蛍光X線検査装置及び蛍光X線検査方法
【課題】被検体に含まれる異物に対する感度を向上させ、被検体が移動する場合であっても異物検知が充分に行える蛍光X線検査装置及び蛍光X線検査方法を提供する。
【解決手段】移動する被検体100に含まれる異物110を検出し、かつ被検体を構成する1つの元素の原子番号が異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用され、被検体に1次放射線を照射する放射線源10と、1次放射線の照射によって異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する検出器12とを備え、被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、1次放射線がエネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1
である蛍光X線検査装置1である。
【解決手段】移動する被検体100に含まれる異物110を検出し、かつ被検体を構成する1つの元素の原子番号が異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用され、被検体に1次放射線を照射する放射線源10と、1次放射線の照射によって異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する検出器12とを備え、被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、1次放射線がエネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1
である蛍光X線検査装置1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に含まれる異物を検出する蛍光X線検査装置及び蛍光X線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題やエネルギー問題から、リチウムイオン電池等の二次電池が注目されている。リチウムイオン二次電池は、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)やマンガン酸リチウム(LiMn2O4)等の正極活物質をバインダーと共に集電体にペーストした正極と、グラファイト等の負極と、多孔質のポリエチレン膜等のセパレータと、非水電解質とを電池容器に収容して製造される。ところが、正極活物質以外の異物(金属粒子)が正極に混入すると、異物がセパレータを突き破って短絡するという問題が生じる。例えば、異物に鉄が含まれる場合は、エージングでこれを除去しづらく、起電力がばらつく原因にもなるので、微小なサイズの異物でも検出して除去する必要がある。
【0003】
そこで、正極の一面にX線を照射し、得られた透過像から異物の有無を判定する技術が開示されている(特許文献1)。
又、正極の一面にX線を照射し、正極の上下面から放出される蛍光X線をそれぞれ積算して検出することで、充分な検出強度を得る技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-179424号公報
【特許文献2】特開2003-14670号公報(0025、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、透過方式の異物検査であり、電池の品質低下につながる元素を含む異物を選択的に検出することが困難である。又、特許文献2記載の技術の場合、X線源(Rh/Crターゲット管)のエネルギーが広範囲にわたっているため、正極の構成元素であるコバルト酸リチウム中のCoと、異物であるFeとが共に光電効果を生じる。そのため、Coの蛍光X線スペクトルの裾がFeの蛍光X線スペクトルに干渉し、異物(Fe)の検出感度が充分に得られない。検出感度が充分でないと検出に多くの時間が掛かり、電池の生産性が低下する。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、特定の元素を含む異物を選択的に検出することが可能であり、被検体を移動させながら異物を検出できる蛍光X線検査装置及び蛍光X線検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の蛍光X線検査装置は、移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用され、前記被検体に1次放射線を照射する放射線源と、前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する検出器とを備え、前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、前記1次放射線がエネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1であることを特徴とする。
このようにすると、被検体(試料)を構成する元素の光電効果が抑制され、検出ノイズとなる蛍光X線の発生が抑制されるので、異物の検出感度が向上する。又、1次放射線のエネルギーはE2を超えるため、異物の光電効果を有効に起こさせることができる。このようにして良好な感度の異物検出が行えるため、測定時間が短くて済む。以上のことから、従来は難しかった移動する被検体に含まれる異物の検出が可能になる。
【0008】
前記検出器で検出した蛍光X線の計数率を出力するレートメーターと、前記計数率が閾値を越えたときに異物が存在したと判断する信号処理手段とをさらに備えてもよい。
前記信号処理手段は、前記計数率が前記閾値を越えた時間が一定時間以上であったときに、異物が存在したと判断してもよい。
【0009】
前記異物と前記被検体を構成する元素とを含む複数の元素のK吸収端およびKα蛍光X線のエネルギーと、前記放射線源に対応付けた前記一次放射線の前記エネルギーピークEPとを記憶する記憶手段と、前記被検体を構成する1つの元素と前記異物を構成する1つの元素が指定されると、E2<EP<E1の関係を満たす前記放射線源を前記記憶手段から読出す読出し手段と、前記読出し手段によって読出された前記放射線源を表示する表示手段を備えると好ましい。
このようにすると、指定された被検体と異物に対応してE2<EP<E1の関係を満たす放射線源を表示するので、オペレータは適切な放射線源を選択して測定を行うことができる。
【0010】
前記被検体を構成する元素がCoであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がFeであり、前記1次放射線はNiの特性X線を含むのが好ましい。
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、前記1次放射線はFeの特性X線を含むのが好ましい。
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、前記放射線源が放射性同位元素である181W又は57Coを用いるのが好ましい。
【0011】
本発明の蛍光X線検査方法は、移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用され、前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、エネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1である1次放射線を前記被検体に照射する過程と、前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する過程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の元素を含む異物を選択的に検出することが可能であり、被検体を移動させながら異物を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る蛍光X線分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】被検体を構成する一元素(Co)と異物(Fe)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す図である。
【図3】本発明の蛍光X線検査装置による蛍光X線スペクトルを示す図である。
【図4】従来の蛍光X線検査装置による蛍光X線スペクトルを示す図である。
【図5】被検体を構成する一元素(Mn)と異物(Cr)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す図である。
【図6】記憶手段に記憶された元素テーブルのデータ構成を示す図である。
【図7】記憶手段に記憶された放射線源テーブルのデータ構成を示す図である。
【図8】CPUによる放射線源10の表示処理のフローを示す図である。
【図9】検出器の構成を示すブロック図である。
【図10】検出器の別の構成を示すブロック図である。
【図11】計数率が閾値を越えたときに異物が存在したと判断する方法を示す図である。
【図12】1次放射線や蛍光X線が被検体を通過する行程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る蛍光X線検査装置1の構成を示すブロック図である。蛍光X線検査装置1は、放射線源10と、蛍光X線を検出する検出器12と、検出器12で検出した蛍光X線の計数率を出力するレートメーター14と、パーソナルコンピュータ20とを備えている。放射線源10からの1次放射線は、レンズ10Aで集光された後、搬送装置(コンベア200)上に載置されてL方向に移動する被検体(Liイオン電池の正極板)100に照射される。又、検出器12は、検出器電源12Aから電源供給を受け、1次放射線の照射によって被検体100(及び被検体中の異物110)から放出される蛍光X線を検出し、レートメーター14へ出力する。レートメーター14は、検出された蛍光X線を、単位時間当たりのカウント数(計数率)としてアナログ出力する。
放射線源10としては、ターゲットを有するX線管(球)や、所定の放射性同位元素を利用した照射装置を一次放射線源として用いることができる。レンズ10Aは、放射線源10から拡散した放射線を集光して密度を高めるものであり、キャピラリやクリスタルを用いることができる。検出器12については後述する。
【0015】
パーソナルコンピュータ20は、全体を制御するCPU(中央演算処理装置)22、RAM及びROM23、ハードディスク等からなる記憶手段24、入力手段(キーボード)26、表示手段(モニタ)28、及び図示しない信号入出力部、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、クロック等を備え、ROM23等に予め格納されたプログラムがCPU22により実行される。
又、後述するように、パーソナルコンピュータ20(CPU22)は、測定に適した放射線源の種類を記憶手段24から読出し、その放射線源の種類等をモニタ28に表示させると共に、レートメーター14から出力される計数率を取得し、所定の閾値を超えたか否かを判断する。従って、CPU22が特許請求の範囲の、「読出し手段」、「表示手段」、「信号処理手段」に相当する。
【0016】
次に、図2を参照して、本発明の特徴部分について説明する。図2は、被検体を構成する一元素(Co)と異物(Fe)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す図である。図2において、CoはFeより原子番号が1大きい。
なお、以下の説明では、被検体100がコバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる正極活物質を集電体にペーストした正極板であり、異物110が主にFeである場合を例とする。このとき、被検体100の主成分は、Li、Co、及びO(酸素)であるが、蛍光X線分析においてFe(異物)の検出に悪影響を及ぼす(検出ノイズとなる)元素は、原子番号がFeより1大きいCoとなる。
【0017】
図2において、各元素の質量吸収係数は、1次放射線のエネルギーが吸収端とよばれる元素特有の値以上になったところで急激に増加し、1次放射線の透過率が低下することは既知である。例えば、Feの場合、エネルギーがE2未満では質量吸収係数が小さいが、エネルギーがE2になると急激に質量吸収係数が急激に増加し、エネルギーがE2を超えると少しずつ減衰する。これは、エネルギーE2以上でFe原子のK殻の光電効果が起こるからである。従って、エネルギーE2以上では、Fe原子のK殻に光電効果が起こって蛍光X線を発生する。一方、エネルギーE2未満であれば、Fe原子のK殻に光電効果が起こらず、1次放射線の透過率が低下しないと共に蛍光X線を発しない。Coの場合も同様であり、エネルギーE1以上では、Co原子のK殻に光電効果が起こって蛍光X線を発生する。
【0018】
ここで、上記したように、被検体の構成元素のうち、異物(Fe)の検出に悪影響を及ぼす元素は原子番号27のCoであり、そのK吸収端のエネルギーE1は7.709keVである。また異物を構成する元素の1つであり検出の対象元素をFe(原子番号26)とすると、FeのK吸収端のエネルギーE2は7.112keVである。また、放射線源にNiターゲットのX線管球を選択すると、Niの特性X線であるKα線のエネルギーピークEPは7.478keVである。
従って、E2<EP<E1となるように放射線源を設定(選択)することで、E2<EPであるために検出対象元素(異物)の光電効果が有効に引き起こされ、異物(Fe)から効果的にFe-Kα線が発生して検出感度が上がる。また、EP<E1であるためにCoに光電効果は起こらず、従って異物のFe−Kα線に干渉を及ぼすCo由来の蛍光X線の発生が抑えられるため、Feの検出感度が上がる。そして、検出感度が上がる事により、被検体を移動させながら行う迅速な異物検出が可能になる。
以上のことから、従来の蛍光X線装置に比べて測定時間が短く、検出感度も向上するため、従来は難しかった移動する被検体に含まれる異物の検出が可能になる。一方従来の蛍光X線装置の場合、放射線源からの一次放射線には、E1とE2に挟まれたエネルギーにエネルギーピークEPが存在しないため、本発明の効果は期待できない。
【0019】
なお、検出器12によって検出する異物の蛍光X線のエネルギー(Ed)は6.404keVのFe-Kα線であり、Ed<E2となる。検出器12は全エネルギー範囲を検出してもよいが、上記したEd<E2の関係から、E2未満の特定の波長(エネルギー)のみを検出すれば、不要なエネルギー範囲を検出しなくて済み、検出時間が短縮される。
また、検出器12がE2未満の特定の波長(エネルギー)を検出する場合、一般的にエネルギー分散型の検出器に比べて検出感度が高い波長分散型の検出器を用いた場合であっても、検出するエネルギーをマッピングする必要がなく、検出器の簡素化及び小型化というメリットも享受できる。さらにEdはE1より小さく(例えば、上記例では、EdはE1より1.3keV程度小さい)、Edとなるエネルギーでは被検体であるCoの質量吸収係数が小さい。そのため被検体内に埋もれた異物から発生する蛍光X線でも、被検体で吸収される割合が抑えられて効率良く検出することができる。
【0020】
図3は、本実施形態の蛍光X線検査装置の蛍光X線スペクトルを示す図である。上記したように、Coの蛍光X線(Co-Kα)の生成が抑制され、測定対象である異物(Fe)の蛍光X線(Fe-Kα)と充分に分離される。従って、Fe-Kα線のバックグラウンドが低くなり、異物であるFeの検出感度が向上する。
一方、図4は、EP>E1とした従来の蛍光X線装置による蛍光X線スペクトルを示す図である。図4の場合、被検体(Co)に由来する非常に強いCo-Kα線が発生し、この線のスペクトルの裾がFe-Kαのバックグラウンドとして悪影響を及ぼし、Feの検出感度が低下する。また、エネルギー分散型の検出器を使った場合、強いCo-Kαのために検出部(SDD)が飽和し、Fe-Kαの数え落としが生じたり分解能の低下を招いてしまう。その結果、放射線源の強度を強くしても、異物であるFeの検出感度を充分に向上させることが困難である。
【0021】
次に、図5を参照して、正極活物質試料(被検体)(マンガン酸リチウム(LiMn2O4))に混入した異物(ステンレス)の検出例を説明する。図5は、被検体を構成する一元素(Mn)と異物(Cr)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す。異物がステンレス鋼である場合、異物の構成元素としてはFe及びCr及びNiがあり、異物の検出に悪影響を及ぼす被検体の構成元素はMnである。ここで、Mnの原子番号は25、K吸収端のエネルギーE1は6.54KeVである。一方、Feの原子番号26、K吸収端のエネルギー7.112keVであり、Crの原子番号24、K吸収端のエネルギーE2が5.989keVであり、Niの原子番号28、K吸収端のエネルギー8.333keVである。
これらのうちFeとNiのK吸収端のエネルギーはMnのK吸収端のエネルギーより大きい。そのためFeやNiの蛍光X線の強度を高くするエネルギーを持つ一次放射線を照射すると、Mnの蛍光X線強度も必然的に上昇してしまう。そしてMnに由来する強いMn-Kα線のために、FeやNiの蛍光X線であるFe-KαやNi-Kαが悪影響を受けてしまう。つまりステンレス異物をFeやNiで検出しようとしても充分な検出感度が得られない。
【0022】
このようなことから、MnよりK吸収端のエネルギーが低いCrを異物検出の対象元素に設定すると、E2<E1となる。また、放射線源としてFeターゲットのX線管球を選択すると、Feの特性X線であるKα線のエネルギーピークEPが6.404keVである。そのため、E2<EP<E1の関係を満足し、図2に示した被検体(Co)と異物(Fe)の場合と同様、被検体(Mn)に影響を受けずに異物(Cr)の検出感度を向上させることができる。つまり、E2<EPであるためにCrの光電効果が有効に引き起こされ、有効にCr-Kα線が発生して検出感度が向上する。またEP<E1であるため、EPではMnに光電効果が起こらず、従ってCr−Kαに干渉を及ぼすMnの蛍光X線の発生が抑えられる。
なお、Crから放出される蛍光X線(Cr-Kα線)のエネルギーEdは5.415keVであり、Ed<E2となっている。さらにEdはE1より小さく(例えば、上記例では、EdはE1より1.1keV程度小さい)、Edとなるエネルギーでは被検体であるMnの質量吸収係数が小さい。そのため被検体内に埋もれた異物から発生する蛍光X線でも、被検体で吸収される割合が抑えられて効率良く検出することができる。
【0023】
なお、上記した図2、図5の例では、被検体と異物の原子番号が1のみ異なっている場合について説明したが、被検体と異物の原子番号が2以上離れていても本発明を適用できる。
例えば、被検体がニッケル酸リチウム(LiNiO2あるいはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)でFe異物を検出する場合がある。被検体を構成する元素Niは異物元素Feより原子番号が2大きい。この場合には、FeのE2(7.112keV)とNiのE1(8.333keV)の間にEPが存在するターゲット材のX線管(放射線源)、すなわちNiターゲット(EP=7.478keV)のX線管を選択すれば良い。
【0024】
次に、図6〜図8を参照し、CPU22による、測定に適した放射線源10の表示処理について説明する。
図6は、記憶手段24に記憶された元素テーブル24aのデータ構成を示す。元素テーブル24aは、元素毎のK吸収端およびKα蛍光X線のエネルギーを1つのレコードとして記憶している。又、各レコードは、元素の原子番号の順に並んでおり、各レコードが元素の原子番号に対応付けられている。
図7は、記憶手段24に記憶された放射線源テーブル24bのデータ構成を示す。放射線源テーブル24bは、放射線源の種類毎のKα線のエネルギーピークEPを1つのレコードとして記憶している。
【0025】
図8は、CPU22による放射線源10の表示処理のフローを示す。
まず、オペレータ(操作者)が入力手段26を操作して被検体(例えばCo)と異物(例えばFe)の元素を入力すると、CPU22は入力結果を取得する(ステップS2)。次に、CPU22は被検体(Co)及び異物(Fe)のK吸収端のエネルギー(それぞれE1,E2)をテーブル24aから読み出す。被検体のK吸収端のエネルギーE1が異物のK吸収端のエネルギーE2より大きければ、CPU22はステップS4を「Yes」としてステップS6に進む。一方、ステップS4が「No」であればステップS2に戻り、操作者に再度入力を促す。
なお、ステップS2において、異物のうち検出対象とする元素の入力は必須であるが、被検体の元素の入力は必須ではなく、被検体のK吸収端のエネルギーが異物のK吸収端のエネルギーより大きいか否かを、予め操作者が判断しておいてもよい。但し、ステップS4の処理をCPU22が自動的に行うことで、被検体のK吸収端のエネルギーが異物のK吸収端のエネルギーより小さいのに誤って測定を行う等のミスがなくなる。
【0026】
ステップS6でCPU22は、ステップS4で読み出したE1,E2に基づき、E2<EP<E1となるEPの値を有する放射線源の種類をテーブル24bから読み出す。
次に、CPU22は、ステップS6で読み出した放射線源の種類(例えば、「Niターゲット」)をモニタ28に表示させる(ステップS8)。
オペレータが手動で、または装置が自動で、モニタ28に表示された放射線源を蛍光X線検査装置に取り付け(又は、付け替え)を行う。
そして、ステップS9では、CPU22は、検出する異物の元素の蛍光XエネルギーEdをテーブル24aから読み出す。読み出したEdに基づいて検出器の検出条件が設定される。具体的には、Edを含む所定範囲のエネルギー領域を検出するように、例えば以下の図9のようにして検出器の検出条件が設定される。
【0027】
図9は、検出器12の構成を示すブロック図である。検出器12はエネルギー分散型であり、シリコンドリフト型半導体検出器(SDD)等の検出部121と、検出部121の出力を整形して増幅する増幅器123と、波高分析器125と、波高分析器125の出力を一時記憶するメモリ127とを備える。波高分析器125は、増幅器123で増幅された信号を、設定した電圧範囲(=1次放射線のエネルギー)毎に振り分け、各設定電圧範囲に振り分けられた信号を計数する。メモリ127は、各設定電圧範囲毎の計数値を、それぞれメモリ領域127a〜127cに記憶する。
ここで、CPU22は、異物の蛍光X線の検出値Edを含む所定範囲のエネルギーに対応したメモリ領域のみを読み出し、レートメーター14に出力する。従って、異物の蛍光X線の検出値に対応したメモリ領域以外のエネルギーに相当する値が記憶されたメモリ領域127a、127bを読み出してレートメーター14に出力しないので、メモリ127からの読み出し時間、及びレートメーター14での処理時間を短縮し、測定時間を短くすることができる。このようにして、測定時間が短くなるため、移動する被検体に含まれる異物の検出が可能になっている。
【0028】
図10は、蛍光X線検査装置1に用いる検出器として、波長分散型の検出器13を用いた場合の検出器のブロック図である。検出器13は、被検体から出射される蛍光X線の光路に沿って配置されるソーラスリット133Aと、分光結晶131と、分光結晶131で回折された蛍光X線の光路に沿って配置されるソーラスリット133Bと、分光結晶131で回折された蛍光X線をソーラスリット133Bを介して検出する検出部135と、を備える。
分光結晶131は、主に測定対象とする波長領域と、用いる結晶の面間隔によって選択される。波長の短い重元素の分析にはLiF(2d=4.03×10-10m)、波長の長い軽元素の分析にはEDDT(2d=8.8×10-10m)またはADP(2d=10.65×10-10m)などが分光結晶131に使用できる。検出部135としては、比例計数管やシンチレーションカウンターを用いることができる。
なお、測定対象となる異物の元素を特定することで、検出器が検出する波長範囲を(Edを含む)限定することができ、波長分散型の検出器を用いて迅速に定性分析が可能となる。そのため、いわゆるマッピングが必須ではなく、検査時間が短くなるため、移動する試料に含まれる異物の検出が可能となる。
【0029】
本実施形態において、検出器12(又は13)で検出した信号(蛍光X線の計数値)は、レートメーター14に入力される。レートメーター14は、計数値を単位時間当たりのカウント数(計数率)としてパーソナルコンピュータ20に出力する。
図10に示すように、CPU(信号処理手段)22は、計数率Sgが閾値SHを越えたときに異物が存在したと判断することができる。これにより、ノイズと分離して適切に異物の検出が可能となる。なお、図10では、閾値SHは2つの値があり、そのうち値の低い閾値SHより計数率が小さくなった時、及び値の高い閾値SHより計数率が大きくなった時、それぞれ計数率が閾値SHを越えたと判断する。閾値SHは、ノイズの標準偏差の3倍程度に設定する。
なお、計数率Sgが閾値SHを越えた時間が一定時間以上であったときに、CPU(信号処理手段)22が異物の存在を判断するようにすると、ノイズの影響を更に受けずに、適切に異物の検出が可能となる。
【0030】
なお、異物が被検体100の内部に埋もれている場合、放射線源10からの1次放射線や、被検体100(及び被検体中の異物110)から放出される蛍光X線が被検体に吸収されて減衰する。従って、図11に示すように、これら1次放射線や蛍光X線が被検体を通過する行程(L1+L2)を最小にすることが検出感度の向上の点から好ましい。そして、被検体100への1次放射線の入射角θ1と、被検体100からの蛍光X線の出射角θ2とを等しくすると、(L1+L2)を最小にすることができることがわかった。
但し、放射線源10や検出器12には大きさがあるので、θ1とθ2とは0にはならず、所定の値をとる。従って、θ1=θ2としつつ、放射線源10をなるべく被検体100に近づけると、検出感度の向上の点から好ましい。
【0031】
次に、具体的な被検体に対する測定例を説明する。
実際のリチウムイオン電池の正極(200×250mm、正極活物質LiMn2O4;厚さ70μm、集電体Al;厚さ20μm)構造において、異物を正極表面におけるSUS粉末とし、SUS中のCrから放出される蛍光X線の検出を行った。波長分散型の蛍光X線検査装置を用い、X線管球には出力3kW(50kV)のFe管球を用い、検出器は比例計数管を用いた。また、Cr検出の判断は、バックグランドの標準偏差の10倍相当の信号を検出したときとした。
その結果、正極における200×250mm領域の測定時間は、異物がφ100μmのSUS粒子の場合は1秒以下で検出可能であり、異物がφ50μmの場合は約2〜3秒、異物がφ35μmの場合は約10秒前後で検出することができ、移動する正極に対して実用的なレベルで検出できることが確認できた。
【0032】
放射線源にX線管(球)を用いると、エネルギーピークEPに利用できる特性X線のほかに連続X線を発生する。連続X線のうち所定の成分は異物の蛍光X線発生に寄与する反面、1)異物の測定に悪影響を及ぼす被検体の他の構成元素の蛍光X線発生に寄与する、2)被検体で散乱して検出対象元素(異物)の蛍光X線のバックグラウンド成分となる、といった問題を引き起す。そこで、放射線源として連続X線を放出しない放射性同位元素を用いると、上記1)2)の問題が解消して異物の検出感度を向上させることができる。
このような例として、被検体を構成する元素がMn(K吸収端のエネルギーE1が6.540keV)で、異物を構成する1つの元素がCr(K吸収端のエネルギーE2が5.989keV)の場合、1次放射線として、放射性同位元素である181Wを用いると、181WのEC(電子捕獲)崩壊に伴って、181Taのγ線(エネルギー6.24keV)を放出する。この6.24keVγ線は、1次放射線のエネルギーがE1とE2の間にあるピークEPに適用できてり、本発明の効果が有効に得られる。
同様に、1次放射線として、放射性同位元素である57Coを用いると、57CoのEC(電子捕獲)崩壊に伴って、FeのKα線(エネルギー6.404kev)を放出する。このFeのKα線は、1次放射線のエネルギーがE1とE2の間にあるピークEPに適用できて、本発明の効果が有効に得られる。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 蛍光X線分析装置
10 放射線源
12、13 検出器
14 レートメーター
22 読出し手段、表示手段、信号処理手段(CPU)
24 記憶手段
100 被検体(試料)
110 異物
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に含まれる異物を検出する蛍光X線検査装置及び蛍光X線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題やエネルギー問題から、リチウムイオン電池等の二次電池が注目されている。リチウムイオン二次電池は、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)やマンガン酸リチウム(LiMn2O4)等の正極活物質をバインダーと共に集電体にペーストした正極と、グラファイト等の負極と、多孔質のポリエチレン膜等のセパレータと、非水電解質とを電池容器に収容して製造される。ところが、正極活物質以外の異物(金属粒子)が正極に混入すると、異物がセパレータを突き破って短絡するという問題が生じる。例えば、異物に鉄が含まれる場合は、エージングでこれを除去しづらく、起電力がばらつく原因にもなるので、微小なサイズの異物でも検出して除去する必要がある。
【0003】
そこで、正極の一面にX線を照射し、得られた透過像から異物の有無を判定する技術が開示されている(特許文献1)。
又、正極の一面にX線を照射し、正極の上下面から放出される蛍光X線をそれぞれ積算して検出することで、充分な検出強度を得る技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-179424号公報
【特許文献2】特開2003-14670号公報(0025、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、透過方式の異物検査であり、電池の品質低下につながる元素を含む異物を選択的に検出することが困難である。又、特許文献2記載の技術の場合、X線源(Rh/Crターゲット管)のエネルギーが広範囲にわたっているため、正極の構成元素であるコバルト酸リチウム中のCoと、異物であるFeとが共に光電効果を生じる。そのため、Coの蛍光X線スペクトルの裾がFeの蛍光X線スペクトルに干渉し、異物(Fe)の検出感度が充分に得られない。検出感度が充分でないと検出に多くの時間が掛かり、電池の生産性が低下する。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、特定の元素を含む異物を選択的に検出することが可能であり、被検体を移動させながら異物を検出できる蛍光X線検査装置及び蛍光X線検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の蛍光X線検査装置は、移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用され、前記被検体に1次放射線を照射する放射線源と、前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する検出器とを備え、前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、前記1次放射線がエネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1であることを特徴とする。
このようにすると、被検体(試料)を構成する元素の光電効果が抑制され、検出ノイズとなる蛍光X線の発生が抑制されるので、異物の検出感度が向上する。又、1次放射線のエネルギーはE2を超えるため、異物の光電効果を有効に起こさせることができる。このようにして良好な感度の異物検出が行えるため、測定時間が短くて済む。以上のことから、従来は難しかった移動する被検体に含まれる異物の検出が可能になる。
【0008】
前記検出器で検出した蛍光X線の計数率を出力するレートメーターと、前記計数率が閾値を越えたときに異物が存在したと判断する信号処理手段とをさらに備えてもよい。
前記信号処理手段は、前記計数率が前記閾値を越えた時間が一定時間以上であったときに、異物が存在したと判断してもよい。
【0009】
前記異物と前記被検体を構成する元素とを含む複数の元素のK吸収端およびKα蛍光X線のエネルギーと、前記放射線源に対応付けた前記一次放射線の前記エネルギーピークEPとを記憶する記憶手段と、前記被検体を構成する1つの元素と前記異物を構成する1つの元素が指定されると、E2<EP<E1の関係を満たす前記放射線源を前記記憶手段から読出す読出し手段と、前記読出し手段によって読出された前記放射線源を表示する表示手段を備えると好ましい。
このようにすると、指定された被検体と異物に対応してE2<EP<E1の関係を満たす放射線源を表示するので、オペレータは適切な放射線源を選択して測定を行うことができる。
【0010】
前記被検体を構成する元素がCoであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がFeであり、前記1次放射線はNiの特性X線を含むのが好ましい。
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、前記1次放射線はFeの特性X線を含むのが好ましい。
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、前記放射線源が放射性同位元素である181W又は57Coを用いるのが好ましい。
【0011】
本発明の蛍光X線検査方法は、移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用され、前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、エネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1である1次放射線を前記被検体に照射する過程と、前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する過程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の元素を含む異物を選択的に検出することが可能であり、被検体を移動させながら異物を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る蛍光X線分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】被検体を構成する一元素(Co)と異物(Fe)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す図である。
【図3】本発明の蛍光X線検査装置による蛍光X線スペクトルを示す図である。
【図4】従来の蛍光X線検査装置による蛍光X線スペクトルを示す図である。
【図5】被検体を構成する一元素(Mn)と異物(Cr)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す図である。
【図6】記憶手段に記憶された元素テーブルのデータ構成を示す図である。
【図7】記憶手段に記憶された放射線源テーブルのデータ構成を示す図である。
【図8】CPUによる放射線源10の表示処理のフローを示す図である。
【図9】検出器の構成を示すブロック図である。
【図10】検出器の別の構成を示すブロック図である。
【図11】計数率が閾値を越えたときに異物が存在したと判断する方法を示す図である。
【図12】1次放射線や蛍光X線が被検体を通過する行程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る蛍光X線検査装置1の構成を示すブロック図である。蛍光X線検査装置1は、放射線源10と、蛍光X線を検出する検出器12と、検出器12で検出した蛍光X線の計数率を出力するレートメーター14と、パーソナルコンピュータ20とを備えている。放射線源10からの1次放射線は、レンズ10Aで集光された後、搬送装置(コンベア200)上に載置されてL方向に移動する被検体(Liイオン電池の正極板)100に照射される。又、検出器12は、検出器電源12Aから電源供給を受け、1次放射線の照射によって被検体100(及び被検体中の異物110)から放出される蛍光X線を検出し、レートメーター14へ出力する。レートメーター14は、検出された蛍光X線を、単位時間当たりのカウント数(計数率)としてアナログ出力する。
放射線源10としては、ターゲットを有するX線管(球)や、所定の放射性同位元素を利用した照射装置を一次放射線源として用いることができる。レンズ10Aは、放射線源10から拡散した放射線を集光して密度を高めるものであり、キャピラリやクリスタルを用いることができる。検出器12については後述する。
【0015】
パーソナルコンピュータ20は、全体を制御するCPU(中央演算処理装置)22、RAM及びROM23、ハードディスク等からなる記憶手段24、入力手段(キーボード)26、表示手段(モニタ)28、及び図示しない信号入出力部、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、クロック等を備え、ROM23等に予め格納されたプログラムがCPU22により実行される。
又、後述するように、パーソナルコンピュータ20(CPU22)は、測定に適した放射線源の種類を記憶手段24から読出し、その放射線源の種類等をモニタ28に表示させると共に、レートメーター14から出力される計数率を取得し、所定の閾値を超えたか否かを判断する。従って、CPU22が特許請求の範囲の、「読出し手段」、「表示手段」、「信号処理手段」に相当する。
【0016】
次に、図2を参照して、本発明の特徴部分について説明する。図2は、被検体を構成する一元素(Co)と異物(Fe)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す図である。図2において、CoはFeより原子番号が1大きい。
なお、以下の説明では、被検体100がコバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる正極活物質を集電体にペーストした正極板であり、異物110が主にFeである場合を例とする。このとき、被検体100の主成分は、Li、Co、及びO(酸素)であるが、蛍光X線分析においてFe(異物)の検出に悪影響を及ぼす(検出ノイズとなる)元素は、原子番号がFeより1大きいCoとなる。
【0017】
図2において、各元素の質量吸収係数は、1次放射線のエネルギーが吸収端とよばれる元素特有の値以上になったところで急激に増加し、1次放射線の透過率が低下することは既知である。例えば、Feの場合、エネルギーがE2未満では質量吸収係数が小さいが、エネルギーがE2になると急激に質量吸収係数が急激に増加し、エネルギーがE2を超えると少しずつ減衰する。これは、エネルギーE2以上でFe原子のK殻の光電効果が起こるからである。従って、エネルギーE2以上では、Fe原子のK殻に光電効果が起こって蛍光X線を発生する。一方、エネルギーE2未満であれば、Fe原子のK殻に光電効果が起こらず、1次放射線の透過率が低下しないと共に蛍光X線を発しない。Coの場合も同様であり、エネルギーE1以上では、Co原子のK殻に光電効果が起こって蛍光X線を発生する。
【0018】
ここで、上記したように、被検体の構成元素のうち、異物(Fe)の検出に悪影響を及ぼす元素は原子番号27のCoであり、そのK吸収端のエネルギーE1は7.709keVである。また異物を構成する元素の1つであり検出の対象元素をFe(原子番号26)とすると、FeのK吸収端のエネルギーE2は7.112keVである。また、放射線源にNiターゲットのX線管球を選択すると、Niの特性X線であるKα線のエネルギーピークEPは7.478keVである。
従って、E2<EP<E1となるように放射線源を設定(選択)することで、E2<EPであるために検出対象元素(異物)の光電効果が有効に引き起こされ、異物(Fe)から効果的にFe-Kα線が発生して検出感度が上がる。また、EP<E1であるためにCoに光電効果は起こらず、従って異物のFe−Kα線に干渉を及ぼすCo由来の蛍光X線の発生が抑えられるため、Feの検出感度が上がる。そして、検出感度が上がる事により、被検体を移動させながら行う迅速な異物検出が可能になる。
以上のことから、従来の蛍光X線装置に比べて測定時間が短く、検出感度も向上するため、従来は難しかった移動する被検体に含まれる異物の検出が可能になる。一方従来の蛍光X線装置の場合、放射線源からの一次放射線には、E1とE2に挟まれたエネルギーにエネルギーピークEPが存在しないため、本発明の効果は期待できない。
【0019】
なお、検出器12によって検出する異物の蛍光X線のエネルギー(Ed)は6.404keVのFe-Kα線であり、Ed<E2となる。検出器12は全エネルギー範囲を検出してもよいが、上記したEd<E2の関係から、E2未満の特定の波長(エネルギー)のみを検出すれば、不要なエネルギー範囲を検出しなくて済み、検出時間が短縮される。
また、検出器12がE2未満の特定の波長(エネルギー)を検出する場合、一般的にエネルギー分散型の検出器に比べて検出感度が高い波長分散型の検出器を用いた場合であっても、検出するエネルギーをマッピングする必要がなく、検出器の簡素化及び小型化というメリットも享受できる。さらにEdはE1より小さく(例えば、上記例では、EdはE1より1.3keV程度小さい)、Edとなるエネルギーでは被検体であるCoの質量吸収係数が小さい。そのため被検体内に埋もれた異物から発生する蛍光X線でも、被検体で吸収される割合が抑えられて効率良く検出することができる。
【0020】
図3は、本実施形態の蛍光X線検査装置の蛍光X線スペクトルを示す図である。上記したように、Coの蛍光X線(Co-Kα)の生成が抑制され、測定対象である異物(Fe)の蛍光X線(Fe-Kα)と充分に分離される。従って、Fe-Kα線のバックグラウンドが低くなり、異物であるFeの検出感度が向上する。
一方、図4は、EP>E1とした従来の蛍光X線装置による蛍光X線スペクトルを示す図である。図4の場合、被検体(Co)に由来する非常に強いCo-Kα線が発生し、この線のスペクトルの裾がFe-Kαのバックグラウンドとして悪影響を及ぼし、Feの検出感度が低下する。また、エネルギー分散型の検出器を使った場合、強いCo-Kαのために検出部(SDD)が飽和し、Fe-Kαの数え落としが生じたり分解能の低下を招いてしまう。その結果、放射線源の強度を強くしても、異物であるFeの検出感度を充分に向上させることが困難である。
【0021】
次に、図5を参照して、正極活物質試料(被検体)(マンガン酸リチウム(LiMn2O4))に混入した異物(ステンレス)の検出例を説明する。図5は、被検体を構成する一元素(Mn)と異物(Cr)の、質量吸収係数とエネルギーとの関係を示す。異物がステンレス鋼である場合、異物の構成元素としてはFe及びCr及びNiがあり、異物の検出に悪影響を及ぼす被検体の構成元素はMnである。ここで、Mnの原子番号は25、K吸収端のエネルギーE1は6.54KeVである。一方、Feの原子番号26、K吸収端のエネルギー7.112keVであり、Crの原子番号24、K吸収端のエネルギーE2が5.989keVであり、Niの原子番号28、K吸収端のエネルギー8.333keVである。
これらのうちFeとNiのK吸収端のエネルギーはMnのK吸収端のエネルギーより大きい。そのためFeやNiの蛍光X線の強度を高くするエネルギーを持つ一次放射線を照射すると、Mnの蛍光X線強度も必然的に上昇してしまう。そしてMnに由来する強いMn-Kα線のために、FeやNiの蛍光X線であるFe-KαやNi-Kαが悪影響を受けてしまう。つまりステンレス異物をFeやNiで検出しようとしても充分な検出感度が得られない。
【0022】
このようなことから、MnよりK吸収端のエネルギーが低いCrを異物検出の対象元素に設定すると、E2<E1となる。また、放射線源としてFeターゲットのX線管球を選択すると、Feの特性X線であるKα線のエネルギーピークEPが6.404keVである。そのため、E2<EP<E1の関係を満足し、図2に示した被検体(Co)と異物(Fe)の場合と同様、被検体(Mn)に影響を受けずに異物(Cr)の検出感度を向上させることができる。つまり、E2<EPであるためにCrの光電効果が有効に引き起こされ、有効にCr-Kα線が発生して検出感度が向上する。またEP<E1であるため、EPではMnに光電効果が起こらず、従ってCr−Kαに干渉を及ぼすMnの蛍光X線の発生が抑えられる。
なお、Crから放出される蛍光X線(Cr-Kα線)のエネルギーEdは5.415keVであり、Ed<E2となっている。さらにEdはE1より小さく(例えば、上記例では、EdはE1より1.1keV程度小さい)、Edとなるエネルギーでは被検体であるMnの質量吸収係数が小さい。そのため被検体内に埋もれた異物から発生する蛍光X線でも、被検体で吸収される割合が抑えられて効率良く検出することができる。
【0023】
なお、上記した図2、図5の例では、被検体と異物の原子番号が1のみ異なっている場合について説明したが、被検体と異物の原子番号が2以上離れていても本発明を適用できる。
例えば、被検体がニッケル酸リチウム(LiNiO2あるいはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)でFe異物を検出する場合がある。被検体を構成する元素Niは異物元素Feより原子番号が2大きい。この場合には、FeのE2(7.112keV)とNiのE1(8.333keV)の間にEPが存在するターゲット材のX線管(放射線源)、すなわちNiターゲット(EP=7.478keV)のX線管を選択すれば良い。
【0024】
次に、図6〜図8を参照し、CPU22による、測定に適した放射線源10の表示処理について説明する。
図6は、記憶手段24に記憶された元素テーブル24aのデータ構成を示す。元素テーブル24aは、元素毎のK吸収端およびKα蛍光X線のエネルギーを1つのレコードとして記憶している。又、各レコードは、元素の原子番号の順に並んでおり、各レコードが元素の原子番号に対応付けられている。
図7は、記憶手段24に記憶された放射線源テーブル24bのデータ構成を示す。放射線源テーブル24bは、放射線源の種類毎のKα線のエネルギーピークEPを1つのレコードとして記憶している。
【0025】
図8は、CPU22による放射線源10の表示処理のフローを示す。
まず、オペレータ(操作者)が入力手段26を操作して被検体(例えばCo)と異物(例えばFe)の元素を入力すると、CPU22は入力結果を取得する(ステップS2)。次に、CPU22は被検体(Co)及び異物(Fe)のK吸収端のエネルギー(それぞれE1,E2)をテーブル24aから読み出す。被検体のK吸収端のエネルギーE1が異物のK吸収端のエネルギーE2より大きければ、CPU22はステップS4を「Yes」としてステップS6に進む。一方、ステップS4が「No」であればステップS2に戻り、操作者に再度入力を促す。
なお、ステップS2において、異物のうち検出対象とする元素の入力は必須であるが、被検体の元素の入力は必須ではなく、被検体のK吸収端のエネルギーが異物のK吸収端のエネルギーより大きいか否かを、予め操作者が判断しておいてもよい。但し、ステップS4の処理をCPU22が自動的に行うことで、被検体のK吸収端のエネルギーが異物のK吸収端のエネルギーより小さいのに誤って測定を行う等のミスがなくなる。
【0026】
ステップS6でCPU22は、ステップS4で読み出したE1,E2に基づき、E2<EP<E1となるEPの値を有する放射線源の種類をテーブル24bから読み出す。
次に、CPU22は、ステップS6で読み出した放射線源の種類(例えば、「Niターゲット」)をモニタ28に表示させる(ステップS8)。
オペレータが手動で、または装置が自動で、モニタ28に表示された放射線源を蛍光X線検査装置に取り付け(又は、付け替え)を行う。
そして、ステップS9では、CPU22は、検出する異物の元素の蛍光XエネルギーEdをテーブル24aから読み出す。読み出したEdに基づいて検出器の検出条件が設定される。具体的には、Edを含む所定範囲のエネルギー領域を検出するように、例えば以下の図9のようにして検出器の検出条件が設定される。
【0027】
図9は、検出器12の構成を示すブロック図である。検出器12はエネルギー分散型であり、シリコンドリフト型半導体検出器(SDD)等の検出部121と、検出部121の出力を整形して増幅する増幅器123と、波高分析器125と、波高分析器125の出力を一時記憶するメモリ127とを備える。波高分析器125は、増幅器123で増幅された信号を、設定した電圧範囲(=1次放射線のエネルギー)毎に振り分け、各設定電圧範囲に振り分けられた信号を計数する。メモリ127は、各設定電圧範囲毎の計数値を、それぞれメモリ領域127a〜127cに記憶する。
ここで、CPU22は、異物の蛍光X線の検出値Edを含む所定範囲のエネルギーに対応したメモリ領域のみを読み出し、レートメーター14に出力する。従って、異物の蛍光X線の検出値に対応したメモリ領域以外のエネルギーに相当する値が記憶されたメモリ領域127a、127bを読み出してレートメーター14に出力しないので、メモリ127からの読み出し時間、及びレートメーター14での処理時間を短縮し、測定時間を短くすることができる。このようにして、測定時間が短くなるため、移動する被検体に含まれる異物の検出が可能になっている。
【0028】
図10は、蛍光X線検査装置1に用いる検出器として、波長分散型の検出器13を用いた場合の検出器のブロック図である。検出器13は、被検体から出射される蛍光X線の光路に沿って配置されるソーラスリット133Aと、分光結晶131と、分光結晶131で回折された蛍光X線の光路に沿って配置されるソーラスリット133Bと、分光結晶131で回折された蛍光X線をソーラスリット133Bを介して検出する検出部135と、を備える。
分光結晶131は、主に測定対象とする波長領域と、用いる結晶の面間隔によって選択される。波長の短い重元素の分析にはLiF(2d=4.03×10-10m)、波長の長い軽元素の分析にはEDDT(2d=8.8×10-10m)またはADP(2d=10.65×10-10m)などが分光結晶131に使用できる。検出部135としては、比例計数管やシンチレーションカウンターを用いることができる。
なお、測定対象となる異物の元素を特定することで、検出器が検出する波長範囲を(Edを含む)限定することができ、波長分散型の検出器を用いて迅速に定性分析が可能となる。そのため、いわゆるマッピングが必須ではなく、検査時間が短くなるため、移動する試料に含まれる異物の検出が可能となる。
【0029】
本実施形態において、検出器12(又は13)で検出した信号(蛍光X線の計数値)は、レートメーター14に入力される。レートメーター14は、計数値を単位時間当たりのカウント数(計数率)としてパーソナルコンピュータ20に出力する。
図10に示すように、CPU(信号処理手段)22は、計数率Sgが閾値SHを越えたときに異物が存在したと判断することができる。これにより、ノイズと分離して適切に異物の検出が可能となる。なお、図10では、閾値SHは2つの値があり、そのうち値の低い閾値SHより計数率が小さくなった時、及び値の高い閾値SHより計数率が大きくなった時、それぞれ計数率が閾値SHを越えたと判断する。閾値SHは、ノイズの標準偏差の3倍程度に設定する。
なお、計数率Sgが閾値SHを越えた時間が一定時間以上であったときに、CPU(信号処理手段)22が異物の存在を判断するようにすると、ノイズの影響を更に受けずに、適切に異物の検出が可能となる。
【0030】
なお、異物が被検体100の内部に埋もれている場合、放射線源10からの1次放射線や、被検体100(及び被検体中の異物110)から放出される蛍光X線が被検体に吸収されて減衰する。従って、図11に示すように、これら1次放射線や蛍光X線が被検体を通過する行程(L1+L2)を最小にすることが検出感度の向上の点から好ましい。そして、被検体100への1次放射線の入射角θ1と、被検体100からの蛍光X線の出射角θ2とを等しくすると、(L1+L2)を最小にすることができることがわかった。
但し、放射線源10や検出器12には大きさがあるので、θ1とθ2とは0にはならず、所定の値をとる。従って、θ1=θ2としつつ、放射線源10をなるべく被検体100に近づけると、検出感度の向上の点から好ましい。
【0031】
次に、具体的な被検体に対する測定例を説明する。
実際のリチウムイオン電池の正極(200×250mm、正極活物質LiMn2O4;厚さ70μm、集電体Al;厚さ20μm)構造において、異物を正極表面におけるSUS粉末とし、SUS中のCrから放出される蛍光X線の検出を行った。波長分散型の蛍光X線検査装置を用い、X線管球には出力3kW(50kV)のFe管球を用い、検出器は比例計数管を用いた。また、Cr検出の判断は、バックグランドの標準偏差の10倍相当の信号を検出したときとした。
その結果、正極における200×250mm領域の測定時間は、異物がφ100μmのSUS粒子の場合は1秒以下で検出可能であり、異物がφ50μmの場合は約2〜3秒、異物がφ35μmの場合は約10秒前後で検出することができ、移動する正極に対して実用的なレベルで検出できることが確認できた。
【0032】
放射線源にX線管(球)を用いると、エネルギーピークEPに利用できる特性X線のほかに連続X線を発生する。連続X線のうち所定の成分は異物の蛍光X線発生に寄与する反面、1)異物の測定に悪影響を及ぼす被検体の他の構成元素の蛍光X線発生に寄与する、2)被検体で散乱して検出対象元素(異物)の蛍光X線のバックグラウンド成分となる、といった問題を引き起す。そこで、放射線源として連続X線を放出しない放射性同位元素を用いると、上記1)2)の問題が解消して異物の検出感度を向上させることができる。
このような例として、被検体を構成する元素がMn(K吸収端のエネルギーE1が6.540keV)で、異物を構成する1つの元素がCr(K吸収端のエネルギーE2が5.989keV)の場合、1次放射線として、放射性同位元素である181Wを用いると、181WのEC(電子捕獲)崩壊に伴って、181Taのγ線(エネルギー6.24keV)を放出する。この6.24keVγ線は、1次放射線のエネルギーがE1とE2の間にあるピークEPに適用できてり、本発明の効果が有効に得られる。
同様に、1次放射線として、放射性同位元素である57Coを用いると、57CoのEC(電子捕獲)崩壊に伴って、FeのKα線(エネルギー6.404kev)を放出する。このFeのKα線は、1次放射線のエネルギーがE1とE2の間にあるピークEPに適用できて、本発明の効果が有効に得られる。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 蛍光X線分析装置
10 放射線源
12、13 検出器
14 レートメーター
22 読出し手段、表示手段、信号処理手段(CPU)
24 記憶手段
100 被検体(試料)
110 異物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用される蛍光X線検査装置であって、
前記被検体に1次放射線を照射する放射線源と、前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する検出器とを備え、
前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、前記1次放射線がエネルギーピークEPを持ち、
E2<EP<E1
であることを特徴とする蛍光X線検査装置。
【請求項2】
前記検出器で検出した蛍光X線の計数率を出力するレートメーターと、
前記計数率が閾値を越えたときに異物が存在したと判断する信号処理手段とをさらに備えた請求項1記載の蛍光X線検査装置。
【請求項3】
前記信号処理手段は、前記計数率が前記閾値を越えた時間が一定時間以上であったときに、異物が存在したと判断する請求項1又は2記載の蛍光X線検査装置。
【請求項4】
前記異物と前記被検体を構成する元素とを含む複数の元素のK吸収端およびKα蛍光X線のエネルギーと、前記放射線源に対応付けた前記一次放射線の前記エネルギーピークEPとを記憶する記憶手段と、
前記被検体を構成する1つの元素と前記異物を構成する1つの元素が指定されると、E2<EP<E1の関係を満たす前記放射線源を前記記憶手段から読出す読出し手段と、
前記読出し手段によって読出された前記放射線源を表示する表示手段を備えた請求項1記載の蛍光X線検査装置。
【請求項5】
前記被検体を構成する元素がCoであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がFeであり、前記1次放射線はNiの特性X線を含む請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線検査装置。
【請求項6】
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、
前記1次放射線はFeの特性X線を含む請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線検査装置。
【請求項7】
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、
前記放射線源が放射性同位元素である181W又は57Coを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線検査装置。
【請求項8】
移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用される蛍光X線検査方法であって、
前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、エネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1である1次放射線を前記被検体に照射する過程と、
前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する過程
とを有することを特徴とする蛍光X線検査方法。
【請求項1】
移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用される蛍光X線検査装置であって、
前記被検体に1次放射線を照射する放射線源と、前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する検出器とを備え、
前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、前記1次放射線がエネルギーピークEPを持ち、
E2<EP<E1
であることを特徴とする蛍光X線検査装置。
【請求項2】
前記検出器で検出した蛍光X線の計数率を出力するレートメーターと、
前記計数率が閾値を越えたときに異物が存在したと判断する信号処理手段とをさらに備えた請求項1記載の蛍光X線検査装置。
【請求項3】
前記信号処理手段は、前記計数率が前記閾値を越えた時間が一定時間以上であったときに、異物が存在したと判断する請求項1又は2記載の蛍光X線検査装置。
【請求項4】
前記異物と前記被検体を構成する元素とを含む複数の元素のK吸収端およびKα蛍光X線のエネルギーと、前記放射線源に対応付けた前記一次放射線の前記エネルギーピークEPとを記憶する記憶手段と、
前記被検体を構成する1つの元素と前記異物を構成する1つの元素が指定されると、E2<EP<E1の関係を満たす前記放射線源を前記記憶手段から読出す読出し手段と、
前記読出し手段によって読出された前記放射線源を表示する表示手段を備えた請求項1記載の蛍光X線検査装置。
【請求項5】
前記被検体を構成する元素がCoであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がFeであり、前記1次放射線はNiの特性X線を含む請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線検査装置。
【請求項6】
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、
前記1次放射線はFeの特性X線を含む請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線検査装置。
【請求項7】
前記被検体を構成する元素がMnであり、かつ前記異物を構成する1つの元素がCrであり、
前記放射線源が放射性同位元素である181W又は57Coを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線検査装置。
【請求項8】
移動する被検体に含まれる異物を検出し、かつ前記被検体を構成する1つの元素の原子番号が前記異物を構成する1つの元素の原子番号より大きい場合に適用される蛍光X線検査方法であって、
前記被検体を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE1、前記異物を構成する1つの元素のK吸収端のエネルギーをE2としたとき、エネルギーピークEPを持ち、E2<EP<E1である1次放射線を前記被検体に照射する過程と、
前記1次放射線の照射によって前記異物を構成する1つの元素から放出される蛍光X線を検出する過程
とを有することを特徴とする蛍光X線検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−107005(P2011−107005A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263485(P2009−263485)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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