説明

蛍光性着色剤およびその使用

【課題】黒色による吸光度を超える高い蛍光性を有し、堅牢性を含めた諸性質に優れ、紫外線により読み取り可能な記録ができる蛍光性着色剤を提供すること。
【解決手段】有彩色蛍光顔料、非蛍光性有彩色顔料および樹脂を含み、色相が黒色であることを特徴とする蛍光性着色剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色の蛍光性着色剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、黒色ないし灰色の顔料記録剤で記録された記録情報を紫外線により読み取り、判別および測定することは不可能とされていた。このような読み取りを可能にする方法として、上記記録剤に蛍光染料を混合する方法が考えられる。
【0003】
上記方法において、黒色ないし灰色の記録剤に蛍光染料を混合したものは、蛍光色素の混合量が少ないと、紫外線照射を行っても蛍光染料から発光する蛍光が黒色色素に吸収されて、蛍光発光が検出できない。また、蛍光染料を多く混合しても、蛍光色素の濃度消光という現象が起こるため、併用している顔料の吸光性を超えて蛍光を発光させることができなかった。さらには蛍光染料は一般的に耐光性が低いことから十分に信頼性のある記録を行える記録剤を構成することが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、黒色による吸光度を超える高い蛍光性を有し、堅牢性を含めた諸性質に優れ、紫外線により読み取り可能な記録ができる蛍光性着色剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点は以下の本発明により解決される。すなわち、本発明は、有彩色蛍光顔料、非蛍光性有彩色顔料および樹脂を含み、色相が黒色であることを特徴とする蛍光性着色剤を提供する。上記有彩色蛍光顔料の一例としては、下記一般式(1)で表される有彩色の蛍光顔料が挙げられる。本発明でいう黒色とは灰色も含む。

ただし、アゾ系など他の構造を持つ有彩色蛍光顔料や蛍光染料を体質顔料に染め付けたタイプの色素でも差し支えない。
【0006】
上記本発明においては、有彩色蛍光顔料の粒径が、0.03〜10.0μmであること;有彩色蛍光顔料(A)と非蛍光性有彩色顔料(B)との配合質量割合が1:1ないし50:1であること;樹脂が、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリマレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、多官能性不飽和結合含有オリゴマー(紫外線・電子線硬化性モノマー)から選ばれる樹脂および/またはオリゴマーであることが好ましい。
【0007】
上記本発明の着色剤は、文具用着色剤、塗料用着色剤、印刷インキ用着色剤、熱転写用着色剤、電子写真用着色剤、インクジェットインキ用着色剤または捺染剤用着色剤として有用である。また、上記蛍光性着色剤を用いて、コーティング方式、印刷方式、インクジェット方式、熱転写方式または電子写真方式より情報を記録することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、従来の蛍光染料の欠陥を解決し、顔料の如く結晶性の微粒子でありながら、色相が鮮明で強い蛍光を発し、かつ色素としての着色力があり、隠蔽性も十分高い前記一般式(1)の如き有彩色蛍光顔料を、非蛍光性有彩色顔料、例えば、銅フタロシアニンなどの青色、銅フタロシアニングリーンなどの緑色、或いはジオキサジンバイオレットなどで代表される紫色顔料と混合することにより黒色に調色した場合、非蛍光性有彩色顔料の光吸収性に打ち勝って蛍光色を発光することを見出した。
【0009】
従来の染料系の蛍光色素は、濃度消光を起こすため、高濃度で使用することができなかった。また、従来の染料系の蛍光色素は一般に耐光性が弱いため長時間光に曝されると蛍光強度が弱くなり、記録に対する信頼性に乏しい。また、従来の染料系の蛍光色素は耐溶剤性が不十分であるため、記録媒体が溶剤に汚染されると記録が損なわれた。これに対し本発明による黒色の蛍光性着色剤は、黒色系でありながら紫外線のもとで蛍光を発光することが可能であるうえ、耐光性が強いため、情報記録剤としての信頼性を十分備えている。
【0010】
また、本発明の着色剤による記録物を電子写真複写した場合、可視光のもとでは複写元と複写物の判別は困難であるが、紫外線のもとでは複写元は強い蛍光の発光があり、複写物は蛍光の発光がないため両者の判別を容易に行うことが可能となる。
【0011】
さらに、本発明で使用する蛍光顔料は、通常の顔料と同様の隠蔽性があり、該蛍光顔料を含む着色剤は、耐水性および耐溶剤性に優れ、耐光性も非常に強いため屋外でも十分使用に耐え得るものである。また、バインダー樹脂の選択により着色物に耐洗濯性を持たせることも可能であり、紙などへの印刷のみならず、繊維などに記録することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に好ましい実施態様を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明で使用し、主として本発明を特徴づける1成分である有彩色蛍光顔料の一例としては、一般式(1)で表されるピラジン系蛍光顔料が挙げられる。

ただし、アゾ系など他の構造を持つ有彩色蛍光顔料や蛍光染料を体質顔料に染め付けたタイプの色素でも差し支えない。
【0013】
本発明で使用される上記一般式(1)で表される有彩色蛍光顔料は、特開平5−32640号公報や特開平11−138974号公報に記載の2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノ−ピラジンを基本骨格とする化合物であり、それらの結晶変態も含まれる。アミノ基に種々の置換基を導入することにより、その色相をレモンイエロー、イエロー、オレンジ或いはレッドにすることが可能である。
【0014】
上記一般式(1)中の置換基R1〜R4における炭素数が1〜6のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基などが挙げられ、また、炭素数が2〜6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、2−プロペニル基、アリル基、クロチル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ブラジエニル基などが挙げられる。
【0015】
また、これらのアルキル基およびアルケニル基は、置換基として、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基を有してもよい。さらに、これらのアリール基は1〜5個の置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;上記の炭素数が1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数が1〜6のアルコキシ基などが挙げられる。
【0016】
これらの化合物は、特開平5−32640号公報に記載の方法で合成することができ、具体的には、下記表1に記載の化合物を挙げることができる。
【0017】

【0018】
上記有彩色蛍光顔料は夫々適切な中間化合物を組み合わせて反応させることにより得られた色素を、さらに適当な溶剤を用いて加熱撹拌して純度を向上させると共に結晶形を整えることにより得られるものである。また、適当な溶剤を用いて加熱することにより結晶性の比較的大きな粒子にした後、磨砕機器により目的とする粒径にすることも可能である。これらの有彩色蛍光顔料は合成した後さらに、溶剤で加熱して一旦目的粒径より大きい結晶にした後、ボールミル、モータミル或いはダイノミルなどの磨砕機を用いた湿式磨砕や、顔料と無機塩類の混合物をボールミル或いはニーダーなどを用いて磨砕する乾式磨砕などにより目的の粒径に調整した後、使用することも可能である。上記蛍光顔料の好ましい粒径は0.03〜10.0μmである。粒径が小さすぎると隠蔽性が低下し、一方、粒径が大きすぎると着色力が低下する。蛍光顔料の微粒子化は、蛍光顔料を本発明の着色剤にする前に行ってもよいし、本発明の着色剤の製造時に行ってもよい。
【0019】
本発明を特徴づけるもうひとつの非蛍光性の有彩色顔料としては、従来公知の顔料を使用することができ、青色顔料として銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15)のほか異種金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、ハロゲン数が1ないし4の低ハロゲン化フタロシアニン、インダンスレンブルー(C.I.ピグメントブルー22)、C.I.バットブルー4、同6、同20などが、緑色顔料として、C.I.ピグメントグリーン1、同2、同7、同8、同10、同12、同36、同37、同38、C.I.バットグリーン1、C.I.Ingrain Green 3が、紫色顔料としてはジオキサジンバイオレット(C.I.ピグメントバイオレット23)のほか、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット5、C.I.バットバイオレット1、C.I.バットバイオレット2、C.I.バットバイオレット3、C.I.バットバイオレット10などが使用できる。さらに、前記の有彩色蛍光顔料と該非蛍光性有彩色顔料を用いて黒色系に調色する際、必要であれば、他の色相例えば黄色或いは赤色の従来公知の顔料を併用することも可能である。
【0020】
本発明の着色剤は上記記載の有彩色蛍光顔料を蛍光性成分とし、従来公知の非蛍光性の有彩色顔料を混合することにより黒色に調色するものであるが、蛍光顔料(A)と非蛍光性有彩色顔料(B)の構成質量比率は、A:Bが1:1ないし50:1であり、好ましくは2:1ないし20:1である。しかし、使用する非蛍光性有彩色顔料の種類と性状により着色力、すなわち光の吸収性に著しい違いがある一方、有彩色蛍光顔料も種類により蛍光の発光能力に差があり、さらには使用目的によって色相および必要とする蛍光強度も異なるため、構成比は一概に規定はできず、必ずしも上記範囲に規制されるものではない。
【0021】
本発明の蛍光性着色剤に使用される樹脂は、該蛍光性着色剤が液体状態である間は、顔料の分散剤または分散助剤として機能するものであり、実際に記録剤として使用され、記録媒体に印画して記録媒体に固着した後は、着色剤の固着バインダーとして作用するものである。
【0022】
このような目的で使用される樹脂としては、各種塗料、印刷インキ、文具、インクジェットインキ或いは捺染剤に通常使用されているものの他に、電子写真、静電印刷或いは静電記録などの乾式現像剤および湿式現像剤、熱転写インクリボン・フィルムなどで使用されているいずれの樹脂であってもよいが、本発明の場合は特に、蛍光強度を低下させることがないように、着色がない樹脂であることが望ましく、さらに、紫外線領域における光吸収もできるだけ小さい樹脂であることが望まれる。
【0023】
このような条件下で好ましい樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリマレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、多官能性不飽和結合含有オリゴマー(紫外線・電子線硬化性モノマー)などの樹脂および/またはオリゴマーであることが挙げられる。
【0024】
上記の樹脂としては、従来公知の樹脂が使用され、特に限定されないが、具体的には、ポリ(メタ)クリル酸エステル共重合体、ポリ(メタ)クリル酸−(メタ)クリル酸エステル共重合体、ポリ(メタ)クリル酸−スチレン−(メタ)クリル酸エステルの如きポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニルの如きポリビニル系樹脂;スチレン−マレイン酸共重合体やロジン変性マレイン酸の如きマレイン酸系樹脂;上記の(メタ)アクリル酸モノマーと他のビニルモノマーの共重合体が挙げられる。
【0025】
また、こはく酸やセバシン酸の如き2塩基酸とエチレングリコールやシクロヘキサンジメタノールの如きジオールとのエステル縮合によって得られるポリエステル樹脂や長鎖脂肪酸を含有するようなアルキッド樹脂の如きポリエステル系樹脂;エチレンオキサイドやテトラヒドロフランの開環重合物であるポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルやポリテトラメチレングリコールの如きポリエーテル系樹脂が挙げられる。
【0026】
また、上記ポリエステルやエチレングリコール、ポリシロキサンジオールなどのジオール成分とイソホロンジイソシアネートの如きジイソシアネート、必要に応じてジアミンとのウレタン反応物であるポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂やポリシロキサンポリウレタン樹脂の如きポリウレタン系樹脂が挙げられる。
【0027】
また、ε−カプロラクタムなどの開環重合物やジアミンと2塩基酸の縮合から得られるナイロン6やオレイン酸の二量体酸/エチレンジアミンのポリアミド樹脂の如きポリアミド系樹脂が挙げられる。
【0028】
また、ポリヘキシルカーボネートの如きポリカーボネート系樹脂;ポリエポキシ系樹脂;ポリシロキサン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン酢酸ビニルの如きポリオレフィン系樹脂;ウレタンアクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートの如き多官能性不飽和結合含有オリゴマー(紫外線・電子線硬化性モノマー)などの樹脂および/またはオリゴマーが使用される。これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。上記樹脂の蛍光性着色剤中における含有量は特に限定されず、蛍光性着色剤の種類によって異なるが、通常蛍光性着色剤の0.1〜50質量%を占める範囲である。
【0029】
特に本発明では紫外線領域での光吸収ができるだけ小さいことや着色が生じない樹脂が望まれることにより、上記樹脂骨格中に紫外線領域で吸収が大きい構造である芳香族環や不飽和結合が少ないかまたは含まない樹脂が好ましい。しかし、着色剤の分散性や樹脂物性を保持させるために芳香環や不飽和結合を含んでもよく、ただし、それは少量である方が好ましく、例えば、樹脂またはオリゴマー中に0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%が良い。上記樹脂またはオリゴマー中に含まれる芳香環としてはベンゼン環やナフタレン環などが挙げられ、不飽和結合としては2重結合や3重結合が含まれる。
【0030】
また、固状または液状の蛍光性着色剤として樹脂を含有しており、その樹脂が前記した量以上に不飽和結合を含有しているものであっても、固着した後、硬化・架橋などをさせることによってその不飽和結合が消滅するものであれば、本発明における樹脂は不飽和結合を多く含有していてもよい。
【0031】
また、本発明の蛍光性着色剤が水性分散体の場合は、その樹脂としての樹脂やオリゴマーに、好ましくは親水性基であるカルボニル基、スルホン酸基、リン酸基および/またはそのアルカリ性物質中和塩、アミノ基およびその酸性物質中和塩、ポリエチレングリコール基から選ばれる1種ないし2種以上を含有させて、水に溶解、分散或いは乳化させて使用される。
【0032】
本発明で用いる樹脂の使用形態は特に限定はされないが、それぞれの蛍光性着色剤の形態に合わせて使用することができる。例えば、固形の形の蛍光性着色剤であれば、前記樹脂は固形としてまたは溶融させて使用できるし、また、樹脂を有機溶剤や水などに溶解・分散・乳化させ、蛍光性着色剤を得た後、その有機溶剤や水を揮発させて固形の蛍光性着色剤を得ることができる。また、液状である場合は、有機溶剤や水系において、前記樹脂を溶解・分散・乳化させて使用される。
【0033】
また、着色適性や記録適性を付与するために、本発明の蛍光性着色剤中に添加剤としてノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、または油溶性顔料分散剤、撥水剤、平滑剤などを併用することも可能である。
【0034】
上記界面活性剤は従来公知の界面活性剤であり、特に限定はされないが、例えば、界面活性剤系である化合物、アルキルまたはアリールスルホン酸塩、アルキルまたはアリールモノアルコールの硫酸エステル塩、アルキルエステルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルまたはエステルやポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルの如きノニオン系界面活性剤、イミダゾールやアルキルベタインなどの両性界面活性剤などが使用される。
【0035】
また、油溶性の分散剤としては、従来公知のものが使用でき、特に限定はされないが、例えば、前記した樹脂の中にもあるポリカプロラクトンやポリ12ヒドロキシステアリン酸とポリエチレンイミンのアミド化物やポリカプロラクトンやポリ12ヒドロキシステアリン酸の末端にナフタレン基やノニルフェニル基がエステル結合している化合物、市販品としてはLUBRIZOL社製の商品名‘ソルスパース’類、川研ファイン社の商品名‘ヒノアクト’類、ビックケミー社製商品名‘ディスパービック160’系類などが挙げられる。
【0036】
上記の各種添加剤も蛍光性着色剤中の蛍光顔料の蛍光強度を低下させることがないように、着色がないことが望ましく、さらに、紫外線領域における光吸収もできるだけ小さいことが望まれ、前記した特徴を有する必要がある。
【0037】
また、本発明の蛍光性着色剤においては夫々の用途に合わせて、従来公知の分散媒体を使用する。この分散媒体としては前記した樹脂そのもの、水、有機溶剤、長鎖脂肪族炭化水素系溶剤、炭化水素系ワックスおよびα,β−不飽和結合を持つモノマーの群が挙げられる。
【0038】
上記の分散媒体は、前記の顔料や樹脂を分散または樹脂を溶解して蛍光性着色剤を得るためのものであり、上記夫々の分散媒体を使用した場合については、水を使用した場合は水性の蛍光性着色剤となり、有機溶剤や長鎖脂肪族炭化水素系溶剤を使用した場合は油性の蛍光性着色剤となり、また、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、炭化水素系ワックスなど、樹脂そのものを使用した場合は、固形、無溶剤系の蛍光性着色剤となり、また、α,β−不飽和結合を持つモノマーを使用した場合は、無溶剤で紫外線・電子線硬化性の蛍光性着色剤となる。
【0039】
ここで、分散媒体のうちで上記樹脂については前記の通りで、また、有機溶剤、長鎖脂肪族炭化水素系溶剤、炭化水素系ワックス、α,β−不飽和結合を持つモノマーは、一般に使用される従来公知のものが使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、有機溶剤としてはメタノールやイソプロパノールの如きアルコール系溶剤、トルエンやキシレンの如き芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンの如きケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチルの如きエステル系溶剤、テトラヒドロフランやジエチレングリコールジメチルエーテルの如きエーテル系溶剤、トリエチレングリコールモノブチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの如きグリコール系溶剤、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドの如き硫黄系溶剤などが挙げられる。
【0040】
また、長鎖脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、イソオクタン、イソノナンなどのイソパラフィン系であり、エクソン化学社製の商品名アイソパー類やエクソール類である。これらの溶剤は単独で使用されることもあるが、一般には使用目的に合わせて何種類かの溶剤の混合系として使用される。
【0041】
また、炭化水素系ワックスとしては室温で固体であり、好ましくは融点が60℃〜130℃のものであり、その溶融した後の粘度が低粘度であるものが使用できる。例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系やパラフィンワックスなどのオレフィン系ワックス、ステアリルアルコールやベヘニルアルコールなどのアルコール系ワックス、ステアリン酸やベヘニン酸などのカルボン酸系ワックス、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸メチルやトリステアリルグリセライドなどの脂肪族エステル、ステアリン酸アミドやビスエチレンステアリルアミドなどの脂肪族アミドなどが挙げられる。
【0042】
また、α,β−不飽和結合を持つモノマーとしては、例えば、スチレンや酢酸ビニルの如きビニルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどの単官能アクリルモノマーや1,4−ブタンジオールやペンタエリスリトールなどポリオールの(メタ)アクリル酸エステルなどの多官能アクリルモノマーの如き(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0043】
これらのα,β−不飽和結合を持つモノマーにおいても、使用樹脂と同様に、蛍光性着色剤中の蛍光顔料の蛍光強度を低下させることがないように、着色がないこと、さらに、紫外線領域における光吸収もできるだけ少ないことが望まれる。
【0044】
また、本発明の蛍光性着色剤の夫々の用途に合わせて、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、帯電制御剤、流動化剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、光重合開始剤、ラジカル発生剤、増感剤などが使用され、特に限定されない。
【0045】
本発明の蛍光性着色剤は、水性および油性のコーティング剤を使用するコーティング方式および印刷インキとして凸版インキ、平版インキ、凹版グラビアインキ、孔版のスクリーンインキおよびフレキソインキなどのインキを使用する印刷方式、画像記録方式のインクジェット方式において、該記録方式が水性インクジェット記録方式、溶剤系インクジェット記録方式、固体熱溶融型インクジェット記録方式、紫外線硬化性インキ型インクジェット記録方式、熱転写方式および電子写真方式の記録剤として使用することができる。
【0046】
また、本発明の蛍光性着色剤は、水性または油性または無溶剤系における、文具用着色剤、塗料用着色剤、印刷インキ用着色剤、熱転写用着色剤、電子写真用着色剤、インクジェットインキ用着色剤、捺染剤用着色剤としても有用である。
【0047】
例えば、水性の着色剤としては、文具用、塗料用、グラビアインキ、インクジェットインキ、捺染剤用として使用されるが、本発明における蛍光顔料、非蛍光性有彩色顔料、樹脂および/または分散剤、分散媒体として水、必要に応じて水性溶剤、その他添加剤からなる。
【0048】
油性の着色剤としては、文具用、塗料用、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインキに使用されるが、本発明における蛍光顔料、非蛍光性有彩色顔料、樹脂および/または分散剤、分散媒体として有機溶剤や長鎖脂肪族炭化水素系溶剤、アルコール系および/またはグリコール系溶剤、その他添加剤からなる。
【0049】
上記印刷インキやコーティング剤の樹脂成分としては、例えば、水性の場合は、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル系共重合体ラテックス、ポリエチレン系ディスパージョン、エチレン系共重合体系ディスパージョンが挙げられる。また、油性の場合は、例えば、セルロースアセテートブチレート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、フェノール変性アルキッド系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0050】
無溶剤系の着色剤としては、電子写真用、すなわち(カラー)コピーシステムにおけるトナー、固体熱溶融型インクジェット記録システム、フィルムや成形物である成型品などに使用されるが、本発明における蛍光顔料、非蛍光性有彩色顔料、樹脂および/または分散剤、分散媒体としては樹脂や炭化水素系ワックス、その他添加剤からなる。その中において、紫外線硬化性インキとしては、本発明における蛍光性着色剤、樹脂および/または分散剤、分散媒体としてα,β−不飽和結合を持つモノマー、必要に応じて水または有機溶剤、その他添加剤からなる。
【0051】
本発明の蛍光性着色剤には、高濃度組成物も含まれる。その目的は顔料を高濃度に含み、予め充分に錬肉して着色成分分散させたり、調色を行っておくことにより、後の工程を容易にするためのものであり、高濃度組成物の形態は、粗粒、粗粉、微粉、シート状、小塊状などの固体状或いは液状のいずれの形状にても使用される。
【0052】
本発明で使用される蛍光性着色剤における各成分の含有量は、その使用する目的によって異なる。蛍光性着色剤を高濃度に含有する分散体組成物では、その含有量はおよそ10質量%〜60質量%、好ましくは15質量%〜40質量%程度であり、使用する目的に応じて最も好ましい含有量で使用される。
【実施例】
【0053】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中の「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0054】
実施例1[水性インクジェットインキ]
C.I.ピグメントブルー22を10部、表1中No.3の蛍光顔料150部、水性スチレン−アクリル樹脂水溶液(スチレン/ブチルアクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=10/50/20/20のカリウム塩、GPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量35,000、固形分40%)を187.5部、エチレングリコール40部、純水160部をよく混合してミルベースを調整した。次ぎにこのミルベースを、横型メディア分散機を用いて十分に分散させた後、このミルベースに純水212.5部を添加して顔料分20%の顔料分散液を得た。
【0055】
次ぎにこの分散液100部に対して、エチレングリコール51.0部、グリセリン33.0部、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル1部、界面活性剤0.8部、前記したスチレン−アクリル樹脂を15部及び純水197部を加えて撹拌し、これを遠心分離処理(8,000rpm、20分)して粗大粒子を除去した後、5μmのメンブランフィルターでろ過を行い、黒色の蛍光性顔料インキを得た。上記で得られたインキをインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターによりインクジェット用光沢紙Photolike QP(コニカ社製)にベタ印刷を行った。色相はやや赤味の黒色で、ブラックライトを用いて紫外線を照射すると黄色の蛍光を発光した。
【0056】
実施例2[油性インクジェットインキ]
C.I.ピグメントバイオレット19(ジオキサジンバイオレット)10部、表1中No.5の蛍光顔料100部、アクリル樹脂(メタクリル酸2エチルヘキシル/メタクリル酸ジエチルアミノエチル=70/30、GPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量25,000)のアイソパーG(エクソン社製、固形分40%)溶液を75部、アイソパーG492部を混合撹拌した後、横型メディア分散機を用いて十分に分散させた。
【0057】
次にこの分散液100部に対して、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル3部、アイソパーGを197部添加して、良く撹拌し、インキを調整し、5μmのメンブランフィルターでろ過を行い、黒色の蛍光性顔料インキを得た。上記で得られたインキをインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターにより、表面処理された50μmのPETフィルムにベタ印刷を行った。色相はやや緑みの黒色であるが、ブラックライトを用いて紫外線を照射すると蛍光を発光した。
【0058】
実施例3[熱溶融型固形インクジェットインキ]
C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)1.0部、表1中No.5の蛍光顔料10部、ポリ12−ヒドロキシステアリン酸(GPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量5,500)を2.5部、パラフィンワックス(融点65℃、100℃での粘度5.6mPa・s)92.5部を120℃で加熱しながら撹拌し、その温度を保ちながら、アトライターで分散した。ついで、これを加熱ろ過して、インクジェットプリンターに入れて表面処理された50μmのPETフィルムにベタ印刷を行った。色相はほぼ中庸の黒色であり、ブラックライトを用いて紫外線を照射すると蛍光を発光した。
【0059】
実施例4[紫外線硬化型インクジェットインキ]
C.I.ピグメントブルー15(銅フタロシアニン)3部、表1中No.6の蛍光顔料100部、トリメチロールプロパントリアクリレートを130部、フェノキシエチルアクリレートを150部、ポリカプロラクトン(重合度平均10)のポリエチレンイミン(数平均分子量8,000)のアミド化物を20部加え、良く撹拌混合して、横型メディア分散機を用いて十分に分散させた。
【0060】
次ぎにこの分散液40部に対して、ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、品名UA−306H)を10部、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリアクリレート92部、ジプロピレングリコールジアクリレート100部、光開始剤としてベンジルジメチルケタール8部を配合して良く撹拌し、インキを調整し、5μmのメンブランフィルターでろ過を行い、黒色の蛍光性顔料インキを得た。上記で得られたインキをインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターにより、表面処理された50μmのPETフィルムにベタ印刷を行い、ついでコンベア式紫外線照射装置により硬化させ、印画物を得た。色相は黒色で、ブラックライトを用いて紫外線を照射すると強い蛍光を発光した。
【0061】
実施例5[水性文具用インキ]
C.I.ピグメントブルー15(銅フタロシアニン)5部、表1中No.7の蛍光顔料320部、水308部、エチレングリコール80部、スチレンマレイン酸のアンモニウムイオン水溶液(スチレン/マレイン酸比=1/1、酸価286、固形分35%)80部、アンモニア水8部を良く混合し、横型のビーズミルにて分散した。ついで水2,048部、前記した樹脂160部とエチレングリコール176部、28%アンモニア水16部を加え、撹拌した後、遠心分離によって粗大粒子を除去した。この粘度は3.6mPa・sであり、pHは9.0であった。これをフェルトペンにつめ、普通用紙に筆記したところ、灰色であり、ブラックライトを用いて紫外線を照射すると強い蛍光を発した。
【0062】
実施例6[乾式粉砕トナー]
C.I.ピグメントバイオレット19を1部、表1中No.8の蛍光顔料30部、ポリエステル樹脂(マレイン酸/テレフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、数平均分子量6,000、Tg60℃)の微粉末70部を高速撹拌機にて予備混合後、加熱三本ロールにて充分混練し、冷却、微粉砕して、顔料を30%含む高濃度蛍光顔料組成物の微粉末を得た。
【0063】
ついで上記高濃度蛍光顔料組成物11部、アルミ錯塩系負帯電制御剤3部、上記で使用したポリエステル樹脂86部を常法に従って混練し、冷却後、粗砕し、ついでジェットミルにて微粉砕、ついで分級して5〜10μmの微粉末を得た。流動化剤としてコロイダルシリカを添加して、キャリアの磁性鉄粉と混合して、蛍光顔料電子写真乾式現像剤として、電子写真複写機にて複写をし、ブラックライトで蛍光を発する鮮明な黒色の印画物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の蛍光性着色剤は、有彩色蛍光顔料と非蛍光性有彩色顔料との混合により、蛍光性の黒色着色剤を構成するものであるが、従来の染料系蛍光顔料を使用した場合と異なり、高い隠蔽性、着色性を有するものであり、耐光性、耐薬品性、特に耐塩素性、耐水性に優れているため、着色剤の製造の工程においても安定に製造することができ、画像記録剤として使用される際にも、従来不可能とされていた黒色ないし灰色の強い蛍光性画像を長期間安定して記録することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有彩色蛍光顔料、非蛍光性有彩色顔料および樹脂を含み、色相が黒色であることを特徴とする蛍光性着色剤。
【請求項2】
有彩色蛍光顔料が、下記一般式(1)で表される請求項1に記載の蛍光性着色剤。

【請求項3】
有彩色蛍光顔料の粒径が、0.03〜10.0μmである請求項1に記載の蛍光性着色剤。
【請求項4】
有彩色蛍光顔料(A)と非蛍光性有彩色顔料(B)との配合質量割合が1:1ないし50:1である請求項1に記載の蛍光性着色剤。
【請求項5】
樹脂が、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリマレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、多官能性不飽和結合含有オリゴマー(紫外線・電子線硬化性モノマー)から選ばれる樹脂および/またはオリゴマーである請求項1に記載の蛍光性着色剤。
【請求項6】
文具用着色剤、塗料用着色剤、印刷インキ用着色剤、熱転写用着色剤、電子写真用着色剤、インクジェットインキ用着色剤または捺染剤用着色剤である請求項1に記載の蛍光性着色剤。
【請求項7】
請求項1に記載の蛍光性着色剤を用いて、コーティング方式、印刷方式、インクジェット方式、熱転写方式または電子写真方式より情報を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項8】
請求項7に記載の記録方法で得られたことを特徴とする記録物。

【公開番号】特開2007−224237(P2007−224237A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49808(P2006−49808)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】