備え、
前記画像表示装置における第1部分領域から射出される第1画像光の前記導光部における反射回数と、導光に際して反射によって光路の折り返しが生じる閉じ込め方向に関して前記第1部分領域とは異なる第2部分領域から射出される第2画像光の前記導光部における反射回数とは、互いに異なる、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
前記閉じ込めは、前記投射光学系を通る第1光軸と前記第3反射面の法線とを含む断面に平行な方向である、請求項10に記載の虚像表示装置。
【請求項12】
前記導光部材と前記支持フレームとは、射出成型によってそれぞれ独立して一体的に成型される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項13】
前記導光部材と前記支持フレームとは、熱重合型の樹脂材料によってそれぞれ成型される、請求項12に記載の虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−163656(P2012−163656A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22441(P2011−22441)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】