説明

融雪器制御システム及び方法

【課題】急な降雪を予測し融雪器を効率よく制御可能にする。
【解決手段】融雪器制御システム1は、レールの状態及び該レール付近の気象の状態を検出し、これらに応じて複数の目標温度で運転するように融雪器2を制御するものである。そして、前記レールが存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪予報情報を気象業務支援センター10から入力する中央監視制御装置3と、前記レール付近の湿度情報を入力する湿度センサ8と、入力した前記湿度情報を時系列で記憶するとともに、入力した前記降雪予報及び前記湿度情報が所定条件を満たしている場合に、急な降雪が始まると予測する融雪判定装置4と、該予測を基に、急な降雪に備えた予熱用の目標温度で融雪器2を運転するように制御する融雪制御装置5とを備えている。前記所定条件は、前記湿度が、直近の過去における所定時間内に所定の湿度上昇閾値以上上昇している場合を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレールや路面等の融雪対象物の積雪や凍結を防止するために、該融雪対象物の状態及び該融雪対象物付近の気象の状態を検出し、これらの検出結果に応じて複数の目標温度で運転するように融雪器を自動的に制御する融雪器制御システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
降雪予報に基づいて融雪器を制御する従来技術としては、特許文献1記載のロードヒーティング装置を例示する。この装置は、路面温度、降雪状態及び路面状態を検出し、これらの検出結果により融雪運転、凍結防止運転又は複数の予熱目標温度による予熱運転を行うことにより路面の凍結を防止するものであり、気象台による時間帯ごとの降雪確率予報を入力する手段と、該降雪確率予報により時刻に対して按分して降雪予測を演算する手段と、該降雪予測を基に前記予熱運転の予熱目標温度を選択して路面温度を制御する手段とを備えている。
【0003】
図6は、気象台による降雪確率予報、前記ロードヒーティング装置による降雪予測の時刻に対するグラフ図である。降雪確率予報は時間帯に分けて発表されるが、発表通りにグラフ化すると一点鎖線Aに示すようになる。前記ロードヒーティング装置においては、この発表された時間帯の中間時刻における降雪確率同士を線分により実線Bに示すように結び降雪予測とする。そして、実際の温度制御は路面の熱容量による時間遅れを考慮して、数時間後、例えば3時間後の降雪予測を基にして路面を予熱運転するようになっている。
【0004】
この装置と同様に、降雪予報を利用して融雪器を制御する従来技術としては、特許文献2記載の「ロードヒーティングの運転方法及び装置」や、特許文献3記載の「ロードヒーティング装置の制御方法」を例示する。
【0005】
【特許文献1】特許第2640303号公報
【特許文献2】特開2001−81711号公報
【特許文献3】特開2001−262507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来技術はいずれも基本的に気象台による降雪予報に基づいているが、この降雪予報は約20km四方の格子内かつ6時間内における平均値であるため、大まかな気象予測には役立っている。しかし、突然の気象変化により急な降雪、しかも降雪量3[cm/時間]以上の降雪になると、融雪器を低温度から急激に融雪温度まで上昇させる必要性が生じることがあり、これに融雪器の能力が対応できないことがあるという課題がある。このような突然の気象変化に対応するために高性能の融雪器を採用したり、融雪器の予熱運転の温度を上昇させておいたりすることも考えられるが、前者は融雪器の設備コストが掛かるという課題があり、後者は降雪が無い場合でも高温で予熱運転をすることになり電力消費量が多くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願の発明者は、9箇所の地方気象台及び測候所(旭川地方気象台、根室測候所、八戸測候所、秋田地方気象台、新潟地方気象台、飯田測候所、米子測候所、津山測候所、高山測候所、富山地方気象台、山形地方気象台)の近年3冬期の降雪記録を調査・分析した。その結果、各箇所において突然の気象変化による急な降雪が発生する1〜2時間前に湿度が急激に上昇している現象を見出した。図5は気象台による過去の降雪記録における降雪と湿度との関係を例示するグラフ図であり、(a)は根室測候所の2006年12月23日におけるグラフ図であり、(b)富山地方気象台の2006年1月7日におけるグラフ図である。これらの図にこの現象が示されている。そして、本願の発明者は、前記降雪記録をさらに詳細に調査・分析することにより下記融雪器制御システム及び方法を発明した。
【0008】
本願の第1の発明の融雪器制御システムは、
融雪対象物の積雪や凍結を防止するために、該融雪対象物の状態及び該融雪対象物付近の気象の状態を検出し、これらの検出結果に応じて複数の目標温度で運転するように融雪器を制御する融雪器制御システムであって、
前記融雪対象物が存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪予報情報を入力する降雪予報入力手段と、
前記融雪対象物付近の湿度情報を入力する湿度入力手段と、
入力した前記湿度情報を時系列で記憶する湿度記憶手段と、
入力した前記降雪予報及び前記湿度情報が所定条件を満たしている場合に、急な降雪が始まると予測する降雪予測手段と、
該予測を基に、急な降雪に備えた予熱用の目標温度で前記融雪器を運転するように制御する手段とを備え、
前記所定条件は、下記(a)及び(b)を同時に満たしていることである。
(a)前記降雪予報が「雪が降る予報」となっている時間帯に属し又はその時間帯の直前の時間帯に属している場合
(b)前記湿度が、直近の過去における所定時間内に所定の湿度上昇閾値以上上昇している場合
【0009】
第2の発明の融雪器制御システムとしては、前記第1の発明において、
前記所定条件は、次の条件も含んでいる態様を例示する。
(c)現在の前記湿度が、所定の湿度閾値以上になっている場合
【0010】
第3の発明の融雪器制御システムとしては、前記第1又は2の発明において、
前記融雪対象物付近の温度情報を入力する温度入力手段をも備え、
前記所定条件は、次の条件も含んでいる態様を例示する。
(d)現在の前記温度が、所定の温度閾値以下になっている場合
【0011】
また、第4の発明の融雪器制御方法は、
融雪対象物の積雪や凍結を防止するために、該融雪対象物の状態及び該融雪対象物付近の気象の状態を検出し、これらの検出結果に応じて複数の目標温度で運転するように融雪器を制御する融雪器制御方法であって、
前記融雪対象物が存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪予報情報を入力する降雪予報入力段階と、
前記融雪対象物付近の湿度情報を入力する湿度入力段階と、
入力した前記湿度情報を時系列で記憶する湿度記憶段階と、
入力した前記降雪予報及び前記湿度情報が所定条件を満たしている場合に、急な降雪が始まると予測する降雪予測段階と、
該予測を基に、急な降雪に備えた予熱用の目標温度で前記融雪器を運転するように制御する段階とを含み、
前記所定条件は、下記(a)及び(b)を同時に満たしていることである。
(a)前記降雪予報が「雪が降る予報」となっている時間帯に属し又はその時間帯の直前の時間帯に属している場合
(b)前記湿度が、直近の過去における所定時間内に所定の湿度上昇閾値以上上昇している場合
【0012】
第5の発明の融雪器制御システムとしては、前記第4の発明において、
前記所定条件は、次の条件も含んでいる態様を例示する。
(c)現在の前記湿度が、所定の湿度閾値以上になっている場合
【0013】
第6の発明の融雪器制御システムとしては、前記第4又は5の発明において、
前記融雪対象物付近の温度情報を入力する温度入力段階をも含み、
前記所定条件は、次の条件も含んでいる態様を例示する。
(d)現在の前記温度が、所定の温度閾値以下になっている場合
【0014】
以上において、前記融雪対象物としては、降雪が予想される地域の屋外に設置される物であれば特に限定されないが、鉄道のレール、道路の路面、建物の屋根等を例示する。また、前記所定時間、前記湿度上昇閾値、前記湿度閾値、及び前記温度閾値は、前記融雪対象物が存在する地域における過去の降雪記録に応じて適宜設定したり修正したりすることが好ましく、前記融雪器を運転する季節や月ごとに、前記降雪記録に応じて適宜設定したり修正したりするとさらに好ましい。前記所定時間としては、特に限定されないが、120分以下の時間を設定すること、具体的には30分又は60分とすることを例示する。前記湿度上昇閾値としては、特に限定されないが、10%程度の値とすることを例示する。前記湿度閾値としては、特に限定されないが、80〜85%程度の値とすることを例示する。前記温度閾値としては、特に限定されないが、1〜−1℃程度の値とすることを例示する。
【0015】
前記第1の発明に係る融雪器制御システム又は前記第4の発明に係る融雪器制御方法によれば、突然の気象変化により急な降雪の発生を予測し、該降雪の発生が予測される場合に前記融雪器を予熱用の目標温度で運転するように制御しておくことにより、前記融雪対象物に降った雪を融かすことができ、融雪器を効率よく制御することができる。このため、従来とは異なり、前記融雪器として急激に融雪温度を上昇させることができる高性能のものを採用したり、降雪の有無に関わらず融雪器の目標温度を上昇させておいたりする必要がない。
【0016】
前記第2の発明に係る融雪器制御システム又は前記第5の発明に係る融雪器制御方法によれば、降雪の予測精度を向上させることができる。
【0017】
前記第3の発明に係る融雪器制御システム又は前記第6の発明に係る融雪器制御方法によれば、降雪の予測精度をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る融雪器制御システム及び方法によれば、突然の気象変化により急な降雪の発生を予測し、融雪器を効率よく制御することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を融雪器制御システムに具体化した実施形態について、同システムを使用して実施する制御方法とともに、図面を参照して説明する。本発明の融雪器制御システム1は、融雪対象物としての鉄道のレールの積雪や凍結を防止するために、該レールの状態及び該レール付近の気象の状態を検出し、これらの検出結果に応じて複数の目標温度で運転するように融雪器2を制御するものである。
【0020】
本例では、融雪器制御システム1は融雪器2を次の6種類の制御状態に制御するように構成されている。
(1)保温状態…降雪していないが、凍結防止のために低温でレールを加熱する状態
(2)融雪1状態…少量の降雪があり、融雪のために中温でレールを加熱する状態
(3)融雪2状態…多量の降雪があり、融雪のために高温でレールを加熱する状態
(4)融雪3状態…降雪していないが、落雪等による積雪を融雪するために一時的に高温でレールを加熱する状態
(5)予熱状態…降雪していないが、急な降雪が予測される場合に、該降雪に備えて所定の予熱時間の間、レールを加熱する状態
(6)制御中止状態…降雪がなく、凍結のおそれもないため、レールを加熱しない状態
【0021】
図1に示すように、この融雪器制御システム1は、中央監視制御装置3と、融雪判定装置4と、融雪制御装置5とを含んでおり、これらは通信手段15を介して互いに接続されている。そして、中央監視制御装置3及び融雪制御装置5は、それぞれ通信手段15を介して制御対象の融雪器2に接続されている。また、中央監視制御装置3は、通信手段15を介して気象業務支援センター10に接続されている。ここで、通信手段15としては、公知の有線又は無線の通信手段を適宜採用することができ、特に限定されないが、インターネット、ローカルエリアネットワーク、電話網等を例示する。
【0022】
中央監視制御装置3は、定期的に発表・更新される降雪予報情報(前記レールが存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪確率の予報情報)を通信手段15を介して気象業務支援センター10から受信し融雪判定装置4へ送信する降雪予報入力手段や、融雪制御装置5から送信されてくるレール温度情報やレール付近の外気温度情報を中継し融雪判定装置4へ送信する手段や、融雪判定装置4から送信されてくる融雪判定結果を中継し融雪制御装置5へ送信する手段や、融雪判定装置4、融雪制御装置5、及び融雪器2の警報運転情報をモニタ・記録する手段等を備えている。
【0023】
融雪制御装置5は、制御対象の融雪器2の付近に設置される。この融雪制御装置5には、融雪対象物としてのレールの温度を検出するレール温度センサ9と、融雪対象物としてのレールの付近の外気温度を検出する外気温度センサ7とが接続されている。この融雪制御装置5は、中央監視制御装置3を介して融雪判定装置4から送信されてくる現在の状況に応じた制御状態の判定結果を受信し、該判定結果に基づいて融雪器2を制御する手段や、現場で手動操作により融雪器2に運転指令を送信する手段や、融雪器2から警報・運転情報を受信し、この情報を中央監視装置に送信する手段等を備えている。
【0024】
本融雪器制御システム1の制御対象である融雪器2は、本例では、電熱、温風、散水、温水等によりレールへの積雪や凍結を融かす手段を備えている。
【0025】
融雪判定装置4は、融雪対象物としてのレールの付近に設置される。この融雪判定装置4には、融雪判定装置4付近における外気の状態を検出するために、降雪の有無を検出する降雪センサ6、外気の温度を検出する外気温度センサ7、外気の湿度を検出する湿度センサ8等の各種センサが接続されている。この融雪判定装置4は、中央監視制御装置3を介して気象業務支援センター10から前記降雪予報情報を受信する手段や、中央監視制御装置3を介して融雪制御装置5からレール温度情報やレール付近の外気温度情報を受信する手段や、現在の状況に応じた融雪器2の前記制御状態を判定する手段としての融雪判定処理や、該融雪判定処理による判定結果を中央監視制御装置3を介して融雪制御装置5に送信する手段や、前記予熱状態における前記予熱時間を計測するための予熱タイマーや、プログラムやデータの記憶手段等を備えている。
【0026】
融雪判定装置4の前記記憶手段は、融雪判定用レジスタ20(図2(a)参照。)を含んでおり、該レジスタ20には、湿度閾値、現在の湿度、現在から30分前の湿度、現在から60分前の湿度、温度閾値、現在の外気温度、現在のレール温度、6時間ごとの降雪予報(予報された降雪レベル値)が格納される。ここで、現在の外気温度としては、融雪判定装置4に接続された外気温度センサ7により検出した温度と、融雪制御装置5に接続された外気温度センサ7により検出した温度との平均値が採用される。また、現在の湿度、現在の外気温度、現在のレール温度については、1分ごとに各センサから最新の検出値が入力され、内容が更新されるように構成されている。また、現在から30分前の湿度、及び現在から60分前の湿度については、現在から少なくとも直近の過去60分間の湿度を時系列で記憶する湿度記録テーブル21(図2(b)参照。)が記憶手段内に設けられており、現在の湿度が更新されると、該湿度により湿度記録テーブル21を更新するとともに、該湿度記録テーブル21から現在から30分前の湿度、及び現在から60分前の湿度を読み出して、融雪判定用レジスタ20の内容を更新するように構成されている。また、時間帯ごとの降雪予報に格納される降雪レベル値は、1が降雪量なし、2が2cm以下/6時間、3が3〜5cm/6時間、4が6cm以上/6時間、255が不明、をそれぞれ意味している。この降雪予報については、最新の同予報を受信すると、内容が更新されるように構成されている。
【0027】
図3及び図4は融雪判定処理の流れを示すフローチャートであり、これらの図面に基づき融雪判定処理について説明する。なお、特に断らない限り、本処理内で湿度閾値、現在の湿度、現在から30分前の湿度、現在から60分前の湿度、温度閾値、現在の外気温度、現在のレール温度、及び、6時間ごとの降雪予報を参照するときは、融雪判定用レジスタ20に記憶されたデータを参照しているものとする。
【0028】
図3に示すように、融雪判定処理では、まず、降雪センサ6により降雪の有無をチェックし(ステップS101)、降雪していない場合、外気温度をチェックする(ステップS108)。外気温度が2℃以下の場合、後述する予熱状態処理を実行する(ステップS111)。この処理後、予熱タイマーが作動中であるときは、判定結果として「予熱状態」(本例では、レールの目標温度を20℃に制御すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS114)、ステップS101に戻る。また、予熱タイマーが作動中でないときは、判定結果として、「保温状態」(本例では、レールの目標温度を5℃に制御すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS113)、ステップS101に戻る。
【0029】
また、ステップS101において、降雪している場合は、後述する予熱状態処理により作動される予熱タイマをクリアする(ステップS102)。次いで、外気温度をチェックする(ステップS103)。レール温度が3℃を超えていれば、判定結果として、「制御中止状態」(レール温度制御を中止すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS107)、ステップS101に戻る。また、レール温度が3℃以下であれば降雪センサ6により降雪量をチェックする(ステップS104)。降雪量が多くなければ判定結果として、「融雪1状態」(本例では、レールの目標温度を10℃に制御すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS105)、ステップS101に戻る。また、降雪量が多ければ、判定結果として「融雪2状態」(本例では、レールの目標温度を20℃に制御すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS106)、ステップS101に戻る。
【0030】
また、ステップS101において、降雪していない場合は、外気温度をチェックする(ステップS108)。外気温度が2℃を超えている場合は、レール温度をチェックし(ステップS109)、レール温度が0℃を超えている場合は、判定結果として「制御中止状態」(レール温度の制御を中止すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS107)、ステップS101に戻る。また、レール温度が0℃以下の場合は、判定結果として、「融雪3状態」(レールの目標温度を20℃に制御することによりレール温度を一度20℃まで上昇させてからレール温度の制御を中止すること)を融雪制御装置5に送信し(ステップS110)、ステップS101に戻る。
【0031】
図4に示すように、予熱状態処理では、まず、予熱タイマーが作動中かどうかをチェックし(ステップS201)、作動中であれば予熱タイマーをカウントダウンさせ(ステップS208)、本処理の呼出元に戻る(ステップS209)。また、予熱タイマーが作動中でなければ、6時間以内に3cm以上の降雪予報があるか否か(レベル値が3又は4となっているか否か)をチェックし(ステップS202)、該降雪予報がなければ本処理の呼出元に戻り(ステップS209)、該降雪予報があれば、現在の湿度が30分前の湿度よりも湿度上昇閾値(本例では10%)以上上昇しているか否かをチェックする(ステップS203)。湿度が上昇していなければ、現在の湿度が60分前の湿度よりも前記湿度上昇閾値以上上昇しているかをチェックし(ステップS204)、上昇していなければ本処理の呼出元に戻る(ステップS209)。ステップS203又はS204において湿度が上昇している場合は、現在の湿度が湿度閾値以上になっているか否かをチェックし(ステップS205)、なっていない場合は本処理の呼出元に戻る(ステップS209)。現在の湿度が湿度閾値以上になっているときは、現在の外気温度が温度閾値以下になっているか否かをチェックし(ステップS206)、なっていない場合は本処理の呼出元に戻る(ステップS209)。現在の外気温度が温度閾値以下になっている場合は、予熱時間としてのタイマー時間を2時間にセットした予熱タイマーを始動させ、本処理の呼出元に戻る(ステップS209)。
【0032】
なお、本例では、ステップS202において、3cm以上の降雪予報があるか否か(レベル値が3又は4となっているか否か)としているが、3cm未満の降雪を含む降雪予報があるか否か(レベル値が2〜4となっているか否か)とすることもできる。
【0033】
以上のように構成された本例の融雪器制御システム1(及びこのシステム1で使用されている方法)は、融雪対象物としてのレールが存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪予報情報を入力する降雪予報入力手段と、前記レール付近の湿度情報を入力する湿度入力手段としての湿度センサ8と、前記レール付近の温度情報を入力する温度入力手段としての外気温度センサ7と、入力した前記湿度情報を時系列で記憶する湿度記憶手段としての湿度記録テーブル21と、入力した前記降雪予報、前記湿度情報、及び前記温度情報が所定条件を満たしている場合に、急な降雪が始まると予測する降雪予測手段としての降雪判定処理と、該予測を基に、急な降雪に備えた予熱用の目標温度で融雪器2を運転するように制御する手段とを備えている。
【0034】
そして、前記所定条件は、下記(a)〜(d)を同時に満たしていることとしている。
(a)前記降雪予報が「雪が降る予報」となっている時間帯に属し又はその時間帯の直前の時間帯に属している場合(ステップS202)
(b)前記湿度が、直近の過去における所定時間内に所定の湿度上昇閾値以上上昇している場合(ステップS203、S204)
(c)現在の前記湿度が、所定の湿度閾値以上になっている場合(ステップS205)
(d)現在の前記温度が、所定の温度閾値以下になっている場合(ステップS206)
【0035】
この構成により、本例の融雪器制御システム1及び方法は、突然の気象変化により急な降雪の発生を予測し、該降雪の発生が予測される場合に融雪器2を予熱用の目標温度で運転するように制御しておくことにより、前記レールに降った雪を融かすことができ、融雪器2を効率よく制御することができる。このため、従来とは異なり、融雪器2として急激に融雪温度を上昇させることができる高性能のものを採用したり、降雪の有無に関わらず融雪器2の目標温度を上昇させておいたりする必要がない。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)前記所定条件において、(c)、(d)の両方又はいずれか一方を省くこと。また、(d)の条件を省く場合、外気温度センサ7を省くこと。
(2)融雪器制御システム1の機器構成を適宜変更すること。例えば、中央監視制御装置3、融雪判定装置4、及び融雪制御装置5を一体に構成したり、中央監視制御装置3を省くとともに融雪判定装置4に対し、気象業務支援センター10及び融雪制御装置5を通信手段15を介して直接的に接続した構成とすること。
(3)融雪器2の各制御状態における目標温度を適宜変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る融雪器制御システムのシステム構成図である。
【図2】同システムの融雪判定装置が備える記憶手段の構成要素を示す図であり、(a)は融雪判定用レジスタの構成例図であり、(b)は湿度記録テーブルの構成例図である。
【図3】同融雪判定装置で実行される融雪判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】同融雪判定処理のサブルーチンである予熱状態処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】過去の降雪記録における降雪と湿度との関係を例示するグラフ図である。
【図6】従来のロードヒーティング装置において使用されるグラフ図であって、時刻に対する降雪確率予報及び降雪予測のグラフ図である。
【符号の説明】
【0038】
1 融雪器制御システム
2 融雪器
3 中央監視制御装置
4 融雪判定装置
5 融雪制御装置
6 降雪センサ
7 外気温度センサ
8 湿度センサ
9 レール温度センサ
10 気象業務支援センター
15 通信手段
20 融雪判定用レジスタ
21 湿度記録テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪対象物の積雪や凍結を防止するために、該融雪対象物の状態及び該融雪対象物付近の気象の状態を検出し、これらの検出結果に応じて複数の目標温度で運転するように融雪器を制御する融雪器制御システムであって、
前記融雪対象物が存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪予報情報を入力する降雪予報入力手段と、
前記融雪対象物付近の湿度情報を入力する湿度入力手段と、
入力した前記湿度情報を時系列で記憶する湿度記憶手段と、
入力した前記降雪予報及び前記湿度情報が所定条件を満たしている場合に、急な降雪が始まると予測する降雪予測手段と、
該予測を基に、急な降雪に備えた予熱用の目標温度で前記融雪器を運転するように制御する手段とを備え、
前記所定条件は、下記(a)及び(b)を同時に満たしていることである融雪器制御システム。
(a)前記降雪予報が「雪が降る予報」となっている時間帯に属し又はその時間帯の直前の時間帯に属している場合
(b)前記湿度が、直近の過去における所定時間内に所定の湿度上昇閾値以上上昇している場合
【請求項2】
前記所定条件は、次の条件も含んでいる請求項1記載の融雪器制御システム。
(c)現在の前記湿度が、所定の湿度閾値以上になっている場合
【請求項3】
前記融雪対象物付近の温度情報を入力する温度入力手段をも備え、
前記所定条件は、次の条件も含んでいる請求項1又は2記載の融雪器制御システム。
(d)現在の前記温度が、所定の温度閾値以下になっている場合
【請求項4】
融雪対象物の積雪や凍結を防止するために、該融雪対象物の状態及び該融雪対象物付近の気象の状態を検出し、これらの検出結果に応じて複数の目標温度で運転するように融雪器を制御する融雪器制御方法であって、
前記融雪対象物が存在する地域について気象台による時間帯ごとの降雪予報情報を入力する降雪予報入力段階と、
前記融雪対象物付近の湿度情報を入力する湿度入力段階と、
入力した前記湿度情報を時系列で記憶する湿度記憶段階と、
入力した前記降雪予報及び前記湿度情報が所定条件を満たしている場合に、急な降雪が始まると予測する降雪予測段階と、
該予測を基に、急な降雪に備えた予熱用の目標温度で前記融雪器を運転するように制御する段階とを含み、
前記所定条件は、下記(a)及び(b)を同時に満たしていることである融雪器制御方法。
(a)前記降雪予報が「雪が降る予報」となっている時間帯に属し又はその時間帯の直前の時間帯に属している場合
(b)前記湿度が、直近の過去における所定時間内に所定の湿度上昇閾値以上上昇している場合
【請求項5】
前記所定条件は、次の条件も含んでいる請求項4記載の融雪器制御方法。
(c)現在の前記湿度が、所定の湿度閾値以上になっている場合
【請求項6】
前記融雪対象物付近の温度情報を入力する温度入力段階をも含み、
前記所定条件は、次の条件も含んでいる請求項4又は5記載の融雪器制御方法。
(d)現在の前記温度が、所定の温度閾値以下になっている場合

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−71019(P2010−71019A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241912(P2008−241912)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(591150937)山陽電研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】