説明

蛍光体粒子、蛍光体粒子分散体ならびにこれらを含む照明装置および表示装置。

【課題】 励起光の吸収効率が高く輝度の高い蛍光体粒子および演色性に優れた蛍光体粒子分散体ならびにこれらを含む照明装置および表示装置を提供する。
【解決手段】 励起エネルギーEeを有する励起光11を受けて蛍光を発する蛍光体粒子100であって、バンドギャップエネルギーE1を有する半導体コア粒子101とバンドギャップエネルギーE2を有する半導体シェル層102とを含み、E1<E2≦Eeの関係を有し、半導体シェル層102で半導体コア粒子101を被覆することにより半導体コア粒子101中にE1とE2の間のエネルギーを有する離散的なエネルギー準位が形成され、エネルギー準位における基底準位111c,111v間のエネルギーEに基づく蛍光を発する蛍光体粒子100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子からの励起光を受けて発光する蛍光体粒子、蛍光体粒子分散体ならびにこれらを含む照明装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体中の量子効果によって形成される基底準位間のバンドギャップエネルギーによる蛍光を発する蛍光体を用いた照明装置および表示装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記照明装置または表示装置は、具体的には、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた発光素子と、励起子ボーア半径の2倍以下の粒径を有するコア粒子(核粒子)とシェル層(外層)の2層構造を有する蛍光体とを含む照明装置または表示装置である。
【0004】
さらに、詳しくは、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた発光素子としては、サファイア基板上に形成されたGaxIn1-xN(0≦x≦1)/GayIn1-yN(0≦y≦1)の対で構成される量子井戸構造の活性層を有するものが用いられている。そして、コア粒子とシェル層の2層構造を有する蛍光体としてはCdSe(コア粒子)/ZnS(シェル層)構造からなり、CdSeの粒径を変化させることによって生じる量子効果による基底準位の変化を利用して蛍光の波長(色)の制御を行うものが示されている。
【0005】
しかし、上記蛍光体は、励起光の吸収効率が必ずしも高くなく、この蛍光体と発光素子とを組み合わせた照明装置または表示装置においては、十分な輝度を得ることができない。また、上記蛍光体は、演色性が乏しい問題があった。
【特許文献1】特開平11−340516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況を鑑みて、本発明は、励起光の吸収効率が高く輝度の高い蛍光体粒子および演色性に優れた蛍光体粒子分散体ならびにこれらを含む照明装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、励起エネルギーEeを有する励起光を受けて蛍光を発する蛍光体粒子であって、バンドギャップエネルギーE1を有する半導体コア粒子と、半導体コア粒子を被覆するバンドギャップエネルギーE2を有する半導体シェル層を含み、半導体コア粒子のE1と半導体シェル層のE2と励起光のEeとの関係がE1<E2≦Eeであり、半導体シェル層で半導体コア粒子を被覆することにより半導体コア粒子中にE1とE2との間のエネルギーを有する離散的なエネルギー準位が形成され、エネルギー準位における基底準位間のエネルギーEに基づく蛍光を発する蛍光体粒子である。
【0008】
本発明にかかる蛍光体粒子において、上記基底準位間のエネルギーを1.85eV〜2.06eV、2.29eV〜2.48eVまたは2.58eV〜3.02eVのいずれかの範囲とすることができる。また、半導体コア粒子はInx1Gay1Al1-x1-y1N(0<x1、0≦y1、x1+y1≦1)、Cdz11Zn1-z11Se(0<z11≦1)およびCdz12Zn1-z12S(0<z12≦1)からなる群から選ばれた1つの半導体であること、または、半導体シェル層はInx2Gay2Al1-x2-y2N(0<x2、0<y2、x2+y2≦1)およびCdy21Zn1-y21Se(0≦y21<1)からなる群から選ばれた1つの半導体であることが好ましい。また、本発明にかかる蛍光体粒子は、半導体レーザまたは発光ダイオードからなる発光素子からの励起光を受けて発光することができる。
【0009】
本発明は、上記蛍光体粒子を2以上含む蛍光体粒子分散体であって、基底準位が異なる2以上の蛍光体粒子を含み、すべての蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2が、すべての蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEよりも大きいことを特徴とする蛍光体粒子分散体である。さらに、本発明にかかる蛍光体粒子分散体は、2以上の蛍光体粒子が媒体中に分散されているものとすることができる。
【0010】
本発明は、上記の蛍光体粒子または蛍光体粒子分散体と、発光素子とを含む照明装置である。
【0011】
本発明は、上記の蛍光体粒子または蛍光体粒子分散体と、発光素子と、蛍光体粒子または蛍光体粒子分散体から発する蛍光および発光素子から発する励起光の少なくとも1つの光の光強度を変調する光強度変調手段を含む表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、励起光の吸収効率が高く輝度の高い蛍光体および演色性に優れた蛍光体粒子分散体ならびにこれらを含む照明装置および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明の実施形態1による蛍光体粒子は、図1を参照して、励起エネルギーEeを有する励起光11を受けて蛍光13を発する蛍光体粒子100であって、バンドギャップエネルギーE1(伝導帯101cと価電子帯101vとの間のバンドギャップエネルギー)を有する半導体コア粒子101と、半導体コア粒子を被覆するバンドギャップエネルギーE2(伝導帯102cと価電子帯102vとの間のバンドギャップエネルギー)を有する半導体シェル層102とを含み、半導体コア粒子のE1と半導体シェル層のE2と励起光のEeとの関係がE1<E2≦Eeであり、半導体シェル層102で半導体コア粒子101を被覆することにより半導体コア粒子101中にE1とE2との間のエネルギーを有する離散的なエネルギー準位が形成され、エネルギー準位における基底準位111c,111v間のエネルギーEに基づく蛍光13を発する蛍光体粒子である。
【0014】
本実施形態の蛍光体粒子が、励起光の吸収効率が高く輝度が高くなる理由を、従来の蛍光体粒子と対比させて、具体的に説明する。
【0015】
従来の蛍光体粒子は、たとえば、図2を参照して、半導体コア粒子201として1.7eV程度のバンドギャップエネルギーE1を有する直径6〜10nm程度のCdSeコア粒子と、半導体コア粒子201を被覆する半導体シェル層202として3.80eVのバンドギャップエネルギーE2を有するZnSシェル層とからなり、Inx3Ga1-x3N(0≦x3≦1)発光素子が発した励起エネルギーEeが2.88eV(波長430nm)の励起光11を受けて、蛍光13を発する蛍光体粒子である。なお、励起光の一部は、蛍光体粒子表面によって散乱され散乱光12として反射される。
【0016】
この従来の蛍光体粒子において、ZnSシェル層でCdSeコア粒子を被覆することによってCdSeコア粒子中に形成された基底準位211c,211v間のエネルギーEはたとえば1.9eV(650nm)であり、波長が650nmの蛍光13を発する。なお、図2(b)において、C.Bは伝導帯、V.Bは価電子帯、白丸は電子14、黒丸は正孔15を示す。
【0017】
上記のように、従来の蛍光体粒子においては、EeとE2とEとの関係はE<Ee<E2となり、このようなバンド構造においては、CdSeコア粒子内に形成されるエネルギー準位、すなわち励起エネルギーEeを有する励起光11を吸収できるエネルギー状態密度は離散的にしか存在せず、このエネルギー準位から少しでも外れると励起光の吸収効率が低下し輝度が低下する。なお、Inx3Ga1-x3N発光素子(0≦x3≦1)において、InおよびGaの組成をどのように変化させても、その励起エネルギーEeは3.38eV以下となり、上記と同様にEe<E2となってしまう。
【0018】
これに対し、本実施形態の蛍光体粒子は、たとえば、図1を参照して、半導体コア粒子101として2.00eV(波長620nm)のバンドギャップエネルギーE1を有するInNコア粒子と、半導体コア粒子101を被覆する半導体シェル層102として2.80eV(波長442nm)のバンドギャップエネルギーE2を有するInx2Ga1-x2Nシェル層(0<x2<1)とからなり、Inx3Ga1-x3N発光素子(0≦x3≦1)が発した励起エネルギーEeが2.88eV(430nm)の励起光11を受けて蛍光13を発する蛍光体粒子である。なお、励起光の一部は、蛍光体粒子表面によって散乱され散乱光12として反射される。
【0019】
この本実施形態の蛍光体粒子において、Inx2Ga1-x2Nシェル層(0<x2<1)でInNコア粒子を被覆することによって、InNコア粒子中に形成された基底準位111c,111v間のエネルギーEは、たとえば2.58eV(波長480nm)となり、波長480nmの蛍光13を発する。
【0020】
上記のように、半導体シェル層であるInx2Ga1-x2Nシェル層(0<x2<1)のE2が励起光のEe以下になるように、Inx2Ga1-x2Nシェル層の元素組成比x2を設定することにより、励起光の大部分を半導体シェル層で吸収することができる。これにより、励起光を吸収し得る体積(半導体シェル層の体積)を増大することができ、蛍光体粒子の輝度が高くなる。
【0021】
本実施形態は、半導体コア粒子内に形成された基底準位間のエネルギーEが2.58eV(波長480nm)である青色の蛍光を発する蛍光体粒子の例であるが、半導体コア粒子の粒径ならびに半導体コア粒子または半導体シェル層の構成元素または元素組成比などを調整することにより、上記基底準位間のエネルギーが、1.85eV〜2.06eV(波長670nm〜600nm)の赤色の蛍光を発する蛍光体粒子、2.29eV〜2.48eV(波長540nm〜500nm)の緑色の蛍光を発する蛍光体粒子、2.58eV〜3.02eV(波長480nm〜410nm)の青色の蛍光を発する蛍光体粒子を得ることができる。
【0022】
本実施形態においては、半導体コア粒子としてInNからなるInNコア粒子を挙げたが、半導体コア粒子を構成する半導体としては、Inx1Gay1Al1-x1-y1N(0<x1、0≦y1、x1+y1≦1)、Cdz11Zn1-z11Se(0<z11≦1)またはCdz12Zn1-z12S(0<z12≦1)なども好ましく用いられる。
【0023】
本実施形態においては、半導体シェル層としてInx2Ga1-x2Nシェル層(0<x2<1)を挙げたが、Inx2Gay2Al1-x2-y2N(0<x2、0<y2、x2+y2≦1)またはCdy21Zn1-y21Se(0≦y21<1)なども好ましく用いられる。
【0024】
ここで、半導体コア粒子および半導体シェル層の元素組成比x1、y1、z11、z12、x2、y2、z21は、半導体コア粒子のE1と半導体シェル層のE2と励起光のEeとの関係がE1<E2≦EeとなるE1およびE2が得られるように設定する。また、半導体コア粒子の粒径は、半導体コア粒子のE1と半導体シェル層のE2とにより、所望のEが得られるように設定する。
【0025】
本実施形態において用いられる発光素子は、特に制限はないが、半導体レーザまたは発光ダイオードが、安定したエネルギー(波長)を有する励起光が得られる点から、好ましい。
【0026】
また、本実施形態の蛍光体粒子の製造方法には特に制限はないが、生成物質の構成元素を含む複数の出発物質を媒体に分散させ、これを反応させて目的の生成物質を得る化学合成法は簡便な手法であり低コストである点から好ましい。化学合成法には、ゾルゲル法(コロイド法)、逆ミセル法、分子プレカーサ法、水熱合成法、フラックス法などが含まれる。
【0027】
(実施形態2)
本発明の実施形態2による蛍光体粒子分散体は、上記蛍光体粒子を2以上含む蛍光体粒子分散体であって、この蛍光体粒子分散体は、基底準位が異なる2以上の蛍光体粒子を含み、すべての蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2が、すべての蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEよりも大きい蛍光体粒子分散体である。
【0028】
さらに、具体的には、図3を参照して、図3(a)に示すような、基底準位が異なる2以上の蛍光体粒子が媒体3100である透明なエポキシ樹脂中に分散された蛍光体粒子分散体3000であって、すべての蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2が、すべての蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEよりも大きい蛍光体粒子分散体について説明する。
【0029】
蛍光体粒子は、基底準位間のエネルギーEの違いによって、異なる色の蛍光を発するため、たとえば、青色の蛍光を発する青色の蛍光体粒子、緑色の蛍光を発する緑色の蛍光体粒子および/または赤色の蛍光を発する赤色の蛍光体粒子を所定の割合で媒体に分散させることにより、蛍光色の色度を調整することができる。
【0030】
たとえば、図3および図4を参照して、蛍光体粒子分散体3000における青色の蛍光体粒子100と赤色の蛍光体粒子300との相互作用について説明する。
【0031】
青色の蛍光体粒子100は、半導体コア粒子101として2.00eV(波長620nm)のバンドギャップエネルギーE1Bを有するInNコア粒子と、半導体コア粒子101を被覆する半導体シェル層102として2.82eV(波長440nm)のバンドギャップエネルギーE2Bを有するInx21Ga1-x21Nシェル層(0<x21<1)とからなり、Inx3Ga1-x3N発光素子(0≦x3≦1)が発した励起エネルギーEeが2.88eV(430nm)の励起光11を受けて蛍光13を発する蛍光体粒子である。本実施形態における青色の蛍光体粒子において、Inx21Ga1-x21Nシェル層(0<x21<1)でInNコア粒子を被覆することによってInNコア粒子中に形成された基底準位111c,111v間のエネルギーEBは2.58eV(波長480nm)となり、波長480nmの青色の蛍光13を発する。
【0032】
また、赤色の蛍光体粒子300は、半導体コア粒子301として2.00eV(波長620nm)のバンドギャップエネルギーE1Rを有するInNコア粒子と、半導体コア粒子301を被覆する半導体シェル層302として2.76eV(波長450nm)のバンドギャップエネルギーE2Rを有するInx22Ga1-x22Nシェル層(0<x22<1)とからなり、Inx3Ga1-x3N発光素子(0≦x3≦1)が発した励起エネルギーEeが2.88eV(430nm)の励起光11を受けて蛍光13を発する蛍光体粒子である。本実施形態における赤色の蛍光体粒子において、Inx22Ga1-x22Nシェル層(0<x22<1)でInNコア粒子を被覆することによってInNコア粒子中に形成された基底準位311c,311v間のエネルギーERは2.03eV(波長610nm)となり、波長610nmの赤色の蛍光13を発する。
【0033】
すなわち、励起エネルギー2.88eV(波長430nm)を有する励起光が上記蛍光体粒子分散体に照射されると、この励起光が青色の蛍光体粒子100および赤色の蛍光体粒子300のそれぞれに吸収されて、それぞれ、波長480nmの青色の蛍光および610nmの赤色の蛍光を発する。
【0034】
上記のように、青色の蛍光体粒子および赤色の蛍光体粒子において、いずれの蛍光体粒子の半導体シェル層のE2B、E2Rを、いずれの蛍光体粒子の半導体コア粒子に形成される基底準位間のエネルギーEB、ERよりも大きくすることによって、青色の蛍光体粒子からの青色の蛍光が赤色の蛍光体粒子に再吸収されることを抑制することができ、青色および赤色のそれぞれの色度を良好に保つことができる。
【0035】
上記では青色の蛍光体粒子と赤色の蛍光体粒子との関係について説明したが、青色の蛍光体粒子と緑色の蛍光体粒子との関係および緑色の蛍光体粒子と赤色の蛍光体粒子との関係についても同様である。
【0036】
すなわち、基底準位が異なる2以上の上記蛍光体粒子を含む蛍光体粒子分散体において、すべての蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2が、すべての蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEよりも大きくなるように蛍光体粒子を設計することにより、各蛍光体粒子の蛍光の色度が良好で、演色性に優れた蛍光体粒子分散体が得られる。
【0037】
ところで、上記のように複数の蛍光体粒子を分散させた場合の蛍光の光学特性について、以下に説明する。
【0038】
図3(b)には、青色の蛍光体粒子100および赤色の蛍光体粒子300に、それぞれ励起光11が照射され、半導体コア粒子の粒径に応じた基底準位間のエネルギーに基づく蛍光13,33と、励起光13が蛍光体粒子表面によって散乱された散乱光12,32が発生する様子も示されている。
【0039】
このような蛍光体粒子における励起光または他の蛍光体粒子から放射された蛍光に対する蛍光体粒子の散乱状態は、散乱角θ方向の強度をI(θ)とすると
I(θ)=|Σ(2ν+1)/ν(ν+1){aνΠν(cosθ)+bντν(cosθ)}|2
ν=1、∞
で表される。ここでaν、bνは複素振幅を表す係数で、粒子の屈折率およびサイズ因子(粒子サイズ)の関数である。また、Πν、τνは散乱角のみの関数で、ルジャンドルの多項式およびその導関数である。
【0040】
このため、各色を発色する蛍光体粒子の粒径がそれぞれ異なる場合には、励起光や他の蛍光体粒子から放射される蛍光の散乱状態が蛍光体粒子の種類毎に異なってしまう。
【0041】
このとき、蛍光の散乱状態を調整するため、図5で示されるように、蛍光体粒子100,300において半導体シェル層102,302の厚さのみによって調整しようとすると、励起光を吸収する半導体シェル層102、302の体積が異なってしまい、励起光に対する吸収係数がそれぞれの蛍光体粒子で異なるという問題が生じる。
【0042】
この問題をするために、半導体コア粒子に形成される基底準位間のエネルギーEの大きさを調節するためには、半導体シェル層102、302の厚さだけでなく、半導体コア粒子および/または半導体シェル層の構成元素種、組成比の調整が行われる。すなわち、本実施形態においては、蛍光体粒子分散体に含まれるすべての蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2を、すべての蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEより大きくなるように、半導体コア粒子および/または半導体シェル層の構成元素種および/または組成比を調節する。
【0043】
(実施形態3)
本発明の実施形態3による照明装置は、図6を参照して、励起エネルギーが2.88eV(波長430nm)の励起光を発するInx4Ga1-x4N発光ダイオード(0≦x4≦1)のチップ(図示せず)が実装されているリードフレーム601の上部に、2以上の青色の蛍光体粒子、緑色の蛍光体粒子および赤色の蛍光体粒子を媒体としての透明エポキシ樹脂に分散させた蛍光体粒子分散体602が形成された照明装置600である。ここで、上記蛍光体粒子分散体602中に含まれるすべての蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2を、すべての蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEより大きくなるように、すべての蛍光体粒子が設計されているため、各蛍光体粒子の蛍光の混色によって、演色性に優れた白色照明装置となる。なお、上記点状の照明装置をアレイ状に並べることにより面状の照明装置とすることもできる。
【0044】
(実施形態4)
本発明の実施形態4による照明装置は、図7を参照して、図7(a)に示すように、励起エネルギーが2.88eV(波長430nm)の励起光を発振するInx5Ga1-x5N半導体レーザ(0≦x5≦1)のチップ(図示せず)が実装されたステム701が、樹脂707を介して導光体708に光学的に結合されている照明装置700である。
【0045】
ここで、図7(a)および図7(b)を参照して、上記導光体708は、アクリルからなるコア702がこのコアより屈折率の低いフッ素系樹脂からなるクラッド704によって被覆された構造を有する。また、この導光体708の片方の端面にはInx5Ga1-x5N半導体レーザが、他方の端面には導光体内を伝播する励起光を反射するたとえば酸化シリコンからなる反射膜706が形成されている。さらに、上記コア702の一部にはTiO2粒子よりなる散乱体703が設けられており、半導体レーザよりこの導光体708に入射した励起光はこの散乱体703によって周りに拡散される。なお、TiO2粒子からなる上記散乱体を用いる構成に換えて、コア702とクラッド704の界面に凹凸部を設け(図示せず)、この凹凸部を有する界面における乱反射を用いるような構成としてもよい。さらに、上記導光体708の外周に、2以上の青色の蛍光体粒子、緑色の蛍光体粒子および赤色の蛍光体粒子を媒体としての透明エポキシ樹脂に分散させた蛍光体粒子分散体705を形成して本照明装置700の蛍光体層709とする。
【0046】
以上の構成により、演色性に優れた線状の白色蛍光710を発する照明装置が得られる。また、蛍光体粒子分散体中の青色の蛍光体粒子、緑色の蛍光体粒子および/または赤色の蛍光体粒子の混合比を適宜変えることによって白色以外の所望とされる色度を有する照明装置を実現できる。
【0047】
なお、実施形態3または実施形態4に示す点状または線状の照明装置は、一般家庭における照明装置や、更には液晶のバックライトや液晶プロジェクターの光源としての照明に用いることもできる。
【0048】
(実施形態5)
本発明の実施形態5による表示装置は、図8を参照して、Inx5Ga1-x5N半導体レーザ(0≦x5≦1)のチップ(図示せず)が実装されたステム701が導光体811に光学的に結合され、この導光体811が別の導光体801に光学的に結合され、導光体801の上面部には光強度を変調するための光変調素子802を介してそれぞれの色の蛍光体粒子または蛍光粒子分散体を含む素子(具体的には、青色蛍光体粒子含有樹脂803、緑色蛍光体粒子含有樹脂804、赤色蛍光体粒子含有樹脂805)が形成された表示装置800である。
【0049】
ここで、導光体811は、アクリルからなるコア702がこのコアより屈折率の低いフッ素系樹脂からなるクラッド704によって被覆され、このクラッド704は開口部811aを有する金属Al膜からなる反射膜812によって被覆された構造を有する。このコア702の一部にはTiO2粒子からなる散乱体703が形成されている。さらに、この導光体811の一方の端面には、Inx5Ga1-x5N半導体レーザを実装するステム701が配置され、他方の端面には、このInx5Ga1-x5N半導体レーザの光を反射するたとえば酸化シリコンからなる反射膜706が形成されている。かかる構成により、点状光源である半導体レーザから放射される励起光が線状光源に変換される。
【0050】
そして、この導光体811は別の導光体801に光学的に結合されており、この導光体811の開口部811aから放射される線状の励起光がこの導光体801に入射される。さらに、この導光体801の下面(裏面)側には金属Al膜からなる反射膜806が形成されており、線状の励起光はこの導光体801中を伝播しつつ、線状の励起光の一部が反射膜806によって上面方向に放射される。かかる構成により、線状の光源が面状の光源に変換される。
【0051】
この導光体801の上面には、光変調素子802として放射された励起光の光強度を制御するよう偏光板に挟まれたアクティブマトリクス駆動型TFT(薄膜トランジスタ)を含む液晶光変調素子が設けられており、この液晶光変調素子によって光強度が変調される。
【0052】
光変調素子802の上面には、光変調素子上の各画素に対応して、媒体である透明エポキシ樹脂中に各色の蛍光体粒子が分散した蛍光体粒子含有素子(青色蛍光体粒子含有樹脂803、緑色蛍光体粒子含有樹脂804、赤色蛍光体粒子含有樹脂805)が配置されている。このため、光強度が変調された励起光が上記の青色蛍光体粒子含有樹脂803、緑色蛍光体粒子含有樹脂804および赤色蛍光体粒子含有樹脂805に照射されることにより、所望の画像を表示することができる。このようにして、演色性に優れた表示装置が得られる。なお、蛍光体から放射された蛍光の光強度を制御する手段としては、蛍光体より放射される蛍光を光電界吸収効果で吸収するような手段を用いることもできる。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上記のように、本発明は、励起光の吸収効率が高く輝度の高い蛍光体粒子および演色性に優れた蛍光体粒子分散体ならびにこれらを含む照明装置および表示装置に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は本発明の実施形態1による蛍光体粒子の断面模式図である。(b)は本発明の実施形態1による蛍光体粒子のバンド構造図である。
【図2】(a)は従来の蛍光体粒子の断面模式図である。(b)は従来の蛍光体粒子のバンド構造図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態2による蛍光体粒子分散体の立体透視模式図である。(b)は本発明の実施形態2による蛍光体粒子分散体中における2つの蛍光体粒子の拡大断面模式図である。
【図4】本発明の実施形態2による蛍光体粒子分散体中における2つの蛍光体粒子のバンド構造図である。
【図5】蛍光体粒子分散体中における2つの蛍光体粒子について、半導体シェル層の厚さの調節を説明する断面模式図である。
【図6】本発明の実施形態3による照明装置の立体模式図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態4による照明装置の立体模式図である。(b)本発明の実施形態4による照明装置のVII方向からの断面模式図である。
【図8】(a)本発明の実施形態5による表示装置の立体模式図である。(b)本発明の実施形態5による表示装置に用いられる導光体のVIII方向からの断面模色図である。
【符号の説明】
【0056】
11 励起光、12,22,32 散乱光、13,23,33 蛍光、14 電子、15 正孔、100,200,300 蛍光体粒子、101,201,301 半導体コア粒子、101c,102c,201c,202c,301c,302c 伝導帯、101v,102v,201v,202v,301v,302v 価電子帯、102,202,302 半導体シェル層、111c,111v,211c,211v,311c,311v 基底準位、600,700 照明装置、602,705,3000 蛍光体粒子分散体、701 ステム、702 コア、703 散乱体、704 クラッド、706,806,812 反射膜、707 樹脂、708,801,811 導光体、709 蛍光体層、710 白色蛍光、800 表示装置、802 光変調素子、803 青色蛍光体粒子含有樹脂、804 緑色蛍光体粒子含有樹脂、805 赤色蛍光体粒子含有樹脂、811a 開口部、3100 媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起エネルギーEeを有する励起光を受けて蛍光を発する蛍光体粒子であって、
バンドギャップエネルギーE1を有する半導体コア粒子と、前記半導体コア粒子を被覆するバンドギャップエネルギーE2を有する半導体シェル層を含み、
前記半導体コア粒子のE1と、前記半導体シェル層のE2と、前記励起光のEeとの関係が、E1<E2≦Eeであり、
前記半導体シェル層で前記半導体コア粒子を被覆することにより前記半導体コア粒子中にE1とE2との間のエネルギーを有する離散的なエネルギー準位が形成され、前記エネルギー準位における基底準位間のエネルギーEに基づく蛍光を発する蛍光体粒子。
【請求項2】
前記基底準位間のエネルギーが、1.85eV〜2.06eV、2.29eV〜2.48eVまたは2.58eV〜3.02eVのいずれかの範囲にある請求項1に記載の蛍光体粒子。
【請求項3】
前記半導体コア粒子が、Inx1Gay1Al1-x1-y1N(0<x1、0≦y1、x1+y1≦1)、Cdz11Zn1-z11Se(0<z11≦1)およびCdz12Zn1-z12S(0<z12≦1)からなる群から選ばれた1つの半導体からなる請求項1または請求項2に記載の蛍光体粒子。
【請求項4】
前記半導体シェル層が、Inx2Gay2Al1-x2-y2N(0<x2、0<y2、x2+y2≦1)およびCdy21Zn1-y21Se(0≦y21<1)からなる群から選ばれた1つの半導体からなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蛍光体粒子。
【請求項5】
半導体レーザまたは発光ダイオードからなる発光素子からの励起光を受けて発光する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蛍光体粒子。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の蛍光体粒子を2以上含む蛍光体粒子分散体であって、
前記基底準位が異なる2以上の前記蛍光体粒子を含み、すべての前記蛍光体粒子の半導体シェル層のバンドギャップエネルギーE2が、すべての前記蛍光体粒子の半導体コア粒子中に形成される基底準位間のエネルギーEよりも大きいことを特徴とする蛍光体粒子分散体。
【請求項7】
前記2以上の蛍光体粒子が媒体中に分散されている請求項6に記載の蛍光体粒子分散体。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の蛍光体粒子または蛍光体粒子分散体と、発光素子とを含む照明装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の蛍光体粒子または蛍光体粒子分散体と、発光素子と、前記蛍光体粒子または前記蛍光体粒子分散体から発する蛍光および発光素子から発する励起光の少なくとも1つの光の光強度を変調する光強度変調手段を含む表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−83260(P2006−83260A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268203(P2004−268203)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(502284298)
【出願人】(502285309)
【出願人】(303008600)
【出願人】(502307081)
【Fターム(参考)】