蛍光染料及びMRI造影剤を含む二元機能造影剤
本発明は、生体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを提供するのに有用な二元機能検出試薬に関する。これら二元機能検出試薬を使用する方法は、それらを生体に投与し、一つのモダリティー(すなわち、MRI)を使用して検出試薬の局在を推定し、同時に第二のモダリティー(すなわち、光学イメージング)を使用して生物学的活性のレベルを推定する工程を含んでいてもよい。二元機能検出試薬のうちの1つは、磁気共鳴成分及び光学イメージング成分を含む。磁気共鳴成分は、常に活性化されている、すなわち「オン」になっている造影剤を含む。光学イメージング成分は、特殊な事象の存在下でのみ活性化される、すなわち「オン」になる、活性化可能な造影剤又は染料を含む。例えば、光学イメージング成分は、特定の波長の光の存在によって、及び(1)特殊な生化学的マーカーの存在により、(2)酵素切断により、又は(3)周囲の媒質の温度又はpHの変化により活性化し得る。これらの二元機能検出試薬によって、解剖学的及び機能的/代謝情報の双方を同時に得ることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、医学診断イメージングの分野に関する。さらに具体的には、本発明は磁気共鳴イメージング(「MRI」)と光学イメージングの双方に機能し得る二元機能造影剤の設計及び合成、並びにかかる試薬を使用して生体における生化学的活性の高解像度インビボ画像を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(「MRI」)は、人体に関する高解像度の解剖学的情報をもたらす医学診断技術として20年以上前に確立され、以来多数の疾患の検出に使用されてきた。MRIでは、核磁気共鳴の原理を使用して身体の画像を生み出す。MRIは、いずれの角度及び/又は方向からでも、いずれの身体の部位のものでも、比較的短時間でしかも外科的侵襲をすることなく、薄切片画像を作製することができる。MRIはまた、身体のいずれの断面でも、生化学的化合物の「マップ」を作ることもできる。
【0003】
身体が小さな生物学的磁石(これはMRIには最も重要で、プロトンとしても知られる水素原子核である)で満たされているため、人体でのMRIが可能となる。患者がMRIユニットに入れられると、その身体は地球の磁場よりも30000倍を超える強い定常磁場の中に置かれる。MRIは電磁波で身体を刺激して、プロトンの定常状態での方向を変化させ、それらを磁場に沿った一方向又は別方向に並ばせる。次いで、MRIは電磁波を止めて、選択された周波数で身体の電磁気伝達を「聞く」。コンピュータ断層写真撮影スキャナ(CATスキャナ)用に開発されたものと同様の原理を用いて体内の画像を構築するため、伝達シグナルが用いられる。組織と腫瘍の核磁気緩和時間は異なるので、MRIで構築された画像として異常を視覚化することができる。
【0004】
光学イメージングは、患者を電離放射線に曝さないので、診断モダリティーとしての受容度が常に高い。光学イメージングは、正常と腫瘍組織との吸収、散乱及び/又は蛍光の差異の検出に基づく。光学イメージングの一例として、近赤外蛍光(「NIRF」)イメージングがある。一般にNIRFイメージングでは、所定のバンド幅のフィルター光又はレーザが励起光の光源として使用される。励起光は身体を通り抜け、NIRF分子又は光学イメージング剤に遭遇すると励起光が吸収される。蛍光分子(すなわち、光学イメージング剤)は次いで、励起光とスペクトル的に識別できる検出可能な光(つまり、波長の異なる光)を発する。一般に、NIRFイメージングで検出可能な光は、約600〜1200nmの波長を有する。光学イメージング剤は標的/バックグラウンド比を数桁増加させ、標的領域の可視性と識別性を高める。光学イメージング剤は、特殊な事象が存在するときだけ(所定の酵素の存在下でのみ)、検出可能な光を発するように設計することができる。NIRFイメージングなどの光学イメージングは、体内での特定のタンパク質又は酵素の過剰産生などの機能的又は代謝的変化を検出するのに大いに有望である。大半の疾患では解剖学的変化が起こる前に体内での所期機能的又は代謝的変化を誘発するので、これは有用である。これらの代謝的変化を検出することができると、疾患の初期段階での検出、診断及び処置が可能となり、患者の快復及び/又は治癒機会が向上する。
【0005】
造影剤は、ヒトの身体で得られる画像を向上及び/又は増強すべく、MRI及び/又は光学イメージングと併せて使用されることが多い。造影剤は、2つの組織間のコントラストを変化させるために体内に導入される化学物質である。一般に、MRI造影剤は、MRI造影剤に近接した水分子のプロトン緩和率に影響を及ぼして、画像を増強するように設計されている磁気プローブを含む。こうしたMRI造影剤に近接した組織でのT1(スピン−格子緩和時間)及びT2(スピン−スピン緩和時間)の選択的変化が組織のコントラストを変化させ、MRIで視覚化される。一般に光学造影剤は、外部放射光で励起されたときに発光するように設計された染料を含んでいる。発光は光学イメージングデバイスで検出される。
【0006】
造影剤は、ヒトの脈管構造、細胞外空間及び/又は細胞内空間における異常を視覚化できるように、通常ヒトの循環系への静脈内注射に投与される。ある種の造影剤は、ヒトの脈管構造に留まって脈管構造を強調する。他の造影剤には、血管壁を透過して、例えばレセプターとの結合など異なる機構を介して細胞外空間又は細胞内空間での異常を強調するものもある。造影剤を組織に注射した後、最初に造影剤の濃度が増加し、次いで組織から造影剤が除去されるに伴って濃度が低下し始める。一般に、こうすると、ある組織は別の組織よりも親和性又は血管分布が高いので、コントラストが増強される。例えば、腫瘍は血管分布及び/又は血管壁透過性が増しているので、大半の腫瘍は周囲の組織よりもMRI造影剤の取り込みが多く、T1時間の短縮とMRIでのシグナル変化が大きい。
【0007】
一般的なMRI造影剤は、(1)ガドリニウム(Gd)などの常磁性金属イオンの複合体又は(2)被覆鉄ナノ粒子の2つの分類のいずれかに属する。遊離金属イオンは身体に毒性を有するので、通常、体内の分子との複合体形成を防ぐべく他の分子又はイオンと複合体を形成して毒性を下げている。典型的なMRI造影剤の例を幾つか挙げると、Gd−EDTA、Gd−DTPA、Gd−DOTA、Gd−BOPTA、Gd−DOPTA、Gd−DTPA−BMA(ガドジアミド)、ferumoxsil、フェルモキシデス(ferumoxide)及びferumoxtranがあるが、これらに限られない。
【0008】
別の部類のMRI造影剤として「スマート」造影剤と呼ばれるものがあり、身体の生理的常態又は腫瘍の性質によって活性化される造影剤、例えばpH、温度及び/又は特定の酵素又はイオンの存在によって活性化される試薬が挙げられる。MRIスマート造影剤の例を幾つか挙げると、身体中のカルシウム濃度に感受性の造影剤又はpH感受性のものがあるが、これらに限られない。
【0009】
「スマート」光学造影剤は最近ヒトの体内での酵素活性をモニターするのにインビボで用いられている。こうしたスマート造影剤は、特異的プロテアーゼの存在下のみで、コントラストを生じる。プロテアーゼは、多様な疾患プロセスに関わる重要な因子であるので、特異的酵素に対する造影剤又はプローブが適合するように調製できれば、様々な病態に対するマーカー酵素の発現レベルを検出することを最終的に可能となるはずである。このアプローチは、光学イメージングによって皮膚表面付近の病態の研究に必要な情報を与えることができる。しかし、低い局部的情報が光学イメージングの特徴であるので、体内の深部の病態の診断には、1以上の別のモダリティーが必要とされる。
【0010】
造影剤は有用なだけでなく、特定の疾患の存在を検出するのに時間がかかることが多い。例えば、MRIにおけるコントラストの機構(T1、T2及び/又はプロトン密度など)はある程度限られており、ある種の疾患は外から造影剤を添加せずにはMRIで検出できないままである。これは、ある種の疾患では、造影剤を添加せずにコントラストに影響を与えるパラメータがないためである。したがって、MRIを造影剤と組合せて使用することで、ある種の病態の検出感度が高まり、MRI単独では検出できない疾患が検出できるようになる。例えば、造影剤存在下でのMRIは、乳房腫瘍の検出には非常に高感度であるが、癌組織の検出に対する特異性は非常に低い。癌組織を同定するための特異性はMRIでは随分低いが、これは新血管の補充及び産生などの多数の病態が、癌組織のものと同様のマーカーで特徴付けられるためである。
【0011】
MRI及び光学イメージングの双方とも有用な情報を提供するものの、いずれも、あらゆる疾患の初期診断に役立つすべての情報を独立して提供するものではない。前述の通り、退部分の疾患では解剖学的変化が起こる前に、身体に初期の機能的又は代謝的変化が誘起される。これらの代謝的変化は現行MRI技術で検出することはほとんど不可能であるが、光学イメージングはこのような変化を検出するのに大いに有望である。ただし、乳房のイメージングなどの用途を想定すると、光学イメージングはそれ自体、達成可能な空間的解像度が非常に限られている。大体、光学画像の空間的解像度は、光源と検出器との間の距離の約3分の1であり、9cmの乳房の小さな病変の場所を特定するための精度は約3cmということになる。光学イメージングで病態の場所を特定する際のこうした不正確さは、克服できない短所となりかねず、さもなければ有望な診断技術が使われなくなってしまいかねない。しかし、より完全な解剖学的及び機能的情報を得るために、MRIと光学イメージングを一緒に利用すれば有益であり、疾患の初期検出に役立つことが知られている。実際、光学イメージングとMRIは本質的に互いに適合性のもので、乳房のMRI画像と光学画像を同時に取得することは既に行われている。しかし、解剖学的情報を増強するための常時活性化された磁気共鳴成分と機能的情報を向上させるための活性化可能な光学成分とを含む単一の二元機能造影剤は現在のところ存在していない。
【0012】
多くの造影剤及び/又は検出試薬が知られている。しかし、多くは単機能のものにすぎず、二元機能のものではない。単機能造影剤に関する先行技術は、2つの異なるモダリティーから同時に画像を得る単一の検出試薬を使用することができることを示唆するものではない。幾つかの二元機能検出試薬が知られているものの、そのいずれも、常に活性化されている第一成分と、所定の事象の存在下でのみ検出可能なシグナルを発する(特殊な酵素の存在下でのみ検出可能な光を発する)活性化可能な第二成分を含むものではない。さらに、二元機能造影剤に関する先行技術で、活性化可能な光学イメージング成分の使用について開示又は示唆したものはないし、磁気共鳴イメージング剤を活性化可能な光学イメージング成分と組合せることを開示又は示唆したものもない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、疾患の初期検出に一段と有用なシステム及び方法が必要とされている。また、生体内の生化学的活性の高解像度検出が可能となるシステム及び方法も必要とされている。さらに、2つの異なるモダリティーで同時に利用できる二元機能造影剤も必要とされている。さらには、MRI及び光学イメージングの双方で同時に利用することができる二元機能造影剤も必要とされている。さらに、向上した解剖学的情報を得るための常に活性化された第一成分と、向上した機能的情報を得るための活性化可能な第二成分を含む二元機能造影剤も必要とされている。最後に、一成分が所定の事象の存在下でのみ活性化可能な活性化可能成分である二元機能造影剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、既存の造影剤及びそれらを使用する方法の上述の短所は、本発明の実施形態によって解消される。本発明の実施形態は、疾患の初期検出に役立つシステム及び方法を提供する。これらのシステム及び方法により、生体内の生化学的活性の局在性の高解像度インビボイメージングが可能となる。本発明の実施形態は、2つの異なるモダリティーで同時に利用することができる二元機能造影剤を含む。一実施形態は、MRI及び光学イメージングの双方に同時に利用し得る二元機能造影剤を含む。これら二元機能造影剤の実施形態は、向上した解剖学的情報を得るための常に活性化されている第一成分と、向上した機能的情報を得るための活性化可能な第二成分を含む。実施形態では、二元機能造影剤は所定の事象の存在下でのみ活性化可能な活性化可能成分を含む。
【0015】
本発明は、二元機能造影剤又はプローブ及びその使用方法に関する。本発明の一実施形態は、MRI及び光学イメージングの双方に同時に有用な二元機能造影剤又はプローブを含む。実施形態では、これら二元機能造影剤は磁気共鳴成分及び光学イメージング成分を含む。実施形態では、光学イメージング成分は一種の染料分子及び一種の消光剤を含む。他の実施形態では、光学イメージング成分は二種の染料分子を含む。さらなる実施形態では、光学イメージング成分は複数種の染料分子及び複数種の消光剤を含む。
【0016】
前記で概説したニーズにしたがって、本発明の実施形態は、二元機能検出試薬であって、各々、1種類以上の磁気共鳴造影剤と共有結合した1種類以上の活性化可能な光学造影剤又は染料を含むものを提供する。一実施形態では、二元機能検出試薬は光学染料及び消光剤分子の双方に共有結合した磁気共鳴造影剤を含み、その二元機能検出試薬が特定の波長の光で励起されたときに、光学検出器で検出される光量を低減すべく、消光剤が放射光を効率的に吸収するように、当該染料と消光剤が結合される。磁気共鳴造影剤は、キレート化ガドリニウム複合体(すなわち、Gd−DTPA又はGd−DOTA)、被覆酸化鉄ナノ粒子等を含んでいてもよい。リンカーは、化学結合又は空間を介して染料と消光剤分子とが近接するように設計できる。さらには、リンカーは何らかの生物学又は情報伝達プロセス(すなわち、酵素切断)の結果、染料と消光剤との近接が損なわれ(すなわち、染料と消光剤との間の距離が増大し)、発光して、光学イメージングデバイスで検出できるように設計すればよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、解剖学的及び機能的(代謝)情報の双方を同時に得ることができるように、標的領域の同時MRI及び光学イメージングが可能となるように設計された二元機能検出試薬を提供する。解剖学的情報は、MRI及び磁気共鳴造影剤で得られ、機能的/代謝情報は光学イメージング並びに1種以上の光学染料及び/又は消光剤によって得られる。本発明の実施形態では、磁気共鳴造影剤は常時「オン」(すなわち、常に活性化及び/又は検出可能な状態)に設計され、光学造影剤は染料が消光分子に近接しなくなった場合に限り「オン」となるように設計される(すなわち、特定波長の光が光学造影剤を活性化又は励起したとき、特殊な酵素の存在によって染料と消光分子が切断されたときにのみに「オン」つまり活性化又は検出可能となるように、光学造影剤を活性化可能な状態とする)。適当な波長を有する光で造影剤を励起すれば、造影剤の中の染料が励起光を吸収して再度放射線を発するであろう。染料と消光剤とが互いに近接している限り、こうした再放射線/光は消光剤によって吸収されるはずであり、再放射光のうち光学検出器に当たるものはほとんどないであろう。この場合、光学造影剤は「オフ」になっていると判断される。しかし、染料と消光剤とが相互に離れて動く(すなわち、切断、結合破断又はコンフォメーション変化がもとで)のであれば、染料はやはり励起光を吸収し、わずかに異なる波長の放射線を再び発するであろう。染料と消光剤とが離れすぎているため、この再放射線/光は消光剤によって吸収されないはずであり、光は光学検出器で検出されることになろう。この場合、光学造影剤は「オン」になっていると判断される。
【0018】
本発明の一つの特徴は、二元機能試薬の共局在化に関する。この共局在化は、磁気共鳴造影剤と光学造影剤/染料との共有結合によって可能となる。本発明の別の実施形態の特徴として、磁気共鳴成分と光学成分が消光剤分子に共有結合し、消光剤分子が染料に近接しているため、励起された光学造影剤の放射光を効率よく吸収する。本発明のさらに別の特徴として、生物学的情報伝達プロセス(酵素切断)によって消光剤分子の近接度を減じ、光学造影剤を活性化して「オン」にする一方で、磁気共鳴造影剤と光学染料とは共有結合したままである。活性化可能な光学造影剤で生じた光学シグナルは、生物学的情報伝達プロセスに直接関連するもので、機能的情報を検出することが可能となる。
【0019】
本発明は、現行の磁気共鳴造影剤を使用した解剖学的イメージングに付随するあらゆる利点を有し、さらに、光学イメージングによって機能的情報を同時に得ることも可能となる。本発明の二元機能MRI/光学イメージング造影剤は、高解像度の解剖学的及び機能的情報を同時に取得することを可能とする。好ましくは、これら造影剤の光学成分は、特殊な事象の存在下でのみ(特殊な酵素がヒトの身体に存在し、しかも特定波長の光が光学造影剤を励起する場合にのみ)活性化される。
【0020】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング成分と活性化可能な光学イメージング成分とを含む二元機能検出試薬であるが、これらの成分は好ましくは互いに共有結合している。一実施形態では、磁気共鳴イメージング成分及び光学イメージング成分は、単一の二元機能検出試薬に含まれている。本発明の二元機能検出試薬は、生体の磁気共鳴画像及び光学画像を、好ましくは同時に得ることを可能にする。一実施形態では、活性化可能な光学イメージング成分は、所定の波長の光の存在下でのみ、並びに所定の事象の存在下でのみ(所定の酵素の存在下及び/又は蛍光活性化部位で酵素による切断が起こった場合など)活性化される。一実施形態では、本発明の磁気共鳴イメージング成分は、連続的に活性化されてもよく、キレート化ガドリニウム複合体などの常磁性材料、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、もしくはイッテルビウム(Yb)などの常磁性イオンのキレート又は被覆鉄ナノ粒子などを含んでいてもよい。本発明の活性化可能な光学イメージング成分は、1種類以上の光学染料を含み、1種類以上の消光剤(これは染料でもよい)も含んでいてもよい。本発明の磁気共鳴イメージング成分によって向上した解剖学的情報を得ることができるようになり、活性化可能な光学イメージング成分によって向上した機能的/代謝情報を得ることをできる。ここで「向上した」とは、二元機能造影剤を用いて得られる画像又は情報の質が、造影剤を使用せずに得られる画像又は情報よりも改善されていることを意味する。
【0021】
本発明の実施形態は、生体内の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と、生体内の機能的/代謝情報を向上させることができる活性化可能な第二成分を含む二元機能検出試薬である。本発明の一実施形態では、第一成分及び第二成分は、単一の二元機能検出試薬に含まれている。実施形態では、向上した解剖学的情報及び向上した機能的情報は同時に得られる。一実施形態では、第一成分は常に活性化(「オン」)されており、活性化可能な第二成分は、所定の波長の光の存在下で、(1)所定の酵素の存在下、(2)蛍光活性化部位で酵素による切断が起こった場合、(3)温度が所定の数値を上回るかもしくは下回った場合、又は(4)pHが所定の数値を上回るかもしくは下回った場合などの所定の事象の存在下でのみ活性化(「オン」)になる。向上した解剖学的情報は、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影又は磁気共鳴イメージングによって得ることができる。向上した機能的情報は、近赤外線蛍光イメージングで得ることができる。
【0022】
本発明の実施形態には、生体に本発明の二元機能検出試薬を投与し、当該生体の解剖学的情報の画像を取得する工程、及び当該生体の機能的/代謝情報の画像を取得する工程を含む、身体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを取得する方法も包含される。これらの画像は、同時に取得してもよい。一実施形態では、二元機能検出試薬は静脈内に投与されるが、その他経口又は筋肉内などいかなる好適な方法でも投与し得る。実施形態では、解剖学的情報の画像は、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影又は磁気共鳴イメージングで得ることができる。実施形態では、機能的情報の画像は、光学イメージングで得ることができる。
【0023】
本発明の実施形態には、身体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを得るためのシステムも包含される。一つのシステムは、生体の解剖学的情報の画像を得るための二元機能検出試薬の第一イメージング成分を検出することができる第一イメージングデバイスと、生体の機能的/代謝情報の画像を得るための二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分を検出することができる第二イメージングデバイスとを備える。第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスは、同時に利用することができ、二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分は、所定の事象の存在下でのみ活性化し得る。第一イメージングデバイスは、磁気共鳴イメージングデバイス、コンピュータ断層撮影デバイス又はポジトロン放出断層撮影デバイスを備えるものがある。第二イメージングデバイスは、光学イメージングデバイスを備えるものがある。一実施形態では、第一イメージングデバイスは磁気共鳴イメージングデバイスを備え、第二イメージングデバイスは光学イメージングデバイスを備える。実施形態では、第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスは同時に利用し得る。
【0024】
本発明のさらなる特性、特徴及び利点は、本発明の好ましい形態の幾つかを例示した添付の図面(図面全てを通じて、同様の符号は同様の部分を示す)を参照した以下の説明によって、当業者にさらに容易に明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の理解を促すべく、図1A〜3Dに例示するような、本発明の好ましい実施形態の幾つか、及びそれらを示す特別の用語について言及する。本明細書中で用いる語は説明を目的とするものであって、限定的なものではない。本明細書中に開示された特定の構造及び機能的な詳細は、限定的に解釈されるべきでなく、本発明を様々に採用するよう当業者に教示するための代表的な基礎として、特許請求の範囲の単なる基礎にすぎないものとして解釈されるべきものである。示された検出試薬及びこれを用いた方法の、いずれの修飾又は変更、並びに本明細書中に例示されるような本発明の原理のこのようなさらなる適用のいずれであっても、当業者が通常想起するであろうものは、本発明の精神の範囲内にあると考えられる。
【0026】
本発明の実施形態には、MRI造影剤及び光学的に検出可能な試薬又は染料の双方として機能する二元機能検出試薬が包含される。これらの二元機能検出試薬は、組織内での生化学的変化に伴う生理学的な変化の検出に役立ち、組織異常、心血管疾患、血栓症、癌などが挙げられる。本明細書で用いる「MRI造影剤」又は「磁気共鳴造影剤」という用語は、MRI画像を増強することができる分子を意味する。MRI造影剤は一般に、キレート剤に結合した常磁性金属イオンを含む。本明細書で用いる「常磁性金属イオン」とは、磁場に平行又は非平行に、磁場に比例して磁化された金属イオンを意味する。一般に、常磁性金属イオンは不対電子を有する金属イオンである。好適な常磁性イオンの非限定的な例を幾つか挙げると、マンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びガドリニウム(Gd)がある。本明細書で用いる「光学的に検出可能な試薬」、「光学的に検出可能な染料」、「光学的造影剤」及び/又は「光学染料」とは、光輝性化合物(光励起後に検出可能なエネルギーを発する化合物)を意味する。光学染料は、蛍光性であってもよい。
【0027】
実施形態では、本発明の二元機能検出試薬は、磁気共鳴成分及び光学イメージング成分を含む。磁気共鳴成分は、この試薬の場所を常に検出できるように、好ましくは常時活性化(「オン」)造影剤を含む。好適な磁気共鳴造影剤としては、Gd−DTPA、Gd−DOTA、被覆鉄ナノ粒子などの1種以上の常磁性キレートが挙げられるが、これらに限定されない。光学イメージング成分は、特定の事象下でのみ活性化される、活性化可能な造影剤又は染料を含む。光学イメージング成分が活性化(「オン」)されると、検出可能な光を発する。光学イメージング成分が活性化(「オン」)されていない場合、再放射光のうち光学検出器に至るものはほとんどない。例えば、光学イメージング成分は、特定の波長の光の存在下で、(1)特殊な生化学的マーカーの存在、(2)蛍光活性化部位での酵素切断、(3)温度の上昇もしくは低下、又は(4)pHの上昇もしくは低下がある場合に、活性化される(「オン」となる)。本発明の光学イメージング成分を活性化し得る生化学的マーカーの非限定的な例を幾つか挙げると、マトリックスメタロプロテイナーゼ、システイン及びセリンプロテアーゼ、その他病態において優先的に過剰発現される傾向のある生化学的マーカーがある。好適な光学イメージング造影剤としては、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRD41、IRD700、NIR−1、LaJolla Blue、IR780、インドシアニン・グリーン(ICG)もしくはアレクサ・フラワー(Alexa Fluor)染料など、又はこれら染料の修飾体を始めとする化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
一実施形態では、二元機能検出試薬は、光学染料及び消光剤分子に共有結合した磁気共鳴造影剤を含む。別の実施形態では、二元機能検出試薬は2種類以上の光学染料と共有結合した磁気共鳴造影剤を含む。さらに別の実施形態では、二元機能検出試薬には複数の光学染料及び複数の消光剤分子と共有結合した磁気共鳴造影剤が含まれる。
【0029】
光学イメージング成分の、1種以上の染料及び/又は1種以上の消光剤は、一般に互いに近接して(例えば、100オングストローム未満の間隔で)位置する。加えて、幾つかの実施形態では、光学イメージング成分で使用される染料は、適当な励起周波数で体外から励起されるとスペクトルの赤色側にわずかにシフトした光を発する。一般に、光学イメージング成分が活性化状態(「オン」)にない場合、1種以上の染料又は1種以上の染料と1種以上の消光剤は相互に近接しており、放射光の再吸収を引き起こし、光学検出器では検出されない。これらの実施形態では、1種以上の染料の間隔、又は1種以上の染料と1種以上の消光剤との間隔が損なわれるか、又は増加した場合、光学イメージング成分は活性化され、すなわち「オン」になり、光学検出器で検出することができる光が放射される。光学イメージング成分は、何らかの生物学的又は情報伝達プロセスの結果としてのみ、1種以上の染料の間隔又は1種以上の染料と1種以上の消光剤との間隔が損なわれるか又は増加されるように設計すればよい。このような生物学的又は情報伝達プロセスの非限定的な例を幾つか挙げると、体内での特定の酵素又は生化学的変化であってその検出のため光学イメージング成分が正確に設計されているもの、組織の温度変化、組織の局所pHの変化がある。このような生物学的又は情報伝達プロセスの存在は、結合の切断又はコンフォメーションの変化を引き起こし、それによって1種以上の染料の間隔又は1種以上の染料と1種以上の消光剤との間隔が損なわれるか又は増加し、検出可能な光が放射される。
【0030】
本発明は、生体内における生化学的活性の高解像度インビボ画像を得る方法も包含する。一つの方法は、一つのモダリティー(MRI)を使用して検出試薬の局在を評価し、一方で第二モダリティー(光学イメージング)を使用して生物学的活性のレベルを同時に評価することを含む。別の方法では、生体の解剖学的情報の画像を得るとともに、生体の機能的情報の画像を得るが、生体内には二元機能検出試薬が存在する。この実施形態では、二元機能検出試薬は、生体の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と、生体の機能的情報を向上させることができる活性化可能な第二成分を含んでおり、活性化可能な第二成分は所定の事象の存在下でのみ活性化される。本発明の二元機能検出試薬は、いかなる好適な方法で投与してもよいが、好ましくは静脈内注射によって投与される。
【0031】
本発明の二元機能検出試薬は、2つの異なるモダリティーにより解剖学的及び機能的情報の双方を同時に得ることを可能にする。本発明の実施形態では、第一モダリティー(磁気共鳴イメージング)は高解像度の解剖学的情報を提供して、検出試薬の正確な解剖学的局在を判定することができる。本発明の実施形態では、第二モダリティー(光学イメージング)は、機能的情報又は代謝情報を提供する。こうした解剖学的情報と機能的情報との組合せによって、現存のものよりも簡単にしかも早期に疾患を診断し、治療することができるようになり、患者の快復及び/又は治癒機会が高まる。
【0032】
一実施形態では、二元機能検出試薬は、光学染料#1、光学染料#2及びMRI造影剤で選択的にグラフト化及び/又は末端結合したポリマー又はコポリマーを含む。このような試薬の非限定的な例の幾つかを以下に挙げる。
【0033】
【化1】
【0034】
式中、波線はポリマー(ポリペプチド)又はコポリマー(ポリペプチド/pNAコポリマー)とすることができ、実線はポリマー又はコポリマーに共有結合した部分(アミノ酸又はpNA側鎖)を表す。光学染料としては、例えばCy7Q(染料#1)及びCy5.5(染料#2)などの市販の染料がある。MRI造影剤は、ポリマー又はコポリマー、好ましくは、例えばGd−(DTPA)などのキレート化ガドリニウム複合体に共有結合している。光学染料が1以上の所定の事象の存在下でのみ活性化可能である限り、本発明の範囲内で、様々な代替的な光学染料及び磁気造影剤を使用してもよい。
【0035】
他の実施形態では、二元機能検出試薬は以下のものを含む。
【0036】
【化2】
【0037】
本発明の一つの二元機能検出試薬は、図1A〜1Eに示し、かつ以下にさらに詳しく説明する通り合成できる。まず、各種リンカー及び固相担体又は樹脂を用いた標準Fmoc化学を用いた固相合成法で、例えばポリペプチドFmoc−N−Gly−Pro−Leu−Gly−Val−Arg(Pmc)−Gly−Lys(Aloc)−Gly−Asp(OBut)−C−リンカー−樹脂のようなポリマーを合成する。あらゆる適当なアミノ酸配列がポリマーに使用できる。Fmocで保護されたアミノ酸及び固相担体は供給業者から購入すればよく、ペプチド合成は所望に応じてペプチドシンセサイザで自動化できる。ペプチドの合成は、市販ポリスチレン樹脂を用いてC末端から開始する。アスパラギン酸のカルボン酸基を、酸感受性保護基であるtert−ブチルエステル(OBut)で保護する。リジン側鎖のアミン基を、直交性の保護基であるアリルオキシカルボニル(Aloc)で保護する。アルギニンアミノ酸のグアニジン基を、2,2,4,6,7−ペンタメチル−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pmc)などの酸感受性保護基で保護して、次のものを得る。
【0038】
【化3】
【0039】
保護基を有する10量体ペプチドを、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(Pd(PPh3)4)などのパラジウム複合体、酢酸及びトリブチルスズ水素化物で処理すると、Aloc保護基が除去されて遊離アミンが残り、次のものが得られる。
【0040】
【化4】
【0041】
この化合物を次いでアミン反応性のCy5.5 NHSエステルで処理すると、次のものが得られる。
【0042】
【化5】
【0043】
このN−末端をピペリジンの20%DMF溶液で脱保護してFmoc基を除去して遊離アミンを得る。
【0044】
【化6】
【0045】
この化合物をアミン反応性のCy7Q NHSエステルで処理して次のものを得る。
【0046】
【化7】
【0047】
次いで、適当なスカベンジャーの存在下でトリフルオロ酢酸などの酸を使用すれば、固相担体から染料−ペプチド接合物を切り離すことができ、またアルギニンアミノ酸及びアスパラギン酸アミノ酸が同時に脱保護され、次のものが得られる。
【0048】
【化8】
【0049】
この化合物を、次いでジスクシンイミジルカーボネートなどの適当な活性化剤で処理し、カルボン酸を活性化して、次のものを得る。
【0050】
【化9】
【0051】
この化合物を次いでp−アミノベンジル−DTPA−ペンタ(t−Bu)エステルで処理し、次のものを得る。
【0052】
【化10】
【0053】
トリフルオロ酢酸で処理して二元機能リガンドのカルボン酸基を脱保護してt−ブチル基を除去し、次のものを得る。
【0054】
【化11】
【0055】
最後に、GdCl3で処理してDTPAのカルボン酸基にガドリニウムをキレート化し、pHを調整して本発明の二元機能検出試薬を得る。
【0056】
【化12】
【0057】
本実施形態の最終的な化学構造を、図1Eに示す。この実施形態でCy5.5を選択したのは、ヘム、デオキシ−ヘム、組織、水などによる干渉が最も小さいためである。Cy5.5は、約673nmの光を吸収し、約692nmの光を発する。「暗色」染料としてCy7Qを選択したは、これが発光せず、Cy5.5とCy7Qとの間隔が約100オングストローム未満である限り(つまり、アミノ酸鎖がインタクトなままであれば)、Cy5.5からの放射光のみを吸収するからである。Cy7QとCy5.5が互いに近接している(それらの間隔が約100オングストローム以内である)場合、Cy7Qは消光剤として作用する。しかし、所定の事象が存在する(すなわち、特定の酵素が存在する)場合、アミノ酸鎖はアミノ酸残基間で切断され、かかる化合物の光学イメージング成分を活性化し、光学的に検出可能な光を放射する。Gd−(DTPA)は常時「オン」である磁気共鳴造影剤として選択した。
【0058】
図2A〜2Dに、本発明の別の二元機能検出試薬の合成法を示し、この実施形態の最終的な化学構造を図2Dに示す。この実施形態は、図1A〜1Eに記載した方法と同様の方法で合成し得る。
【0059】
図3A〜3Dには、本発明の二元機能検出試薬のさらに別の合成法を示し、この実施形態の最終的な化学構造を図3Dに示す。この実施形態は、図1A〜1Eに記載した方法と同様の方法で合成し得る。
【0060】
以上、MRI/光学イメージング複合システムで同時に使用するための二元機能検出試薬について説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく代替的な複合イメージングシステムで同時に使用するための二元機能検出試薬を設計し得ることは明らかであろう。例えば、コンピュータ断層撮影(CT)と光学イメージングで同時に使用するための、又はポジトロン放出断層撮影(PET)と光学イメージングで同時に使用するための二元機能検出試薬も、CT/PET造影剤が常時「オン」すなわち活性化されていて、光学イメージング成分が所定の特異的事象の存在下でのみ活性化可能である限り、本発明の範囲に属する。光学イメージングと組合せることができるその他の診断イメージング技術としては、X線による技術、超音波、放射活性材料による診断技術(例えば、シンチグラフィー及びSPECT)などが挙げられる。
【0061】
以上、本発明の様々な実施形態を説明してきた。しかし、これらの実施形態は本発明の様々な実施形態の原理を単に例証するに過ぎないものことは理解されるべきである。それらの数多くの修飾及び適応は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、当業者にとって明らかなものになるはずである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲とそれらの均等物の範囲内に含まれる、あらゆる好適な修飾及び変更を網羅することが意図されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1A】図1Aは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2D】図2Dは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3C】図3Cは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3D】図3Dは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、医学診断イメージングの分野に関する。さらに具体的には、本発明は磁気共鳴イメージング(「MRI」)と光学イメージングの双方に機能し得る二元機能造影剤の設計及び合成、並びにかかる試薬を使用して生体における生化学的活性の高解像度インビボ画像を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(「MRI」)は、人体に関する高解像度の解剖学的情報をもたらす医学診断技術として20年以上前に確立され、以来多数の疾患の検出に使用されてきた。MRIでは、核磁気共鳴の原理を使用して身体の画像を生み出す。MRIは、いずれの角度及び/又は方向からでも、いずれの身体の部位のものでも、比較的短時間でしかも外科的侵襲をすることなく、薄切片画像を作製することができる。MRIはまた、身体のいずれの断面でも、生化学的化合物の「マップ」を作ることもできる。
【0003】
身体が小さな生物学的磁石(これはMRIには最も重要で、プロトンとしても知られる水素原子核である)で満たされているため、人体でのMRIが可能となる。患者がMRIユニットに入れられると、その身体は地球の磁場よりも30000倍を超える強い定常磁場の中に置かれる。MRIは電磁波で身体を刺激して、プロトンの定常状態での方向を変化させ、それらを磁場に沿った一方向又は別方向に並ばせる。次いで、MRIは電磁波を止めて、選択された周波数で身体の電磁気伝達を「聞く」。コンピュータ断層写真撮影スキャナ(CATスキャナ)用に開発されたものと同様の原理を用いて体内の画像を構築するため、伝達シグナルが用いられる。組織と腫瘍の核磁気緩和時間は異なるので、MRIで構築された画像として異常を視覚化することができる。
【0004】
光学イメージングは、患者を電離放射線に曝さないので、診断モダリティーとしての受容度が常に高い。光学イメージングは、正常と腫瘍組織との吸収、散乱及び/又は蛍光の差異の検出に基づく。光学イメージングの一例として、近赤外蛍光(「NIRF」)イメージングがある。一般にNIRFイメージングでは、所定のバンド幅のフィルター光又はレーザが励起光の光源として使用される。励起光は身体を通り抜け、NIRF分子又は光学イメージング剤に遭遇すると励起光が吸収される。蛍光分子(すなわち、光学イメージング剤)は次いで、励起光とスペクトル的に識別できる検出可能な光(つまり、波長の異なる光)を発する。一般に、NIRFイメージングで検出可能な光は、約600〜1200nmの波長を有する。光学イメージング剤は標的/バックグラウンド比を数桁増加させ、標的領域の可視性と識別性を高める。光学イメージング剤は、特殊な事象が存在するときだけ(所定の酵素の存在下でのみ)、検出可能な光を発するように設計することができる。NIRFイメージングなどの光学イメージングは、体内での特定のタンパク質又は酵素の過剰産生などの機能的又は代謝的変化を検出するのに大いに有望である。大半の疾患では解剖学的変化が起こる前に体内での所期機能的又は代謝的変化を誘発するので、これは有用である。これらの代謝的変化を検出することができると、疾患の初期段階での検出、診断及び処置が可能となり、患者の快復及び/又は治癒機会が向上する。
【0005】
造影剤は、ヒトの身体で得られる画像を向上及び/又は増強すべく、MRI及び/又は光学イメージングと併せて使用されることが多い。造影剤は、2つの組織間のコントラストを変化させるために体内に導入される化学物質である。一般に、MRI造影剤は、MRI造影剤に近接した水分子のプロトン緩和率に影響を及ぼして、画像を増強するように設計されている磁気プローブを含む。こうしたMRI造影剤に近接した組織でのT1(スピン−格子緩和時間)及びT2(スピン−スピン緩和時間)の選択的変化が組織のコントラストを変化させ、MRIで視覚化される。一般に光学造影剤は、外部放射光で励起されたときに発光するように設計された染料を含んでいる。発光は光学イメージングデバイスで検出される。
【0006】
造影剤は、ヒトの脈管構造、細胞外空間及び/又は細胞内空間における異常を視覚化できるように、通常ヒトの循環系への静脈内注射に投与される。ある種の造影剤は、ヒトの脈管構造に留まって脈管構造を強調する。他の造影剤には、血管壁を透過して、例えばレセプターとの結合など異なる機構を介して細胞外空間又は細胞内空間での異常を強調するものもある。造影剤を組織に注射した後、最初に造影剤の濃度が増加し、次いで組織から造影剤が除去されるに伴って濃度が低下し始める。一般に、こうすると、ある組織は別の組織よりも親和性又は血管分布が高いので、コントラストが増強される。例えば、腫瘍は血管分布及び/又は血管壁透過性が増しているので、大半の腫瘍は周囲の組織よりもMRI造影剤の取り込みが多く、T1時間の短縮とMRIでのシグナル変化が大きい。
【0007】
一般的なMRI造影剤は、(1)ガドリニウム(Gd)などの常磁性金属イオンの複合体又は(2)被覆鉄ナノ粒子の2つの分類のいずれかに属する。遊離金属イオンは身体に毒性を有するので、通常、体内の分子との複合体形成を防ぐべく他の分子又はイオンと複合体を形成して毒性を下げている。典型的なMRI造影剤の例を幾つか挙げると、Gd−EDTA、Gd−DTPA、Gd−DOTA、Gd−BOPTA、Gd−DOPTA、Gd−DTPA−BMA(ガドジアミド)、ferumoxsil、フェルモキシデス(ferumoxide)及びferumoxtranがあるが、これらに限られない。
【0008】
別の部類のMRI造影剤として「スマート」造影剤と呼ばれるものがあり、身体の生理的常態又は腫瘍の性質によって活性化される造影剤、例えばpH、温度及び/又は特定の酵素又はイオンの存在によって活性化される試薬が挙げられる。MRIスマート造影剤の例を幾つか挙げると、身体中のカルシウム濃度に感受性の造影剤又はpH感受性のものがあるが、これらに限られない。
【0009】
「スマート」光学造影剤は最近ヒトの体内での酵素活性をモニターするのにインビボで用いられている。こうしたスマート造影剤は、特異的プロテアーゼの存在下のみで、コントラストを生じる。プロテアーゼは、多様な疾患プロセスに関わる重要な因子であるので、特異的酵素に対する造影剤又はプローブが適合するように調製できれば、様々な病態に対するマーカー酵素の発現レベルを検出することを最終的に可能となるはずである。このアプローチは、光学イメージングによって皮膚表面付近の病態の研究に必要な情報を与えることができる。しかし、低い局部的情報が光学イメージングの特徴であるので、体内の深部の病態の診断には、1以上の別のモダリティーが必要とされる。
【0010】
造影剤は有用なだけでなく、特定の疾患の存在を検出するのに時間がかかることが多い。例えば、MRIにおけるコントラストの機構(T1、T2及び/又はプロトン密度など)はある程度限られており、ある種の疾患は外から造影剤を添加せずにはMRIで検出できないままである。これは、ある種の疾患では、造影剤を添加せずにコントラストに影響を与えるパラメータがないためである。したがって、MRIを造影剤と組合せて使用することで、ある種の病態の検出感度が高まり、MRI単独では検出できない疾患が検出できるようになる。例えば、造影剤存在下でのMRIは、乳房腫瘍の検出には非常に高感度であるが、癌組織の検出に対する特異性は非常に低い。癌組織を同定するための特異性はMRIでは随分低いが、これは新血管の補充及び産生などの多数の病態が、癌組織のものと同様のマーカーで特徴付けられるためである。
【0011】
MRI及び光学イメージングの双方とも有用な情報を提供するものの、いずれも、あらゆる疾患の初期診断に役立つすべての情報を独立して提供するものではない。前述の通り、退部分の疾患では解剖学的変化が起こる前に、身体に初期の機能的又は代謝的変化が誘起される。これらの代謝的変化は現行MRI技術で検出することはほとんど不可能であるが、光学イメージングはこのような変化を検出するのに大いに有望である。ただし、乳房のイメージングなどの用途を想定すると、光学イメージングはそれ自体、達成可能な空間的解像度が非常に限られている。大体、光学画像の空間的解像度は、光源と検出器との間の距離の約3分の1であり、9cmの乳房の小さな病変の場所を特定するための精度は約3cmということになる。光学イメージングで病態の場所を特定する際のこうした不正確さは、克服できない短所となりかねず、さもなければ有望な診断技術が使われなくなってしまいかねない。しかし、より完全な解剖学的及び機能的情報を得るために、MRIと光学イメージングを一緒に利用すれば有益であり、疾患の初期検出に役立つことが知られている。実際、光学イメージングとMRIは本質的に互いに適合性のもので、乳房のMRI画像と光学画像を同時に取得することは既に行われている。しかし、解剖学的情報を増強するための常時活性化された磁気共鳴成分と機能的情報を向上させるための活性化可能な光学成分とを含む単一の二元機能造影剤は現在のところ存在していない。
【0012】
多くの造影剤及び/又は検出試薬が知られている。しかし、多くは単機能のものにすぎず、二元機能のものではない。単機能造影剤に関する先行技術は、2つの異なるモダリティーから同時に画像を得る単一の検出試薬を使用することができることを示唆するものではない。幾つかの二元機能検出試薬が知られているものの、そのいずれも、常に活性化されている第一成分と、所定の事象の存在下でのみ検出可能なシグナルを発する(特殊な酵素の存在下でのみ検出可能な光を発する)活性化可能な第二成分を含むものではない。さらに、二元機能造影剤に関する先行技術で、活性化可能な光学イメージング成分の使用について開示又は示唆したものはないし、磁気共鳴イメージング剤を活性化可能な光学イメージング成分と組合せることを開示又は示唆したものもない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、疾患の初期検出に一段と有用なシステム及び方法が必要とされている。また、生体内の生化学的活性の高解像度検出が可能となるシステム及び方法も必要とされている。さらに、2つの異なるモダリティーで同時に利用できる二元機能造影剤も必要とされている。さらには、MRI及び光学イメージングの双方で同時に利用することができる二元機能造影剤も必要とされている。さらに、向上した解剖学的情報を得るための常に活性化された第一成分と、向上した機能的情報を得るための活性化可能な第二成分を含む二元機能造影剤も必要とされている。最後に、一成分が所定の事象の存在下でのみ活性化可能な活性化可能成分である二元機能造影剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、既存の造影剤及びそれらを使用する方法の上述の短所は、本発明の実施形態によって解消される。本発明の実施形態は、疾患の初期検出に役立つシステム及び方法を提供する。これらのシステム及び方法により、生体内の生化学的活性の局在性の高解像度インビボイメージングが可能となる。本発明の実施形態は、2つの異なるモダリティーで同時に利用することができる二元機能造影剤を含む。一実施形態は、MRI及び光学イメージングの双方に同時に利用し得る二元機能造影剤を含む。これら二元機能造影剤の実施形態は、向上した解剖学的情報を得るための常に活性化されている第一成分と、向上した機能的情報を得るための活性化可能な第二成分を含む。実施形態では、二元機能造影剤は所定の事象の存在下でのみ活性化可能な活性化可能成分を含む。
【0015】
本発明は、二元機能造影剤又はプローブ及びその使用方法に関する。本発明の一実施形態は、MRI及び光学イメージングの双方に同時に有用な二元機能造影剤又はプローブを含む。実施形態では、これら二元機能造影剤は磁気共鳴成分及び光学イメージング成分を含む。実施形態では、光学イメージング成分は一種の染料分子及び一種の消光剤を含む。他の実施形態では、光学イメージング成分は二種の染料分子を含む。さらなる実施形態では、光学イメージング成分は複数種の染料分子及び複数種の消光剤を含む。
【0016】
前記で概説したニーズにしたがって、本発明の実施形態は、二元機能検出試薬であって、各々、1種類以上の磁気共鳴造影剤と共有結合した1種類以上の活性化可能な光学造影剤又は染料を含むものを提供する。一実施形態では、二元機能検出試薬は光学染料及び消光剤分子の双方に共有結合した磁気共鳴造影剤を含み、その二元機能検出試薬が特定の波長の光で励起されたときに、光学検出器で検出される光量を低減すべく、消光剤が放射光を効率的に吸収するように、当該染料と消光剤が結合される。磁気共鳴造影剤は、キレート化ガドリニウム複合体(すなわち、Gd−DTPA又はGd−DOTA)、被覆酸化鉄ナノ粒子等を含んでいてもよい。リンカーは、化学結合又は空間を介して染料と消光剤分子とが近接するように設計できる。さらには、リンカーは何らかの生物学又は情報伝達プロセス(すなわち、酵素切断)の結果、染料と消光剤との近接が損なわれ(すなわち、染料と消光剤との間の距離が増大し)、発光して、光学イメージングデバイスで検出できるように設計すればよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、解剖学的及び機能的(代謝)情報の双方を同時に得ることができるように、標的領域の同時MRI及び光学イメージングが可能となるように設計された二元機能検出試薬を提供する。解剖学的情報は、MRI及び磁気共鳴造影剤で得られ、機能的/代謝情報は光学イメージング並びに1種以上の光学染料及び/又は消光剤によって得られる。本発明の実施形態では、磁気共鳴造影剤は常時「オン」(すなわち、常に活性化及び/又は検出可能な状態)に設計され、光学造影剤は染料が消光分子に近接しなくなった場合に限り「オン」となるように設計される(すなわち、特定波長の光が光学造影剤を活性化又は励起したとき、特殊な酵素の存在によって染料と消光分子が切断されたときにのみに「オン」つまり活性化又は検出可能となるように、光学造影剤を活性化可能な状態とする)。適当な波長を有する光で造影剤を励起すれば、造影剤の中の染料が励起光を吸収して再度放射線を発するであろう。染料と消光剤とが互いに近接している限り、こうした再放射線/光は消光剤によって吸収されるはずであり、再放射光のうち光学検出器に当たるものはほとんどないであろう。この場合、光学造影剤は「オフ」になっていると判断される。しかし、染料と消光剤とが相互に離れて動く(すなわち、切断、結合破断又はコンフォメーション変化がもとで)のであれば、染料はやはり励起光を吸収し、わずかに異なる波長の放射線を再び発するであろう。染料と消光剤とが離れすぎているため、この再放射線/光は消光剤によって吸収されないはずであり、光は光学検出器で検出されることになろう。この場合、光学造影剤は「オン」になっていると判断される。
【0018】
本発明の一つの特徴は、二元機能試薬の共局在化に関する。この共局在化は、磁気共鳴造影剤と光学造影剤/染料との共有結合によって可能となる。本発明の別の実施形態の特徴として、磁気共鳴成分と光学成分が消光剤分子に共有結合し、消光剤分子が染料に近接しているため、励起された光学造影剤の放射光を効率よく吸収する。本発明のさらに別の特徴として、生物学的情報伝達プロセス(酵素切断)によって消光剤分子の近接度を減じ、光学造影剤を活性化して「オン」にする一方で、磁気共鳴造影剤と光学染料とは共有結合したままである。活性化可能な光学造影剤で生じた光学シグナルは、生物学的情報伝達プロセスに直接関連するもので、機能的情報を検出することが可能となる。
【0019】
本発明は、現行の磁気共鳴造影剤を使用した解剖学的イメージングに付随するあらゆる利点を有し、さらに、光学イメージングによって機能的情報を同時に得ることも可能となる。本発明の二元機能MRI/光学イメージング造影剤は、高解像度の解剖学的及び機能的情報を同時に取得することを可能とする。好ましくは、これら造影剤の光学成分は、特殊な事象の存在下でのみ(特殊な酵素がヒトの身体に存在し、しかも特定波長の光が光学造影剤を励起する場合にのみ)活性化される。
【0020】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング成分と活性化可能な光学イメージング成分とを含む二元機能検出試薬であるが、これらの成分は好ましくは互いに共有結合している。一実施形態では、磁気共鳴イメージング成分及び光学イメージング成分は、単一の二元機能検出試薬に含まれている。本発明の二元機能検出試薬は、生体の磁気共鳴画像及び光学画像を、好ましくは同時に得ることを可能にする。一実施形態では、活性化可能な光学イメージング成分は、所定の波長の光の存在下でのみ、並びに所定の事象の存在下でのみ(所定の酵素の存在下及び/又は蛍光活性化部位で酵素による切断が起こった場合など)活性化される。一実施形態では、本発明の磁気共鳴イメージング成分は、連続的に活性化されてもよく、キレート化ガドリニウム複合体などの常磁性材料、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、もしくはイッテルビウム(Yb)などの常磁性イオンのキレート又は被覆鉄ナノ粒子などを含んでいてもよい。本発明の活性化可能な光学イメージング成分は、1種類以上の光学染料を含み、1種類以上の消光剤(これは染料でもよい)も含んでいてもよい。本発明の磁気共鳴イメージング成分によって向上した解剖学的情報を得ることができるようになり、活性化可能な光学イメージング成分によって向上した機能的/代謝情報を得ることをできる。ここで「向上した」とは、二元機能造影剤を用いて得られる画像又は情報の質が、造影剤を使用せずに得られる画像又は情報よりも改善されていることを意味する。
【0021】
本発明の実施形態は、生体内の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と、生体内の機能的/代謝情報を向上させることができる活性化可能な第二成分を含む二元機能検出試薬である。本発明の一実施形態では、第一成分及び第二成分は、単一の二元機能検出試薬に含まれている。実施形態では、向上した解剖学的情報及び向上した機能的情報は同時に得られる。一実施形態では、第一成分は常に活性化(「オン」)されており、活性化可能な第二成分は、所定の波長の光の存在下で、(1)所定の酵素の存在下、(2)蛍光活性化部位で酵素による切断が起こった場合、(3)温度が所定の数値を上回るかもしくは下回った場合、又は(4)pHが所定の数値を上回るかもしくは下回った場合などの所定の事象の存在下でのみ活性化(「オン」)になる。向上した解剖学的情報は、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影又は磁気共鳴イメージングによって得ることができる。向上した機能的情報は、近赤外線蛍光イメージングで得ることができる。
【0022】
本発明の実施形態には、生体に本発明の二元機能検出試薬を投与し、当該生体の解剖学的情報の画像を取得する工程、及び当該生体の機能的/代謝情報の画像を取得する工程を含む、身体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを取得する方法も包含される。これらの画像は、同時に取得してもよい。一実施形態では、二元機能検出試薬は静脈内に投与されるが、その他経口又は筋肉内などいかなる好適な方法でも投与し得る。実施形態では、解剖学的情報の画像は、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影又は磁気共鳴イメージングで得ることができる。実施形態では、機能的情報の画像は、光学イメージングで得ることができる。
【0023】
本発明の実施形態には、身体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを得るためのシステムも包含される。一つのシステムは、生体の解剖学的情報の画像を得るための二元機能検出試薬の第一イメージング成分を検出することができる第一イメージングデバイスと、生体の機能的/代謝情報の画像を得るための二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分を検出することができる第二イメージングデバイスとを備える。第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスは、同時に利用することができ、二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分は、所定の事象の存在下でのみ活性化し得る。第一イメージングデバイスは、磁気共鳴イメージングデバイス、コンピュータ断層撮影デバイス又はポジトロン放出断層撮影デバイスを備えるものがある。第二イメージングデバイスは、光学イメージングデバイスを備えるものがある。一実施形態では、第一イメージングデバイスは磁気共鳴イメージングデバイスを備え、第二イメージングデバイスは光学イメージングデバイスを備える。実施形態では、第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスは同時に利用し得る。
【0024】
本発明のさらなる特性、特徴及び利点は、本発明の好ましい形態の幾つかを例示した添付の図面(図面全てを通じて、同様の符号は同様の部分を示す)を参照した以下の説明によって、当業者にさらに容易に明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の理解を促すべく、図1A〜3Dに例示するような、本発明の好ましい実施形態の幾つか、及びそれらを示す特別の用語について言及する。本明細書中で用いる語は説明を目的とするものであって、限定的なものではない。本明細書中に開示された特定の構造及び機能的な詳細は、限定的に解釈されるべきでなく、本発明を様々に採用するよう当業者に教示するための代表的な基礎として、特許請求の範囲の単なる基礎にすぎないものとして解釈されるべきものである。示された検出試薬及びこれを用いた方法の、いずれの修飾又は変更、並びに本明細書中に例示されるような本発明の原理のこのようなさらなる適用のいずれであっても、当業者が通常想起するであろうものは、本発明の精神の範囲内にあると考えられる。
【0026】
本発明の実施形態には、MRI造影剤及び光学的に検出可能な試薬又は染料の双方として機能する二元機能検出試薬が包含される。これらの二元機能検出試薬は、組織内での生化学的変化に伴う生理学的な変化の検出に役立ち、組織異常、心血管疾患、血栓症、癌などが挙げられる。本明細書で用いる「MRI造影剤」又は「磁気共鳴造影剤」という用語は、MRI画像を増強することができる分子を意味する。MRI造影剤は一般に、キレート剤に結合した常磁性金属イオンを含む。本明細書で用いる「常磁性金属イオン」とは、磁場に平行又は非平行に、磁場に比例して磁化された金属イオンを意味する。一般に、常磁性金属イオンは不対電子を有する金属イオンである。好適な常磁性イオンの非限定的な例を幾つか挙げると、マンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びガドリニウム(Gd)がある。本明細書で用いる「光学的に検出可能な試薬」、「光学的に検出可能な染料」、「光学的造影剤」及び/又は「光学染料」とは、光輝性化合物(光励起後に検出可能なエネルギーを発する化合物)を意味する。光学染料は、蛍光性であってもよい。
【0027】
実施形態では、本発明の二元機能検出試薬は、磁気共鳴成分及び光学イメージング成分を含む。磁気共鳴成分は、この試薬の場所を常に検出できるように、好ましくは常時活性化(「オン」)造影剤を含む。好適な磁気共鳴造影剤としては、Gd−DTPA、Gd−DOTA、被覆鉄ナノ粒子などの1種以上の常磁性キレートが挙げられるが、これらに限定されない。光学イメージング成分は、特定の事象下でのみ活性化される、活性化可能な造影剤又は染料を含む。光学イメージング成分が活性化(「オン」)されると、検出可能な光を発する。光学イメージング成分が活性化(「オン」)されていない場合、再放射光のうち光学検出器に至るものはほとんどない。例えば、光学イメージング成分は、特定の波長の光の存在下で、(1)特殊な生化学的マーカーの存在、(2)蛍光活性化部位での酵素切断、(3)温度の上昇もしくは低下、又は(4)pHの上昇もしくは低下がある場合に、活性化される(「オン」となる)。本発明の光学イメージング成分を活性化し得る生化学的マーカーの非限定的な例を幾つか挙げると、マトリックスメタロプロテイナーゼ、システイン及びセリンプロテアーゼ、その他病態において優先的に過剰発現される傾向のある生化学的マーカーがある。好適な光学イメージング造影剤としては、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRD41、IRD700、NIR−1、LaJolla Blue、IR780、インドシアニン・グリーン(ICG)もしくはアレクサ・フラワー(Alexa Fluor)染料など、又はこれら染料の修飾体を始めとする化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
一実施形態では、二元機能検出試薬は、光学染料及び消光剤分子に共有結合した磁気共鳴造影剤を含む。別の実施形態では、二元機能検出試薬は2種類以上の光学染料と共有結合した磁気共鳴造影剤を含む。さらに別の実施形態では、二元機能検出試薬には複数の光学染料及び複数の消光剤分子と共有結合した磁気共鳴造影剤が含まれる。
【0029】
光学イメージング成分の、1種以上の染料及び/又は1種以上の消光剤は、一般に互いに近接して(例えば、100オングストローム未満の間隔で)位置する。加えて、幾つかの実施形態では、光学イメージング成分で使用される染料は、適当な励起周波数で体外から励起されるとスペクトルの赤色側にわずかにシフトした光を発する。一般に、光学イメージング成分が活性化状態(「オン」)にない場合、1種以上の染料又は1種以上の染料と1種以上の消光剤は相互に近接しており、放射光の再吸収を引き起こし、光学検出器では検出されない。これらの実施形態では、1種以上の染料の間隔、又は1種以上の染料と1種以上の消光剤との間隔が損なわれるか、又は増加した場合、光学イメージング成分は活性化され、すなわち「オン」になり、光学検出器で検出することができる光が放射される。光学イメージング成分は、何らかの生物学的又は情報伝達プロセスの結果としてのみ、1種以上の染料の間隔又は1種以上の染料と1種以上の消光剤との間隔が損なわれるか又は増加されるように設計すればよい。このような生物学的又は情報伝達プロセスの非限定的な例を幾つか挙げると、体内での特定の酵素又は生化学的変化であってその検出のため光学イメージング成分が正確に設計されているもの、組織の温度変化、組織の局所pHの変化がある。このような生物学的又は情報伝達プロセスの存在は、結合の切断又はコンフォメーションの変化を引き起こし、それによって1種以上の染料の間隔又は1種以上の染料と1種以上の消光剤との間隔が損なわれるか又は増加し、検出可能な光が放射される。
【0030】
本発明は、生体内における生化学的活性の高解像度インビボ画像を得る方法も包含する。一つの方法は、一つのモダリティー(MRI)を使用して検出試薬の局在を評価し、一方で第二モダリティー(光学イメージング)を使用して生物学的活性のレベルを同時に評価することを含む。別の方法では、生体の解剖学的情報の画像を得るとともに、生体の機能的情報の画像を得るが、生体内には二元機能検出試薬が存在する。この実施形態では、二元機能検出試薬は、生体の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と、生体の機能的情報を向上させることができる活性化可能な第二成分を含んでおり、活性化可能な第二成分は所定の事象の存在下でのみ活性化される。本発明の二元機能検出試薬は、いかなる好適な方法で投与してもよいが、好ましくは静脈内注射によって投与される。
【0031】
本発明の二元機能検出試薬は、2つの異なるモダリティーにより解剖学的及び機能的情報の双方を同時に得ることを可能にする。本発明の実施形態では、第一モダリティー(磁気共鳴イメージング)は高解像度の解剖学的情報を提供して、検出試薬の正確な解剖学的局在を判定することができる。本発明の実施形態では、第二モダリティー(光学イメージング)は、機能的情報又は代謝情報を提供する。こうした解剖学的情報と機能的情報との組合せによって、現存のものよりも簡単にしかも早期に疾患を診断し、治療することができるようになり、患者の快復及び/又は治癒機会が高まる。
【0032】
一実施形態では、二元機能検出試薬は、光学染料#1、光学染料#2及びMRI造影剤で選択的にグラフト化及び/又は末端結合したポリマー又はコポリマーを含む。このような試薬の非限定的な例の幾つかを以下に挙げる。
【0033】
【化1】
【0034】
式中、波線はポリマー(ポリペプチド)又はコポリマー(ポリペプチド/pNAコポリマー)とすることができ、実線はポリマー又はコポリマーに共有結合した部分(アミノ酸又はpNA側鎖)を表す。光学染料としては、例えばCy7Q(染料#1)及びCy5.5(染料#2)などの市販の染料がある。MRI造影剤は、ポリマー又はコポリマー、好ましくは、例えばGd−(DTPA)などのキレート化ガドリニウム複合体に共有結合している。光学染料が1以上の所定の事象の存在下でのみ活性化可能である限り、本発明の範囲内で、様々な代替的な光学染料及び磁気造影剤を使用してもよい。
【0035】
他の実施形態では、二元機能検出試薬は以下のものを含む。
【0036】
【化2】
【0037】
本発明の一つの二元機能検出試薬は、図1A〜1Eに示し、かつ以下にさらに詳しく説明する通り合成できる。まず、各種リンカー及び固相担体又は樹脂を用いた標準Fmoc化学を用いた固相合成法で、例えばポリペプチドFmoc−N−Gly−Pro−Leu−Gly−Val−Arg(Pmc)−Gly−Lys(Aloc)−Gly−Asp(OBut)−C−リンカー−樹脂のようなポリマーを合成する。あらゆる適当なアミノ酸配列がポリマーに使用できる。Fmocで保護されたアミノ酸及び固相担体は供給業者から購入すればよく、ペプチド合成は所望に応じてペプチドシンセサイザで自動化できる。ペプチドの合成は、市販ポリスチレン樹脂を用いてC末端から開始する。アスパラギン酸のカルボン酸基を、酸感受性保護基であるtert−ブチルエステル(OBut)で保護する。リジン側鎖のアミン基を、直交性の保護基であるアリルオキシカルボニル(Aloc)で保護する。アルギニンアミノ酸のグアニジン基を、2,2,4,6,7−ペンタメチル−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pmc)などの酸感受性保護基で保護して、次のものを得る。
【0038】
【化3】
【0039】
保護基を有する10量体ペプチドを、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(Pd(PPh3)4)などのパラジウム複合体、酢酸及びトリブチルスズ水素化物で処理すると、Aloc保護基が除去されて遊離アミンが残り、次のものが得られる。
【0040】
【化4】
【0041】
この化合物を次いでアミン反応性のCy5.5 NHSエステルで処理すると、次のものが得られる。
【0042】
【化5】
【0043】
このN−末端をピペリジンの20%DMF溶液で脱保護してFmoc基を除去して遊離アミンを得る。
【0044】
【化6】
【0045】
この化合物をアミン反応性のCy7Q NHSエステルで処理して次のものを得る。
【0046】
【化7】
【0047】
次いで、適当なスカベンジャーの存在下でトリフルオロ酢酸などの酸を使用すれば、固相担体から染料−ペプチド接合物を切り離すことができ、またアルギニンアミノ酸及びアスパラギン酸アミノ酸が同時に脱保護され、次のものが得られる。
【0048】
【化8】
【0049】
この化合物を、次いでジスクシンイミジルカーボネートなどの適当な活性化剤で処理し、カルボン酸を活性化して、次のものを得る。
【0050】
【化9】
【0051】
この化合物を次いでp−アミノベンジル−DTPA−ペンタ(t−Bu)エステルで処理し、次のものを得る。
【0052】
【化10】
【0053】
トリフルオロ酢酸で処理して二元機能リガンドのカルボン酸基を脱保護してt−ブチル基を除去し、次のものを得る。
【0054】
【化11】
【0055】
最後に、GdCl3で処理してDTPAのカルボン酸基にガドリニウムをキレート化し、pHを調整して本発明の二元機能検出試薬を得る。
【0056】
【化12】
【0057】
本実施形態の最終的な化学構造を、図1Eに示す。この実施形態でCy5.5を選択したのは、ヘム、デオキシ−ヘム、組織、水などによる干渉が最も小さいためである。Cy5.5は、約673nmの光を吸収し、約692nmの光を発する。「暗色」染料としてCy7Qを選択したは、これが発光せず、Cy5.5とCy7Qとの間隔が約100オングストローム未満である限り(つまり、アミノ酸鎖がインタクトなままであれば)、Cy5.5からの放射光のみを吸収するからである。Cy7QとCy5.5が互いに近接している(それらの間隔が約100オングストローム以内である)場合、Cy7Qは消光剤として作用する。しかし、所定の事象が存在する(すなわち、特定の酵素が存在する)場合、アミノ酸鎖はアミノ酸残基間で切断され、かかる化合物の光学イメージング成分を活性化し、光学的に検出可能な光を放射する。Gd−(DTPA)は常時「オン」である磁気共鳴造影剤として選択した。
【0058】
図2A〜2Dに、本発明の別の二元機能検出試薬の合成法を示し、この実施形態の最終的な化学構造を図2Dに示す。この実施形態は、図1A〜1Eに記載した方法と同様の方法で合成し得る。
【0059】
図3A〜3Dには、本発明の二元機能検出試薬のさらに別の合成法を示し、この実施形態の最終的な化学構造を図3Dに示す。この実施形態は、図1A〜1Eに記載した方法と同様の方法で合成し得る。
【0060】
以上、MRI/光学イメージング複合システムで同時に使用するための二元機能検出試薬について説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく代替的な複合イメージングシステムで同時に使用するための二元機能検出試薬を設計し得ることは明らかであろう。例えば、コンピュータ断層撮影(CT)と光学イメージングで同時に使用するための、又はポジトロン放出断層撮影(PET)と光学イメージングで同時に使用するための二元機能検出試薬も、CT/PET造影剤が常時「オン」すなわち活性化されていて、光学イメージング成分が所定の特異的事象の存在下でのみ活性化可能である限り、本発明の範囲に属する。光学イメージングと組合せることができるその他の診断イメージング技術としては、X線による技術、超音波、放射活性材料による診断技術(例えば、シンチグラフィー及びSPECT)などが挙げられる。
【0061】
以上、本発明の様々な実施形態を説明してきた。しかし、これらの実施形態は本発明の様々な実施形態の原理を単に例証するに過ぎないものことは理解されるべきである。それらの数多くの修飾及び適応は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、当業者にとって明らかなものになるはずである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲とそれらの均等物の範囲内に含まれる、あらゆる好適な修飾及び変更を網羅することが意図されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1A】図1Aは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施形態の一例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図2D】図2Dは、本発明の実施形態の他の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3C】図3Cは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【図3D】図3Dは、本発明の実施形態の第三の例による二元機能検出試薬の合成を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング成分と活性化可能な光学イメージング成分を含む二元機能検出試薬であって、
磁気共鳴イメージング成分及び光学イメージング成分が単一の二元機能検出試薬に含まれており、活性化可能な光学イメージング成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、二元機能検出試薬。
【請求項2】
前記磁気共鳴イメージング成分が常磁性材料及び超常磁性材料の1種類以上を含む、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項3】
前記常磁性材料がキレート化ガドリニウム複合体、常磁性イオンのキレート及び被覆鉄ナノ粒子のうちの1種類以上を含む、請求項2記載の二元機能検出試薬。
【請求項4】
前記常磁性イオンがマンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの1種類以上を含む、請求項3記載の二元機能検出試薬。
【請求項5】
前記超常磁性材料が超常磁性イオンのキレートを含む、請求項2記載の二元機能検出試薬。
【請求項6】
前記超常磁性イオンがマンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの1種類以上を含む、請求項5記載の二元機能検出試薬。
【請求項7】
前記活性化可能な光学イメージング成分が1種類以上の光学染料を含む、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項8】
前記活性化可能な光学イメージング成分がさらに1種類以上の消光剤を含む、請求項7記載の二元機能検出試薬。
【請求項9】
前記磁気共鳴イメージング成分が活性化可能な光学イメージング成分に共有結合している、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項10】
前記所定の事象が、所定の波長の光の存在、並びに所定の酵素の存在、蛍光活性化部位での酵素による切断、温度が所定の数値を上回った場合、温度が所定の数値を下回った場合、pHが所定の数値を上回った場合及びpHが所定の数値を下回った場合の少なくともいずれかを含む、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項11】
前記磁気共鳴イメージング成分が常に活性化されている、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項12】
前記磁気共鳴イメージング成分が生体から向上した解剖学的情報を与えることができる、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項13】
前記活性化可能な光学イメージング成分が生体から向上した機能的情報を与えることができる、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項14】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項13記載の二元機能検出試薬。
【請求項15】
生体の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と生体の機能的情報を向上させることができる活性化可能な第二成分を含む二元機能検出試薬であって、
第一成分及び第二成分が単一の二元機能検出試薬に含まれており、活性化可能な第二成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、二元機能検出試薬。
【請求項16】
第一イメージング成分が常に活性化されている、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項17】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項18】
コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影及び磁気共鳴イメージングのうちの少なくともいずれかによって向上した解剖学的情報が得られる、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項19】
前記向上した機能的情報が近赤外線蛍光イメージングで得られる、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項20】
前記所定の事象が、所定の波長の光の存在、並びに所定の酵素の存在、蛍光活性化部位での酵素による切断、温度が所定の数値を上回った場合、温度が所定の数値を下回った場合、pHが所定の数値を上回った場合及びpHが所定の数値を下回った場合の少なくともいずれかを含む、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項21】
生体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを得る方法であって、当該方法が、
生体の解剖学的情報の画像を取得する工程、及び
生体の機能的情報の画像を取得する工程
を含んでいて、生体内に二元機能検出試薬が存在しており、二元機能検出試薬が、生体の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と生体の機能的情報を向上させることができる活性化可能な第二成分とを含んでおり、活性化可能な第二成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、方法。
【請求項22】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
取得工程を実施する前に、二元機能検出試薬を生体に投与する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記二元機能検出試薬が、静脈内、経口及び筋肉内のうちの少なくともいずれかの方法で投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記生体の解剖学的情報の画像が、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影及び磁気共鳴イメージングのうちの少なくともいずれかで取得される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記生体の機能的情報の画像が光学イメージングで得られる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記取得工程が同時に実施される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
以下の物質を含む二元機能検出試薬。
【化1】
【請求項29】
以下の物質を含む二元機能検出試薬。
【化2】
【請求項30】
以下の物質を含む二元機能検出試薬。
【化3】
【請求項31】
生体における生化学的活性の高解像度インビボ画像を得るためのシステムであって、当該システムが、
生体の解剖学的情報の画像を得るための二元機能検出試薬の第一イメージング成分を検出することができる第一イメージングデバイス、及び
生体の機能的情報の画像を得るための二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分を検出することができる第二イメージングデバイスを備えており、
第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスが同時に利用することができ、二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、システム。
【請求項32】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項31記載のシステム。
【請求項33】
第一イメージングデバイスが、磁気共鳴イメージングデバイス、コンピュータ断層撮影デバイス及びポジトロン放出断層撮影デバイスのうちの少なくともいずれかを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項34】
第二イメージングデバイスが光学イメージングデバイスを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項35】
第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスが同時に利用される、請求項31記載のシステム。
【請求項36】
第一イメージングデバイスが磁気共鳴イメージングデバイスを含み、第二イメージングデバイスが光学イメージングデバイスを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項37】
第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスが同時に利用される、請求項36記載のシステム。
【請求項1】
磁気共鳴イメージング成分と活性化可能な光学イメージング成分を含む二元機能検出試薬であって、
磁気共鳴イメージング成分及び光学イメージング成分が単一の二元機能検出試薬に含まれており、活性化可能な光学イメージング成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、二元機能検出試薬。
【請求項2】
前記磁気共鳴イメージング成分が常磁性材料及び超常磁性材料の1種類以上を含む、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項3】
前記常磁性材料がキレート化ガドリニウム複合体、常磁性イオンのキレート及び被覆鉄ナノ粒子のうちの1種類以上を含む、請求項2記載の二元機能検出試薬。
【請求項4】
前記常磁性イオンがマンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの1種類以上を含む、請求項3記載の二元機能検出試薬。
【請求項5】
前記超常磁性材料が超常磁性イオンのキレートを含む、請求項2記載の二元機能検出試薬。
【請求項6】
前記超常磁性イオンがマンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの1種類以上を含む、請求項5記載の二元機能検出試薬。
【請求項7】
前記活性化可能な光学イメージング成分が1種類以上の光学染料を含む、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項8】
前記活性化可能な光学イメージング成分がさらに1種類以上の消光剤を含む、請求項7記載の二元機能検出試薬。
【請求項9】
前記磁気共鳴イメージング成分が活性化可能な光学イメージング成分に共有結合している、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項10】
前記所定の事象が、所定の波長の光の存在、並びに所定の酵素の存在、蛍光活性化部位での酵素による切断、温度が所定の数値を上回った場合、温度が所定の数値を下回った場合、pHが所定の数値を上回った場合及びpHが所定の数値を下回った場合の少なくともいずれかを含む、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項11】
前記磁気共鳴イメージング成分が常に活性化されている、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項12】
前記磁気共鳴イメージング成分が生体から向上した解剖学的情報を与えることができる、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項13】
前記活性化可能な光学イメージング成分が生体から向上した機能的情報を与えることができる、請求項1記載の二元機能検出試薬。
【請求項14】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項13記載の二元機能検出試薬。
【請求項15】
生体の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と生体の機能的情報を向上させることができる活性化可能な第二成分を含む二元機能検出試薬であって、
第一成分及び第二成分が単一の二元機能検出試薬に含まれており、活性化可能な第二成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、二元機能検出試薬。
【請求項16】
第一イメージング成分が常に活性化されている、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項17】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項18】
コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影及び磁気共鳴イメージングのうちの少なくともいずれかによって向上した解剖学的情報が得られる、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項19】
前記向上した機能的情報が近赤外線蛍光イメージングで得られる、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項20】
前記所定の事象が、所定の波長の光の存在、並びに所定の酵素の存在、蛍光活性化部位での酵素による切断、温度が所定の数値を上回った場合、温度が所定の数値を下回った場合、pHが所定の数値を上回った場合及びpHが所定の数値を下回った場合の少なくともいずれかを含む、請求項15記載の二元機能検出試薬。
【請求項21】
生体における生化学的活性の高解像度インビボイメージングを得る方法であって、当該方法が、
生体の解剖学的情報の画像を取得する工程、及び
生体の機能的情報の画像を取得する工程
を含んでいて、生体内に二元機能検出試薬が存在しており、二元機能検出試薬が、生体の解剖学的情報を向上させることができる第一成分と生体の機能的情報を向上させることができる活性化可能な第二成分とを含んでおり、活性化可能な第二成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、方法。
【請求項22】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
取得工程を実施する前に、二元機能検出試薬を生体に投与する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記二元機能検出試薬が、静脈内、経口及び筋肉内のうちの少なくともいずれかの方法で投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記生体の解剖学的情報の画像が、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影及び磁気共鳴イメージングのうちの少なくともいずれかで取得される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記生体の機能的情報の画像が光学イメージングで得られる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記取得工程が同時に実施される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
以下の物質を含む二元機能検出試薬。
【化1】
【請求項29】
以下の物質を含む二元機能検出試薬。
【化2】
【請求項30】
以下の物質を含む二元機能検出試薬。
【化3】
【請求項31】
生体における生化学的活性の高解像度インビボ画像を得るためのシステムであって、当該システムが、
生体の解剖学的情報の画像を得るための二元機能検出試薬の第一イメージング成分を検出することができる第一イメージングデバイス、及び
生体の機能的情報の画像を得るための二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分を検出することができる第二イメージングデバイスを備えており、
第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスが同時に利用することができ、二元機能検出試薬の活性化可能な第二イメージング成分が所定の事象の存在下でのみ活性化される、システム。
【請求項32】
前記機能的情報が代謝情報を含む、請求項31記載のシステム。
【請求項33】
第一イメージングデバイスが、磁気共鳴イメージングデバイス、コンピュータ断層撮影デバイス及びポジトロン放出断層撮影デバイスのうちの少なくともいずれかを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項34】
第二イメージングデバイスが光学イメージングデバイスを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項35】
第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスが同時に利用される、請求項31記載のシステム。
【請求項36】
第一イメージングデバイスが磁気共鳴イメージングデバイスを含み、第二イメージングデバイスが光学イメージングデバイスを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項37】
第一イメージングデバイス及び第二イメージングデバイスが同時に利用される、請求項36記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【公表番号】特表2006−511473(P2006−511473A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537651(P2004−537651)
【出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/025184
【国際公開番号】WO2004/026344
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/025184
【国際公開番号】WO2004/026344
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
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