蛍光推定装置および蛍光推定方法、および蛍光測定装置
【課題】試料における蛍光の分光放射輝度率を測定するには、特殊な構成からなる測色器を用いる必要があり、さらにかなりの工数がかかっていた。
【解決手段】蛍光物質を含む試料について、白色光源下で一般の測色器を用いて2種類の変角測定を行って分光反射率1402と1403を得る。そして該試料の蛍光波長域外の長波長域において、分光反射率1403に対する分光反射率1402の比率nを算出する。そして分光反射率1403に比率nを乗じた結果である分光反射率1401と分光反射率1402との差分1404を算出する。この差分1404を比率nから1を減じた値で除算することで、当該試料における蛍光の分光反射率すなわち分光放射輝度率が算出される。このように、試料における蛍光の分光放射輝度率を、2回の変角測定を行うのみで効率的に推定することができる。
【解決手段】蛍光物質を含む試料について、白色光源下で一般の測色器を用いて2種類の変角測定を行って分光反射率1402と1403を得る。そして該試料の蛍光波長域外の長波長域において、分光反射率1403に対する分光反射率1402の比率nを算出する。そして分光反射率1403に比率nを乗じた結果である分光反射率1401と分光反射率1402との差分1404を算出する。この差分1404を比率nから1を減じた値で除算することで、当該試料における蛍光の分光反射率すなわち分光放射輝度率が算出される。このように、試料における蛍光の分光放射輝度率を、2回の変角測定を行うのみで効率的に推定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光の分光放射輝度率を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像出力に使用される記録媒体および色材に対し、記録媒体の白色度や色材の発色性を向上させるために、蛍光を発する材料(例えば蛍光増白剤等の蛍光物質)が使用される場合がある。蛍光物質は、紫外線に代表される可視光範囲外の光が照射されることによって可視光範囲内の光を発光する特性があり、出力画像を観察する照明光の違いによって、その色再現に違いが発生する。従って、蛍光物質を含む記録媒体や色材を用いる画像処理装置において、任意の観察環境下での出力画像の再現色を忠実に推定するためには、該記録媒体や色材に含まれる蛍光物質の発光による分光放射輝度率を取得する必要がある。
【0003】
一般に、試料の分光反射率の測定は、試料を白色光源で照射し、その反射光を分光放射輝度計で受光して分光反射強度を測定し、該分光反射強度を白色光源の分光強度で除することによって行われる。しかしながらこのような測定方法では、試料の分光反射強度を、正反射光や拡散光による反射成分と、蛍光物質の発光(蛍光)による蛍光成分とに分離することができない。従って、測定された分光反射率における蛍光依存分、すなわち蛍光のみの分光放射輝度率を得ることはできなかった。
【0004】
したがって、試料が発する蛍光を測定するために、以下のような技術が提案されている。まず、2つの異なる光源下で試料の分光反射率を測定し、各光源の励起波長域の光エネルギー総和と発光波長域の光エネルギー総和の比に基づいて、観察光源下の蛍光量を推定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、蛍光のみを測定する測色器を構成した技術がある(例えば、非特許文献1参照)。該技術によればまず、測定光源の光から分光器を通して可視光外波長域における任意の単波長光を取り出し、これを入射光とする。そして、該入射光を試料に照射することで放射された蛍光を、再び分光器を通して検出器に取り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-84333号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】御橋 廣眞、「蛍光測定」、日本分光学会 測定法シリーズ 学会出版センター、1983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の蛍光の測定方法には、以下のような問題があった。
【0008】
まず特許文献1に記載の技術では、観察環境下における試料の蛍光量を2つの光源下での測定値から求めているため、異なる2つの光源を用意する必要があり、測色器の構成が複雑化する。
【0009】
また非特許文献1に記載された蛍光測定装置においては、試料への入射光を生成するために分光器が必要であるから、やはり測色器の構成が複雑化する。さらに、測定光源の光から分光器を介して取得された単波長光の分光放射エネルギーは低下するため、入射光に対して試料が発する蛍光の分光反射エネルギーも低くなる。そのため、検出器による蛍光検出は困難となり、測定精度が低下してしまうという問題がある。そこで、検出器の検出精度を一般的な分光放射輝度計よりも向上させるか、低下した蛍光の分光反射エネルギーを補強するための増幅器等も必要となる。したがって、該技術における蛍光測定装置は、一般的な測色器に比べて構成がさらに複雑化し、特殊なものとなる。また、試料からの蛍光を取得するためには、可視光外の光を照射する必要がある。非特許文献1に記載の技術では、入射光を単波長光として取り出すため、可視光外の範囲において複数の異なる単波長を入射させ、複数回の測定を行う必要があるため、測定の工数もかかってしまう。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の蛍光推定装置は以下の構成を備える。
【0012】
すなわち、蛍光物質を含む可能性のある試料について、該蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得する取得手段と、前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出する比率演算手段と、前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出する差分演算手段と、該差分と前記比率から前記試料における蛍光の分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における画像処理装置の構成を示すブロック図、
【図2】第1実施形態における蛍光推定処理を示すフローチャート、
【図3】第1実施形態における分光反射率測定装置の構成を示すブロック図、
【図4】第1実施形態における分光放射輝度の測定角度の一例を示す図、
【図5】第1実施形態における分光放射輝度の測定角度の一例を示す図、
【図6】第1実施形態における蛍光推定処理を行うための構成を示すブロック図、
【図7】第1実施形態における測定角度と蛍光の分光放射輝度率の関係を示すグラフ、
【図8】第1実施形態において変角測定した記録媒体の分光反射率の一例を示す図、
【図9】第1実施形態において推定された記録媒体の蛍光の分光放射輝度率の一例を示すグラフ、
【図10】第1実施形態において変角測定した青系色材の分光反射率の一例を示す図、
【図11】第1実施形態において推定された青系色材の蛍光の分光放射輝度率の一例を示すグラフ、
【図12】第2実施形態における蛍光測定装置の構成を示すブロック図、
【図13】第2実施形態における蛍光測定処理を示すフローチャート、
【図14】図8に示すグラフを模式化したグラフである。
【図15】第1実施形態において変角測定された分光反射率を格納するメモリ構成を示す図、
【図16】第1実施形態において推定された蛍光の分光放射輝度率を格納するメモリ構成を示す図、である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
●システム構成
図1は、本実施形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。同図においてCPU101は、ROM102が記憶している制御プログラム、OS、アプリケーションプログラム、デバイスドライバ等に従って、以下に示す他の構成の制御を行う。107は入力デバイスであり、本発明に関る各種測定データを取得する測定装置を含む。108は出力デバイスであり、各種測定値や演算処理部105で算出された蛍光のデータを出力するプリンタ等を含む。RAM103は各種制御プログラムや操作部104から入力されるデータの作業領域及び一時待避領域として使用される。104は操作部であり、入力デバイス107で取得された測定データ等のデータ入力を行う。105は演算処理部であり、例えば本実施形態における蛍光の分光放射輝度率を推定するための演算処理を行う。106はモニタであり、出力デバイス108と同様に、演算処理部105の処理結果や操作部104で入力されたデータ等を表示する。
【0017】
●蛍光推定の原理
以下、本実施形態における蛍光の分光放射輝度率を推定する方法について、その原理を説明する。
【0018】
図8は、蛍光物質を含む記録媒体について、測定光源下で変角測定を行うことによって取得した分光反射率を示すグラフである。なお、ここでは測定光源として、以下のような広範囲の波長域の光を発生する白色光源を使用する。例えば、記録媒体に含まれる蛍光物質の励起波長域(例えば300〜400nm)および蛍光波長域(同400〜580nm)、および蛍光波長域外の長波長域(同580〜780nm)を含む波長域の光を発生する。同図において分光反射率802は、試料である記録媒体に対して光源と分光放射輝度計のなす角度を、分光放射輝度計が光源の正反射光を受けるような角度(入射角:反射角=45°:45°)として測定した結果である。また分光反射率803は、記録媒体に対して光源と分光放射輝度計のなす角度を、分光放射輝度計が光源の正反射光を含まない拡散光のみを測定可能とするような角度(例えば、同45°:0°)として測定した結果である。図8によれば、記録媒体に対する光源と分光放射輝度計のなす角度、すなわち測定角度に応じて、得られる分光反射率が変化していることが分かる。
【0019】
図7は、記録媒体に対して400nmの単波長光を照射し、発生した蛍光を異なる角度で測定した結果を示したグラフである。同図において分光放射輝度率701は、ある記録媒体を試料として、光源と分光放射輝度計のなす角度を上記正反射光を測定可能な角度で測定した結果である。また分光放射輝度率702は、同様に記録媒体に対する光源と分光放射輝度計のなす角度が上記拡散光のみを測定可能な角度で測定した結果である。図7から分かるように、400nmの波長光についての放射率はその測定角度によって変化しているが、特に蛍光が発生する420〜580nmの蛍光波長域で得られる放射率(すなわち蛍光の放射率)は、測定角度によらずほぼ一定であることが分かる。この傾向は記録媒体上での放射率のみならず、記録媒体上に塗布された色材上での放射率においても同様であった。
【0020】
以上のことから、記録媒体や色材上の反射光において、正反射や拡散光による反射成分の分光反射率はその測定角度によって値が変化する変角特性を持つが、蛍光物質に依存する蛍光成分の分光放射輝度率は変角特性を持たない、ということが分かる。本実施形態では、このような試料の反射光における反射成分と蛍光成分との変角特性の違いを利用して、試料に対する変角測定結果から、反射光における蛍光成分(すなわち蛍光)の分光反射率(すなわち分光放射輝度率)を推定する。
【0021】
なお以下では、試料からの反射光における「蛍光成分」という文言を、試料が含む蛍光物質が発する「蛍光」と同義として用いる。したがって、反射光における「蛍光成分の分光反射率」とはすなわち、「蛍光の放射輝度率」と同義となる。
【0022】
以下、上述した変角特性の違いに基づいて蛍光の分光反射率(すなわち、蛍光の分光放射輝度率)を取得する方法について説明する。なお以下では、変角特性の違いを視覚的に把握しやすくするために、図8に示す分光反射率における測定値を模式化した図14のグラフを用いて説明を行う。図14に示す分光反射率1402は図8に示す分光反射率802に対応し、上記正反射光を測定可能な角度による測定結果である。同様に分光反射率1403は分光反射率803に対応し、上記拡散光のみを測定可能な角度による測定結果である。
【0023】
分光反射率1402と分光反射率1403は共に、その測定時の反射光に蛍光が含まれているため、正反射や拡散光による反射成分の分光反射率R(λ)と、蛍光成分の分光反射率P(λ)を合わせた値として得られる。上述したように、反射成分の分光反射率R(λ)は変角特性によって異なるが、蛍光成分の分光反射率P(λ)は変角特性がないため共通化できる。したがって、分光反射率1402および分光反射率1403はそれぞれ、反射成分の分光反射率のみを異ならせて、R1(λ)+P(λ)およびR2(λ)+P(λ)と表現される。
【0024】
図14において、蛍光成分の分光反射率を含む可視域(380〜580nm)の外である長波長域(580〜780nm)で、分光反射率1402と分光反射率1403が同等となるように、低い方の分光反射率1403に乗じる値(比率)nを決定する。そして、分光反射率1403に比率nを積算した結果が、分光反射率1401として得られる。図14に示されるように、分光反射率1403にnを乗じて得られた分光反射率1401は、分光反射率1402と一致していない。
【0025】
上述したように分光反射率1403を、反射成分の分光反射率R2(λ)と蛍光成分の分光反射率P(λ)の和、すなわちR2(λ)+P(λ)と表す。すると、分光反射率1401は分光反射率1403の単純にn倍したものとして表現される。また分光反射率1402は、蛍光成分が存在しない長波長域において分光反射率1403のn倍相当となるから、分光反射率1402における反射成分の分光反射率R1(λ)は、分光反射率1403における反射成分の分光反射率R2(λ)のn倍相当となる。したがって分光反射率1402は、反射成分の分光反射率R2(λ)のn倍に対し、さらに共通の蛍光成分の分光反射率P(λ)を加算したものとして表現される。以下に、それぞれの分光反射率1401,1402,1403をまとめて示す。
【0026】
分光反射率1401:n・(R2(λ)+P(λ))
分光反射率1402:n・R2(λ)+P(λ)
分光反射率1403:R2(λ)+P(λ)
すると、下式(1)により分光反射率1401と分光反射率1402の差分D(λ)が算出される。この差分D(λ)は、図14における斜線部1404に相当する。
【0027】
D(λ)=n・(R2(λ)+P(λ))−(n・R2(λ)+P(λ))
=(n−1)・P(λ) ・・・(1)
式(1)を変形することによって下式(2)が得られる。式(2)に示されるように、試料における蛍光成分の分光反射率P(λ)は、2つの変角測定による分光反射率の差分D(λ)と、該測定値に基づく比率nから求められる。なお、蛍光成分のレンジ調整のため、下式(3)に示すように、式(2)に対して任意の係数αを乗じるようにしても良い。
【0028】
P(λ)=D(λ)/(n−1) ・・・(2)
P(λ)=(D(λ)/(n−1))・α ・・・(3)
以上のように算出された蛍光成分の分光反射率P(λ)がすなわち、蛍光の分光放射輝度率である。
【0029】
以上は図8に示す測定結果を模式化した図14のグラフに基づいて説明を行ったが、もちろん図8においても同様の処理によって蛍光成分の分光反射率を算出することができる。すなわち、蛍光成分を含まない長波長域において分光反射率803を分光反射率802と同等とするような比率nを求めて、分光反射率803をn倍した分光反射率801を生成する。そして、分光反射率801と分光反射率802との差分D(λ)を算出することによって、図14と同様に(2)式または(3)式より蛍光成分の分光反射率P(λ)が得られる。
【0030】
図9に、上記(2)式によって、図8での測定対象であった蛍光物質を含む記録媒体についての2種類の変角測定データ(分光反射率)から求めた、蛍光成分の分光放射輝度率901を示す。なお図9には、従来手法を用いて測定した蛍光成分の分光放射輝度率902も併せて示す。同図によれば、本実施形態により取得した蛍光成分の分光放射輝度率901は、従来手法により測定された蛍光成分の分光放射輝度率902とほぼ一致しており、したがって、本実施形態の手法によって蛍光成分の波長特性が取得できていることが分かる。
【0031】
以上説明した図8のグラフは、蛍光物質を含む記録媒体についての変角測定データに基づく処理例を示すものであった。図10に、記録媒体上に塗布された、蛍光物質を含む青系色材について、図8と同様に変角測定された変角測定データによる処理例を示す。図10に示すように蛍光物質を含む色材おいても、記録媒体の場合と同様に蛍光成分の分光反射率を求めることができる。すなわち、分光反射率1003と分光反射率1002が示す2種類の変角測定データと、分光反射率1003を長波長域において分光反射率1002と同等とする比率nによって積算した分光反射率1001とに基づいて、蛍光成分を求めることができる。ここで図11に、分光反射率1003と分光反射率1002に基づいて取得した蛍光成分の分光放射輝度率1101と、従来手法により測定された蛍光成分の分光放射輝度率1102を示す。同図によれば、本実施形態により取得した蛍光成分の分光放射輝度率1101は、従来手法により測定された蛍光成分の分光放射輝度率1102とほぼ一致しており、やはり蛍光成分の波長特性が取得されている。
【0032】
以上のように本実施形態では、まず、記録媒体に含まれる蛍光物質の励起波長域および蛍光波長域、および蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発生する白色光源下において、該記録媒体に対する2種類の変角測定を行う。そして該測定結果に基づき、試料から発せられる蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することを実現する。
【0033】
以下、本実施形態において蛍光の分光放射輝度率を取得する装置およびその処理について、具体的に説明する。
【0034】
●分光反射率測定装置
図3に、本実施形態において試料の分光反射率を測定する測定装置のブロック構成を示す。なお、測定装置は図1に示す入力デバイス107に相当する。本実施形態の測定装置においては、試料に対して2種類の変角測定を行って2種類の分光反射率を取得する。測定角度設定部302は、試料に対する測定光源と分光放射輝度計303の位置について、それらがなす角度(測定角度)を2種類設定する。ここで設定される2種類の測定角度としては、それぞれで測定される試料の分光反射率の値に十分な差分が得られれば、任意の角度を設定して良い。本実施形態では、測定される分光反射率の差分が最も大きくなるように、2種類の測定角度を設定する。すなわち、第1の測定角度として光源の正反射成分を含まない拡散成分のみを測定する測定角度1(入射角:反射角=45°:0°)と、第2の測定角度として正反射成分を含めて測定する測定角度2(同、45°:45°)を設定する。以下、それぞれの測定角度を入射角と反射角によって(入射角:反射角)として表記する。例えば測定角度1は(45:0)であり、測定角度2は(45:45)である。
【0035】
なお、上述したように2種類の測定角度はその測定値間で十分な差分が得られれば良いため、例えば測定角度2としては正反射成分を測定可能とする角度により近い角度であれば良い。また、2種類の測定角度間の差分として適当な値を予め設定し、測定角度を該差分に基づいて設定しても良い。例えば、測定角度についての差分が30度となるように、測定角度1を(45:15)、測定角度2を(45:45)、のように設定することができる。
【0036】
以上のように測定角度設定部302で測定角度として測定角度1および測定角度2が設定されると、測定光源である光源部301と分光放射輝度計303の試料に対する位置が、それぞれ測定角度1および測定角度2となるように調整される。なお、本実施形態における光源部301は、上述した広範囲な波長域の光を発生する白色光源であるとする。
【0037】
ここで図4に、測定角度1(45:0)による測定を行う際の、試料401に対する光源部301と分光放射輝度計303の位置関係の一例を示す。同図によれば、試料401平面の法線に対して、分光放射輝度計303は0度、光源部301は45度の角度で配置されている。また図5に、測定角度2(45:45)による測定を行う際の、試料401に対する光源部301と分光放射輝度計303の位置関係の一例を示す。同図によれば、試料401上の法線に対して、分光放射輝度計303は45度、光源部301は分光放射輝度計303と対称である45度の角度で配置されている。
【0038】
以上のように設定された測定角度1と測定角度2において、分光放射輝度計303で試料401の変角測定を行う。以下、測定角度1で測定された第1の分光反射率をDA(λ)、測定角度2で測定された第2の分光反射率をDB(λ)とする。分光放射輝度計303で変角測定された試料401の分光反射率DA(λ)、DB(λ)はそれぞれ図15の1501、1502に示すような、出力波長に対する反射率を保持するテーブル形式で測定値格納部304に格納される。
【0039】
なお、本実施形態では、試料の変角測定を分光放射輝度計303によって行う例を示したが、一般的な自動変角光度計(ゴニオフォトメーター)を使用しても構わない。
【0040】
●蛍光推定処理
以下、試料に対する変角測定データである2種類の分光反射率から、試料から発せられる蛍光の分光放射輝度率を推定する蛍光推定処理について詳細に説明する。
【0041】
図6は、図1に示す演算処理部105内において、蛍光推定処理を行うためのブロック構成を示す。なお、図6における測定値格納部304には、上記図3に示した測定装置によって変角測定された2種類の分光反射率DA(λ),DB(λ)が格納されている。比率演算部601は、測定値格納部304に格納されている分光反射率DA(λ)およびDB(λ)を取得し、まずその大小関係を判定する。本実施形態では、試料を光源の正反射光を受ける測定角度2で測定した分光反射率DB(λ)の方が、拡散反射光のみを受ける測定角度1で測定した分光反射率DA(λ)よりも分光反射率が高いと判定される。そして比率演算部601は、試料において蛍光の発生する波長域外となる長波長域(本実施形態では580〜780nm)において、分光反射率DA(λ)に対し、分光反射率DB(λ)との差を最小とするために乗じる比率nを、下式(4)により求める。なお、比率nを求める長波長域は、試料が発する蛍光の波長域に応じて任意に設定される。
【0042】
n=DB(λ)/DA(λ) ・・・(4)
差分演算部602は、分光反射率DA(λ)に比率演算部601によって算出された比率nを乗じた乗算結果と、分光反射率DB(λ)との差分である分光反射率DF(λ)を、下式(5)により求める。
【0043】
DF(λ)=n・DA(λ)−DB(λ) ・・・(5)
蛍光演算部603は、差分演算部602で取得された差分の分光反射率DF(λ)と、比率演算部601で算出された比率nに基づいて、以下の式(6)により、試料における蛍光の分光放射輝度率P(λ)を求める。
【0044】
P(λ)=(DF(λ)/(n−1))・α ・・・(6)
式(6)においてαは、蛍光の分光放射輝度率P(λ)のレンジを調整するための任意の係数である。
【0045】
ここで、上記式(5),(6)で算出された差分の分光反射率DF(λ)もしくは蛍光の分光放射輝度率P(λ)について、波長毎の値が負となる場合がある。このような場合には、得られた負の値を0にオフセットする。
【0046】
以上のように蛍光演算部603で算出された蛍光の分光放射輝度率P(λ)は、図16の1601に示すような出力波長に対する放射輝度率を保持するテーブル形式で、蛍光データ格納部604に格納される。
【0047】
以下、本実施形態における蛍光推定処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。まずS201,S202で比率演算部601において、測定角度1、測定角度2で測定された試料の分光反射率DA(λ)、DB(λ)をそれぞれ取得する。そしてS203で比率演算部601において、蛍光が発生しない長波長域において、分光反射率DB(λ)より小さい分光反射率DA(λ)に対し、分光反射率DB(λ)との差を最小とするために乗じる比率nを、式(4)により取得する。次にS204で差分演算部602において、分光反射率DA(λ)に比率nを乗じた値と分光反射率DB(λ)との差分である分光反射率DF(λ)を、上記(5)式により算出する。そしてS205で蛍光演算部603において、S204で取得した差分の分光反射率DF(λ)と、S203で取得された比率nに基づいて、上記(6)式により蛍光の分光放射輝度率P(λ)を算出する。すなわち、比率nから1を減じた値で差分の分光反射率DF(λ)を除算することによって、蛍光の分光放射輝度率が算出される。
【0048】
そしてS206において、S205で算出された蛍光の分光放射輝度率P(λ)について、波長毎の放射輝度率のそれぞれが負の値であるかを否かを判定し、負であるものについてはS207で0にオフセットする。以上の処理によって取得された蛍光の分光放射輝度率P(λ)が、蛍光データ格納部604に格納される。なお、図2に示す処理では、取得した蛍光の分光放射輝度率P(λ)に対し波長毎の放射輝度率の符号を判定する例を示したが、この符号判定を、S204で取得した差分の分光反射率DF(λ)に対して行うようにしても良い。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、蛍光物質を含む可能性のある試料に対し、白色光源下における2回の変角測定を行うのみで、該測定結果から試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することができる。また、この変角測定を行う測色器としては、特に複数の光源装置や分光器、増幅器のような特殊な装置を必要としない、一般的な測色器を用いることができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。一般に、記録媒体に塗布される色材は、その色によって蛍光物質の含有率が異なるため、色によって蛍光の発生の有無が分かれる。そこで第2実施形態においては、複数の試料について蛍光測定を行う際に、それぞれの試料における蛍光の発生の有無を、上述した第1実施形態で示した蛍光推定処理によって簡易に判定することを特徴とする。すなわち、複数の試料のそれぞれに対し、その蛍光の発生の有無を上記蛍光推定処理によって簡易に判定し、蛍光が発生していると判定された試料についてのみ、蛍光の詳細な測定を行なうように制御する。
【0051】
図12に、第2実施形態における蛍光測定装置のブロック構成を示す。蛍光推定部1201では、まず上述した第1実施形態で示した蛍光推定処理によって、複数の試料のそれぞれについて、蛍光の分光放射輝度率を推定する。判定部1202では、複数の試料のぞれぞれについて、蛍光推定部1201で推定された蛍光の分光放射輝度率に基づき、蛍光の発生の有無を判定する。蛍光が発生していると判定された試料については、蛍光測定部1203で蛍光が実測され、該実測された分光放射輝度率が蛍光データ格納部1204に格納される。一方、判定部1202で蛍光の発生がないと判定された試料については、その蛍光の分光放射輝度率を0として、蛍光データ格納部1204に格納する。
【0052】
以下、第2実施形態における蛍光測定処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。まずS1301で判定部1202において、測定対象となる試料の数量が入力される。次にS1302で蛍光推定部1201において、現在の処理対象である試料について、上述した第1実施形態で説明した蛍光推定方法により、該試料における蛍光の分光放射輝度率T(λ)を推定する。そしてS1303で判定部1202において、S1302で推定された蛍光の分光放射輝度率T(λ)に基づき、該試料における蛍光発生の有無を判定する。この判定は例えば以下のように行われる。すなわち、蛍光波長域においてT(λ)を所定の閾値Thと比較し、T(λ)がTh以上の値を有していれば蛍光が発生していると判定し、Th未満の値しか有さないのであれば、蛍光が発生していないと判定する。
【0053】
S1303で当該試料から蛍光が発生していると判定された場合、S1304で蛍光測定部1203において、該試料についての詳細な蛍光測定を行って、蛍光の分光放射輝度率P(λ)の実測値を取得する。ここで蛍光の分光放射輝度率P(λ)詳細な測定方法としては例えば、上記従来例で示したような、複雑な構成からなる測定器を用いて、工数等を考慮することなく実測を行うことが考えられる。一方、試料から蛍光が発生していないと判定された場合、S1305で判定部1202において、該試料についての蛍光の分光放射輝度率P(λ)を0に設定する。
【0054】
そしてS1306で、S1304もしくはS1305によって取得した、当該試料における蛍光の分光放射輝度率P(λ)を、蛍光データ格納部1204に格納する。
【0055】
S1307では、S1301で設定された数量分の試料についてS1302〜S1306の処理が終了したか否かを判定し、未処理の試料があればS1302に戻って該試料に対する処理を開始する。
【0056】
以上説明したように第2実施形態によれば、複数の試料についての蛍光測定を行う際に、各試料についての蛍光発生の有無を第1実施形態で示した蛍光推定方法により簡易に判定する。これにより、蛍光の発生している試料のみについて詳細な測定を行うことができ、効率的な蛍光測定が可能となる。
【0057】
<その他の実施形態>
なお、上述した第1実施形態では、試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定する例を示したが、該推定結果を所定のUIを用いてユーザに報知することも効果的である。特に第2実施形態においては該推定結果をUI表示することで、ユーザは蛍光の実測を行うべき試料を容易に把握することができる。
【0058】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光の分光放射輝度率を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像出力に使用される記録媒体および色材に対し、記録媒体の白色度や色材の発色性を向上させるために、蛍光を発する材料(例えば蛍光増白剤等の蛍光物質)が使用される場合がある。蛍光物質は、紫外線に代表される可視光範囲外の光が照射されることによって可視光範囲内の光を発光する特性があり、出力画像を観察する照明光の違いによって、その色再現に違いが発生する。従って、蛍光物質を含む記録媒体や色材を用いる画像処理装置において、任意の観察環境下での出力画像の再現色を忠実に推定するためには、該記録媒体や色材に含まれる蛍光物質の発光による分光放射輝度率を取得する必要がある。
【0003】
一般に、試料の分光反射率の測定は、試料を白色光源で照射し、その反射光を分光放射輝度計で受光して分光反射強度を測定し、該分光反射強度を白色光源の分光強度で除することによって行われる。しかしながらこのような測定方法では、試料の分光反射強度を、正反射光や拡散光による反射成分と、蛍光物質の発光(蛍光)による蛍光成分とに分離することができない。従って、測定された分光反射率における蛍光依存分、すなわち蛍光のみの分光放射輝度率を得ることはできなかった。
【0004】
したがって、試料が発する蛍光を測定するために、以下のような技術が提案されている。まず、2つの異なる光源下で試料の分光反射率を測定し、各光源の励起波長域の光エネルギー総和と発光波長域の光エネルギー総和の比に基づいて、観察光源下の蛍光量を推定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、蛍光のみを測定する測色器を構成した技術がある(例えば、非特許文献1参照)。該技術によればまず、測定光源の光から分光器を通して可視光外波長域における任意の単波長光を取り出し、これを入射光とする。そして、該入射光を試料に照射することで放射された蛍光を、再び分光器を通して検出器に取り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-84333号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】御橋 廣眞、「蛍光測定」、日本分光学会 測定法シリーズ 学会出版センター、1983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の蛍光の測定方法には、以下のような問題があった。
【0008】
まず特許文献1に記載の技術では、観察環境下における試料の蛍光量を2つの光源下での測定値から求めているため、異なる2つの光源を用意する必要があり、測色器の構成が複雑化する。
【0009】
また非特許文献1に記載された蛍光測定装置においては、試料への入射光を生成するために分光器が必要であるから、やはり測色器の構成が複雑化する。さらに、測定光源の光から分光器を介して取得された単波長光の分光放射エネルギーは低下するため、入射光に対して試料が発する蛍光の分光反射エネルギーも低くなる。そのため、検出器による蛍光検出は困難となり、測定精度が低下してしまうという問題がある。そこで、検出器の検出精度を一般的な分光放射輝度計よりも向上させるか、低下した蛍光の分光反射エネルギーを補強するための増幅器等も必要となる。したがって、該技術における蛍光測定装置は、一般的な測色器に比べて構成がさらに複雑化し、特殊なものとなる。また、試料からの蛍光を取得するためには、可視光外の光を照射する必要がある。非特許文献1に記載の技術では、入射光を単波長光として取り出すため、可視光外の範囲において複数の異なる単波長を入射させ、複数回の測定を行う必要があるため、測定の工数もかかってしまう。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の蛍光推定装置は以下の構成を備える。
【0012】
すなわち、蛍光物質を含む可能性のある試料について、該蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得する取得手段と、前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出する比率演算手段と、前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出する差分演算手段と、該差分と前記比率から前記試料における蛍光の分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における画像処理装置の構成を示すブロック図、
【図2】第1実施形態における蛍光推定処理を示すフローチャート、
【図3】第1実施形態における分光反射率測定装置の構成を示すブロック図、
【図4】第1実施形態における分光放射輝度の測定角度の一例を示す図、
【図5】第1実施形態における分光放射輝度の測定角度の一例を示す図、
【図6】第1実施形態における蛍光推定処理を行うための構成を示すブロック図、
【図7】第1実施形態における測定角度と蛍光の分光放射輝度率の関係を示すグラフ、
【図8】第1実施形態において変角測定した記録媒体の分光反射率の一例を示す図、
【図9】第1実施形態において推定された記録媒体の蛍光の分光放射輝度率の一例を示すグラフ、
【図10】第1実施形態において変角測定した青系色材の分光反射率の一例を示す図、
【図11】第1実施形態において推定された青系色材の蛍光の分光放射輝度率の一例を示すグラフ、
【図12】第2実施形態における蛍光測定装置の構成を示すブロック図、
【図13】第2実施形態における蛍光測定処理を示すフローチャート、
【図14】図8に示すグラフを模式化したグラフである。
【図15】第1実施形態において変角測定された分光反射率を格納するメモリ構成を示す図、
【図16】第1実施形態において推定された蛍光の分光放射輝度率を格納するメモリ構成を示す図、である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
●システム構成
図1は、本実施形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。同図においてCPU101は、ROM102が記憶している制御プログラム、OS、アプリケーションプログラム、デバイスドライバ等に従って、以下に示す他の構成の制御を行う。107は入力デバイスであり、本発明に関る各種測定データを取得する測定装置を含む。108は出力デバイスであり、各種測定値や演算処理部105で算出された蛍光のデータを出力するプリンタ等を含む。RAM103は各種制御プログラムや操作部104から入力されるデータの作業領域及び一時待避領域として使用される。104は操作部であり、入力デバイス107で取得された測定データ等のデータ入力を行う。105は演算処理部であり、例えば本実施形態における蛍光の分光放射輝度率を推定するための演算処理を行う。106はモニタであり、出力デバイス108と同様に、演算処理部105の処理結果や操作部104で入力されたデータ等を表示する。
【0017】
●蛍光推定の原理
以下、本実施形態における蛍光の分光放射輝度率を推定する方法について、その原理を説明する。
【0018】
図8は、蛍光物質を含む記録媒体について、測定光源下で変角測定を行うことによって取得した分光反射率を示すグラフである。なお、ここでは測定光源として、以下のような広範囲の波長域の光を発生する白色光源を使用する。例えば、記録媒体に含まれる蛍光物質の励起波長域(例えば300〜400nm)および蛍光波長域(同400〜580nm)、および蛍光波長域外の長波長域(同580〜780nm)を含む波長域の光を発生する。同図において分光反射率802は、試料である記録媒体に対して光源と分光放射輝度計のなす角度を、分光放射輝度計が光源の正反射光を受けるような角度(入射角:反射角=45°:45°)として測定した結果である。また分光反射率803は、記録媒体に対して光源と分光放射輝度計のなす角度を、分光放射輝度計が光源の正反射光を含まない拡散光のみを測定可能とするような角度(例えば、同45°:0°)として測定した結果である。図8によれば、記録媒体に対する光源と分光放射輝度計のなす角度、すなわち測定角度に応じて、得られる分光反射率が変化していることが分かる。
【0019】
図7は、記録媒体に対して400nmの単波長光を照射し、発生した蛍光を異なる角度で測定した結果を示したグラフである。同図において分光放射輝度率701は、ある記録媒体を試料として、光源と分光放射輝度計のなす角度を上記正反射光を測定可能な角度で測定した結果である。また分光放射輝度率702は、同様に記録媒体に対する光源と分光放射輝度計のなす角度が上記拡散光のみを測定可能な角度で測定した結果である。図7から分かるように、400nmの波長光についての放射率はその測定角度によって変化しているが、特に蛍光が発生する420〜580nmの蛍光波長域で得られる放射率(すなわち蛍光の放射率)は、測定角度によらずほぼ一定であることが分かる。この傾向は記録媒体上での放射率のみならず、記録媒体上に塗布された色材上での放射率においても同様であった。
【0020】
以上のことから、記録媒体や色材上の反射光において、正反射や拡散光による反射成分の分光反射率はその測定角度によって値が変化する変角特性を持つが、蛍光物質に依存する蛍光成分の分光放射輝度率は変角特性を持たない、ということが分かる。本実施形態では、このような試料の反射光における反射成分と蛍光成分との変角特性の違いを利用して、試料に対する変角測定結果から、反射光における蛍光成分(すなわち蛍光)の分光反射率(すなわち分光放射輝度率)を推定する。
【0021】
なお以下では、試料からの反射光における「蛍光成分」という文言を、試料が含む蛍光物質が発する「蛍光」と同義として用いる。したがって、反射光における「蛍光成分の分光反射率」とはすなわち、「蛍光の放射輝度率」と同義となる。
【0022】
以下、上述した変角特性の違いに基づいて蛍光の分光反射率(すなわち、蛍光の分光放射輝度率)を取得する方法について説明する。なお以下では、変角特性の違いを視覚的に把握しやすくするために、図8に示す分光反射率における測定値を模式化した図14のグラフを用いて説明を行う。図14に示す分光反射率1402は図8に示す分光反射率802に対応し、上記正反射光を測定可能な角度による測定結果である。同様に分光反射率1403は分光反射率803に対応し、上記拡散光のみを測定可能な角度による測定結果である。
【0023】
分光反射率1402と分光反射率1403は共に、その測定時の反射光に蛍光が含まれているため、正反射や拡散光による反射成分の分光反射率R(λ)と、蛍光成分の分光反射率P(λ)を合わせた値として得られる。上述したように、反射成分の分光反射率R(λ)は変角特性によって異なるが、蛍光成分の分光反射率P(λ)は変角特性がないため共通化できる。したがって、分光反射率1402および分光反射率1403はそれぞれ、反射成分の分光反射率のみを異ならせて、R1(λ)+P(λ)およびR2(λ)+P(λ)と表現される。
【0024】
図14において、蛍光成分の分光反射率を含む可視域(380〜580nm)の外である長波長域(580〜780nm)で、分光反射率1402と分光反射率1403が同等となるように、低い方の分光反射率1403に乗じる値(比率)nを決定する。そして、分光反射率1403に比率nを積算した結果が、分光反射率1401として得られる。図14に示されるように、分光反射率1403にnを乗じて得られた分光反射率1401は、分光反射率1402と一致していない。
【0025】
上述したように分光反射率1403を、反射成分の分光反射率R2(λ)と蛍光成分の分光反射率P(λ)の和、すなわちR2(λ)+P(λ)と表す。すると、分光反射率1401は分光反射率1403の単純にn倍したものとして表現される。また分光反射率1402は、蛍光成分が存在しない長波長域において分光反射率1403のn倍相当となるから、分光反射率1402における反射成分の分光反射率R1(λ)は、分光反射率1403における反射成分の分光反射率R2(λ)のn倍相当となる。したがって分光反射率1402は、反射成分の分光反射率R2(λ)のn倍に対し、さらに共通の蛍光成分の分光反射率P(λ)を加算したものとして表現される。以下に、それぞれの分光反射率1401,1402,1403をまとめて示す。
【0026】
分光反射率1401:n・(R2(λ)+P(λ))
分光反射率1402:n・R2(λ)+P(λ)
分光反射率1403:R2(λ)+P(λ)
すると、下式(1)により分光反射率1401と分光反射率1402の差分D(λ)が算出される。この差分D(λ)は、図14における斜線部1404に相当する。
【0027】
D(λ)=n・(R2(λ)+P(λ))−(n・R2(λ)+P(λ))
=(n−1)・P(λ) ・・・(1)
式(1)を変形することによって下式(2)が得られる。式(2)に示されるように、試料における蛍光成分の分光反射率P(λ)は、2つの変角測定による分光反射率の差分D(λ)と、該測定値に基づく比率nから求められる。なお、蛍光成分のレンジ調整のため、下式(3)に示すように、式(2)に対して任意の係数αを乗じるようにしても良い。
【0028】
P(λ)=D(λ)/(n−1) ・・・(2)
P(λ)=(D(λ)/(n−1))・α ・・・(3)
以上のように算出された蛍光成分の分光反射率P(λ)がすなわち、蛍光の分光放射輝度率である。
【0029】
以上は図8に示す測定結果を模式化した図14のグラフに基づいて説明を行ったが、もちろん図8においても同様の処理によって蛍光成分の分光反射率を算出することができる。すなわち、蛍光成分を含まない長波長域において分光反射率803を分光反射率802と同等とするような比率nを求めて、分光反射率803をn倍した分光反射率801を生成する。そして、分光反射率801と分光反射率802との差分D(λ)を算出することによって、図14と同様に(2)式または(3)式より蛍光成分の分光反射率P(λ)が得られる。
【0030】
図9に、上記(2)式によって、図8での測定対象であった蛍光物質を含む記録媒体についての2種類の変角測定データ(分光反射率)から求めた、蛍光成分の分光放射輝度率901を示す。なお図9には、従来手法を用いて測定した蛍光成分の分光放射輝度率902も併せて示す。同図によれば、本実施形態により取得した蛍光成分の分光放射輝度率901は、従来手法により測定された蛍光成分の分光放射輝度率902とほぼ一致しており、したがって、本実施形態の手法によって蛍光成分の波長特性が取得できていることが分かる。
【0031】
以上説明した図8のグラフは、蛍光物質を含む記録媒体についての変角測定データに基づく処理例を示すものであった。図10に、記録媒体上に塗布された、蛍光物質を含む青系色材について、図8と同様に変角測定された変角測定データによる処理例を示す。図10に示すように蛍光物質を含む色材おいても、記録媒体の場合と同様に蛍光成分の分光反射率を求めることができる。すなわち、分光反射率1003と分光反射率1002が示す2種類の変角測定データと、分光反射率1003を長波長域において分光反射率1002と同等とする比率nによって積算した分光反射率1001とに基づいて、蛍光成分を求めることができる。ここで図11に、分光反射率1003と分光反射率1002に基づいて取得した蛍光成分の分光放射輝度率1101と、従来手法により測定された蛍光成分の分光放射輝度率1102を示す。同図によれば、本実施形態により取得した蛍光成分の分光放射輝度率1101は、従来手法により測定された蛍光成分の分光放射輝度率1102とほぼ一致しており、やはり蛍光成分の波長特性が取得されている。
【0032】
以上のように本実施形態では、まず、記録媒体に含まれる蛍光物質の励起波長域および蛍光波長域、および蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発生する白色光源下において、該記録媒体に対する2種類の変角測定を行う。そして該測定結果に基づき、試料から発せられる蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することを実現する。
【0033】
以下、本実施形態において蛍光の分光放射輝度率を取得する装置およびその処理について、具体的に説明する。
【0034】
●分光反射率測定装置
図3に、本実施形態において試料の分光反射率を測定する測定装置のブロック構成を示す。なお、測定装置は図1に示す入力デバイス107に相当する。本実施形態の測定装置においては、試料に対して2種類の変角測定を行って2種類の分光反射率を取得する。測定角度設定部302は、試料に対する測定光源と分光放射輝度計303の位置について、それらがなす角度(測定角度)を2種類設定する。ここで設定される2種類の測定角度としては、それぞれで測定される試料の分光反射率の値に十分な差分が得られれば、任意の角度を設定して良い。本実施形態では、測定される分光反射率の差分が最も大きくなるように、2種類の測定角度を設定する。すなわち、第1の測定角度として光源の正反射成分を含まない拡散成分のみを測定する測定角度1(入射角:反射角=45°:0°)と、第2の測定角度として正反射成分を含めて測定する測定角度2(同、45°:45°)を設定する。以下、それぞれの測定角度を入射角と反射角によって(入射角:反射角)として表記する。例えば測定角度1は(45:0)であり、測定角度2は(45:45)である。
【0035】
なお、上述したように2種類の測定角度はその測定値間で十分な差分が得られれば良いため、例えば測定角度2としては正反射成分を測定可能とする角度により近い角度であれば良い。また、2種類の測定角度間の差分として適当な値を予め設定し、測定角度を該差分に基づいて設定しても良い。例えば、測定角度についての差分が30度となるように、測定角度1を(45:15)、測定角度2を(45:45)、のように設定することができる。
【0036】
以上のように測定角度設定部302で測定角度として測定角度1および測定角度2が設定されると、測定光源である光源部301と分光放射輝度計303の試料に対する位置が、それぞれ測定角度1および測定角度2となるように調整される。なお、本実施形態における光源部301は、上述した広範囲な波長域の光を発生する白色光源であるとする。
【0037】
ここで図4に、測定角度1(45:0)による測定を行う際の、試料401に対する光源部301と分光放射輝度計303の位置関係の一例を示す。同図によれば、試料401平面の法線に対して、分光放射輝度計303は0度、光源部301は45度の角度で配置されている。また図5に、測定角度2(45:45)による測定を行う際の、試料401に対する光源部301と分光放射輝度計303の位置関係の一例を示す。同図によれば、試料401上の法線に対して、分光放射輝度計303は45度、光源部301は分光放射輝度計303と対称である45度の角度で配置されている。
【0038】
以上のように設定された測定角度1と測定角度2において、分光放射輝度計303で試料401の変角測定を行う。以下、測定角度1で測定された第1の分光反射率をDA(λ)、測定角度2で測定された第2の分光反射率をDB(λ)とする。分光放射輝度計303で変角測定された試料401の分光反射率DA(λ)、DB(λ)はそれぞれ図15の1501、1502に示すような、出力波長に対する反射率を保持するテーブル形式で測定値格納部304に格納される。
【0039】
なお、本実施形態では、試料の変角測定を分光放射輝度計303によって行う例を示したが、一般的な自動変角光度計(ゴニオフォトメーター)を使用しても構わない。
【0040】
●蛍光推定処理
以下、試料に対する変角測定データである2種類の分光反射率から、試料から発せられる蛍光の分光放射輝度率を推定する蛍光推定処理について詳細に説明する。
【0041】
図6は、図1に示す演算処理部105内において、蛍光推定処理を行うためのブロック構成を示す。なお、図6における測定値格納部304には、上記図3に示した測定装置によって変角測定された2種類の分光反射率DA(λ),DB(λ)が格納されている。比率演算部601は、測定値格納部304に格納されている分光反射率DA(λ)およびDB(λ)を取得し、まずその大小関係を判定する。本実施形態では、試料を光源の正反射光を受ける測定角度2で測定した分光反射率DB(λ)の方が、拡散反射光のみを受ける測定角度1で測定した分光反射率DA(λ)よりも分光反射率が高いと判定される。そして比率演算部601は、試料において蛍光の発生する波長域外となる長波長域(本実施形態では580〜780nm)において、分光反射率DA(λ)に対し、分光反射率DB(λ)との差を最小とするために乗じる比率nを、下式(4)により求める。なお、比率nを求める長波長域は、試料が発する蛍光の波長域に応じて任意に設定される。
【0042】
n=DB(λ)/DA(λ) ・・・(4)
差分演算部602は、分光反射率DA(λ)に比率演算部601によって算出された比率nを乗じた乗算結果と、分光反射率DB(λ)との差分である分光反射率DF(λ)を、下式(5)により求める。
【0043】
DF(λ)=n・DA(λ)−DB(λ) ・・・(5)
蛍光演算部603は、差分演算部602で取得された差分の分光反射率DF(λ)と、比率演算部601で算出された比率nに基づいて、以下の式(6)により、試料における蛍光の分光放射輝度率P(λ)を求める。
【0044】
P(λ)=(DF(λ)/(n−1))・α ・・・(6)
式(6)においてαは、蛍光の分光放射輝度率P(λ)のレンジを調整するための任意の係数である。
【0045】
ここで、上記式(5),(6)で算出された差分の分光反射率DF(λ)もしくは蛍光の分光放射輝度率P(λ)について、波長毎の値が負となる場合がある。このような場合には、得られた負の値を0にオフセットする。
【0046】
以上のように蛍光演算部603で算出された蛍光の分光放射輝度率P(λ)は、図16の1601に示すような出力波長に対する放射輝度率を保持するテーブル形式で、蛍光データ格納部604に格納される。
【0047】
以下、本実施形態における蛍光推定処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。まずS201,S202で比率演算部601において、測定角度1、測定角度2で測定された試料の分光反射率DA(λ)、DB(λ)をそれぞれ取得する。そしてS203で比率演算部601において、蛍光が発生しない長波長域において、分光反射率DB(λ)より小さい分光反射率DA(λ)に対し、分光反射率DB(λ)との差を最小とするために乗じる比率nを、式(4)により取得する。次にS204で差分演算部602において、分光反射率DA(λ)に比率nを乗じた値と分光反射率DB(λ)との差分である分光反射率DF(λ)を、上記(5)式により算出する。そしてS205で蛍光演算部603において、S204で取得した差分の分光反射率DF(λ)と、S203で取得された比率nに基づいて、上記(6)式により蛍光の分光放射輝度率P(λ)を算出する。すなわち、比率nから1を減じた値で差分の分光反射率DF(λ)を除算することによって、蛍光の分光放射輝度率が算出される。
【0048】
そしてS206において、S205で算出された蛍光の分光放射輝度率P(λ)について、波長毎の放射輝度率のそれぞれが負の値であるかを否かを判定し、負であるものについてはS207で0にオフセットする。以上の処理によって取得された蛍光の分光放射輝度率P(λ)が、蛍光データ格納部604に格納される。なお、図2に示す処理では、取得した蛍光の分光放射輝度率P(λ)に対し波長毎の放射輝度率の符号を判定する例を示したが、この符号判定を、S204で取得した差分の分光反射率DF(λ)に対して行うようにしても良い。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、蛍光物質を含む可能性のある試料に対し、白色光源下における2回の変角測定を行うのみで、該測定結果から試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定することができる。また、この変角測定を行う測色器としては、特に複数の光源装置や分光器、増幅器のような特殊な装置を必要としない、一般的な測色器を用いることができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。一般に、記録媒体に塗布される色材は、その色によって蛍光物質の含有率が異なるため、色によって蛍光の発生の有無が分かれる。そこで第2実施形態においては、複数の試料について蛍光測定を行う際に、それぞれの試料における蛍光の発生の有無を、上述した第1実施形態で示した蛍光推定処理によって簡易に判定することを特徴とする。すなわち、複数の試料のそれぞれに対し、その蛍光の発生の有無を上記蛍光推定処理によって簡易に判定し、蛍光が発生していると判定された試料についてのみ、蛍光の詳細な測定を行なうように制御する。
【0051】
図12に、第2実施形態における蛍光測定装置のブロック構成を示す。蛍光推定部1201では、まず上述した第1実施形態で示した蛍光推定処理によって、複数の試料のそれぞれについて、蛍光の分光放射輝度率を推定する。判定部1202では、複数の試料のぞれぞれについて、蛍光推定部1201で推定された蛍光の分光放射輝度率に基づき、蛍光の発生の有無を判定する。蛍光が発生していると判定された試料については、蛍光測定部1203で蛍光が実測され、該実測された分光放射輝度率が蛍光データ格納部1204に格納される。一方、判定部1202で蛍光の発生がないと判定された試料については、その蛍光の分光放射輝度率を0として、蛍光データ格納部1204に格納する。
【0052】
以下、第2実施形態における蛍光測定処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。まずS1301で判定部1202において、測定対象となる試料の数量が入力される。次にS1302で蛍光推定部1201において、現在の処理対象である試料について、上述した第1実施形態で説明した蛍光推定方法により、該試料における蛍光の分光放射輝度率T(λ)を推定する。そしてS1303で判定部1202において、S1302で推定された蛍光の分光放射輝度率T(λ)に基づき、該試料における蛍光発生の有無を判定する。この判定は例えば以下のように行われる。すなわち、蛍光波長域においてT(λ)を所定の閾値Thと比較し、T(λ)がTh以上の値を有していれば蛍光が発生していると判定し、Th未満の値しか有さないのであれば、蛍光が発生していないと判定する。
【0053】
S1303で当該試料から蛍光が発生していると判定された場合、S1304で蛍光測定部1203において、該試料についての詳細な蛍光測定を行って、蛍光の分光放射輝度率P(λ)の実測値を取得する。ここで蛍光の分光放射輝度率P(λ)詳細な測定方法としては例えば、上記従来例で示したような、複雑な構成からなる測定器を用いて、工数等を考慮することなく実測を行うことが考えられる。一方、試料から蛍光が発生していないと判定された場合、S1305で判定部1202において、該試料についての蛍光の分光放射輝度率P(λ)を0に設定する。
【0054】
そしてS1306で、S1304もしくはS1305によって取得した、当該試料における蛍光の分光放射輝度率P(λ)を、蛍光データ格納部1204に格納する。
【0055】
S1307では、S1301で設定された数量分の試料についてS1302〜S1306の処理が終了したか否かを判定し、未処理の試料があればS1302に戻って該試料に対する処理を開始する。
【0056】
以上説明したように第2実施形態によれば、複数の試料についての蛍光測定を行う際に、各試料についての蛍光発生の有無を第1実施形態で示した蛍光推定方法により簡易に判定する。これにより、蛍光の発生している試料のみについて詳細な測定を行うことができ、効率的な蛍光測定が可能となる。
【0057】
<その他の実施形態>
なお、上述した第1実施形態では、試料における蛍光の分光放射輝度率を効率的に推定する例を示したが、該推定結果を所定のUIを用いてユーザに報知することも効果的である。特に第2実施形態においては該推定結果をUI表示することで、ユーザは蛍光の実測を行うべき試料を容易に把握することができる。
【0058】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質を含む可能性のある試料について、該蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得する取得手段と、
前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出する比率演算手段と、
前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出する差分演算手段と、
該差分と前記比率から前記試料における蛍光の分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、を有することを特徴とする蛍光推定装置。
【請求項2】
前記第1の測定角度は、前記試料からの前記測定光源の正反射光を除く拡散反射光を測定する角度であり、
前記第2の測定角度は、前記試料からの前記測定光源の正反射光を測定する角度であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光推定装置。
【請求項3】
前記比率は、前記第1の分光反射率に乗じた際に、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差が最小となる値であることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光推定装置。
【請求項4】
前記蛍光演算手段は、前記比率から1を減じた値で前記差分を除算することによって、前記蛍光の分光放射輝度率を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項5】
前記蛍光演算手段は、算出した分光放射輝度率が負であった場合に該分光放射輝度率を0とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項6】
前記差分演算手段は、算出した差分が負であった場合に該差分を0とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項7】
さらに、前記蛍光演算手段で算出された前記試料における蛍光の分光放射輝度率から、該試料における蛍光発生の有無を判定する判定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項8】
複数の試料について蛍光の分光放射輝度率を測定する蛍光測定装置であって、
前記複数の試料のそれぞれについて、蛍光の分光放射輝度率を推定する蛍光推定手段と、
前記複数の試料のそれぞれについて、前記蛍光推定手段で推定された蛍光の分光放射輝度率を予め定められた閾値と比較することで蛍光発生の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段で蛍光が発生していると判定された試料について、蛍光の分光放射輝度率を実測する実測手段と、
前記判定手段で蛍光の発生がないと判定された試料について、蛍光の分光放射輝度率を0とする設定手段と、を有し、
前記蛍光推定手段は、
当該試料に含まれる可能性のある蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得する取得手段と、
前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出する比率演算手段と、
前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出する差分演算手段と、
該差分と前記比率から当該試料における蛍光の分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、を有することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項9】
取得手段、比率演算手段、差分演算手段および蛍光演算手段を有する蛍光推定装置における蛍光推定方法であって、
前記取得手段が、蛍光物質を含む可能性のある試料について、該蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得し、
前記比率演算手段が、前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出し、
前記差分演算手段が、前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出し、
前記蛍光演算手段が、前記差分と前記比率から前記試料における蛍光の分光放射輝度率を算出することを特徴とする蛍光推定方法。
【請求項10】
コンピュータ装置で実行されることにより、該コンピュータ装置を請求項1乃至7の何れか1項に記載の蛍光推定装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
蛍光物質を含む可能性のある試料について、該蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得する取得手段と、
前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出する比率演算手段と、
前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出する差分演算手段と、
該差分と前記比率から前記試料における蛍光の分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、を有することを特徴とする蛍光推定装置。
【請求項2】
前記第1の測定角度は、前記試料からの前記測定光源の正反射光を除く拡散反射光を測定する角度であり、
前記第2の測定角度は、前記試料からの前記測定光源の正反射光を測定する角度であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光推定装置。
【請求項3】
前記比率は、前記第1の分光反射率に乗じた際に、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差が最小となる値であることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光推定装置。
【請求項4】
前記蛍光演算手段は、前記比率から1を減じた値で前記差分を除算することによって、前記蛍光の分光放射輝度率を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項5】
前記蛍光演算手段は、算出した分光放射輝度率が負であった場合に該分光放射輝度率を0とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項6】
前記差分演算手段は、算出した差分が負であった場合に該差分を0とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項7】
さらに、前記蛍光演算手段で算出された前記試料における蛍光の分光放射輝度率から、該試料における蛍光発生の有無を判定する判定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蛍光推定装置。
【請求項8】
複数の試料について蛍光の分光放射輝度率を測定する蛍光測定装置であって、
前記複数の試料のそれぞれについて、蛍光の分光放射輝度率を推定する蛍光推定手段と、
前記複数の試料のそれぞれについて、前記蛍光推定手段で推定された蛍光の分光放射輝度率を予め定められた閾値と比較することで蛍光発生の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段で蛍光が発生していると判定された試料について、蛍光の分光放射輝度率を実測する実測手段と、
前記判定手段で蛍光の発生がないと判定された試料について、蛍光の分光放射輝度率を0とする設定手段と、を有し、
前記蛍光推定手段は、
当該試料に含まれる可能性のある蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得する取得手段と、
前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出する比率演算手段と、
前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出する差分演算手段と、
該差分と前記比率から当該試料における蛍光の分光放射輝度率を算出する蛍光演算手段と、を有することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項9】
取得手段、比率演算手段、差分演算手段および蛍光演算手段を有する蛍光推定装置における蛍光推定方法であって、
前記取得手段が、蛍光物質を含む可能性のある試料について、該蛍光物質の励起波長域と、該蛍光物質の蛍光波長域、および該蛍光波長域外の長波長域を含む波長域の光を発する測定光源下において、第1の測定角度で測定された第1の分光反射率と、第2の測定角度で測定された、前記第1の分光反射率よりも大きい第2の分光反射率を取得し、
前記比率演算手段が、前記長波長域において、前記第1の分光反射率に対する前記第2の分光反射率の比率を算出し、
前記差分演算手段が、前記第1の分光反射率に前記比率を乗じ、該乗算結果と前記第2の分光反射率との差分を算出し、
前記蛍光演算手段が、前記差分と前記比率から前記試料における蛍光の分光放射輝度率を算出することを特徴とする蛍光推定方法。
【請求項10】
コンピュータ装置で実行されることにより、該コンピュータ装置を請求項1乃至7の何れか1項に記載の蛍光推定装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−42313(P2012−42313A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183392(P2010−183392)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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