説明

蛍光分析方法,蛍光分析装置及び画像検出方法

【課題】本発明は、基板上に捕捉するDNA断片の分子からの蛍光像を2次元センサにて蛍光検出する際、少ない画素数で、効率よく検出する方法を提供することにある。また、基板上に捕捉するDNA断片の分子からの蛍光像を2次元センサにて蛍光検出する際、安価に、または操作性の良い検出方法を提供することにある。
【解決手段】オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、該基板のオリゴヌクレオチドが固定される領域が複数設けられ、それらが基板上に、縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置され、集光・結像光学系の結像倍率をM、2次元センサの画素の間隔をddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
であるようにして蛍光像を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検出方法に関する。例えば、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを平板状の複数の位置に捕捉し、その蛍光パターンを蛍光検出する方法または装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DNA,RNA,蛋白質等の分析技術は遺伝子解析や遺伝子診断を含む医学,生物学などの分野で重要である。特に最近では、DNAマイクロアレイ(またはオリゴチップ,DNAチップ,バイオチップなど種々の名称で呼ばれるが、以下では、まとめてDNAマイクロアレイとする)を使い、1つの検体から多種のDNA配列情報,遺伝子情報を同時に検査分析する方法及び装置が注目されている。DNAマイクロアレイは、ガラス等の基板を使用し、これを複数(数100〜数千万個)の領域に分けて、各々に目的の(通常、種類の異なる)DNAプローブを固定化し、各々を微小な反応領域にしたものである。これと検体とを反応させることで、検体中の目的DNAが前記固定化されたDNAプローブとハイブリダイズして捕捉され、さらに蛍光プローブなどを結合させることで、結合状態(位置すなわちハイブリダイズした配列)とその量を蛍光強度等で測定する事が可能になり、遺伝子診断,シーケンス等に利用することができる。
【0003】
このDNAマイクロアレイの蛍光強度の読み取りは、通常スキャナーと呼ばれる顕微鏡(共焦点蛍光顕微鏡)に類似する装置が使用される(たとえば特許文献1,2)。この装置は、アレイ上にレーザ光などの励起光を1個の微小スポットにして照射し、生じる蛍光を干渉フィルタなどの分光素子を使って励起光と分離し、蛍光強度を光電子増倍管などの光検出器にて検出する。その際、ガルバノミラーなどを使ってアレイ上に形成される微小スポットを2次元的に走査したり、または、微小スポットの位置を固定し、アレイを2次元的に走査したりすることで、アレイ全体の蛍光強度分布、つまりは各DNAプローブに対する結合の度合を知ることができる。DNAマイクロアレイの蛍光強度の読み取り法として、上記のようなビームスキャン以外に、アレイの領域に励起光を広く照射し、生じる蛍光像を2次元カメラにて検出する方法(たとえば特許文献3,4)もある。これらの方法では、DNAプローブを固定化した複数の領域を蛍光検出するに当たり、領域を数十分割して計測しており、また領域間もそれ以上に分割して計測している。これにより、複数の反応領域の位置がずれても分離して検出することができる。しかし、測定すべき領域数に比べ、2次元センサの必要な画素数は数100倍以上要することになる。
【0004】
また、DNA,RNAの塩基配列決定法も重要な技術である。通常は、予め配列決定用のDNA断片又は断片群に蛍光標識した試料を調製し、電気泳動した後又は電気泳動中に分子量分離展開パターンを計測し解析する。具体的には、電気泳動分離に先立ち、周知のサンガー法によるジデオキシ反応を実行する。分析すべき試料DNAの既知の塩基配列部分と相補的な約20塩基長のオリゴヌクレオチドを合成し蛍光体を標識する。このオリゴヌクレオチドをプライマーとし、約1ピコモルの試料DNAと相補鎖結合させて、ポリメラーゼにより相補鎖伸長反応を実行する。このとき基質として、4種のデオキシヌクレオチド3リン酸、即ち、dATP,dCTP,dGTP,dTTP、及びこれらに加えて例えば、ddATPを加える。ddATPが相補鎖伸長で取り込まれると、それ以上相補鎖が伸長しないため、アデニン(A)で終結する様々な長さの断片が調製される。上記反応でddATPの代わりに、ddCTP,ddGTP,ddTTPを各々加えた反応を行う。但し、各反応で用いるプライマーは、塩基配列は同じであるが、蛍光を分光して互いに識別できる4種の蛍光体で標識する。以上の4種の反応物を混合すると、試料DNAに相補的な数100塩基長までの1塩基ずつ長さが異なる断片が、末端の塩基種に応じて異なる4種の蛍光体で標識されて得られる。これをキャピラリーゲル電気泳動により1塩基の分解能で分離する。試料は分離されながら泳動し、短いものから順にレーザ照射される。発光蛍光を複数のフィルタを用いて分光しながら計測すると、4種の蛍光体の蛍光強度の時間変化から、全ての断片の末端塩基種を短い断片から順に決定できるというものである。
【0005】
近年、非特許文献1にあるように、基板にDNAなどを固定してその塩基配列を決定することが提案されている。基板表面にランダムに分析すべき試料DNA断片を1分子ずつ捕捉し、ほぼ1塩基ずつ伸長させて、その結果を蛍光計測より検出することにより塩基配列を決定するものである。具体的には、DNAポリメラーゼの基質として鋳型DNAに取り込まれてDNA鎖伸長反応を保護基の存在により停止することができかつ検出され得る標識を持つ4種のdNTPの誘導体(MdNTP)を用いてDNAポリメラーゼ反応を行わせる工程、次いで取り込まれたMdNTPを蛍光等で検出する工程、及びMdNTPを伸長可能な状態に戻す工程を1サイクルとし、それを繰り返すことにより試料DNAの塩基配列を決定する。本技術では、DNA断片を1分子ずつ配列決定することができるため、同時に数多くの断片を解析することができ、解析スループットを大きくすることができる。また、本方式では、単一DNA分子毎に塩基配列が決定できる可能性があるため、従来技術の問題であったクローニングやPCR等での試料DNAを精製,増幅が不要にできる可能性があり、ゲノム解析や遺伝子診断の迅速化が期待できる。なお、本方法では、分析すべき試料DNA断片分子が基板面にランダムに固定されるため、捕捉されたDNA断片分子数に対して数100倍の画素数を有する高価なカメラが必要となる。つまり、DNA断片分子同士の間隔が平均1ミクロンになるように調整した場合、より大きな間隔同士の分子もいれば、より近接した間隔の分子同士も存在し、これらを互いに分離して検出するには、基板面に換算して、より細かな間隔で蛍光像を検出する必要がある。通常、数10分の1の間隔で計測する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−503308号公報
【特許文献2】特開2000−69998号公報
【特許文献3】特開2002−181708号公報
【特許文献4】特開2001−255328号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.100(7), pp3960, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の光学系においては、基板上に捕捉する領域数つまり、DNA断片の分子数に対して、数100倍以上の画素数が必要であり、検出速度の低下、高価な2次元センサが必要になるという問題点があった。さらに、また、より高解像度で蛍光像を検出しなければならないため、開口数NAの大きな集光レンズを使う必要があり、高価な系になるという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、少ない画素数で効率よく画像を検出する方法に関する。例えば、基板上に捕捉するDNA断片の分子からの蛍光像を2次元センサにて蛍光検出する際、少ない画素数で、効率よく検出する方法を提供することに関する。また、例えば基板上に捕捉するDNA断片の分子からの蛍光像を2次元センサにて蛍光検出する際、安価に、または操作性の良い検出方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、例えば本発明は、複数の測定対象物を精密配置し、複数の検出画素を備えた検出器の特定画素に各測定対象物をそれぞれ結像させることに関する。オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、該基板のオリゴヌクレオチドが固定される領域が複数設けられ、それらが基板上に、縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置され、集光・結像光学系の結像倍率をM、2次元センサの画素の間隔をddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
であるようにして蛍光像を検出することに関する。
【0011】
または、例えばオリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、該基板のオリゴヌクレオチドが固定される領域は複数設けられ、それらが基板上に、縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置され、該領域には単一分子のオリゴヌクレオチドが固定され、集光・結像光学系の結像倍率がM、2次元センサの画素の間隔がddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
であるようにして蛍光像を検出する。
【0012】
より好ましくは、上記関係式で、
dd=ds×M/n (n=2,3)
であるように調整して蛍光像を検出することに関する。
【0013】
好ましくは、オリゴヌクレオチドが固定される領域の間隔dsは、100nmから10000nmであり、より好ましくは、500nmから1500nmにする。
【0014】
好ましくは、オリゴヌクレオチドが固定される領域の大きさは100nm径以下にする。
【0015】
また、好ましくは、上記基板の表面は、複数設けられるオリゴヌクレオチドが固定される領域を除く基板上の反応領域には、光学的な遮光機能を有する膜状物質を施すことがより有効であり、金属膜などを蒸着などによって形成させる。
【0016】
また、好ましくは、dd=ds×M/nとなるように、結像倍率Mを調整する機構部を有し、また該基板には、位置決め用のマーカが少なくとも2箇所にあり、位置決め用のマーカを検出し、結像倍率Mを自動で調整する機能部を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、例えば、測定すべきオリゴヌクレオチドが固定される領域に対して、必要な2次元センサの画素数は、測定精度を損なわずに、従来の数100倍から、30倍以下、さらには、10倍以下と少なくすることができ、効率よく検出することができる。そのため、同じ2次元センサを使う場合、一時により多くの領域からの蛍光像を得ることができ、高スループットが達成できる。また、少ない画素数のカメラを使う場合には、より、安価に測定できることになる。
【0018】
また、本発明により、例えば、測定対象分子数が同じ場合、少ない画素数で、効率よく検出でき、2次元センサの価格を安価することができるようになる。また、光学分解能をオリゴヌクレオチドが固定される領域同士の間隔程度にすることができるため、大きな開口数の集光レンズを使う必要が無くなり、安価なレンズを使用することができ、液浸レンズも使う必要が無いので、操作性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における、蛍光分析方法を使ったDNA検査装置の構成図である。
【図2】実施例1における、基板の構造説明図である。
【図3】実施例1における、基板と2次元センサの結像対応説明図である。
【図4】実施例1における、効果の説明図である。
【図5】実施例2における、基板の構造説明図である。
【図6】実施例3における、基板の構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態例により説明するが、本発明は本例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
基板表面に分析すべき試料DNA断片を1分子ずつ均等間隔で捕捉し、ほぼ1塩基ずつ伸長させて、取り込まれた蛍光標識を1分子ごと検出して塩基配列を決定する装置、方法について説明する。具体的には、DNAポリメラーゼの基質として鋳型DNAに取り込まれてDNA鎖伸長反応を保護基の存在により停止することができかつ検出され得る標識を持つ4種のdNTPの誘導体を用いてDNAポリメラーゼ反応を行わせる工程、次いで取り込まれたdNTP誘導体を蛍光等で検出する工程、及びdNTP誘導体を伸長可能な状態に戻す工程を1サイクルとし、それを繰り返すことにより試料DNAの塩基配列を決定する。なお、本操作は単分子蛍光検出法に基づくため、測定はHEPAフィルタを介したクリーンルーム様の環境にて行う。
【0022】
図1は、本発明の蛍光分析方法を使ったDNA検査装置の構成図である。装置は正立型の顕微鏡に類似する装置の構成であり、基板8に捕捉するDNA分子の伸長状態を蛍光検出にて測定する。なお倒立型の顕微鏡に類似する装置の構成にすることも可能である。
【0023】
基板8は、図2に示すような構造をしている。基板8は透明材質でできており、材質としては合成石英などが使用できる。基板8には反応領域8aがあり、この部分に試薬などが接触する。反応領域8a内にDNAが固定される領域8ijが複数形成されている。領域8ijの個々の大きさは直径100nm以下である。この領域にはDNAを捕捉するための表面処理を施す。その表面処理は、例えば、ストレプトアビジンを結合させておき、ビオチンしたDNA断片を反応させることで、捕捉する。また、ポリTのオリゴヌクレオチドを固定化しておき、DNA断片の一端をポリA化処理して、ハイブリ反応にて捕捉することもできる。この際、DNA断片濃度を適当に調製することで、個々の領域8ijに単一分子のDNAのみが入るようにすることができる。なお、領域8ijをより小さくしていくことで、領域内に捕捉できる分子が1個になるようにすることも可能である。以後このような状態の基板を計測する。なお、領域8ij同士の間隔dsは1ミクロンとした。このような、均等間隔の基板の作成法は、例えば、特開2002−214142号公報に記載の手法などで、作成する。なお、dsは領域8ijの個々の大きさより大きく、1500nm程度以下が好ましい。基板の反応領域8aは1mm×1mmの大きさで、領域8ijの位置は1000×1000=1000000個である。
【0024】
dNTPの蛍光標識としてCy3を用いる。蛍光体はCy3にかぎるものではなく、ほかの種々の蛍光体を使用することが可能である。また、異なる蛍光体で標識された4種のdNTPを使うことも可能であるが、本例では1蛍光体での測定を行う。蛍光励起用のレーザ装置1(YAGレーザ,532nm)からのレーザ光1aをλ/4波長板3を通して円偏光とし、ミラー5,ダイクロイックミラー6,ミラー5を介して全反射照明用の石英製プリズム7に入射し、DNA分子を均等間隔に捕捉した基板8の裏側から照射する。石英製プリズム7と基板8は無蛍光グリセリンを介して接触させており、レーザ光はその界面で反射することなく、基板8に導入される。基板内でのレーザ光の入射角は約66度〜68度で基板8表面で全反射し、エバネッセント照明となる。これにより、高いS/Nで蛍光測定が可能になる。レーザの照射領域は約2mm径とした。
【0025】
なお、基板の近傍には、温調器が配置されているが、図では省略した。また、通常観察のため、プリズム下部よりハロゲン照明ができる構造としているが、図ではこれを省略している。
【0026】
また、レーザ1とは別にレーザ装置2(YAGレーザ,355nm)を配置し、レーザ光1aと同軸にして照射できるようにした。本レーザは、取り込まれたdNTP誘導体の蛍光検出後、dNTP誘導体を伸長可能な状態に戻す工程に使用するものである。
【0027】
基板8の上部には、試薬などをながし、反応させるためのフローチャンバ9が構成されている。チャンバには試薬導入口12があり、分注ノズル26を有する分注ユニット25,試薬保管ユニット27,チップボックス28により、目的の試薬液の注入などを行う。
試薬保管ユニット27には、試料液容器27a,4種のdNTP誘導体溶液容器27b,27c,27d,27e及び洗浄液容器27f等が用意される。チップボックス28内の分注チップを分注ノズル26に取り付け、適当な試薬液を吸引し、チャンバ導入口から基板の反応領域に導入し、反応させる。廃液は廃液チューブ10を介して廃液容器11に排出される。これらは制御PC21により自動的に行われる。
【0028】
フローチャンバは光軸方向に透明材で形成され、蛍光検出される。蛍光13は、自動ピントあわせ装置29で制御される集光レンズ(対物レンズ)14で集められ、フィルタユニット15で必要な波長の蛍光を取り出し、自動ズーム機構部17,結像レンズ18で、2次元センサカメラ19(高感度冷却CCDカメラ)で蛍光像を検出する。カメラの露光時間の設定,蛍光画像の取り込みのタイミングなどの制御は、2次元センサカメラコントローラ20を介して制御PC21が行う。4種のdNTPを使う場合は、フィルタユニット15で該当する4種の蛍光体用のフィルタを時分割で切り替えて蛍光像を検出することなどで対応できる。
【0029】
なお、装置は、調整などのため、透過光観察用鏡筒16とTVカメラ23とモニタ24を備えており、ハロゲン照明などで基板8の状態をリアルタイムで観察できるようになっている。
【0030】
図2にあるように、基板8には位置きめマーカ30,31が刻印されている。マーカ30,31は領域8ijの並びと平行に配置され、その間隔が規定されている。そこで、透過照明での観測でマーカを検出することで、領域8ijの位置を計算することができ、自動ズーム機構部17を制御して指定の倍率になるようにする。本例の場合は、画素間隔(画素サイズ)ddが7.4ミクロンの2次元センサカメラ19(高感度冷却CCDカメラ)を使用している。結像系の倍率Mを14.8倍に設定することで、基板8上の領域8ij同士の間隔を2分割して計測する。
【0031】
本実施例で使用する2次元センサカメラとして、CCDエリアセンサを使用した。画素サイズが7.4×7.4ミクロンで、画素数2048×2048画素の冷却CCDカメラを使用する。基板の反応領域8aの大きさが1mm×1mmの大きさで、その中に1ミクロン間
隔で1000×1000個の領域8ijがあり、上記2048×2048画素の冷却CCDカメラで計測するため、結像系の倍率Mを14.8倍に設定し、反応領域換算でカメラ1画素は0.5×0.5ミクロンに対応させる。なお、2次元センサカメラとしては、CCDエリアセンサの他、C−MOSエリアセンサなどの撮像カメラなどを一般に使うことができる。CCDエリアセンサにも、構造によって、背面照射型,正面照射型があり、どちらも使用できる。また、素子内部に信号の増倍機能を有する電子増倍型CCDカメラなども高感度化を図る上で有効である。また、センサは冷却型が望ましく、−20℃程度以下にすることで、センサの持つダークノイズを低減出来、測定の精度を高めることができる。
【0032】
本例では、反応領域8aからの蛍光像を一度に検出するが、分割することもできる。反応領域8aの大きさをより広くして、例えば5mm×5mmにすると、一度の画像計測ではすべての領域をカバーできないので、1mm×1mm毎に分割して計測して複数の画像を再構成して全体の蛍光像を測定することになる。この場合、基板の位置を移動させるためのX−Y移動機構部をステージ下部に配置し、制御PCで照射位置への移動,光照射,蛍光像検出を制御する。本例ではX−Y移動機構部は図示していない。
【0033】
種々のカメラが使用できるが、画素サイズが6.45×6.45ミクロンで画素数1392×1040画素の冷却CCDカメラなら結像系の倍率は12.9倍を、画素サイズが9×9ミクロンで画素数4008×2672画素のカメラなら結像系の倍率は18倍を、画素サイズが16×16ミクロンで画素数512×512画素のカメラなら結像系の倍率は32倍に調整して測定する。
【0034】
図3に本例での基板と2次元センサの結像対応説明図を示す。基板8上にDNA一分子40(40a,40b,40c)が間隔1ミクロンで碁盤の目状に捕捉されるものと考える。実際は必ずしもすべての位置にDNA分子が捕捉されるとは限らないが、その場合でも同じ効果が得られるので、本状態で説明する。レンズ41を介して2次元センサカメラ(高感度冷却CCDカメラ)の画素42上に結像させる。図では簡単のため、結像倍率を1倍、2次元センサカメラの画素間隔を1/14.8倍にして表示した(基板上の寸法で規格化した)。DNA一分子40a,40b,40cが画素42f,42d,42bに対応し、1画素おきに蛍光検出できることになる。この結果、レンズ収差,結像ボケなどによるDNA一分子40a,40b,40c同士の蛍光の重なりの影響が少なく、また、DNA一分子の捕捉される位置が+−10%程度ずれても蛍光測定への影響が少なく、安定な計測を行うことができる。
【0035】
図6に、効果の説明図を示した。従来のようにDNA分子をランダムに捕捉する場合、捕捉間隔の平均が1ミクロンであっても、確率的に極近傍に捕捉される分子もあれば、離れている分子もある。これらすべてを互いに分離して検出するにはより細かな分解能で蛍光像を検出する必要があるが、光の回折限界による制約、有限な画素数などのため、通常0.1ミクロン相当が普通である。この場合でも捕捉されるDNA1分子を個別に100%検出することはできず10%程度は別のDNA分子と重なりを持ってしまう可能性がある。また1DNA分子を検出するのに、カメラ上で平均100画素必要であり、無駄がおおい。それに対して、DNA1分子を均等間隔で配置する場合、本例のように2分割つまり0.5ミクロンの解像度で計測すると、1DNA分子を検出するのに、カメラ上で平均4画素で十分であり、効率よい測定ができる。これは同時計測分子数を25倍多くできることを意味し、測定の高スループット化が実現できる。または、同じ反応領域を測定する場合、画素数を少なくすることができ、CCDのコストを少なくすることができる。
【0036】
また、本実施例の場合、集光レンズに必要なNAは0.67程度となり、ドライ系のレンズの使用が可能になり、操作性がよくなるという効果もある。
【0037】
上記では、DNA1分子の配置間隔を2分割で測定した場合について説明したが、3分割でも同様の効果を得ることができる。さらには、1から5分割程度でほぼ同様の効果を得ることができる。
【0038】
以下、実際の計測手順に従って配列決定法を説明する。モデル試料としてM13−DNA断片を使用した。末端を定法に従い、M13−DNA断片の末端をビオチン化する。ビオチン化DNA溶液を図1の試料液容器27aに、Cy3で標識されたケージドdATP,ケージドdCTP,ケージドdGTP,ケージドdTTP溶液(ポリメラーゼ含む)を容器27b,27c,27d,27eに保持する。なお、Cy3で標識されたケージドdNTPはヌクレオチドに2−ニトロベンジル基を結合したケージド化合物であり、ポリメラーゼにより、相補鎖として取り込まれるが、相補鎖合成反応で連続的に取り込まれる活性が抑えられている。そのため、1塩基分伸長して反応がとまるが、ついで、360nm以下の紫外線を照射すると、ケージド物質(2−ニトロベンジル基)が遊離し、ヌクレオチド本来の活性が生じ、次のdNTPの合成を起こすことができる。
【0039】
分注ユニット25により、フローチャンバ内にテンプレートとなるビオチン化DNAを導入し、基板と反応させる。洗浄後、オリゴプライマーを導入してビオチン化DNAにプライマーをハイブリさせる。これにより相補鎖伸長反応を行う。まず洗浄後、Cy3標識ケージドdATP溶液を導入する。プライマー結合位置の次のテンプレートの塩基がTのときにCy3標識ケージドdATPが取り込まれる。洗浄した後、レーザ光1a(YAGレーザ,532nm)を照射し、2次元センサカメラにて、蛍光測定を行う。蛍光の有無により、Cy3標識ケージドdATPの取り込みが判断できる。ついで、洗浄の後、レーザ光2a(YAGレーザ,355nm)を照射し、dATPの活性を戻す。この手順をCy3標識ケージドdCTP,ケージドdGTP,ケージドdTTP溶液について行い、これを1サイクルとして、複数サイクル行うことで、塩基配列が決定できる。
【0040】
DNAポリメラーゼの基質として鋳型DNAに取り込まれてDNA鎖伸長反応を保護基の存在により停止することができかつ検出され得る標識を持つ4種のdNTPの誘導体であり、なんらかの手段により該dNTP誘導体を伸長可能な状態に戻すことのできる試薬として本例では、蛍光標識ケージドdNTPを使用したが、蛍光体とヌクレオチドをジスルフィド結合により結合したdNTPの誘導体などでも同様に実施できる。この場合、蛍光体の存在で、伸長が停止し、Tris[2−carboxyethyl]phosphine試薬などでジスルフィド結合を化学的に解離させて伸長可能な状態に戻すことが可能である。
【実施例2】
【0041】
実施例1では、領域8ijの個々に単一分子のDNAが入る構成であるが、図5のように、基板50にDNA分子群51同士が均一の間隔を有して配置する場合も同様に実現できる。
【実施例3】
【0042】
反応基板の別の実施例を示す。本実施例での基板60の構造を図6に示す。基板60は、反応領域60aを有し、その内部にDNAが固定される領域60ijが複数形成されており、さらに複数の60ijの周りを光学的に不透明なマスク60bで覆う構造とする。
マスク材料としては、アルミニウム,クロムなどの金属,炭化シリコンなどが適用でき、蒸着などで、薄膜化する。領域60ijの個々の大きさは直径100nm以下であり、この開口をマスク60bのなかに作成する方法としては、プロジェクション法での蒸着(蒸着源と基板との間に適当なマスクを配置して蒸着する),電子ビームリソグラフィー,フォトリソグラフィーによる直接描画によって作成できる。
【0043】
本例によっても、上記実施例1と同様の効果が得られる。また、反応領域60ij以外はマスクされているため、不要な迷光,蛍光が低減でき、より高感度に測定することができるようになる。
【符号の説明】
【0044】
1…レーザ装置(YAGレーザ,532nm)、1a…レーザ光1、2…レーザ装置(YAGレーザ,355nm)、2a…レーザ光、3,4…λ/4波長板、5…ミラー、6…ダイクロイックミラー、7…石英製プリズム、8,50,60…基板、8a…反応領域、8ij…DNAが固定される領域、9…フローチャンバ、10…廃液チューブ、11…廃液容器、12…試薬導入口、13…蛍光、14…集光レンズ(対物レンズ)、15…フィルタユニット、16…透過光観察用鏡筒、17…自動ズーム機構部、18…結像レンズ、19…2次元センサカメラ(高感度冷却CCDカメラ)、20…2次元センサカメラコントローラ、21…制御PC、22,24…モニタ、23…TVカメラ、25…分注ユニット、26…分注ノズル、27…試薬保管ユニット、27a…試料液容器、27b,27c,27d,27e…4種のdNTP誘導体溶液容器、27f…洗浄液容器、28…チップボックス、29…自動ピントあわせ装置、30,31…位置きめマーカ、40,40a,40b,40c…DNA一分子、41…レンズ、42…2次元センサカメラの画素、51…DNA分子群、60a…反応領域、60b…マスク、60ij…DNAが固定される領域、61,62,63…位置きめマーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、該基板のオリゴヌクレオチドが固定される領域は複数設けられ、それらが基板上に、縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置され、集光・結像光学系の結像倍率がM、2次元センサの画素の間隔がddとしたとき、 dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、該基板のオリゴヌクレオチドが固定される領域は複数設けられ、それらが基板上に、縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置され、該領域には単一分子のオリゴヌクレオチドが固定され、集光・結像光学系の結像倍率がM、2次元センサの画素の間隔がddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか記載の蛍光分析方法において、
dd=ds×M/n (n=2,3)
であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の蛍光分析方法において、オリゴヌクレオチドが固定される領域の間隔dsは、100nmから10000nmであることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の蛍光分析方法において、オリゴヌクレオチドが固定される領域の大きさは100nm径以下であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項6】
請求項1または2のいずれか記載の蛍光分析方法において、複数設けられるオリゴヌクレオチドが固定される領域を除く基板上の反応領域には、光学的な遮光機能を有する膜状物質が施されていることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項7】
請求項6記載の蛍光分析方法において、膜状物質は金属膜であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項8】
請求項1または2のいずれか記載の蛍光分析方法において、該基板には、位置決め用のマーカが少なくとも2箇所にあることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか記載の蛍光分析方法において、dd=ds×M/nとなるように、結像倍率Mを調整する手段を有することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項10】
請求項9記載の蛍光分析方法において、該ズーム機能は、位置決め用のマーカの検出に基づき、自動で行う手段を有することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する装置であって、オリゴヌクレオチドが固定される複数領域が縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置されている基板と、蛍光励起用の照射光源と照射光学系,蛍光集光結像光学系,2次元センサを具備し、集光・結像光学系の結像倍率がM、2次元センサの画素の間隔がddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
となるように構成されたことを特徴とする蛍光分析装置。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する装置であって、オリゴヌクレオチドが固定される複数領域が縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置されている基板と、蛍光励起用の照射光源と照射光学系,蛍光集光結像光学系,2次元センサを具備し、集光・結像光学系の結像倍率がM、2次元センサの画素の間隔がddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=2,3:整数)
となるように構成されたことを特徴とする蛍光分析装置。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドが固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光・結像し、2次元センサにて蛍光検出する装置であって、オリゴヌクレオチドが固定される複数領域が縦横にほぼ等間隔(間隔ds)で配置されている基板と、蛍光励起用の照射光源と照射光学系,蛍光集光結像光学系,2次元センサを具備し、集光・結像光学系の結像倍率がM、2次元センサの画素の間隔がddとしたとき、
dd=ds×M/n (n=1,2,3,4,5:整数)
となるように結像倍率を自動調整する機構部を有することを特徴とする蛍光分析装置。
【請求項14】
所定位置に配置された複数の検出対象物を複数の検出画素を備えた検出器により検出する画像検出方法であって、
検出器の特定画素に各検出対象物をそれぞれ結像させることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−180740(P2009−180740A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114116(P2009−114116)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2006−150883(P2006−150883)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】