説明

蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システム

【課題】簡単な構成で蛍光だけを受光することができる小型の蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムを提供する。
【解決手段】蛍光物質に励起光を照射する発光部と、励起光を遮断し蛍光物質の発光する蛍光を透過する励起光カットフィルタと、励起光カットフィルタを透過した蛍光を受光して電気信号に変換する受光部と、を有する蛍光検出ユニットにおいて、発光部は、蛍光物質で正反射した励起光が受光部に入射しない角度から励起光を照射するように構成されていることを特徴とする蛍光検出ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0003】
また、本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、マイクロポンプによって微細流路に液体を注入して試薬などを移動させ、反応部、次いで検出部へ流すことにより、血液など検体との反応結果を測定することができる反応検出装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。このような反応検出装置では、マイクロチップの検出部に蛍光検出ユニットの発光部から励起光を照射し、試薬に含まれる蛍光物質の発光する非常に微弱な蛍光を蛍光検出ユニットの受光部で検出するように構成されている。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2006−149379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の蛍光検出ユニットの例を図10に示す。
【0005】
1はマイクロチップであり、検出部19で試薬と検体の反応結果を測定する。発光部160から照射される励起光は、スリット157を介してレンズ158に入射し、レンズ158で集光された励起光はダイクロイックミラー159で反射し、検出部19を照射する。検出部19で発生する蛍光は、ダイクロイックミラー159を透過してレンズ155に入射し、レンズ155で集光された光は励起光カットフィルタ156を介して受光部161に入射する。
【0006】
このように、従来は励起光と蛍光が光学的に同軸に配置されていた。そのため、ダイクロイックミラー159を透過した光には励起光が多く含まれているので、励起光カットフィルタ156により励起光をカットし、蛍光のみを受光部161に入射するようにしていた。
【0007】
しかしながら、蛍光物質を励起する励起光と、蛍光の波長の差は数nm〜数10nmと非常に少ない。そのため、励起光カットフィルタ156は、励起光と蛍光を分離するために急峻な遮断特性を持つ必要がある。このようなフィルタは製造が困難なため大型で高価なうえ、受光部161に入射する励起光を完全に除去することは難しかった。
【0008】
また、蛍光検出ユニットは、マイクロチップの複数の検出部19を測定できるように小型の光学系が求められているが、ダイクロイックミラー159のため小型化が難しかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で蛍光だけを受光することができる小型の蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0011】
1.
蛍光物質に励起光を照射する発光部と、
前記蛍光物質の発光する蛍光を受光して電気信号に変換する受光部と、
を有する蛍光検出ユニットにおいて、
前記発光部は、前記蛍光物質で正反射した前記励起光が前記受光部に入射しない角度から前記励起光を照射するように構成されていることを特徴とする蛍光検出ユニット。
【0012】
2.
1に記載の蛍光検出ユニットを有し、
前記蛍光検出ユニットによって蛍光物質に励起光を照射し、受光した蛍光を変換した電気信号を測定することを特徴とする反応検出装置。
【0013】
3.
蛍光物質を含む試薬と反応させた検体を光学的に検出可能な検出部を有するマイクロチップと、
2に記載の反応検出装置と、
を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。
【0014】
4.
前記マイクロチップは複数の前記検出部を有し、
前記反応検出装置は、
前記蛍光検出ユニットを所定の位置に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する位置制御手段と、
を有し、
前記位置制御手段は、前記蛍光検出ユニットが複数の前記検出部の一つに前記励起光を照射して前記蛍光物質の蛍光を受光できる位置に順次移動するよう前記駆動手段を制御することを特徴とする3に記載のマイクロチップ検査システム。
【0015】
5.
前記蛍光を反射して前記受光部に入射させる蛍光反射板を配設したことを特徴とする3または4に記載のマイクロチップ検査システム。
【0016】
6.
前記蛍光反射板は、
前記検出部の周辺付近に、端面がマイクロチップ1の表面に当接または略当接するように配設された第1蛍光反射板と、
前記発光部から照射する励起光を遮らない位置に第1蛍光反射板と対向して平行に配置された第2蛍光反射板と、
から構成されることを特徴とする5に記載のマイクロチップ検査システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発光部は蛍光物質で正反射した励起光が受光部に入射しない角度から励起光を照射するので、簡単な構成で蛍光だけを受光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態における反応検出装置80の外観図である。
【0020】
反応検出装置80はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。
【0021】
反応検出装置80の筐体82には挿入口83があり、マイクロチップ1を挿入口83に差し込んで筐体82の内部にセットするようになっている。なお、挿入口83はマイクロチップ1を挿入時に挿入口83に接触しないように、マイクロチップ1の厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子である。
【0022】
検査担当者は図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。反応検出装置80の内部では、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われ、検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0023】
検査担当者は、検査終了後、マイクロチップ1を挿入口83から取り出す。
【0024】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例について、図2を用いて説明する。
【0025】
図2(a)、図2(b)はマイクロチップ1の外観図である。図2(a)において矢印は、後述する反応検出装置80にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図2(a)は挿入時にマイクロチップ1の下面となる面を図示している。図2(b)はマイクロチップ1の側面図である。
【0026】
図2(a)の窓111はマイクロチップ1内部の検出部19で行われる検体と蛍光物質を含む試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入部であり、各駆動液注入部110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。113はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0027】
図2(b)に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。
【0028】
マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0029】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0030】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーサブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラステック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0031】
本実施形態では、検出部19において、蛍光物質の検出を光学的に行うので、少なくともこの部位の基板は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。本実施形態においては、検出部の窓111は光透過性の材料が用いられていて、窓111を光が透過するようになっている。
【0032】
本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。本実施形態では、これらの微細流路および流路エレメントによってマイクロチップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図2(c)を用いて説明する。なお、本発明の適用は図2(c)で説明するマイクロチップ1の例に限定されるものでは無く、様々な用途のマイクロチップ1に適用できる。
【0033】
図2(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
【0034】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部121、試薬類を収容する試薬収容部120などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部120には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図2(c)において、試薬収容部120、検体収容部121および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0035】
マイクロチップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0036】
少なくともマイクロチップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、マイクロチップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0037】
検体注入部113はマイクロチップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入部110はマイクロチップ1に駆動液11を注入するための注入部である。マイクロチップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部113から注射器などを用いて注入する。図2(c)に示すように、検体注入部113から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部121に収容される。
【0038】
次に、駆動液注入部110aから駆動液11を注入すると、駆動液11は連通する微細流路を通って検体収容部121に収容されている検体を押し出し、増幅部122に検体を送り込む。
【0039】
一方、駆動液注入部110bから注入された駆動液11は、連通する微細流路を通って試薬収容部120aに収容されている蛍光物質を含む試薬を押し出す。試薬収容部120aから押し出された蛍光物質を含む試薬は増幅部122に駆動液11によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部122の部分を所定の温度にする必要があり、後で説明するように反応検出装置80の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0040】
所定の反応時間の後、さらに駆動液11により増幅部122から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部19に注入される。窓111から検出部19に励起光を照射すると、検体と反応した試薬が蛍光を発光するので蛍光の光量を測定することにより反応結果を計測することができる。
【0041】
図3は、本発明の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す斜視図、図4は、本発明の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す断面図、である。
【0042】
反応検出装置80は、温度調節ユニット152、蛍光検出ユニット15、駆動液ポンプ92、パッキン90、駆動液タンク91、送りネジ301、ジョイント302、モータ300などから構成される。図3、図4はマイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン90bに密着させている状態である。以下、図3、図4を用いて実施形態を説明する。
【0043】
温度調節ユニット152とマイクロチップ1は、図示せぬ駆動部材により駆動され、紙面上下方向に移動可能である。初期状態において、駆動部材により温度調節ユニット152を、図3の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。すると、マイクロチップ1は図3の矢印A方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0044】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の面を所定の温度に調整するユニットである。
【0045】
次に、駆動部材により温度調節ユニット152とマイクロチップ1を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン90bに密着させる。
【0046】
マイクロチップ1の検出部19では、検体と前記マイクロチップ1内に貯蔵された蛍光物質を含む試薬が反応し、励起光を照射すると蛍光をおこす。本実施形態では検出部19でおこる試薬の反応結果を、窓111から光学的に検出する。
【0047】
図3に示すマイクロチップ1は、試薬の反応結果を測光する検出部19がマイクロチップ1の内部に4つ設けられている例である。
【0048】
4つの検出部19a、19b、19c、19dは、図3に示す直線Fに沿って配設されている。検出部19a、19b、19c、19dの図示せぬ窓111a、111b、111c、111dは被覆基板109の面にそれぞれ設けられており、窓111a、111b、111c、111dを介して反応結果を光学的に検出できる。
【0049】
蛍光検出ユニット15は送りネジ301と螺合するネジ部を有し、送りネジ301が回転することにより図3の矢印B方向または逆方向に移動する。送りネジ301は直線Fと平行に配設されており、蛍光検出ユニット15が送りネジ301によって移動すると、検出部19a、19b、19c、19dのそれぞれの中心部に、蛍光検出ユニット15の図示せぬ受光部161の光軸が一致するように配置されている。蛍光検出ユニット15は、所定の位置に移動した後、検出部19a、19b、19c、19dに順次励起光を照射し、蛍光物質が発光する蛍光を受光して電気信号を出力する。
【0050】
送りネジ301はモータ300によりジョイント302を介して駆動される。モータ300は例えばパルスモータであり、パルスにより所定量回転する。モータ300は本発明の駆動手段である。
【0051】
なお、蛍光検出ユニット15には回転防止用に図3には図示せぬガイド穴173が設けられており、ガイド穴173を貫通するガイド棒に沿って移動する。ガイド棒は送りネジ301と平行に配設されている。
【0052】
なお、本実施形態では検出部19が4つ設けられている場合について説明したが、検出部19の数は1つ以上であればいくつでも良い。検出部19の数が一つの場合は蛍光検出ユニット15を移動させる必要は無いので送りネジ301、モータ300等は不要である。
【0053】
図4に示すように、駆動液ポンプ92の吸込側には、パッキン90cが接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液を吸い込むようになっている。一方、駆動液ポンプ92の吐出側にはパッキン90bが接続されていて、パッキン90cから吸い込んだ駆動液を、パッキン90bを介してマイクロチップ1の駆動液注入部110からマイクロチップ1内に形成された微細流路6に注入する。パッキン90bは駆動液ポンプ92とマイクロチップ1の間に挟まれ、駆動液ポンプ92の駆動液出口とパッキン90bの開口部と駆動液注入部110とは連通している。このように、駆動液ポンプ92から、連通しているパッキン90bを介して駆動液注入部110より駆動液を注入する。
【0054】
図5は、本発明の実施形態における蛍光検出ユニット15の光学系を示す説明図である。
【0055】
図10で説明した従来例と違いは、ダイクロイックミラー159を用いず、検出部19の光軸Lに対し、励起光を斜め方向から検出部19に照射する点である。
【0056】
図5に示すように、蛍光を集光するレンズ155、励起光を遮断し前記蛍光物質の発光する蛍光を透過する励起光カットフィルタ156と蛍光を電気信号に変換する受光部161はマイクロチップ1に鉛直な光軸Lに沿って配置されている。受光部161にはフォトダイオードなどが用いられる。
【0057】
一方、励起光を発光する発光部160、励起光の光束を制限するスリット157、励起光を集光するレンズ158は光軸Mに沿って配置されている。発光部160から照射される励起光は、スリット157を介してレンズ158に入射し、レンズ158で集光された励起光は斜めの角度から検出部19を照射する。検出部19の蛍光物質は励起光により蛍光を発光するが、蛍光物質で正反射した一部の励起光は図5の矢印R方向に向かう。励起光を照射する角度は、検出部19の蛍光物質で正反射した励起光が受光部161に入射しない角度であれば良い。本実施形態で用いる励起光カットフィルタ156は、正反射以外の角度で反射した弱い励起光を除去するために設けられており、一般的な性能の光学フィルタであれば十分励起光を除去することができる。
【0058】
従来は受光部161の光軸Lと発光部160の光軸Mが一致していたため蛍光物質で正反射した強い励起光が受光部161に入射し、励起光カットフィルタ156で除去するのが難しかった。本発明では、正反射した励起光は受光部161には入射しないので簡単な構成で蛍光だけを受光することができる。
【0059】
図6は、本発明の実施形態における蛍光検出ユニット15の鏡胴の一例を説明するための断面図である。
【0060】
第1鏡胴170にはレンズ155、励起光カットフィルタ156、受光部161が保持されている。172はネジ穴であり、送りネジ301と螺合する。173はガイド穴であり送りネジ301と平行に設けられた図示せぬガイド棒が貫通する。第2鏡胴171にはレンズ158、スリット157、発光部160が保持されている。また、第2鏡胴171は第1鏡胴170に取り付けられ一体になっている。
【0061】
第2鏡胴171の光軸Mは第1鏡胴170の光軸Lに対し斜めになっており、検出部19で光軸Mと光軸Lが交差するように配置されている。
【0062】
図7は、本発明の実施形態における蛍光反射板を設けた反応検出装置80を説明するための断面図である。
【0063】
検出部19で発光する蛍光は、受光部161の光軸L方向だけでなくほぼ180度に亘って射出する。図7に示す光学系では、このような点に着目し第1蛍光反射板301と第2蛍光反射板302を設けて、蛍光を光軸L方向に反射させて受光部161に入射する蛍光を増やすものである。
【0064】
図7(a)、図7(b)は第1蛍光反射板301と第2蛍光反射板302を説明するための説明図である。
【0065】
図7(a)に示すように第1蛍光反射板301と第2蛍光反射板302は、光軸Lを挟んで平行に配置され、第1蛍光反射板301と第2蛍光反射板302の対向する面は蛍光を反射する反射板になっている。
【0066】
第1蛍光反射板301は、検出部19a、19b、19c、19dの周辺付近に沿って、端面がマイクロチップ1の表面に当接またはわずかに間隙を開けて平行になるよう配設されている。第2蛍光反射板302は、図7(a)に示すよう第2鏡胴171の発光部160から照射する励起光を遮らない位置に第1蛍光反射板301と対向して平行に配置されている。
【0067】
このようにすると、検出部19から発光する蛍光のうちレンズ155では集光できなかった光束の一部を第1蛍光反射板301または第2蛍光反射板302で反射し、受光部161に導くことができる。
【0068】
図7(b)を用いて、蛍光検出ユニット15を移動させて検出部19a、19b、19c、19dをそれぞれ測定する場合を説明する。なお、図7(b)には第2蛍光反射板302と第2鏡胴171は図示していない。
【0069】
図7(b)は、蛍光検出ユニット15の光軸Lが検出部19aの中心に略一致する位置に蛍光検出ユニット15を移動させた状態である。図中検出部19a、19b、19c、19dに対応する光軸LをLa、Lb、Lc、Ldと図示して区別する。検出部19aの測定が終了するとLbの位置まで蛍光検出ユニット15を移動させ測定を行う。このように順次4つの検出部19の測定を行う。
【0070】
第1蛍光反射板301と第2蛍光反射板302は蛍光検出ユニット15の移動方向と平行に設けられているので、検出部19a、19b、19c、19dの何れの測定においても光軸Lと大きく異なる方向に射出する蛍光をレンズ155に導くことができる。
【0071】
ストッパ303は初期位置を検出するための検出部材であり、蛍光検出ユニット15が当接するとオンになるスイッチが内蔵されている。
【0072】
図8は、本発明の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【0073】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory)、ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って反応検出装置80の各部を集中制御する。
【0074】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0075】
チップ検知部95はマイクロチップ1が規制部材に当接すると検知信号をCPU98に送信する。CPU98は検知信号を受信すると、機構駆動部32に指令し所定の手順でマイクロチップ1を下降または上昇させる。
【0076】
ポンプ駆動部500は各マイクロポンプの圧電素子を駆動する駆動部である。ポンプ駆動制御部412はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部500を制御する。ポンプ駆動部500はポンプ駆動制御部412の指令を受けて、圧電素子を駆動する。
【0077】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。検出位置制御部411はモータ300を所定量回転させて、所定の検出部19を検査する位置まで蛍光検出ユニット15を移動させる。光量算出部410は受光部161の出力する電気信号から蛍光の光量を算出し検査結果とする。検出位置制御部411は本発明の位置制御手段である。
【0078】
検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントすることができる。
【0079】
図9は本発明の実施形態において、反応検出装置80による検査の手順を説明するフローチャートである。
【0080】
なお、温度調節ユニット152は反応検出装置80の電源投入時に通電され、所定の温度になっているものとする。また、検査に先立って、パッキン90b上端まで駆動液11が充填されているものとする。
【0081】
検査担当者は、最初に挿入口83からマイクロチップ1を図示せぬ規制部材(図示せず)に当接するまで挿入する。すると、CPU98がチップ検知部95から検知信号を検知して、機構駆動部32を制御し、図3、図4のようにパッキン90bと温度調節ユニット152がマイクロチップ1に密着する。本実施形態では、この状態からポンプ駆動制御部412が駆動液を各駆動液注入部110から所定の手順で注入し、マイクロチップ1内部の流路で所定の反応を行った後、試薬等と反応させた検体が検出部19に注入されているものとする。
【0082】
この状態からCPU98が検査のために行う手順について説明する。本実施形態では図3、図7に示すマイクロチップ1のように複数の検出部19が一列に並んでいるものとする。
【0083】
S101:測定回数をn=0とする。
【0084】
CPU98は、測定回数をn=0とする。
【0085】
S102:蛍光検出ユニット15の位置を初期化するステップである。
【0086】
検出位置制御部411は、蛍光検出ユニット15が図7の矢印Bと反対方向に移動するようモータ300を回転させるとともに、ストッパ303の状態を検知する。蛍光検出ユニット15がストッパ303に当接し、ストッパ303の備えるスイッチがオンになると検出位置制御部411はモータ300の回転を停止する。
【0087】
S103:蛍光検出ユニット15を所定量移動させる。
【0088】
検出位置制御部411は、第1鏡胴170の光軸Lが、これから測定する検出部19の中心に略一致する位置に移動するまで所定のパルスをモータ300に与えて移動させる。例えば、検出部19aを測定する場合は、初期位置から図7(b)の矢印B方向に移動するよう所定のパルスを与えてモータ300を回転させ、図7(b)に示す位置に停止させる。
【0089】
S104:光量を測定するステップである。
【0090】
光量算出部410は、発光部160に発光を指令し、受光部161から出力される光量に比例した電気信号のデータをRAM97に一時記憶する。
【0091】
S105:n=n+1とする。
【0092】
CPU98は、測定回数をn=n+1とする。
【0093】
S106:n=Nか、否か、を判定するステップである。
【0094】
CPU98は、測定回数が所定の回数Nか、否かを判定する。例えば、検出部19の数が4つの場合はN=4である。
【0095】
n=Nではない場合、(ステップS208;No)、ステップS103に戻る。
【0096】
n=Nの場合、(ステップS208;Yes)、処理を終了する。
【0097】
以上で、各検出部19の光量測定の手順は終了である。
【0098】
CPU98は、ステップS104で測定した光量のデータに基づいて、検査結果をプリンタ503や外部出力502に出力する。
【0099】
以上このように、本発明によれば、簡単な構成で蛍光だけを受光することができる小型の蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施形態における反応検出装置80の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の説明図である。
【図3】本発明の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態における蛍光検出ユニット15の光学系を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における蛍光検出ユニット15の鏡胴を説明するための断面図である。
【図7】本発明の実施形態における蛍光反射板を設けた反応検出装置80を説明するための断面図である。
【図8】本発明の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【図9】本発明の実施形態において、反応検出装置80による検査の手順を説明するフローチャートである。
【図10】従来の蛍光検出ユニットの光学系の例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0101】
1 マイクロチップ
6 パッキン
15 蛍光検出ユニット
19 検出部
35 エアポンプ
37 電磁バルブ
62 マイクロポンプ
80 反応検出装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
91 駆動液タンク
92 ポンプ
110 駆動液注入部
152 温度調節ユニット
160 発光部
161 受光部
300 モータ
301 送りネジ
302 ジョイント
303 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質に励起光を照射する発光部と、
前記蛍光物質の発光する蛍光を受光して電気信号に変換する受光部と、
を有する蛍光検出ユニットにおいて、
前記発光部は、前記蛍光物質で正反射した前記励起光が前記受光部に入射しない角度から前記励起光を照射するように構成されていることを特徴とする蛍光検出ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光検出ユニットを有し、
前記蛍光検出ユニットによって蛍光物質に励起光を照射し、受光した蛍光を変換した電気信号を測定することを特徴とする反応検出装置。
【請求項3】
蛍光物質を含む試薬と反応させた検体を光学的に検出可能な検出部を有するマイクロチップと、
請求項2に記載の反応検出装置と、
を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。
【請求項4】
前記マイクロチップは複数の前記検出部を有し、
前記反応検出装置は、
前記蛍光検出ユニットを所定の位置に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する位置制御手段と、
を有し、
前記位置制御手段は、前記蛍光検出ユニットが複数の前記検出部の一つに前記励起光を照射して前記蛍光物質の蛍光を受光できる位置に順次移動するよう前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のマイクロチップ検査システム。
【請求項5】
前記蛍光を反射して前記受光部に入射させる蛍光反射板を配設したことを特徴とする請求項3または4に記載のマイクロチップ検査システム。
【請求項6】
前記蛍光反射板は、
前記検出部の周辺付近に、端面がマイクロチップ1の表面に当接または略当接するように配設された第1蛍光反射板と、
前記発光部から照射する励起光を遮らない位置に第1蛍光反射板と対向して平行に配置された第2蛍光反射板と、
から構成されることを特徴とする請求項5に記載のマイクロチップ検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−19962(P2009−19962A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182073(P2007−182073)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】