説明

蛍光染料

共役π電子架橋と電子受容部分とによって結合される電子供与部分の生物学的アッセイにおいて、標的物質を検出するために有用な蛍光染料。前記π電子架橋は、少なくとも1つの炭素環又は複素環構造を含有する。電子受容部分は、カルボン酸、カルボン酸の塩、又は、化学式(I)を有し、Xは、H、CH及び(CHn6−からなる群から選択され、Zは一価のアニオンであり、nは1から10の正数であり、QはO又はSである。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは蛍光染料に関し、より詳細には生物学的検出法における標的物質の検出及び定量化に有用である蛍光染料に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光標識は生体分子の検出するための重要な技術である。例えば、抗体は蛍光染料を用いて標識されることが可能である。標識後、続いて、特定の標的分子への抗体の結合は、蛍光シグナルにおける変化に基づき、蛍光シグナルにおける変化が増加であるか又は減少であるかが監視される。蛍光におけるこの変化は分光計(スペクトロメーター)、免疫蛍光装置、フローサイトメーター(flow cytometer)、蛍光顕微鏡、又は他の検出機器を用いて検出することができる。同じような方法で、DNA配列は、前記DNAが蛍光染料で標識されている相補的DNA配列を用いてハイブリダイズされた後、蛍光検出装置を使って検出することができる
【0003】
蛍光染料は標的物質を検出及び定量化するために色及び光を使うことができ、反応を詳細に調べ、分析を行う。一般に、大きなストークスシフトを有する蛍光染料(すなわち、蛍光励起と発光波長との間の差異)、低分子量及び優れた安定性は、より迅速でより感度の高い及びより選択的な方法使用することを可能にする。
【0004】
市販の蛍光染料は多くの欠点を有する。例えば、いくつかの蛍光染料は小さすぎる量子収率を有し、従って、少量の標的物質と関連する発光における小さな変化を検出するのに必要とされる感度を欠如している。他の蛍光染料はストークスシフトを有しており、前記ストークスシフトは小さすぎて励起光の十分な検出なしに発光を検出することができない。蛍光染料の励起又は発光スペクトルが低SN比をもたらす標的物質の自己蛍光と重なり合う場合、標的物質は検出することができない。さらに、いくつかの蛍光染料は安定しておらず、保存期間が短く、その結果、蛍光染料はすぐに色あせ非蛍光性になる。さらに他の蛍光染料は励起スペクトルを有しており、前記励起スペクトルは蛍光染料を一般的なレーザー及びアークランプなどの波長制限光源(wavelength−limited light)によって励起することができない。前記の欠点に加えて、多くの市販の蛍光染料は水性の媒体中において不溶性であるという点において更なる欠点を有する。従って、蛍光染料は、基質が標識化する前に、例えば、N,N−Dimethylformamide(DMF)などのように水溶性媒体中で有機溶媒に溶けなければならなく、これらの有機溶媒は高感度の基質に悪影響を及ぼすことがあり得る。蛍光染料の溶解度は溶液中において蛍光染料同士が相互作用する度合に影響を及ぼし、蛍光染料が基質に接合する場合、直接に、光吸収及び発光特性に影響を及ぼす。蛍光染料による細胞物質の非特異的な染色の度合(これは、蛍光測定中、SN比における雑音を増加させる)もまた染料の疎水性の機能であり、蛍光染料に付加された官能基の極性の機能である。最後に、多くの蛍光染料は、合成することが困難であり、購入するにも価格が高く、高コストな検出方法(例えば、DNA、抗原、モノクローナル抗体についての生物学的検定法、及び当業者に周知である他の検出)の原因となる。
【0005】
DNA塩基は、紫外スペクトル中、260nmにおいて吸光度を示すとはいえ、この方法によるDNAの定量化は低感度(高減衰係数)のため大量の材料を必要とする。DNA単独の吸光度検出に必要な十分な材料を入手することは多くの場合かなり困難であり、多くの費用がかかる。医薬品産業及びバイオテクノロジー産業はより小さいスケール(小型)及びハイスループット(高生産性)のアッセイを好む傾向が続いているので、核酸検出及び定量化のより高感度な方法・手段が必要とされている。蛍光に基づいたアッセイは高選択性及び高感度であるが故に魅力的であり、従って、少量の材料を用いた検出を可能にする。
【0006】
シアニン染料(DNA結合すると蛍光強度における変化を示す)は生物学的応用にとって産業上有益なものである。シアニン染料は核酸検出のために開発されてきた。核酸検出は広ダイナミックレンジ全体に渡って、非常に感度が高い。典型的なシアニン染料はピコグリーン(PicoGreenTM(Molecular Probes社の商標)であり、ピコグリーンはμプレートリーダー上で250pg/mLの2本鎖DNA(dsDNA)及びダイナミックレンジ約3オーダーの大きさに対する高感度を有する。ピコグリーン(商標PicoGreenTM)は、一方、一本鎖DNA(ssDNA)と比較すると二本鎖DNAについては特異的ではなく、同一モル濃度の一本鎖DNAの存在下二本鎖DNAを定量することができる。さらに、ピコグリーンは自身の蛍光寿命、高度且つ煩雑な実験に基づいて二本鎖DNAと一本鎖DNAを識別することができる。このように、市販のシアニン染料は一本鎖DNAと二本鎖DNAとを識別することができるが、シアニン染料は高コスト及び小さいストークスシフト(一般的に20nmより小さい)のために完全に十分ではない。小さいストークスシフトはアッセイ中においてノイズの全体を覆うエミッション信号を読み取ることを困難にさせる。小さいストークスシフトの欠点を補うために、狭い波長のレーザー励振源及び多重発光高解像度単色光分光器を使う必要があり、最終的に機器の費用の増加をもたらす。
【0007】
現在、市販の染料が有する前記の問題を受けて、蛍光染料は、比較的、安価な出発物質から容易に合成されることができ、大きいストークスシフトを示し、且つ低分子量を有することが望ましい。これらの特性は励起波長に対して染料発光波長のよりクリーンな検出(cleaner detection)を可能にし、よって、より高価な器具を使用する必要性がなくなる。一本鎖DNA(ssDNA)と比較して、一本鎖DNAに対する選択性よりも二本鎖(dsDNA)に対する選択性の方が高い蛍光染料が望まれている。二本鎖DNAに対する選択性がたかいということは、未反応混合物(すなわちPCR生成物混合物)中において二本鎖DNAを定量化するとき重要である特性を有しているということである。次の特性を有する蛍光染料が望ましい。
・ 標的物質が結合する複数付着部位を有すること。
・ 複数付着部位が蛍光染料を表面に付着する結合能力を有すること。
・ 乾燥状態(dry state)(溶媒を必要とせず)において蛍光性を有していること。
・ 長寿命を有していること。
特定の用途に基づいて操作されることができる水性媒体において可溶な蛍光染料は特に有利である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施例は化学式Iを有する蛍光染料に関し:
【化1】

式中:
・Dは電子供与部分から成る群から選択される;
・B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl及びFから成る群から選択される;
・ Aは以下の化学式を有する電子受容部分であり:
【化2】

式中:
・ XはH、CH、および(CHn6−から成る群から選択され、Z2−は一価のアニオンであり、Zが存在するとき、Zは存在しない;nは1から10の正数である;
・ QはO又はSである;
・ Zは一価のアニオンであり、Zが存在するとき(CHn6−は存在しない;
・nは1から2の正数である。
【0009】
本発明の他の実施例は、化学式IVを有する蛍光染料に関する:
【化3】

式中:
・Dは電子供与部分である;
・X及びXは同一でも又は異なっていてもよく、H、CH、OH、SH、NH、Se、F、Cl、及びCHから成る群から選択され、XがH、F、又はClであるならば、R及びRは存在しない;又は、
・ XがF又はClでないとき、
・ R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、H、CH、及びCH−Qから成る群から選択され、QはOH、SH、及びNHから成る群から選択され、
・ R及びRは、少なくとも一つの環原子を有する炭素環構造又は複素環構造を形成する。前記少なくとも1つの環原子はO、N及びSから成る群から選択される;
・ nは1から2の正数である;
・ Aはカルボン酸及びカルボン酸の塩から成る群から選択された電子受容部分である。
【0010】
本発明の他の実施例は、サンプル中において標的物質を検出するための分析デバイスに関する。前記分析デバイスは 、少なくとも1つの反応領域を有する。前記反応領域は特定の標的物質に接するとき、蛍光する染料を用いて共有結合で標識される。反応領域はサンプルと接触するように配置されている。前記分析デバイスは、蛍光が存在するか又は存在しないかを検出するために前記反応領域に近傍に、少なくとも1つの検出器を有する。
【0011】
本発明の他の実施例は化学式Iの蛍光染料を合成する方法に関する:
【化4】

前記方法は、methylbenzthiazoleに過剰のiodomethane(ヨードメタン)を加えるステップと;
・methylbenzthiazole塩を分離するステップと;
・ methanol中にmethylbenzthiazoleを形成するためにmethanol中における前記methylbenzthiazole塩を溶解するステップと;
・ methanol中で置換したbenzaldehyde及びpiperidinをmethylbenzthiazole溶液に加えるステップと;
・ 反応生成物を分離し、溶液から固体を再結晶化するステップを含む;
化学式I中、
・Dは電子供与部分から成る群から選択される;
・B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される;
・ Aは以下に示す化学式を有する電子受容部分である:
【化5】

式中:
・ XはH、CH及び(CHn6から成る群から選択され、Zは一価のアニオンであり、Zが存在する場合、Zは存在しない;nは1から10の正数である;
・QはO又はSである;
・Z1は一価のアニオンであり、Zが存在する場合、(CHn6は存在しない;
・nは1から2の正数である。
【0012】
本発明の蛍光染料の共通点は電子受容部分に対して共役π電子架橋によって結合される電子供与部分である。前記π電子架橋は少なくとも一つの炭素環構造又は複素環構造を有する。前記電子受容部分は、カルボン酸、カルボン酸の塩、又は以下に示す化学式を有する:
【化6】

式中:
・XはH、CH及び(CHn6から成る群から選択され、式中、Zは一価のアニオンであり、Zが存在する場合、Zは存在しない;nは1から10の正数である;
・QはO又はSである。
【0013】
本発明の蛍光染料は、その各々が前記の一般的な構造を有し、電子供与部分及び電子受容部分の性質・特徴に依存してDNAとの相互作用により発光強度における増加又は減少を示すように説明されている。DNAと相互作用するとき、ほとんど市販の染料は陽性反応又は発光シグナルの増加を示すけれども、陰性反応又は発光シグナルの減少を示す生物学的アッセイの実施例が存在する;例えばIQ(Pierce Biotechnology社の登録商標)キナーゼアッセイプラットフォームがある。この一般的な構造を有する前記蛍光染料は、一本鎖DNAと比較して二本鎖DNAに対する選択を示すために説明されている。本発明の染料はDNA定量化についてほとんどの市販の染料が有するストークスシフトより大きいストークスシフトを有する;このような蛍光染料はより互換性があり、且つ、高性能な機器を必要とせず、より安価であり感度を犠牲にすることなく器具を使用することができる。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、下記に示す詳細な記述におい記載されている。本発明の前記、他の特徴及び利点の一部は当業者には下記の詳細な説明から容易に明らかであり、添付図面と明細書及び特許請求の範囲中に記載されているように、本発明を実施することにより認識される。
【0015】
前記の一般的な説明と以下の詳細な説明はともに本発明の例示にすぎなく、特許請求の範囲に記載されているように本発明の本質及び特徴を理解するための要約又はフレームワーク(枠組み)が示すものであることが理解されるべきである。
【0016】
図面は本発明のさらなる理解を与えるために添付されており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部の構成要素とする。記述とともに、本発明の一つ以上の実施例を示している図面は原理及び本発明の実施を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書で用いられている
・電子供与部分(electron−donating moiety)という表現は 電子供与体(electron donator)又は電子供与体(electron donor)と同義に用いられ、電子密度に寄与するサブスチチュートと呼び又はさらにH、F、又はClを含むことができる;
・電子受容部分(electron−accepting moiety)という表現は、電子受容体(electron acceptor)又は電子求引性(electron withdrawing)と同義に用いられ、ある程度密度(量)の電子を引き寄せるサブスチチュートと呼ぶ;
・ 助色団(auxochrome)という用語は、発色団に結合したとき波長のみならず吸収の強度も変化させる非結合電子を有する飽和した基と呼ぶ;
・“サブスチチュート”という用語は、分子中で他の原子又は他の基と置き換わる原子又は基と呼ぶ。
・本発明は、本発明の例示であることを意図する下記実施例によってさらに明確にされ得る。
【0018】
本発明の一つの実施例は化学式Iを有する蛍光染料に関する:
【化7】

式中:
・Dは電子供与部分から成る群から選択される;
・B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される;
・ Aは以下に示す化学式を有する電子受容部分である:
【化8】

式中:
・ Xは、H、CH、及び(CHn6から成る群から選択され、Zは一価のアニオンであり、Zが存在するときZは存在しない;nは1から10の正数である;
・QはO又はSである;
・Zは一価のアニオンであり、Zが存在するとき(CHn6は存在しない;
・nは1から2の正数である。
【0019】
本発明の他の実施例は化学式IIを有する蛍光染料に関する:
【化9】

式中:
・ XがH、CH、OH、SH、F又はClのときRは存在しない、Xは、H、CH、OH、SH、−NH−、−Se−、−O−、−S−、F、Cl、及びCHから成る群から選択される;
・XがH、CH、OH、SH、F又はClでないとき:
・RはH、CH、及び(CHn4−XはOH、SH、及びNHから成る群から選択され、nは1から10の正数である;
・QはO又はSである;
・ B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される;
・ XはH、CH、及び(CHn6−Zから成る群から選択され、式中、Zは一価のアニオンであり、なお、Zが存在するとき、Zは存在しない;nは1から10の正数である;
・QはO又はSである;
・Zは一価のアニオンであり、なお、Zが存在するとき、(CHn6−Zは存在しない。
【0020】
化学式IIを有する一般的な蛍光染料は、次の通りであるがそれだけには限定されない:
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0021】
本発明の他の実施例は化学式IIIを有する蛍光染料に関する:
【化14】

式中:
・tは1から8の正数である;
・X及びXは同一でも又は異なっていてもよく、O、S、N、NH、NH及びSeから成る群から選択される;
・nは1から3の正数である;
・B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される;
・QはO又はSである;
・Zは一価のアニオンであり、Zが存在するとき、(CHn6−Zは存在しない;
は、H、CH、及び(CHn6−Zから成る群から選択され、式中、Zは一価のアニオンであり、Zが存在するとき、Zは存在しない;nは1から10の正数である。
【0022】
化学式IIIを有する一般的な蛍光染料は以下の通りであるが、それだけには限らない。:
【化15】

化学式I、化学式II、及び化学式IIIにおいて、Qの識別は、より高い蛍光発光を有する本発明のbenztiazole染料(Q=S)のために蛍光量子収率に影響を与えることが分かった。しかし一方、示された一般的な蛍光染料は、Z=Iを有し、任意の生物学的に適合した対イオン(すなわち、安定しており合成する際入手し易い)は使用することができる。対イオンは、例えば、OH、SH、HCO、HSO、HPO、PF、F、CNO、SCN、tetraphenyl borate,BH、Cl、Br、BF、I、NO、SO3、BrO、BrO、BrO3、BrO4、IO、IO、IO、IO、ClO、ClO、ClO、及びClOである。好ましくはZ2はO、S、CO,PO、PF、F、SO及びNOから成る群から選択される。
【0023】
化学式I、化学式II、及び化学式IIIにおいてB及びBは助色団として機能することができ、蛍光染料の電子密度を変化することによって、蛍光染料の蛍光応答を強める。
【0024】
本発明の一般的な蛍光染料は、表1(GA、95、FI及びHE)に記載されているように、容易に入手できる出発原料から合成される。最初に、過剰のヨードメタン(iodomethane)がメチルベンズチアゾール(methylbenzthiazole)(67mmol)に加えられる。反応混合物は24時間還流される。その後、メチルベンゾチアゾリウム塩(methylbennzothiazolium salt)は過剰のヨードメタン(iodomethane)の蒸発によって青白いクリームパウダーとして分離される。次に、精製されていない塩はmethanol(10mL)に溶解され、それに対して3.4mmolの適切な助色団サブスチチュートベンズアルデヒド及び一滴のピぺリジンが加えられた。一般に好まれる助色団サブスチチュートベンズアルデヒド(benzaldehyde)は蛍光染料の最終特性を決定することができ、特に、選択された助色団は染料の色及び溶解度を決定することができる。次に、その結果生じた混合物は、24時間還流される。冷却により形成される固体は分離され望ましい生成物を生成するためにメタノール/水から再結晶化される。単量体染料合成及び一般的な助色団サブスチチュートベンズアルデヒド(benzaldehyde)の様々な例が表1に示されている。
【表1】

二量体シアニン染料HE−HEは、前記に記載したように4,4’−[1,2−ethanediylbis(oxy−2,1−ethaneedilyloxy)]bis−benzaldehydeを使って合成される。前記アルデヒドは市販で入手できず次の通りに合成される:4−hydroxybenzaldehyde(54mmol)は乾燥アセトン(100mL)に溶解され、炭酸カリウム(270mmol)を用いて1時間攪拌される。1,2−Bis(2−iodoethoxy)ethan(10g)は反応物に一滴ずつ滴下され(dropwise)及び混合物は24時間還流により加熱される。冷却した混合物は水に注入され酢酸エチルを用いて抽出される。結合した有機層は無水硫酸マグネシウム上で乾燥され、粘性のある黄色のオイルを得るために濃縮される。粗生成物は溶離液としてヘキサン/酢酸エチルを用いてカラムクロマトグラフィによって精製される。アルデヒドはクリーム色の固体として得られる。
【0025】
緩衝剤中の一般的な蛍光染料の蛍光はFluorolog−3(R)(Spex Industries社の登録商標)スペクトロメーターによって調べられる。典型的・代表的な励起スペクトル及び発光スペクトルは図1に示されている。本発明の蛍光染料は大きいストークスシフトを有している;励起及び発光最大値は互いに100nm近く及び又は100nmより大きく離れている。ピーク波長はTOTO−1TM及びYO−PRO−3TM(Molecular Probes社の商標)の二つの市販の蛍光染料と共に表2に一覧にされている。TOTO−1TM及びYO−PRO−3TMのストークスシフトは、本発明の染料と比較して小さい。
【表2】

*Molecular Probes社カタログから得た市販染料のデータ
【0026】
図2は染料発光に対する一本鎖DNA及び二本鎖DNAの影響を示している。この影響は、染料FI及びHE−HEに関して最も顕著である。本明細書に記載されているすべての染料は、一本鎖DNAを添加することによって変化する発光強度よりも二本鎖DNAを添加することによって変化する発光強度の変化の方が大きいことを示している。ある場合(GA、95)は、前記変化は陽性であり、他の場合では前記変化は陰性である(HE、HE−HE,FI)。
【0027】
1×PCRバッファ(緩衝剤)中において1×10−5Mである本発明の蛍光染料及びTOTO−1TMの発光強度は、蛍光分光計によって、DNAが存在しない場合(free dye emission)と等モルの二本鎖DNA又は一本鎖DNA(20mer)の存在する場合が比較された。フリーダイエミッション(free dye emission)と対する二本鎖DNA又は一本鎖DNAの発光強度が表3に一覧にされている。
【表3】

市販の染料
【0028】
この例において、染料FIは一本鎖DNAの存在下ではほとんど発光強度の変化を示さないが、二本鎖DNAの存在下では28.7倍の変化を示している。HE−HEは二本鎖DNAの存在下では13.5倍の変化を示している。市販の蛍光染料であるTOTO−1TMは、二本鎖DNAとの相互作用にすると(比はより小さい。なぜならTOTO−1TMはDNAと結合していくと増加するからである)非常に大きい変化を示し、一本鎖DNAと相互作用するときはほとんど変化しない。TOTO−1TMは二本鎖DNAに対しては高い感度を示すけれども、TOTO−1TMは小さいストークスシフトを有し、小さいストークスシフトは発光強度の検出のために高度な機器を必要とする。このデータは研究用のスペクトロメーターから得られていることを念頭に置くことが必要である;それ程、高度ではないプレートリーダーから得られたデータは相違している部分が有り得る;その点において、TOTO−1TMの二本鎖DNAに対する感度の利点は、それ程、高度ではないプレートリーダーにおけるSN比に対しては実現されない(得られない)ことである。本発明の蛍光染料は大きなストークスシフトを有し発光強度を検出するためにそれ程、高度な機器でなくても使用することができる。
【0029】
核酸の高速大量処理スクリーニング(ハイスループットスクリーニング)のために、前記染料はマイクロウェルアッセイにおいて使用することができる。原則としてプレートリーダーは、蛍光スペクトロメーターによく似た蛍光強度を測定するけれども、サンプル形式(ウェルとキュベット)及び使用する光学機器のために独特であるいくつかの特徴を持つ。これらの理由のために、本発明の蛍光染料の検出感度及び検出範囲はマイクロプレートリーダーにおいて測定・決定される。最適な励起波長及び発光波長において、Molecular Probes社より入手した3つの先端を行く市販の蛍光染料に対して、本発明の蛍光染料はバッファと染料のみでマイクロプレートが読み込んだ変化率が表4に示されている。バックグラウンド信号は、2つのサンプルにおいてバッファと染料のみで読みとられた。100μl/wellの体積に対して市販の染料のバックグラウンドは76−115%の変化を示し、一方、これらの値は、HE−HE及び95に対しては著しく低く、本発明の蛍光染料は2つのサンプルに対して変化を低く維持することができ、より重要なことには、さらに低いサンプル体積のときには、蛍光染料及びサンプルの改良された物質利用を可能にする。大きくなったストークスシフトを有する蛍光染料の必要性は、この例において明らかである。生物学的アッセイにおける標的物質の検出のためには蛍光の変化がシステムにおけるノイズと区別される必要があり、前記システム内で染料を加えたバッファはノイズの原因となる。
【表4】

*市販の染料
【0030】
表5に示されている蛍光染料は感度(最低検出限界)及びダイナミックレンジを決定するために二本鎖DNAを用いて滴定された。96ウェルポリスチレン コーニング コースター(コーニング社の登録商標)マイクロウェルプレートは様々な濃度の二本鎖DNAと混合された100μL/wellの染料が流し込まれ、混合物を均一化させるために、2時間室温でインキュベートされた。染料蛍光は、次に、スぺクトラマックス(SpectraMax)(Molecular Devices 社の登録商標)で計測された。相対蛍光強度(RFU)はpg/μLにおけるDNA濃度と対照してプロットされた。各々の染料についての実験パラメーター及び実験結果は表5に示されている。蛍光染料HE−HEは市販の染料TOTO−1TMよりも高い感度として現れ、より大きいダイナミックレンジを示す。本発明の蛍光染料、95は、感度の点から見ると、市販のTOTO−1TMにほぼ同じだがより大きいダイナミックレンジを有する。
【表5】

*市販の染料
【0031】
図3は、プレートリーダーアッセイにおける、市販蛍光染料TOTO−1TMに対する本発明の蛍光染料、HE−HE及び95の一本鎖DNA/二本鎖DNAの選択について図示している。二本鎖DNAについてのTOTO−1TMの優れた選択性は蛍光光度計データと一致する。95は二本鎖DNAに対して好適であり、一方で、HE−HEは一本鎖DNAより二本鎖DNAに対して感度がほんの少し高いだけである。開示された染料の結合形態についてより研究・検討することによって、二本鎖DNA検出について最適化された群の構成要素を設計及び合成することが可能であろう。
【0032】
本発明の他の実施例は、化学式IVを有する蛍光染料に関する:
【化16】

式中:
・Dは電子供与体である。
・X及びXは同一でも又は異なっていてもよく、H、CH、OH、SH、NH、Se、F、Cl、及びCHから成る群から選択され、ただし、Xが、H、F、又はCl及びCHであるならば、R及びRは存在しない;
・XがF又はClでないとき:
・R又はRは同一でも又は異なっていてもよく、H、CH、及びCH−Qから成る群から選択され、Qは、OH、SH、及びNHから成る群から選択され、
・R又はRはO、N、又はSから成る群から選択された少なくとも1つの環原子を有する炭素環構造又は複素環構造を形成する;
・nは1から2の正数である;
・ Aはカルボン酸及びカルボン酸の塩から成る群から選択された電子受容部分である。
・ 好ましくは、Dは以下に示す化学式から成る群から選択される。
【化17】

式中:
・ Q及びQは同一でもよく又は異なっていてもよく、CH、O、S、及びNHから成る群から選択される:
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

式中:
・X11は、O、S、及びNから成る群から選択される;
・R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、H、CH、及び(CHn5−Xから成る群から選択され、XはOH、SH、及びNHから成る群から選択され、nは1から10の正数である;
・X11がO又はSのとき、R及びRのどちらか一方しか存在せず、他方は存在しない。
・ 好ましくは、Aは以下に示す化学式から成る群から選択される:
【化23】

式中:
・ Mは一価のカチオンである;
【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

式中;
Lは金属である。
【0033】
化学式IVを有する蛍光染料は以下の一般的な図式に従って合成することができる:
【化28】

【0034】
実施例
実施例1
2−bromothiopheneのアミノ化についての一般的な合成
【化29】

2−Bromothiophene(16.3g,0.1mol)、2−(ethylamino)ethanol(100ml)、Cu metal(0.32g)、CuI(0.85g)、KPO(42.4g)は、磁性を帯びたスターラ―バー、濃縮装置が取り付けられ隔壁で密封されたフラスコに加えられた。反応混合物は窒素ポジションプレッシャー下、72時間、80℃において攪拌された。反応物が室温まで冷却された後、600mlの水が加えられ、混合物はエチルエーテル(3200ml)で抽出された。結合した有機層は、次に塩水で洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥された。溶媒は真空内で取り除かれ、残留物は、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶出されたシリカゲル上においてフラッシュクロマトグラフィによって精製された。生成物は液体として得られた。2−bromothiopheneのアミノ化の実施例は表7に示されている。
【表6】

実施例2
2−bromomethylthiopheneの一般的合成
三臭化リン(Tribromide phosphorous)(PBr、54.2g、0.2mol)は、エチルエーテル(300mL)中で、2−hydroxymethylthiphene(50.0g、0.44mol)に0℃において滴下された(dropwise)。前記混合物は室温でひと晩攪拌され飽和した炭酸水素ナトリウム溶液(400mL)に注がれた。有機層は分離され、炭酸水素ナトリウム溶液(2×100mL)及び水(100mL)で洗浄された。有機物は、硫酸マグネシウム上で乾燥された。溶媒の蒸発後、標的合成物が得られ、更に生成することなく直ちに使用された。収率は72.0グラム、92.8%であった。
実施例3
2−thienylmethyltributylphosphonium bromideの一般的合成
2−bromomethylthiophene(72g、0.41mol)は、トルエン(400mL)に溶解された。前記溶液に対して、tributylphosphine(82g、0.41mol)が加えられた。前記混合物は、90℃でひと晩加熱された。前記混合物は室温まで冷却され、固体は濾過された。前記固体はエチルエーテル(200mL)によって洗浄され、142.3グラム(収率92.3%)が生じた。
実施例4
4−[N,N−dimethylaminophenylethenyl]thiopheneの一般的合成
2−thienylmethyltributylphosphonium bromide(20.9g、0.055mol)及び4−N,N−dimethylaminophenylaldehyde(7.5g、0.05mol)はDMF(ジメチルホルムアミド)(100mL)に溶解された。前記混合物に対して、Sodiumethoxy(NaOC:ナトリウムエトキシド)(エタノール、65mL中に1.0M溶液)は滴下された(dropwise)。前記混合物は90℃でひと晩加熱され水(500mL)に注がれた。固体は濾過によって集められた。固体は水で洗浄されエタノール(100mL)から再結晶され、10.5gの結晶が得られ、収率は91.3%であった。
実施例5
4−{[N,N−dimethyl−amino]−phenylene−thien−5}−formate lithiumの一般的合成
4−[N,N−dimethylaminophenylethenyl]thiophene(4.58g、0.02mol)は、乾燥THF(テトラヒドロフラン)(50mL)に溶解され、−78℃に冷却された。前記溶液に対して、butyllithium(ヘキサン中において8.0mL、0.02mol、2.5M)滴下された(dropwise)。黄色い溶液は急速に色がグリーンに変化した。溶液はゆっくりと−20℃まで温められ(このプロセスの間、この溶液の色が黄色に戻ったなら、BuLiをもう少し加える)次に、−78℃まで冷却された。二酸化炭素(CO)ガスは、次に6時間溶液を通過して発泡された。THF(テトラヒドロフラン)は真空で蒸発された。残留物は集められ水によって洗浄された。最終生成物はエタノールから再結晶することによって精製され、2.65グラムを生じ、収率は47.5%であった。
【化30】

【化31】

実施例6
Phosphoniums Saltの一般的合成
【化32】

【化33】

NaI(15.0g、0.1mol)、HO(7.80ml)及びHOAc(22.2ml)は、toluene(150ml)中で、N,N−dialkylbenzenamine(0.1mol)、PhP(26.2g、0.1mol)及びparaformaldehyde(3.0g、0.03mol)の溶液に加えられた。結果として得られた混合物は24時間還流された。HO(200ml)が混合物に加えられ、抽出はCHClを用いて行われ、有機層はNaHCOで洗浄され、次に、HOで洗浄され、その次に、MgSO上で乾燥された。次に、溶媒は蒸発された。残留物はエタノールから再結晶することによって精製された。Phosphoniums Saltの実施例が表6に示されている。
【表7】

【0035】
化学式IVを有する典型的な蛍光染料の例としては以下のものがあるが、これらに限定されない:
【化34】

【化35】

【化36】

【0036】
蛍光染料及び他の市販の染料、そのピーク励起及び発光波長は極めて近接していることとは異なり、MH染料は約200nmピーク間を有する。
【0037】
本発明の蛍光染料は、より優れた安定性又はより長い保存期限を示す。つまり、前記染料の蛍光発光の機能性は数か月間透明容器において室温で保管される場合、保たれる。本発明の蛍光染料は、電子供与部分又は電子受容部分が望ましく拘束された表面上で反応基と反応できるという条件で、任意の以下の表面、例えば、ガラス、ポリマー、金属又は任意の組合せで拘束されることができる。米国特許出願No.2004/0043508 A1は、その全開示内容は本明細書にすべて組み込まれたものとし、そこに開示されている表面は、本発明の蛍光染料を繋ぐために適した反応基を提供する。結果として生じる繋がれた表面は、蛍光染料で標識されるようになる。蛍光染料は前記表面に共有結合し、あらかじめパッケージされた蛍光染料で標識された分析装置を提供する機会を提供している。分析デバイスは、単一表面から反応領域としては次のようなものが挙げられる。単一表面では、蛍光染料が分析のためにサンプルを導入する注入口を含む高性能なデバイスに、標的物質を含んでいるかどうか分らないが、共有結合で結合している。反応領域と流体連結している流体では、蛍光染料は蛍光が存在するか又は存在しないかを評価できる反応領域に極めて接近して、検出器を有する反応領域に共有結合で結合している。適切な反応領域は下記によって実証されている:顕微鏡スライド、マイクロアレイ、フラスコ、キャピラリーチューブ、マイクロビーズ、ナノビーズ、マイクロウェルプレート、マイクロ流体導管、及びマイクロ流体リザーバー。分析デバイスは、さらに抽出物質のための反応領域と流体連結している流体に出口をさらに含んでもよい。注入口及び排出口は同じスペースを占め又は同じ構造であり得る。例えば、フラスコである。すなわち注入口及び排出口は互いに隔てられており又は異なる構造であり得る。例えば、フロースルーマイクロフルディックデバイスである。分析デバイスは複数の注入口、反応領域、検出器、及び出口を含むことができる。表面は繋ぐために必要とされる反応基を与えるために覆われることもある。例えば、GAPSTM又はUltraGAPSTM(コーニング社の商標)スライドのような被膜された顕微鏡スライドは適切な表面を与えることができる。適切な表面はまたEpicTM(コーニング社の商標)システムマイクロプレートによって提供され得る。表面は、薄膜であってもよく又は表面は他の構造を有する薄膜の組合せ、例えば、これらに限定されないが、一つ又は複数の薄膜を有するフラスコを含有することもある。蛍光染料は、当該技術分野において一般に用いられているがマイクロビーズ及びナノビーズの表面に蛍光染料が取り付けることによって生物学的アッセイにおいて標的物質用のフィルターとして使われることもある。表面は個々の用途について必要な環境・条件・構成を提供するために任意の形又は任意のサイズを取り得る。前記連結能力は、これらに限定されるわけではないが、PCRプレート又はマイクロプレートなどのような被膜された表面を通じて直接のDNAの定量化を可能にする。表面に連結された本発明の蛍光染料はDNA生成が起こる処理、例えば、PCRを行うことによりDNAが生成するプロセスによって、DNAの結合が起こると蛍光シグナルにおいて変化が生じる。この手法の利点のいくつかは、「表面上」の読み取りに対して感度が高く、その結果さらなる蛍光染料の追加を必要とせず、且つ、生じたPCR生成物は染料除去ステップを施さずに次の使用時に使うことができる。
【0038】
本発明の蛍光染料は前記において説明したように、一本鎖DNAに対してより、二本鎖DNAに対してより感度が高い。生物学的アッセイの全体的な誘電定数に追加しながら、一本鎖DNAは蛍光染料に対してバッファを生じ、生物学的アッセイの全体的な誘電定数に加わります。二本鎖DNAは親水性及び疎水性の領域を有しており、前記領域は誘電状況を変化させ、従って、染料の蛍光発光に影響する。誘電状況変化に対するこの感度のために、本発明の蛍光染料は96ウェルマイクロプレートにおいて最低検出限界(あるケースにおいては、約10ng/well)を有する。これらの染料は、誘電状況における変化に基づいて電子再組織化を通じて変化し、染料の蛍光が導入される。これら染料分子は、構造上、ほぼ平面である。平面構造は、電子供与部分と電子受容部分との間で共役したπ‐電子架橋を通じて維持される。これは、多くの市販の染料が分子再配向に基づいて変化し、電子再組織化に基づいては変化しないという点において、市販の蛍光染料とは異なる。
【0039】
本発明の蛍光染料の溶解度は用途によって操作される(変えられる)。蛍光染料の親水性及び疎水性は電子供与部分及び電子受容部分の長さ及びサブスチチュートに基づいて変化する場合もある。典型的には、より長い構造はより低い親水性をもたらす傾向がある。溶解度は、本発明に開示されている様々な構造と関連する電子供与部分又は電子受容部分における官能基以外の官能基を変えることにより影響を受けることもある。従って、蛍光染料の溶解度は用途における特定の要件を満たすように調整することができる。
【0040】
さまざまな改良及び変形が本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に対してなしえることは当業者であれば明らかであろう。すなわち、本発明は、ここに添付した特許請求の範囲及びそれらの均等の範囲において与えられる本発明の改良及び変形をカバーすることを包含している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明は、添付の図面と一緒に読まれるとき、下記の詳細な説明により最大限に理解される。
【図1】バッファ中における特定の染料の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。
【図2】HE−HE発光に対する一本鎖DNA及び二本鎖DNAの効果を示す図である。
【図3】プレートリーダーアッセイにおける一本鎖DNA及び/二本鎖DNAに関する染料の性能を示す三つの図である。
【図4】MH1、MH2、MH3染料のストークスシフトを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iを有する蛍光染料であって:
【化1】

式中:
・Dは電子供与部分から成る群から選択される;
・B及びBは同一でも又は異なっていても良く、H、OH、NH、Cl、及びFからなる群から選択される;
・ Aは以下の化学式を有する電子受容部分である:
【化2】

式中:
・ XはH、CH、及び(CHn6−からなる群から選択され、Zは一価のアニオンであり、さらにZが存在するならば、Zは存在しない;nは1から10の正数である;
・ QはO又はSである;
・ Zは一価のアニオンであり、Zが存在するならば、(CHn6−は存在しない;
・nは1から2の正数であることを特徴とする蛍光染料。
【請求項2】
は、OH、SH、HCO、HSO、HSO、HPO、HPO、PF、F、CNO、SCN、tetraphenyl borate、BH、Cl、I、Br、BF、I3、NO、SO、BrO、BrO、BrO、BrO、IO、IO、IO、IO、ClO、ClO、ClO、及びClOからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光染料。
【請求項3】
2は、O、S、CO、PO、PF、F、SO、及びNOから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光染料。
【請求項4】
化学式IIを有する請求項1に記載の蛍光染料。
【化3】

式中:
・XはH、CH、OH,SH、−NH−、−Se−、−O−、−S−、F、Cl、及びCHから成る群から選択され、XがH、CH、OH、SH、F又はClであるならば、Rは存在しない。
・XがH、CH、OH、SH、F又はClではないとき:
・ RはH、CH、及び(CHn4−Xから成る群から選択され、XはOH、SH及びNHから成る群から選択され、nは1から10の正数である;
・QはO又はSである;
・B及びBは同一でも異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される;
・XはH、CH、及び(CHn6−Zから成る群から選択され、Zは一価のアニオンであり、Zが存在するならば、Zは存在しない;nは1から10の正数である。
・QはO又はSである;
・ Zは一価のアニオンであり、Zが存在するならば、(CHn6−Zは存在しない。
【請求項5】
化学式IIIを有する請求項1に記載の蛍光染料であって:
【化4】

式中:
・tは1から8の正数である;
・X及びXは同一でも又は異なっていてもよく、O,S、N、NH、NH及びSeから成る群から選択される;
・nは1から3の正数である;
・B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される;
・QはO又はSである:
・Zは一価のアニオンであり、Zが存在するならば、(CHn6−Zは存在しない;
・XはH、CH及び(CHn6−Zから成る群から選択され、Zは一価のアニオンであり、Zが存在するならば、Zは存在しない;nは1から10の正数である。
【請求項6】
化学式IVを有する蛍光染料であって:
【化5】

式中:
・Dは電子供与部分である;
・X及びXは同一でも異なっていてもよく、H、CH、OH、SH、NH、Se、F、Cl、及びCHから成る群から選択され、XがH、F、又はClであるならばR及びRは存在しない;
・XがF又はClではないとき:
・R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、H、CH、及びCH−Qから成る群から選択され、QはOH、SH、及びNHから成る群から選択され、又は、
・R及びRはO、N、及びSから成る群から選択される少なくとも1つの環原子を有する炭素環構造又は複素環構造を形成する;
・nは1から2の正数である;
・Aはカルボン酸及びカルボン酸の塩から成る群から選択された電子受容部分であることを特徴とする蛍光染料。
【請求項7】
は以下に示す化学式から成る群から選択される:
【化6】

式中:
・Q及びQは同一でも又は異なっていてもよく、CH,O,S及びNHから成る群から選択される。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

式中:
・ X11はO、S、及びNから成る群から選択される;
・R及びRは同一でもよく異なっていてもよく、H、CH、及び(CHn5−Xから成る群から選択され、式中、XはOH、SH、及びNHから成る群から選択される。nは1から10の正数である;
・X11がO又はSのとき、R及びRのうちの一方しか存在せず、他方は存在しないということを特徴とする請求項6に記載の蛍光染料。
【請求項8】
は以下に示す化学式から成る群から選択される:
【化12】

式中:
・ Mは一価のカチオンである;
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

式中:
・Lは金属であることを特徴とする請求項6に記載の蛍光染料。
【請求項9】
標的物質と請求項1に記載の蛍光染料を接触させるステップと蛍光染料を励起するステップと蛍光を検出するステップとを含む生物学的アッセイにおける標的物質の検出方法。
【請求項10】
標的物質と請求項6に記載の蛍光染料を接触させるステップと蛍光染料を励起するステップと蛍光を検出するステップとを含む生物学的アッセイにおける標的物質の検出方法。
【請求項11】
請求項1に記載の蛍光染料及び溶媒を含むことを特徴とする組成物
【請求項12】
請求項6に記載の蛍光染料及び溶媒を含むことを特徴とする組成物
【請求項13】
化学式Iの蛍光染料を合成する方法であって:
【化17】

前記方法は:
過剰のヨードメタン(iodomethane)をメチルベンズチアゾール(methylbenzthiazole)に加えるステップと;
・メチルベンズチアゾール(methylbenzthiazole)塩を分離するステップと;
・メタノール中にメチルベンズチアゾール溶液を形成するためにメタノール中にメチルベンズチアゾール塩を溶解するステップと
・メタノール中で置換したベンズアルデヒド及びピペリジンをメチルベンズチアゾール溶液に加えるステップと
・溶液から反応生成物を分離し、溶液から固体を再結晶するステップを含み;
化学式I中において;
・Dは電子供与部分から成る群から選択される;
・B及びBは同一でも又は異なっていてもよく、H、OH、NH、Cl、及びFから成る群から選択される。
・ Aは以下に示す化学式を有する電子受容部分である:
【化18】

式中:
・XはH、CH、及び(CHn6から成る群から選択され、Zは一価のアニオンであり、Zが存在するならば、Z1は存在しない;nは1から10の正数である:
・QはO又はSである;
・Z1は一価のアニオンであり、Z1が存在するならば、(CHn6は存在しない;nは1から10の正数である;
・ Qは、O又はSである;
・ Z1は一価のアニオンであり、Z1が存在するならば、(CHn6は存在しない;
・nは1から2の正数であることを特徴とする化学式Iの蛍光染料合成方法。
【請求項14】
少なくとも1つの反応領域と少なくとも1つの検出器を含む分析デバイスであって、
前記反応領域は、特定の標的物質と接触するとき蛍光を発する染料を用いて共有結合で標識され、前記反応領域はサンプルと接触するために配置されており、前記検出器は蛍光が存在するか又は存在しないのかを検出するために前記反応領域に極めて近接して設けられることを特徴とする分析デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの反応領域が、化学式Iを有する前記蛍光染料を用いて共有結合で標識されていることを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの反応領域は、化学式IVを有する前記蛍光染料を用いて共有結合で標識されていることを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つの反応領域が蛍光染料を用いて共有結合で標識されたガラス表面を含むことを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの反応領域が蛍光染料を用いて共有結合で標識されたポリマー表面を含むことを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項19】
前記少なくとも1つの反応領域は、蛍光染料を用いて共有結合で標識された金属表面を包含することを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項20】
直列に配列された複数の反応領域をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項21】
平行な複数の反応領域をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。
【請求項22】
前記少なくとも1つの反応領域は、顕微鏡のスライド、マイクロアレイ、フラスコ、キャピラリーチューブ、マイクロビーズ、ナノビーズ、マイクロウェルプレート、マイクロ流体の流路、及びマイクロ流体のリザーバーから成る群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の分析デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−522406(P2009−522406A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548601(P2008−548601)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/048307
【国際公開番号】WO2007/078926
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】