蛍光ランプ
【課題】 310nm以下の発光強度を極力下げ、かつ、310nm〜380nmの発光強度を極力上げる蛍光体を用いた希ガス蛍光ランプを提供することである。
【解決手段】 光反応性物質を含有した液晶パネルの製造工程において使用する蛍光ランプにおいて、発光管の内部に形成された蛍光体層には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶としCe3+により付活した蛍光体を含むことを特徴とする。
【解決手段】 光反応性物質を含有した液晶パネルの製造工程において使用する蛍光ランプにおいて、発光管の内部に形成された蛍光体層には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶としCe3+により付活した蛍光体を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの製造に使用される光源用ランプに関し、特に光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネル製造工程で使用される蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、2枚の光透過性を有する基板(ガラス基板)の間に液晶を封入した構造であり、一方のガラス板上に多数のアクティブ素子(TFT)と液晶駆動用電極を形成し、その上に配向膜を形成している。他方のガラス基板には、カラーフィルタ、配向膜、そして透明電極(ITO)を形成している。そして両ガラス基板の配向膜間に液晶を封入し、シール剤にて周囲を封止している。
このような構造の液晶パネルにおいて、配向膜は、電極間に電圧を印加して液晶を配向させる液晶配向を制御するためのものである。
従来、配向膜の制御はラビングにより行われてきたが、近年、新しい配向制御技術が試みられている(特許文献1参照)。
【0003】
それは、TFT素子が設けられた第1のガラス基板と当該第1のガラス基板に相対する第2のガラス基板との間に、電圧印加により配向する配向性を持つ液晶と、光に反応して重合を起こすモノマーとを混合した材料を封入しておき、この液晶パネルに電圧を印加しながら光を照射してモノマーを重合させ、ガラス基板に接する液晶(即ち表層の概ね1分子層)の向きを固定することにより、液晶分子にプレチルト角を付与するというものである。
この方法によれば、従来プレチト角度を付与するために必要であった斜面を持った突起物が不要となるので、液晶パネルの製造工程を簡略化でき、また最終製品においては、突起物による影がなくなるので開口率が改善されるようになり、結果的に液晶パネルの製造コストや製造時間を削減でき、更に、バックライトを省電力化できるようになる。
【0004】
図11を参照してこの高分子による液晶配向規制技術について説明する。
パネル90は、ガラスからなる光透過性基板91のそれぞれの面にITO等による電極92が形成され、かつその周辺にシール剤(不図示)が塗布、形成されて貼り合わされたものである。基板91の間には液晶が注入されている。この液晶は、負の誘電率異方性をもつネガ型液晶に、紫外線硬化型モノマー93が適宜の割合で添加されたものである。
このパネル90に、電圧印加および紫外線照射を行うことで、液晶の配向規制が行われる。
【0005】
図11(a)で示すように初期の電圧無印加時には、液晶分子94は垂直に配向しており、モノマー93もまた単量体の状態で液晶分子に沿って存在している。ここで、(b)のように電圧を印加すると、液晶分子94は画素電極の微細パターン方向に傾き、モノマー93も同様に傾く。この状態で(c)に示すように紫外線照射を行うと、モノマー93は傾斜を持ったままポリマー化する。このようにしてモノマー93が傾斜を持ってポリマー化することにより、液晶分子94の配向が規制されることとなる。
【0006】
この新しい配向制御を行う液晶パネルの製造技術において、最終製品におけるパネルの良否は、モノマーの重合が完遂するか否かが、大きくかかわっており、万が一、未硬化のモノマーが残存した場合には、液晶パネルの焼きつきが発生し、不良の原因となってしまう。
このため、特許文献1等に知られるように、紫外線の照射を複数段階に分割した、2段階の紫外線照射工程が用いられる。具体的には、図12で示すように、(A)1次照射工程では、液晶材料および光重合性モノマーを含む液晶層に電圧を印加した状態で液晶層に紫外線を照射し、その後、(B)2次照射工程では、電圧無印加状態で紫外線を照射する。その結果、1次照射工程で液晶材料の分子配向が傾斜した状態で、配向膜近傍のモノマーが重合してポリマー層が形成され、2次照射工程で液晶分子の傾斜方向がポリマーに記憶される。このような工程を経ることで、液晶材料中に残存するモノマーが完全に重合し、モノマーが消滅する。
【0007】
従来、上記紫外線照射工程においては、ブラックライトと呼ばれる波長約300〜400nm域近傍の紫外域の光を放射する蛍光ランプが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−134668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ブラックライトからの放射光は、短波長(例えば310nm未満の波長)の紫外線が比較的多く含まれている。しかしながらこのような波長310nm以下の紫外線を液晶表示パネルに照射すると、液晶がダメージを受け、液晶表示パネルの信頼性が低下するという新たな問題を招来する。不要な波長域の光をカットするには、簡単にはフィルタを設けることだが、蛍光ランプは拡散光源であるため、通常、吸収特性のフィルタを使用する必要がある。しかしながら、波長310nm以下の光を確実に遮光するには、310nm近傍の例えば310〜340nm近傍のスペクトル光も一部が吸収される。すなわち、モノマーの重合に寄与する波長域の光が不可避に吸収されることになる。この結果、重合に必要な波長域の光を効率よく照射することができず、重合速度が低下し、紫外線照射時間が長くなり、量産性が悪くなるという問題が生じる。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、電極を備えた2枚の基板間に重合可能なモノマーを含む液晶組成物を充填して液晶層を形成し、基板に電圧を印加しながらモノマーを重合させることで、液晶分子の傾斜方向を規定する液晶表示装置の製造工程において、前記モノマーの重合工程において好適に使用することができる紫外線を放射する光源ランプを提供することであり、具体的にはそのスペクトルにおいて310nmより短波長の紫外線強度を極力小さくして、310〜380nmに最大エネルギーピークを有する蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明にかかる蛍光ランプは、以下の特徴を備える。
(1)
光反応性物質を含有した液晶パネルの製造工程において使用する蛍光ランプにおいて、発光管の内部に形成された蛍光体層には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶としCe3+により付活した蛍光体を含むことを特徴とする。
(2)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする。
Cex(Mg1−y−z,Bay−z)Al11O19−(3(1−x)+2z)/2
(但し、0.6≦x≦0.8)
(3)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウムを含むことを特徴とする。
(Y1−x,Gdx)PO4:Ce
(但し、0.1≦x≦0.5)
(4)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタンを含むことを特徴とする。
(La1−x,Cex)MgAl11O19
(但し、0.07≦x≦0.12)
(5)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウムおよびランタン付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする。
(Ce0.8,Lax)(Mg0.8,Ba0.1)Al11O18.6+3x
(但し、0<x≦0.06)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蛍光ランプから放射される光の波長において、321〜350nm間の光強度を損なうことなく、310nm以下の波長の紫外線強度を小さくすることができるので、液晶にダメージを与える300nm近傍の短波長の紫外線強度を小さくすることができて、液晶に与えるダメージを減らしつつ、モノマーの重合を確実に行うことができ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に好適に使用することができる蛍光ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる蛍光ランプを搭載した紫外線照射装置を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る蛍光ランプの説明図である。
【図3】第1の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、セリウム濃度の関係を示す図である。
【図5】第2の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、ガドリニウム濃度の関係を示す図である。
【図7】第3の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、セリウム濃度の関係を示す図である。
【図9】第4の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図10】第4の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、ランタン濃度の関係を示す図である。
【図11】光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程を説明する図である。
【図12】光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための液晶製造用の紫外線照射装置及び蛍光ランプを例示するものであって、本発明は蛍光ランプを以下のものに特定しない。
図1は、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、光反応性物質としてのモノマーをポリマー化するための紫外線照射装置100の概略説明図である。ワークステージSには、コロなどの適宜の搬送装置により運ばれてきた液晶パネル30が光照射部の直下に載置される。液晶パネル30は、例えば、ガラスからなる光透過性を備えた2枚の基板31の間に、枠状にシール剤32が塗布されるとともに、その内部に未反応状態の光反応性物質(モノマー)を含んだ液晶33が注入されて、構成されたものである。
基板31の各々には、同図では不図示とした電極が設けられており、各電極は電圧を印加する機構に接続されている。なおここでは不図示としたが、このような電圧を印加する機構を備えた紫外線照射装置34の紫外線照射装置が備わっている。
【0015】
液晶パネル30の上部には、紫外線を照射するための光照射部20が形成されている。光源は、蛍光ランプ10であり、ここでは複数のランプ(同図では5本)が並んで配置されている。なお、蛍光ランプの背後にはランプからの光をステージに向けて反射するミラー21が具備されている。
【0016】
図2は、蛍光ランプの説明図である。同図(a)は斜視図、(b)はランプの管軸に垂直な断面図、(c)は、(b)において線分A−Aで切断した管軸方向断面図である。
本発明の一実施の形態に係る蛍光ランプ10について、詳細に説明する。ガラス等の誘電体からなる透光性の気密容器11の内壁には蛍光体が積層されて形成された蛍光体層12が形成される。この気密容器11の内部にはキセノン等の希ガスからなる放電媒体が封入されており、気密容器11の外面上には一対の外部電極13,14が配置されている。リード線15,16を介して、かかる一対の外部電極13,14間に、高周波高電圧が印加されると、気密容器11により構成された誘電体の壁を介在させた放電が形成され、キセノンのスペクトルである172nmの紫外線が放出する。
本発明で用いられる蛍光体層12は、このような短波長紫外線、例えばキセノンから発される波長172nm紫外線を照射したとき、波長310〜380nmの領域に発光ピーク波長を有する長波長紫外線を発する蛍光体を備えている。
【0017】
蛍光体は、具体的には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶とし、かつそれぞれの母結晶をセリウム(Ce)により付活した蛍光体が含まれている。特に、Ceは3価および4価の価数を取り得るが、本発明においては3価のカチオンとして存在する。このような蛍光体は、適宜の割合で混合して使用しても構わないが、作業工数が増えるので、実用上は、単独に使用するのが好ましい。以下、それぞれの蛍光体について実施例に基づいて詳細に説明する。
なお以下の説明においては、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、従来、光反応性物質の反応に使用されていたいわゆるブラックライトと対比して説明する。なお、ブラックライトに使用される蛍光体は種々のものがあるが、ここでは一般的な蛍光体であるセリウム付活リン酸ランタンを比較例に用いて説明することとし、後段の説明においては、このセリウム付活リン酸ランタン蛍光体を用いたブラックライトを「従来例1」という。
なお、セリウム付活リン酸ランタン蛍光体の一般式は下記の通りである。
セリウム付活リン酸ランタン蛍光体の一般式:(La,Ce)PO4
【0018】
[実施形態1]
本実施形態1にかかる蛍光ランプは、蛍光体層12を主としてセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネート(Ce−Mg−Ba−Al−O)系の蛍光体を用いたものである。この蛍光体層12は、一般式が次の式(1)で表される蛍光体であり、特にセリウム(Ce)のモル比(x)が0.6〜0.8の範囲のものである。
【0019】
式(1): Cex(Mg1−y−z,Bay−z)Al11O19−(3(1−x)+2z)/2
【0020】
上記式(1)において、付活金属元素であるCeは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このセリウムのモル比をx=0.6〜0.8の範囲に設定することで、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0021】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
【0022】
(比較例1)
波長310nm以下、特に波長300nm以下の紫外線放射が少ない蛍光体としては下記式(2)に示す、セリウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体(略称CAM蛍光体)が一般に知られている。
【0023】
式(2):CeMgAl11O19
なお、式(2)において、セリウム(Ce)のモル数は1である
【0024】
この式(2)のCAM蛍光体を用いた蛍光ランプの波長250〜450nm域の発光スペクトル波形を図3中の比較例1の曲線で示す。なお同図中の従来例1はセリウム付活リン酸ランタン蛍光体発光スペクトル波形である。このように、比較例1の曲線における発光スペクトルのピーク値は波長360〜370nm近傍にあり、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、光反応性物質の反応に使用されるスペクトル域(波長321〜350nm;「有効波長帯」という。)の強度が大きいことが確認された。
【0025】
しかしながら、有効波長帯の強度は改善の余地があると考え、本発明者は、このセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネート(Ce−Mg−Ba−Al−O)系の蛍光体をもとに、波長310〜380nmの波長域の紫外光を増大させることを試みた。
なお、その検証においては、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、光反応性物質の反応に使用されるスペクトル域、すなわち有効波長帯(波長321〜350nm)と、液晶に対してダメージを与えるスペクトル域(波長300〜310nm;以下、「ダメージ波長帯」という。)と、これら間のスペクトル域(波長311〜320nm)とに分けて、各領域の積算光量を、従来技術にかかるブラックライトのものと比較して行った。
【0026】
(比較例2,3)
まず、セリウムの配合割合を変えずにCAM蛍光体の一般式(式(1))において2価の金属イオンであるマグネシウムの一部を、同じく2価の金属イオンであるバリウムに置換して、比較例2、比較例3に係る蛍光体を作製した。以下、それぞれの蛍光体の一般式を示す。
【0027】
(比較例2)Ce(Mg0.95,Ba0.05)Al11O19
(比較例3)Ce(Mg0.9,Ba0.1)Al11O19
【0028】
比較例2の蛍光ランプにかかる蛍光体は、バリウム添加量を0.05モル、比較例3の蛍光ランプにかかる蛍光体はバリウム添加量を1モルとして、マグネシウムを置換して製作した蛍光体である。これらの蛍光体の製造にあたっては、Ce,Mg,Ba,Alを一般式で表されるモル比で混合し、その後に焼成することを経て作製した。
これらの蛍光体を用いて図2に示した構成に従って比較例2および比較例3にかかる蛍光ランプを製作した。
このようにして製作した蛍光ランプに所定の電圧を投入して点灯し、ランプの発光強度を測定した。この結果、バリウムを添加することによる、大きな改善は認められなかったが、比較例2にかかる蛍光ランプは比較例3にかかる蛍光ランプよりも波長のピーク値が短波長側にシフトし、発光強度がわずかに高くなることが確認された。
【0029】
(比較例4)
続いて、バリウム置換した蛍光体のうち、バリウムのモル数0.1モルを採用し、セリウムの添加量を変化させることを試みた。ここに、セリウムのモル比は0.5とした。なお蛍光体はCe,Mg,Ba,Alを一般式で表されるモル比で混合し、その後に焼成することを経て作製し、図2に示す構成の蛍光ランプを製作した。この蛍光ランプを点灯させ、発光スペクトルを検証した。
この結果、蛍光のピークは更に短波長側にシフトして発光強度が増し、大きく改善したことがわかった。
そこで更にセリウム(Ce)濃度を変化させた蛍光体を製作した。
【0030】
(実施例1〜3)
実施例1〜3として、上記式(2)におけるxの値を順に0.6、0.7、0.8となるよう調製して蛍光体を製造した。なお各実施例のセリウム濃度は0.6モル、0.7モル、0.8モルである。
【0031】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯し、その発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例1〜3においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を1/10以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより多く放出することが可能である。
【0032】
図3に、従来例1、比較例1〜4、実施例1〜3の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表1に、従来例、比較例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表1中、左側の「測定値」欄は、発光管から25mmの位置で分光器により測定したスペクトルのこの積分強度の実測値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100とした相対値で示している。
【0033】
【表1】
【0034】
また、図4に、縦軸を相対値、横軸をセリウムの濃度として、先に示した表1の比較例及び実施例の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、ダメージ波長帯は相対値において10の近傍で推移するが、セリウムの濃度が0.6〜0.8モルの範囲において有効波長帯域における光出力が大きい。しかしながら、セリウムのモル数において1モルにまで増大すると効率が悪くなることが分かる。
【0035】
以上の結果から分かるように、実施例1〜3のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を10以下に低減でき、有効波長帯の強度を80以上とすることが可能になる。従って、上記式において、xの値が0.6〜0.8の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光が大きいことがわかった。
【0036】
[実施形態2]
続いて本発明の実施形態2について説明する。
本実施形態にかかる蛍光ランプは、図2で示す蛍光ランプの蛍光体層12として、セリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウム(Gd−Y−P−O:Ce)系の蛍光体を使用したものである。この蛍光体層12は、一般式が次式、式(3)で表される蛍光体であり、特にガドリニウム(Gd)のモル比(x)が0.1〜0.5の範囲のものである
【0037】
式(3):(Y1−x,Gdx)PO4:Ce (但し、0.1≦x≦0.5)
【0038】
上記式(3)において、付活金属元素であるCeは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このガドリニウムのモル比をx=0.1〜0.5の範囲とすることで、セリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウム(Gd−Y−P−O:Ce)系蛍光体において、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に際して、有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0039】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
なお、以下の説明おいても、従来例に係るランプとしてセリウム付活リン酸ランタン蛍光体を用いたブラックライトを従来例1という。
【0040】
(比較例5)
波長310nm以下、特に波長300nm以下の紫外線放射が少ない蛍光体としては、下記式(4)に示すセリウム付活リン酸イットリウム(Y−P−O:Ce)蛍光体(略称YPC蛍光体)が一般に知られている。
【0041】
式(4):YPO4:Ce
【0042】
この式(4)セリウム付活リン酸イットリウム(Y−P−O:Ce)蛍光体は、特に有効波長領域における光強度が、従来例1に対し半分以下であり効率が悪い。本発明者は、この蛍光体をもとに、効率を向上することを波長310〜380nmの波長域の紫外光を増幅させることを試みた。
【0043】
(比較例6)
先ず、上記式(4)の蛍光体のイットリウム(Y)の一部を、ガドリニウム(Gd)に置換して蛍光体を作製し、比較例6にかかる蛍光ランプを製作した。
【0044】
(比較例6)(Y0.95,Gd0.05)PO4:Ce
【0045】
比較例6の蛍光ランプにかかる蛍光体は、ガドリニウムのモル数は0.05モルであり、イットリウムのモル数は0.95モルである。この蛍光体の製造にあたっては、Gd、Y、P、Ceを一般式で表されるモル比で混合し、焼成することを経て作製した。この蛍光体を用いて、比較例6に係る蛍光ランプを製作した。このようにして製作した蛍光ランプに所定の電圧を印加して点灯し、蛍光ランプからの放射光の波長250〜450nm域の発光スペクトル波形と強度を得た。この結果を図5中の比較例6の曲線で示す。
【0046】
(実施例4〜7)
実施例4〜7、として、上記式(3)におけるxの値を0.1、0.2、0.3、0.5となるよう調製して蛍光体を製造した。なお、セリウム濃度は、イットリウム(Y)とガドリニウム(Gd)の合計値が全て0.95モルに対して、全て0.05モルである。
【0047】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯して発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例4〜7においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を1/10以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより多く放出することが可能である。
【0048】
図5に、従来例1、比較例6、実施例4〜7の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表2に、従来例、比較例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表2の左側の欄はこの積分強度の実測値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100としたときの相対値で示している。
【0049】
【表2】
【0050】
また、図6に、縦軸を相対値、横軸をセリウムの濃度として、先に示した表1の比較例及び実施例の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、ガドリニウムのモル数が大きくなるに従い有効波長帯域における光出力が大きくなる。しかしながら、同時にダメージ波長帯の相対値も、有効波長帯域における光出力の増加に伴って大きくなる。よって、ガドリニウムの添加量としては0.1モル〜0.5モルの範囲が実用的な範囲である。特に好ましいのはガドリニウムが0.3モルである場合である。
【0051】
以上の結果から、実施例4〜7のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を10以下に低減でき、有効波長帯の強度をより大きくできることが可能になることが確認された。従って、上記式(3)において、xの値が0.1〜0.5の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光が大きいことがわかった。
【0052】
[実施形態3]
続いて本発明の実施形態3について説明する。
本実施形態にかかる蛍光ランプは、図2で示す蛍光ランプの蛍光体層12として、セリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタン(La−Mg−Al−O:Ce)系の蛍光体を使用したものである。この蛍光体層12は、一般式が次式、式(5)で表される蛍光体であり、特にセリウム(Ce)のモル比(x)が0.07〜0.12の範囲のものである
【0053】
式(5):(La1−x,Cex)MgAl11O19(但し、0.07≦x≦0.12)
【0054】
上記式(5)において、付活金属元素であるCeは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このセリウムのモル比をx=0.07〜0.12の範囲とすることで、セリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタン(La−Mg−Al−O:Ce)系の蛍光体において、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に際して、有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0055】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
なお、以下の説明おいて、従来例に係るランプとしてセリウム付活リン酸ランタン蛍光体を用いたブラックライトランプを従来例1という。セリウム付活リン酸ランタン蛍光体(一般式:LaPO4:Ce)におけるセリウム(Ce)のモル数は0.05モルである。
【0056】
(実施例8〜11)
実施例8〜11、として、上記式(5)におけるxの値を0.07、0.09、0.1、0.12となるよう調製して蛍光体を製造した。なお各実施例におけるセリウムのモル数は0.07モル、0.09モル、0.1モル、0.12モルである。
【0057】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯して発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例8〜11においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を2/5以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより大きく放出することが可能である。
【0058】
図7に、従来例1および実施例8〜11の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表3に、従来例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表3の左側の欄はこの積分強度の測定値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100としたときの相対値で示している。
【0059】
【表3】
【0060】
また、図8に、縦軸を相対値、横軸をセリウムの濃度として、先に示した表3の比較例及び実施例の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、セリウムのモル数0.1近傍において有効波長領域の相対値がピークになり、相対値においても80以上と良好な効率を示す。ダメージ波長帯の強度としては、相対値で20〜40の間で推移するが、セリウム濃度を0.1〜0.12と高めに設定することで、20程度に低く抑えることができる。
【0061】
以上の結果から、実施例8〜11のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を40以下に低減でき、有効波長帯の強度をより大きくできることが可能になることが確認された。従って、上記式(3)において、xの値が0.1〜0.12の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光が大きいことがわかった。
【0062】
[実施形態4]
本実施形態4にかかる蛍光ランプは、蛍光体層12を主としてセリウムおよびランタン付活マグネシウムバリウムアルミネート(Ce−La−Mg−Ba−Al−O)系の蛍光体を用いたものである。この蛍光体層12は、一般式が次の式(6)で表される蛍光体であり、特にセリウム(Ce)のモル比(x)が0.8であり、ランタン(La)のモル比が0.06以下となる範囲(但し0を含まない)のものである。
【0063】
式(6): (Ce0.8,Lax)(Mg0.8,Ba0.1)Al11O18.6+3x
【0064】
上記式(6)において、付活金属元素であるCeおよびLaは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このセリウムのモル比を0.8に対して、ランタン(La)のモル比を、0〜0.06範囲に設定することで、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0065】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
【0066】
なお本実施形態の説明においては、蛍光体の母結晶が実施形態1に係る蛍光体と同じであることから、比較例に関しては、前記比較例1〜比較例4の内容を引用すると共に、Laの濃度が0である場合については、先に実施形態1で説明した実施例3の蛍光体と同じであるため、実施例3の内容を引用して説明する。
【0067】
(実施例12〜16)
実施例12〜16として、上記式(6)におけるLa濃度xの値を0.01、0.02、0.04、0.06、0.10となるよう調製して蛍光体を製造した。なお各実施例のセリウム濃度は0.8モルである。
【0068】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯して発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例12〜16においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を1/10以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより多く放出することが可能である。
【0069】
図9に、従来例1、比較例1〜4、実施例3、12〜16の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表4に、従来例、比較例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表4中、左側の「測定値」欄は、発光管から25mmの位置で分光器により測定したスペクトルのこの積分強度の実測値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100とした相対値で示している。
【0070】
【表4】
【0071】
また、図10に、縦軸を相対値、横軸をランタン(La)の濃度として、先に示した表4の実施例3及び実施例12〜16の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、ダメージ波長帯は相対値において10の近傍で推移するが、ランタンの濃度が0〜0.06モルの範囲において、300〜310nmの積分値に対する320〜350nmの積分値が、実施例3のものと同等或いはそれより小さくなり、かつ、321〜350nmの積分強度が、従来例の321〜350nmの積分強度が、およそ50%以上であることがわかる。
【0072】
以上の結果から分かるように、実施例12〜15のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を10以下に低減でき、有効波長帯の強度を50以上とすることが可能になる。従って、上記式(6)において、xの値が0<x≦0.06の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光を大きくすることができる。
【0073】
以上説明したように、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶とし、Ce3+により付活した蛍光体を含む蛍光体を用いて蛍光ランプを構成することで、光反応性物質の反応に有効な波長帯の光を増大させることが可能であり、液晶にダメージを与える波長域の光の放射の少ない、蛍光ランプを提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
100 紫外線照射装置
10 蛍光ランプ
11 気密容器
12 蛍光体層
13,14 電極
15,16 リード線
20 光照射部
21 ミラー
30 液晶パネル
31 光透過性基板
32 シール剤
33 光反応性物質を含んだ液
34 電圧を印加する機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの製造に使用される光源用ランプに関し、特に光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネル製造工程で使用される蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、2枚の光透過性を有する基板(ガラス基板)の間に液晶を封入した構造であり、一方のガラス板上に多数のアクティブ素子(TFT)と液晶駆動用電極を形成し、その上に配向膜を形成している。他方のガラス基板には、カラーフィルタ、配向膜、そして透明電極(ITO)を形成している。そして両ガラス基板の配向膜間に液晶を封入し、シール剤にて周囲を封止している。
このような構造の液晶パネルにおいて、配向膜は、電極間に電圧を印加して液晶を配向させる液晶配向を制御するためのものである。
従来、配向膜の制御はラビングにより行われてきたが、近年、新しい配向制御技術が試みられている(特許文献1参照)。
【0003】
それは、TFT素子が設けられた第1のガラス基板と当該第1のガラス基板に相対する第2のガラス基板との間に、電圧印加により配向する配向性を持つ液晶と、光に反応して重合を起こすモノマーとを混合した材料を封入しておき、この液晶パネルに電圧を印加しながら光を照射してモノマーを重合させ、ガラス基板に接する液晶(即ち表層の概ね1分子層)の向きを固定することにより、液晶分子にプレチルト角を付与するというものである。
この方法によれば、従来プレチト角度を付与するために必要であった斜面を持った突起物が不要となるので、液晶パネルの製造工程を簡略化でき、また最終製品においては、突起物による影がなくなるので開口率が改善されるようになり、結果的に液晶パネルの製造コストや製造時間を削減でき、更に、バックライトを省電力化できるようになる。
【0004】
図11を参照してこの高分子による液晶配向規制技術について説明する。
パネル90は、ガラスからなる光透過性基板91のそれぞれの面にITO等による電極92が形成され、かつその周辺にシール剤(不図示)が塗布、形成されて貼り合わされたものである。基板91の間には液晶が注入されている。この液晶は、負の誘電率異方性をもつネガ型液晶に、紫外線硬化型モノマー93が適宜の割合で添加されたものである。
このパネル90に、電圧印加および紫外線照射を行うことで、液晶の配向規制が行われる。
【0005】
図11(a)で示すように初期の電圧無印加時には、液晶分子94は垂直に配向しており、モノマー93もまた単量体の状態で液晶分子に沿って存在している。ここで、(b)のように電圧を印加すると、液晶分子94は画素電極の微細パターン方向に傾き、モノマー93も同様に傾く。この状態で(c)に示すように紫外線照射を行うと、モノマー93は傾斜を持ったままポリマー化する。このようにしてモノマー93が傾斜を持ってポリマー化することにより、液晶分子94の配向が規制されることとなる。
【0006】
この新しい配向制御を行う液晶パネルの製造技術において、最終製品におけるパネルの良否は、モノマーの重合が完遂するか否かが、大きくかかわっており、万が一、未硬化のモノマーが残存した場合には、液晶パネルの焼きつきが発生し、不良の原因となってしまう。
このため、特許文献1等に知られるように、紫外線の照射を複数段階に分割した、2段階の紫外線照射工程が用いられる。具体的には、図12で示すように、(A)1次照射工程では、液晶材料および光重合性モノマーを含む液晶層に電圧を印加した状態で液晶層に紫外線を照射し、その後、(B)2次照射工程では、電圧無印加状態で紫外線を照射する。その結果、1次照射工程で液晶材料の分子配向が傾斜した状態で、配向膜近傍のモノマーが重合してポリマー層が形成され、2次照射工程で液晶分子の傾斜方向がポリマーに記憶される。このような工程を経ることで、液晶材料中に残存するモノマーが完全に重合し、モノマーが消滅する。
【0007】
従来、上記紫外線照射工程においては、ブラックライトと呼ばれる波長約300〜400nm域近傍の紫外域の光を放射する蛍光ランプが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−134668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ブラックライトからの放射光は、短波長(例えば310nm未満の波長)の紫外線が比較的多く含まれている。しかしながらこのような波長310nm以下の紫外線を液晶表示パネルに照射すると、液晶がダメージを受け、液晶表示パネルの信頼性が低下するという新たな問題を招来する。不要な波長域の光をカットするには、簡単にはフィルタを設けることだが、蛍光ランプは拡散光源であるため、通常、吸収特性のフィルタを使用する必要がある。しかしながら、波長310nm以下の光を確実に遮光するには、310nm近傍の例えば310〜340nm近傍のスペクトル光も一部が吸収される。すなわち、モノマーの重合に寄与する波長域の光が不可避に吸収されることになる。この結果、重合に必要な波長域の光を効率よく照射することができず、重合速度が低下し、紫外線照射時間が長くなり、量産性が悪くなるという問題が生じる。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、電極を備えた2枚の基板間に重合可能なモノマーを含む液晶組成物を充填して液晶層を形成し、基板に電圧を印加しながらモノマーを重合させることで、液晶分子の傾斜方向を規定する液晶表示装置の製造工程において、前記モノマーの重合工程において好適に使用することができる紫外線を放射する光源ランプを提供することであり、具体的にはそのスペクトルにおいて310nmより短波長の紫外線強度を極力小さくして、310〜380nmに最大エネルギーピークを有する蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明にかかる蛍光ランプは、以下の特徴を備える。
(1)
光反応性物質を含有した液晶パネルの製造工程において使用する蛍光ランプにおいて、発光管の内部に形成された蛍光体層には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶としCe3+により付活した蛍光体を含むことを特徴とする。
(2)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする。
Cex(Mg1−y−z,Bay−z)Al11O19−(3(1−x)+2z)/2
(但し、0.6≦x≦0.8)
(3)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウムを含むことを特徴とする。
(Y1−x,Gdx)PO4:Ce
(但し、0.1≦x≦0.5)
(4)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタンを含むことを特徴とする。
(La1−x,Cex)MgAl11O19
(但し、0.07≦x≦0.12)
(5)
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウムおよびランタン付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする。
(Ce0.8,Lax)(Mg0.8,Ba0.1)Al11O18.6+3x
(但し、0<x≦0.06)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蛍光ランプから放射される光の波長において、321〜350nm間の光強度を損なうことなく、310nm以下の波長の紫外線強度を小さくすることができるので、液晶にダメージを与える300nm近傍の短波長の紫外線強度を小さくすることができて、液晶に与えるダメージを減らしつつ、モノマーの重合を確実に行うことができ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に好適に使用することができる蛍光ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる蛍光ランプを搭載した紫外線照射装置を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る蛍光ランプの説明図である。
【図3】第1の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、セリウム濃度の関係を示す図である。
【図5】第2の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、ガドリニウム濃度の関係を示す図である。
【図7】第3の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、セリウム濃度の関係を示す図である。
【図9】第4の実施形態、従来例、比較例の各蛍光ランプの、波長250〜450nmのスペクトルを示す図である。
【図10】第4の実施形態に係る蛍光ランプのダメージ波長領域および有効波長領域の、光の積算強度の相対値と、ランタン濃度の関係を示す図である。
【図11】光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程を説明する図である。
【図12】光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための液晶製造用の紫外線照射装置及び蛍光ランプを例示するものであって、本発明は蛍光ランプを以下のものに特定しない。
図1は、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、光反応性物質としてのモノマーをポリマー化するための紫外線照射装置100の概略説明図である。ワークステージSには、コロなどの適宜の搬送装置により運ばれてきた液晶パネル30が光照射部の直下に載置される。液晶パネル30は、例えば、ガラスからなる光透過性を備えた2枚の基板31の間に、枠状にシール剤32が塗布されるとともに、その内部に未反応状態の光反応性物質(モノマー)を含んだ液晶33が注入されて、構成されたものである。
基板31の各々には、同図では不図示とした電極が設けられており、各電極は電圧を印加する機構に接続されている。なおここでは不図示としたが、このような電圧を印加する機構を備えた紫外線照射装置34の紫外線照射装置が備わっている。
【0015】
液晶パネル30の上部には、紫外線を照射するための光照射部20が形成されている。光源は、蛍光ランプ10であり、ここでは複数のランプ(同図では5本)が並んで配置されている。なお、蛍光ランプの背後にはランプからの光をステージに向けて反射するミラー21が具備されている。
【0016】
図2は、蛍光ランプの説明図である。同図(a)は斜視図、(b)はランプの管軸に垂直な断面図、(c)は、(b)において線分A−Aで切断した管軸方向断面図である。
本発明の一実施の形態に係る蛍光ランプ10について、詳細に説明する。ガラス等の誘電体からなる透光性の気密容器11の内壁には蛍光体が積層されて形成された蛍光体層12が形成される。この気密容器11の内部にはキセノン等の希ガスからなる放電媒体が封入されており、気密容器11の外面上には一対の外部電極13,14が配置されている。リード線15,16を介して、かかる一対の外部電極13,14間に、高周波高電圧が印加されると、気密容器11により構成された誘電体の壁を介在させた放電が形成され、キセノンのスペクトルである172nmの紫外線が放出する。
本発明で用いられる蛍光体層12は、このような短波長紫外線、例えばキセノンから発される波長172nm紫外線を照射したとき、波長310〜380nmの領域に発光ピーク波長を有する長波長紫外線を発する蛍光体を備えている。
【0017】
蛍光体は、具体的には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶とし、かつそれぞれの母結晶をセリウム(Ce)により付活した蛍光体が含まれている。特に、Ceは3価および4価の価数を取り得るが、本発明においては3価のカチオンとして存在する。このような蛍光体は、適宜の割合で混合して使用しても構わないが、作業工数が増えるので、実用上は、単独に使用するのが好ましい。以下、それぞれの蛍光体について実施例に基づいて詳細に説明する。
なお以下の説明においては、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、従来、光反応性物質の反応に使用されていたいわゆるブラックライトと対比して説明する。なお、ブラックライトに使用される蛍光体は種々のものがあるが、ここでは一般的な蛍光体であるセリウム付活リン酸ランタンを比較例に用いて説明することとし、後段の説明においては、このセリウム付活リン酸ランタン蛍光体を用いたブラックライトを「従来例1」という。
なお、セリウム付活リン酸ランタン蛍光体の一般式は下記の通りである。
セリウム付活リン酸ランタン蛍光体の一般式:(La,Ce)PO4
【0018】
[実施形態1]
本実施形態1にかかる蛍光ランプは、蛍光体層12を主としてセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネート(Ce−Mg−Ba−Al−O)系の蛍光体を用いたものである。この蛍光体層12は、一般式が次の式(1)で表される蛍光体であり、特にセリウム(Ce)のモル比(x)が0.6〜0.8の範囲のものである。
【0019】
式(1): Cex(Mg1−y−z,Bay−z)Al11O19−(3(1−x)+2z)/2
【0020】
上記式(1)において、付活金属元素であるCeは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このセリウムのモル比をx=0.6〜0.8の範囲に設定することで、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0021】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
【0022】
(比較例1)
波長310nm以下、特に波長300nm以下の紫外線放射が少ない蛍光体としては下記式(2)に示す、セリウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体(略称CAM蛍光体)が一般に知られている。
【0023】
式(2):CeMgAl11O19
なお、式(2)において、セリウム(Ce)のモル数は1である
【0024】
この式(2)のCAM蛍光体を用いた蛍光ランプの波長250〜450nm域の発光スペクトル波形を図3中の比較例1の曲線で示す。なお同図中の従来例1はセリウム付活リン酸ランタン蛍光体発光スペクトル波形である。このように、比較例1の曲線における発光スペクトルのピーク値は波長360〜370nm近傍にあり、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、光反応性物質の反応に使用されるスペクトル域(波長321〜350nm;「有効波長帯」という。)の強度が大きいことが確認された。
【0025】
しかしながら、有効波長帯の強度は改善の余地があると考え、本発明者は、このセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネート(Ce−Mg−Ba−Al−O)系の蛍光体をもとに、波長310〜380nmの波長域の紫外光を増大させることを試みた。
なお、その検証においては、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、光反応性物質の反応に使用されるスペクトル域、すなわち有効波長帯(波長321〜350nm)と、液晶に対してダメージを与えるスペクトル域(波長300〜310nm;以下、「ダメージ波長帯」という。)と、これら間のスペクトル域(波長311〜320nm)とに分けて、各領域の積算光量を、従来技術にかかるブラックライトのものと比較して行った。
【0026】
(比較例2,3)
まず、セリウムの配合割合を変えずにCAM蛍光体の一般式(式(1))において2価の金属イオンであるマグネシウムの一部を、同じく2価の金属イオンであるバリウムに置換して、比較例2、比較例3に係る蛍光体を作製した。以下、それぞれの蛍光体の一般式を示す。
【0027】
(比較例2)Ce(Mg0.95,Ba0.05)Al11O19
(比較例3)Ce(Mg0.9,Ba0.1)Al11O19
【0028】
比較例2の蛍光ランプにかかる蛍光体は、バリウム添加量を0.05モル、比較例3の蛍光ランプにかかる蛍光体はバリウム添加量を1モルとして、マグネシウムを置換して製作した蛍光体である。これらの蛍光体の製造にあたっては、Ce,Mg,Ba,Alを一般式で表されるモル比で混合し、その後に焼成することを経て作製した。
これらの蛍光体を用いて図2に示した構成に従って比較例2および比較例3にかかる蛍光ランプを製作した。
このようにして製作した蛍光ランプに所定の電圧を投入して点灯し、ランプの発光強度を測定した。この結果、バリウムを添加することによる、大きな改善は認められなかったが、比較例2にかかる蛍光ランプは比較例3にかかる蛍光ランプよりも波長のピーク値が短波長側にシフトし、発光強度がわずかに高くなることが確認された。
【0029】
(比較例4)
続いて、バリウム置換した蛍光体のうち、バリウムのモル数0.1モルを採用し、セリウムの添加量を変化させることを試みた。ここに、セリウムのモル比は0.5とした。なお蛍光体はCe,Mg,Ba,Alを一般式で表されるモル比で混合し、その後に焼成することを経て作製し、図2に示す構成の蛍光ランプを製作した。この蛍光ランプを点灯させ、発光スペクトルを検証した。
この結果、蛍光のピークは更に短波長側にシフトして発光強度が増し、大きく改善したことがわかった。
そこで更にセリウム(Ce)濃度を変化させた蛍光体を製作した。
【0030】
(実施例1〜3)
実施例1〜3として、上記式(2)におけるxの値を順に0.6、0.7、0.8となるよう調製して蛍光体を製造した。なお各実施例のセリウム濃度は0.6モル、0.7モル、0.8モルである。
【0031】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯し、その発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例1〜3においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を1/10以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより多く放出することが可能である。
【0032】
図3に、従来例1、比較例1〜4、実施例1〜3の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表1に、従来例、比較例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表1中、左側の「測定値」欄は、発光管から25mmの位置で分光器により測定したスペクトルのこの積分強度の実測値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100とした相対値で示している。
【0033】
【表1】
【0034】
また、図4に、縦軸を相対値、横軸をセリウムの濃度として、先に示した表1の比較例及び実施例の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、ダメージ波長帯は相対値において10の近傍で推移するが、セリウムの濃度が0.6〜0.8モルの範囲において有効波長帯域における光出力が大きい。しかしながら、セリウムのモル数において1モルにまで増大すると効率が悪くなることが分かる。
【0035】
以上の結果から分かるように、実施例1〜3のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を10以下に低減でき、有効波長帯の強度を80以上とすることが可能になる。従って、上記式において、xの値が0.6〜0.8の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光が大きいことがわかった。
【0036】
[実施形態2]
続いて本発明の実施形態2について説明する。
本実施形態にかかる蛍光ランプは、図2で示す蛍光ランプの蛍光体層12として、セリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウム(Gd−Y−P−O:Ce)系の蛍光体を使用したものである。この蛍光体層12は、一般式が次式、式(3)で表される蛍光体であり、特にガドリニウム(Gd)のモル比(x)が0.1〜0.5の範囲のものである
【0037】
式(3):(Y1−x,Gdx)PO4:Ce (但し、0.1≦x≦0.5)
【0038】
上記式(3)において、付活金属元素であるCeは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このガドリニウムのモル比をx=0.1〜0.5の範囲とすることで、セリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウム(Gd−Y−P−O:Ce)系蛍光体において、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に際して、有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0039】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
なお、以下の説明おいても、従来例に係るランプとしてセリウム付活リン酸ランタン蛍光体を用いたブラックライトを従来例1という。
【0040】
(比較例5)
波長310nm以下、特に波長300nm以下の紫外線放射が少ない蛍光体としては、下記式(4)に示すセリウム付活リン酸イットリウム(Y−P−O:Ce)蛍光体(略称YPC蛍光体)が一般に知られている。
【0041】
式(4):YPO4:Ce
【0042】
この式(4)セリウム付活リン酸イットリウム(Y−P−O:Ce)蛍光体は、特に有効波長領域における光強度が、従来例1に対し半分以下であり効率が悪い。本発明者は、この蛍光体をもとに、効率を向上することを波長310〜380nmの波長域の紫外光を増幅させることを試みた。
【0043】
(比較例6)
先ず、上記式(4)の蛍光体のイットリウム(Y)の一部を、ガドリニウム(Gd)に置換して蛍光体を作製し、比較例6にかかる蛍光ランプを製作した。
【0044】
(比較例6)(Y0.95,Gd0.05)PO4:Ce
【0045】
比較例6の蛍光ランプにかかる蛍光体は、ガドリニウムのモル数は0.05モルであり、イットリウムのモル数は0.95モルである。この蛍光体の製造にあたっては、Gd、Y、P、Ceを一般式で表されるモル比で混合し、焼成することを経て作製した。この蛍光体を用いて、比較例6に係る蛍光ランプを製作した。このようにして製作した蛍光ランプに所定の電圧を印加して点灯し、蛍光ランプからの放射光の波長250〜450nm域の発光スペクトル波形と強度を得た。この結果を図5中の比較例6の曲線で示す。
【0046】
(実施例4〜7)
実施例4〜7、として、上記式(3)におけるxの値を0.1、0.2、0.3、0.5となるよう調製して蛍光体を製造した。なお、セリウム濃度は、イットリウム(Y)とガドリニウム(Gd)の合計値が全て0.95モルに対して、全て0.05モルである。
【0047】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯して発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例4〜7においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を1/10以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより多く放出することが可能である。
【0048】
図5に、従来例1、比較例6、実施例4〜7の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表2に、従来例、比較例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表2の左側の欄はこの積分強度の実測値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100としたときの相対値で示している。
【0049】
【表2】
【0050】
また、図6に、縦軸を相対値、横軸をセリウムの濃度として、先に示した表1の比較例及び実施例の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、ガドリニウムのモル数が大きくなるに従い有効波長帯域における光出力が大きくなる。しかしながら、同時にダメージ波長帯の相対値も、有効波長帯域における光出力の増加に伴って大きくなる。よって、ガドリニウムの添加量としては0.1モル〜0.5モルの範囲が実用的な範囲である。特に好ましいのはガドリニウムが0.3モルである場合である。
【0051】
以上の結果から、実施例4〜7のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を10以下に低減でき、有効波長帯の強度をより大きくできることが可能になることが確認された。従って、上記式(3)において、xの値が0.1〜0.5の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光が大きいことがわかった。
【0052】
[実施形態3]
続いて本発明の実施形態3について説明する。
本実施形態にかかる蛍光ランプは、図2で示す蛍光ランプの蛍光体層12として、セリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタン(La−Mg−Al−O:Ce)系の蛍光体を使用したものである。この蛍光体層12は、一般式が次式、式(5)で表される蛍光体であり、特にセリウム(Ce)のモル比(x)が0.07〜0.12の範囲のものである
【0053】
式(5):(La1−x,Cex)MgAl11O19(但し、0.07≦x≦0.12)
【0054】
上記式(5)において、付活金属元素であるCeは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このセリウムのモル比をx=0.07〜0.12の範囲とすることで、セリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタン(La−Mg−Al−O:Ce)系の蛍光体において、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に際して、有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0055】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
なお、以下の説明おいて、従来例に係るランプとしてセリウム付活リン酸ランタン蛍光体を用いたブラックライトランプを従来例1という。セリウム付活リン酸ランタン蛍光体(一般式:LaPO4:Ce)におけるセリウム(Ce)のモル数は0.05モルである。
【0056】
(実施例8〜11)
実施例8〜11、として、上記式(5)におけるxの値を0.07、0.09、0.1、0.12となるよう調製して蛍光体を製造した。なお各実施例におけるセリウムのモル数は0.07モル、0.09モル、0.1モル、0.12モルである。
【0057】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯して発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例8〜11においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を2/5以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより大きく放出することが可能である。
【0058】
図7に、従来例1および実施例8〜11の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表3に、従来例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表3の左側の欄はこの積分強度の測定値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100としたときの相対値で示している。
【0059】
【表3】
【0060】
また、図8に、縦軸を相対値、横軸をセリウムの濃度として、先に示した表3の比較例及び実施例の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、セリウムのモル数0.1近傍において有効波長領域の相対値がピークになり、相対値においても80以上と良好な効率を示す。ダメージ波長帯の強度としては、相対値で20〜40の間で推移するが、セリウム濃度を0.1〜0.12と高めに設定することで、20程度に低く抑えることができる。
【0061】
以上の結果から、実施例8〜11のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を40以下に低減でき、有効波長帯の強度をより大きくできることが可能になることが確認された。従って、上記式(3)において、xの値が0.1〜0.12の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光が大きいことがわかった。
【0062】
[実施形態4]
本実施形態4にかかる蛍光ランプは、蛍光体層12を主としてセリウムおよびランタン付活マグネシウムバリウムアルミネート(Ce−La−Mg−Ba−Al−O)系の蛍光体を用いたものである。この蛍光体層12は、一般式が次の式(6)で表される蛍光体であり、特にセリウム(Ce)のモル比(x)が0.8であり、ランタン(La)のモル比が0.06以下となる範囲(但し0を含まない)のものである。
【0063】
式(6): (Ce0.8,Lax)(Mg0.8,Ba0.1)Al11O18.6+3x
【0064】
上記式(6)において、付活金属元素であるCeおよびLaは理想的には全て3価のカチオンとして存在する。このセリウムのモル比を0.8に対して、ランタン(La)のモル比を、0〜0.06範囲に設定することで、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程に有効な領域の紫外光を増大させることができる。
【0065】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明する。
【0066】
なお本実施形態の説明においては、蛍光体の母結晶が実施形態1に係る蛍光体と同じであることから、比較例に関しては、前記比較例1〜比較例4の内容を引用すると共に、Laの濃度が0である場合については、先に実施形態1で説明した実施例3の蛍光体と同じであるため、実施例3の内容を引用して説明する。
【0067】
(実施例12〜16)
実施例12〜16として、上記式(6)におけるLa濃度xの値を0.01、0.02、0.04、0.06、0.10となるよう調製して蛍光体を製造した。なお各実施例のセリウム濃度は0.8モルである。
【0068】
得られた蛍光体を用いて図2のランプを構成し、所定の電圧を印加して点灯して発光スペクトルを検証した。この結果、ピーク強度の絶対値が増加し、良好な発光スペクトルが得られた。これら実施例12〜16においては、従来例1としたブラックライトの構成と比較して波長300〜310nmまでの波長帯の積分強度を1/10以下となるまで低減させつつ、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、特に有効とされる波長320〜350nmまでの紫外線の波長をより多く放出することが可能である。
【0069】
図9に、従来例1、比較例1〜4、実施例3、12〜16の発光スペクトル波形をまとめて示す。また下記表4に、従来例、比較例、実施例にかかる蛍光体組成と、波長300〜310nm帯、波長311〜320nm、波長321〜350nmの別の、各ランプのスペクトル強度の積分値を示す。
表4中、左側の「測定値」欄は、発光管から25mmの位置で分光器により測定したスペクトルのこの積分強度の実測値である。右側はこの積分強度を従来例1のランプにおける各波長域の積分値を100とした相対値で示している。
【0070】
【表4】
【0071】
また、図10に、縦軸を相対値、横軸をランタン(La)の濃度として、先に示した表4の実施例3及び実施例12〜16の各々の積分強度の相対値を座標で示す。曲線(ア)は有効波長帯、曲線(イ)はダメージ波長帯を示している。同図からわかるように、ダメージ波長帯は相対値において10の近傍で推移するが、ランタンの濃度が0〜0.06モルの範囲において、300〜310nmの積分値に対する320〜350nmの積分値が、実施例3のものと同等或いはそれより小さくなり、かつ、321〜350nmの積分強度が、従来例の321〜350nmの積分強度が、およそ50%以上であることがわかる。
【0072】
以上の結果から分かるように、実施例12〜15のいずれもが、従来例1に対するダメージ波長帯の強度を10以下に低減でき、有効波長帯の強度を50以上とすることが可能になる。従って、上記式(6)において、xの値が0<x≦0.06の範囲にあると、ダメージ波長帯における発光が少なく、有効波長帯における発光を大きくすることができる。
【0073】
以上説明したように、光反応性物質を含有する液晶を内部に封入した液晶パネルの製造工程において、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶とし、Ce3+により付活した蛍光体を含む蛍光体を用いて蛍光ランプを構成することで、光反応性物質の反応に有効な波長帯の光を増大させることが可能であり、液晶にダメージを与える波長域の光の放射の少ない、蛍光ランプを提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
100 紫外線照射装置
10 蛍光ランプ
11 気密容器
12 蛍光体層
13,14 電極
15,16 リード線
20 光照射部
21 ミラー
30 液晶パネル
31 光透過性基板
32 シール剤
33 光反応性物質を含んだ液
34 電圧を印加する機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反応性物質を含有した液晶パネルの製造工程において使用する蛍光ランプにおいて、
発光管の内部に形成された蛍光体層には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶としCe3+により付活した蛍光体を含む
ことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
Cex(Mg1−y−z,Bay−z)Al11O19−(3(1−x)+2z)/2
(但し、0.6≦x≦0.8)
【請求項3】
前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
(Y1−x,Gdx)PO4:Ce
(但し、0.1≦x≦0.5)
【請求項4】
前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタンを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
(La1−x,Cex)MgAl11O19
(但し、0.07≦x≦0.12)
【請求項5】
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウムおよびランタン付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
(Ce0.8,Lax)(Mg0.8,Ba0.1)Al11O18.6+3x
(但し、0<x≦0.06)
【請求項1】
光反応性物質を含有した液晶パネルの製造工程において使用する蛍光ランプにおいて、
発光管の内部に形成された蛍光体層には、マグネシウムバリウムアルミネート、リン酸ガドリニウム・イットリウムおよびアルミン酸マグネシウム・ランタンのいずれかを母結晶としCe3+により付活した蛍光体を含む
ことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
Cex(Mg1−y−z,Bay−z)Al11O19−(3(1−x)+2z)/2
(但し、0.6≦x≦0.8)
【請求項3】
前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活リン酸ガドリニウム・イットリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
(Y1−x,Gdx)PO4:Ce
(但し、0.1≦x≦0.5)
【請求項4】
前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウム付活アルミン酸マグネシウム・ランタンを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
(La1−x,Cex)MgAl11O19
(但し、0.07≦x≦0.12)
【請求項5】
また、前記蛍光体は、一般式が次式で表されるセリウムおよびランタン付活マグネシウムバリウムアルミネートを含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
(Ce0.8,Lax)(Mg0.8,Ba0.1)Al11O18.6+3x
(但し、0<x≦0.06)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−146363(P2011−146363A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159394(P2010−159394)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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