蛍光体および発光装置
【課題】 温度特性の良好な提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する非酸化物系化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする蛍光体である。
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
【解決手段】 下記一般式(1)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する非酸化物系化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする蛍光体である。
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に使用される蛍光体に係り、特に、蛍光表示管(VFD)、PDP、CRT、FED、SEDおよび投写管等のディスプレイ、および青色発光ダイオードまたは紫外発光ダイオードを光源とする発光装置に使用される蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。高負荷LEDは駆動により発熱して、蛍光体の温度は100℃程度上昇し、これに起因して蛍光体の発光強度が低下する。蛍光体は、温度上昇時の発光強度低下が少ないことが望まれる。
【0003】
また、フラットパネルディスプレイ装置に関する開発は、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)において精力的に行なわれているが、電界放出型ディスプレイは、鮮明な画像を提供するという点でPDP、LCDを凌駕するものとして期待されている。
【0004】
電界放出型ディスプレイは、赤色、緑色、および青色の蛍光体が配列されたスクリーンと、このスクリーンに対してCRTよりも狭い間隔で対向するカソードを備えている。カソードには電子源がエミッタ素子として複数配置され、その近傍に配置されたゲート電極との電位差に応じて電子を放出する。放出された電子は蛍光体側のアノード電圧(加速電圧)により加速されて蛍光体に衝突して、これにより蛍光体が発光する。
【0005】
かかる構成の電界放出型ディスプレイに使用する蛍光体としては、十分に高い発光効率を有し、高電流密度の励起において飽和に至った際には、十分に高い発光効率を示すことが要求される。これまでCRT用蛍光体に用いられてきた硫化物系蛍光体(ZnS:Cu、ZnS:Ag)は、この候補となり得る。しかしながら、低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、ZnSのような硫化物系蛍光体は分解することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この分解物が、電子線を放出する熱フィラメントを著しく劣化させてしまう。特に、従来用いられているZnS系青色蛍光体は、赤色蛍光体および緑色蛍光体に比して輝度劣化が著しいため、カラー画面の表示色が経時変化してしまうという問題が生じている。
【非特許文献1】B.L.Abrams, W.Roos,P.H.Holloway,H.C.Swart, Surface Science 451(2000) p.174-181.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、温度特性の良好な蛍光体を提供することを目的とする。また本発明は、高電流密度励起下での輝度飽和特性、温度特性および電子線照射による輝度劣化特性が良好な蛍光体を提供することを目的とする。さらに本発明は、こうした蛍光体を用いた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる蛍光体は、下記一般式(1)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする。
【0008】
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
本発明の他の態様にかかる蛍光体は、下記一般式(2)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする。
【0009】
M’2/vAl3n+pSi10-pN3n+14-pOp (2)
(上記一般式(2)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、vは前記金属M’のイオン価数である。pおよびnは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、1≦n)
本発明の一態様にかかる発光装置は、電子エネルギーを照射するエネルギー源と、前記エネルギー源上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、前述の蛍光体を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様にかかる発光装置は、250nm乃至500nmの波長の光を発光する発光素子と、前記発光素子上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、前述の蛍光体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度特性の良好な蛍光体が提供される。また本発明によれば、高電流密度励起下での輝度飽和特性、温度特性および電子線照射による輝度劣化特性が良好な蛍光体が提供される。さらに本発明によれば、こうした蛍光体を用いた発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明者らは、AlNポリタイポイド(擬似多形)構造を有する非酸化物系化合物、特にAlNポリタイポイドサイアロン系化合物に発光中心元素を添加することによって、温度特性の良好な白色LED用蛍光体、および長寿命な電子線励起用蛍光体が得られることを見出した。ここで言う非酸化物系とは、純粋な酸化物以外を指す趣旨であって、酸窒化物やオキシカーバイド等を含むものである。本発明は、こうした知見に基づいてなされたものである。
【0014】
AlNポリタイポイドは、下記一般式(1)で表わされる構造を有するウルツ鉱型のAlNを基本格子とした長周期の層状構造を有する化合物群である。
【0015】
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
上記一般式(1)におけるa,bの値は、例えば材料の混合比により決定されるものであり、化学分析等によって確認することができる。
【0016】
この相は、AlNのAlをAl以外の金属Mで置換し、NをN以外の非金属Xで置換し、その置換量に応じてc軸方向の積層周期が変化するといった特異な構造を有する。Mとしては、Si、Ge、アルカリ土類金属、および希土類金属等が挙げられ、Xとしては、酸素および炭素等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、Ba,Ca,Sr,およびMgが挙げられ、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、希土類金属としては、例えば、Y,Gd,およびLaが挙げられ、単独でも2種以上を組み合わせて用いることができる。こうしたアルカリ土類金属と希土類金属とを、組み合わせて用いることも可能である。
【0017】
例えば、MとしてSiが導入され、XとしてOが導入されたポリタイポイドサイアロンの場合は、2Hδ(AlN)、8H(3AlN・SiO2)、15R(4AlN・SiO2)、12H(5AlN・SiO2)、21R(6AlN・SiO2)、27R(8AlN・SiO2)、33R(10AlN・SiO2)、24H(11AlN・SiO2)、および39R(12AlN・SiO2)といった多形が存在する。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、こうしたAlNポリタイポイドと同様な構造を母体とし、発光中心元素を含有するものである。発光中心元素は、母体中のいずれかの元素を置換して、あるいはいずれかの元素と固溶して存在することができる。
【0018】
発光中心元素は、AlとMとの総和に対して0.1〜40モル%程度の割合で含有されることが望まれる。0.1モル%未満の場合には、十分な発光効果を得ることが困難となる。一方、40モル%を越えると、濃度消光が起こるおそれがある。
【0019】
あるいは、本発明の実施形態にかかる蛍光体における母体は、下記一般式(2)で表わすこともできる。
【0020】
M’2/vAl3n+pSi10-pN3n+14-pOp (2)
(上記一般式(2)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、vは金属M’のイオン価数である。pおよびnは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、1≦n)
上記一般式(2)におけるpおよびnの値は、HREM(高分解能電子顕微鏡)、EDS等(電子線回折)によって求められたものである。nはポリタイポイド積層周期に関する値で、積層周期に上限は無いことから、nの値には上限は存在しない。
【0021】
具体的には、下記一般式(4)で表わされるサイアロン系化合物が挙げられる。なお、M’として導入され得るアルカリ土類金属および希土類金属としては、一般式(1)中に導入され得るとして上で列挙したものを用いることができる。
【0022】
M’Si10-pAl18+pN32-pOp (4)
(上記一般式(4)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、pは0<p<10を満たす数値である。)
上記一般式(4)は、上記一般式(2)においてv=2、n=6としたものである。
【0023】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、例えば、上記一般式(4)における金属M’の少なくとも一部を、発光中心元素で置換してなるものということもできる。こうした蛍光体は、下記一般式(3)で表わされる。
【0024】
(M’1-qQq)Si10-pAl18+pN32-pOp (3)
(上記一般式(3)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、Qは発光中心元素であり、pおよびqは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、0<q≦1)
この場合、発光中心元素は、金属M’の少なくとも0.1モル%を置換することが望まれる。置換量が0.1モル%未満の場合には、十分な発光効果を得ることが困難となる。アルカリ土類金属M’の100%が発光中心元素で置換されてもよい。この場合には、効率がよりいっそう高められるといった効果が得られる。
【0025】
本発明の実施形態にかかる蛍光体に含有される発光中心元素としては、例えば、Eu,Ce,Mn,Tb,Yb,Dy,Sm,Tm,Pr,Nd,Pm,Ho,Er,Gd,Cr,Sn,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Ag,Cd,In,Sb,Au,Hg,Tl,Pb,Bi,およびFeなどが挙げられる。発光波長の可変性等を考慮すると、EuおよびMnの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0026】
なお、AlNポリタイポイド構造を有する非酸化物系化合物は、酸素を重量比で0.3%乃至30%含有することが好ましい。酸化物は高温で液相となるため、合成時には酸化物の液相を介して合成が促進される。0.3重量%未満の場合には反応性が低下してしまい、良好な合成を行なうのが困難となる。一方、酸素が30重量%を越えて多量に含まれる場合には、最早ポリタイポイド構造が得られないおそれがある。
【0027】
上記一般式(3)式で表わされる蛍光体の構造を、図1に模式的に示す(J. Grins,S.Esmaeilzadeh,G.Svensson,Z.J.Shen, J.Euro.Cera.Soc. 19,2723(1999))。図1中、三角形は重心の位置の元素103としてAlまたはSiを有し、各頂点の元素102としてはNまたはOを有した正四面体構造を表わしている。図中の参照符号101は、アルカリ土類金属M’を表わす。図示するように、上記一般式(3)式で表される蛍光体はAで示すM’を中心とする12配位の層、Bで示す互いに頂点を共有した正四面体からなる層、Cで示す互いに面を共有する正四面体からなる層およびDで示す互いに頂点を共有した正四面体からなる層の4層からなる。A,B,CおよびDの各層に含まれる正四面体構造の層数は図1の例に限らず、これと異なる数でも良い。即ちAlN4正四面体構造が頂点共有したウルツァイト構造に周期的(間欠的)に、SiN4構造およびM’を中心とした14面体構造が、位置101に層状に挟まった構造を有する。こうした構造に起因して、本発明の実施形態にかかる蛍光体は良好な特性を有するが、これについては後に詳細に説明する。
【0028】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、例えば出発原料としてSrCO3,AlN,Si3N4およびEu2O3を用い、これらを化学量論組成になるように秤量混合してなる混合粉末を焼成することによって得られる。例えば、SrCO3,AlN,Si3N4およびEu2O3を所定量秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で2〜72時間ボールミル混合する。IPA以外に、エタノール等他の有機溶媒や水溶液を用いることも可能である。混合に当たっては、乳鉢中の乾式混合や湿式混合を採用してもよい。
【0029】
室温乾燥によりIPAを揮発・除去させた後、大気中、0〜40℃で一晩乾燥させ、乳鉢で解砕後にモリブデンるつぼに充填する。乾燥には、適宜ホットプレート等用いることもできる。また、るつぼの材質は、カーボン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、サイアロン、あるいはタングステン等としてもよい。
【0030】
これらを所定時間焼成して、目的の組成の蛍光体が得られる。焼成圧力は大気圧以上が望ましく、窒化ケイ素の高温での分解を抑制するためには5気圧以上がより好ましい。焼成温度は1500〜2000℃の範囲が好ましく、より好ましくは1800〜2000℃である。焼成温度が1500℃未満の場合には、ポリタイポイド構造の形成が困難となる。一方、2000℃を越えると材料あるいは生成物が昇華するおそれがある。また、原料のAlNが酸化されやすいことから、N2雰囲気中で焼成することが望まれるが、窒素・水素混合雰囲気でもよい。
【0031】
一般に、蛍光体は温度が上昇すると発光効率が低下する(温度消光)が、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、温度が上昇したときの発光効率の低下が少なく、消光温度が高いという特徴を有する。温度消光に影響を及ぼす因子としては、発光中心イオンの大きさとこれが置換する蛍光体母体イオンの大きさの違いや、蛍光体母体の結晶格子安定性などが挙げられる。本発明の実施形態にかかるAlNポリタイポイド構造を有する蛍光体は、上述した結晶構造に起因して、消光温度が高いものと推測される。
【0032】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、図1に示したように正四面体構造を有する。図1中の三角形は、重心の位置の元素103としてAlまたはSiを有し、各頂点の元素102としてNまたはOを有する。こうした構造に関して、本発明者らは次のように考察した。すなわち、このようなAlN4またはSiN4正四面体構造を基本骨格とする窒化物蛍光体においては、正四面体の頂点共有数が多いほど結晶格子が堅固で安定である。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、頂点共有数が2乃至6であり、単位格子中に2頂点共有4箇所、4頂点共有凡そ60箇所、6頂点共有凡そ24箇所である。これに対し、同様にSiN4正四面体構造を基本骨格とし、青励起赤色蛍光体として知られるCa2Si5N8:Euにおいては、平均頂点共有数が2〜3である。頂点共有数が従来の蛍光体よりも多いので、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、結晶格子がより安定であると考えられる。発光中心が二次元層状構造中に存在すること、および14面体配位構造を取ることもまた、発光中心周りの安定性に寄与する。これらの構造的特長が、本発明の実施形態にかかる蛍光体の消光温度を高めることとなる。
【0033】
焼成後の粉体には、洗浄等の後処理を適宜施して、本発明の実施形態にかかる蛍光体が得られる。洗浄は、例えば純水洗浄、酸洗浄により行なうことができる。なお、従来の窒化物の蛍光体としてはCaAlSiN3:Eu等が知られており、Ca3N2等を原料として用いて合成される。こうした原料粉末は嫌気性であるため、合成の際には、秤量・混合にグローブボックス等の大気を遮断した環境が要求される。これに対して、本発明の実施形態にかかる蛍光体を合成するに当たっては、原料粉末は大気中で秤量・混合が可能である。これは、本発明の実施形態にかかる蛍光体の原料の大気中での反応性が上述のCa3N2等に比べて低いためである。したがって、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、極めて簡便なプロセスで製造することができ、製造コストを著しく削減することが可能である。
【0034】
図2に、本発明の一実施形態にかかる発光装置の断面を示す。
図示する発光装置においては、樹脂ステム200はリードフレームを成形してなるリード201およびリード202と、これに一体成形されてなる樹脂部203とを有する。樹脂部203は、上部開口部が底面部より広い凹部205を有しており、この凹部の側面には反射面204が設けられる。
【0035】
凹部205の略円形底面中央部には、発光チップ206がAgペースト等によりマウントされている。発光チップ206としては、例えば発光ダイオード、レーザダイオード等を用いることができる。さらには、紫外発光を行なうものを用いることができ、特に限定されるものではない。紫外光以外にも、青色や青紫、近紫外光などの波長を発光可能なチップも使用可能である。例えば、GaN系等の半導体発光素子等を用いることができる。発光チップ206の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンデイングワイヤー207および208によって、リード201およびリード202にそれぞれ接続されている。なお、リード201および202の配置は、適宜変更することができる。
【0036】
樹脂部203の凹部205内には、蛍光層209が配置される。この蛍光層209は、本発明の実施形態にかかる蛍光体210を、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層211中に5重量%から50重量%の割合で分散、もしくは沈降させることによって形成することができる。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、その構造に起因して板状の結晶形を有する。このため、本発明の実施形態にかかる蛍光体を発光チップ上に沈降させるに当たって粘性の極めて低い樹脂を用いた場合には、この蛍光体は、樹脂中を発光チップ上まで沈降した後に、短軸が発光チップ面に垂直になる方向で安定に配置しやすい。したがって、多くの結晶粒で短軸が発光チップ面に垂直になり得ることから、蛍光体の結晶方位を揃えて実装することができる。その結果、蛍光体の結晶方向のばらつきに起因した発光素子の個体間の発光特性のばらつきを、著しく抑制することが可能となった。さらに、本発明の実施形態にかかる蛍光体には、共有結合性の高い窒化物が母体として用いられるため、疎水性であり樹脂との馴染みが極めて良好である。したがって、樹脂−蛍光体界面での散乱が著しく抑制されて、光取出し効率が向上する。
【0037】
発光チップ206としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることも可能である。この場合には、ワイヤーの断線や剥離、ワイヤーによる光吸収等のワイヤーに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な半導体発光装置が得られる。また、発光チップ206にn型基板を用いて、次のような構成とすることもできる。具体的には、n型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上の半導体層上面にはp型電極を形成して、n型電極またはp型電極をリードにマウントする。p型電極またはn型電極は、ワイヤーにより他方のリードに接続することができる。発光チップ206のサイズ、凹部205の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0038】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、含有されている発光中心元素に応じて、異なる波長に発光ピークを有する。例えば、発光中心元素としてEuのみが含有されている場合には、250nm乃至500nmの波長の光で励起することによって、450nm乃至500nmに発光ピークを示す。これらの発光ピークの半値幅は比較的小さく、65nm未満である。また、発光中心元素としてMnのみ、またはMnとEuとが含有されている場合には、250nm乃至500nmの波長の光で励起することによって、450nm乃至500nmと550nm乃至650nmの間に発光ピークを有する。したがって、360nm以上500nm以下の波長領域の発光ダイオードと本発明の実施形態にかかる蛍光体とを、蛍光体が発光ダイオードを覆うように組み合わせることによって、種々の発光色を示す発光装置を得ることができる。
【0039】
また、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、電子のエネルギーにより励起して発光装置を得ることも可能である。例えば、発光中心元素としてEuおよびMnの少なくとも一方が含有された場合には、上述したような光励起の場合と同様の波長に発光ピークが得られる。
【0040】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、CRT方式の投写型ディスプレイに適用することもできる。こうしたディスプレイにおいては、赤、緑、および青のモノクロームCRT(投写管)3個が用いられて、レンズ系を介して投写管の画像がスクリーン上に拡大投影される。
【0041】
かかる発光装置の概略構成を表わす断面図の一例を、図3に示す。図示するように、フェースプレート301の内面には、蛍光膜302および反射膜となるアルミニウム膜303が順次形成されている。また、蛍光膜302に電子線を照射するために、アノード305を介して電子銃304が設けられている。図示するような投写管は、例えば、以下のような手法により製造することができる。まず、対角7インチのガラスバルブ内に、本発明の実施形態にかかる蛍光体を塗布して蛍光膜を形成する。蛍光膜上には、膜厚約0.2μmのアルミニウム膜を蒸着法により成膜する。さらに、アノードおよび電子銃を取りつけて、投写管が完成する。
【0042】
こうした発光装置は、一般家庭用に大画面のテレビジョンとしても用いられるように、大画面である。さらに高輝度の映像を実現するために、このディスプレイに用いられる投写管の蛍光面には高電圧、高電流を印加して使用される。そのため、蛍光面を構成する蛍光体には以下のような特性が要求される。
【0043】
まず、投写管の内面に塗布される蛍光体は、高電流を流しても輝度が飽和しない輝度電流飽和特性を有することが要求される。次に、高温でも安定に高輝度な発光を有することが必要である。すなわち、投写管の蛍光面には大電力電子ビームが入射するために、発光に使用されなかったエネルギーは熱に変換され、蛍光面を形成する蛍光体は100℃以上にも加熱される。そのため、高温でも輝度低下の起こりにくい蛍光体であることが要求される。さらに、このような大電流印加条件で使用されても結晶破壊が起こりにくく、安定な結晶構造の蛍光体であることも求められる。
【0044】
投写管に用いられる代表的な蛍光体は、輝度および高電流密度励起下での輝度飽和特性を確保するため、赤色蛍光体としてはユーロピウム賦活酸化イットリウム(Y2O3:Eu)、緑色蛍光体としてはテルビウム賦活ケイ酸イットリウム蛍光体(Y2SiO5:Tb)、青色蛍光体としてはZnS系蛍光体が従来用いられてきた。ZnS系蛍光体は、赤色蛍光体および緑色蛍光体に比して著しく速いことが知られている。このため、カラー画面の表示色にずれが生じるという問題があった。本発明の実施形態にかかる蛍光体を青色蛍光体として用いることによって、長期にわたり良好な表示特性を維持することが可能になる。
【0045】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、電界放出型ディスプレイ(FED)に適用することもできる。図4(a)には、ディスプレイ装置の概略断面図を示し、図4(b)には、その平面図を示す。図4(a)に示されるように、本発明の実施形態にかかるディスプレイ装置1は、棒状の炭素分子であるカーボン・ナノ・チューブ2を電子源とする電界放出型ディスプレイ(FED)であって、蛍光膜3として本発明の実施形態にかかる蛍光体が用いられる。
【0046】
なお、カーボン・ナノ・チューブは、長手方向の寸法を含めて数nm(ナノ・メートル=10-9m)から数十nmの非常に微細な物質であるが、図4(a)および(b)にはこれを拡大して示す。
【0047】
図4(a)に示されるように、ディスプレイ装置1は、電子を放出するための電子源が設けられた基板4と、フェースプレート5とが対向配置されている。フェースプレート5は、例えばガラス基板によって形成され、このフェースプレート5の基板4に対向する面部には蛍光膜3が形成される。また蛍光膜3には、アノードとしてアルミニウム膜6が形成され、この蛍光膜3は、電子源から放出された電子が衝突することによって発光する。基板4とフェースプレート5との間の空隙は、基板4およびフェースプレート5の周囲に設けられた側壁(図示せず)によって気密性が保たれるようになされており、真空状態に維持される。
【0048】
図4(a)および(b)に示すように、基板4上には、電子を放出するためのエミッタ素子10が赤色、緑色、および青色の各蛍光体に対応して複数設けられる。なお、これらの図面においては、複数配置されたエミッタ素子の1つについて示している。このエミッタ素子10においては、カソード9と絶縁材11とが順次積層されており、絶縁材11には開口部11aが形成され、これによりこの開口部11aを介してカソード9の一定範囲が蛍光膜3側に露出するようになされている。基板4としては、例えば、石英ガラスまたは青板ガラス等の各種ガラス基板、アルミナ等の各種セラミクス基板を用いることができる。あるいは、上述の各種基板上に、例えば酸化シリコン(SiO2)を材料とする絶縁層を積層した基板等を用いてもよい。
【0049】
開口部11a内のカソード9には、一定範囲に亘って電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2が設けられている。カーボン・ナノ・チューブ2のように微細な物質をカソード9に固定するには、次のような手法を採用することができる。まず、複数のカーボン・ナノ・チューブ2を銀等の導電性ペーストに分散させる。これを、絶縁材11の開口11aまたは隙間から露出したカソード9の上面に滴下し、導電性ペーストを硬化させて導電膜13を形成する。これにより、カーボン・ナノ・チューブ2は導電膜13の表面に一定の面積をもって分散配置される。すなわち、電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2は、蛍光膜3に対向する基板4上において、一定範囲の電子放出領域を形成している。
【0050】
このように導電膜13に固定されたカーボン・ナノ・チューブ2においては、その先端部が膜形状の導電膜13の面部から突出し、この吐出した部分と制御電極(ゲート電極)15との間に素子印加電圧Vf(電位差ΔV)が与えられる。これによって、カーボン・ナノ・チューブ2の先端部から電子を放出させる。放出した電子は、カソード9と蛍光膜3側のアノード(アルミニウム膜6)との間に印加された加速電圧Vaによって加速され、蛍光膜3に衝突する。この電子の衝突によって蛍光膜3を発光させることができる。
【0051】
すでに説明したように、青色蛍光体としてZnS系蛍光体を用いた場合には、この青色蛍光体の劣化が赤色および緑色に比して著しく速いことに起因して、カラー画面の表示色にずれが生じるという問題があった。本発明の実施形態にかかる蛍光体を用いることにより、蛍光体が高密度の電子線に曝された場合であっても、長期にわたり良好な表示特性を維持することが可能になる。
【0052】
また、従来のZnS系蛍光体を用いた場合に比して、蛍光体の分解ガスの発生が抑制され、蛍光体の分解ガスによる電子源の汚染が抑制される。その結果、電子放出特性の経時的な低下を抑制することが可能となる。
【0053】
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si3N4およびEu2O3を用い、これらを各々7.308g、38.939g、21.047gおよび0.088g秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で24hボールミル混合した。室温乾燥によりIPAを揮発・除去させた後に大気中120℃で一晩乾燥させ、乳鉢で解砕後にモリブデンるつぼに充填した。これらを7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で4時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は(Sr0.99Eu0.01)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。焼成後の蛍光体は白色の焼結体であり、ブラックライト励起で青色発光が観察された。
【0055】
本実施例にかかる蛍光体のXRDプロファイルを、図5に示す。対称性の良いパターンが得られ、(AlN)7(SiO2)ポリタイポイドのパターン(JCPDSカード#36−0828)と良く一致したことから、8層周期のポリタイポイド構造を有していることが確認された。なお、JCPDSカードとは、各種物質のX線回折法によるピークプロファイルをまとめたデータ集である。
【0056】
本実施例にかかる蛍光体のSEM像を、図6に示す。観察は加速電圧10kVの条件で行なった。図6より、本実施例の蛍光体は、短軸方向の粒径0.5μm前後、他の軸方向の粒径3〜5μm前後の板状の粒形状であることが確認された。
【0057】
図7には、本実施例の蛍光体の室温(25℃)における電子線照射下における発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。ここで用いた発光スペクトルは、大塚電子製IMUC−7000G型瞬間マルチ測光システムで測定したものである。図示するように、450nm乃至460nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られている。この発光は、Eu2+の5f→4d遷移に由来するものと推測される。この励起条件下での2°視野における色度は、(0.153、0.132)の青色発光であった。
【0058】
図8には、本実施例にかかる蛍光体の発光スペクトルのピーク強度および輝度Lの相対値をまとめて示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5〜10μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図8中の縦軸は、いずれも既存の電子線励起蛍光体ZnS:Ag,Clの値に対する相対値である。図8に示されるように、励起強度の増加に伴なって輝度Lおよび発光強度が単調増加しており、本実施例の蛍光体は、ZnS系蛍光体よりも電流飽和特性が良好であることがわかる。
【0059】
(実施例2)
実施例1と同様に秤量、混合、乾燥および解砕を行なった原料を窒化ホウ素るつぼに充填し、実施例1と同様に7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で4時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.99Eu0.01)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0060】
図9には、本実施例にかかる蛍光体の電子線励起発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450nm乃至460nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られている。この発光は、Eu2+の5f→4dに由来するものと推測される。この励起条件下での2°視野における色度は(0.154、0.142)の青色発光であった。
【0061】
(実施例3)
SrCO3の配合量を7.234gに変更し、Eu2O3の配合量を0.176gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は(Sr0.98Eu0.02)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0062】
(実施例4)
SrCO3の配合量を7.012gに変更し、Eu2O3の配合量を0.440gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.95Eu0.05)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0063】
(実施例5)
SrCO3の配合量を6.643gに変更し、Eu2O3の配合量を0.880gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.9Eu0.1)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0064】
(実施例6)
SrCO3の配合量を5.905gに変更し、Eu2O3の配合量を1.760gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.8Eu0.2)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0065】
(実施例7)
SrCO3の配合量を3.691gに変更し、Eu2O3の配合量を4.399gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.5Eu0.5)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0066】
(実施例8)
AlN,Si3N4,およびEu2O3を各々38.939g、21.047g、および8.798g秤量し、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、EuSi9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0067】
下記表1に実施例1、3、4および5にかかる蛍光体の酸素組成分析結果を示す。分析は不活性ガス融解−赤外線吸収法で行なった。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1の結果から、酸素が重量比で3%程度含まれていることがわかる。
【0070】
図10には、実施例3〜8の蛍光体の電子線励起発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450〜490nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られた。Eu濃度が増加するにしたがってピーク波長が長くなり、発光強度が大きくなることがわかる。この発光は、Eu2+の5f→4dに由来するものと推測される。これら実施例3〜8の蛍光体のピーク波長、この励起条件下での2°視野における色度および発光色を、下記表2にまとめて示す。
【0071】
【表2】
【0072】
上記表2に示されるように、Eu濃度を変更することによって、所望の発光ピーク波長および色度を有する蛍光体が得られることがわかる。
【0073】
図11には、実施例3〜8の蛍光体の電子線励起における発光強度、輝度L、y値および刺激値L/yのEu濃度依存性を示す。励起条件は、前述と同様とした。Eu濃度を変えることによって、発光強度、輝度、刺激値L/y値およびy値を幅広くに変えることが可能であることが、図11に示されている。
【0074】
(実施例9)
実施例8と同様に混合、乾燥、解砕を行ったものをカーボンるつぼに充填し、実施例1と同様に焼成を行ない、EuSi9Al19ON31を合成した。
得られた蛍光体を、350nmのピーク波長を有するUVランプにより励起し、得られた発光スペクトルを図12に示す。また、図13には、393nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した際の発光スペクトルを示す。図12および図13において、各々350nmおよび393nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。電子線励起の場合と同様に、490nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。各々の波長における吸収率、量子効率、および発光効率の値を表3にまとめて示す。
【0075】
【表3】
【0076】
(比較例1)
SrCO3,Si3N4,およびEu2O3を、各々26.573g、23.385g、および3.519g秤量し、ボールミルで混合した混合粉末をカーボンるつぼ中に充填した。これを、7気圧のN2雰囲気中、1650℃で8時間焼成して本比較例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本比較例の蛍光体は、(Sr0.9Eu0.1)2Si5N8で表わされる組成を有することが確認された。得られた蛍光体は朱色の焼結体であり、ブラックライト励起で赤色発光が観察された。
【0077】
実施例9の蛍光体を、室温から200℃までヒーターにより試料温度を上昇させながら励起して、発光スペクトル変化を測定した。励起には、393nmのピーク波長を有する発光ダイオードを用いた。ピーク波長の490nmでの発光強度の温度依存性を、図14に示す。比較のため、市販のBAM蛍光体(BaMgAl10O17:Eu)、ZnS:Ag,Cl、および比較例1にかかるSr2Si5N8:Euの各々445nm、444nmおよび652nmにおける発光強度の温度依存性も、図14に併せて示した。図14のy軸は、各蛍光体の室温における発光強度を1として規格化した値である。
【0078】
実施例9の蛍光体は、200℃の高温条件下でも、発光強度の低下が小さいことが図14のグラフに示されている。この結果から、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、BAM,ZnS:Ag,Clおよび同じ窒化物母体であるSr2Si5N8:Euに比べて、温度特性が極めて良好なことがわかる。
【0079】
(実施例10)
実施例5と同様に秤量、混合、乾燥および解砕を行なった原料を7.5気圧のN2雰囲気中、1900℃で4時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体の組成は、(Sr0.9Eu0.1)Si9Al19ON31で表わされることが確認された。
【0080】
図15に、本実施例の蛍光体の電子線励起発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450nm乃至460nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られている。この発光はEu2+の5f→4dに由来するものと推測される。この励起条件下での2°視野における色度は(0.148、0.112)の青色発光であった。
【0081】
実施例5および10の蛍光体を、沈降法によりガラス基板上に成膜し、その表面にメタルバックとして真空蒸着法によりアルミニウム薄膜を100nm積層した。こうして作製された蛍光膜にラスター電子線を照射して、室温における輝度の経時変化を測定した。照射条件は、10-6Paオーダの真空チャンバー内で加速電圧10kV、70μA(電流密度12uA/cm2)とし、得られた結果を図16に示す。比較のため、市販のZnS系蛍光体についても輝度の経時変化を同様に測定し、その結果も併せて図16に示した。図16中の縦軸は、各蛍光体における0.2C照射時の輝度を1として規格化した輝度である。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、ZnS系に対して劣化が極めて少ないことがわかる。
【0082】
(実施例11)
SrCO3,AlN,Si3N4,およびMnCO3を、各々7.308g、38.939g、21.047g、および0.057g秤量し、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.99Mn0.01)Si9Al19ON31で表わされることが確認された。
【0083】
(実施例12)
SrCO3の使用量を7.234gに変更し、MnCO3の使用量を0.115gに変更した以外は、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.98Mn0.02)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0084】
(実施例13)
SrCO3の使用量を7.012gに変更し、MnCO3の使用量を0.287gに変更した以外は、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.95Mn0.05)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0085】
(実施例14)
SrCO3の使用量を6.643gに変更し、MnCO3の使用量を0.575gに変更した以外は、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.9Mn0.1)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0086】
実施例11〜14の蛍光体をそれぞれ電子線で励起し、得られた発光スペクトルを図17に示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450nm近傍にピークを持つバンドの発光が得られている。また、600nm近傍にも微弱な発光が得られた。この励起条件下での2°視野における色度(x、y)および発光色を、Mn濃度とともに下記表4にまとめて示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の結果から、Mn濃度を変更することによって、紫青から青紫まで任意の発光色が得られることがわかる。
【0089】
(実施例15)
SrCO3,AlN,Si3N4,およびMnCO3を、各々7.308g、38.939g、21.047g、および0.057g秤量し、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は(Sr0.99Mn0.01)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0090】
また、実施例15にかかる蛍光体を245nmのピーク波長を有するUVランプにより励起し、得られた発光スペクトルを図18に示す。図示するように、610nmにピークを有する赤色発光が得られた。
【0091】
(実施例16〜19)
発光中心元素としてEuおよびMnを用い、下記表5に示すように仕込みのEu濃度およびMn濃度を変更した以外は、実施例1と同様の手法により実施例16〜19の蛍光体を合成した。ここで得られた蛍光体の組成は、{Sr1-q(Eu1-wMnw)q}Si9Al19ON31で表わされる。
【0092】
【表5】
【0093】
焼成後の蛍光体はいずれも白色粉体であり、UVランプによりいずれも青色発光を示した。実施例16〜19にかかる蛍光体を、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2の電子線で励起した。得られた発光スペクトルを図19に示し、2°視野における色度を図20に示す。いずれの蛍光体の場合も、450nm乃至470nmおよび610nm近傍にピークを有する青色発光が得られることがわかる。
【0094】
(実施例20〜23)
下記表6に示すように、M’としての含有されるアルカリ土類金属の種類およびEu濃度を変更した以外は、実施例1と同様の手法により実施例20〜23の蛍光体を合成した。ここで得られた蛍光体の組成は、(M’1-qEuq)Si9Al19ON31で表わされる。
【0095】
【表6】
【0096】
実施例20および21の蛍光体は白色であり、UVランプにより青色発光を示した。また、実施例22および23の蛍光体は黄色であり、UVランプにより黄色発光を示した。実施例20〜23にかかる蛍光体を加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2の電子線で励起し、2°視野における色度を測定した。得られた結果を図21に示す。図21には、実施例4および5についての結果も併せて示した。これらの結果から、金属M’の種類や濃度を変更することによって、任意のx値、y値が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態にかかる蛍光体の構造を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略図。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる発光装置の概略断面図。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる発光装置の概略断面図および平面図。
【図5】実施例1の蛍光体のXRDプロファイル。
【図6】実施例1の蛍光体のSEM観察像。
【図7】実施例1の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図8】実施例1の蛍光体の電子線励起における発光強度比および輝度比の励起エネルギー密度依存性を表わすグラフ図。
【図9】実施例2の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図10】実施例3〜8の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図11】実施例3〜8の蛍光体の電子線励起における発光強度、輝度L、y値および刺激値L/yの発光中心金属元素濃度依存性を表わすグラフ図。
【図12】実施例8の蛍光体の350nm光励起における発光スペクトル。
【図13】実施例8の蛍光体の393nm光励起における発光スペクトル。
【図14】実施例9、比較例1、BAM蛍光体およびZnS:Ag,Cl蛍光体の393nm光励起における発光強度の温度特性を表わすグラフ図。
【図15】実施例10の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図16】実施例5および10の電子線励起における輝度維持率の照射電荷量依存性。
【図17】実施例11〜14の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図18】実施例15の蛍光体の245nm励起における発光スペクトル。
【図19】実施例16〜19の電子線励起における発光スペクトル。
【図20】実施例16〜19の電子線励起における2°視野色度。
【図21】実施例4,5,20〜23の電子線励起における2°視野色度。
【符号の説明】
【0098】
101…アルカリ土類金属; 102…窒素または酸素
103…アルミニウムまたはシリコン
A…M’を中心とする12配位の層;B…互いに頂点を共有する正四面体からなる層
C…互いに面を共有する正四面体からなる層
D…互いに頂点を共有した正四面体からなる層
200…樹脂システム; 201…リード; 202…リード; 203…樹脂部
204…反射面; 205…凹部; 206…発光チップ
207…ボンディングワイヤー; 208…ボンディングワイヤー; 209…蛍光層
210…蛍光体; 211…樹脂層; 301…フェースプレート; 302…蛍光膜
303…アルミニウム膜; 304…電子銃; 305…アノード
1…ディスプレイ装置; 2…カーボン・ナノ・チューブ; 3…蛍光膜; 4…基板
5…フェースプレート; 6…アルミニウム膜; 9…カソード
10,32…エミッタ素子; 11…絶縁材; 13…導電膜: 15…制御電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に使用される蛍光体に係り、特に、蛍光表示管(VFD)、PDP、CRT、FED、SEDおよび投写管等のディスプレイ、および青色発光ダイオードまたは紫外発光ダイオードを光源とする発光装置に使用される蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。高負荷LEDは駆動により発熱して、蛍光体の温度は100℃程度上昇し、これに起因して蛍光体の発光強度が低下する。蛍光体は、温度上昇時の発光強度低下が少ないことが望まれる。
【0003】
また、フラットパネルディスプレイ装置に関する開発は、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)において精力的に行なわれているが、電界放出型ディスプレイは、鮮明な画像を提供するという点でPDP、LCDを凌駕するものとして期待されている。
【0004】
電界放出型ディスプレイは、赤色、緑色、および青色の蛍光体が配列されたスクリーンと、このスクリーンに対してCRTよりも狭い間隔で対向するカソードを備えている。カソードには電子源がエミッタ素子として複数配置され、その近傍に配置されたゲート電極との電位差に応じて電子を放出する。放出された電子は蛍光体側のアノード電圧(加速電圧)により加速されて蛍光体に衝突して、これにより蛍光体が発光する。
【0005】
かかる構成の電界放出型ディスプレイに使用する蛍光体としては、十分に高い発光効率を有し、高電流密度の励起において飽和に至った際には、十分に高い発光効率を示すことが要求される。これまでCRT用蛍光体に用いられてきた硫化物系蛍光体(ZnS:Cu、ZnS:Ag)は、この候補となり得る。しかしながら、低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、ZnSのような硫化物系蛍光体は分解することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この分解物が、電子線を放出する熱フィラメントを著しく劣化させてしまう。特に、従来用いられているZnS系青色蛍光体は、赤色蛍光体および緑色蛍光体に比して輝度劣化が著しいため、カラー画面の表示色が経時変化してしまうという問題が生じている。
【非特許文献1】B.L.Abrams, W.Roos,P.H.Holloway,H.C.Swart, Surface Science 451(2000) p.174-181.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、温度特性の良好な蛍光体を提供することを目的とする。また本発明は、高電流密度励起下での輝度飽和特性、温度特性および電子線照射による輝度劣化特性が良好な蛍光体を提供することを目的とする。さらに本発明は、こうした蛍光体を用いた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる蛍光体は、下記一般式(1)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする。
【0008】
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
本発明の他の態様にかかる蛍光体は、下記一般式(2)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする。
【0009】
M’2/vAl3n+pSi10-pN3n+14-pOp (2)
(上記一般式(2)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、vは前記金属M’のイオン価数である。pおよびnは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、1≦n)
本発明の一態様にかかる発光装置は、電子エネルギーを照射するエネルギー源と、前記エネルギー源上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、前述の蛍光体を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様にかかる発光装置は、250nm乃至500nmの波長の光を発光する発光素子と、前記発光素子上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、前述の蛍光体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度特性の良好な蛍光体が提供される。また本発明によれば、高電流密度励起下での輝度飽和特性、温度特性および電子線照射による輝度劣化特性が良好な蛍光体が提供される。さらに本発明によれば、こうした蛍光体を用いた発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明者らは、AlNポリタイポイド(擬似多形)構造を有する非酸化物系化合物、特にAlNポリタイポイドサイアロン系化合物に発光中心元素を添加することによって、温度特性の良好な白色LED用蛍光体、および長寿命な電子線励起用蛍光体が得られることを見出した。ここで言う非酸化物系とは、純粋な酸化物以外を指す趣旨であって、酸窒化物やオキシカーバイド等を含むものである。本発明は、こうした知見に基づいてなされたものである。
【0014】
AlNポリタイポイドは、下記一般式(1)で表わされる構造を有するウルツ鉱型のAlNを基本格子とした長周期の層状構造を有する化合物群である。
【0015】
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
上記一般式(1)におけるa,bの値は、例えば材料の混合比により決定されるものであり、化学分析等によって確認することができる。
【0016】
この相は、AlNのAlをAl以外の金属Mで置換し、NをN以外の非金属Xで置換し、その置換量に応じてc軸方向の積層周期が変化するといった特異な構造を有する。Mとしては、Si、Ge、アルカリ土類金属、および希土類金属等が挙げられ、Xとしては、酸素および炭素等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、Ba,Ca,Sr,およびMgが挙げられ、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、希土類金属としては、例えば、Y,Gd,およびLaが挙げられ、単独でも2種以上を組み合わせて用いることができる。こうしたアルカリ土類金属と希土類金属とを、組み合わせて用いることも可能である。
【0017】
例えば、MとしてSiが導入され、XとしてOが導入されたポリタイポイドサイアロンの場合は、2Hδ(AlN)、8H(3AlN・SiO2)、15R(4AlN・SiO2)、12H(5AlN・SiO2)、21R(6AlN・SiO2)、27R(8AlN・SiO2)、33R(10AlN・SiO2)、24H(11AlN・SiO2)、および39R(12AlN・SiO2)といった多形が存在する。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、こうしたAlNポリタイポイドと同様な構造を母体とし、発光中心元素を含有するものである。発光中心元素は、母体中のいずれかの元素を置換して、あるいはいずれかの元素と固溶して存在することができる。
【0018】
発光中心元素は、AlとMとの総和に対して0.1〜40モル%程度の割合で含有されることが望まれる。0.1モル%未満の場合には、十分な発光効果を得ることが困難となる。一方、40モル%を越えると、濃度消光が起こるおそれがある。
【0019】
あるいは、本発明の実施形態にかかる蛍光体における母体は、下記一般式(2)で表わすこともできる。
【0020】
M’2/vAl3n+pSi10-pN3n+14-pOp (2)
(上記一般式(2)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、vは金属M’のイオン価数である。pおよびnは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、1≦n)
上記一般式(2)におけるpおよびnの値は、HREM(高分解能電子顕微鏡)、EDS等(電子線回折)によって求められたものである。nはポリタイポイド積層周期に関する値で、積層周期に上限は無いことから、nの値には上限は存在しない。
【0021】
具体的には、下記一般式(4)で表わされるサイアロン系化合物が挙げられる。なお、M’として導入され得るアルカリ土類金属および希土類金属としては、一般式(1)中に導入され得るとして上で列挙したものを用いることができる。
【0022】
M’Si10-pAl18+pN32-pOp (4)
(上記一般式(4)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、pは0<p<10を満たす数値である。)
上記一般式(4)は、上記一般式(2)においてv=2、n=6としたものである。
【0023】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、例えば、上記一般式(4)における金属M’の少なくとも一部を、発光中心元素で置換してなるものということもできる。こうした蛍光体は、下記一般式(3)で表わされる。
【0024】
(M’1-qQq)Si10-pAl18+pN32-pOp (3)
(上記一般式(3)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、Qは発光中心元素であり、pおよびqは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、0<q≦1)
この場合、発光中心元素は、金属M’の少なくとも0.1モル%を置換することが望まれる。置換量が0.1モル%未満の場合には、十分な発光効果を得ることが困難となる。アルカリ土類金属M’の100%が発光中心元素で置換されてもよい。この場合には、効率がよりいっそう高められるといった効果が得られる。
【0025】
本発明の実施形態にかかる蛍光体に含有される発光中心元素としては、例えば、Eu,Ce,Mn,Tb,Yb,Dy,Sm,Tm,Pr,Nd,Pm,Ho,Er,Gd,Cr,Sn,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Ag,Cd,In,Sb,Au,Hg,Tl,Pb,Bi,およびFeなどが挙げられる。発光波長の可変性等を考慮すると、EuおよびMnの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0026】
なお、AlNポリタイポイド構造を有する非酸化物系化合物は、酸素を重量比で0.3%乃至30%含有することが好ましい。酸化物は高温で液相となるため、合成時には酸化物の液相を介して合成が促進される。0.3重量%未満の場合には反応性が低下してしまい、良好な合成を行なうのが困難となる。一方、酸素が30重量%を越えて多量に含まれる場合には、最早ポリタイポイド構造が得られないおそれがある。
【0027】
上記一般式(3)式で表わされる蛍光体の構造を、図1に模式的に示す(J. Grins,S.Esmaeilzadeh,G.Svensson,Z.J.Shen, J.Euro.Cera.Soc. 19,2723(1999))。図1中、三角形は重心の位置の元素103としてAlまたはSiを有し、各頂点の元素102としてはNまたはOを有した正四面体構造を表わしている。図中の参照符号101は、アルカリ土類金属M’を表わす。図示するように、上記一般式(3)式で表される蛍光体はAで示すM’を中心とする12配位の層、Bで示す互いに頂点を共有した正四面体からなる層、Cで示す互いに面を共有する正四面体からなる層およびDで示す互いに頂点を共有した正四面体からなる層の4層からなる。A,B,CおよびDの各層に含まれる正四面体構造の層数は図1の例に限らず、これと異なる数でも良い。即ちAlN4正四面体構造が頂点共有したウルツァイト構造に周期的(間欠的)に、SiN4構造およびM’を中心とした14面体構造が、位置101に層状に挟まった構造を有する。こうした構造に起因して、本発明の実施形態にかかる蛍光体は良好な特性を有するが、これについては後に詳細に説明する。
【0028】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、例えば出発原料としてSrCO3,AlN,Si3N4およびEu2O3を用い、これらを化学量論組成になるように秤量混合してなる混合粉末を焼成することによって得られる。例えば、SrCO3,AlN,Si3N4およびEu2O3を所定量秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で2〜72時間ボールミル混合する。IPA以外に、エタノール等他の有機溶媒や水溶液を用いることも可能である。混合に当たっては、乳鉢中の乾式混合や湿式混合を採用してもよい。
【0029】
室温乾燥によりIPAを揮発・除去させた後、大気中、0〜40℃で一晩乾燥させ、乳鉢で解砕後にモリブデンるつぼに充填する。乾燥には、適宜ホットプレート等用いることもできる。また、るつぼの材質は、カーボン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、サイアロン、あるいはタングステン等としてもよい。
【0030】
これらを所定時間焼成して、目的の組成の蛍光体が得られる。焼成圧力は大気圧以上が望ましく、窒化ケイ素の高温での分解を抑制するためには5気圧以上がより好ましい。焼成温度は1500〜2000℃の範囲が好ましく、より好ましくは1800〜2000℃である。焼成温度が1500℃未満の場合には、ポリタイポイド構造の形成が困難となる。一方、2000℃を越えると材料あるいは生成物が昇華するおそれがある。また、原料のAlNが酸化されやすいことから、N2雰囲気中で焼成することが望まれるが、窒素・水素混合雰囲気でもよい。
【0031】
一般に、蛍光体は温度が上昇すると発光効率が低下する(温度消光)が、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、温度が上昇したときの発光効率の低下が少なく、消光温度が高いという特徴を有する。温度消光に影響を及ぼす因子としては、発光中心イオンの大きさとこれが置換する蛍光体母体イオンの大きさの違いや、蛍光体母体の結晶格子安定性などが挙げられる。本発明の実施形態にかかるAlNポリタイポイド構造を有する蛍光体は、上述した結晶構造に起因して、消光温度が高いものと推測される。
【0032】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、図1に示したように正四面体構造を有する。図1中の三角形は、重心の位置の元素103としてAlまたはSiを有し、各頂点の元素102としてNまたはOを有する。こうした構造に関して、本発明者らは次のように考察した。すなわち、このようなAlN4またはSiN4正四面体構造を基本骨格とする窒化物蛍光体においては、正四面体の頂点共有数が多いほど結晶格子が堅固で安定である。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、頂点共有数が2乃至6であり、単位格子中に2頂点共有4箇所、4頂点共有凡そ60箇所、6頂点共有凡そ24箇所である。これに対し、同様にSiN4正四面体構造を基本骨格とし、青励起赤色蛍光体として知られるCa2Si5N8:Euにおいては、平均頂点共有数が2〜3である。頂点共有数が従来の蛍光体よりも多いので、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、結晶格子がより安定であると考えられる。発光中心が二次元層状構造中に存在すること、および14面体配位構造を取ることもまた、発光中心周りの安定性に寄与する。これらの構造的特長が、本発明の実施形態にかかる蛍光体の消光温度を高めることとなる。
【0033】
焼成後の粉体には、洗浄等の後処理を適宜施して、本発明の実施形態にかかる蛍光体が得られる。洗浄は、例えば純水洗浄、酸洗浄により行なうことができる。なお、従来の窒化物の蛍光体としてはCaAlSiN3:Eu等が知られており、Ca3N2等を原料として用いて合成される。こうした原料粉末は嫌気性であるため、合成の際には、秤量・混合にグローブボックス等の大気を遮断した環境が要求される。これに対して、本発明の実施形態にかかる蛍光体を合成するに当たっては、原料粉末は大気中で秤量・混合が可能である。これは、本発明の実施形態にかかる蛍光体の原料の大気中での反応性が上述のCa3N2等に比べて低いためである。したがって、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、極めて簡便なプロセスで製造することができ、製造コストを著しく削減することが可能である。
【0034】
図2に、本発明の一実施形態にかかる発光装置の断面を示す。
図示する発光装置においては、樹脂ステム200はリードフレームを成形してなるリード201およびリード202と、これに一体成形されてなる樹脂部203とを有する。樹脂部203は、上部開口部が底面部より広い凹部205を有しており、この凹部の側面には反射面204が設けられる。
【0035】
凹部205の略円形底面中央部には、発光チップ206がAgペースト等によりマウントされている。発光チップ206としては、例えば発光ダイオード、レーザダイオード等を用いることができる。さらには、紫外発光を行なうものを用いることができ、特に限定されるものではない。紫外光以外にも、青色や青紫、近紫外光などの波長を発光可能なチップも使用可能である。例えば、GaN系等の半導体発光素子等を用いることができる。発光チップ206の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンデイングワイヤー207および208によって、リード201およびリード202にそれぞれ接続されている。なお、リード201および202の配置は、適宜変更することができる。
【0036】
樹脂部203の凹部205内には、蛍光層209が配置される。この蛍光層209は、本発明の実施形態にかかる蛍光体210を、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層211中に5重量%から50重量%の割合で分散、もしくは沈降させることによって形成することができる。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、その構造に起因して板状の結晶形を有する。このため、本発明の実施形態にかかる蛍光体を発光チップ上に沈降させるに当たって粘性の極めて低い樹脂を用いた場合には、この蛍光体は、樹脂中を発光チップ上まで沈降した後に、短軸が発光チップ面に垂直になる方向で安定に配置しやすい。したがって、多くの結晶粒で短軸が発光チップ面に垂直になり得ることから、蛍光体の結晶方位を揃えて実装することができる。その結果、蛍光体の結晶方向のばらつきに起因した発光素子の個体間の発光特性のばらつきを、著しく抑制することが可能となった。さらに、本発明の実施形態にかかる蛍光体には、共有結合性の高い窒化物が母体として用いられるため、疎水性であり樹脂との馴染みが極めて良好である。したがって、樹脂−蛍光体界面での散乱が著しく抑制されて、光取出し効率が向上する。
【0037】
発光チップ206としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることも可能である。この場合には、ワイヤーの断線や剥離、ワイヤーによる光吸収等のワイヤーに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な半導体発光装置が得られる。また、発光チップ206にn型基板を用いて、次のような構成とすることもできる。具体的には、n型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上の半導体層上面にはp型電極を形成して、n型電極またはp型電極をリードにマウントする。p型電極またはn型電極は、ワイヤーにより他方のリードに接続することができる。発光チップ206のサイズ、凹部205の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0038】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、含有されている発光中心元素に応じて、異なる波長に発光ピークを有する。例えば、発光中心元素としてEuのみが含有されている場合には、250nm乃至500nmの波長の光で励起することによって、450nm乃至500nmに発光ピークを示す。これらの発光ピークの半値幅は比較的小さく、65nm未満である。また、発光中心元素としてMnのみ、またはMnとEuとが含有されている場合には、250nm乃至500nmの波長の光で励起することによって、450nm乃至500nmと550nm乃至650nmの間に発光ピークを有する。したがって、360nm以上500nm以下の波長領域の発光ダイオードと本発明の実施形態にかかる蛍光体とを、蛍光体が発光ダイオードを覆うように組み合わせることによって、種々の発光色を示す発光装置を得ることができる。
【0039】
また、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、電子のエネルギーにより励起して発光装置を得ることも可能である。例えば、発光中心元素としてEuおよびMnの少なくとも一方が含有された場合には、上述したような光励起の場合と同様の波長に発光ピークが得られる。
【0040】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、CRT方式の投写型ディスプレイに適用することもできる。こうしたディスプレイにおいては、赤、緑、および青のモノクロームCRT(投写管)3個が用いられて、レンズ系を介して投写管の画像がスクリーン上に拡大投影される。
【0041】
かかる発光装置の概略構成を表わす断面図の一例を、図3に示す。図示するように、フェースプレート301の内面には、蛍光膜302および反射膜となるアルミニウム膜303が順次形成されている。また、蛍光膜302に電子線を照射するために、アノード305を介して電子銃304が設けられている。図示するような投写管は、例えば、以下のような手法により製造することができる。まず、対角7インチのガラスバルブ内に、本発明の実施形態にかかる蛍光体を塗布して蛍光膜を形成する。蛍光膜上には、膜厚約0.2μmのアルミニウム膜を蒸着法により成膜する。さらに、アノードおよび電子銃を取りつけて、投写管が完成する。
【0042】
こうした発光装置は、一般家庭用に大画面のテレビジョンとしても用いられるように、大画面である。さらに高輝度の映像を実現するために、このディスプレイに用いられる投写管の蛍光面には高電圧、高電流を印加して使用される。そのため、蛍光面を構成する蛍光体には以下のような特性が要求される。
【0043】
まず、投写管の内面に塗布される蛍光体は、高電流を流しても輝度が飽和しない輝度電流飽和特性を有することが要求される。次に、高温でも安定に高輝度な発光を有することが必要である。すなわち、投写管の蛍光面には大電力電子ビームが入射するために、発光に使用されなかったエネルギーは熱に変換され、蛍光面を形成する蛍光体は100℃以上にも加熱される。そのため、高温でも輝度低下の起こりにくい蛍光体であることが要求される。さらに、このような大電流印加条件で使用されても結晶破壊が起こりにくく、安定な結晶構造の蛍光体であることも求められる。
【0044】
投写管に用いられる代表的な蛍光体は、輝度および高電流密度励起下での輝度飽和特性を確保するため、赤色蛍光体としてはユーロピウム賦活酸化イットリウム(Y2O3:Eu)、緑色蛍光体としてはテルビウム賦活ケイ酸イットリウム蛍光体(Y2SiO5:Tb)、青色蛍光体としてはZnS系蛍光体が従来用いられてきた。ZnS系蛍光体は、赤色蛍光体および緑色蛍光体に比して著しく速いことが知られている。このため、カラー画面の表示色にずれが生じるという問題があった。本発明の実施形態にかかる蛍光体を青色蛍光体として用いることによって、長期にわたり良好な表示特性を維持することが可能になる。
【0045】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、電界放出型ディスプレイ(FED)に適用することもできる。図4(a)には、ディスプレイ装置の概略断面図を示し、図4(b)には、その平面図を示す。図4(a)に示されるように、本発明の実施形態にかかるディスプレイ装置1は、棒状の炭素分子であるカーボン・ナノ・チューブ2を電子源とする電界放出型ディスプレイ(FED)であって、蛍光膜3として本発明の実施形態にかかる蛍光体が用いられる。
【0046】
なお、カーボン・ナノ・チューブは、長手方向の寸法を含めて数nm(ナノ・メートル=10-9m)から数十nmの非常に微細な物質であるが、図4(a)および(b)にはこれを拡大して示す。
【0047】
図4(a)に示されるように、ディスプレイ装置1は、電子を放出するための電子源が設けられた基板4と、フェースプレート5とが対向配置されている。フェースプレート5は、例えばガラス基板によって形成され、このフェースプレート5の基板4に対向する面部には蛍光膜3が形成される。また蛍光膜3には、アノードとしてアルミニウム膜6が形成され、この蛍光膜3は、電子源から放出された電子が衝突することによって発光する。基板4とフェースプレート5との間の空隙は、基板4およびフェースプレート5の周囲に設けられた側壁(図示せず)によって気密性が保たれるようになされており、真空状態に維持される。
【0048】
図4(a)および(b)に示すように、基板4上には、電子を放出するためのエミッタ素子10が赤色、緑色、および青色の各蛍光体に対応して複数設けられる。なお、これらの図面においては、複数配置されたエミッタ素子の1つについて示している。このエミッタ素子10においては、カソード9と絶縁材11とが順次積層されており、絶縁材11には開口部11aが形成され、これによりこの開口部11aを介してカソード9の一定範囲が蛍光膜3側に露出するようになされている。基板4としては、例えば、石英ガラスまたは青板ガラス等の各種ガラス基板、アルミナ等の各種セラミクス基板を用いることができる。あるいは、上述の各種基板上に、例えば酸化シリコン(SiO2)を材料とする絶縁層を積層した基板等を用いてもよい。
【0049】
開口部11a内のカソード9には、一定範囲に亘って電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2が設けられている。カーボン・ナノ・チューブ2のように微細な物質をカソード9に固定するには、次のような手法を採用することができる。まず、複数のカーボン・ナノ・チューブ2を銀等の導電性ペーストに分散させる。これを、絶縁材11の開口11aまたは隙間から露出したカソード9の上面に滴下し、導電性ペーストを硬化させて導電膜13を形成する。これにより、カーボン・ナノ・チューブ2は導電膜13の表面に一定の面積をもって分散配置される。すなわち、電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2は、蛍光膜3に対向する基板4上において、一定範囲の電子放出領域を形成している。
【0050】
このように導電膜13に固定されたカーボン・ナノ・チューブ2においては、その先端部が膜形状の導電膜13の面部から突出し、この吐出した部分と制御電極(ゲート電極)15との間に素子印加電圧Vf(電位差ΔV)が与えられる。これによって、カーボン・ナノ・チューブ2の先端部から電子を放出させる。放出した電子は、カソード9と蛍光膜3側のアノード(アルミニウム膜6)との間に印加された加速電圧Vaによって加速され、蛍光膜3に衝突する。この電子の衝突によって蛍光膜3を発光させることができる。
【0051】
すでに説明したように、青色蛍光体としてZnS系蛍光体を用いた場合には、この青色蛍光体の劣化が赤色および緑色に比して著しく速いことに起因して、カラー画面の表示色にずれが生じるという問題があった。本発明の実施形態にかかる蛍光体を用いることにより、蛍光体が高密度の電子線に曝された場合であっても、長期にわたり良好な表示特性を維持することが可能になる。
【0052】
また、従来のZnS系蛍光体を用いた場合に比して、蛍光体の分解ガスの発生が抑制され、蛍光体の分解ガスによる電子源の汚染が抑制される。その結果、電子放出特性の経時的な低下を抑制することが可能となる。
【0053】
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si3N4およびEu2O3を用い、これらを各々7.308g、38.939g、21.047gおよび0.088g秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で24hボールミル混合した。室温乾燥によりIPAを揮発・除去させた後に大気中120℃で一晩乾燥させ、乳鉢で解砕後にモリブデンるつぼに充填した。これらを7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で4時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は(Sr0.99Eu0.01)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。焼成後の蛍光体は白色の焼結体であり、ブラックライト励起で青色発光が観察された。
【0055】
本実施例にかかる蛍光体のXRDプロファイルを、図5に示す。対称性の良いパターンが得られ、(AlN)7(SiO2)ポリタイポイドのパターン(JCPDSカード#36−0828)と良く一致したことから、8層周期のポリタイポイド構造を有していることが確認された。なお、JCPDSカードとは、各種物質のX線回折法によるピークプロファイルをまとめたデータ集である。
【0056】
本実施例にかかる蛍光体のSEM像を、図6に示す。観察は加速電圧10kVの条件で行なった。図6より、本実施例の蛍光体は、短軸方向の粒径0.5μm前後、他の軸方向の粒径3〜5μm前後の板状の粒形状であることが確認された。
【0057】
図7には、本実施例の蛍光体の室温(25℃)における電子線照射下における発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。ここで用いた発光スペクトルは、大塚電子製IMUC−7000G型瞬間マルチ測光システムで測定したものである。図示するように、450nm乃至460nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られている。この発光は、Eu2+の5f→4d遷移に由来するものと推測される。この励起条件下での2°視野における色度は、(0.153、0.132)の青色発光であった。
【0058】
図8には、本実施例にかかる蛍光体の発光スペクトルのピーク強度および輝度Lの相対値をまとめて示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5〜10μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図8中の縦軸は、いずれも既存の電子線励起蛍光体ZnS:Ag,Clの値に対する相対値である。図8に示されるように、励起強度の増加に伴なって輝度Lおよび発光強度が単調増加しており、本実施例の蛍光体は、ZnS系蛍光体よりも電流飽和特性が良好であることがわかる。
【0059】
(実施例2)
実施例1と同様に秤量、混合、乾燥および解砕を行なった原料を窒化ホウ素るつぼに充填し、実施例1と同様に7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で4時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.99Eu0.01)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0060】
図9には、本実施例にかかる蛍光体の電子線励起発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450nm乃至460nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られている。この発光は、Eu2+の5f→4dに由来するものと推測される。この励起条件下での2°視野における色度は(0.154、0.142)の青色発光であった。
【0061】
(実施例3)
SrCO3の配合量を7.234gに変更し、Eu2O3の配合量を0.176gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は(Sr0.98Eu0.02)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0062】
(実施例4)
SrCO3の配合量を7.012gに変更し、Eu2O3の配合量を0.440gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.95Eu0.05)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0063】
(実施例5)
SrCO3の配合量を6.643gに変更し、Eu2O3の配合量を0.880gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.9Eu0.1)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0064】
(実施例6)
SrCO3の配合量を5.905gに変更し、Eu2O3の配合量を1.760gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.8Eu0.2)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0065】
(実施例7)
SrCO3の配合量を3.691gに変更し、Eu2O3の配合量を4.399gに変更した以外は、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.5Eu0.5)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0066】
(実施例8)
AlN,Si3N4,およびEu2O3を各々38.939g、21.047g、および8.798g秤量し、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、EuSi9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0067】
下記表1に実施例1、3、4および5にかかる蛍光体の酸素組成分析結果を示す。分析は不活性ガス融解−赤外線吸収法で行なった。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1の結果から、酸素が重量比で3%程度含まれていることがわかる。
【0070】
図10には、実施例3〜8の蛍光体の電子線励起発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450〜490nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られた。Eu濃度が増加するにしたがってピーク波長が長くなり、発光強度が大きくなることがわかる。この発光は、Eu2+の5f→4dに由来するものと推測される。これら実施例3〜8の蛍光体のピーク波長、この励起条件下での2°視野における色度および発光色を、下記表2にまとめて示す。
【0071】
【表2】
【0072】
上記表2に示されるように、Eu濃度を変更することによって、所望の発光ピーク波長および色度を有する蛍光体が得られることがわかる。
【0073】
図11には、実施例3〜8の蛍光体の電子線励起における発光強度、輝度L、y値および刺激値L/yのEu濃度依存性を示す。励起条件は、前述と同様とした。Eu濃度を変えることによって、発光強度、輝度、刺激値L/y値およびy値を幅広くに変えることが可能であることが、図11に示されている。
【0074】
(実施例9)
実施例8と同様に混合、乾燥、解砕を行ったものをカーボンるつぼに充填し、実施例1と同様に焼成を行ない、EuSi9Al19ON31を合成した。
得られた蛍光体を、350nmのピーク波長を有するUVランプにより励起し、得られた発光スペクトルを図12に示す。また、図13には、393nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した際の発光スペクトルを示す。図12および図13において、各々350nmおよび393nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。電子線励起の場合と同様に、490nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。各々の波長における吸収率、量子効率、および発光効率の値を表3にまとめて示す。
【0075】
【表3】
【0076】
(比較例1)
SrCO3,Si3N4,およびEu2O3を、各々26.573g、23.385g、および3.519g秤量し、ボールミルで混合した混合粉末をカーボンるつぼ中に充填した。これを、7気圧のN2雰囲気中、1650℃で8時間焼成して本比較例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本比較例の蛍光体は、(Sr0.9Eu0.1)2Si5N8で表わされる組成を有することが確認された。得られた蛍光体は朱色の焼結体であり、ブラックライト励起で赤色発光が観察された。
【0077】
実施例9の蛍光体を、室温から200℃までヒーターにより試料温度を上昇させながら励起して、発光スペクトル変化を測定した。励起には、393nmのピーク波長を有する発光ダイオードを用いた。ピーク波長の490nmでの発光強度の温度依存性を、図14に示す。比較のため、市販のBAM蛍光体(BaMgAl10O17:Eu)、ZnS:Ag,Cl、および比較例1にかかるSr2Si5N8:Euの各々445nm、444nmおよび652nmにおける発光強度の温度依存性も、図14に併せて示した。図14のy軸は、各蛍光体の室温における発光強度を1として規格化した値である。
【0078】
実施例9の蛍光体は、200℃の高温条件下でも、発光強度の低下が小さいことが図14のグラフに示されている。この結果から、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、BAM,ZnS:Ag,Clおよび同じ窒化物母体であるSr2Si5N8:Euに比べて、温度特性が極めて良好なことがわかる。
【0079】
(実施例10)
実施例5と同様に秤量、混合、乾燥および解砕を行なった原料を7.5気圧のN2雰囲気中、1900℃で4時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体の組成は、(Sr0.9Eu0.1)Si9Al19ON31で表わされることが確認された。
【0080】
図15に、本実施例の蛍光体の電子線励起発光スペクトルを示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450nm乃至460nm近傍にピークを有する単一バンドの発光が得られている。この発光はEu2+の5f→4dに由来するものと推測される。この励起条件下での2°視野における色度は(0.148、0.112)の青色発光であった。
【0081】
実施例5および10の蛍光体を、沈降法によりガラス基板上に成膜し、その表面にメタルバックとして真空蒸着法によりアルミニウム薄膜を100nm積層した。こうして作製された蛍光膜にラスター電子線を照射して、室温における輝度の経時変化を測定した。照射条件は、10-6Paオーダの真空チャンバー内で加速電圧10kV、70μA(電流密度12uA/cm2)とし、得られた結果を図16に示す。比較のため、市販のZnS系蛍光体についても輝度の経時変化を同様に測定し、その結果も併せて図16に示した。図16中の縦軸は、各蛍光体における0.2C照射時の輝度を1として規格化した輝度である。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、ZnS系に対して劣化が極めて少ないことがわかる。
【0082】
(実施例11)
SrCO3,AlN,Si3N4,およびMnCO3を、各々7.308g、38.939g、21.047g、および0.057g秤量し、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.99Mn0.01)Si9Al19ON31で表わされることが確認された。
【0083】
(実施例12)
SrCO3の使用量を7.234gに変更し、MnCO3の使用量を0.115gに変更した以外は、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.98Mn0.02)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0084】
(実施例13)
SrCO3の使用量を7.012gに変更し、MnCO3の使用量を0.287gに変更した以外は、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.95Mn0.05)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0085】
(実施例14)
SrCO3の使用量を6.643gに変更し、MnCO3の使用量を0.575gに変更した以外は、実施例2と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は、(Sr0.9Mn0.1)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0086】
実施例11〜14の蛍光体をそれぞれ電子線で励起し、得られた発光スペクトルを図17に示す。励起条件は、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2とした。図示するように、450nm近傍にピークを持つバンドの発光が得られている。また、600nm近傍にも微弱な発光が得られた。この励起条件下での2°視野における色度(x、y)および発光色を、Mn濃度とともに下記表4にまとめて示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の結果から、Mn濃度を変更することによって、紫青から青紫まで任意の発光色が得られることがわかる。
【0089】
(実施例15)
SrCO3,AlN,Si3N4,およびMnCO3を、各々7.308g、38.939g、21.047g、および0.057g秤量し、実施例1と同様に混合、乾燥、解砕および焼成を行なって本実施例の蛍光体を合成した。化学分析の結果、本実施例の蛍光体は(Sr0.99Mn0.01)Si9Al19ON31で表わされる組成を有することが確認された。
【0090】
また、実施例15にかかる蛍光体を245nmのピーク波長を有するUVランプにより励起し、得られた発光スペクトルを図18に示す。図示するように、610nmにピークを有する赤色発光が得られた。
【0091】
(実施例16〜19)
発光中心元素としてEuおよびMnを用い、下記表5に示すように仕込みのEu濃度およびMn濃度を変更した以外は、実施例1と同様の手法により実施例16〜19の蛍光体を合成した。ここで得られた蛍光体の組成は、{Sr1-q(Eu1-wMnw)q}Si9Al19ON31で表わされる。
【0092】
【表5】
【0093】
焼成後の蛍光体はいずれも白色粉体であり、UVランプによりいずれも青色発光を示した。実施例16〜19にかかる蛍光体を、加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2の電子線で励起した。得られた発光スペクトルを図19に示し、2°視野における色度を図20に示す。いずれの蛍光体の場合も、450nm乃至470nmおよび610nm近傍にピークを有する青色発光が得られることがわかる。
【0094】
(実施例20〜23)
下記表6に示すように、M’としての含有されるアルカリ土類金属の種類およびEu濃度を変更した以外は、実施例1と同様の手法により実施例20〜23の蛍光体を合成した。ここで得られた蛍光体の組成は、(M’1-qEuq)Si9Al19ON31で表わされる。
【0095】
【表6】
【0096】
実施例20および21の蛍光体は白色であり、UVランプにより青色発光を示した。また、実施例22および23の蛍光体は黄色であり、UVランプにより黄色発光を示した。実施例20〜23にかかる蛍光体を加速電圧10kV、1.5μAラスター励起、ラスターサイズ4.85×6.57mm2の電子線で励起し、2°視野における色度を測定した。得られた結果を図21に示す。図21には、実施例4および5についての結果も併せて示した。これらの結果から、金属M’の種類や濃度を変更することによって、任意のx値、y値が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態にかかる蛍光体の構造を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略図。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる発光装置の概略断面図。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる発光装置の概略断面図および平面図。
【図5】実施例1の蛍光体のXRDプロファイル。
【図6】実施例1の蛍光体のSEM観察像。
【図7】実施例1の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図8】実施例1の蛍光体の電子線励起における発光強度比および輝度比の励起エネルギー密度依存性を表わすグラフ図。
【図9】実施例2の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図10】実施例3〜8の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図11】実施例3〜8の蛍光体の電子線励起における発光強度、輝度L、y値および刺激値L/yの発光中心金属元素濃度依存性を表わすグラフ図。
【図12】実施例8の蛍光体の350nm光励起における発光スペクトル。
【図13】実施例8の蛍光体の393nm光励起における発光スペクトル。
【図14】実施例9、比較例1、BAM蛍光体およびZnS:Ag,Cl蛍光体の393nm光励起における発光強度の温度特性を表わすグラフ図。
【図15】実施例10の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図16】実施例5および10の電子線励起における輝度維持率の照射電荷量依存性。
【図17】実施例11〜14の蛍光体の電子線励起における発光スペクトル。
【図18】実施例15の蛍光体の245nm励起における発光スペクトル。
【図19】実施例16〜19の電子線励起における発光スペクトル。
【図20】実施例16〜19の電子線励起における2°視野色度。
【図21】実施例4,5,20〜23の電子線励起における2°視野色度。
【符号の説明】
【0098】
101…アルカリ土類金属; 102…窒素または酸素
103…アルミニウムまたはシリコン
A…M’を中心とする12配位の層;B…互いに頂点を共有する正四面体からなる層
C…互いに面を共有する正四面体からなる層
D…互いに頂点を共有した正四面体からなる層
200…樹脂システム; 201…リード; 202…リード; 203…樹脂部
204…反射面; 205…凹部; 206…発光チップ
207…ボンディングワイヤー; 208…ボンディングワイヤー; 209…蛍光層
210…蛍光体; 211…樹脂層; 301…フェースプレート; 302…蛍光膜
303…アルミニウム膜; 304…電子銃; 305…アノード
1…ディスプレイ装置; 2…カーボン・ナノ・チューブ; 3…蛍光膜; 4…基板
5…フェースプレート; 6…アルミニウム膜; 9…カソード
10,32…エミッタ素子; 11…絶縁材; 13…導電膜: 15…制御電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする蛍光体。
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、MはSi,Ge,アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種であり、Xは酸素および炭素から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
下記一般式(2)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする蛍光体。
M’2/vAl3n+pSi10-pN3n+14-pOp (2)
(上記一般式(2)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、vは前記金属M’のイオン価数である。pおよびnは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、1≦n)
【請求項4】
前記一般式(2)式において、v=2,n=6であり、前記金属M’の少なくとも一部を発光中心元素Qで置換して下記一般式(3)で表わされることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
(M’1-qQq)Si10-pAl18+pN32-pOp (3)
(上記一般式(3)中、pおよびqは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、0<q≦1)
【請求項5】
前記母体は、酸素を重量比で0.3%乃至30%含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記発光中心元素は、EuおよびMnの少なくとも一方であり、電子のエネルギーによって励起した際に、400nm乃至700nmの間に発光ピークを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項7】
前記発光中心金属は、EuおよびMnの少なくとも一方であり、波長250nmないし500nmの光で励起した際に、400nm乃至700nmの間に発光ピークを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項8】
電子エネルギーを照射するエネルギー源と、前記エネルギー源上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
250nm乃至500nmの波長の光を発光する発光素子と、前記発光素子上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする蛍光体。
(Al,M)a(N,X)b (1)
(上記一般式(1)中、MはAlを除く一種類以上の金属、XはNを除く一種類以上の非金属であり、aおよびbは正の値である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、MはSi,Ge,アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種であり、Xは酸素および炭素から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
下記一般式(2)で表わされるAlNポリタイポイド構造を有する化合物を母体とし、発光中心元素を含有することを特徴とする蛍光体。
M’2/vAl3n+pSi10-pN3n+14-pOp (2)
(上記一般式(2)中、M’はアルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される金属であり、vは前記金属M’のイオン価数である。pおよびnは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、1≦n)
【請求項4】
前記一般式(2)式において、v=2,n=6であり、前記金属M’の少なくとも一部を発光中心元素Qで置換して下記一般式(3)で表わされることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
(M’1-qQq)Si10-pAl18+pN32-pOp (3)
(上記一般式(3)中、pおよびqは、それぞれ次の関係を満たす数値である。0<p<10、0<q≦1)
【請求項5】
前記母体は、酸素を重量比で0.3%乃至30%含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記発光中心元素は、EuおよびMnの少なくとも一方であり、電子のエネルギーによって励起した際に、400nm乃至700nmの間に発光ピークを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項7】
前記発光中心金属は、EuおよびMnの少なくとも一方であり、波長250nmないし500nmの光で励起した際に、400nm乃至700nmの間に発光ピークを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項8】
電子エネルギーを照射するエネルギー源と、前記エネルギー源上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
250nm乃至500nmの波長の光を発光する発光素子と、前記発光素子上に配置された蛍光体層とを具備し、前記蛍光体層は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−335832(P2006−335832A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160512(P2005−160512)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
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