説明

蛍光体

【課題】発光素子の発光輝度等の発光特性を十分とし得る蛍光体を提供する。
【解決手段】以下の式(1)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤1)が含有されてなる第1の蛍光物質と、以下の式(2)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤2)が含有されてなる第2の蛍光物質とを含む蛍光体。
mM1O・nM2O・2M32 (1)
(式(1)中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mは0.5以上3.5以下の範囲の値であり、nは0.5以上2.5以下の範囲の値である。)
ZnM4 (2)
(式(2)中のM4はOおよび/またはSである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は励起源を照射することにより発光することから、発光素子に用いられている。発光素子としては、蛍光体の励起源が電子線である電子線励起発光素子(例えば、ブラウン管、フィールドエミッションディスプレイ、表面電界ディスプレイ等)、蛍光体の励起源が紫外線である紫外線励起発光素子(例えば、液晶ディスプレイ用バックライト、3波長型蛍光ランプ、高負荷蛍光ランプ等)、蛍光体の励起源が真空紫外線である真空紫外線励起発光素子(例えば、プラズマディスプレイパネル、希ガスランプ等)、蛍光体の励起源が青色LEDの発する光または紫外LEDの発する光である白色LED等が挙げられる。
【0003】
従来の蛍光体として、特許文献1には、式Ca0.49Sr0.49Eu0.02MgSi26で示される化合物からなる蛍光体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−104445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の蛍光体を発光素子に用いた場合、発光輝度を主とする発光特性において十分ではない場合がある。本発明の目的は、発光素子の発光輝度等の発光特性を十分とし得る蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記の<1>〜<12>の発明を提供するものである。
<1>以下の式(1)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤1)が含有されてなる第1の蛍光物質と、以下の式(2)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤2)が含有されてなる第2の蛍光物質とを含む蛍光体。
mM1O・nM2O・2M32 (1)
(式(1)中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mは0.5以上3.5以下の範囲の値であり、nは0.5以上2.5以下の範囲の値である。)
ZnM4 (2)
(式(2)中のM4はOおよび/またはSである。)
<2>付活剤1が、少なくともEuを含有する前記<1>記載の蛍光体。
<3>付活剤1が、さらにAl、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、Au、Ag、CuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する前記<2>記載の蛍光体。
<4>第1の蛍光物質が、以下の式(11)で表される蛍光物質を含有する前記<2>または<3>記載の蛍光体。
Ca1-a-bSraEubMgSi26 (11)
(式(11)中のaは0.05以上1未満の範囲の値であり、bは0より大きく0.2以下の範囲の値であり、a+bは0.05より大きく1以下の範囲の値である。)
<5>第1の蛍光物質が、以下の式(12)で表される蛍光物質を含有する前記<2>〜<4>のいずれかに記載の蛍光体。
Ca3-c-d-eSrcBadEueMgSi28 (12)
(式(12)中のcは0以上3未満の範囲の値であり、dは0以上3未満の範囲の値であり、eは0より大きく0.2以下の範囲の値であり、c+d+eは0より大きく3以下の範囲の値である。)
<6>付活剤2が、少なくともAu、Ag、CuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する前記<1>〜<5>のいずれかに記載の蛍光体。
<7>付活剤2が、さらにCl、BrおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する前記<6>記載の蛍光体。
<8>M4がSである前記<1>〜<7>のいずれかに記載の蛍光体。
<9>第1の蛍光物質と第2の蛍光物質とを、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が5:95〜95:5となるように含有する前記<1>〜<8>のいずれかに記載の蛍光体。
<10>前記<1>〜<9>のいずれかに記載の蛍光体を有する蛍光体ペースト。
<11>前記<10>記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
<12>前記<1>〜<9>のいずれかに記載の蛍光体を有する発光素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光素子の発光輝度等の発光特性を十分とし得る蛍光体を提供することができ、本発明の蛍光体は、ブラウン管(CRT)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、蛍光表示管(VFD))等の蛍光体の励起源が電子線である電子線励起発光素子に特に好適に使用され得ることから、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明は、以下の式(1)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤1)が含有されてなる第1の蛍光物質と、以下の式(2)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤2)が含有されてなる第2の蛍光物質とを含む蛍光体を提供する。該蛍光体を電子線励起発光素子用として使用すれば、発光輝度等の発光特性を特に十分とし得る。
mM1O・nM2O・2M32 (1)
(式(1)中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mは0.5以上3.5以下の範囲の値であり、nは0.5以上2.5以下の範囲の値である。)
ZnM4 (2)
(式(2)中のM4はOおよび/またはSである。)
【0009】
本発明において、蛍光物質の母体化合物は、付活剤を含有することで、励起源照射により発光する。より具体的には、蛍光物質の母体化合物を構成する元素の一部を、付活剤となる元素で置換することで、励起源照射により発光する蛍光物質となる。付活剤となる元素としては、Eu、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Er、Tm、Yb、Bi、Mnを挙げることができる。
【0010】
発光輝度を高くする意味で、第1の蛍光物質において付活剤1は、少なくともEuを含有することが好ましく、Euは2価のEuイオンの割合が多いことがより好ましい。付活剤1がEuを含有する場合には、さらにAl、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、Au、Ag、CuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有することで発光輝度がより高くなる場合がある。
【0011】
本発明の蛍光体の発光輝度をより高める意味で、第1の蛍光物質は、以下の式(11)および/または以下の式(12)で表される蛍光物質を含有する場合が好ましい。
Ca1-a-bSraEubMgSi26 (11)
(式(11)中のaは0.05以上1未満の範囲の値であり、bは0より大きく0.2以下の範囲の値であり、a+bは0.05より大きく1以下の範囲の値である。)
Ca3-c-d-eSrcBadEueMgSi28 (12)
(式(12)中のcは0以上3未満の範囲の値であり、dは0以上3未満の範囲の値であり、eは0より大きく0.2以下の範囲の値であり、c+d+eは0より大きく3以下の範囲の値である。)
【0012】
上記式(1)で表される化合物において、その構成元素であるM1、M2、M3それぞれの一部を1価の金属元素および/または3価の金属元素で置換されていてもよい。1価、3価の金属元素としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Fe、In、La、Lu、Bi、Sbなどが挙げられる。このように置換されることによって、本発明の蛍光体の発光輝度がより高くなる場合がある。
【0013】
上記の式(11)および/または式(12)で表される蛍光物質において、本発明の効果を阻害しない範囲で、Mgの一部をZn、WおよびMoからなる群より選ばれる1種以上の元素で置換してもよい。この阻害しない範囲としては、通常Mgの10モル%以下程度である。
【0014】
本発明の蛍光体の発光輝度をより高める意味で、第2の蛍光物質において、付活剤2は、少なくともAu、Ag、CuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましい。また、この場合、付活剤2が、さらにCl、BrおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有することで、さらにより発光輝度が高くなる場合がある。
【0015】
また、電子線励起発光素子用においては、式(2)において、M4はSであると、発光輝度が高くなる場合がある。
【0016】
本発明の蛍光体は、さらに、F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有してもよい。これらの元素の含有量としては、これらの元素を含む蛍光体総重量に対して1ppm以上10000ppm以下であり、好ましくは、1ppm以上1000ppm以下である。F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を前記のように含有することで、本発明の蛍光体の輝度がより高くなる場合がある。
【0017】
本発明においては、第1の蛍光物質と第2の蛍光物質とを、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が、5:95〜95:5となるように含有することが好ましく、より好ましくは20:80〜90:10であり、さらにより好ましくは30:70〜85:15である。
【0018】
また、本発明においては、第1の蛍光物質および第2の蛍光物質のうち、いずれかの一方の蛍光物質の平均粒子径がもう一方の蛍光物質の平均粒子径の5倍以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真により測定される値であり、写真に撮影されている一次粒子から任意に50個抽出し、それぞれの粒子径を測定して得られる値の平均値である。
【0019】
本発明の蛍光体は、例えば次のようにして製造される。すなわち本発明の蛍光体は、第1の蛍光物質と第2の蛍光物質とを混合することにより製造することができる。混合する方法としては、攪拌装置を用いる方法、ボールミルを用いる方法、三本ロールミルを用いる方法等、通常工業的に用いられている混合装置を用いる方法を例示することができる。このときの混合は、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。また、このとき本発明の効果を阻害しない範囲において、第1の蛍光物質および第2の蛍光物質以外の蛍光物質を混合してもよい。また、混合後に得られる蛍光体について、大気雰囲気、還元雰囲気中で300℃〜1000℃の温度で10分〜10時間熱処理を行ってもよい。
【0020】
第1の蛍光物質は、焼成により第1の蛍光物質となる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。すなわち、対応する金属元素を含有する化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に得られる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。例えば、好ましい第1の蛍光物質の一つで、該蛍光物質が式(Ba0.5Sr2.492Eu0.008)MgSi28で表される場合は、BaCO3、SrCO3、MgO、SiO2、Eu23の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.5:2.492:1:2:0.008となるように秤量し、それらを混合して得られる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。
【0021】
前記の金属元素を含有する化合物としては、例えば、Ca、Sr、Ba、Mg、Zn、Si、Ge、Eu、Al、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、Au、Ag、CuおよびMnの化合物で、酸化物を用いるか、または水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化して酸化物になりうるものを用いればよい。
【0022】
前記の金属元素を含有する化合物の混合には、例えばボールミル、V型混合機、攪拌機等の通常工業的に用いられている装置を用いることができる。このとき乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。また晶析法により、所定の組成の金属化合物混合物を得てもよい。
【0023】
前記金属化合物混合物を、例えば900℃〜1500℃の温度範囲にて通常は0.5時間以上100時間以下保持して焼成する。金属化合物混合物に水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化して酸化物になりうるものが含有されている場合、焼成の前に、金属化合物混合物を、例えば焼成温度よりも低い温度で保持して仮焼することにより、酸化物としたり、結晶水を除去することも可能である。また、仮焼後に粉砕を行うこともできる。仮焼時の雰囲気は不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気もしくは還元性雰囲気のいずれでもよい。
【0024】
前記焼成時の雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気;空気、酸素、酸素含有窒素、酸素含有アルゴン等の酸化性雰囲気;水素を0.1から10体積%含有する水素含有窒素、水素を0.1から10体積%含有する水素含有アルゴン等の還元性雰囲気が好ましい。強い還元性の雰囲気で焼成する場合には適量の炭素を金属化合物混合物に含有させて焼成してもよい。
【0025】
上記の金属元素を含有する化合物としてフッ化物、塩化物等を用いることにより、生成する第1の蛍光物質の結晶性を高めることおよび/または平均粒径を大きくすることができる。そのためには、フラックスを適量添加してもよい。フラックスとしては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、NH4Cl、NH4I、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2などを挙げることができる。
【0026】
上記により得られる第1の蛍光物質を、例えばボールミルやジェットミル等を用いて粉砕したり、洗浄、分級してもよい。また、焼成を2回以上行ってもよい。また、第1の蛍光物質の粒子表面をSi、Al、Ti等を含有する無機物質で被覆するなどの表面処理をしてもよい。
【0027】
第2の蛍光物質は、焼成により本発明の第2の蛍光物質となる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。すなわち、対応する金属元素を含有する化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に得られる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。
【0028】
例えば、好ましい第2の蛍光物質の一つで、該蛍光物質が式ZnS:Ag,Clで表される場合は、硫化亜鉛とAgを含有する化合物とCl等を含有する化合物とを所定の割合で秤量し、それらを混合して得られる金属化合物混合物を硫化水素雰囲気中で焼成することにより製造することができる。焼成温度は、通常600℃から1200℃の温度範囲であり、焼成時間は通常は0.5時間以上100時間以下である。
【0029】
例えば、好ましい第2の蛍光物質の一つで、該蛍光物質が式ZnO:Znで表される場合は、炭酸亜鉛と硫化亜鉛とを所定の割合で秤量し(例えば、炭酸亜鉛:硫化亜鉛の重量比が95:5)、それらを混合して得られる金属化合物混合物を、2体積%H2含有N2雰囲気中で850℃程度の温度で2時間保持して焼成することにより製造することができる。
【0030】
上記のように、対応する金属元素を含有する化合物で、Znを含有する化合物としては、硫化亜鉛、炭酸亜鉛を用いればよい。Zn以外の元素を含有する化合物としては、例えばAg、Cu、Al、Cl、Brの化合物で、酸化物を用いるか、または水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、アンモニウム塩、酢酸塩などを用いればよい。
【0031】
前記の金属元素を含有する化合物の混合には、例えばボールミル、V型混合機、攪拌機等の通常工業的に用いられている装置を用いることができる。このとき乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。また晶析法により、所定の組成の金属化合物混合物を得てもよい。
【0032】
第1の蛍光物質の製造と同様に、第2の蛍光物質の製造においても、反応を促進するために、フラックスを適量添加してもよいし、ボールミルやジェットミル等を用いて粉砕したり、洗浄、分級してもよい。また、焼成を2回以上行ってもよい。また、第2の蛍光物質の粒子表面をSi、Al、Ti等を含有する無機物質で被覆するなどの表面処理をしてもよい。
【0033】
次に、本発明の蛍光体を有する蛍光体ペーストについて説明する。
本発明の蛍光体ペーストは、本発明の蛍光体および有機物を主成分として含有し、該有機物としては、溶剤、バインダー等が挙げられる。本発明の蛍光体ペーストは、従来の発光素子の製造において使用されている蛍光体ペーストと同様に用いることができ、熱処理することにより蛍光体ペースト中の有機物を揮発、燃焼、分解等により除去し、本発明の蛍光体から実質的になる蛍光体層を得ることができる蛍光体ペーストである。
【0034】
本発明の蛍光体ペーストは、例えば、特開平10−255671号公報に開示されているような公知の方法により製造することができ、例えば、本発明の蛍光体とバインダーと溶剤とを、ボールミルや三本ロール等を用いて混合することにより、得ることができる。
【0035】
前記バインダーとしては、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシアクリレート、フェノキシメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレンアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの単量体のうちの少なくとも1種の重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0036】
前記溶剤としては、例えば1価アルコールのうち高沸点のもの;エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール;アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルアセテート)などが挙げられる。
【0037】
前記のようにして得られた蛍光体ペーストを、基板に塗布後、熱処理して蛍光体層が得られる。基板としては、材質はガラス、樹脂等が挙げられ、フレキシブルなものであってもよく、形状は板状のもの、容器状のものであってもよい。また、塗布の方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。また、熱処理の温度としては、通常、300℃〜600℃である。また、基板に塗布後、熱処理を行う前に、室温〜300℃の温度で乾燥を行ってもよい。
【0038】
本発明の蛍光体を有する発光素子の例として、電子線励起発光素子であるFEDを挙げてその製造方法について説明する。FEDの製造方法としては例えば、特開2002−138279号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体を、それぞれ、例えば、ポリビニルアルコール水溶液などに分散して各蛍光体塗布液を調製する。その塗布液をガラス基板上に塗布し蛍光体層を形成してフェイスプレートとする。そのフェイスプレートと多数の電子放出素子を有するリアプレートとを支持枠を介して組立てると共に、これらの間隙を真空排気しつつ気密封止するなどの工程を経て、FEDを製造することができる。前記赤色発光蛍光体としては、酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu)、硫化イットリウム蛍光体(Y22S:Eu)などが挙げられ、前記緑色発光蛍光体としては、硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu、Au、Al)などが挙げられる。また、前記青色発光蛍光体として、本発明の蛍光体を単独で使用するか、本発明の蛍光体と他の青色発光蛍光体とを混合して使用してもよい。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0040】
発光輝度の測定は蛍光体を真空槽内に設置し、10-6torr下になるまで減圧し、10kVの加速電圧により加速され、1μA/cm2の断面積を有する電子線を照射することで行う。
【0041】
実施例1
第1の蛍光物質として(Ca0.49Sr0.49Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が95:5になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体1を得る。蛍光体1に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0042】
実施例2
第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比を75:25とする以外は実施例1と同様にして、蛍光体2を得る。蛍光体2に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0043】
実施例3
第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比を50:50とする以外は実施例1と同様にして、蛍光体3を得る。蛍光体3に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0044】
実施例4
第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比を25:75とする以外は実施例1と同様にして、蛍光体4を得る。蛍光体4に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0045】
実施例5
第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比を5:95とする以外は実施例1と同様にして、蛍光体5を得る。蛍光体5に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0046】
実施例6
第1の蛍光物質として(Ca0.49Sr0.49Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Ag,Clを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体6を得る。蛍光体6に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0047】
実施例7
第1の蛍光物質として(Ca0.49Sr0.49Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnO:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体7を得る。蛍光体7に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0048】
実施例8
第1の蛍光物質として(Ca0.49Sr0.49Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Ag,Alを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体8を得る。蛍光体8に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0049】
実施例9
第1の蛍光物質として(Ca0.88Sr0.1Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体9を得る。蛍光体9に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0050】
実施例10
第1の蛍光物質として(Ca0.38Sr0.6Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体10を得る。蛍光体10に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0051】
実施例11
第1の蛍光物質として(Sr0.98Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体11を得る。蛍光体11に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0052】
実施例12
第1の蛍光物質として(Ba0.48Sr2.5Eu0.02)MgSi28を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体12を得る。蛍光体12に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0053】
実施例13
第1の蛍光物質として(Ba0.98Ca2Eu0.02)MgSi28を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体13を得る。蛍光体13に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0054】
実施例14
第1の蛍光物質として(Ba0.8134Sr0.8333Ca1.3333Eu0.02)MgSi28を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体14を得る。蛍光体14に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0055】
実施例15
第1の蛍光物質として(Ba0.48Sr2.5Eu0.02)(Mg0.99Mo0.01)Si28を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体15を得る。蛍光体15に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0056】
実施例16
第1の蛍光物質として(Sr1.98Eu0.02)MgSi27を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体16を得る。蛍光体16に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0057】
実施例17
第1の蛍光物質として(Ca1.98Eu0.02)MgSi27を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が75:25になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体17を得る。蛍光体17に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0058】
実施例18
第1の蛍光物質として(Ca0.49Sr0.49Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が95:5になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、乾式で混合を行い、得られる蛍光体を空気中において500℃で30分間保持して熱処理を行って蛍光体18を得る。蛍光体18に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。
【0059】
実施例19
第1の蛍光物質として(Ca0.49Sr0.49Eu0.02)MgSi26を用い、第2の蛍光物質としてZnS:Agを用い、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が95:5になるように第1の蛍光物質および第2の蛍光物質を秤量し、エタノールを用いて湿式で混合を行い、乾燥して蛍光体19を得る。蛍光体19に電子線を照射すると青色の発光を示すことから、当該蛍光体は電子線励起発光素子用として好適に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤1)が含有されてなる第1の蛍光物質と、以下の式(2)で表される化合物を母体として付活剤(付活剤2)が含有されてなる第2の蛍光物質とを含む蛍光体。
mM1O・nM2O・2M32 (1)
(式(1)中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mは0.5以上3.5以下の範囲の値であり、nは0.5以上2.5以下の範囲の値である。)
ZnM4 (2)
(式(2)中のM4はOおよび/またはSである。)
【請求項2】
付活剤1が、少なくともEuを含有する請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
付活剤1が、さらにAl、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、Au、Ag、CuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する請求項2記載の蛍光体。
【請求項4】
第1の蛍光物質が、以下の式(11)で表される蛍光物質を含有する請求項2または3記載の蛍光体。
Ca1-a-bSraEubMgSi26 (11)
(式(11)中のaは0.05以上1未満の範囲の値であり、bは0より大きく0.2以下の範囲の値であり、a+bは0.05より大きく1以下の範囲の値である。)
【請求項5】
第1の蛍光物質が、以下の式(12)で表される蛍光物質を含有する請求項2〜4のいずれかに記載の蛍光体。
Ca3-c-d-eSrcBadEueMgSi28 (12)
(式(12)中のcは0以上3未満の範囲の値であり、dは0以上3未満の範囲の値であり、eは0より大きく0.2以下の範囲の値であり、c+d+eは0より大きく3以下の範囲の値である。)
【請求項6】
付活剤2が、少なくともAu、Ag、CuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項7】
付活剤2が、さらにCl、BrおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する請求項6記載の蛍光体。
【請求項8】
4がSである請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項9】
第1の蛍光物質と第2の蛍光物質とを、第1の蛍光物質:第2の蛍光物質の重量比が、5:95〜95:5となるように含有する請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体を有する蛍光体ペースト。
【請求項11】
請求項10記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体を有する発光素子。

【公開番号】特開2008−38051(P2008−38051A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215472(P2006−215472)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】