説明

蛍光ランプ検査装置

【課題】蛍光ランプにおける蛍光塗膜の検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる蛍光ランプ検査装置を提供する。
【解決手段】蛍光ランプ検査装置は、蛍光ランプに対して光を照射する照明装置と、当該照明装置からの直接光及び蛍光ランプを透過した透過光を受光し、輝度値を含む画像データとして出力するCCDカメラと、得られた画像データに基づき、蛍光塗膜の良否を判定する演算装置とを備えている。演算装置は、露光時間t1で撮像した第1画像データから検査領域の輝度値Y1wを取得し、露光時間t1よりも短い露光時間t2で撮像した第2画像データから背景領域の輝度値Y2bを取得し、当該両輝度値Y1w,Y2bを基に、第2画像データに係る検査領域における光の透過率α/βを算出し、当該透過率α/βに基づき、蛍光塗膜の膜厚の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光灯に代表される蛍光ランプを検査するための蛍光ランプ検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶表示装置等のバックライト用光源として、冷陰極蛍光灯(又は冷陰極放電灯;CCFL)が一般的に使用される。冷陰極蛍光灯に代表される蛍光ランプは、筒状のガラス管の内周面に蛍光塗膜が形成されてなる。
【0003】
かかる蛍光ランプの製造に際して、何らかの理由により、蛍光塗膜が剥離してしまったり、極端に薄くなってしまうことがある。このため、蛍光塗膜の形成後において、蛍光塗膜が正常に形成されているか否かの検査を行う必要がある。
【0004】
従来の検査装置としては、蛍光ランプを透過した光の光量を計測することにより蛍光塗膜の膜厚を検査するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる検査装置では、照射手段により蛍光ランプに対し光を照射するとともに、反対側に設けられた撮像手段としてのCCDカメラにより蛍光ランプを透過した光を撮像(受光)し、当該CCDカメラが所定露光時間内に受光する受光量に比例して異なる画像データの各画素の輝度値に基づいて、蛍光塗膜の膜厚の良否を判定する。
【0005】
より詳しくは、撮像された画像データのうち、蛍光ランプに対応する検査領域の輝度値と、照射手段に対応する背景領域の輝度値とを基に、照射手段から照射され蛍光ランプを透過した光の透過率を算出することにより、蛍光塗膜の良否を判定する。ここで、例えば蛍光塗膜が剥離したり、極端に薄い部分がある場合には、該当箇所の輝度値が基準値以上となるため、蛍光塗膜を不良と判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−267926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術を利用して、蛍光ランプに対応する検査領域の輝度値が精度良く得られる輝度レベルとなる撮像条件下、例えばCCDカメラの露光時間や照射手段の照射時間を比較的長くする等して撮像を行った場合には、照射手段に対応する背景領域の輝度値がCCDカメラ(撮像素子)の飽和レベルに達してしまい、蛍光ランプを透過した光の透過率を算出する上で基準となる照射手段の照射光量(背景領域の輝度値)を正確に把握できなくなる。照射手段の照射光量は、温度、電源電圧、経時変化等によって変動するため、かかる場合、検査領域の輝度値の異常を把握したとしても、それが蛍光塗膜の膜厚の異常に起因したものなのか、照射手段の照射光量の変化に起因したものなのかを判別できなくなる。その結果、蛍光ランプを透過した光の透過率を正確に把握できず、検査精度の低下を招いてしまうことが懸念される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、蛍光ランプの蛍光塗膜の検査において、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる蛍光ランプ検査装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.筒状のガラス管の内周面に蛍光塗膜が形成されてなる蛍光ランプを検査するための蛍光ランプ検査装置であって、
前記蛍光ランプに対して光を照射する照射手段と、
前記蛍光ランプを挟んで前記照射手段とは反対側に設けられ、当該照射手段からの直接光及び前記蛍光ランプを透過した透過光を受光し、少なくとも輝度値を含む画像データとして出力する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに基づき、前記蛍光塗膜の良否を判定する判定手段とを備え、
前記撮像手段は、
前記蛍光ランプに対応する検査領域の輝度値が飽和レベルに達しない第1の撮像条件で撮像した第1画像データを出力し、
前記第1の撮像条件で撮像した場合よりも受光する受光量が少なくかつ前記照射手段に対応する背景領域の輝度値が飽和レベルに達しない第2の撮像条件で撮像した第2画像データを出力し、
前記判定手段は、
前記第1画像データから前記検査領域の輝度値である第1輝度値を取得し、
前記第2画像データから前記背景領域の輝度値である第2輝度値を取得し、
少なくとも前記第1輝度値及び前記第2輝度値を基に、前記第2画像データに係る前記検査領域における光の透過率を算出し、
前記透過率に基づき、前記蛍光塗膜の膜厚の良否を判定することを特徴とする蛍光ランプ検査装置。
【0011】
上記手段1によれば、第1の撮像条件を、蛍光ランプに対応する検査領域の輝度値が飽和レベルに達しない範囲で、例えば撮像手段の露光時間を長くする等して撮像手段の受光量が比較的多くなる撮像条件に設定することにより、第1画像データから、検査領域の輝度値である第1輝度値を適切な輝度レベルで精度良く取得することができる。
【0012】
また、第2画像データからは、背景領域の輝度値である第2輝度値を、撮像手段の飽和レベルに達しない輝度レベルで取得することができる。
【0013】
画像データの各画素の輝度値は、撮像手段(撮像素子)が受光する受光量に略比例して変化する値であるため、上記第1輝度値を取得することにより、撮像条件に係る所定変数(例えば露光時間等)の変化量に対する検査領域の輝度値の変化率を単調増加関数として算出することができる。
【0014】
従って、かかる単調増加関数を基にして、当該第2画像データに係る検査領域における光の透過率を算出することが可能となる。つまり、飽和レベルに達せず正確に得られた背景領域の輝度値(照射手段の照射光量)を基準とした、より正確な透過率を算出することができる。
【0015】
結果として、照射手段の照射光量の変化等に影響されることなく、蛍光ランプを透過する光の透過率を正確に把握し、蛍光塗膜の膜厚検査精度を飛躍的に向上させることができる。
【0016】
また、受光手段の特性や感度の違いにも影響されないので、複数の撮像手段により検査する場合、例えば長手方向に複数の撮像手段を設け領域を分けて検査する場合などにおいて、撮像手段の特性のばらつきによる影響も受けない。
【0017】
一般に撮像手段(撮像素子)の特性により、例えば露光時間が0の場合であっても撮像手段から出力される輝度信号の出力レベル(輝度値)は0にならず、所定の値を示す(以下、この値を撮像手段の基準輝度レベルという)。かかる場合においても、以下の手段2又は3の構成を採用することにより、上記手段1の構成を実現できる。
【0018】
手段2.前記判定手段は、
前記第2画像データから、当該第2画像データに係る前記検査領域の輝度値である第3輝度値を算出し、
前記第1輝度値及び前記第3輝度値を基に、前記撮像手段の基準輝度レベルを算出し、
前記第2輝度値と前記基準輝度レベルとの差と、前記第3輝度値と前記基準輝度レベルとの差との比から、前記第2画像データに係る前記検査領域における光の透過率を算出することを特徴とする手段1に記載の蛍光ランプ検査装置。
【0019】
上記手段2によれば、撮像手段の基準輝度レベルを予め把握していなくとも、検査領域における光の透過率を算出することができる。結果として、検査前に予め基準輝度レベルを特定する作業や設定する作業を行う必要がなく、検査効率の向上を図ることができる。
【0020】
手段3.前記判定手段は、
予め設定された前記撮像手段の基準輝度レベルと、前記取得した第1輝度値及び前記第2輝度値を基に、前記第2画像データに係る前記検査領域における光の透過率を算出することを特徴とする手段1に記載の蛍光ランプ検査装置。
【0021】
上記手段3によれば、撮像手段の基準輝度レベルを予め設定しておくことにより、第2画像データに係る検査領域の輝度値を算出することなく、当該検査領域における光の透過率を算出することができる。結果として、透過率を算出する上での演算処理の簡素化を図ることができ、検査効率の向上を図ることができる。
【0022】
仮に撮像手段の露光時間を短くする等、第2の撮像条件が撮像手段の受光量の比較的少ない撮像条件に設定され、かかる条件下で撮像された第2画像データにおいて、蛍光ランプに対応する検査領域の輝度値が、当該輝度値を精度良く得られる適切な輝度レベルにない場合であっても、本手段3によれば、検査領域における光の透過率を算出することができる。
【0023】
手段4.前記撮像手段の露光時間を調節することにより、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件とを切換えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ検査装置。
【0024】
上記手段4によれば、撮像手段の露光時間を変化させ、撮像手段が受光する受光量を調節するといった比較的簡単な方法で、上記各種輝度値を取得するのに必要な各種画像データを得ることができ、検査装置における制御処理の複雑化を抑制することができる。
【0025】
手段5.前記照射手段の照射時間を調節することにより、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件とを切換えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ検査装置。
【0026】
上記手段5によれば、照射手段の照射時間を変化させ、撮像手段が受光する受光量を調節するといった比較的簡単な方法で、上記各種輝度値を取得するのに必要な各種画像データを得ることができ、検査装置における制御処理の複雑化を抑制することができる。
【0027】
手段6.前記撮像手段の絞りを調節することにより、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件とを切換えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ検査装置。
【0028】
上記手段6によれば、撮像手段の絞りを変化させ、撮像手段が受光する受光量を調節するといった比較的簡単な方法で、上記各種輝度値を取得するのに必要な各種画像データを撮像することができ、検査装置における制御処理の複雑化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】蛍光ランプ検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】蛍光ランプ等の構成を説明するための模式図である。
【図3】蛍光ランプ、照明装置及びCCDカメラの配置構成を示す模式図である。
【図4】膜厚不良判定処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】画像データを説明するための模式図である。
【図6】検査領域及び背景領域における露光時間と輝度値との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、図2に基づいて、検査対象としての蛍光ランプ11について説明する。蛍光ランプ11は、管状のガラス管12と、当該ガラス管12の内周面に形成された蛍光塗膜13とを備えている。
【0031】
次に、蛍光ランプ11を検査するための蛍光ランプ検査装置1について説明する。図1に示すように、蛍光ランプ検査装置1は、照射手段としての照明装置2と、撮像手段としてのCCDカメラ3と、画像処理装置4とを備えている。
【0032】
なお、蛍光ランプ11は、図示しない保持手段によって両端部が保持された状態で水平方向に沿って配され、かつ、複数本が所定間隔を隔てた並列状態で検査に供される。また、蛍光ランプ検査装置1には、前記保持手段を蛍光ランプ11の長手方向へ移動させることで、蛍光ランプ11をその長手方向に沿って搬送可能な移動手段(図示略)が設けられている。当該移動手段によって、蛍光ランプ11は、蛍光ランプ検査装置1の照明装置2とCCDカメラ3との間を、水平状態、並列状態を維持しつつ間欠的に移動させられることとなる。さらに、本実施形態では、両保持手段の先端部(蛍光ランプ11の保持部)を所定回転角度毎に同期して回転可能な回転手段(図示略)を備えている。当該回転手段によって、蛍光ランプ11は自身の周方向に所定回転角度毎に回転可能となる。併せて、検査完了毎に複数本の蛍光ランプ11をその長手方向に直交する方向に搬送させるべく前記保持手段を移動させる搬送手段(図示せず)を備えている。
【0033】
照明装置2は、蛍光ランプ11の下方から所定の光を照射する面発光光源である。当該照明装置2は、多数のLEDを具備しており、当該LEDからの光が拡散板を介して上方に照射される。なお、照明装置2は、蛍光ランプ11の搬送経路に沿って設けられており、並列状態に支持されている複数の蛍光ランプ11の長手方向全域に対して、光を照射できるようになっている。
【0034】
CCDカメラ3は、蛍光ランプ11を挟んで照明装置2とは反対側に設けられている(図3参照)。CCDカメラ3は、レンズや撮像素子等からなる。撮像素子としては、CCDセンサを採用している。そして、CCDカメラ3は、照明装置2からの直接光及び蛍光ランプ11を透過した透過光を撮像(受光)する。CCDカメラ3によって撮像され、画像処理装置4へ出力される本実施形態の画像データは、少なくとも各画素毎の輝度値を含む濃淡イメージデータである。
【0035】
画像処理装置4は、画像メモリ5と、演算装置6と、表示部7と、出力部8と、カメラタイミング制御手段9とを備えている。
【0036】
画像メモリ5は、画像データを記憶するものであり、CCDカメラ3で撮像された画像データをデジタル形式に変換した上で記憶するものである。
【0037】
演算装置6は、蛍光塗膜13の良否を判定する判定手段17を有するものであってCPUによって具現化される。判定手段17においては、蛍光塗膜13の膜厚の良否を判定する膜厚不良検査処理が実行される。膜厚不良検査処理の手順の詳細については後述する。
【0038】
演算装置6は、判定手段17においてなされた蛍光塗膜13の検査結果を表示部7及び出力部8へと出力する。また、判定手段17において蛍光塗膜13が「不良」であると判定された場合には、前記検査結果に加え、蛍光塗膜13のうち不良部位の位置情報が、表示部7及び出力部8へ出力される。
【0039】
表示部7は、演算装置6から入力した検査結果(「良」又は「不良」)等をモニタ16上に表示する。つまり、蛍光塗膜13が「不良」と判定された場合には、検査結果として「不良」とモニタ16に表示されるとともに、蛍光塗膜13のうち不良部位の位置情報がモニタ16に表示される。
【0040】
出力部8は、演算装置6から入力した検査結果を、図示しない情報収集用メモリに記憶させたり、前記検査結果を基に前記搬送手段等を制御するものである。
【0041】
前記情報収集用メモリには、少なくとも蛍光塗膜13に不良が発生した場合における不良部位の位置情報が記憶される。当該情報収集用メモリに記憶された不良部位の位置情報を解析することで、不良発生頻度の高い部位を特定可能となる。これにより、蛍光塗膜13の形成に際して不良発生頻度の低減を図るための措置を効果的に講ずることができる。
【0042】
さらに、出力部8は、検査結果が「不良」であった場合には、前記搬送手段を制御し、「不良」と判定された蛍光ランプ11を所定の不良品収容部(図示せず)へと移送する。
【0043】
カメラタイミング制御手段9は、CCDカメラ3の露光時間や、撮像した画像データを各画像メモリ5に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングは、演算装置6からの信号に基づいて制御されている。
【0044】
ここで、蛍光塗膜13の膜厚の良否を判定する膜厚不良検査処理について説明する。かかる膜厚不良検査処理においては、主として演算装置6によって、図4に示す膜厚不良検査処理ルーチンが実行される。
【0045】
まず、ステップS11において、第1の撮像処理が行われる。第1の撮像処理では、照明装置2の輝度を一定に保った状態で、CCDカメラ3の露光時間をt1とした第1の撮像条件で撮像が行われる。そして、撮像した画像データを第1画像データとして画像メモリ5に記憶する。ここで取得される画像データは、例えば図5に模式的に示したような濃淡イメージデータとなる。すなわち、CCDカメラ3の撮像視野Sに対応した矩形領域に、蛍光ランプ11に対応する検査領域WA1〜WA8(図5でハッチングを付した部分)と、照明装置2に対応する背景領域WB1〜WB9とが縞模様を形成するように交互に並んだ画像データとなる。
【0046】
なお、露光時間t1は、検査領域WA1〜WA8の輝度値が飽和レベルに達しない範囲で予め任意に設定された値である(図6参照)。
【0047】
続くステップS12では、第2の撮像処理が行われる。第2の撮像処理では、照明装置2の輝度を一定に保った状態で、CCDカメラ3の露光時間を上記露光時間t1よりも短いt2とした第2の撮像条件で撮像が行われる。そして、撮像した画像データを第2画像データとして画像メモリ5に記憶する。
【0048】
なお、露光時間t2は、照明装置2に対応する背景領域WB1〜WB9の輝度値が飽和レベルに達しない範囲で予め任意に設定された値である(図6参照)。
【0049】
ステップS13では、上記第1画像データ及び第2画像データを基に蛍光ランプ11の膜厚指数Xを算出する処理を行う。
【0050】
より詳しくは、図6に示すように、まずステップS11において取得した第1画像データから、各検査領域WA1〜WA8毎に、その領域内の全画素の輝度平均値である第1輝度値Y1wをそれぞれ算出する。
【0051】
次にステップS12において取得した第2画像データから、全ての背景領域WB1〜WB9内の全画素の輝度平均値である第2輝度値Y2bを算出する。
【0052】
続いて第2画像データから、各検査領域WA1〜WA8毎に、その領域内の全画素の輝度平均値である第3輝度値Y2wをそれぞれ算出する。
【0053】
そして、第1輝度値Y1w及び第3輝度値Y2wから、以下の演算式(1)に基づき基準輝度レベルY0を算出する。なお、基準輝度レベルY0とは、CCDカメラ3の特性に基づき定まる値であって、露光時間が0の際にCCDカメラ3から出力される輝度信号の出力レベルに相当するものである。
【0054】
0=Y1w−{(Y1w−Y2w)/(t1−t2)}・t1
={(Y2w・t1−Y1w・t2)/(t1−t2)} … (1)
続いて基準輝度レベルY0、第2輝度値Y2b、及び第3輝度値Y2wを基に、第2画像データにおける各検査領域WA1〜WA8の光の透過率α/βをそれぞれ以下の演算式(2)に基づき算出する。
【0055】
α/β=(Y2w−Y0)/(Y2b−Y0
=(Y1w−Y0)/{(Y2b−Y0)・(t1/t2)}
={(Y1w−Y0)・t2}/{(Y2b−Y0)・t1
={(Y1w−Y2w)・t2}/{(Y2b−Y2w)・t1−(Y2b−Y1w)・t2}…(2)
さらに、本実施形態では、上記透過率α/βの逆数を膜厚指数Xとして算出し、当該膜厚指数Xを基に蛍光塗膜13の膜厚の良否を判定する。膜厚指数Xは以下の演算式(3)に基づき算出される。
【0056】
X=β/α
=(Y2b−Y0)/(Y2w−Y0
={(Y2b−Y2w)・t1−(Y2b−Y1w)・t2}/{(Y1w−Y2w)・t2
={(Y2b−Y2w)/(Y1w−Y2w)}・(t1/t2)+{(Y2b−Y1w)/(Y2w−Y1w)} … (3)
膜厚指数Xが算出されると、続くステップS14において、当該膜厚指数Xの値が予め設定された許容範囲内(A≦X≦B)にあるか否かを判定する。なお、下限値A及び上限値Bは、ガラス管12の大きさや蛍光塗膜13の種類等により、蛍光ランプ11の製品種別ごとに異なるため、検査に先だって良品をいくつかサンプリングして得た輝度値を基に算出した値を予め設定しておく。ここで、例えば蛍光塗膜13の膜厚が所定以上に薄い場合や厚い場合には、「膜厚不良」と判定される。
【0057】
ここで、膜厚指数Xの値が予め設定された許容範囲内にあると判定された場合には、ステップS15において良品判定を行い、本処理を終了する。一方、否定判定された場合には、ステップS16において不良品判定を行い、本処理を一旦終了する。これらの検査結果は、モニタ16等に出力される。
【0058】
尚、本実施形態では、前記回転手段によって蛍光ランプ11の周方向に沿って蛍光ランプ11の向きを変えるとともに、前記移動手段によって蛍光ランプ11の長手方向に沿って検査対象位置を変更することで、蛍光ランプ11全体に膜厚不良検査が行われる。
【0059】
そして、蛍光ランプ11全体の検査終了後、「膜厚不良」と判定されなかった蛍光ランプ11は、判定手段17によって最終的に良品として処理される。一方で、「膜厚不良」と判定された蛍光ランプ11は、不良品収容部へと移送される。
【0060】
以上詳述したように、本実施形態によれば、蛍光ランプ11に対応する各検査領域WA1〜WA8の輝度値が飽和レベルに達しない範囲で、CCDカメラ3の露光時間t1を比較的長くした第1の撮像条件で第1画像データを取得している。これにより、各検査領域WA1〜WA8の輝度平均値である第1輝度値Y1wを適切な輝度レベルで精度良く取得することができる。
【0061】
また、CCDカメラ3の露光時間t2を比較的短くした第2の撮像条件で第2画像データを取得している。これにより、照明装置2に対応する背景領域WB1〜WB9の輝度平均値である第2輝度値Y2bを、CCDカメラ3の飽和レベルに達しない輝度レベルで取得することができる。
【0062】
そして、第2画像データから、各検査領域WA1〜WA8の輝度平均値である第3輝度値Y2wを算出するとともに、上記演算式(1)に基づきCCDカメラ3の基準輝度レベルY0を算出している。ひいては、これらの値と、上記演算式(2),(3)を基にして、第2画像データに係る各検査領域WA1〜WA8の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出している。
【0063】
結果として、照明装置2の照射光量の変化等に影響されることなく、蛍光ランプ11を透過する光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを正確に把握し、蛍光塗膜13の膜厚検査精度を飛躍的に向上させることができる。
【0064】
また、上記のとおり、本実施形態では、第1画像データから取得した第1輝度値Y1wと、第2画像データから取得した第3輝度値Y2wを基に、CCDカメラ3の基準輝度レベルY0を算出し、第2画像データから取得した第2輝度値Y2bと基準輝度レベルY0との差βと、第3輝度値Y2wと基準輝度レベルY0との差αとの比から、第2画像データに係る検査領域WA1〜WA8における光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出する構成となっている。つまり、CCDカメラ3の基準輝度レベルY0を予め把握していなくとも、検査領域WA1〜WA8における光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出することができる。結果として、検査前に予め基準輝度レベルY0を特定する作業や設定する作業を行う必要がなく、検査効率の向上を図ることができる。
【0065】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では、各検査領域WA1〜WA8毎に、その領域内の全画素の輝度平均値を第1輝度値Y1wや第3輝度値Y2wとして算出することにより、蛍光塗膜13の膜厚検査を行う構成となっている。これに限らず、例えば検査領域WA1〜WA8の各画素毎に検査を行ったり、全ての検査領域WA1〜WA8内の全画素の輝度平均値を第1輝度値Y1wとして求め、検査を行う構成としてもよい。
【0067】
(b)上記実施形態では、CCDカメラ3の露光時間を調整することで、撮像条件を切換える構成となっているが、これに限らず、例えば露光時間一定で照明装置2の照射時間や光源輝度を変化させたり、CCDカメラ3の絞り量を変化させることで撮像条件を切換える構成としてもよい。なお、露光時間t1,t2等の撮像条件は、取得すべき第1輝度値Y1w等が適切な輝度レベルで取得できるように、事前にサンプリング検査等により特定しておくことが好ましい。また、照明装置2の照射光量の経時変化等によって第1輝度値Y1w等を精度良く取得できる適切な輝度レベルも変化するおそれがあるため、露光時間t1,t2等の撮像条件を適宜補正することが好ましい。
【0068】
(c)上記実施形態では、第1画像データから取得した第1輝度値Y1wと、第2画像データから取得した第3輝度値Y2wを基に、CCDカメラ3の基準輝度レベルY0を算出し、第2画像データから取得した第2輝度値Y2bと基準輝度レベルY0との差βと、第3輝度値Y2wと基準輝度レベルY0との差αとの比から、第2画像データに係る検査領域WA1〜WA8における光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出する構成となっている。これに代えて、例えばCCDカメラ3の基準輝度レベルY0を検査前に予め特定し設定しておくことにより、当該基準輝度レベルY0と、取得した第1輝度値Y1w及び第2輝度値Y2bを基に、第2画像データに係る検査領域WA1〜WA8における光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出する構成としてもよい。このようにすれば、第2画像データに係る検査領域WA1〜WA8の第3輝度値Y2wを算出することなく、当該検査領域WA1〜WA8における光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出することができる。結果として、透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出する上での演算処理の簡素化を図ることができ、検査効率の向上を図ることができる。
【0069】
かかる構成によれば、仮にCCDカメラ3の露光時間を短くする等、第2の撮像条件がCCDカメラ3の受光量の比較的少ない撮像条件に設定され、かかる条件下で撮像された第2画像データにおいて、蛍光ランプ11に対応する検査領域WA1〜WA8の第3輝度値Y2wが、当該第3輝度値Y2wを精度良く得られる適切な輝度レベルにない場合であっても、検査領域WA1〜WA8における光の透過率α/β、ひいては膜厚指数Xを算出することができる。
【0070】
また、CCDカメラ3の基準輝度レベルY0を検査前に予め特定する方法としては、例えば、露光時間を変化させる等して複数の撮像条件で撮像した画像データから輝度値の変化率(単調増加関数)を求め、これが収束していく値を基準輝度レベルY0として特定する構成としてもよいし、また、照明装置2からの照射のない状態でCCDカメラ3の撮像を行い、その画像データの輝度値から基準輝度レベルY0を特定する構成としてもよい。
【0071】
(d)上記実施形態では、毎回の検査毎に第2の撮像条件での撮像を行い、照明装置2に対応する背景領域WB1〜WB9の第2輝度値Y2bを取得する構成となっているが、これに限らず、第2の撮像条件での撮像や、背景領域WB1〜WB9の第2輝度値Y2bの取得は、複数回の検査に一度行う構成としてもよい。
【0072】
(e)上記実施形態では特に言及しなかったが、撮像手段の画角及び照明手段の輝度むらを考慮して、検査領域WA1〜WA8の輝度値を得る上で、画像の中央付近の背景領域の輝度値(背景領域WB5の中央付近の輝度値)と、画像の端の方の背景領域の輝度値(背景領域WB1、WB9或いはWB5の端部など)とをもとに、シェーディング補正等を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…蛍光ランプ検査装置、2…照明装置、3…CCDカメラ、6…演算装置、11…蛍光ランプ、12…ガラス管、13…蛍光塗膜、17…判定手段、t1,t2…露光時間、WA1〜WA8…検査領域、WB1〜WB9…背景領域、X…膜厚指数、Y1w…第1輝度値、Y2b…第2輝度値、Y2w…第3輝度値、Y0…基準輝度レベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のガラス管の内周面に蛍光塗膜が形成されてなる蛍光ランプを検査するための蛍光ランプ検査装置であって、
前記蛍光ランプに対して光を照射する照射手段と、
前記蛍光ランプを挟んで前記照射手段とは反対側に設けられ、当該照射手段からの直接光及び前記蛍光ランプを透過した透過光を受光し、少なくとも輝度値を含む画像データとして出力する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに基づき、前記蛍光塗膜の良否を判定する判定手段とを備え、
前記撮像手段は、
前記蛍光ランプに対応する検査領域の輝度値が飽和レベルに達しない第1の撮像条件で撮像した第1画像データを出力し、
前記第1の撮像条件で撮像した場合よりも受光する受光量が少なくかつ前記照射手段に対応する背景領域の輝度値が飽和レベルに達しない第2の撮像条件で撮像した第2画像データを出力し、
前記判定手段は、
前記第1画像データから前記検査領域の輝度値である第1輝度値を取得し、
前記第2画像データから前記背景領域の輝度値である第2輝度値を取得し、
少なくとも前記第1輝度値及び前記第2輝度値を基に、前記第2画像データに係る前記検査領域における光の透過率を算出し、
前記透過率に基づき、前記蛍光塗膜の膜厚の良否を判定することを特徴とする蛍光ランプ検査装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記第2画像データから、当該第2画像データに係る前記検査領域の輝度値である第3輝度値を算出し、
前記第1輝度値及び前記第3輝度値を基に、前記撮像手段の基準輝度レベルを算出し、
前記第2輝度値と前記基準輝度レベルとの差と、前記第3輝度値と前記基準輝度レベルとの差との比から、前記第2画像データに係る前記検査領域における光の透過率を算出することを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ検査装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
予め設定された前記撮像手段の基準輝度レベルと、前記取得した第1輝度値及び前記第2輝度値を基に、前記第2画像データに係る前記検査領域における光の透過率を算出することを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ検査装置。
【請求項4】
前記撮像手段の露光時間を調節することにより、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件とを切換えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ検査装置。
【請求項5】
前記照射手段の照射時間を調節することにより、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件とを切換えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ検査装置。
【請求項6】
前記撮像手段の絞りを調節することにより、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件とを切換えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−13096(P2011−13096A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157403(P2009−157403)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】