説明

虫類捕獲装置

【課題】虫類をより局所的に集中させるように誘引することによって捕獲効率を向上させ、駆除効率を向上させた虫類捕獲装置を提供する。
【解決手段】基体に、虫類を誘引する誘引手段と、同誘引手段により誘引された虫類を吸引する吸引手段と、同吸引手段により吸引された虫類を捕獲する捕獲手段とを備えた虫類捕獲装置において、前記吸引手段は、吸引口を下方に向けて前記基体の上部に配置するとともに、前記誘引手段は、前記前記吸引手段から所定間隔だけ離隔した前記基体の下部に配置し、しかも、前記誘引手段は、表面を黒色として上方に向けて突出させた凸部で構成する。前記凸部は、前記吸引口の鉛直下方に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫類捕獲装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蚊などの人にとって害虫となり得る虫類から身を守る方法として、あらかじめ衣服や皮膚に虫除けと呼ばれる忌避剤を塗って忌避したり、あるいは所要の殺虫成分を有した殺虫剤を蒸散させて駆除したりする方法などが知られている。
【0003】
忌避材を用いた場合には虫類の接近を抑制できるだけであって、虫類の実数には変化が無く、根本的な問題の解決手段とは成りえず、また、殺虫剤によって虫類を駆除する場合には、虫類の実数を減少させることはできるものの、殺虫成分が環境や人体に悪影響を与えるおそれを完全には無視できないので、長期的な使用が憚られる場合があった。
【0004】
そこで、人体や環境に対して殺虫剤よりも害の少ない薬剤からなる誘引剤や光を利用して所定の虫類を誘引し、誘引した虫類を捕獲することにより虫類の実数を減少させる害虫捕獲装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−319424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した虫類捕獲装置では、虫類を誘引することは可能であるが、誘引された虫類は比較的広範囲にわたって散在し、局所的に集中させることが困難であって、効率よく捕獲することが困難となり、所望の駆除効果が得られないという問題があった。
【0006】
本発明者らはこのような現状に鑑み、虫類をより局所的に集中させるように誘引することによって捕獲効率を向上させ、駆除効率を向上させた虫類捕獲装置を提供すべく研究を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の虫類捕獲装置では、基体に、虫類を誘引する誘引手段と、同誘引手段により誘引された虫類を吸引する吸引手段と、同吸引手段により吸引された虫類を捕獲する捕獲手段とを備えた虫類捕獲装置において、吸引手段は、吸引口を下方に向けて基体の上部に配置するとともに、誘引手段は、吸引手段から所定間隔だけ離隔した基体の下部に配置し、しかも、誘引手段は、表面を黒色として上方に向けて突出させた凸部で構成した。
【0008】
さらに、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)凸部は、吸引口の鉛直下方に位置させたこと。
(2)吸引口の内部には紫外線照射器を設け、凸部の方向に向けて紫外線を照射するように構成したこと。
(3)凸部は、上面を略球面状に湾曲させていること。
(4)誘引手段は、虫類を誘引する誘引気体を放出する気体放出部を有すること。
(5)誘引気体は、凸部から放出すること。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明では、基体に、虫類を誘引する誘引手段と、同誘引手段により誘引された虫類を吸引する吸引手段と、同吸引手段により吸引された虫類を捕獲する捕獲手段とを備えた虫類捕獲装置において、吸引手段は、吸引口を下方に向けて基体の上部に配置するとともに、誘引手段は、吸引手段から所定間隔だけ離隔した基体の下部に配置し、しかも、誘引手段は、表面を黒色として上方に向けて突出させた凸部で構成したことによって、虫類が黒色の物体の上方を飛行するという習性を利用して、虫類を局所的に誘引することができるので、虫類の捕獲効率を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の虫類捕獲装置において、吸引口の鉛直下方に凸部を位置させていることによって、凸部の近傍に局所的に誘引された虫類を効率よく吸引して捕獲でき、捕獲効率をさらに向上させることができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の虫類捕獲装置において、吸引口の内部には紫外線照射器を設け、凸部の方向に向けて紫外線を照射するように構成したことによって、虫類が紫外線への走行性があることを利用して、凸部の上方に誘引された虫類を紫外線照射器によって吸引口へとさらに誘引することができ、捕獲効率をさらに向上させることができる。
【0012】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の虫類捕獲装置において、凸部の上面を略球面状に湾曲させていることによって、吸引手段で生起した虫類を吸引するための空気の流れを円滑として、吸引効率を向上させることができる。
【0013】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の虫類捕獲装置において、誘引手段に虫類を誘引する誘引気体を放出する気体放出部を設けていることによって、虫類の誘引効率をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の虫類捕獲装置において、凸部から誘引気体を放出することによって、凸部による虫類の誘引効率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の虫類捕獲装置では、所定形状とした基体に、虫類を誘引する誘引手段と、同誘引手段により誘引された虫類を吸引する吸引手段と、同吸引手段により吸引された虫類を捕獲する捕獲手段を設けて構成しているものであり、特に、吸引手段は、虫類を吸引する吸引口を下方に向けて基体の上部に配置するとともに、誘引手段は、吸引手段から所定間隔だけ離隔した基体の下部に配置しているものである。
【0016】
しかも、誘引手段は、表面を黒色として上方に向けて突出させた凸部で構成しているものである。
【0017】
すなわち、本発明者らは、様々な研究の結果、蚊をはじめとする人にとって害をなすおそれのある虫類が、表面を黒色の物体に誘引されるとともに、この表面が黒色の上方に向けて突出させた凸部の上方部分を飛行するという習性を知見し、この凸部を用いて虫類を局所的な領域に効率よく誘引して捕獲するものである。
【0018】
特に、吸引手段に設けた吸引口の鉛直下方に凸部を位置させた場合には、凸部によって吸引口の鉛直下方部分に虫類を誘引でき、吸引口によって虫類を効率よく吸引して捕獲できるので、捕獲効率を向上させることができる。
【0019】
しかも、吸引口の内部には紫外線照射器を設けて、凸部の方向に向けて紫外線を照射するように構成した場合には、虫類が紫外線への走行性があることを利用して、凸部に誘引されてきた虫類を紫外線照射器によって吸引口へと誘引することができ、捕獲効率をさらに向上させることができる。
【0020】
さらに、凸部の上面を略球面状に湾曲させた場合には、吸引手段によって生じさせた虫類を吸引するための空気の流れが凸部によって乱されて空気の停留部を生じさせることを防止でき、スムーズな空気の流れを生じさせて吸引効率を向上させることができる。
【0021】
以下において、図面に基づいて本発明の実施例を詳説する。なお、以下において虫類とは昆虫を含む概念であり、以下の実施例では、蚊やブヨなどの吸血害虫を想定している。
【実施例1】
【0022】
実施例1の虫類捕獲装置A1は、図1に示すように、上下方向に伸延させて形成した基体160の下部に虫類を誘引する誘引手段を設けた下部ケーシング162を配置するとともに、基体160の上部に前記誘引手段により誘引された虫類を吸引する吸引手段と、同吸引手段により吸引された虫類を捕獲する捕獲手段を設けた上部ケーシング161を配置して構成している。
【0023】
本実施例では、基体160は略円筒状とし、上部ケーシング161は下部ケーシング162と所定の距離だけ離隔して配置し、上部ケーシング161と下部ケーシング162との間の空間を、虫類を吸引するための吸引領域W'としている。基体160は略円筒状に限定するものではなく、略矩形筒状となっていてもよく、上部ケーシング161と下部ケーシング162とを上下方向に所定間隔だけ離隔させて配置可能となっていればどのような形態であってもよい。
【0024】
下部ケーシング162は、虫類捕獲装置A1自体の支持基台ともなっており、下部ケーシング162の内部は、虫類を誘引する虫類誘引気体として用いる二酸化炭素を収容した二酸化炭素収容ボンベ140と、この二酸化炭素収容ボンベ140に接続して二酸化炭素を下部ケーシング162の上面に設けた放出口141に案内するための送気管142を設けている。
【0025】
特に、送気管142の中途部には開閉制御弁143を設け、この開閉制御弁143を制御することによって二酸化炭素の放出量を調整可能としている。
【0026】
なお、図示しないが、開閉制御弁143と放出口141との間における送気管142には、オクテノールなどの虫類を誘引する誘引剤を収容した誘引剤収容部を介設し、二酸化炭素と誘引剤とを混合させた混合気体を放出口141から放出するように構成してもよい。
【0027】
放出口141から放出した二酸化炭素または混合気体は、下部ケーシング162の上面に沿って拡散し、虫類を吸引領域W'に誘引するようにしている。したがって、下部ケーシング162の上面は、二酸化炭素または混合気体の拡散に好適な高さに位置させておくことが望ましい。
【0028】
上部ケーシング161の内部には、吸引ファン121によって生じさせた気流によって吸引領域W'の虫類を吸引して捕獲手段に案内する吸引管120で構成した吸引手段と、吸引管120から送出された虫類を捕獲する捕獲かごで構成した捕獲部130からなる捕獲手段を設けている。
【0029】
吸引管120の始端となる吸引口122は、上部ケーシング161の下面に下部ケーシング162に向けて設けている。
【0030】
特に、本実施例では、吸引管120は吸引口122に向けて拡開状として吸引面積を比較的大きくしており、さらに、吸引管120の始端側には整流体123を挿入し、拡開状とした吸引管120の始端において吸引用の空気の流速が低下することを防止している。すなわち、整流体123は、拡開状とした吸引管120の始端に挿入可能としたコーン形状としている。
【0031】
整流体123は所望の気流を生じさせることができるように適宜の形状としてよく、さらには内部にヒーターなどの発熱装置を内蔵して、熱による虫類の誘引を可能とするように構成してもよい。
【0032】
さらに、吸引管120の始端近傍の内側面には、所定位置に1つまたは複数の紫外線照射器114を設け、下部ケーシング162に向けて紫外線を照射するようにしている。本実施例では紫外線照射器114はLED(Light Emitting Diode)で構成し、整流体123によって下部ケーシング162に向けての照射が遮蔽されない位置に設置している。
【0033】
吸引管120の中途部には逆流防止弁165を設けており、一旦吸引した虫類が吸引管120を逆送することを防止している。
【0034】
上部ケーシング161の上部には、所定の光の照射を行う誘引灯113を配設し、この誘引灯113を透光性のあるガラスなどによって被覆して構成した発光部107を設けている。この発光部107によって、下部ケーシング162から放出している二酸化炭素または混合気体では誘引できない遠方の虫類を誘引するようにしている。
【0035】
以下において、上記したように構成した虫類捕獲装置A1における本発明の要部を詳説する。
【0036】
本発明の虫類捕獲装置A1では、吸引口122から所定間隔だけ下方側に離隔させて位置させた下部ケーシング162の上面に、上方に向けて突出させた凸部144を設けて、この凸部144を誘引手段の一つとしているものである。すなわち、捕獲対象の虫類が上方に向けて突出状となった凸部に誘引される習性を利用しているものである。
【0037】
特に、凸部144は外側面を黒色としており、虫類が黒色の物体の上方を飛行しやすいという習性を利用して、吸引口122の下方位置に設けた凸部144の上方に虫類を誘引して、誘引された虫類を吸引口122から効率よく吸引・捕獲することができる。特に、凸部144は吸引口122の鉛直下方に位置させることによって虫類の捕獲効率を向上させることができる。
【0038】
しかも、吸引口122の内部に設けた紫外線照射器114によって凸部に向けて紫外線を照射するように紫外線照射器114を配置した場合には、虫類が紫外線への走行性があることを利用して、凸部144によって誘引された虫類を紫外線照射器114によって吸引口122へと誘引することができるので、捕獲効率をさらに向上させることができる。
【0039】
さらに、凸部144は、上面を略球面状に湾曲させておくことにより、吸引手段で生じさせた虫類を吸引するための空気の流れに乱れが生じることを防止でき、吸引口122からの吸引効率を向上させることができる。
【0040】
本実施例では、凸部144は、図1に示すように上方に向けて凸とした略半球体で構成しているが、半球体に限定するものではなく、例えば1/4球面体や3/4球面体であってもよいし、略キノコ状に頂部に球形部を有する突出体で凸部を構成してもよく、吸引手段で生じさせた虫類を吸引するための空気の流れに乱れをあまり生じさせないならば、どのような形状であってもよい。
【0041】
また、凸部144は、図1に示すように下部ケーシング162の上面に設けた放出口141を被覆するように配置し、放出口141から放出された二酸化炭素または混合気体からなる誘引気体を凸部144から放出するように構成している。すなわち、凸部144には微細な通気孔(図示せず)を設けており、この通気孔から誘引気体を放出するようにしている。
【0042】
したがって、虫類をさらに効率よく凸部144に誘引することができ、虫類の捕獲効率をさらに向上させることができる。ここで、凸部144は、図1に示すように内部を空洞としてもよいし、スポンジなどの多孔体で構成することもできる。
【0043】
このように構成した虫類捕獲装置A1では、はじめに上部ケーシング161の上部に設けた発光部107によって比較的遠方を飛行していた虫類を虫類捕獲装置A1に誘引し、次いで、虫類捕獲装置A1から放出した誘引気体によって虫類を吸引領域W'に誘引し、次いで誘引した虫類を下部ケーシング162の上面に設けた凸部144の上方部分、すなわち吸引口122の直下方に局在させるように誘引し、紫外線照射器114による誘引とともに吸引口122からの気流による吸引によって効率よく虫類を吸引・捕獲可能としている。
【0044】
このように異なる誘引手段を用いて虫類を誘引することにより、捕獲対象の虫類を選択しながら誘引することができ、所望の虫類を効率よく捕獲することができる。特に、吸引口122の鉛直下方となる位置に凸部144を設けていることにより、極めて簡単に虫類を吸引口122の直下方に集中させることができ、捕獲効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0045】
実施例2の虫類捕獲装置A2は、虫類誘引気体を放出する第1気体放出部10と第2気体放出部11、及び雰囲気温度を上昇させるヒーター12、さらに誘引灯13を複合させて構成した誘引手段と、吸引ファン21の駆動によって生起した空気流によって虫類を吸引する吸引手段と、吸引された虫類を捕獲する捕獲部30からなる捕獲手段とを備えている。
【0046】
そして、第2実施例の虫類捕獲装置A2は、図2に示すように、上下方向へ伸延する箱状の支持基体4の側面上部に箱状の上部ケーシング5を取り付けるとともに、支持基体4の側面下部に箱状の下部ケーシング6を取り付け、上部ケーシング5と下部ケーシング6とは上下方向に所定間隔を設けて配置し、この上部ケーシング5と下部ケーシング6との間に設けた間隔からなる空間に虫類を誘引して吸引する吸引領域Wを設けている。
【0047】
支持基体4の内部には、虫類誘引気体としての二酸化炭素を収納する二酸化炭素収容ボンベ40を配設している。この二酸化炭素収容ボンベ40は、虫類誘引気体供給路41に連結して二酸化炭素を供給可能とし、さらに虫類誘引気体供給路41にはその中途部に分岐部42を設けて、第1虫類誘引気体供給路41aと第2虫類誘引気体供給路41bとに分岐している。
【0048】
二酸化炭素収容ボンベ40と分岐部42との間には誘引調整部43を設け、この誘引調整部43によって二酸化炭素収容ボンベ40からの二酸化炭素の放出時間や放出量を制御可能としている。誘引調整部43には、電磁弁とタイマーとの組み合わせや、圧力弁、バルブなどを用いることができる。
【0049】
分岐部42から分岐した第1虫類誘引気体供給路41aは上部ケーシング5内に配置し、この上部ケーシング5の前側面下端近傍に終端を接続して第1気体放出部10とし、この第1気体放出部10から吸引領域Wの外方に向けて二酸化炭素を放出するようにしている。
【0050】
第2虫類誘引気体供給路41bは下部ケーシング6内に配置し、この下部ケーシング6の上側面に終端を接続して第2気体放出部11とし、この第2気体放出部11から吸引領域Wに二酸化炭素を放出するようにしている。
【0051】
特に、本実施例では、第2虫類誘引気体供給路41bの中途部に虫類誘引気体としてのオクテノールを収容するオクテノール収容部44を設け、このオクテノール収容部44において二酸化炭素収容ボンベ40から放出された二酸化炭素とオクテノールとを混合し、混合気体を第2気体放出部11から放出するようにしている。
【0052】
オクテノール収容部44に収容するオクテノールは、液状のオクテノールに限定するものではなく、濾紙やフェルト布などに液体のオクテノールを染み込ませることによって構成してもよい。
【0053】
オクテノール収容部44には、オクテノールのほか、ブテノール、イソ吉草酸、乳酸、メチル乳酸、酪酸、アラニン、リシン、アンドロステノールなどの化学物質を収容し、二酸化炭素と混合させて第2気体放出部11から放出するようにしてもよい。
【0054】
二酸化炭素とオクテノールとの混合比は、例えば、二酸化炭素:オクテノール=百万質量部以上:1質量部程度に設定することができる。
【0055】
ここで、一般的な虫類捕獲装置の虫類誘引気体として二酸化炭素のみを用いた場合と、二酸化炭素とオクテノールの混合気体とを用いた場合の虫類(ここでは、蚊)の捕獲数の比較実験結果を表1に示す。なお、本実験は藪地で行い、実験実施時間は24時間である。
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、二酸化炭素とオクテノールの混合気体を用いた場合のほうが、二酸化炭素のみを用いた場合よりも虫類の捕獲数が多いことが顕著である。
【0058】
したがって、二酸化炭素によって二酸化炭素を好む虫類(例えばメスの蚊やブヨ)に第2の気体放出部10から放出される二酸化炭素を、生物の呼気と思わせ誘引するとともに、より誘引効果の高い二酸化炭素とオクテノールの混合気体とで吸引領域Wに虫類を誘引することができる。
【0059】
第2気体放出部11は、上面開口にフィルタ14bを設けた円筒状の滞留基体14aで構成した滞留部14で被覆している。滞留基体14aはプラスチック等の通気性のない素材で構成し、フィルタ14bは例えば不織布などの網目状のもので構成している。
【0060】
この滞留部14によって、第2気体放出部11から放出された二酸化炭素とオクテノールとの混合気体は、滞留部14部分で一定時間滞留され、その後フィルタ14bから放出されるので、混合気体が風で飛散することを防止しながら吸引領域Wに放出することができる。
【0061】
滞留部14と対向した上部ケーシング5の下面には、吸引路20を介して捕獲部30と連通する吸引口22を設けており、吸引口22の略中央部分には、吸引口22から下方に向けて突出させてヒーター12を配設し、このヒーター12によって発生させた熱によりヒーター12の近傍の空気を加温し、吸引領域Wの雰囲気温度を上昇させるようにしている。
【0062】
ヒーター12では、第2気体放出部11から放出された二酸化炭素とオクテノールとの混合気体を人体等の体温に近い34〜42℃に加温して、吸引領域W部分にあたかも生物が存在するかのような状態を形成し、吸引領域Wのヒーター12の近傍に虫類を誘引している。
【0063】
上部ケーシング5の上部には、所定の光の照射を行う誘引灯13を配設し、この誘引灯13を透光性のあるガラスなどによって被覆して構成した発光部7を設けている。
【0064】
誘引灯13には、例えば紫外線、または可視光を照射する蛍光灯もしくは発光ダイオードなどを用いることができ、誘引灯13の光を虫類捕獲装置A2の周囲に向けて照射することにより、光に集まるという虫類の習性を利用して虫類を誘引することができる。
【0065】
上部ケーシング5内には吸引路20と吸引ファン21とで構成した吸引手段と、この吸引手段で吸引された虫類を捕獲する捕獲部30を設けている。
【0066】
吸引路20の始端は、上記したように上部ケーシング5の下面に設けた吸引口22と連通させ、終端を捕獲部30に連通連結し、さらに、吸引路20の終端近傍に吸引ファン21を設けて吸引路20内の空気を吸引することにより、吸引路20の吸引口22側から終端の捕獲部30側に向けて虫類を吸引可能としている。吸引ファン21は図示しない駆動モーターによって駆動させている。
【0067】
吸引口22を上部ケーシング5の下面に設けることによって、通常、上側に逃げようとする虫類の習性を利用して、虫類をより効率良く吸引・捕獲することができる。
【0068】
吸引口22は、例えば虫類捕獲装置A2を設置する設置面より20〜100cmの高さに位置するように形成することが望ましく、上述したように第2気体放出部11の略上方に位置させている。
【0069】
捕獲部30は、捕獲ネットによる捕獲、あるいは電撃による殺虫捕獲などの方法によって捕獲するように構成してもよいし、所定の粘着剤を塗布した粘着体に粘着させたり、所定の泡に包み込んだりして捕獲するように構成してもよい。
【0070】
このように構成した虫類捕獲装置A2では、誘引灯13によって虫類を比較的遠方から予め誘引し、次いで第1気体放出部10から放出した二酸化炭素によって虫類捕獲装置A2近傍まで誘引し、次いで、第2気体放出部11から放出した二酸化炭素とオクテノールの混合気体と、ヒーター12によるこの混合気体の加温によって吸引領域Wの吸引口22の近くに誘引して、吸引口22から虫類を効率よく吸引して補角効率を向上させることができる。
【0071】
ここで、本実施例の虫類捕獲装置A2では、誘引調整部43によって、二酸化炭素からなる虫類誘引気体を間欠的に放出するようにしている。
【0072】
この虫類誘引気体を一般的な虫類捕獲装置に用いて間欠的に放出した場合と、連続して放出した場合の虫類(ここでは、蚊)の捕獲数の比較実験結果を表2に示す。なお、本実験は藪地で行い、実験実施時間は24時間である。また、実験結果(d)の10分毎に2分間連続して放出とは、混合気体を2分間連続して放出した後、放出を一旦停止し、放出停止から8分間後に再び2分間放出する放出パターンであり、他の(a)、(b)、(c)、(e)も同様に各60,30,15,5分毎に2分間連続して放出し、さらに、各60,30,15,5分のそれぞれの残り時間は放出を停止し、その後、再び2分間放出する放出パターンである。
【0073】
【表2】

【0074】
表2より、一定の時間(例えば5分〜10分毎に2分間、好ましくは10分毎に2分間)おきに虫類誘引気体を放出した場合のほうが、連続して虫類誘引気体を放出した場合よりも虫類の捕獲数が多いことが顕著である。しかも、虫類誘引気体を間欠的に放出した場合には、虫類誘引気体の消費量を低減させることができるのでコストダウンを図ることもできる。
【0075】
上記した実施例では、誘引調整部43を分岐部42の上手側に配設しているが、第1虫類誘引気体供給路41aと第2虫類誘引気体供給路41bとにそれぞれ誘引調整部を設けてもよい。
【0076】
第1虫類誘引気体供給路41aと第2虫類誘引気体供給路41bとにそれぞれ誘引調整部を設けた場合には、例えば第1気体放出部10からの二酸化炭素の放出を停止した後、第2気体放出部11から誘引効果の高い混合気体を放出するように制御することによって、虫類誘引気体を常時放出する場合と比較して虫類誘引気体の使用量を削減できるので、コストダウンを図ることができるとともに、虫類を確実に誘引することができる。
【0077】
本実施例の虫類捕獲装置A2は、以上のように構成しており、この虫類捕獲装置A2による虫類の捕獲過程をより詳細に説明する。
【0078】
(1)誘引行程
虫類捕獲装置A2では、誘引灯13によって、光の届く範囲の虫類を予め虫類捕獲装置A2付近に誘引する。
【0079】
その後、虫類捕獲装置A2では、第1気体放出部10から放出した二酸化炭素によって虫類を虫類捕獲装置A2にさらに誘引し、第2気体放出部11から放出した二酸化炭素とオクテノールの混合気体によって虫類を吸引領域Wに誘引する。このとき、第2気体放出部11から放出した混合気体はヒーター12で加温しておくことにより、虫類の誘引効率を向上させることができる。
【0080】
このように、誘引灯13によって虫類を誘引した後に、二酸化炭素による虫類の誘引を行うことにより、メスの蚊やブヨ等の二酸化炭素を好む虫類を選別して誘引できる。
【0081】
(2)吸引行程
虫類捕獲装置A2では、駆動モーターにより吸引ファン21を駆動させることにより、吸引口22部分に空気の吸引流を生起し、この吸引流によって吸引口22付近を飛行している虫類を吸引する。
【0082】
特に、虫類は、上記した誘引行程によって吸引領域Wの吸引口22の近くに誘引されているので、効率良く吸引することができる。
【0083】
(3)捕獲行程
虫類捕獲装置A2では、吸引路20内に吸引した虫類を吸引ファン21によって捕獲部30に送給し、この捕獲部30で捕獲する。
【実施例3】
【0084】
実施例3の虫類捕獲装置A3は、図3に示すように、上記した実施例2の虫類捕獲装置A2と同一構成であって、実施例2の虫類捕獲装置A2で第2気体放出部11に設けていたオクテノール収容部44を、虫類誘引気体供給路41の分岐部42と誘引調整部43との間に設けている点だけが異なるものである。したがって、同一構成部分については同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0085】
図3に示すように、分岐部42よりも上手側にオクテノール収容部44を設けた場合には、第2気体放出部11だけでなく第1気体放出部10からも二酸化炭素とオクテノールとの混合気体とを放出することができるので、第1気体放出部10から放出した混合気体によってより確実に虫類を誘引でき、さらに第2気体放出部11から放出するとともにヒーター12によって加温された混合気体によって吸引領域Wに誘引することができるので、効果的な誘引を行うことができる。
【実施例4】
【0086】
実施例4の虫類捕獲装置A4は、図4に示すように、円筒状に形成した装置基体60の上部に筒状の上部ケーシング61を設けるとともに、装置基体60の下部に筒状の下部ケーシング62を設け、上部ケーシング61と下部ケーシング62とは、所定間隔だけ離隔している。
【0087】
上部ケーシング61内には、吸引路20と吸引ファン21とで構成した吸引手段と、この吸引手段で吸引した虫類を捕獲する捕獲部30を設け、下部ケーシング62内には、二酸化炭素収容ボンベ40と、この二酸化炭素収容ボンベ40から放出した二酸化炭素を上部ケーシング5と下部ケーシング6との間の吸引領域Wに放出する第1気体放出部10と、二酸化炭素収容ボンベ40から放出した二酸化炭素にオクテノール収容部44に収容したオクテノールを混合して吸引領域Wに放出する第2気体放出部11を設けている。
【0088】
吸引路20に接続した吸引口22は、上部ケーシング5の下面に設け、第1気体放出部10及び第2気体放出部11の放出口に対向させている。
【0089】
上部ケーシング5の上部には、所定の光の照射を行う誘引灯13を配設し、この誘引灯13を透光性のあるガラスなどによって被覆して構成した発光部7を設けている。
【0090】
本実施例の虫類捕獲装置A4では、上記した実施例2の虫類捕獲装置A2における各構成部材の配置をより効果的となるように再配置しており、同一構成部材には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0091】
二酸化炭素収容ボンベ40は、虫類誘引気体供給路41の始端と連結し、この虫類誘引気体供給路41は、中途部における分岐部42’において第1虫類誘引気体供給路41aと第2虫類誘引気体供給路41bとに分岐して、下部ケーシング62の上面に設けた開口にそれぞれ接続し、第1気体放出部10及び第2気体放出部11としている。
【0092】
両虫類誘引気体供給路41a,41bの中途部には、誘引調整部43をそれぞれ設け、また、第2虫類誘引気体供給路41bの誘引調整部43と第2気体放出部11との間には、オクテノール収容部44を設けている。
【0093】
そして、第1気体放出部10は、下部ケーシング62の上面に二酸化炭素を放出することにより吸引領域Wの横方向側から外方に向けて二酸化炭素を発散して、この二酸化炭素によって虫類を虫類捕獲装置A4の近傍に誘引し、第2気体放出部11は二酸化炭素とともにオクテノールを下部ケーシング62の上面に放出して、虫類捕獲装置A4の近傍に誘引された虫類を吸引領域Wに誘引するようにしている。
【0094】
吸引路20は、始端を上部ケーシング61の下面であって第1気体放出部10及び第2気体放出部11の略上方に位置させて開口した吸引口22に接続するとともに、終端を捕獲部30と連結して、吸引領域Wに誘引された虫類を吸引して捕獲部30で捕獲するようにしている。
【0095】
また、吸引路20内の始端近傍内側面には、吸引路20内の始端近傍の雰囲気温度を上昇させるヒーター12を設け、虫類をより確実に吸引路20内に誘引するようにしている。
【0096】
さらに、吸引路20内には、逆流防止弁65を設け、吸引した虫類が逆流することを防止している。
【0097】
このように構成した虫類捕獲装置A4では、メスの蚊やブヨなどのような二酸化炭素を好む虫類を第1気体放出部10から放出した二酸化炭素で誘引し、次いで第2気体放出部11から放出したより誘引効果の高い二酸化炭素とオクテノールの混合気体とで吸引領域Wに虫類を誘引し、虫類の吸引・捕獲の効率を向上させることができる。
【0098】
特に、第1虫類誘引気体供給路41a及び第2虫類誘引気体供給路41bに設けた誘引調整部43,43によって第1気体放出部10から二酸化炭素を放出した後に、第1気体放出部10からの二酸化炭素の放出を停止し、その後、第2気体放出部11からの混合気体の放出を開始するように制御した場合には、二酸化炭素によって二酸化炭素を好む虫類を選別しながら誘引した後に、誘引効果の高い混合気体とヒーター12とによって虫類を吸引領域Wに誘引できるので、二酸化炭素及び混合気体の放出量を抑制でき、コストダウンを図ることができる。
【実施例5】
【0099】
実施例5の虫類捕獲装置A5は、実施例4の虫類捕獲装置A4の変容例であって、図5に示すように、二酸化炭素とオクテノールとの混合気体を放出する第2気体放出部11'だけで虫類を誘引するとともに、ヒーター12の配置を変更しているものである。したがって、同一構成部分については同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0100】
ヒーター12は下部ケーシング62の上面に敷設して、下部ケーシング62の上面を広範囲に加温するようにしている。
【0101】
第2気体放出部11'は、下部ケーシング62内に設けた二酸化炭素収容ボンベ40からオクテノール収容部44に送給した二酸化炭素によって生成したオクテノールとの混合気体を放出するようにしており、二酸化炭素収容ボンベ40に接続した虫類誘引気体供給路41の中途部には誘引調整部43を設けて、混合気体の放出量を調整可能としている。
【0102】
実施例5の虫類捕獲装置A5では、第2気体放出部11'から混合気体を吸引領域Wに放出して虫類を虫類捕獲装置Aの近傍に誘引し、ヒーター12での加温によって生じさせた上昇気流に沿って虫類を上部ケーシング61の下面に設けた吸引口22に誘引し、吸引口22から虫類を吸引して捕獲するようにしている。
【0103】
ここで、下部ケーシング62の上面は、第2気体放出部11'の放出口部分を頂部とする略山型状に形成して、雨水が第2気体放出部11'内に侵入することを防止するように構成してもよい。また、このように、下部ケーシング62の上面を略山型状とすることによって、下部ケーシング62の上面に設けたヒーター12によって生じさせる上昇気流を安定的に形成することができる。
【実施例6】
【0104】
実施例6の虫類捕獲装置A6は、実施例2の虫類捕獲装置A2の変容例であって、虫類を誘引する誘引手段の配置に特徴を有するものである。
【0105】
本実施例の虫類捕獲装置A6も、実施例2の虫類捕獲装置A2と同様に、虫類誘引気体を放出する気体放出部100、及び雰囲気温度を上昇させるヒーター12、さらに誘引灯13を複合させて構成した誘引手段と、吸引ファン21の駆動によって生起した空気流によって虫類を吸引する吸引手段と、吸引された虫類を捕獲する捕獲部30からなる捕獲手段とを備えている。
【0106】
本実施例の虫類捕獲装置A6では、柱状とした支持基体4’の上部に箱状の上部ケーシング5を設けており、特に、上部ケーシング5は、その底面が、虫類捕獲装置Aの設置面から40cm〜100cmの高さに位置するようにしている。このようにして上部ケーシング5の下方に空間を設け、この空間を、虫類を誘引して吸引手段で吸引するための吸引領域Wとしている。支持基体4’の下端には底板を装着し、虫類捕獲装置A6が安定的な起立姿勢となるようにしている。
【0107】
上部ケーシング5内には、虫類誘引気体としての二酸化炭素を収納する二酸化炭素収容ボンベ40と、この二酸化炭素収容ボンベ40から放出した二酸化炭素によって誘引した虫類を吸引するための吸引路20と吸引ファン21とで構成した吸引手段と、この吸引手段で吸引された虫類を捕獲する捕獲部30を設けている。
【0108】
二酸化炭素収容ボンベ40は、虫類誘引気体供給路41に連結して二酸化炭素を送気可能とし、この虫類誘引気体供給路41には中途部に誘引調整部43を設けて二酸化炭素の放出制御を可能としている。
【0109】
さらに、虫類誘引気体供給路41には、誘引調整部43の下流側に虫類誘引気体としてのオクテノールを収容するオクテノール収容部44を設け、このオクテノール収容部44において二酸化炭素収容ボンベ40から放出された二酸化炭素とオクテノールとを混合し、混合気体を気体放出部100から放出するようにしている。特に、気体放出部100は、上部ケーシング5の外側面に放出口を設けている。
【0110】
吸引手段における吸引路20の始端は、上部ケーシング5の下面に設けた吸引口22と連通させ、終端を捕獲部30に連通連結し、さらに、吸引路20の終端近傍に吸引ファン21を設けて吸引路20内の空気を吸引することにより、吸引路20の吸引口22側から終端の捕獲部30側に向けて虫類を吸引可能としている。吸引ファン21は図示しない駆動モーターによって駆動させている。
【0111】
吸引口22にはヒーター12を取り付け、ヒーター12の近傍である吸引領域Wを加温して高温雰囲気を生じさせるようにしている。
【0112】
捕獲部30は、捕獲ネットによる捕獲、あるいは電撃による殺虫捕獲などの方法によって捕獲するように構成してもよいし、所定の粘着剤を塗布した粘着体に粘着させたり、所定の泡に包み込んだりして捕獲するように構成してもよい。
【0113】
上部ケーシング5の上部には、所定の光の照射を行う誘引灯13を配設し、この誘引灯13を透光性のあるガラスなどによって被覆して構成した発光部7を設けている。
【0114】
誘引灯13には、例えば紫外線、または可視光を照射する蛍光灯もしくは発光ダイオードなどを用いることができ、誘引灯13の光を虫類捕獲装置A6の周囲に向けて照射することにより、光に集まるという虫類の習性を利用して虫類を誘引することができる。
【0115】
ここで、本実施例の虫類捕獲装置A6において、誘引灯13を上部ケーシング5の上部のみに設けた場合と、誘引灯13を上部ケーシング5の上部と吸引領域W内とに設けた場合の所望の虫類(ここでは、蚊)の捕獲数の比較実験結果を表3に示す。なお、本実験では誘引灯として紫外線照射器を用い、住宅地近郊で行った。実験実施時間は16:30〜8:30の16時間とした。また、二酸化炭素とオクテノールとの混合気体からなる虫類誘引気体は放出しなかった。
【0116】
【表3】

【0117】
表3より、上部ケーシング5の上部に誘引灯13を設けた場合と、上部ケーシング5の上部と吸引領域W内とに誘引灯13を設けた場合とでは、虫類の捕獲数に顕著な差はないが、捕獲した虫類のうち、上部ケーシング5の上部に誘引灯13を設けた場合には、人に対して害を及ぼすおそれのある蚊などの害虫の捕獲割合が高く、効率よく捕獲可能となっているのに対し、上部ケーシング5の上部と吸引領域W内とに誘引灯13を設けた場合には害虫以外の虫類の捕獲割合が高く、捕獲効率が悪かった。
【0118】
誘引灯13はその明るさを調整することによって、光に誘引される走光性を有する虫類の誘引範囲を調整することができ、例えば200ルクス程度とした場合には、誘引灯13から半径10mの範囲の走光性を有する虫類を誘引することができる。
【0119】
二酸化炭素とオクテノールとの混合気体からなる虫類誘引気体による虫類の誘引は、誘引調整部43によって二酸化炭素収容ボンベ40から50ml/分〜500ml/分程度の二酸化炭素を送気して行っており、特に、二酸化炭素の放出は、放出時間と停止時間との比を例えば1:4とした間欠的な放出としてもよい。
【0120】
本実施例の虫類捕獲装置A6では、上部ケーシング5の底面に設けた吸引口22よりも上方に位置した上部ケーシング5の側面に虫類誘引気体供給路41の終端を接続して、上部ケーシング5の側面から二酸化炭素とオクテノールとの混合気体からなる虫類誘引気体を放出するようにしている。
【0121】
これは、虫類誘引気体を上方に向けて放出しやすくしているものであり、下表に示すように上方に向けて放出する場合と、下方に向けて放出する場合とを比較した場合に、虫類誘引気体を上方に向けて放出した方が、虫類(蚊)の捕獲効率が高いという知見に基づくものである。
【0122】
ここで、虫類誘引気体を上方に向けて放出した場合とは、上記した第2実施例の虫類捕獲装置A2において第2気体放出部11のみから虫類誘引気体を放出した場合である。
【0123】
【表4】

【0124】
上表における比較実験では、住宅地近郊に本実施例の虫類捕獲装置A6と第2実施例の虫類捕獲装置A2とを設置して行い、実験実施時間は16:30〜8:30の16時間とした。さらに、ヒーター12による加温の有無でも比較実験を行ったものである。
【0125】
気体放出部100の虫類誘引気体の放出口は、上部ケーシング5の底面からの距離h1が20cm〜100cm程度であることが望ましく、さらに、放出口から上部ケーシング5の上部に設けた誘引灯13までの距離h2が20cm〜100cm程度となるように設けることが望ましい。
【0126】
距離h1が20cm〜100cmの範囲を外れる場合には、虫類誘引気体によって虫類を吸引口22にまで誘引する誘引力の低下が生じ、距離h2が20cm〜100cmの範囲を外れる場合には、誘引灯13によって虫類誘引気体による誘引範囲まで虫類を誘引する誘引力の低下が生じるため、上記のように気体放出部100を設けることが望ましい。
【0127】
ここで、本実施例の虫類捕獲装置A6では、上部ケーシング5の外側面に設けた気体放出部100の放出口部分にスポンジによって構成した滞留部14’を設けている。すなわち、気体放出部100から放出される混合気体は、滞留部14’で一定時間滞留した後に放出されるようにしている。
【0128】
この滞留部14’の有無における比較実験結果を下表に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
上表における比較実験では、住宅地近郊に滞留部14’付きの虫類捕獲装置A6と、滞留部14’を取り外した虫類捕獲装置A6とを設置して行い、実験実施時間は16:30〜8:30の16時間として虫類(蚊)の捕獲数を比較した。なお、本実験では虫類誘引気体の放出を、放出時間と停止時間との比を1:1としながら断続的に行った。
【0131】
実験結果から明らかなように、気体放出部100に滞留部14’を設けた方が、気体放出部100に滞留部14’を設けない場合よりも捕獲数が多く、滞留部14’の有効性を示すものとなっている。
【0132】
本実施例の虫類捕獲装置A6は、上記のように構成しており、以下において本実施例の虫類捕獲装置A6を用いて虫類を捕獲するまでの各行程について説明する。
【0133】
(1)第1誘引段階
まず、上部ケーシング5の上部に設けた誘引灯13によって、走光性を有する虫類を、上部ケーシング5の上方である誘引灯13の周りに誘引する。このとき、走光性を有する虫類を選別して誘引することができるので、効果的な誘引を行うことができる。
【0134】
(2)第2誘引段階
誘引灯13で誘引した虫類のうち、虫類誘引気体で誘引される虫類を、虫類誘引気体によって誘引灯13の下方側へ誘引する。
【0135】
(3)第3誘引段階
虫類誘引気体によって誘引灯13の下方側へ誘引した虫類を、ヒーター12によって吸引領域Wに誘引する。
【0136】
(4)吸引・捕獲段階
ヒーター12によって吸引領域Wに誘引した虫類を吸引口22から吸引し、捕獲部30に捕獲する。
【0137】
このように段階的に誘引することにより、捕獲目標の虫類を選別しながら確実に捕獲することができ、捕獲目標以外の虫類を捕獲してしまうことにより捕獲部30が比較的早い段階で機能不全となってしまうことを防止でき、虫類捕獲装置A6を安定的に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】第1実施例の虫類捕獲装置の概略模式図である。
【図2】第2実施例の虫類捕獲装置の概略模式図である。
【図3】第3実施例の虫類捕獲装置の概略模式図である。
【図4】第4実施例の虫類捕獲装置の概略模式図である。
【図5】第5実施例の虫類捕獲装置の概略模式図である。
【図6】第6実施例の虫類捕獲装置の概略模式図である。
【符号の説明】
【0139】
A1 虫類捕獲装置
W' 吸引領域
107 発光部
113 誘引灯
114 紫外線照射器
120 吸引管
121 吸引ファン
122 吸引口
130 捕獲部
140 二酸化炭素収容ボンベ
141 放出口
142 送気管
143 開閉制御弁
144 凸部
160 基体
161 上部ケーシング
162 下部ケーシング
165 逆流防止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に、虫類を誘引する誘引手段と、同誘引手段により誘引された虫類を吸引する吸引手段と、同吸引手段により吸引された虫類を捕獲する捕獲手段とを備えた虫類捕獲装置において、
前記吸引手段は、吸引口を下方に向けて前記基体の上部に配置するとともに、
前記誘引手段は、前記前記吸引手段から所定間隔だけ離隔した前記基体の下部に配置し、
しかも、前記誘引手段は、表面を黒色として上方に向けて突出させた凸部で構成した
ことを特徴とする虫類捕獲装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記吸引口の鉛直下方に位置させたことを特徴とする請求項1記載の虫類捕獲装置。
【請求項3】
前記吸引口の内部には紫外線照射器を設け、前記凸部の方向に向けて紫外線を照射するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の虫類捕獲装置。
【請求項4】
前記凸部は、上面を略球面状に湾曲させていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の虫類捕獲装置。
【請求項5】
前記誘引手段は、虫類を誘引する誘引気体を放出する気体放出部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の虫類捕獲装置。
【請求項6】
前記誘引気体は、前記凸部から放出することを特徴とする請求項5記載の虫類捕獲装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−51016(P2006−51016A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96507(P2005−96507)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(501162513)株式会社サンエイム (4)
【Fターム(参考)】